JP3898118B2 - 温度検知機能を有する面状発熱装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、温度検知機能を有する面状発熱装置の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、種々の用途に供される面状発熱装置が提案されている。
【0003】
この面状発熱装置は通電することで発熱する面状発熱体30を内蔵し、この面状発熱体30を発熱させることで、前記面状発熱装置を付設した個所を加熱するもので、前記面状発熱体30は例えばポリエステルフィルムやポリイミドフィルムなどの絶縁材料に挟まれた形態として使用されている。
【0004】
ところで、この面状発熱装置は、特開2002−117958公報にも示される以下のような製造方法で製造されている。
【0005】
絶縁材料となる保護フィルム23の上に接着剤22を介してステンレス箔21を貼着し(図12)、このステンレス箔21上に所望のパターンにてエッチングレジストによる保護印刷を施してエッチング液によるステンレス箔21の溶出を防止する溶解防止材29を配設し(図13)、続いて塩化第二鉄溶液により溶解防止材29の存しない部分を腐食させ(図14)、水酸化ナトリウム溶液等により溶解防止材29を除去し(図15,図16)、その上に熱可塑性接着剤22’を塗工した絶縁材料となる保護フィルム23’を熱プレス機にて溶融接着し(図17)、端子加工を行って面状発熱装置を製造する。
【0006】
また、この際、面状発熱装置には、この面状発熱装置内の面状発熱体30から発生した熱を検知しこの面状発熱体30の温度を調節するための温度検知素子25を設ける。即ち、面状発熱装置の上にサーミスタなどの温度検知素子25を接着剤26などで貼り合せて温度検知しながら面状発熱体30の制御を行う(図18,19)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、出願人は更なる研究,検討を重ねたところ、上記従来構造には次の問題点があることを見い出した。
【0008】
(1) 面状発熱装置の厚さ、即ち、保護フィルム23,23’間の厚さが薄いにもかかわらずサーミスタ25の厚み分装着スペースが制限される。
【0009】
(2) 敷設スペースに制約がある場合、面状発熱装置を付設しようとする対象物にサーミスタ25挿入用の孔を形成する加工が必要となり、加工コストを増加させている。
【0010】
(3) サーミスタ25を面状発熱装置の上に貼り合せる手間が発生する。
【0011】
(4) 貼り合せ方法にムラが出ると熱伝導に変化が生じ、面状発熱体30の正確な温度を測定することができない。
【0012】
(5) サーミスタ25への配線及び絶縁処理を行う分、製造工程数が増加する。
【0013】
(6) 万一、サーミスタ25が剥がれた場合、面状発熱体30が過熱して事故を引き起こす懸念がある。
【0014】
(7) 面状発熱体30に貼着した外装フィルム23’(保護フィルム23’)越での温度測定となるため、サーミスタ25などの温度検知素子による検知温度と金属薄箔(面状発熱体30)の実温度との差異が生ずる。
【0015】
本発明は、従来構造の上記問題点を解決した温度検知機能を有する金属薄箔を用いた面状の発熱装置の製造方法を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0017】
フィルムや薄板などの基板部3上に金属薄箔1を配設し、この金属薄箔1を所定形状にエッチング処理することで、通電により発熱する面状発熱体10を前記基板部3上に形成する際、前記面状発熱体10を形成しない前記基板部3上に、前記基板部3内と前記基板部3外とを通電可能に配線し得る配線路11を前記エッチング処理により形成し、この配線路11を、この配線路11間に前記温度検知素子5を配設し得る間隔をもって且つ前記配線路11に前記温度検知素子5を接続し得る間隔をもって前記基板部3上に形成し、この配線路11間に、前記面状発熱体10から発する熱の温度を検知する温度検知素子5を収納配設してこの温度検知素子5と配線路 11 とを接続し、この温度検知素子5,面状発熱体10及び配線路11上にフィルムや薄板などの被覆板部3’を配設することを特徴とする温度検知機能を有する面状発熱装置の製造方法に係るものである。
【0018】
また、前記温度検知素子5として、薄型チップ温度検知素子を採用することを特徴とする請求項1記載の温度検知機能を有する面状発熱装置の製造方法に係るものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
