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JP3897569B2 - ポリテトラフルオロエチレンの含有量が低減した抗擦過インキ添加剤および該添加剤を含有するインキ - Google Patents

ポリテトラフルオロエチレンの含有量が低減した抗擦過インキ添加剤および該添加剤を含有するインキ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はインキ用抗擦過加剤に関する。このような添加剤は、印刷後のインキに強度および抗摩擦性を付与するために、インキ調合品中に混入または分散される薬剤である。このような添加剤は、抗擦傷インキ添加剤、抗摩擦インキ添加剤、または抗滑インキ添加剤とも称される。この添加剤を含有するインキを用いて紙に印刷すると、例えば、インキ、紙または他の材料が、汚れ、擦れ、擦傷などの様々な力を受けた時に、その印刷は滑性を維持しつつ摩擦から保護される。このような力は、印刷済の紙を使用、運送または扱うときに発生する。
【0002】
本発明の抗擦過添加剤は、ヒートセットインキ、シート供給インキおよび紫外線コート可能なインキにもっとも好適に使用される。
【0003】
【発明の背景】
インキ、特に印刷インキは、紙や他の基材に印刷した後、使用や取り扱い中に基材表面が被ることのある通常の摩擦力を受けたときに印刷インキがこすり落とされることのないように、「強度」を有していなくてはならない。インキ製造業者によって抗擦過専門薬剤を用いて変性されている印刷インキは、耐擦傷性が向上している。印刷物の擦傷または「擦れ」は読み易さを減じる。このような特別な添加剤を添加した後の処理済みインキは、滑性も向上している場合が多い。滑性によって、インキの擦れを生じさせることなく、印刷された頁のインキの上に他の印刷された頁を容易に滑らせることができる。
【0004】
このような改良された性質を得るために、製造中に、顔料と共にインキ組成物に混入または練入する、最終インキブレンド物の一部として添加する、または他の時点で導入するなどの方法によって、抗擦過添加剤を印刷インキ調合物に添加する。このような添加剤は、例えば、前駆体インキ用溶媒または前駆体インキ用樹脂に分散されることが多い。
【0005】
市販のインキ添加剤は、硬いワックスのような固体形状または粉末形状になっていることが多い。硬いワックスは、添加剤としてインキ組成物中に十分に混入または分散させるのが困難であることがわかっている。最終的な印刷インキを製造する工程の一部として、ワックス状添加剤を溶融する必要があることも多かった。また、通常の市販のワックスによって与えられる抗摩擦性または抗擦過性は、個々のワックスを溶融する温度に大きく影響されることも見出されている。インキに添加されるワックスの多くは、擦れをほんの少し低減させるだけで、擦れの完全な除去にはならないことが多い。継続的に擦られることによる摩擦によって与えられる熱と動きとは、実際問題として、フィルムに印刷されたインキの粒子が、印刷のない領域に広がり続けるという結果になることもある。
【0006】
進歩は欠点を伴うこともあるものである。擦れの問題は解決するためにインキ中に導入される抗擦過性ハードワックスは、他の問題を発生させてきた。多くの場合、添加されるワックスの量が多いほど抗擦過性は向上するが、印刷インキに望まれる光沢の減少はより深刻である。光沢の減少は、高品質の雑誌や印刷物にとっては特に都合が悪い。出版者にとっては、印刷インキの光沢の低減を最小限に押さえることが重要である。したがって、大部分の場合において、抗擦過性の所望のレベルと光沢低下量との間で妥協がなされてきた。
【0007】
硬いワックス性の抗擦過添加剤製造物の大部分がそうであるように、加熱を必要とする添加剤は、製造コストを増加させると共に取り扱いの問題も発生させる。多くの抗擦過性ワックスは固体か粉末状のいずれかであるので、実質的に液体系である調合物中に分散させるのが困難である場合が多い。さらに、比較的高価な抗擦傷添加剤を含有するインキには、経費の増加という要因がある。即ち、逆に、新聞を読むことは、最小限、手を洗わなくてはならない経験をする可能性がある。新聞やある種の雑誌のニュース用インキの場合は、コストが重要な因子であって、それ故に、多くのニュース用インキは、通常、抗擦過添加剤を用いていない。安価な雑誌用インキは、少ない種類の少量の添加剤のみを使用している。
【0008】
