JP3897416B2 - 粉末アルミ合金製シリンダーライナ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車、自動二輪車、スノーモービルおよび水上バイクなどに用いられる粉末アルミ合金製シリンダーライナに関するものであり、より特定的には、アルミ高圧鋳造によりエンジンブロック本体にシリンダーライナを鋳込む場合に適したシリンダーライナ用粉末アルミ合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
潤滑油中で摩擦摺動する自動車用部品あるいは自動二輪用部品の軽量化は、フリクション低減や駆動トルク低減などによる燃費改善効果が大きく期待できることから、コンロッドやピストンなどの摺動部分のアルミ軽量化は極めて有効である。
【0003】
しかしながら、稼働中に何らかの原因により潤滑油が摺動界面に十分存在しない状態に陥ると、アルミ部分は焼きつき現象あるいは凝着といった問題を生じる。たとえばピストンではそれ自身をアルミ合金にするとともに、相手材の内燃機関用シリンダーライナ材として、摺動表面にニッケル、クロム、鉄などの硬質めっきを施した鋳造アルミニウム合金の適用による焼きつき現象の抑制が検討された。
【0004】
しかし、素地を構成するアルミニウム合金の耐熱性が十分でないためにライナ材として使用に耐え得るものではなく、また、経済性の点においても問題があった。
【0005】
そこで、アルミニウム合金の耐摩耗性・耐熱性を向上すべく、急冷凝固法により得られる微細組織を有する粉末アルミ合金を用いることで、これらの特性を改善し、シリンダーライナ材として実用化できる可能性が見出された。たとえば、特公平6−21309号公報、特開平1−255641号公報に開示された技術によれば、特殊な合金組成を有するアルミニウム合金粉末に、微細で球状に近いアルミナ硬質粒子と潤滑成分としての黒鉛粉末を混合・添加し、熱間押出し法により固化し得た内燃機関用シリンダーライナ材を提案している。
【0006】
また、特開平1−271053号公報に開示された技術においては、粉末アルミ合金製シリンダーライナをアルミ合金製エンジンブロック本体に鋳込む方法が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、アルミ高圧鋳造法によりアルミ合金製エンジンブロック本体にこのようなアルミ合金製シリンダーライナを鋳込む場合、比較的短時間で鋳込みが終了するために、シリンダーライナ外周表面部はエンジンブロック本体と溶着・結合しない。この状態でエンジンブロックを常温まで冷却すると、シリンダーライナとエンジンブロックとの熱膨張率の関係により両者の接触界面に隙間が生じる。その結果、シリンダーライナがエンジンブロック本体から抜け落ちるといった問題がある。
【0008】
これに対し、従来の技術では、シリンダーライナの外周表面に溝加工等による抜け落ち防止加工を施している。しかしながら、この抜け落ち防止加工は、シリンダーライナの厚肉化が余儀なくされ、シリンダーライナのコストアップや、エンジンブロック本体の大型化・重量増加といった問題を招いている。
【0009】
したがって、この発明の目的は、溶製アルミ合金製エンジンブロック本体に、シリンダーライナを鋳込んだ後においても、シリンダーライナとエンジンブロック本体との界面に隙間を生じることなく、また抜け落ち防止のための加工を必要とせずに、さらに実際の使用に耐え得るような薄肉・軽量の粉末アルミ合金製シリンダーライナを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明に基づいた請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナにおいては、溶製アルミ合金製エンジンブロックに鋳込まれる粉末アルミ合金製シリンダーライナであって、上記シリンダーライナは、熱間押出し法で円筒形状としたもので、その粉末アルミ合金は、アルミ合金全体に対して容積率で1%以上15%以下の空孔率を有し、窒化アルミニウムを重量基準で0.5%以上15%以下含有し、残部がアルミニウムのAlN分散型粉末アルミ合金であり、上記AlN分散型粉末アルミ合金は、繊維状あるいは樹枝状にAlNが層状の被膜としてアルミ合金中生成・分散している。また、上記粉末アルミ合金製シリンダーライナの熱膨張率をαC、上記溶製アルミ合金製エンジンブロックの熱膨張率をαBとするとき、両者の関係が14×10-6/℃≦αC≦20×10-6/℃であり、かつ、1×10-6/℃≦αB−αC≦8×10-6/℃を満足する。
【0012】
以上、請求項1に記載の発明によれば、シリンダーライナとエンジンブロックの熱膨張率の関係により、両者の接触界面に隙間が生じることがない。その結果、エンジンブロックからのシリンダーライナの抜け落ちを防止することが可能となる。また、上記シリンダーライナの粉末アルミ合金は、窒化アルミニウムを重量基準で0.5%以上15%以下含有し、残部がアルミニウムのAlN分散型粉末アルミ合金である。これにより、十分な耐摩耗性および被切削性を得ることが可能となる。また、上記シリンダーライナの粉末アルミ合金は、アルミ合金全体に対して容積率で1%以上15%以下の空孔率を有している。これにより、ピストンやピストンリングと接触するシリンダーライナの摺動表面に空孔が分散することで、その空孔部分が摺動表面に対して凹状ピットを形成し、その部分に潤滑油が保持されて、ピストン等との摺動界面での油膜切れを防ぎ、優れた耐焼きつき性および耐摩耗性を実現させることが可能となる。さらに、上記AlN分散型粉末アルミ合金は、繊維状あるいは樹枝状にAlNが層状の被膜としてアルミ合金中生成・分散している。これにより、AlN粒子はアルミ合金素地との接触界面に隙間はなく、アルミ素地と結合した構造を有することで強固に密着させることができ、アルミ合金の耐熱性、耐摩耗性および耐焼きつき性を大幅に向上させることが可能となる。その結果、高圧鋳造によりアルミ合金製エンジンブロック本体に鋳込んだ場合でも、シリンダーライナとして十分使用することができる。
【0013】
次に、請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナであって、上記粉末アルミ合金製シリンダーライナは、上記溶製アルミ合金製エンジンブロックにアルミ高圧鋳造法により鋳込まれる。
【0016】
次に、請求項3に記載の発明においては、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナであって、上記シリンダーライナの粉末アルミ合金は、窒素を重量基準で0.1%以上5%以下含有し、残部がアルミニウムであり、かつ、上記窒素は上記アルミニウムと結合した構造を有するAlN分散型粉末アルミ合金である。
【0017】
これにより、適正範囲量のAlNを生成させることが可能となり、その結果耐熱性、耐摩耗性、耐焼きつき性および被削性に優れた粉末アルミ合金製シリンダーライナを得ることが可能となる。
【0018】
