JP3891530B2 - 無菌充填用の液化ガス流下装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲料等を充填してから缶蓋で覆うまでの間の各缶のヘッドスペースに不活性の低温液化ガスを所定量ずつ流下させるための液化ガス流下装置であって、クリーンエアーによる略無菌状態の雰囲気内に装置本体が配置されている無菌充填用の液化ガス流下装置に関し、特に、液化ガス供給用の配管に接続された蒸気供給用の配管から供給される殺菌用の蒸気によって各配管と装置本体内の殺菌が可能なように構成された無菌充填用の液化ガス流下装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
コーヒー,紅茶,緑茶,ウーロン茶,および果汁等の非炭酸飲料を缶詰にする場合、DI(絞りしごき)缶のような薄肉の胴壁を持つ缶体に飲料を充填して密封するのに際して、飲料を充填した缶内の液面上に、液体窒素のような不活性ガスの低温液化ガスを少量添加してから、缶の開口部に缶蓋を巻締めして密封するということが従来から行なわれている。
【0003】
そのように液化ガスを少量添加することによって、密封された缶の内圧が添加された液化ガスの気化によって大気圧よりも高くなり、少しばかりの外圧が加わっても薄肉の胴壁が変形しないようになると共に、飲料上への添加時に液化ガスの一部が瞬時に気化してヘッドスペースの空気を缶外へ追い出すことで、ヘッドスペースの残存酸素量を減少させることができて、密封された缶内での飲料の酸化による劣化を減少させることができる。
【0004】
一方、上記のような非炭酸飲料の缶詰では、レトルト殺菌法や熱間充填法(ホットパック)といった従来から一般的に行われている殺菌処理方法では、中身の飲料が比較的長時間にわたって高温状態に維持されることで、飲料本来(例えば、果汁飲料ならば搾りたてのもの、コーヒー,紅茶,緑茶,ウーロン茶等ならば作りたてのもの)の味や香りが落ちたり色が変わったりするという問題を生じることから、所謂無菌充填法というものが従来から種々研究されている。
【0005】
すなわち、無菌充填法では、缶詰の製造時にできるだけ飲料の熱履歴を少なくして、飲料本来の味や香りや色をできるだけ保ったままの飲料缶詰を製造するために、高温で短時間に殺菌して急速に冷却した殺菌済みの飲料を、クリーンエアーによる略無菌状態の雰囲気(クラス10〜100程度の高レベルのクリーンエアーの領域)内で、殺菌済みの空缶に充填して、殺菌済みの缶蓋で密封するようにしている。
【0006】
そのような無菌充填法による飲料缶詰の製造において、DI缶のような薄肉の胴壁を持つ缶体を使用して、缶を密封する前に各缶のヘッドスペースに除菌済みの液化ガスを添加するような場合、液化ガス流下装置の装置本体を、クリーンエアーによる略無菌状態(クラス10〜100)のクリーンブース内で、飲料充填機から缶蓋巻締機への搬送路の近傍に配置しておくと共に、その使用開始に先立って、液化ガスの流下を行うための装置本体の内部(装置本体内の貯留タンクを経てノズル部分に至る液化ガスの通路全体)および各配管内を予め無菌状態となるように殺菌しておくことが必要となる。
【0007】
しかしながら、液化ガス流下装置の装置本体を略無菌状態(クラス10〜100)のクリーンブース内に設置した場合、装置本体の外面側だけでなく、その内部全体をも殺菌する必要があり、その作業によって該装置本体の周りの高レベルの空気清浄度を低下させてしまうこととなるため、無菌充填法においては、液化ガス流下装置による除菌済みの液化ガスの添加を実施するのが困難なものとなっていた。
【0008】
これに対して、高レベルの空気清浄度に維持されたクリーンブース内に装置本体が設置される液化ガス流下装置について、クリーンブース内の装置本体にクリーンブース外から液化ガスを供給するための配管に対し、殺菌用の蒸気を供給するための配管を接続して、各配管に設けられている各開閉制御弁を作動させるだけで装置本体内や配管内を簡単に殺菌できるようにするということが、この出願に先立つ本出願人の出願により既に公知となっている(特開平11−43111号公報参照)。
【0009】