インキ工業において、抗擦過添加剤としてポリエチレンワックスが使用されてきた。これらのワックスは、インキ製造者によって、通常、樹脂にワックスを分散させて混入されている。この樹脂は、ワックスが混入されるインキ調合物と同じ型のものである。
【0009】
ある種のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含有する抗擦過添加剤は、ヒートセットインキ用に選択されることが多く、この際、乾燥装置の温度が添加剤を非常に軟化または溶融することはない。有機化学薬品と化合させた特定の種類のポリテトラフルオロエチレン基材の粉末を、剪断力を用いて加工中のインキに直接添加することもなされてきた。
【0010】
多くの市販の抗擦過添加剤は、他タイプの固体または殆ど固体状の材料を分散させるときに生じるのと同様の取り扱い上の問題を呈する。インキ組成物に添加すると、これらの添加剤は塊になってしまう可能性がある。直接分散させると、製造物中に不均一な濡れ(wetting out)があり、結果として固い芯を有する塊や球状体が形成されることが報告されている。このような塊は、攪拌しながらインキ組成物に添加剤をゆっくりと添加することによって、多くの場合、低減させることができる。しかしながら、ゆっくりと溶解することは、実際のインキ製造操作の効率に影響を与えることが多い。溶解するのに長時間かかるために、工業的なインキ製造工程に組み入れるのが困難であることがわかっている化学薬剤もある。単純なインキ樹脂溶液、および、特に他の薬剤や成分を含有するインキ調合物の両方において、適切な粘度および分散が得られるまでには長時間に亘る攪拌と熟成期間が必要である。
【0011】
インキ製造業者は、インキ組成物中に抗擦過添加剤を混入するための、簡単、迅速且つ効果的な方法を絶えず探し求めてきた。このような継続的なニーズと開発があった故に、今日、インキ製造業者によって使用されている市販品の中には、注入可能な液体濃縮物もある。インキや他の組成物用の液体状のこのような添加剤は、通常、抗擦過添加剤製造会社によって販売されている添加剤を取得して、プレミックス液体混合物または抗擦過添加剤とインキビヒクルとのブレンド物を調製するという過程を要する。
【0012】
市販の抗擦過性PTFE含有添加剤は、キャロル・サイエンティフィック株式会社(Carroll Scientific, Inc.)によって販売されているプロテック120(Protec 120)を含有している。このプロテック120は、ある型のデュポン・バージンテフロン(DuPont virgin Teflon、登録商標、PTFEの商品名である。)と、石油蒸留ビヒクルと化学薬品との合成ブレンドとを含有する83%活性の化合物であると記載されている。ローター・インターナショナル(Lawter International)は、ローター SA-1201と称される抗擦過性ハードワックスインキ添加剤製品を販売しており、該製品はフェノール樹脂、ある種のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)および石油を含有している。PTFEを含有する市販の抗擦過添加剤は、過去に、少量のポリアルファオレフィンを含有するものとしても販売されていた。これらの商品全ては、35%以上のPTFEを含有しているものと考えられている。
【0013】
インキ添加剤について記載している従来技術の特許は数多くある。米国特許第5,024,700号は、トリエタノールアミンをインキ添加剤として使用することを記載している。トリエタノールアミンは、他の性質の中でも、特に油基材および樹脂基材のインキ組成物の擦過抵抗性を向上させると記載されている。
【0014】
米国特許第5,158,606号は、C〜C40の油を含有するビヒクルに顔料を分散させた分散物と該分散物中に乳化させたポリマーラテックスとを有する、高い擦過抵抗性を有する印刷インキ組成物を記載している。この特許は、さらに、コストが非常に重要ではない場合は、油/ポリマーラテックスインキ組成物にPTFEワックスとワセリンとを添加することができるという開示をしている。
【0015】
米国特許第3,843,570号は、樹脂を形成することのできる単量体を重合することによって得られたPTFEを有する多孔性の材料を記載しており、この材料がインキと共に使用するのに適していることを開示している。
【0016】