好適と考える本発明の実施の形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいてその作用効果を示して簡単に説明する。
【0020】
フィルムや薄板などの基板部3上に金属薄箔1を配設し、この金属薄箔1を所定形状にエッチング処理すると、基板部3上にして前記所定形状以外の部位の金属薄箔1はこの基板部3上から除去されることとなる。
【0021】
次いで、前記エッチング処理により前記金属薄箔1が除去された部分に面状発熱体10から発する熱の温度を検知する温度検知素子5を配設してこの温度検知素子5及び面状発熱体10上にフィルムや薄板などの被覆板部3’を配設する。
【0022】
従って、例えば、エッチング処理により金属薄箔1が除去されて面状発熱体10に対して凹んだ状態となっている基板部3上に温度検知素子5を収納配設できるため、従来のような面状発熱装置上に温度検知素子を設ける場合に比して面状発熱装置を薄く形成することができる。
【0023】
更に言えば、従来使用されていなかったスペース、即ち、図18に示すような、基板部となる保護フィルム23と被覆板部となる保護フィルム23’との間にして面状発熱体30の隣接部位に存するデッドスペースを有効利用して温度検知素子を収納配設できることとなるため、その分、温度検知素子を含む面状発熱装置全体の厚みを薄くできることとなる。
【0024】
また、温度検知素子5を面状発熱装置内に収納配設するため、従来のような面状発熱装置上に温度検知素子を付設する場合に比して、外部からなんらかの力が加わってもこの温度検知素子5は損傷を受けにくく、また、面状発熱装置上から温度検知素子5が取り外れてしまうことも極めて起こりにくいこととなる。
【0025】
また、本発明は、前述のように、金属薄箔1を除去した部分に温度検知素子5を収納配設し、この温度検知素子5及び前記面状発熱体10上に被覆板部3’を配設するだけで形成できるため、従来のように、温度検知素子を面状発熱装置上に貼り合わせたりする手間を要しないこととなる。
【0026】
また、温度検知素子を面状発熱装置上にフィルムなどを介して配設するのではなく、エッチング処理により基板部3上に除去されずに残った金属薄箔1に隣設する、金属薄箔1が除去された部分に温度検知素子5を収納配設するため、温度検知素子5及び面状発熱体10間を遮るようなフィルム等が存在せず、その分、この面状発熱体10から発せられる熱の温度をより精度良く検知(測定)できることとなる。
【0027】
本発明は、従来に比して面状発熱装置の厚みを薄くできる上に面状発熱体から発する熱の温度をより精度良く検知(測定)することができ、しかも、簡単に製造することができる量産性,実用性に秀れた温度検知機能を有する面状発熱装置の製造方法となる。
【0028】
また、例えば、エッチング処理により、面状発熱体10を基板部3上に形成する際、前記面状発熱体10を形成しない前記基板部3上に、基板部3内と基板部3外とを通電可能に配線し得る配線路11を形成し、このエッチングにより金属薄箔1が除去された部分若しくは前記配線路11に接続し得る位置に温度検知素子5を配設すれば、面状発熱装置内に温度検知素子5を確実に収納配設できると共に、面状発熱装置内に配設される温度検知素子5を機能させるために必要な配線の加工処理を、面状発熱体10の形成と同時に一括して行うことができるため、極めて簡易に温度検知機能を有する面状発熱装置を製造できることとなるなど、一層実用的となる。
【0029】
また、例えば、前記配線路11を、この配線路11間若しくはこの配線路11上に前記温度検知素子5を配設し得る間隔をもって且つ前記配線路11に前記温度検知素子5を接続し得る間隔をもって前記基板部3上に形成し、この配線路11間若しくはこの配線路11上に前記温度検知素子5を配設することでこの温度検知素子5と配線路11とを接続すれば、この配線路11間に温度検知素子5を配設し接続するだけで、温度検知素子5を機能させ得る状態にできることとなるなど、一層実用的となる。
【0030】
また、例えば、前記温度検知素子5として、薄型チップ温度検知素子を採用すれば、面状発熱装置を一層薄く製造することができる温度検知機能を有する面状発熱装置の製造方法となるなど、一層実用的となる。
【0031】
【実施例】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0032】
先ず、基板部3を構成するフィルム3の上に接着剤2を介して金属薄箔1を貼着する(図1参照)。