そのような本出願人による無菌充填用の液化ガス流下装置によれば、装置本体に接続されている各配管の開閉制御弁を制御するだけで、高レベルの無菌雰囲気内(クリーンブース内)に配置されている装置本体の周りの空気清浄度を低下させることはなく、装置本体(およびそれに接続されている各配管)の使用前の殺菌から使用後の後処理に至るまでの各操作を連続して自動的に行うことができ、無菌充填法における除菌済みの液化ガス(液体窒素)の添加を効果的に実施することができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような無菌充填用の液化ガス流下装置では、特開平11−43111号公報中にも記載されているように、液化ガス供給用の配管に対して、更に、加熱された気体(窒素ガス)を供給するための配管を接続させることにより、殺菌後の装置本体内や配管内を加熱気体により冷却乾燥するようにしていることから、通常は、殺菌用蒸気のドレイン(蒸気が冷却して凝縮した水滴)が装置本体内や配管内に残らないようにしている。
【0011】
しかしながら、殺菌用蒸気や加熱気体の供給部および蒸気ドレインの排出部から離れた装置本体内では、蒸気のドレインが排出され難いことから、加熱気体の供給が不充分であったりすると、装置本体内の内壁や底部などにドレインが残る可能性があり、殺菌後の装置本体内にドレインが残ると、次いで液化ガスを装置本体内に導入した時点で、超低温の液化ガスにより残ったドレインが氷結して氷粒となってしまう。
【0012】
そして、ドレインの氷粒が装置本体の内壁から分離すると、液化ガス(液体窒素)よりも比重が大きいために、ノズル部分に向かって沈降して行き、この氷粒が流下ノズルの孔に詰まったりすることで液化ガスの流下量が変動して、その結果、内圧の安定した飲料缶詰等(飲料やその他の液体を内容物として多く含むような缶詰)を提供することができないというような問題を生じる虞がある。
【0013】
本発明は、上記のような問題の解消を課題とするもので、蒸気により内部を殺菌するようにした無菌充填用の液化ガス流下装置について、殺菌後の装置本体内に殺菌用蒸気のドレインが残るような虞をなくすことで、常に内圧の安定した缶詰を提供できるようにすることを課題とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような課題を解決するために、液化ガスの供給源から液化ガス供給用の配管を通して装置本体内に供給されてくる液化ガスを、飲料等を充填してから缶蓋で覆うまでの間の各缶のヘッドスペースに所定量ずつ流下させるために、クリーンエアーによる略無菌状態の雰囲気内に装置本体が配置されていると共に、装置本体に接続される液化ガス供給用の配管に対して、殺菌用の蒸気を供給するための配管が接続されているような無菌充填用の液化ガス流下装置において、装置本体の液化ガスの通路が、全て液化ガスの流れる方向に沿って下方に傾斜していると共に、シリンダ部分に対してプラグ部分の位置を変えることで開閉されるノズルが、装置本体の液化ガス室の下端に設けられ、また、ノズルの周囲を覆うノズルヒーターが、装置本体の下端近傍の外周面に対して摺動自在に嵌挿されていて、ノズルのシリンダ部分の下部外面に形成されたフランジ部と液化ガス室の底板とが密着し且つ両者の間に任意に隙間を開けられるように、ノズルのシリンダ部分が、液化ガス室の底板に対して下方に移動可能なように設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
上記のような構造の液化ガス流下装置によれば、蒸気による殺菌時にノズルのシリンダ部分と液化ガス室の底板との間に隙間を開けておくことで、装置内の殺菌時に、装置本体の内壁に付着した蒸気のドレインは、液化ガスの通路の傾斜に沿って流れ落ちることで、装置本体の液化ガス室の底部に集められてから、ノズルのシリンダ部分と液化ガス室の底板との間の隙間を通して、装置本体の外に完全に排出されることとなる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の無菌充填用の液化ガス流下装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