米国特許第5,591,796号は、約40〜70重量%のポリテトラフルオロエチレンとポリアルファオレフィンとの混合物を含有する、ポンプで扱うことのできる抗擦過/滑添加剤を開示している。米国特許第5,749,949号は、60重量%程度までのポリテトラフルオロエチレンと約25〜45重量%の医薬品グレードのワセリンとの混合物を含有する抗擦過/滑添加剤を開示している。本発明の譲受人によって所有されている米国特許第5,591,796号および第5,749,949号は、この参照によってその全文を本願開示中に取り入れる。
【0017】
PTFEのコストが増え続け、入手がどんどん難しくなることから、何年にも亘って、インキ製造会社は、PTFEの使用が非常に少量でありながら、多量のPTFEを含有する製品と実質的に同じ性質を与える抗擦過添加剤を求めてきた。今までのところ、このような探求は十分に成功していない。
【0018】
したがって、本発明の目的は、より少量のPTFEを使用し、現存の添加剤に勝るとも劣らない擦傷および擦過抵抗性を有する抗擦過インキ添加剤を提供することである。より少量のPTFEを含有する抗擦過添加剤を輸送する際に実現される重要な利点および経費節減と共に、このような製造物には樹脂および溶媒が殆どないという長所が追加されている。
【0019】
本発明のより具体的な目的は、優れて効率のよい方法でインキの性能を向上させるのに有用な、低PTFE含有の滑性、抗擦過性および抗傷性添加剤を提供することである。本発明の添加剤は、添加剤が使用されるインキ調合物において、優れた光沢および分解性を維持する。
【0020】
【発明の詳細な記述】
本発明のインキ調合物用抗擦過添加剤は、(a) 1〜30重量%の焼結されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE);(b) 40〜70重量%の一種以上のワセリン;(c) 10〜30重量%の、融点が87.8 ℃( 190 F より高い一種以上のマイクロクリスタリンワックス;および(4) 任意成分としてアルキド樹脂を含有する混合物である。
【0021】
本発明は、インキに対して約1〜20重量%、好ましくは約5〜10重量%、より好ましくは7〜8重量%の上記添加剤組成物がインキ中に存在するインキ組成物も含む。
【0022】
少量の焼結したPTFE、特定の型のマイクロクリスタリンワックス、および好ましくは医薬品グレードのワセリンの組み合わせによって、インキ中に分散したときに、優れた滑性、擦過抵抗性、低曇性および擦傷抵抗性などの相乗的性質を有する、経費効率のよい添加剤が得られる。さらに、使用される非常に高価なPTFEの量は、PTFEを含有する公知の抗擦過インキ添加剤に比べて驚くほど大幅に低減され(例えば、50〜75%の低減)、これによって、かなりの経費節減がなされる。
【0023】
本発明に使用することができる好適な形態のPTFEは、高分子量型のもの(例えば、平均分子量が4,000万程度に高いもの)で、予め磨砕されて粉末状になっている。
【0024】
使用されるPTFEは、製造中または製造後に焼結されなければならない。この焼結は、その融点よりもわずかに低い温度またはわずかに高い温度でなされ、PTFEが凝集するようにする。このような焼結は、インキ用添加剤としてのPTFEの密度および強度を高める。焼結には熱と圧力とが必須であるが、PTFEの表面積の低下が、本発明で望まれる結果を達成するのに、恐らく、より重要である。
【0025】
本発明に好ましい型のポリテトラフルオロエチレンは、加圧下で所望の形状に予備整形され、次いで、大気圧において、オーブン中で約700゜F〜約750゜Fの範囲の温度で焼結される。本発明に使用することのできる、他の型のPTFEは加圧下で予備整形され、次いで、やはり加圧下で、通常、約600゜F〜約750゜Fの範囲の温度で焼結することができる。焼結されたPTFEは、添加剤の重量に基づいて、約1〜30重量%、好ましくは約5〜20重量%、最も好ましくは約15〜17.5重量%の量で添加剤中に存在する。
【0026】
本発明に使用することのできる、多くの型の焼結PTFE粉末は、粒子サイズが小さくて粒子が滑らかではなく形状も一定していないことから、粒子状であるとされることも多い。
【0027】
