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JP3894103B2 - 固体酸化物形燃料電池用集電体材料 - Google Patents

固体酸化物形燃料電池用集電体材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体酸化物形燃料電池用集電体材料、その製造方法及び固体酸化物形燃料電池用単セルに係り、更に詳細には、界面抵抗を抑制し、耐久性及び電池性能を向上させた固体酸化物形燃料電池用集電体材料、その製造方法及び固体酸化物形燃料電池用単セルに関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池とは、イオンの移動により電気が流れる電解質に、燃料(水素など)と酸化剤(空気など)を電気化学的に結合させて発電するエネルギー変換デバイスである。その中の一種である固体酸化物形燃料電池(以下「SOFC」と省略する)は、その全てが固体(セラミックスと金属)で構成され、更に比較的高温(〜1000℃)で運転されることから、他の燃料電池に比べ優位な特徴を有する。例えば、材料面では、貴金属などの高価な材料を利用しないこと、燃料電池中に液体を使用しないことから管理が容易である。また、水素以外の燃料を直接導入できるというメリットもある。
【0003】
一方、SOFCの欠点は、構成材料への制約が厳しいことである。
例えば、空気極の集電体としては、従来から1000℃の酸化雰囲気中で十分な導電性が得られ、劣化の少ない白金メッシュが使用されていた。しかし、白金は経済的に高価であるため、インコネルなどの繊維状合金からなる合金フェルトを使用しコストを低減させている。
しかしながら、合金フェルトを酸化剤極側の集電材料として用いた場合には、酸化極側の反応ガスである空気によって繊維状合金が酸化され、フェルトの表面に酸化皮膜が生成し、導電性が低下し、合金フェルトと空気電極又はセパレータとの接触抵抗が増大する。
従って、例えば、特開平7−114931号公報では、接触抵抗を減らすため、集電体の繊維状フェルトの表面にぺロブスカイト型酸化物を担持させることが提案されている。具体的には、繊維状インコネル合金表面に酸化剤電極スラリーを担持する手法などがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、従来から合金フェルトの表面に酸化物を担持させたものを空気極上に重ねて使用する場合は、合金フェルトは比較的電極の何十倍の厚さがあるため、セルを積層して行く際に全体の体積が増大し、コンパクト化が困難であるという問題点があった。また、フェルト状合金を空気極と接合させたときに、集電体と空気極の接合部位に接触抵抗が生じ易く、更に、高温で作動する場合はフェルト集電体が電極から剥がれ易いという問題点があった。このような接触抵抗の増大や集電体の剥離は電池性能の低下という問題を招くことになる。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、薄膜化、接触抵抗の低減及び剥離防止を図り、電池性能を向上させた固体酸化物形燃料電池用集電体材料、その製造方法及び固体酸化物形燃料電池用単セルを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、導電材を被覆したマトリックス粒子を含ませた集電体材料を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の固体酸化物形燃料電池用集電体材料について詳細に説明する。なお、本明細書において、「%」は特記しない限り質量百分率を示す。
【0008】
上述の如く、本発明の固体酸化物形燃料電池用集電体材料は、マトリックス粒子と導電材を含んで成る。また、この導電材は、LaCrO、La0.75Sr0.25FeO、SnO、Fe、LaCoO、ITO、ZnO及びFeSi2−x(xはSiの欠陥組織を示す)から成る群より選ばれた少なくとも1種のものであり、マトリックス粒子の表面の一部又は全部に被覆されて成る。
このような集電体材料で形成された集電体は、電極の反応場として機能し得るので反応界面が大きくなり、電池性能がより一層向上する。
また、かかる導電材は、安価で耐高温性且つ耐酸化性であるので、高温酸化雰囲気による金属粒子や合金粒子の酸化を防止する。更に、金属粒子や合金粒子の表面に、導電性酸化物(酸素イオン導電性を有するもの)を被覆すると酸素の還元反応の反応場が更に増加するため、燃料電池に用いるときは電極の反応速度が上がりセル全体に大電流を流すことができる。
【0009】
ここで、上記マトリックス粒子は、金属粒子及び/又は合金粒子であることが好適である。このときは、ミクロオーダーの粒子から集電体を構成できるので、集電体と電極との接触状態が良好となり、高温での熱膨張による集電体の剥離を抑制できる。言い換えれば、高温での連続運転に対する耐久性が向上し得る。
金属粒子や合金粒子の形状は、代表的には球状であり、これらの粒径は、0.5〜10μmであることが好適である。0.5μm未満の場合は、高温において焼結しやすくなり、集電体に要求されるガス透過性が悪くなってしまう可能性がある。また、10μmより大きい場合は、粒子表面は完全に被覆できない可能性があり、この非被覆部分が生じることによって金属粒子が参加され内部抵抗が大きくなってしまい、セル出力が低下してしまうことになる。
なお、マトリックス粒子の形状は、最大径が上記範囲内であれば球状以外でも良く、例えば繊維状金属なども使用できる。
【0010】