の液化ガス流下装置を備えた無菌充填法による飲料缶詰製造ラインの一例を概略的に示すものであり、本実施形態では、缶詰製造ラインが設置されているクリーンルーム(クラス10,000)内に、空気清浄度が中レベル(クラス1,000〜10,000)の領域が画成され、更にその中に、空気清浄度が高レベル(クラス10〜100)の領域がクリーンブースとして画成されていて、殺菌済みの空缶の搬送路,飲料充填機周り,飲料充填機から缶蓋巻締機への搬送路,缶蓋巻締機周り,および殺菌済み缶蓋の供給路については、何れも、空気清浄度が高レベル(クラス10〜100)のクリーンブース内に設置されている。
【0018】
そのような無菌充填法による缶詰製造ラインにおいて、液化ガス流下装置は、その装置本体が、空気清浄度が高レベル(クラス10〜100)のクリーンブース内で、飲料充填機から缶蓋巻締機への搬送路の途中に配置されており、装置本体に接続されている各配管は、図示していないが、クリーンブース近傍の外側からクリーンブース内の装置本体に接続されている。
【0019】
上記のような飲料缶詰の製造ラインでは、空缶供給コンベアーにより連続的に供給された未処理の空缶を、まず、缶外面の薬液噴霧装置において、缶胴の外周面および缶底外面に殺菌処理用の薬液(過酸化水素5重量%の水溶液)を噴霧してから、缶内面の薬液噴霧装置を通して、更に、空缶の内面に殺菌処理用の薬液(過酸化水素5重量%の水溶液)を噴霧した後、加熱殺菌処理オーブン内に送り込む。
【0020】
そして、加熱殺菌処理オーブン内で、内面と外面に薬液が噴霧された空缶を、加熱炉体による高温(250℃程度)の熱風で加熱して、付着した薬液の過酸化水素を分解除去することで、空缶の殺菌処理を完了させる。
【0021】
次いで、加熱殺菌処理オーブンから出た殺菌済みの空缶を、略無菌雰囲気(空気清浄度がクラス100)のトンネル内で、クリーンエアー置換装置によりその周辺の空気を清浄化した後、殺菌済み空缶の冷却装置により無菌水を噴霧することで、空缶を洗浄すると共に加熱されている空缶を内容物の充填温度付近に冷却してから、略無菌雰囲気(空気清浄度がクラス100)内の飲料充填機に供給する。
【0022】
そして、クリーンブース内で、冷却された殺菌済みの空缶に対して、飲料殺菌装置で高温短時間に加熱殺菌後、充填温度まで冷却された殺菌済み飲料を、飲料充填機によって所定量充填してから、クリーンブース内で、飲料充填済みの缶を缶蓋巻締機に向けてタイミングコンベアーで供給する。
【0023】
そして、搬送用のタイミングコンベアーにより缶蓋巻締機に向けて搬送されている飲料充填済みの各缶に対して、クリーンブース内で、液化ガス流下装置の装置本体から、除菌済みの不活性低温液化ガス(液体窒素)を所定量ずつ流下することで、飲料充填済みの缶内上部のヘッドスペースに対して、所定量ずつの液化ガスをそれぞれ添加する。
【0024】
次いで、飲料を充填し液化ガス(液体窒素)を添加した各缶に対して、クリーンブース内で、缶蓋殺菌装置から略無菌雰囲気(空気清浄度がクラス100)のシュート内を通して供給される殺菌済みの缶蓋を載置してから、缶蓋巻締機によって巻き締めて密封した後、飲料を内容物とする缶詰の殺菌済みの製品として搬出コンベアーにより搬出する。
【0025】
図2は、上記のような無菌充填法による飲料缶詰製造ラインにおいて使用されている液化ガス流下装置の概略を示すもので、液化ガス流下装置の装置本体1は、液化ガスボンベ2から配管22を通して送給されてくる液体窒素を、除菌用のセラミックフィルター3を通してから、液面を大気に開放し且つ液面を所定の高さに保った状態で貯留タンク11に一時的に貯留して、貯留タンク11に貯留した液体窒素を、それ自体の重力により常に略一定の圧力がかかっている状態で、流量制御が可能なノズル13を通して流下させるものである。
【0026】