本発明においては、粉末状の、焼結されて照射されたPTFEが好ましい。焼結したPTFEへの照射は、PTFEを超微粉砕化して本発明に使用可能な粉末形状にするのを容易にするので、通常、好ましく行われる。しかしながら、未焼結のPTFEに照射したものからも超微粉砕化したPTFEを製造することができる。米国特許第4,036,718号を参照されたい。「照射」という用語をPTFEに関して使用する場合、可視光の波長よりも短い波長に曝すことと定義され、そのような波長を有するものとしては、α線、β線、γ線、X線、電子線、紫外(UV)線、中性子線、陽子線などを含む。本発明に特に好ましいのは、初めて照射された焼結体グレードのものか、それに類する再処理グレードのものである。特に有用な照射された焼結PTFEとしては、初めて照射された粒子状製造物を挙げることができる。
【0028】
焼結したPTFEを超微粉砕化して粒子径を約2〜20ミクロンにするのが好ましい。平均粒子径が約2〜約10ミクロンである焼結PTFEがより好ましく、2〜5ミクロン(しかも、10ミクロンより大きい粒子が1%未満である)であると最も好ましい。超微粉砕化は、微粉砕および磨砕を含む様々な技術によって行うことができる。
【0029】
平均および中央粒子サイズは、メッシュおよびスクリーン試験によって決定することができる。最終的に分割されたPTFEを扱う際に使用される、他のより正確な試験によっても決定することができる。例えば、米国特許第3,983,200号および第4,036,718号に記載されている試験を参照されたい。
【0030】
初めて使用されるPTFEと共に、オフスペシフィケーション(off-specification)の焼結PTFEも再使用または再加工された焼結PTFEも、本発明に使用することのできる製造物を作るのに利用することができる。様々な型のPTFEの混合物も使用することができる。本発明に使用することのできる最も好ましいPTFEは、焼結され、照射された粒子タイプの製造物であって、平均粒子サイズ約2.5ミクロンにまで超微粉砕化されているものである。
【0031】
本発明に使用することのできる種類のPTFEは、通常、様々な会社から特別注文品として得ることができる。そのような会社としては、デュポン(DuPont)、ロイスカンパニー(Royce Company)、インペリアル・ケミカルズ・インターナショナル株式会社(ICI, Imperial Chemicals International, Ltd.)、ヘシュット(ドイツ、Hoescht)、クレイ・バレー株式会社(Cray Valley, Ltd.)、ノース・アメリカン・フルオロポリマー(North American Fluorpolymer)、シャムロック/エム・ピー会社(Shamrock/MP Company)、オーシモント(Ausimont)、ダイキン(Daikin)、ピー・ティー・ケー・インターナショナル株式会社(PTK International Limited)などを挙げることができる。好ましい態様においては、本発明で使用される焼結PTFEはSST-4SO(ケミカルアブストラクト 9002-84-0)であり、ニュージャージーのシャムロック・テクノロジー株式会社(Shamrock Technologies, Inc.)から入手することができる。
【0032】
本発明の添加剤を製造するための第二要素はワセリンであり、好ましくは医薬品グレードのワセリンである。これは、研究室グレードのワセリンとも呼ばれる。ワセリンは、原油から得られる軟膏状の粘度の塊であり、化学的には白鉱油に関連する。常温で液体である炭化水素が主成分である白鉱油と対照的に、ワセリンは固体の炭化水素と液体の炭化水素との混合物であることが最も多い。
【0033】
ワセリンは、一般的に、パラフィン基材および混合物基材の原油から得ることができる。使用される石油の型、所望のワセリンのグレード、および各製油所の一般的なプログラムに応じて製造方法は様々である。大部分のペトロラタム(グレードの低いワセリン)はかなり緩いペトロラタムであり、油分の多い低グレードのものである。この型および他の型の粗ペトロラタムは、米国薬局方(USP)およびFDA純度基準を満たすように、高圧/高温水素化法によって精製される。
【0034】
医薬品グレードのワセリンのUSP仕様書は、一般に、以下のことを要求している。
1.色−黄色がかった色〜淡い琥珀色
2.比重−60℃で0.815〜0.880
3.融点−38℃〜60℃
4.稠度−100〜275
5.燃焼時の残量−最大0.10%
6.有機酸−なし
7.不揮発性油、脂肪およびロジン−なし。
【0035】
所定の目的のために適切なグレードのワセリンを選択して仕様書を確立するのを助けるために、アメリカン・ソサイエティー・フォー・テスティング・マテリアルズ(ASTM)は多くの試験方法を開発してきた。以下の試験方法は標準として工業界全体で広く受け入れられている。