次に、請求項4に記載の発明においては、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナであって、上記シリンダーライナの粉末アルミ合金は、窒化アルミニウムを重量基準で0.5%以上15%以下含有し、Mgを重量基準で0.05%以上含有し、残部がアルミニウムであるAlN分散型粉末アルミ合金である。
【0019】
次に、請求項5記載の発明においては、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナであって、上記シリンダーライナの粉末アルミ合金は、窒素を重量基準で0.1%以上5%以下含有し、Mgを重量基準で0.05%以上の含有し、残部がアルミニウムであり、かつ、上記窒素はアルミニウムと結合した構造を有するAlN分散型粉末アルミ合金であるこれにより、確実に粉末アルミ合金中にAlNを生成・分散させることが可能となり、優れたAlN分散型粉末アルミ合金を形成することが可能となる。
【0020】
次に、請求項6に記載の発明においては、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナであって、上記シリンダーライナの粉末アルミ合金は、繊維状に一方向に成長した組織構造をもつ窒化アルミニウムを含み、かつ、その成長方向を厚みとした場合に上記窒化アルミニウムは3μm以下の層状粒子形状を有している。
【0021】
このように、厚みが3μm以下であることによって、被切削性を低下させることなく、従来用いられているAlN粒子に比べて優れた摺動性を得ることが可能となる。
【0022】
次に、請求項7に記載の発明においては、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナであって、上記シリンダーライナの粉末アルミ合金は、窒化アルミニウムを含み、この窒化アルミニウムとアルミ合金素地のマトリックスであるアルミニウムとの境に隙間がない結合界面を有している。
【0024】
さらに、請求項8記載の発明においては、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナであって、上記空孔率は、アルミ合金全体に対して容積率で3%以上10%以下である。
【0025】
これにより、ピストンやピストンリングと接触するシリンダーライナの摺動表面に空孔が分散することで、その空孔部分が摺動表面に対して凹状ピットを形成し、その部分に潤滑油が保持されて、ピストン等との摺動界面での油膜切れを防ぎ、優れた耐焼きつき性および耐摩耗性を実現させることが可能となる。
【0026】
次に、請求項9に記載の発明においては、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナであって、上記シリンダーライナの粉末アルミ合金は、黒鉛、MoS2 、WS2 、CaFからなるグループから選択される少なくとも1種以上の潤滑成分を重量基準で5%以下含有している。
【0027】
また、請求項10に記載の発明においては、請求項9に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナであって、上記潤滑成分の含有量は、重量基準で1%以上3%以下である。
【0028】
このように、黒鉛、MoS2 、WS2 、CaF等の固形潤滑粉末はそれ自身の潤滑性能およびシリンダーライナの摺動面に分散して、上述した空孔と同様に、凹状の油溜まりを形成することで、ピストン等との摺動界面での油膜切れを防止し、優れた耐焼きつき性および耐摩耗性を実現させることが可能となる。
【0029】
次に、請求項11に記載の発明においては、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナであって、上記シリンダーライナの粉末アルミ合金は、Si、Fe、Ni、Cr、Ti、Mn、Zrからなるグループから選択される少なくとも1種以上の元素を含有し、かつ、その含有量が25重量%以下である。
【0030】
これにより、シリンダーライナ用粉末アルミ合金の耐摩耗性、耐焼きつき性、強度、硬度および剛性等の機械的特性を向上させることが可能となる。
【0031】
次に、請求項12に記載の発明においては、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナであって、上記シリンダーライナ用粉末アルミ合金は、TiO2 、ZrO2 、SiO2 、MgO2 、Al2 O3 、Cr2 O3からなるグループから選択される少なくとも1種以上の酸化物球状粒子を5重量%以下含有している。
【0032】
これにより、硬質粒子が、窒化アルミニウムやSiと同様、シリンダーライナ用粉末アルミ合金の素地中に分散し、耐摩耗性、耐焼きつき性を向上させることが可能となる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に基づいた粉末アルミ合金製シリンダーライナについて詳細に説明する。
【0034】
(1) シリンダーライナとエンジンブロックの熱膨張率の関係とその作用効果について
アルミ合金製シリンダーライナをアルミ低圧鋳造によりエンジンブロック本体に鋳込む場合、500℃を超えるような高温下で長時間アルミ合金製シリンダーライナの外周部がアルミ溶湯と接触する。そのためにアルミ合金製シリンダーライナとエンジンブロック本体との界面が溶着接合する。その結果、両者の間には、良好な結合界面が得られ、エンジンブロックからアルミ合金製シリンダーライナの抜け落ちといった問題は生じない。
【0035】
これに対して、アルミ高圧鋳造によりアルミ合金製エンジンブロック本体にこのようなアルミ合金製シリンダーライナを鋳込む場合、比較的短時間で鋳込みが終了する。そのため、アルミ合金製シリンダーライナの外周表面部は、エンジンブロック本体と溶着接合せず、その結果両者の間には良好な結合界面が得られない。その結果、従来のシリンダーライナは、エンジンブロックから抜け落ちるといった問題が生じていた。
【0036】
ここで、本願発明者らは、アルミ合金製シリンダーライナとエンジンブロックとの熱膨張率の関係により両者の接触界面に隙間が生じることなく、エンジンブロックからのシリンダーライナの抜け落ちを防止することのできる技術を発明した。
【0037】
つまり、アルミ高圧鋳造によりシリンダーライナをエンジンブロックに鋳込んだ状態で、常温までエンジンブロック本体を冷却するとき、シリンダーライナ用アルミ合金の熱膨張率は、エンジンブロック本体のアルミ合金の熱膨張率に比べてある程度小さい場合、エンジンブロックはシリンダーライナに比べてより収縮することで、シリンダーライナとエンジンブロックとの接合界面に圧縮の残留応力が作用する。
【0038】
この残留応力により、シリンダーライナはエンジンブロックに拘束された状態となる。その結果、両者の接触界面に隙間が生じることなく、シリンダーライナがエンジンブロック本体から抜け落ちるといった問題を回避することができる。
【0039】
一方、エンジンが稼働する際に発生する熱によりシリンダーライナに比べてよりエンジンブロックが膨張して両者の接触界面に引張りの熱応力が作用する。その結果、上記の圧縮残留応力が低下して、シリンダーライナの抜け落ちの問題が生じる可能性がある。また、エンジンブロックからの圧縮の残留応力が過度に大きいと、薄肉のシリンダーライナでは剛性が十分でないために、シリンダーライナが変形して真円度が得られない場合がある。
