JP3893774B2 - 電界発光素子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はテレビ、コンピュータなど情報機器、電気電子製品のディスプレイ部に使用する電界発光素子の構造およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年液晶ディスプレイに替わる発光型ディスプレイとして有機物を用いた電界発光素子の開発が加速している。有機物を用いた電界発光素子としては、Appl.Phys.Lett.51(12),21 September 1987の913ページに示されているように低分子を蒸着法で製膜する方法と、 Appl.Phys.Lett.71(1),7 July 1997の34ページから示されているように高分子を塗布する方法が主に開発されている。特に高分子系ではカラー化する際にインクジェット法を用いる事により、パターニングが容易に出来る事から注目されている。この高分子を用いる場合には、バッファ層または正孔注入層を陽極と発光層の間に形成する事が多い。従来、前記バッファ層や正孔注入層としては導電性高分子、例えばポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いる事が多く、その製膜方法としては、Chem.Mater.1995年7号969ページから示されているように、導電性高分子を無理矢理溶液化するか、あるいはAppl.Phys.Lett.71(1),7 July 1997の34ページから示されているように溶媒に分散させて塗布する方法が知られていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし従来の方法では、導電性高分子は溶媒に極めて溶けにくいため、製膜中に析出する、また溶媒に分散させる方法では、膜質が極めて粗くなる問題を有していた。いずれの場合にも、得られるバッファ層または正孔注入層の中には導電性高分子の粒子が存在するため膜質は粗く、その上に発光層を形成しても、導電性高分子の粒子が発光層を突き破る、または突き破らずとも導電性高分子の粒子上で発光層の膜厚が極めて薄くなり、絶縁破壊が生じる、または生じ易くなる課題を有していた。
【0004】
そこで本発明の目的とする所は、導電性高分子からなる、粒子を含まない極めて滑らかな表面を有するバッファ層または正孔注入層を形成する方法を提供する事に有り、またこのバッファ層または正孔注入層を形成した、高効率高信頼性電界発光素子を提供する事にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
課題を解決するための手段1.本発明の電界発光素子は、少なくとも1方が透明な2枚の電極間にバッファ層または正孔注入層、および発光層、さらに必要に応じて電子注入層を配置した構造の電界発光素子において、前記バッファ層または正孔注入層として導電性高分子を用い、かつこの膜厚変動が1mm□(1mm2の意味である。以下同じ。)領域内で50nm以下である事を特徴とする。本構成により、発光層の膜厚の均一性を確保することができ、これにより発光の均一性、ひいては長寿命化を実現する事が出来る。
【0006】
課題を解決するための手段2.課題を解決するための手段1において、前記導電性高分子がポリチオフェン誘導体またはポリアニリン誘導体である事を特徴とする。本構成により、電界発光素子の発光効率を向上させ、かつ発光の均一性を確保する事が出来る。
【0007】
課題を解決するための手段3.少なくとも1方が透明な2枚の電極間にバッファ層または正孔注入層、および発光層、さらに必要に応じて電子注入層を配置した構造の電界発光素子の製造方法において、陽極上に、チオフェン誘導体またはアニリン誘導体からなる導電性高分子前駆体と前記導電性高分子前駆体の重合剤を混合した物またはこれら溶液を塗布し、その後、第1焼成処理、水への浸漬処理、第2焼成処理を順次行うことにより重合させてバッファ層または正孔注入層とする事を特徴とする。本製法により、均一なバッファ層または正孔注入層を形成することが出来る。
【0008】
課題を解決するための手段3において、前記導電性高分子前駆体がチオフェン誘導体またはアニリン誘導体である事により、より簡便に、より高効率な電界発光素子を作成する事が出来る。
【0009】
課題を解決するための手段4.少なくとも1方が透明な2枚の電極間にバッファ層または正孔注入層、および発光層、さらに必要に応じて電子注入層を配置した構造の電界発光素子の製造方法において、陽極上に、チオフェン誘導体またはアニリン誘導体からなる導電性高分子前駆体またはこの溶液を塗布し、その後、前記前駆体の膜に重合剤塗布または重合剤溶液への浸漬を行い、さらに、第1焼成処理、水への浸漬処理、第2焼成処理を順次行うことにより重合させてバッファ層または正孔注入層とする事を特徴とする。本製法により、均一なバッファ層または正孔注入層を形成することが出来る。
【0010】
課題を解決するための手段4において、前記導電性高分子前駆体がチオフェン誘導体またはアニリン誘導体である事により、より簡便に、より高効率な電界発光素子を作成する事が出来る。
【0011】
課題を解決するための手段4において、前記重合剤塗布または重合剤溶液への浸漬により、より簡便に電界発光素子を作成する事が出来る。
【0012】
課題を解決するための手段4において、重合が加熱により行われる事により、より簡便に電界発光素子を作成する事が出来る。
【0013】
【発明の実施の形態】