液化ガス流下装置の装置本体1内には、上面が開放された貯留タンク11が設けられ、貯留タンク11よりも下方で上下方向に延びる液化ガス室12が、貯留タンク11の底部と液化ガス室12の上部とが連通するように設けられ、液化ガス室12の下端に流下用のノズル13(ノズルのシリンダ部分)が設けられていて、上方から気密状態で液化ガス室12内に上下動可能に挿通された流量制御用のロッド14により、該ロッド14の上下方向の進退によりその下端のプラグ(ノズルのプラグ部分)の位置を変えることで、ノズル13の開度が制御され、貯留タンク11内に貯留されている液体窒素が、液化ガス室12を通して、流量可変ノズル13の開度に応じた流量で下方に流下される。
【0027】
また、装置本体1には、貯留タンク11や液化ガス室12を外側から覆うように、低温の液体窒素を外気温から断熱するための真空断熱室15が形成されており、さらに、低温の液体窒素の流下に伴って大気中の水蒸気がノズル13の出口付近に氷結して付着するのを防止するために、装置本体1の下端でノズル13の周囲を覆うように、防霜用のノズルヒーター16が着脱可能に取り付けられている。
【0028】
装置本体1の貯留タンク11内に貯留される液体窒素の液面の高さについては、液面の上限を規定するための上限レベルセンサー17aと、液面の下限を規定するための下限レベルセンサー17bとにより、液面の高さを検知して貯留タンク11への液体窒素の流入を制御することで、常に液面の高さを略一定の範囲に維持している。
【0029】
流量可変ノズル13の開度については、密封後の缶詰の缶内圧力の情報(X−rayレベルモニターや触圧モニター又は打缶式内圧モニターの検出結果)のフィードバックに基づき、図示していない定内圧制御ユニットからの制御信号によって開閉駆動源18を駆動制御し、ロッド14を上下方向に進退させてその下端のプラグの位置を変えることで、適当な流量となる開度に制御している。
【0030】
そのような液化ガス流下装置の装置本体1に対して、液化ガスボンベ2からの液体窒素を除菌用フィルター3を通して装置本体1内に送り込むための液体窒素供給管(液化ガス供給用配管)22が接続され、この液体窒素供給管22に対して、装置内部全体(配管から装置本体1内を通る液化ガスの通路全体)を殺菌するための各配管が、蒸気殺菌ユニット4として接続されている。
【0031】
また、装置本体1の上部には、装置本体1の内部で貯留タンク11に貯留した液体窒素の気化により発生した窒素ガスを排気するために、外気の侵入を防ぐと同時に窒素ガスを外部に導くための排気用シャッター5を介して、末端が大気中に開放された排気管25(蒸気殺菌ユニット4の各配管のうちの一つとなるもの)が接続されている。
【0032】
さらに、装置本体1に対して、蒸気による装置本体1内の洗浄殺菌時とその後の冷却乾燥時にのみノズルヒーター16の下端開放部を着脱自在に塞ぐように、装置本体1とは別体の殺菌用キャップ19が用意されている。
【0033】
図3は、上記のような液化ガス流下装置の装置本体1に対する各配管の接続構造を示すものであって、その構造や使用状態については、特開平11−43111号公報中に記載されているものと基本的に相違するものではない。
【0034】
すなわち、装置本体1の外側を覆う真空断熱室15には、バキュームポンプから延びる吸気管21が接続されており、真空断熱室15で覆われた装置本体1の内部に対して、既に述べたように、ボンベから貯留タンク11内に液体窒素を送給するための液体窒素供給管22が、除菌フィルター(0.2μmメッシュのセラミックフィルター)3を介して接続されていて、この液体窒素供給管22に対して、殺菌用の蒸気を供給するための蒸気供給管23と、冷却乾燥用の窒素ガスを供給するための窒素ガス供給管24とが、それぞれの開閉制御弁よりも下流側で接続されている。
【0035】
一方、液化ガス流下装置の装置本体1からは、既に述べたように、貯留タンク11に貯留されている液体窒素の気化により発生した窒素ガスを排気するために、外気の侵入を防ぐと同時に窒素ガスを外部に導くための排気用シャッター5を介して排気管25が接続されており、排気管25の末端は大気中に開放されていて、排気管25の開閉制御弁よりも上流側(装置本体側)からは、蒸気排出管26が分岐され、蒸気排出管26の末端は蒸気ドレイン排出管27に接続されている。
【0036】