【0040】
そこで、本願発明者らは、これらの問題を考慮して、シリンダーライナとエンジンブロック本体との熱膨張率の相関を適正化した結果、
αB −αC ≧1×10-6/℃かつ、αB −αC ≦8×10-6/℃
αB :エンジンブロック用アルミ合金の熱膨張率
αC :シリンダーライナ用アルミ合金の熱膨張率
を満足する場合に限り、シリンダーライナの変形やエンジン稼働時のシリンダーライナの抜け落ち等の問題が生じることなく、シリンダーライナの薄肉化が実現できることを見出した。
【0041】
つまり、αB −αC <1×10-6/℃の場合は、シリンダーライナとエンジンブロックとの接触界面における圧縮応力は十分大きくないため、シリンダーライナに対してエンジンブロックからの十分な拘束力が得られず、常温あるいはエンジン稼働時の高温下において両者の接触界面に隙間が発生してシリンダーライナの抜け落ちが生じる。
【0042】
また、αB −αC >8×10-6/℃は、上記のとおりエンジンブロックからの圧縮の残留応力が大きくなるために、シリンダーライナに対する拘束力は十分に得られるが、肉厚(外径と内径の差)が小さいシリンダーライナでは剛性が小さくなるために、過剰な圧縮応力が作用するとシリンダーライナが径方向に変形して真円度が得られなくなる。したがって、シリンダーライナの薄肉化が妨げられるといった問題が生じる。
【0043】
ただし、このときのシリンダーライナに用いる粉末アルミ合金の熱膨張率に関する具体的な値として、αC は14×10-6/℃〜20×10-6/℃であることが望ましい。
【0044】
一般に、エンジンブロックに用いられる溶製アルミ合金の熱膨張率αB は18×10-6/℃〜22×10-6/℃程度であるため、上述したシリンダーライナとエンジンブロックとの熱膨張率の相関(1×10-6/℃≦αB −αC ≦8×10-6/℃)を満足するためには、シリンダーライナの熱膨張率αC は14×10-6/℃以上であることが望ましい。
【0045】
また、後述するように、シリンダーライナに要求される重要特性の1つである耐摩耗性と強い相関のある窒化アルミニウムとSiに関して、その合計含有量は5%以上であることが望ましく、その場合の粉末アルミ合金の熱膨張率は20×10-6/℃以下となる。よって、エンジンブロックとの鋳込み性ならびにシリンダーライナの耐摩耗特性を両立する場合のシリンダーライナ用粉末アルミ合金の熱膨張率αC は、14×10-6/℃〜20×10-6/℃であることが望ましい。
【0046】
一方、本願発明者らは、シリンダーライナを構成する粉末アルミ合金に含まれる窒化アルミニウムとSiとの合計含有量について、上記の熱膨張率の適正範囲と優れた耐摩耗性を両立させるために必要な適正範囲を見出した。
【0047】
具体的には、粉末アルミ合金に含まれる窒化アルミニウムとSiの合計含有量は、粉末アルミ合金全体に対して重量基準で5%以上30%以下であり、より望ましくは7%以上20%以下である。
【0048】
ここで、窒化アルミニウムとSiとの合計含有量が5%未満の場合、シリンダーライナとして要求される耐摩耗性を有することが困難となる。一方、両者の合計含有量が30%を超えると、シリンダーライナの熱膨張率αC が14×10-6/℃よりも小さくなり、上記のような問題が生じる。
【0049】
特に被削性の観点からは両者の合計含有量は20%以下であることが望ましく、また、相手材のピストンやピストンリングとの摺動特性の観点からは合計含有量は7%以上であることがより望ましい。よって、本実施の形態においては、粉末アルミ合金中の窒化アルミニウムとSiの合計含有量は5%以上30%以下である。
【0050】
(2) AlN分散型粉末アルミ合金における窒化アルミニウムの特徴とその作用・効果
シリンダーライナはピストンやピストンリングなどの相手材と摺動することから高温での耐摩耗性・耐焼きつき性および相手攻撃性が要求される。本実施の形態におけるシリンダーライナに用いる粉末アルミ合金においては、耐熱性、耐摩耗性、耐焼きつき性および相手攻撃性を向上させる目的から、500℃の高温を超えても熱的に安定である窒化アルミニウム(AlN)をアルミ合金中に生成・分散させることにより、従来の粉末アルミ合金に比べて優れた耐熱性や摩擦摺動特性を有することを見出した。
【0051】
しかも、本実施の形態においては、従来の粉末冶金技術にあるようにAlNを粉末(粒子)としてアルミ合金粉末と混合して焼結アルミ合金中に添加・分散するのではなく、アルミ合金粉末中のアルミ成分と窒素ガスを反応させることでAlNをアルミ合金中に生成・分散させることが特徴である。
【0052】
つまり、従来の方法によれば、添加されたAlN粒子はアルミ合金素地との接触界面に隙間があり、このAlN粒子は素地中に機械的に拘束された状態であるために、耐熱性の改善効果が少なく、また、ピストンやピストンリングなどの相手材と摩擦・摺動する場合にAlN粒子が脱落して硬い摩耗粉となり、焼きつき現象やかじり現象といった問題を生じる。
【0053】
これに対して、本実施の形態によれば、上記のとおりAlNはアルミ合金粉末中のアルミと反応(以下、直接窒化反応と称す。)して生成することから、AlN粒子はアルミ合金素地との接触界面に隙間はなく、アルミ素地と結合した構造を有することで強固に密着する。その結果、アルミ合金の耐熱性、耐摩耗性および耐焼きつき性は大幅に向上する。したがって、本実施の形態における粉末アルミ合金は、高圧鋳造によりアルミ合金製エンジンブロック本体に鋳込んだ場合でも、シリンダーライナとして十分使用することができる。
【0054】
本実施の形態におけるシリンダーライナの具体的な製法としては、まず、油圧プレスや冷間静水圧プレス等によりアルミ合金粉末を型押し成形して圧粉体を作製する。この圧粉体を窒素ガス雰囲気中で加熱・焼結することにより得られたアルミ合金焼結体の旧粉末粒界に、窒化反応によるAlNを生成・分散させる。また、必要に応じて熱間押出し法や熱間鍛造法を施すことで焼結体の強度を向上することも有効である。
【0055】
このような製法により得られる本実施の形態における粉末アルミ合金において、適正なAlN生成量は粉末アルミ合金全体に対して重量基準で0.5%以上15%以下であり、耐摩耗性・被削性の観点からより好ましくは1%以上7%以下である。AlN生成分散量が0.5重量%未満の場合、十分な耐熱性・耐摩耗性が得られない。一方、AlN生成分散量が15%を超えても耐摩耗性は顕著に向上せず、かえって被削性の低下や焼結体の靱性の低下、あるいは焼結工程の長時間化といった経済性の問題が生じる。
【0056】
なお、上記の適正範囲量のAlNを生成させるためには、アルミ成分と反応するために必要な窒素量として重量基準で0.1%以上5%以下を粉末アルミ合金中に含有する。つまり窒素量が0.1%未満では0.5%以上のAlNを生成できず、また窒素量が5%を超えると15%を超えるAlNを生成することを本願発明者らは確認した。
【0057】