また、金属粒子や合金粒子の種類は特に限定されないが、貴金属以外の方が経済的により望ましい。代表的には、上記金属粒子は、銀(Ag)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)又はコバルト(Co)、及びこれらの任意の組合せに係る金属から得ることができる。上記合金粒子も特に限定されないが、これらと同様の金属を含む合金から得られる。このときは、十分な導電性を有する集電体を形成できる。なお、導電材(酸化物など)との熱膨張係数が金属材料より近い合金を用いるときは熱耐久性を更に向上できる。
【0012】
また、上記導電材は、ペロブスカイト型酸化物であることが好適である。特に、混合イオン導電性(酸素イオン導電性と電子導電性)のペロブスカイト型酸化物に限定することが望ましく、例えば、LaSrMnO(以下「LSM」と略する)、LaSrCoO(以下「LSC」と略する)、Sr0.5Co0.5(以下「SSC」と略する)などが挙げられる。図1にSSCを担持したAg粒子を拡大したTEM写真を示す。
これらは基本的に空気電極の構成材料となり得るものであり、このような材料で金属粒子や合金粒子の表面を被覆することによって、集電体(集電体層)も電極と同様に反応場として働き、フェルト材で形成された場合に比べて反応界面が拡大され電池出力を増大し得るので、電池性能をより一層向上できる。また、空気電極との接触が良好となり易く、接触抵抗を大きく低減できる。更に、熱膨張係数が非常に近似するため、高温での連続運転による集電層の剥離が抑えられ、熱耐久性も良好となり易い。
【0013】
更に、上記導電材の被覆厚さが0.05〜5.0μmであると、集電効果が良好となり易い。厚さが0.05μm未満の場合は、担持層の酸化防止効果が十分に働かないことがある。また、5.0μmを超えると、酸化物層による導電率が低減してしまい、電池の出力低下の原因になることがある。
【0014】
次に、本発明の固体酸化物形燃料電池用単セルについて詳細に説明する。
本発明の単セルは、電解質が燃料極及び空気極に挟持されて成る電池要素に、ガスを分離するセパレータを積層して成る。また、空気極とセパレータとの間には、上述の集電体材料で形成した集電体(集電体層)を配設して成る。
かかる単セルでは、従来のフェルト状金属などを集電体材料として用いた場合に比べて集電体が薄膜化されているので、電極との接合性が向上し耐久性に優れる。また、電池要素を全体的にコンパクト化できるとともに、電極として機能する面積が増大するので、電池出力も向上する。電極上に配設する集電体層の厚さは10μm以下とすることが望ましい。また、集電体材料中には、上記マトリックス粒子及び導電材の他、分散剤や結着剤などを適宜添加することができる。
なお、本明細書において、「単セル」とは電解質を空気極及び燃料極で挟持し、電極の表面に集電体(集電体層)を配設したものを示す。また、「固体酸化物形燃料電池」は、複数の単セル(燃料電池セル)を電気的に接続すると共に、隣接する単セルとの間隙にガスを分離するセパレータを設けたものを示す。
【0015】
次に、本発明の固体酸化物形燃料電池用集電体材料の製造方法について詳細に説明する。
本発明の製造方法では、スパッタリング法、共沈法、ゾル−ゲル法、めっき又は含浸法、及びこれらを任意に組合わせた方法により、導電材をマトリックス粒子の表面に被覆し、上述の固体酸化物形燃料電池用集電体材料を得る。
これらの方法を用いることで、導電材(導電性酸化物の粒子など)がマトリックス粒子(金属粒子や合金粒子)の表面全体に均一的に被覆される。また、導電材やマトリックス粒子の種類や大きさなどに応じて、被覆厚さを適宜制御することも可能である。
【0016】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0017】
(実施例1)
本発明の集電体材料を空気極側に用いた固体酸化物形燃料電池セルを作製した。このときの集電体層の断面を図2に示す。
固体電解質として緻密な焼結体であるLSGM(La0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.2)、燃料極としてNi−CeOサーメット、空気極としてぺロブスカイト型酸化物であるSSC(Sm0.5Sr0.5CoO)を使用した。また、空気極及び燃料極の表面に集電体層を形成した。この燃料極側集電体層にはNiフェルト、空気側電極集電体層には金属粒子の表面にLSC溶液中に含浸したものを使用した。
【0018】
ここで、上記構成を有する燃料電池セルの作製について詳細に説明する。
<セルの作製>
1)電解質焼結体の準備
膜厚300μmのLSGM焼結体をセルの支持体として使用した。
2)燃料極の作製
Ni:SDC=7:3になるように原料粉を混合して、バインダ(ポリビニルブチラール樹脂)と、溶媒(エチルセルロース)とを各々十分混合し、脱泡し、燃料極用スラリーを得た。このスラリーを電解質の一方の面に被覆して燃料極とした。
3)空気極の作製
空気極材料にSSCを用い、燃料極と同様の操作により空気極用スラリーを得た。このスラリーを電解質の他方の面に被覆して空気極とした。
4)空気極側集電体層の作製
集電体材料として平均粒子径が1μmのAg粒子を使用した。このAg粒子をLSCの溶液中に30秒を浸し、溶媒を飛ばし、残った粉を500℃で焼成して集電体用原料粉を得た。この粉を電極材料と同様の操作によりスラリーとし、スプレー法で空気極の表面に10μmの厚さで被覆した。電極上へスプレーした後、1000℃で、1時間焼結を行い集電体層を得た。
ここでLSCを用いたのは、LSCはSSCよりも電子導電性が高く、集電効果が高いためである。