【0033】
フィルム3は、接着剤2を塗布したポリエステルフィルムやポリイミドフィルムなどを採用している。
【0034】
金属薄箔1は、ステンレス製箔(例えば日新製鋼株式会社製のSUS304H30μ箔)を採用している。
【0035】
次いで、この金属薄箔1上に、面状発熱体10及び後述する温度検知素子5を機能させるための配線路11の形状を表したパターンにてエッチングレジストによる保護印刷を施しエッチング液による金属薄箔1の溶出を防止する溶解防止材9を配設する(図2,図3参照)。
【0036】
面状発熱体10の形状は、図2に示すように、基板部3の左右両側にして中央部を介した上下方向に蛇行するようにし、基板部3の一端側にて連結され、他端側にて外部端子等に接続し得るように前記基板部3の端縁部付近まで延設した形状としている。
【0037】
配線路11の形状は、同じく図2に示すように、基板部3の上下方向に蛇行する前記左右の面状発熱体10間にして基板部3の一端側(図2における下方)から基板部3の略中央にかけて略直線状に二本並設された形状であり、また、前記基板部3の一端側に位置する配線路11の端部は、外部端子等を接着剤や半田付けなどにより接続し易いように互いに所定間隔離反した形状とし、一方、前記基板部3の略中央部に位置する配線路11の端部は、後述する温度検知素子5の巾よりもやや広い間隔で互いに離反した形状としている。具体的には、平面から見て基板部3の他端側(図2における上方)に向けてコ字形の開口部13を形成するように、配線路11の端部が互いに離反した形状となっている。これにより、この基板部3の略中央部に位置する配線路11間(即ち前記開口部13内)に後述する温度検知素子5を収納することができる。
【0038】
次いで、塩化第二鉄溶液により溶解防止材9の存しない金属薄箔1を腐食させ、水酸化ナトリウム溶液により前記溶解防止材9を除去することで、前述した形状の面状発熱体10及び配線路11を形成する(図4,図5参照)。
【0039】
次いで、基板部3の中央部に位置する配線路11間にして前記基板部3上に温度検知素子5を接続する(図6,図8参照)。
【0040】
温度検知素子5は、薄型チップ温度検知素子を採用している。
【0041】
温度検知素子5の接続は、導電接着剤6若しくは半田付けにより行う。即ち、前記開口部13内にして基板部3上に温度検知素子5を収納し、この温度検知素子5と配線路11とを導電接着剤6若しくは半田付けにより接続する。これにより、配線路11の端部に温度検知素子5を単に収納し、導電接着剤6若しくは半田付けにより接着するだけで、温度検知素子5を機能させる回路が形成される。
【0042】
次いで、温度検知素子5,面状発熱体10及び配線路11を含む基板部3上に被覆板部3’を構成するフィルム3’を配設する(図7参照)。
【0043】
即ち、温度検知素子5,面状発熱体10及び配線路11を含む基板部3上全体に熱可塑性接着剤2’を塗布したフィルム3’を配し、熱プレス機により溶融接着する。
【0044】
次いで、面状発熱体10及び配線路11の端部に端子加工を施し、面状発熱装置を形成する(図8参照)。
【0045】
図9〜図11は、配線路11に対する温度検知素子5の配設形態の別例を示したもので、配線路11上に温度検知素子5を接着剤6を介して付設したものである。即ち、基板部3の略中央部に位置する配線路11端部の夫々の間隔、即ち開口部13の開口大きさを、温度検知素子5が有する一方巾(縦巾又は横巾)よりも狭く設定し、この配線路11上に温度検知素子5を接着剤6を介して単に載置するだけで付設できるものである。
【0046】
本実施例は上記方法であるから次の特徴を有する。
【0047】
(1) 温度検知素子5が面状発熱装置に内蔵(収納配設)されているため、従来のように温度検知素子を面状発熱装置上(保護フィルム上)に貼り付ける手間が省け、また、貼り合わせ加工費を低減化できる。
【0048】
(2) 温度検知素子5用の配線路11が内蔵(収納配設)されているため、配線加工・絶縁加工する手間が省け、また、その費用を低減化できる(内蔵コストについても所定位置(基板端部)への電気的接続だけで済む)。
【0049】
(3) 薄型の温度検知素子5を使うことで従来の面状発熱装置の厚み、即ち、温度検知素子25を付設しない面状発熱装置のみの厚みとほとんど変わりない厚みとなるため、温度検知素子25を取り付けるために必要なスペースも発生せず小型軽量化が可能となる。
【0050】