以上により、本実施の形態における粉末アルミ合金製シリンダーライナは、アルミ合金全体に対して重量基準で0.5%以上15%以下のAlNを、また0.1%以上5%以下の窒素を含有することで、耐熱性、耐摩耗性、耐焼きつき性および被削性に優れており、アルミ高圧鋳造によりアルミ合金製エンジンブロック本体に鋳込んだ状態でシリンダーライナとして使用することが可能となる。
【0058】
なお、上記のように直接窒化反応を進行させて粉末アルミ合金中にAlNを生成・分散させるためには、Mgを0.05%以上含有することが好ましい。Mgは事前にアルミ合金粉末中に含有させており、窒素ガス雰囲気中でアルミ圧粉体を加熱・焼結する際に粉末表面を覆う酸化アルミ被膜を還元反応により除去する効果を有している。その結果、窒素ガスと粉末中のアルミ成分が反応してAlNを生成できる。したがって、本実施の形態の粉末アルミ合金においてはMgの含有量としては0.05重量%以上必要である。つまり、Mg含有量が0.05重量%未満の場合、上記のMgによる還元反応が十分に生じないために、AlNを均一に生成できないといった問題を生じる。
【0059】
さらに、上記のように直接窒化反応を利用して粉末アルミ合金中に生成するAlNは、従来法による添加したAlN粒子と組織構造が大きく異なる。具体的には、直接窒化反応の過程において、AlNは圧粉体中のアルミ合金粉末表面から一方向に繊維状あるいは樹枝状に成長する。その結果、図1および図2に示すような層状の被膜としてアルミ合金中に生成・分散する。
【0060】
一方、従来のAlN粒子分散型焼結アルミ合金においては、図3に示すように、単結晶を有したAlN粒子が分散している。つまり、本実施の形態における窒化反応法による焼結アルミ合金中のAlNは、図1および図2に示すような繊維状の組織構造を有することで従来法で用いられるAlN粒子に比べて、優れた摺動性を有することを本願発明者らは見出した。
【0061】
しかも、繊維状に成長する方向をAlNの厚み方向とするとき、窒化反応により生成するAlNの厚みは3μm以下であることが望ましく、より好ましくは1μm以下である。これはAlNの厚みがAlNの生成量にほぼ比例しており、たとえば、AlNの生成量が15重量%の場合のAlNの厚みは約3μmであることから、本実施の形態において提案する直接窒化反応法により生成するAlNの厚みは3μm以下となる。つまり、厚みが3μmを超えることは、AlNの生成量が15重量%を超えることを意味しており、その場合は、上記のように焼結体の被削性や靱性の低下といった問題が生じる。特に、被削性の観点からはAlNの厚みは1μm以下であることがより好ましい。
【0062】
(3) 粉末アルミ合金中の空孔率とその作用・効果
ピストンやピストンリングと接触するシリンダーライナの摺動表面に空孔が分散することでその空孔部分が摺動表面に対して凹状ピットを形成し、この部分に潤滑油が保持されてピストン等との摺動界面での油膜切れを防ぎ、優れた耐焼きつき性および耐摩耗性を実現させることが可能となる。
【0063】
このような効果を得るためには、本実施の形態における粉末アルミ合金中の空孔率はアルミ合金全体に対して容積率で15%以下であり、好ましくは3%以上10%以下であることが好ましい。空孔率が15%を超えると、粉末アルミ合金の機械的特性が低下する。たとえばシリンダーライナとしての強度や剛性が十分に得られず、その結果、エンジンブロックに鋳込んだ際にシリンダーライナが変形するといった問題が生じる。したがって、優れた耐焼きつき性、耐摩耗性および機械的特性を両立させるためには、粉末アルミ合金中の空孔率は15%以下であることが必要であり、より好ましい範囲として3%以上10%以下であることを見出した。
【0064】
(4) 固形潤滑成分とその作用・効果
黒鉛、MoS2 、WS2 、CaFなどの固形潤滑粉末はそれ自身の潤滑性能およびシリンダーライナの摺動面に分散して上記の空孔と同様に、凹状の油溜まりを形成することでピストン等との摺動界面での油膜切れを防ぎ、優れた耐焼きつき性および耐摩耗性を実現させることが可能となる。本実施の形態におけるシリンダーライナの粉末アルミ合金は、黒鉛、MoS2 、WS2 、CaFから選ばれた少なくとも1種類あるいは2種以上の潤滑成分を重量基準で5%以下、好ましくは1%以上3%以下含有する。
【0065】
潤滑成分の含有量が5重量%を超えるとアルミ合金素地を構成するアルミ合金粉末同士の結合強度が低下するためにシリンダーライナとして要求される機械的特性が十分に得られないとともにシリンダーライナの製法の1つである熱間押出し法において、アルミ合金粉末同士の結合が十分でないために押出し後のライナ表面がささくれた状態(むしれた状態)となり、製造面においての問題も生じる。
【0066】
したがって、シリンダーライナの機械的特性の低下を抑え、かつ、優れた耐摩耗性および耐焼きつき性を得るためには、黒鉛、MoS2 、WS2 、CaFから選ばれた少なくとも1種あるいは2種以上の潤滑成分を重量基準で5%以下、好ましくは1%以上3%以下含有する必要がある。
【0067】
(5) 粉末アルミ合金の組成とその作用・効果
本実施の形態における粉末アルミ合金では、必要に応じてSi、Fe、Ni、Cr、Ti、ZrおよびMnのうち、少なくとも1種以上の元素を含有することで、以下に示すようなそれぞれの効果を実現することができる。ただし、粉末アルミ合金の耐摩耗性・耐焼きつき性や強度、硬度、剛性等の機械的特性を向上させるためには、上記の各元素について少なくとも1種あるいは2種以上含有し、かつ、合計含有量が25%以下であることが望ましい。なぜならば、各添加元素の合計含有量が25%を超えても各特性は著しく向上せず、かえって粉末アルミ合金の靱性が低下するといった問題や、また、アルミ合金の硬さや剛性が大きくなり過ぎるために、後工程である熱間押出しが困難となるといった製法上の問題が生じる。
【0068】
また、本実施の形態においては、上記の各元素をアルミ合金中に添加した場合、所定の合金組成を有する溶湯から急冷凝固法によりアルミ合金粉末を作製し、これを原料粉末に用いる。つまり、所定の合金成分からなるアルミ合金溶湯を噴霧法(アトマイズ法)により粉末にし、このアルミ合金粉末を成形・加熱固化することにより所定の組成を有する焼結アルミ合金を作り出すことができる。ここで、上記各元素の特徴について以下簡単に説明する。
【0069】
(I) Si
アルミ合金の素地中に分散して合金の耐摩耗性・耐焼きつき性を向上させる効果がある。ただし、25%を超えて添加しても特性はさらに向上せず、かえってアルミ合金の靱性が低下するといった問題や、また、アルミ合金の剛性が大きくなるために熱間押出しにおいて押出し体を創製する際に高い押出し力、すなわち大型の押出し設備が必要となり、経済性の問題が生じる。
【0070】
(II) Fe、Ni、Cr、Ti、Zr
これらの金属元素はアルミニウムと微細な金属間化合物を形成して素地中に分散することでアルミ合金の耐熱性と剛性・硬さを向上させる効果がある。つまり、耐熱性を改善することで摺動時における相手材との焼きつきは大幅に抑制されることからこれらの元素の添加は有効である。
【0071】
また、このような熱的に安定な金属間化合物を微細かつ均一に分散させることで、加熱・焼結時におけるSi結晶の成長を抑制することができる。その結果、アルミ合金の被削性が大幅に向上するといった効果もある。