また、ノズルヒーター16と排気用シャッター5を連通させるように、気体戻し管28が配設されており、気体戻し管28の途中からは、蒸気を排出すると共に窒素ガスを導入するための排出導入管29が分岐されていて、排出導入管29の末端側は蒸気ドレイン排出管27に接続されている。この排出導入管29の途中(除菌フィルターと開閉制御弁の間)からは、窒素ガス導入管30が分岐されており、窒素ガス導入管30の他端は、窒素ガス供給管24の途中(ラインヒーターと減圧弁の間)に接続されている。
【0037】
また、蒸気による殺菌時とその後の窒素ガスによる冷却乾燥時にのみノズルヒーター16の下端開放部を着脱自在に塞ぐための殺菌用キャップ19に対して、キャップ用蒸気排出管31が接続されており、キャップ用蒸気排出管31の末端は蒸気ドレイン排出管27に接続されている。
【0038】
なお、液体窒素供給管22と蒸気供給管23と窒素ガス供給管24についても、その途中(それぞれの管における2つの開閉制御弁の間)が、それぞれ別途の開閉制御弁を介して蒸気ドレイン排出管27に接続されており、また、装置本体1の上部と排気用シャッター5を連通する管には、途中に開閉制御弁と手動弁と逆止弁を設けた蒸気ドレイン排出管32が接続されている。
【0039】
上記のように装置本体1に接続される各配管のそれぞれには、図示したように、その適所に開閉制御弁が設けられており、装置本体1および各配管の適所には、温度センサーや圧力センサーが設けられていて、それらのセンサーの検知結果に基づいて各配管の開閉制御弁がそれぞれ制御されることで、液体窒素の流量や殺菌時の蒸気の流量や加熱された窒素ガスの流量や各配管の内圧等についての管理が行われている。
【0040】
なお、上記のように装置本体1に接続される各配管は、クリーンブース内に配置された装置本体1に対して、クリーンブースの近傍で蒸気殺菌ユニットとして纏められており、この蒸気殺菌ユニットを取り替えることで、無菌充填用でない従来の装置の配管に容易に変更できるものとなっている。
【0041】
上記のような配管構造を備えた無菌充填用の液化ガス流下装置による殺菌の準備、殺菌工程、冷却乾燥工程、液化ガス流下の準備、液化ガス流下工程、後処理工程のそれぞれについて以下に説明する。
【0042】
液化ガス流下装置を使用するに当たり、まず、蒸気による殺菌の準備として、装置本体1の下端に取り付けられたノズルヒーター16の下端開口部を殺菌用キャップ19で閉鎖すると共に、装置本体1の下端に形成されたノズル13を開の状態としてから、各配管の開閉制御弁が全て閉じられている状態で、各配管の手動開閉弁を全て開いて、ラインヒーターや各センサー等をONとしておく。
【0043】
そして、装置の内部全体を蒸気により殺菌するために、蒸気供給管23の各開閉制御弁を開くと共に、蒸気排出管26の開閉制御弁と排出導入管29の開閉制御弁とを、15秒間隔で交互に開閉を繰り返すように制御することにより、蒸気供給管23から供給された蒸気が、除菌フィルター3を通して装置本体1内に導入され、装置本体1の内部全体を通ってから、装置本体1の上部からは、排気用シャッター5を通り、一部は排気管25、残りは蒸気排出管26を通って排出される。
【0044】
一方、装置本体1の下部からは、ノズルヒーター16から、一部は気体戻し管28を通って排気管25や蒸気排出管26から排出され、残りは排出導入管29を通って排出されると共に、殺菌用キャップ19からキャップ用蒸気排出管31を通って排出されて、その結果、装置本体1の内部全体が蒸気によって殺菌されることとなる。
なお、その際の蒸気の供給量について、殺菌キャップ19に設けられた温度センサーの検知結果に基づいて、当該部分の温度が125℃で30分(タイマーで制御)殺菌するように、蒸気供給管23の開閉制御弁の開度が制御されることとなる。
【0045】
上記のように装置本体1の内部全体を蒸気により殺菌した後、蒸気供給管23の一方の開閉制御弁(上流側)を閉じ、やや遅れて他方の開閉制御弁(下流側)を閉じると共に、蒸気供給管23の開閉制御弁の閉と同時に、窒素ガス供給管24と排気管25と蒸気排出管26と排出導入管29のそれぞれの開閉制御弁を開けると共に、窒素ガス導入管30の開閉制御弁を開ける。
【0046】