【0036】
A.融点
ワセリンの凝固点を測定するのにASTM D 938が使用される。凝固点とは、冷却してゆく間に材料が固化する温度のことである。
【0037】
USP融点法(ASTM D-127)はワセリンの滴下融点を測定するのに使用される。この融点は、定められた条件下で加熱中に、温度計からワセリンの最初の一滴が落ちたときの温度で決定される。
【0038】
B.稠度(浸透)
ASTM D 937はワセリンの粘度(硬さ、または柔らかさ)を測定する。数値が低いほどワセリンが硬いことを意味する。
【0039】
C.粘度
ASTM D 445およびASTM D 2161は、それぞれセンチストークスで動粘度を測定する方法、およびセイボルト・ユニバーサル秒(SUS)でセイボルト粘度への転換を測定する方法である。両方法は、通常、210゜Fまたは100℃で、溶融状体のワセリンの易動度を測定する。
【0040】
D.引火点
ASTM D 92はクリーブランド解放式引火点試験機による石油製品の引火点及び燃焼点を測定する方法である。
【0041】
この発明に特に好ましいワセリンは、ウィトコ・ケミカル・カンパニー(Witco Chemical Company)のプロトペット(Protopet、登録商標)、パーフェクタ(Perfecta、登録商標)、フォノライン(Fonoline、登録商標)グレードのものである。ウィトコ・プロペット(登録商標)1S(ケミカルアブストラクトCAS#8009-03-8)は以下のような規格値および性質を有している。
【0042】
【表1】
Figure 0003897569
【0043】
プロトペット(登録商標)1Sは、USP 23の基準と21 CFR 172.880によるFDAの基準をと満たすワセリンである。本発明の好ましい態様は、添加剤の重量に基づいて約40〜70重量%の医薬品基準のワセリンを含有しており、好ましい範囲は50〜70重量%である。
【0044】
最後の化学薬品、要素(c)は、特定のマイクロクリスタリンワックスである。このようなマイクロクリスタリンワックスは、添加剤の重量に基づいて、約10〜30重量%、好ましくは約10〜20重量%、最も好ましくは12.5重量%の量で添加剤中に存在しているのがよい。
【0045】
背景知識として、マイクロクリスタリンワックス類は蒸留塔のタンク底部または原油の蒸留残さから得られる。これらのワックスは約100〜1500の範囲の分子量を有し、約165゜F〜220゜Fの範囲の融点を有している。
【0046】
この発明の目的を達成するためには、溶融温度が190゜Fよりも高いワックスが臨界的な基準であることが発見されており、好ましい態様においては溶融温度が190゜F〜200゜Fであるワックスを使用する。化学的に、この発明で使用されるマイクロクリスタリンワックスはパラフィンよりもはるかに分岐が多く、結晶サイズははるかに小さい。低コスト(PTFEに比べて)であり、融点が高いことに起因していると思われる、驚くほど優れた固有滑度を有しているので、マイクロクリスタリンワックスは本発明のインキ添加剤に使用することができる。
【0047】
好適なマイクロクリスタリンワックスは、パラフィン系、イソパラフィン系、分岐パラフィン系およびシクロパラフィン系で作られている。これらのワックスは、容易に配合することができる。
【0048】
特に好ましいマイクロクリスタリンワックスは、ペンシルバニアのハネウェル・スペシャルティー・ケミカルズ(Honeywell Specialty Chemicals)から入手することのできるアスター・ワックス(Astor Wax)9508(ケミカルアブストラクトCAS# 64742-42-3)である。このマイクロクリスタリンワックスは、ASTM D 721に従って測定して、約1.8重量%の油量を有しており、ASTM D 127に従って測定して約192〜194゜Fの融点を有している。高い融点と高い純度(即ち、低油量)とを有するこのようなマイクロクリスタリンワックスは、驚くほど改良された取り扱い性とインキへの分散性とを与える。
【0049】
本発明の抗擦過インキ添加剤において、アルキド樹脂は任意の成分である。アルキド樹脂は、添加剤の重量に基づいて約20重量%程度までインキ組成物中に存在させることができる(存在させなくてもよい)。このようなアルキド樹脂は、好ましくは大豆樹脂である。好ましいアルキド樹脂はアルキド4630(Alkyd 4360)(ケミカルアブストラクト CAS# 66071-86-1)であり、ニュージャージーのディージェン・カンパニー(Degen Company)から入手することのできる大豆油基材のイソフタルアルキドである。