【0019】
(実施例2)
空気側集電体材料のマトリックス粒子として合金Fe−Crを用い、この表面に導電材としてLSCの薄膜層を被覆した以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、固体酸化物形燃料電池セルを作製した。
【0020】
(実施例3)
空気極側集電材料として、Ag表面にスパッタリング法によってLSCを担持させた以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、固体酸化物形燃料電池セルを作製した。
【0021】
(実施例4〜6)
含浸法によってAgの表面に0.01μm、0.1μm及び1.0μmのLSC膜を担持させた以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、固体酸化物形燃料電池セルを作製した。
【0022】
(比較例1)
空気極側集電体層として、AgフェルトをLSC溶液に含浸した以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、固体酸化物形燃料電池セルを作製した。
【0023】
<性能評価>
各例で得えられた燃料電池セルについて、以下の条件で連続発電試験を行った。
・評価温度 :800℃
・評価雰囲気:H/O(Hは10%加湿した)
このような評価条件で200時間連続運転し、初回目及び200時間連続運転後のセルOVC、セル出力及び空気極と集電体層の接触抵抗を求めた。この結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
Figure 0003894103
【0025】
表1より、本発明の好適形態である実施例1〜6で得られた燃料電池セルでは導電性酸化物LSCで金属粒子の表面を担持することによって、集電により生じる接触抵抗が低下するのに対し、比較例1で得られた燃料電池セルでは金属フェルトが電極との接触抵抗が大きく、これによってセルの出力が低下してしまうことがわかる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、導電材を被覆したマトリックス粒子を含ませた集電体材料を用いることとしたため、薄膜化、接触抵抗の低減及び剥離防止を図り、電池性能を向上させた固体酸化物形燃料電池用集電体材料、その製造方法及び固体酸化物形燃料電池用単セルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】SSCを担持したAg粒子を示すTEM写真である。
【図2】集電体層の概略を示す断面図である。

Claims (9)

  1. 固体酸化物形燃料電池において、空気極とセパレータとの間に配設される集電体材料であって、
    マトリックス粒子及び導電材を含み、当該導電材が、LaCrO、La0.75Sr0.25FeO、SnO、Fe、LaCoO、ITO、ZnO及びFeSi2−x(xはSiの欠陥組織を示す)から成る群より選ばれた少なくとも1種のものであり、マトリックス粒子の表面の一部又は全部に被覆されて成ることを特徴とする固体酸化物形燃料電池用集電体材料。
  2. 上記マトリックス粒子が、金属粒子及び/又は合金粒子であることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池用集電体材料。
  3. 上記金属粒子及び/又は合金粒子の粒径が、0.5〜10μmであることを特徴とする請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池用集電体材料。
  4. 上記金属粒が、銀、鉄、クロム、ニッケル、銅、チタン、タングステン、アルミニウム及び錫から成る群より選ばれた少なくとも1種の金属であることを特徴とする請求項2又は3に記載の固体酸化物形燃料電池用集電体材料。
  5. 上記合金粒子が、銀、鉄、クロム、銅、アルミニウム、チタン及びコバルトから成る群より選ばれた少なくとも1種の金属を含んで成ることを特徴とする請求項2又は3に記載の固体酸化物形燃料電池用集電体材料。
  6. 上記導電材が、ペロブスカイト型酸化物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の固体酸化物形燃料電池用集電体材料。
  7. 上記導電材の被覆厚さが0.05〜5μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の固体酸化物形燃料電池用集電体材料。
  8. 請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の固体酸化物形燃料電池用集電体材料を製造する方法であって、
    上記マトリックス粒子の表面に、スパッタリング法、共沈法、めっき、ゾル−ゲル法及び含浸法から成る群より選ばれた少なくとも1種の方法を用いて上記導電材を被覆することを特徴とする固体酸化物形燃料電池用集電体材料の製造方法。
  9. 電解質を介して燃料極と空気極とが相対向する電池要素に、ガスを分離するセパレータを積層して成る固体酸化物形燃料電池用単セルであって、
    空気極とセパレータとの間に請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の固体酸化物形燃料電池用集電体材料で形成した集電体を配設して成ることを特徴とする固体酸化物形燃料電池用単セル。
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