そして、この時点で、窒素ガス供給管24のラインヒーターは既にONとなっているが、更に、ノズルヒーター16をONにすると共に、吸気管21の末端に設置されたバキュームポンプの駆動を開始し、それよりも遅れて圧力スイッチをONとして、吸気管21を通して空気を抜くことで装置本体1の真空断熱室15を真空状態とする。
【0047】
それにより、ラインヒーターにより加熱されて窒素ガス供給管24から供給された冷却乾燥用の窒素ガスが、除菌フィルター3を通して、装置本体1内に導入され、装置本体1の内部全体を通ってから、装置本体1の上部からは、一部は直接に蒸気ドレイン排出管32に排出され、残りは排気用シャッター5を通り蒸気排出管26や排気管25を通って排出される一方、装置本体1の下部からは、ノズルヒーター16から、一部は気体戻し管28から排気用シャッター5を通って排気管25や蒸気排出管26から排出され、残りは排出導入管29から排出される。その結果、装置本体1の内部全体、および、蒸気の通った配管内が、加熱された窒素ガスによって冷却乾燥される。
【0048】
そして、装置本体1のノズルヒーター16から殺菌用キャップ19を取り外すと、一定時間後には、ラインヒーターにより加熱されて窒素ガスが、窒素ガス導入管30から排出導入管29を通してノズルヒーター16に供給され、その一部がノズルヒーター16からノズル13の先端部周辺に放出され、残りは気体戻し管28から排気用シャッター5を通って排気管25から排出される。
【0049】
上記のように装置本体1の内部全体を殺菌して冷却乾燥した後、液体窒素を貯留タンク11に所定の液面高さになるまで貯留するために、装置本体1下端のノズル13を完全に閉じた状態としてから、窒素ガス供給管24の各開閉制御弁を閉じて、液体窒素供給管22の開閉制御弁を開き、貯留タンク11内の液面が所定の高さになると、開閉制御弁を閉じるように制御することにより、ボンベから供給される液体窒素は、液体窒素供給管22から除菌フィルター3を通って貯留タンク11内に送り込まれ、液化ガス室12に充満してから貯留タンク11内で所定の液面高さまで充填されると、各レベルセンサー17a,17bの検知に基づくフィードバック制御により、液体窒素供給管22の開閉制御弁が閉じられて、液体窒素流下の準備が完了する。
【0050】
そして、各缶に対して液体窒素を所定量ずつ流下させるときには、装置本体1のノズル13を開くことで液体窒素が流下されて各缶に充填されると共に、各レベルセンサー17a,17bの検知に基づくフィードバック制御により、液体窒素供給管22の開閉制御弁の開度を制御する(一方の開閉制御弁の開度を制御し、他方の開閉制御弁は全開)ことで、液体窒素供給管22から除菌フィルター3を通って、貯留タンク11内での液面を常に一定の高さ範囲内に維持するように、流下された分の液体窒素が装置本体1に連続的に補給される。
【0051】
なお、その際、排気管25の開閉制御弁は開かれており、貯留タンク11内の液面から気化した窒素ガスは、大半は貯留タンク11の上蓋部分に設けられた排気口から放出されるが、排気用シャッター5を通して排気管25からも大気中に放出されているため、真空断熱室15によって覆われている装置本体1の内部の液面上部の空間部は、常に大気圧と略同じになっていて、その結果、液体窒素自体の重力により常に略一定の圧力がかかっている状態で、ノズル13からノズル開度に応じて一定量の液体窒素が流下することとなる。
【0052】
また、窒素ガス供給管24のラインヒーターにより加熱されて窒素ガスが、窒素ガス導入管30から排出導入管29を通して、加温されている防霜用ノズルヒーター16に供給され、ノズルヒーター16からノズル13の先端部周辺に放出され続けているため、大気中の水蒸気がノズル13の出口付近に近づくのが阻止される結果、水蒸気がノズル13の出口付近に氷結して付着するのが確実に防止されている。
【0053】
その後、液化ガス流下装置の使用が終わってからの後処理については、液体窒素供給管22の開閉制御弁を閉じて液体窒素の供給を停止してから、更に液体窒素を流下させて、装置本体1内から液体窒素を完全に抜き取った時点で、ノズル13を閉じ、吸気管21のバキュームポンプを停止させると共に、窒素ガス供給管24の開閉制御弁を開くことで、装置本体1内および配管内に窒素ガスを充満させてから、全ての開閉制御弁と手動開閉弁を閉じ、ラインヒーターやノズルヒーター16や各センサー等をOFFにして、次回の使用に備えることとなる。