【0050】
本発明の組成物に任意に添加することのできる、更なる薬剤の例としては、狭留分石油(narrow cut petroleum oils)、可溶炭化水素、または、フェノール樹脂を挙げることができる。例えば、添加剤は、約5〜15重量%の石油および約5〜15重量%の炭化水素またはフェノール樹脂を含有してもよい。
【0051】
好ましい型の石油としては、マジー・オイル(Magie Oils)、即ち、ペンゾイル(Pennzoil)の一部門であるマジー・ブラザーズ株式会社(Magie Brothers Inc.)によって製造販売されている狭留分油(narrow-cut oils)の印刷インキ用油性溶媒である。マジー・オイル47およびマジー・オイル470と称される市販品が特に好ましい。また、トータル・ペトローリアム(Total Petroleum)から販売されているアムプリント231(Amprint 231)と称される油、およびエクソン社(Exxon Corp.)から販売されている類似の系列の油製品も使用することができる。ペンシルバニア州ピッツバーグのヌヴィル・ケミカル・カンパニー(Neville Chemical Company)によって供給されており、ネヴケム110(Nevchem 110)およびネヴケム140(Nevchem 140)と称される炭化水素樹脂は、本発明で使用することのできる非常に種々様々な炭化水素樹脂の代表例である。また、(1) フロリダ州パナマ・シティー(Panama City)のアリゾナ・ケミカル(Arizona Chemical)によって販売されている樹脂、特に、ベータブレン255(Betabrene 255)を含む、ベータブレン(Betabrene, 登録商標)およびベータライト(Betalite, 登録商標)、並びに(2) ノースカロライナ州のレシノール社(Resinall Corporation)によって販売されている樹脂、特に、レシノール(Resinall, 登録商標)737、747、771および784、も使用することができる。フェノール樹脂はアリゾナ・ケミカルによって販売されており、ベッカタイト(Beckatite, 登録商標)112、115、6004および6006を挙げることができる。
【0052】
本発明の組成物は、メディアミル(media mills)、パグミル(pug mills)および櫂形攪拌機を含む、非常に多種の工業用混合機を用いて調製することができる。同様に使用することのできる他の型のものは、この技術分野においてよく知られている。出発化学薬品はいかなる順序で添加してもよいが、ワセリンを最初に添加し、次にPTFEを添加するのが好ましい方法である。そして、得られた混合物を、十分な分散を達成するのに必要な時間、混合、剪断または攪拌する。混合等の時間は、2、3分以内から数時間に亘る場合もある。
【0053】
多くの態様において、結果として得られる混合製造物は、滑らかな軽いクリーム程度の稠度を有し、ポンプで扱うことができる。混合物は、色もクリーム状の白であることが多く、PTFEの量が少ないこともあって、見た目はざらざらする感触がない。
【0054】
「注ぐことができる」および「ポンプで扱うことができる」は、正確な定義には馴染まない用語である。本発明において、これらの用語は次のような実用的な定義が与えられている。(a) 「注ぐことができる」とは、一般に、#4のスピンドルを使用したブルックフィールドRVTを用いて、50 rpmで測定した場合に、製造物が77゜Fで15,000 cps以下の粘度を示すことを意味する。注ぐことのできる製造物の例としては、蜂蜜、糖蜜および皿洗い機用液体などを挙げることができる。
【0055】
(b) 「ポンプで扱うことのできる」製造物は、ポンプの剪断速度で15,000 cps以下の粘度を示す。ポンプで扱うことのできる製造物は、注ぐことのできる製造物も含む。ポンプで扱うことのできる製造物は、静的条件下で注ぐことができない場合(75,000 cpsまで)もあるが、その剪断減粘性反応故に、剪断下では15,000 cps以下に粘度が低下する。ポンプで扱うことのできる製造物の例としては、建築用ペーストおよびグラウト、マヨネーズタイプの物質、並びに軟質の靴墨を挙げることができる。
【0056】