【0072】
なお、このような効果を得るためには、Fe、Ni、Cr、Ti、Zrの添加は有効であり、その際、それぞれ1%以上含有する必要がある。一方、これらの元素を適正量加えて添加した場合、上記のようなアルミニウムとの金属間化合物が粗大化するために、かえってアルミ合金の靱性や強度を低下させるといった問題や、アルミ合金粉末を製造する上でアルミ合金溶湯の融点が上昇するために製造コストアップを誘発する。その結果、アルミ合金粉末の価格が高くなるといった経済性の問題も生じる。したがって、本実施の形態においては、各元素の適正添加量として、Fe;1〜8%、Ni;1〜8%、Cr:1〜6%、Ti;1〜4%、Zr;1〜4%を設定した。
【0073】
(III) Mn
上記の金属元素と同様に、アルミニウムとの金属間化合物を形成し、合金素地中に均一分散することで、合金の機械的特性ならびに摺動時における相手材との耐焼きつき性を向上させる効果がある。これらの効果を実現させるためには、1%以上含有する必要があるが、5%を超えて添加しても特性は向上せず、かえってアルミ合金の靱性を低下させることになる。
【0074】
(6) 硬質粒子
本実施の形態におけるシリンダーライナ用粉末アルミ合金は、必要に応じて、TiO2 、ZrO2 、SiO2 、MgO2 、Al2 O3 、Cr2 O3 から選ばれた少なくとも1種以上の酸化物球状粒子を5重量%以下含有する。
【0075】
硬質粒子は、窒化アルミニウムやSiと同様粉末アルミ合金の素地中に分散して耐摩耗性、耐焼きつき性を向上させる効果がある。ただし、硬質粒子の添加量はアルミ合金全体に対して重量基準で5%以下であることが望ましい。なぜならば、5%を超えて硬質粒子を添加しても、耐摩耗性や耐焼きつき性は顕著に向上することはなく、かえってアルミ合金の被削性が低下し、また、相手材を攻撃するといった問題が生じるからである。
【0076】
なお、硬質粒子の種類としては、TiO2 、ZrO2 、SiO2 、MgO2 、Al2 O3 、Cr2 O3 などの酸化物粒子が好ましい。中でも、アルミ合金の耐摩耗性および被削性の観点からは、TiO2 、SiO2 、MgO2 、Al2 O3 の酸化物球状粒子の添加がより有効であることを本発明者らは見出した。
【0077】
【実施例】
以下、本発明に基づいた実施の形態における実施例について、表を参照しながら以下説明する。
【0078】
(実施例1)
【0079】
【表1】
なお、表1中において、「隙間なく良好」とは、エンジンが稼働した状態においても、エンジンブロックからのシリンダーライナの抜け落ちがないことを意味する。また、「隙間あり」とは、鋳込みが終了した段階でシリンダーライナがエンジンブロックから抜け落ちることを、あるいはエンジン稼働時の高温下においてシリンダーライナとエンジンブロックとの界面に隙間が生じてエンジンブロックからのシリンダーライナの抜け落ちが生じることを意味する。
【0080】
上記表1に示すような熱膨張率αC を有するアルミ合金製シリンダーライナをアルミ高圧鋳造法によりエンジンブロック本体中に鋳込んだ後、シリンダーライナとエンジンブロックとの接触界面の結合状態およびシリンダーライナの直径方向での変形の有無を確認した。
【0081】
なお、シリンダーライナには抜け落ち防止のための溝加工などは施さずに鋳込み実験を行なった。また、ここで、アルミ高圧鋳造法により製造したアルミ合金製エンジンブロック本体の合金組成はAl−17%Si−3Cu−1Mg(重量%)であり、その熱膨張率αB は、19.5×10-6/℃である。ただし、ここで記載した熱膨張率の値は常温から200℃までの平均値である。
【0082】
表1に示すように、本願発明が規定するαB −αC ≧1×10-6/℃、かつ、αB −αC ≦8×10-6/℃といった熱膨張率の関係式を満足するシリンダーライナとエンジンブロックとの組合せ番号、No.1〜No.5においては、鋳込んだ後のシリンダーライナの外周面はエンジンブロックからの圧縮残留応力によりエンジンブロック本体によって強固に拘束されており、シリンダーライナとエンジンブロック本体との接触界面に隙間が生じることない。
【0083】
その結果、シリンダーライナに抜け落ち防止加工を施さなくとも、エンジンブロック本体からのシリンダーライナの抜け落ちといった問題が発生していないことがわかる。
【0084】
また、エンジンブロックからの拘束力が適正条件であるために鋳込んだ後のシリンダーライナ自身が変形することなく、シリンダーライナとして十分使用することのできる真円度を有している。したがって、シリンダーライナの薄肉化を実現することが確認できる。
【0085】
一方、本願発明が規定するシリンダーライナとエンジンブロックとの熱膨張率に関する上記の関係式を満足しないNo.6〜No.8においては、以下のような問題が生じることが確認される。
【0086】
No.6;シリンダーライナの熱膨張率が小さすぎるために、エンジンブロックからの圧縮応力による拘束力が過剰に作用するためにシリンダーライナが変形する。
【0087】
No.7;シリンダーライナの熱膨張率が大きすぎるために、エンジンブロックからの圧縮応力による拘束力が十分に作用しないために、シリンダーライナがエンジンブロックに保持されず、隙間が生じて抜け落ちる。
【0088】
No.8;シリンダーライナの熱膨張率が大きすぎるために、エンジンブロックからの圧縮応力による拘束力が十分に作用しないために、シリンダーライナがエンジンブロックに保持されず、隙間が生じて抜け落ちる。
【0089】
(実施例2)
【0090】
【表2】
なお、表2中において、「隙間なく良好」とは、エンジンが稼働した状態においても、エンジンブロックからのシリンダーライナの抜け落ちがないことを意味する。また、「隙間あり」とは、鋳込みが終了した段階でシリンダーライナがエンジンブロックから抜け落ちることを、あるいはエンジン稼働時の高温下においてシリンダーライナとエンジンブロックとの界面に隙間が生じてエンジンブロックからのシリンダーライナの抜け落ちが生じることを意味する。
【0091】
表2に示すようなNo.1〜No.7に示す熱膨張率αC を有するアルミ合金製シリンダーライナをアルミ高圧鋳造法によりエンジンブロック本体中に鋳込んだ後、シリンダーライナとエンジンブロックとの接触界面の結合状態およびシリンダーライナの直径方向での変形の有無を確認した。
【0092】
なお、シリンダーライナには抜け落ち防止のための溝加工等は施さず鋳込み実験を行なった。また、アルミ高圧鋳造法により作製したアルミ合金製エンジンブロック本体の合金組成は、Al−11%Si−3Cu−0.5Mg(重量%)であり、その熱膨張率αB は、21×10-6/℃である。ただし、ここで記載した熱膨張率の値は常温から200℃までの平均値である。
【0093】
表2に示すように、本願発明が規定するαB −αC ≧1×10-6/℃、かつ、αB −αC ≦8×10-6/℃といった熱膨張率の関係式を満足するシリンダーライナとエンジンブロックとの組合せは、No.1〜No.6である。鋳込んだ後のシリンダーライナ外周面はエンジンブロックからの圧縮残留応力によりエンジンブロック本体によって強固に拘束されており、シリンダーライナとエンジンブロック本体との接触界面に隙間が生じることがない。