【0054】
ところで、上記のような無菌充填用の液化ガス流下装置において、本実施形態では、図2に示すように、装置本体1の液化ガス通路、即ち、除菌用フィルター3から貯留タンク11に液体窒素を送り込むための通路20aと、貯留タンク11の底から液化ガス室12に液体窒素を送り込むための通路20bとは、何れも、液体窒素の流れる方向に向かって下方に傾斜している。
【0055】
また、図4および図5に示すように、装置本体1の液化ガス室12の下端に設置されるノズル13のシリンダ部分13Bは、液化ガス室12の底板12aとの間で任意に隙間を開けられるように、液化ガス室12の底板12aから離れて下方に移動可能なように設置されている。
なお、装置本体1の液化ガス室12とノズル13の部分について、図4は、液体窒素をノズル13から流下させて缶のヘッドスペースに充填する使用時の状態を示すものであり、図5は、蒸気により殺菌する時の状態を示すものである。
【0056】
すなわち、本実施形態では、下部内面に雌ネジ部36aを形成したリング状のノズルヒーター取付部材36が、装置本体1の下端近傍の外周面に固着された突起部37によって回転可能な状態に保持されており、上部外面に雄ネジ部16aを形成したノズルヒーター16が、装置本体1の下端近傍の外周面に対して下方から摺動自在に嵌挿されていて、上方に位置するノズルヒーター取付部材36の雌ネジ部36aと下方に位置するノズルヒーター16の雄ネジ部16aとは螺合されている。
【0057】
また、ノズルヒーター16には、その内部に無菌窒素ガスの流路16bが形成され、また、側壁部分を貫通するように蒸気ドレイン排出用の孔16cが形成され、孔16cの上方の外面側にキャップ取付用のフランジ部16dが外方に突出するように一体的に固着されていると共に、ノズル13のシリンダ部分13Bには、その下部外面にフランジ部13aが外方に突出するように一体的に形成されている。
【0058】
そのため、ノズルヒーター取付部材36の雌ネジ部36aとノズルヒーター16の雄ネジ部16aとの螺合を締めた状態とすることで、図4に示すように、ノズルヒーター16の底部上面と、液化ガス室12の底板12aの下面とによって、ノズルシリンダ部分13Bのフランジ部13aがシールリングを介して密着的に挟持され、それによって、液体窒素を缶に充填する時に、液化ガス室12内の液体窒素を、液化ガス室12の底部から漏らすことなく、ノズル13を通して流下させることができる。
【0059】
また、ノズルヒーター取付部材36の雌ネジ部36aとノズルヒーター16の雄ネジ部16aとの螺合を緩めた状態とすることで、図5に示すように、液化ガス室12の底板12aの下面と、ノズルシリンダ部分13Bのフランジ部13aと、ノズルヒーター16の底部上面との間にそれぞれ隙間が開き、それによって、ノズルヒーター16の下端開放部を殺菌用キャップ19により閉鎖してから蒸気により殺菌する時に、液化ガス室12の底部に集められた蒸気やドレインを孔16cを通して完全に外部に排出することができる。
【0060】
上記のように構成されている本実施形態の無菌充填用の液化ガス流下装置によれば、蒸気による殺菌時にノズルヒーター取付部材36の雌ネジ部36aとノズルヒーター16の雄ネジ部16aとの螺合を緩めた状態としておくことで、蒸気による殺菌時に、装置本体1の内壁に付着した殺菌用蒸気のドレインは、液化ガスの通路20a,20bの傾斜に沿って流れ落ち、液化ガス室12の底部に集められてから、液化ガス室12の底板12aの下面とノズルシリンダ部分13Bのフランジ部13aとの隙間を通り、ノズルヒーター16の蒸気ドレイン排出用の孔16c等を通って完全に外部に排出される。
【0061】
また、本実施形態では、液体窒素供給管22に対して、殺菌用の蒸気を供給するための蒸気供給管23が接続されていると共に、更に、加熱された窒素ガスを冷却乾燥用として供給するための窒素ガス供給管24が接続されていて、蒸気による殺菌の後で、蒸気の通った後の配管および装置本体1内に加熱された窒素ガスを通していることから、配管や装置本体1の内壁にドレインが残ったとしても、それを乾燥して排出したり、あるいは、ドレインのまま窒素ガスの流れによって排出したりすることができる。