本発明によると、目下のところ好ましい態様は、単純な方法で製造されたインキ添加剤である。ワセリンを約140゜Fに加熱して注ぐことが可能であるようにし、容器中に入れる。任意でアルキド樹脂を添加する。容器を加熱して攪拌する。約165゜Fで、焼結したPTFEをゆっくりと容器に添加する。焼結したPTFEが確実に分散する15〜30分後に、マイクロクリスタリンワックスを容器に添加する。次いで、容器を約212゜Fに加熱してその温度に約30分間保ち、ワックスを完全に溶解させる。そして、容器を冷却する。約165〜175゜Fでインキ添加剤生成物を取り出す。
【0057】
抗擦過性組成物は、中速および高速分散装置、並びに類似のそのような装置などの従来の混合装置を用いて、容易にインキ組成物中に混入することができる。多くの現存する市販品に比べて、有効な分散液を得るのに要する時間ははるかに短く、必要な剪断の力ははるかに少ない。本発明の添加剤は、雑誌の表紙や、通常、雑誌に挟み込まれているカラー広告に使用される高品質インキに特に有用である。
【0058】
本発明のインキ添加剤、特に、ポンプで扱うことのできる添加剤は、たいていのインキ液中に容易に分散することができる。適切な混合機を用いて、インキのマスターバッチにインキ添加剤を、直接、添加することができる。
【0059】
本発明を用いた印刷インキ組成物は、例えば、インキビヒクルに対する顔料の分散液を調製し、添加剤を添加するという、従来の技術によって調製することができる。本発明のインキ組成物を調製する好適な一方法は次の通りである。(a) インキ顔料をビヒクルに分散させて、インキ調合品を形成する。そして、(b) 得られたインキ調合品に本発明の添加剤を分散させ、短時間、インキ調合物を混合する。
【0060】
好ましい印刷インキ組成物は以下のようにして作ることができる。(a) 70〜90重量%のインキビヒクルに5〜30重量%のインキ顔料を分散させた分散液を調製し、(b) インキ組成物の重量に基づいて5〜10重量%で本発明の添加剤を添加して上記分散液に混入する。
【0061】
本発明の抗擦過/滑組成物は、抗擦傷性および滑性により優れるなど、大幅に向上した抗擦過性を、現在の添加剤に比べて非常に多種多様の印刷インキに与えることができる。この添加剤はポンプで扱うことができるので、精密な加熱混合機を必要としないことも多く、結果として、添加剤をより安価に使用することができる。
【0062】
【実施例】
以下の例は、インキ調合品および添加剤の技術に通じた当業者が本発明を実施するのを助けるために設計されたものであり、本発明の広い範囲を限定することを意図するものではない。本発明の本質および精神から離れることなく、様々な修正および変更を加えることができる。以下の例で使用される様々な化学薬品は、本発明の組成物以外、市販の材料である。
【0063】
(例)
サン・プリンティング・インキ・カンパニー(Sun Printing Ink Company)によって製造されている2種の印刷インキ調合品を用いて試験された、様々な添加剤の結果を示す。2種のインキの内、1つはシート供給インキ調合物であり、第二のものはヒートセット調合物である。試験は、この業界ではよく知られている、サザーランド(Sutherland)擦過試験であった。24時間の試験時間を最初に用い、より長い48時間の試験時間を次に用いた。3種類の添加剤を以下のように調合した。
【0064】
【表2】
Figure 0003897569
【0065】
添加剤を含有するインキのサザーランド擦過試験結果用の評価システムが使用された。「0」という評価が、ひどい傷の付いている抗擦過添加剤を全く含有しないインキについて与えられ、「6」という評価が、PTFE含有量の高い対照について与えられ、本発明の両添加物の試験についてはより高い評価度数が得られた。「10」という数値は、インキの擦れ落ちが全くないパーフェクトな試験結果に与えられることに留意されたい。
【0066】
シート供給インキの場合は、評価値「0」と「6」(それぞれブランクと対照との評価)とが、インキの引落しから24時間の熟成後の擦り、48時間の熟成後の擦りに対して測定されて、評価システムがさらに改良された。実験の試料についても同じ評価システムが採用された。
【0067】
以下に、得られた結果を示す。
【0068】
【表3】
Figure 0003897569
【0069】
(検討)
これらの結果から、PTFE含有量が低減された本発明実験の添加剤が、PTFEを45%含有する対照の添加剤と比べて、少なくとも同等、いくつかの分野においては対照より優れた抗摩擦落ち性能を提供することが明らかである。