【0094】
その結果、シリンダーライナに抜け落ち防止加工を施さなくとも、エンジンブロック本体からのシリンダーライナの抜け落ちといった問題が発生していないことがわかる。また、エンジンブロックからの拘束力が適正条件であるために、鋳込んだ後のシリンダーライナ自身が変形することなく、シリンダーライナとして十分使用できる真円度を有している。したがって、シリンダーライナとしての薄肉化が実現できることが確認できた。
【0095】
一方、本願発明が規定するシリンダーライナとエンジンブロックとの熱膨張率に関する上記の関係式を満足しないNo.6およびNo.7の場合、以下のような問題が生じることが確認された。
【0096】
No.6;シリンダーライナの熱膨張率が小さすぎるために、エンジンブロックからの圧縮応力による拘束力が作用するためにシリンダーライナが変形する。
【0097】
No.7;シリンダーライナの熱膨張率が大きすぎるために、エンジンブロックからの圧縮応力による拘束力が十分に作用しないために、シリンダーライナがエンジンブロックに保持されず、隙間が生じて抜け落ちる。
【0098】
(実施例3)
【0099】
【表3】
上記表3に示すNo.1〜No.18のアルミ合金粉末に、必要に応じて酸化物球状粒子(平均粒径5〜10μm)および固体潤滑粒子(平均粒径5〜15μm)を混合したものを原料粉末とし、これを成形した後、窒素雰囲気中で加熱・焼結することでアルミ合金焼結体中に窒化アルミニウム(AlN)を生成させ、この焼結体を熱間押出し法によりシリンダーライナを作製した。ここで、それぞれの酸化物球状粒子、固体潤滑粒子とAlNおよび窒素の含有量は、焼結アルミ合金全体に対する比率を重量%で示している。また、押出し条件によりシリンダーライナの空孔率を3〜5%に調節した。
【0100】
シリンダーライナ素材から摩耗試験用試料を作製し、溶製アルミ合金(JISAC8A材)を相手材に用いて、境界潤滑条件における各焼結アルミ合金の耐摩耗性を評価した。また、油膜切れの条件下での耐焼きつき性(押しつけ荷重を増加させて焼きつき現象が発生した際の荷重を比較)を評価した。なお、チップオンディスク式摩耗試験を用いてそれぞれの特性を評価した。
【0101】
さらに、比較材No.19として溶製アルミ合金(JIS AC8A材)を用いたシリンダーライナを作製し、試料の摺動面には硬質Crめっきを施した。さらに、比較材No.20として鋳鉄材を用いた。摩耗試験後のライナ素材および相手材の摩耗量および焼きつき発生荷重の評価結果を表4に示す。
【0102】
【表4】
本実施例におけるシリンダーライナ用焼結アルミ合金においては、表4からわかるように、耐摩耗性に優れ、かつ相手材への攻撃性も少なく、現行の鋳鉄材や硬質Crめっき処理を施したアルミ合金と同等であることがわかる。また、耐焼きつき性についても鋳鉄材と同等であり、めっき被膜が剥離した硬質Crめっき処理材に比べて優れていることがわかる。
【0103】
一方、比較材No.13〜No.18については、以下のような問題が確認された。
【0104】
No.13;AlNが含有されていないために、十分な耐摩耗性および相手攻撃性が得られない。
【0105】
No.14;AlN含有量が少ないために、十分な耐摩耗性および相手攻撃性が得られない。
【0106】
No.15;AlN含有量が18%と多いためにアルミ合金の強度が低下し、加圧時に試料が欠損した。
【0107】
No.16;潤滑粒子の含有量が6%と多いためにアルミ合金の強度が低下し、加圧時に試料が欠損した。また、熱間押出し時にシリンダーライナ表面がむしれた状態を示した。
【0108】
No.17;硬質粒子の含有量が6%と多いために、相手材を攻撃し、耐焼きつき性が低下する。
【0109】
No.18;硬質粒子の含有量が7%と多いために、相手材を攻撃し、耐焼きつき性が低下する。
【0110】
なお、No.15においては、AlNの含有量が、またNo.17,18においては、硬質粒子の含有量が本願発明が規定する適正量よりも多いために、摩擦試験片に加工する際に超硬工具の磨耗が他に比べて顕著であった。
【0111】
(実施例4)
上記実施例3において、シリンダーライナ素材を所定の円筒形状に加工した後、アルミ高圧鋳造法によりアルミ合金製エンジンブロックに鋳込み、各シリンダーライナについて単体耐久試験を実施した。
【0112】
なお、比較材No.19は溶製アルミ合金(JIS AC8A材)を用いたシリンダーライナを作製し、その摺動面に耐摩耗性や耐焼きつき性を改善する目的で、硬質Crめっきを施した。また、比較材No.20は、Fc鋳鉄材を用いて同形状のシリンダーライナを作製してエンジンブロックに鋳込んだ。また、ピストン材として溶製アルミ合金(JIS AC8A材)を用いており、比較材No.19の場合に限り、ピストン材として溶製アルミ合金(JIS AC8A材)に加えて、シリンダーライナと摺動する外周表面にFeめっきを施したものも準備した。
【0113】
耐久試験後のシリンダーライナおよびピストンの摺動面の破損状況を観察し、摩耗や凝着(焼きつき)の有無を確認した。その結果を表5に示す。
【0114】
【表5】
本実施例におけるシリンダーライナ用焼結アルミ合金においては、上記表5からわかるように、シリンダーライナ自身の耐摩耗性に優れており、またピストンにFeめっきを施さなくても摩耗や凝着を生じることなく、相手材への攻撃性も少なく、現行の鋳鉄材と同等である。
【0115】
一方、比較材No.13〜No.19については、以下のような問題が確認された。
【0116】
No.13;AlNが含有されていないために、十分な耐摩耗性および相手攻撃性が得られない。
【0117】
No.14;AlN含有量が少ないために、十分な耐摩耗性および相手攻撃性が得られない。
【0118】
No.15;AlN含有量が18%と多いためにピストン側への攻撃量は増加した。
【0119】
No.16;潤滑粒子の含有量が6%と多いためにアルミ合金の強度が低下し、耐摩耗性が若干低下した。
【0120】
No.17;硬質粒子の含有量が6%と多いために、ピストン側への攻撃量が増加した。
【0121】
No.18;硬質粒子の含有量が7%と多いために、ピストン側への攻撃量が増加した。
【0122】
No.19;溶製アルミ合金ではその摺動面に硬質Crめっきを施し、かつ、ピストン側にもFeめっきを施さないと、摩耗や凝着といった問題が生じてライナとしては使用できない。
【0123】
なお、No.15においては、AlNの含有量が、またNo.17,18においては、硬質粒子の含有量が本発明が規定する適正量よりも多いために、シリンダーライナ形状に加工する際に超硬工具の摩耗が他に比べて顕著であった。
【0124】
以上により、本実施例における焼結アルミ合金は、硬質Crめっきなどの表面処理を施さなくとも、シリンダーライナとしての耐摩耗性・耐焼きつき性を十分に有しており、また相手のピストン側にもFeめっき処理を施すことなく使用できるといった経済性の面においても優れている。
【0125】
(実施例5)