【0062】
さらに、本実施形態では、図4および図5に示すように、液化ガス室12内に、プラグ部分13A(ロッド14の下端部)とシリンダ部分13Bからなるノズル13の部分の周りを囲むように、氷粒を避けるための網目又はパンチング板等から形成される多孔筒状体35が設けられており、それによって、配管の内壁にドレインが残り、それが氷粒となって液化ガス室12内に入り込んだとしても、多孔筒状体35により氷粒が遮られることで、ノズル13の流下孔が詰まるようなことはない。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したような本発明の無菌充填用の液化ガス流下装置によれば、蒸気による殺菌時に装置本体内から蒸気やそのドレインを効果的に排出することができて、装置内に残ったドレインの氷粒によって流下ノズルの孔が詰まるような事態が起きるのを回避することができるため、そのような氷粒の詰まりに起因する液化ガスの流下量の変動をなくすことができて、その結果、内圧の安定した缶詰を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液化ガス流下装置を備えた無菌充填法による飲料缶詰の製造ラインの概略を示す説明図。
【図2】本発明の液化ガス流下装置の装置本体についての概略を示す説明図。
【図3】図2に示した装置本体に対する各配管の接続状態を示す説明図。
【図4】本発明の液化ガス流下装置の一実施形態について、液化ガスを流下させて缶のヘッドスペースに充填する時の状態を示す説明図。
【図5】本発明の液化ガス流下装置の一実施形態について、蒸気による殺菌時の状態を示す説明図。
【符号の説明】
1 (液化ガス流下装置の)装置本体
12 (装置本体の)液化ガス室
12a 液化ガス室の底板
13 (装置本体の)ノズル
13A (ノズルの)プラグ部分
13B (ノズルの)シリンダ部分
20a (装置本体の)液化ガスの通路
20b (装置本体の)液化ガスの通路
22 液体窒素供給管(液化ガス供給用の配管)
23 蒸気供給管(殺菌用の蒸気を供給するための配管)
24 窒素ガス供給管(加熱された気体を供給するための配管)
35 多孔筒状体
Claims (3)
- 液化ガスの供給源から液化ガス供給用の配管を通して装置本体内に供給されてくる液化ガスを、飲料等を充填してから缶蓋で覆うまでの間の各缶のヘッドスペースに所定量ずつ流下させるために、クリーンエアーによる略無菌状態の雰囲気内に装置本体が配置されていると共に、装置本体に接続される液化ガス供給用の配管に対して、殺菌用の蒸気を供給するための配管が接続されているような無菌充填用の液化ガス流下装置において、装置本体の液化ガスの通路が、全て液化ガスの流れる方向に沿って下方に傾斜していると共に、シリンダ部分に対してプラグ部分の位置を変えることで開閉されるノズルが、装置本体の液化ガス室の下端に設けられ、また、ノズルの周囲を覆うノズルヒーターが、装置本体の下端近傍の外周面に対して摺動自在に嵌挿されていて、ノズルのシリンダ部分の下部外面に形成されたフランジ部と液化ガス室の底板とが密着し且つ両者の間に任意に隙間を開けられるように、ノズルのシリンダ部分が、液化ガス室の底板に対して下方に移動可能なように設けられていることを特徴とする無菌充填用の液化ガス流下装置。
- 液化ガス供給用の配管に対して、更に、加熱された気体を供給するための配管が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の無菌充填用の液化ガス流下装置。
- 液化ガス室の内部に、プラグ部分とシリンダ部分とからなるノズルの周りを囲むように、氷粒を避けるための多孔筒状体が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の無菌充填用の液化ガス流下装置。
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