【0070】
前記背景、記述および例は、単に発明を説明するために述べてきたのであって、本発明を限定することを意図していない。本発明の精神や内容を取り入れた、開示された態様の数多くの修正や単純な変更が当業者によってなされる場合があるであろうから、本発明は、添付の請求項の範囲、その同等物およびその自明な変更の全てを含むものと解釈されるべきである。

Claims (18)

  1. (a) 1〜30重量%の焼結したポリテトラフルオロエチレン;
    (b) 40〜70重量%の、一種以上の医薬品グレードのワセリン;および
    (c) 10〜30重量%の、融点が87.8 ℃( 190 F よりも高い一種以上のマイクロクリスタリンワックス
    を含有することを特徴とするインキ調合物用抗擦過添加剤。
  2. 前記焼結したポリテトラフルオロエチレンが添加剤中に15〜17.5重量%の量で存在することを特徴とする請求項1に記載の添加剤。
  3. さらにアルキド樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の添加剤。
  4. 前記アルキド樹脂が大豆油基材のイソフタル樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の添加剤。
  5. 前記焼結したポリテトラフルオロエチレンが照射された焼結ポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の添加剤。
  6. 前記焼結されたポリテトラフルオロエチレンが2〜 10ミクロンの平均粒子径を有することを特徴とする請求項1に記載の添加剤。
  7. 前記少なくとも一種のワセリンが米国薬局方の基準に合致する医薬品グレードのワセリンであることを特徴とする請求項1に記載の添加剤。
  8. 前記マイクロクリスタリンワックスが1.8重量%の油分を有し、88.9 90 ℃( 192 194 F の融点を有することを特徴とする請求項1に記載の添加剤。
  9. 前記少なくとも一種のワセリンが、添加剤の50〜70重量%の量で存在していることを特徴とする請求項1に記載の添加剤。
  10. 前記マイクロクリスタリンワックスが、添加剤の10〜20重量%の量で存在していることを特徴とする請求項1に記載の添加剤。
  11. (a) 5〜20重量%の焼結したポリテトラフルオロエチレン;
    (b) 50〜70重量%の、一種以上の医薬品グレードのワセリン;および
    (c) 10〜30重量%の、融点が87.8 ℃( 190 F よりも高い一種以上のマイクロクリスタリンワックス
    を含有することを特徴とするインキ調合物用抗擦過添加剤。
  12. アルキド、石油、並びに炭化水素樹脂およびフェノール樹脂よりなる群から選択される樹脂をさらに有することを特徴とする請求項11に記載の抗擦過添加剤。
  13. 請求項1に記載の抗擦過添加剤を含有することを特徴とするインキ。
  14. 前記添加剤が、インキの重量を基準にして、1〜20重量%の量で存在することを特徴とする請求項13に記載のインキ。
  15. 前記インキが、ヒートセットインキ、紫外線硬化型インキ、シート供給インキ、ペーストインキおよびリソグラフィーインキよりなる群から選択されることを特徴とする請求項13に記載のインキ。
  16. a)少なくとも一種のワセリンを加熱し、
    b)加熱した前記少なくとも一種のワセリンを容器に入れ、
    c)前記少なくとも一種のワセリンを加熱攪拌し、
    d)焼結したポリテトラフルオロエチレンを前記容器に添加し、
    e)融点が87.8 ℃( 190 F より高いマイクロクリスタリンワックスを前記容器に添加し、
    f)容器を加熱して前記マイクロクリスタリンワックスを溶解し、
    g)容器を冷却し、
    h)得られたインキ添加剤を取り出すことを
    特徴とする抗擦過インキ添加剤の調製方法。
  17. 前記少なくとも一種のワセリンを73.9 ℃( 165 F の温度まで加熱することを特徴とする請求項16に記載の方法。
  18. 前記インキ添加剤の取り出しが73.9 79.4 ℃( 165 175 F の温度でなされることを特徴とする請求項16に記載の方法
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