重量基準でSi;12%、Fe;3%、Ni;3%、Mg;1%を含有するアルミ合金粉末に対してTiO2 粒子(平均粒径;7μm)を1.5%、黒鉛粉末(平均粒径;10μm)を1%それぞれ添加した混合粉末を成形した後、540℃に制御した窒素雰囲気中で3hr加熱・保持することで焼結アルミ合金を作製し、かつ、その際に窒化反応により焼結アルミ合金全体に対して4%のAlNが生成する焼結体を得た。この素材から熱間押出し法により円筒形状のシリンダーライナを作製した。
【0126】
このとき、押出し条件(押出し比)を制御することで、押出し後のシリンダーライナ素材の空孔率を変えて各アルミ合金の耐摩耗性および耐焼きつき性を評価した。その結果を表6に示す。
【0127】
【表6】
なお、耐摩耗性については上記実施例3に記載のチップオンディスク式摩耗試験により境界潤滑条件での性能を評価した。また、相手材であるディスク側には溶製アルミ合金(JIS AC8A材)を使用した。
【0128】
さらには、各シリンダーライナをアルミ高圧鋳造によりエンジンブロック本体に鋳込み、そのときのシリンダーライナの変形の有無を確認した。なお、比較材としてFC鋳鉄を用いたシリンダーライナについても併せて評価を行なった。
【0129】
表6からわかるように、本願発明において規定する空孔率を有する焼結アルミ合金を用いたシリンダーライナにおいては、現行のシリンダーライナ材であるFC鋳鉄材と同等の耐摩耗性および耐焼きつき性を有している。
【0130】
特に、空孔率が3%〜10%の焼結アルミ合金については、それらの特性はさらに優れていることがわかる。また、エンジンブロックに鋳込んだ場合においても、エンジンブロック本体側からの拘束力により変形することなく、シリンダーライナ形状に加工した状態の真円度が確保されていることがわかる。一方、比較材においては以下のような問題が確認された。
【0131】
No.6;空孔率が18%と大きいためにエンジンブロックに鋳込んだ際に、シリンダーライナ側に作用する圧縮応力によりシリンダーライナが変形した。
【0132】
No.7;空孔率が22%と大きいために焼結アルミ合金の強度が低下し、摩擦試験において試料が欠損した。また、エンジンブロックに鋳込んだ際に、シリンダーライナ側に作用する圧縮応力によりシリンダーライナが変形した。
【0133】
(実施例6)
実施の形態において提案する窒化反応法により作製した熱間押出し後の焼結アルミ合金(合金組成;Al−12Si−2Ni−1Mg−2AlN/重量%)中に生成・分散するAlN粒子の組織構造のTEM像(18,000倍にて撮影)を図1に示し、またSIM像を図2に示す。
【0134】
また、比較として同一組成の焼結アルミ合金を従来の製法、つまりAlN粒子(平均粒径22μm)をアルミ合金粉末(組成;Al−12Si−2Ni−1Mg/重量%)に添加・混合したものを成形・焼結・熱間押出しにより作製し、このアルミ合金中に分散するAlN粒子のSIM像を図3に示す。
【0135】
図1および図2に示すように、本実施の形態において提案する直接窒化反応法により生成したAlNは繊維状あるいは樹枝状に一方向に成長した組織構造を有していることがわかる。また、その成長方向をAlNの厚みとすると、図からもわかるように、窒化反応法により生成するAlNの厚みは約1μm程度である。
【0136】
一方、図3に示すように、従来製法によるAlN粒子を添加する場合、AlNは繊維状構造ではなく、単結晶構造を有しており、明らかに本発明の窒化反応法により生成したAlN粒子と異なることがわかる。
【0137】
(実施例7)
本実施の形態が提案する窒化反応法により作製した熱間押出し後の焼結アルミ合金の光学顕微鏡組織写真を図4に示す。合金組成はAl−12Si−2Ni−1Mg−2AlN/重量%)である。また、比較としてAlN粒子(平均粒径22μm)をアルミ合金粉末(組成;Al−12Si−2Ni−1Mg/重量%)に添加して本発明材と同一組成にした焼結アルミ合金を熱間押出し法により作製した。その焼結体の組織写真を図5に示す。
【0138】
図4に示すように、本発明の窒化反応法により生成したAlN粒子(黒い矢印で示す部分)はマトリックスのアルミ合金素地との境に隙間がない結合界面を有していることがわかる。これに対して、図5に示す従来法(AlN粒子を添加する方法)では、AlN粒子(黒い矢印で示す部分)とアルミ合金素地との境に隙間(Gapと記した白い矢印で示した部分)が存在していることがわかる。
【0139】
(実施例8)
上記実施例6で作製した焼結アルミ合金について、チップオンディスク式摩擦試験を境界潤滑条件下で実施した後の焼結体および相手材の摺動面の損傷状況を光学顕微鏡により観察した。その結果を、図6(a),(b)および図7(a),(b)に示す。図6(a),(b)は、本発明が提案する窒化反応法により作製したAlNが生成分散する焼結アルミ合金であり、図7(a),(b)は、従来法であるAlN粒子を添加して得られた焼結アルミ合金である。なお、相手材には溶製アルミ合金(ADC12材)を用いた。
【0140】
図6(a)に示すように、本願発明が提案する窒化反応法により作製した焼結アルミ合金の摺動面においては、軽微な擦れ跡が見られる程度で凝着・焼きつき現象は観察されない。またAlN粒子が脱落した形跡も摺動面には認められない。さらに、相手材についても、図6(b)に示すように、凝着・焼きつき現象は見られず軽微な擦れ跡が存在する程度である。
【0141】
一方、図7(a)においては、焼結アルミ合金にAlN粒子の脱落した孔(Hallと記した白い矢印部分)が各所に存在しており、深い摺動傷も観察される。また相手材についても、図7(b)に示すように、脱落したAlN粒子により攻撃された深い摺動傷および凝着領域(Seizure と記した白い部分)が各所に存在していることがわかる。
【0142】
このように本願発明が提案する窒化反応法により作製した焼結アルミ合金においては窒化アルミニウム(AlN)とマトリックスであるアルミ合金が隙間なく、強固に結合した界面を有することで、相手材と摩擦摺動した場合においてもAlN粒子が脱落せず、優れた耐摩耗性・耐焼きつき性および相手攻撃性を有することが確認された。
【0143】
(実施例9)
【0144】
【表7】
上記表7のNo.1〜No.11に示す合金組成を有するアルミ合金粉末を成形した後、窒素雰囲気中で加熱・焼結することにより、アルミ合金焼結体中に窒化アルミニウム(AlN)を生成させ、この焼結体を熱間押出し法によりシリンダーライナを製作した。空孔率は、押出し条件により3〜5%に調整した。
【0145】
窒化アルミニウムおよび窒素の含有量は焼結アルミ合金全体に対する比率を重量%で表示し、上記表7中に示す。なお、残部はすべてAlである。また、熱膨張率も併せて上記表7中に示す。
【0146】
シリンダーライナ素材から摩耗試験用試料を作製し、溶製アルミ合金(JISAC8A材)を相手材に用いて、境界潤滑条件における各焼結アルミ合金の耐摩耗性を評価した。また、油膜切れの条件下での耐焼きつき性(押出し荷重を増加させて焼きつき現象が発生した際の荷重を比較)を評価した。なお、チップオンディスク式摩耗試験を用いてそれぞれの特性を評価した。摩耗試験後のシリンダーライナ素材および相手材の摩耗量および焼きつき発生荷重の評価結果を表8に示す。
【0147】
【表8】