(4) 温度検知素子5が面状発熱装置に内蔵(収納配設)されているため、温度検知素子5が剥がれる等して取れてしまうことが無く、安全に使用することができる。
【0051】
(5) 温度検知素子5が面状発熱装置に内蔵(収納配設)されているため、面状発熱体10そのもの若しくは極めて近傍での温度測定ができるため検知精度が向上する。
【0052】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的な工程は適宜設計し得るものである。
【0053】
【発明の効果】
本発明は上述のようにするから、面状発熱装置に温度検知素子を設けても面状発熱装置を薄く形成でき、また、温度検知素子を手間やコストをかけることなく設けることができ、また、熱伝導性のムラが生じにくく、また、温度検知素子が取れたりすることもなく、更に、精度の高い温度検知を行うこともできる用途性,量産性,実用性に秀れた画期的な温度検知機能を有する面状発熱体の製造方法となる。
【0054】
また、本発明は、例えば面状発熱装置の上面に温度検知素子を設けるのではなく、従来デッドスペースとなっていた部位に温度検知素子を収納するように配設でき、しかも、面状発熱装置内に配設される温度検知素子を機能させるために必要な配線の加工処理を、面状発熱体の形成と同時に一括して行うことができる極めて加工性,作業性に秀れた画期的な温度検知機能を有する面状発熱装置となる。
【0055】
また、本発明は、配線路間に温度検知素子を配設し接続するだけで、温度検知素子を機能させ得る状態とすることができる極めて加工性,作業性に秀れた画期的な温度検知機能を有する面状発熱装置となる。
【0056】
また、請求項2記載の発明については、面状発熱装置を一層薄く製造することができる一層用途性,実用性に秀れた画期的な温度検知機能を有する面状発熱装置の製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施例の製造工程の説明図である。
【図2】 本実施例の製造工程の説明図である。
【図3】 本実施例の製造工程の説明図である。
【図4】 本実施例の製造工程の説明図である。
【図5】 本実施例の製造工程の説明図である。
【図6】 本実施例の製造工程の説明図である。
【図7】 本実施例の面状発熱装置を示す説明断面図である。
【図8】 本実施例の面状発熱装置を示す説明図である。
【図9】 温度検知素子の付設形態の別例を示す説明図である。
【図10】 温度検知素子の付設形態の別例を示す説明図である。
【図11】 温度検知素子の付設形態の別例を示す説明図である。
【図12】 従来例の製造工程の説明図である。
【図13】 従来例の面状発熱体となる金属薄箔を側方から見た(図16における面状発熱体の左右どちらか一方側を側方から見た)製造工程の説明断面図である。
【図14】 従来例の面状発熱体となる金属薄箔を側方から見た(図16における面状発熱体の左右どちらか一方側を側方から見た)製造工程の説明断面図である。
【図15】 従来例の面状発熱体となる金属薄箔を側方から見た(図16における面状発熱体の左右どちらか一方側を側方から見た)製造工程の説明断面図である。
【図16】 従来例の製造工程の説明図である。
【図17】 従来例の製造工程の説明図である。
【図18】 従来例の面状発熱装置を示す説明断面図である。
【図19】 従来例の面状発熱装置を示す説明図である。
【符号の説明】
1 金属薄箔
3 基板部
3’ 被覆板部
5 温度検知素子
10 面状発熱体
11 配線路
Claims (2)
- フィルムや薄板などの基板部上に金属薄箔を配設し、この金属薄箔を所定形状にエッチング処理することで、通電により発熱する面状発熱体を前記基板部上に形成する際、前記面状発熱体を形成しない前記基板部上に、前記基板部内と前記基板部外とを通電可能に配線し得る配線路を前記エッチング処理により形成し、この配線路を、この配線路間に前記温度検知素子を配設し得る間隔をもって且つ前記配線路に前記温度検知素子を接続し得る間隔をもって前記基板部上に形成し、この配線路間に、前記面状発熱体から発する熱の温度を検知する温度検知素子を収納配設してこの温度検知素子と配線路とを接続し、この温度検知素子,面状発熱体及び配線路上にフィルムや薄板などの被覆板部を配設することを特徴とする温度検知機能を有する面状発熱装置の製造方法。
- 前記温度検知素子として、薄型チップ温度検知素子を採用することを特徴とする請求項1記載の温度検知機能を有する面状発熱装置の製造方法。
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