(実施例1)本実施例では、少なくとも1方が透明な2枚の電極間にバッファ層または正孔注入層、および発光層、さらに必要に応じて電子注入層を配置した構造の電界発光素子において、前記バッファ層または正孔注入層として導電性高分子を用い、前記導電性高分子がポリチオフェン誘導体またはポリアニリン誘導体であり、かつこの膜厚変動が1mm□(1mm2の意味である。以下同じ)領域内で50nm以下である例を示す。
【0014】
図1に本実施例の電界発光素子の簡単な断面図を示す。まず、パターニングしたITO付きのガラス基板に、実施例2以降に示す方法によりバッファ層または正孔注入層を製膜した。こうして作成した膜の膜厚変動は1mm□領域内で50nm以下であった。次に発光層としてジヘキシルポリフルオレンのクロロホルム溶液を塗布して乾燥し、膜厚80nmとした。さらにその上に弗化リチウムを1nmの厚みに蒸着し、その上にアルミニウムを400nmの厚みに蒸着した。次にこの陰極側の面を封止した。こうして作成した電界発光素子の発光効率は1lm/Wであった。比較例として、バッファ層または正孔注入層として、従来から用いられているポリチオフェン誘導体であるバイエル社製Bytron Pを用いると、膜厚変動が1mm□領域内でおよそ60nm以上あり、発光効率は0.5lm/Wであった。
【0015】
本実施例では、単純マトリックス用基板のみならずTFT基板およびこれに類するアクティブ素子を形成した基板も用いる事が出来る。
【0016】
本実施例では、バッファ層および正孔注入層以外の構成において、従来の有機低分子および高分子電界発光素子に用いられる構成を用いる事が出来る。
【0017】
(実施例2)本実施例では実施例1においてバッファ層または正孔注入層として、導電性高分子前駆体と前記導電性高分子前駆体の重合剤を混合した物またはこれら溶液を塗布し、製膜後に重合させてバッファ層または正孔注入層とした例を示す。導電性高分子前駆体としてチオフェン誘導体であるバイエル社製Bytron Mを用い、重合剤としてバイエル社製Bytron Cを用いた。両者をブタノール中に添加希釈し、混合後すぐに基板上に塗布した。その後200℃1時間焼成した。次に流水中に基板を1昼夜浸漬した。その後再び200℃1時間焼成した。こうして作成した膜の膜厚変動は1mm□領域内でおよそ50nm以下であった。
【0018】
(実施例3)本実施例では導電性高分子前駆体としてアニリンを用いた例を示す。アニリンと重合剤としてアンモニウムパーサルフェートを1M塩酸中に溶解し、基板上に塗布した。その後200℃で1時間焼成し、次に流水中に基板を1昼夜浸漬した。その後200℃で1時間焼成した。こうして作成した膜の膜厚変動は1mm□領域内でおよそ50nm以下であった。
【0019】
(実施例4)本実施例では陽極上に導電性高分子前駆体またはこの溶液を塗布し、その後、前記前駆体の膜に重合剤を塗布または重合剤の溶液に浸漬して重合し、バッファ層または正孔注入層とする例を示した。基板上に導電性高分子前駆体としてバイエル社製Bytron Mを塗布し、200℃1時間焼成した。次にこの基板をバイエル社製Bytron Cに100℃にて1時間浸漬し、次に流水中に1昼夜浸漬した。さらに200℃1時間焼成した。こうして作成した膜の膜厚変動は1mm□領域内でおよそ50nm以下であった。
【0020】
(参考例)本例では陽極上に導電性高分子前駆体またはこの溶液を塗布し、その後、加熱により重合し、バッファ層または正孔注入層とする例を示した。基板上に導電性高分子前駆体としてバイエル社製Bytron Mを塗布し、200℃12時間焼成した。こうして作成した膜の膜厚変動は1mm□領域内でおよそ50nm以下であった。
【0021】
以上実施例を述べたが、導電性高分子材料としてポリチオフェン誘導体およびポリアニリン誘導体を主に紹介したが、導電性を有し、かつ製膜しやすい高分子前駆体であれば同様に用いる事が出来る。本発明は従来の有機EL素子の構成に応用できる。
【0022】
【発明の効果】
以上本発明によれば、バッファ層または正孔注入層を、導電性高分子前駆体を製膜後重合して形成する事により、発光効率を飛躍的に向上する事が出来た。本発明を携帯型情報機器に応用すれば、長時間バッテリー動作を実現出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における電界発光素子の簡単な断面図である。
【符号の説明】
1…透明基板
2…陽極(群)
3…バッファ層または正孔注入層
4…発光層
5…陰極(群)
6…保護膜
7…駆動ドライバー回路
Claims (2)
- 少なくとも1方が透明な2枚の電極間にバッファ層または正孔注入層、および発光層、さらに必要に応じて電子注入層を配置した構造の電界発光素子の製造方法において、陽極上に、チオフェン誘導体またはアニリン誘導体からなる導電性高分子前駆体と前記導電性高分子前駆体の重合剤を混合した物またはこれら溶液を塗布し、その後、第1焼成処理、水への浸漬処理、第2焼成処理を順次行うことにより重合させてバッファ層または正孔注入層とする事を特徴とする電界発光素子の製造方法。
- 少なくとも1方が透明な2枚の電極間にバッファ層または正孔注入層、および発光層、さらに必要に応じて電子注入層を配置した構造の電界発光素子の製造方法において、陽極上に、チオフェン誘導体またはアニリン誘導体からなる導電性高分子前駆体またはこの溶液を塗布し、その後、前記前駆体の膜に重合剤塗布または重合剤溶液への浸漬を行い、さらに、第1焼成処理、水への浸漬処理、第2焼成処理を順次行うことにより重合させてバッファ層または正孔注入層とする事を特徴とする電界発光素子の製造方法。
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