また、アルミ高圧鋳造法により熱膨張率がαB が22×10-6/℃であるアルミ合金溶湯(組成;Al−8Si−3Cu−0.5Mg/重量%)を用いて各シリンダーライナをエンジンブロック本体に鋳込み、その結合界面およびシリンダーライナの変形の有無を確認した。その結果を、上記表8中に示す。
【0148】
表7および表8に示すように、粉末アルミ合金中の窒化アルミニウムとSiとの合計含有量が本願発明が規定する適正範囲を満足するNo.1〜No.9においては、その熱膨張率αC は14×10-6/℃〜20×10-6/℃を満足し、かつ、優れた耐摩耗特性を有することがわかる。また、鋳込んだ後のシリンダーライナとエンジンブロック本体の界面は密着した良好な状態を示しており、シリンダーライナの変形も認められなかった。
【0149】
一方、比較例No.10,11においては、以下のような問題が確認された。No.10;AlNとSiの合計含有量が2%と少ないために、十分な耐摩耗性が得られず、また両者の合計含有量は少ないために熱膨張率は21.6×10-6/℃と大きい値を示した。また、シリンダーライナとエンジンブロックの熱膨張率の差が0.4×10-6/℃と小さいためにシリンダーライナとエンジンブロックとの界面に隙間が確認された。
【0150】
No.11;AlNとSiの合計含有量が36%と多いために熱膨張率は13.0×10-6/℃と小さい値を示し、エンジンブロックとシリンダーライナの熱膨張率の差が9×10-6/℃と大きいために、鋳込んだ後にシリンダーライナが変形した。また、AlNとSiの合計含有量が36%と多いために相手材を若干攻撃することも認められた。
【0151】
【発明の効果】
この発明に基づいた請求項1〜請求項12に記載の発明によれば、シリンダーライナとエンジンブロックの熱膨張率の関係により、両者の接触界面に隙間が生じることがない。その結果、エンジンブロックからのシリンダーライナの抜け落ちを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱間押出し後の焼結アルミ合金中に生成・分散するAlN粒子の組織構造のTEM写真である。
【図2】熱間押出し後の焼結アルミ合金中に生成・分散するAlN粒子の組織構造のSIM写真である。
【図3】従来製法におけるAlN粒子の組織構造のSIM写真である。
【図4】窒化反応によるAlN分散焼結アルミ合金の顕微鏡写真である。
【図5】AlN粒子添加焼結アルミ合金の顕微鏡写真である。
【図6】(a)および(b)は、本願発明に基づく窒化反応によるAlN分散焼結アルミ合金の顕微鏡写真である。
【図7】(a)および(b)は、従来法であるAlN粒子添加焼結アルミ合金の顕微鏡写真である。
Claims (12)
- 溶製アルミ合金製エンジンブロックに鋳込まれる粉末アルミ合金製シリンダーライナであって、
前記シリンダーライナは、熱間押出し法で円筒形状としたもので、その粉末アルミ合金は、アルミ合金全体に対して容積率で1%以上15%以下の空孔率を有し、窒化アルミニウムを重量基準で0.5%以上15%以下含有し、残部がアルミニウムのAlN分散型粉末アルミ合金であり、
前記AlN分散型粉末アルミ合金は、繊維状あるいは樹枝状にAlNが層状の被膜としてアルミ合金中生成・分散しており、
前記粉末アルミ合金製シリンダーライナの熱膨張率をαC、前記溶製アルミ合金製エンジンブロックの熱膨張率をαBとするとき、両者の関係が14×10-6/℃≦αC≦20×10-6/℃であり、かつ、1×10-6/℃≦αB−αC≦8×10-6/℃を満足する、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナ。 - 前記粉末アルミ合金製シリンダーライナは、前記溶製アルミ合金製エンジンブロックにアルミ高圧鋳造法により鋳込まれる、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナ。
- 前記シリンダーライナの粉末アルミ合金は、窒素を重量基準で0.1%以上5%以下含有し、残部がアルミニウムであり、かつ、前記窒素は前記アルミニウムと結合した構造を有するAlN分散型粉末アルミ合金である、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナ。
- 前記シリンダーライナの粉末アルミ合金は、窒化アルミニウムを重量基準で0.5%以上15%以下含有し、Mgを重量基準で0.05%以上含有し、残部がアルミニウムのAlN分散型粉末アルミ合金である、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナ。
- 前記シリンダーライナの粉末アルミ合金は、窒素を重量基準で0.1%以上5%以下含有し、Mgを重量基準で0.05%以上の含有し、残部がアルミニウムであり、かつ、前記窒素は前記アルミニウムと結合した構造を有するAlN分散型粉末アルミ合金である、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナ。
- 前記シリンダーライナの粉末アルミ合金は、繊維状に一方向に成長した組織構造をもつ窒化アルミニウムを含み、かつ、その成長方向を厚みとした場合に前記窒化アルミニウムは3μm以下の層状粒子形状を有している、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナ。
- 前記シリンダーライナの粉末アルミ合金は、窒化アルミニウムを含み、この窒化アルミニウムとアルミ合金素地のマトリックスであるアルミニウムとの境に隙間がない結合界面を有する、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナ。
- 前記空孔率は、アルミ合金全体に対して容積率で3%以上10%以下である、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナ。
- 前記シリンダーライナの粉末アルミ合金は、黒鉛、MoS2、WS2、CaFからなるグループから選択される少なくとも1種以上の潤滑成分を重量基準で5%以下含有する、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナ。
- 前記潤滑成分の含有量は、重量基準で1%以上3%以下である、請求項9に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナ。
- 前記シリンダーライナの粉末アルミ合金は、Si、Fe、Ni、Cr、Ti、Mn、Zrからなるグループから選択される少なくとも1種以上の元素を含有し、かつ、その含有量が25重量%以下である、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナ。
- 前記シリンダーライナの粉末アルミ合金は、TiO2、ZrO2、SiO2、MgO2、Al2O3、Cr2O3からなるグループから選択される少なくとも1種以上の酸化物球状粒子を5重量%以下含有する、請求項1に記載の粉末アルミ合金製シリンダーライナ。
Priority Applications (1)
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