JP3882898B2 - Method for manufacturing ink jet recording head - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板の表面に圧電素子を形成して、圧電素子の変位によりインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッド及びその製造方法並びにインクジェット式記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータを使用したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものの2種類が実用化されている。
【0003】
前者は圧電素子の端面を振動板に当接させることにより圧力発生室の容積を変化させることができて、高密度印刷に適したヘッドの製作が可能である反面、圧電素子をノズル開口の配列ピッチに一致させて櫛歯状に切り分けるという困難な工程や、切り分けられた圧電素子を圧力発生室に位置決めして固定する作業が必要となり、製造工程が複雑であるという問題がある。
【0004】
これに対して後者は、圧電材料のグリーンシートを圧力発生室の形状に合わせて貼付し、これを焼成するという比較的簡単な工程で振動板に圧電素子を作り付けることができるものの、たわみ振動を利用する関係上、ある程度の面積が必要となり、高密度配列が困難であるという問題がある。
【0005】
一方、後者の記録ヘッドの不都合を解消すべく、特開平5−286131号公報に見られるように、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものが提案されている。
【0006】
これによれば圧電素子を振動板に貼付ける作業が不要となって、リソグラフィ法という精密で、かつ簡便な手法で圧電素子を作り付けることができるばかりでなく、圧電素子の厚みを薄くできて高速駆動が可能になるという利点がある。
【0007】
また、圧力発生室が形成された流路形成基板に、圧電素子を封止する圧電素子保持部を有する封止基板を接合した構造が提案されている。これによれば、圧電素子を大気と遮断して、大気中の水分等による圧電素子の破壊を防止することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなインクジェット式記録ヘッドでは、一般的に、封止基板には、例えば、圧力発生室の共通のインク室となるリザーバ等、封止基板を厚さ方向に貫通する貫通孔が形成されている。
【0009】
このため、流路形成基板を異方性ウェットエッチングすることによって圧力発生室を形成する際に、例えば、ステンレス鋼(SUS)やシリコン単結晶基板等からなる保護板を封止基板上に接合し、封止基板の貫通孔を封止する必要がある。すなわち、貫通孔を介して流路形成基板等がエッチングされるのを防止する必要があり、作業効率が低下して製造コストが増加してしまうという問題がある。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑み、製造効率を向上してコストの低減を図ることができるインクジェット式記録ヘッド及びその製造方法並びにインクジェット式記録装置を提供することを課題とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、ノズル開口に連通する圧力発生室が画成される流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して設けられる下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子と、前記流路形成基板の前記圧電素子側に接合され当該圧電素子の運動を阻害しない程度の空間を確保した状態で当該空間を封止する圧電素子保持部を有すると共に厚さ方向に貫通する貫通孔を有する封止基板とを具備するインクジェット式記録ヘッドの製造方法であって、前記流路形成基板上に前記振動板及び前記圧電素子を形成する工程と、前記流路形成基板との接合面側に前記貫通孔の一部を構成する第1の貫通孔形成用凹部を有する封止基板を前記流路形成基板に接合する工程と、異方性ウェットエッチングにより前記流路形成基板に前記圧力発生室を形成すると共に前記封止基板の前記流路形成基板との接合面とは反対面側に前記貫通孔の一部を構成する第2の貫通孔形成用凹部を形成する工程と、前記封止基板をドライエッチングすることにより前記第1の貫通孔形成用凹部と第2の貫通孔形成用凹部とを連通させて前記貫通孔を形成する工程とを有することを特徴とするインクジェット式記録ヘッドの製造方法にある。
【0028】
かかる第1の態様では、封止基板の貫通孔を比較的容易に形成でき、製造効率が向上する。また、圧力発生室を形成する際に、封止基板によって圧電素子等が保護され、別途、保護板等を設ける必要がないため、製造コストを大幅に削減することができる。
【0029】
本発明の第2の態様は、前記封止基板の第1の貫通孔形成用凹部を異方性ウェットエッチングにより形成することを特徴とする第1の態様のインクジェット式記録ヘッドの製造方法にある。
【0030】
かかる第2の態様では、圧電素子保持部と第1の貫通孔形成用凹部とを同時に比較的容易に形成することができ、製造効率がさらに向上する。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0032】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及び断面図である。
【0033】
図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には、異方性エッチングにより形成された複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、圧力発生室12の長手方向外側には、後述する封止基板30のリザーバ部32と貫通部51を介して連通し各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバの一部を構成する連通部13が形成され、各圧力発生室12の長手方向一端部とそれぞれインク供給路14を介して連通されている。
【0034】
また、この流路形成基板10の一方の面は開口面となり、他方の面には予め熱酸化により形成した二酸化シリコンからなる、厚さ1〜2μmの弾性膜50が形成されている。
【0035】
ここで、異方性エッチングは、シリコン単結晶基板のエッチングレートの違いを利用して行われる。例えば、本実施形態では、シリコン単結晶基板をKOH等のアルカリ溶液に浸漬すると、徐々に侵食されて(110)面に垂直な第1の(111)面と、この第1の(111)面と約70度の角度をなし且つ上記(110)面と約35度の角度をなす第2の(111)面とが出現し、(110)面のエッチングレートと比較して(111)面のエッチングレートが約1/180であるという性質を利用して行われる。かかる異方性エッチングにより、二つの第1の(111)面と斜めの二つの第2の(111)面とで形成される平行四辺形状の深さ加工を基本として精密加工を行うことができ、圧力発生室12を高密度に配列することができる。
【0036】
本実施形態では、各圧力発生室12の長辺を第1の(111)面で、短辺を第2の(111)面で形成している。この圧力発生室12は、流路形成基板10をほぼ貫通して弾性膜50に達するまでエッチングすることにより形成されている。ここで、弾性膜50は、シリコン単結晶基板をエッチングするアルカリ溶液に侵される量がきわめて小さい。また各圧力発生室12の一端に連通する各インク供給路14は、圧力発生室12より浅く形成されており、圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。すなわち、インク供給路14は、シリコン単結晶基板を厚さ方向に途中までエッチング(ハーフエッチング)することにより形成されている。なお、ハーフエッチングは、エッチング時間の調整により行われる。
【0037】
なお、このような圧力発生室12等が形成される流路形成基板10の厚さは、圧力発生室12を配設する密度に合わせて最適な厚さを選択することが好ましい。例えば、1インチ当たり180個(180dpi)程度に圧力発生室12を配置する場合には、流路形成基板10の厚さは、180〜280μm程度、より望ましくは、220μm程度とするのが好適である。また、例えば、360dpi程度と比較的高密度に圧力発生室12を配置する場合には、流路形成基板10の厚さは、100μm以下とするのが好ましい。これは、隣接する圧力発生室12間の隔壁の剛性を保ちつつ、配列密度を高くできるからである。なお、本実施形態では、360dpiで圧力発生室12を配置するようにしているため、流路形成基板10の厚さは70μmとしている。
【0038】
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側で連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。なお、ノズルプレート20は、厚さが例えば、0.1〜1mmで、線膨張係数が300℃以下で、例えば2.5〜4.5[×10-6/℃]であるガラスセラミックス、又は不錆鋼などからなる。ノズルプレート20は、一方の面で流路形成基板10の一面を全面的に覆い、シリコン単結晶基板を衝撃や外力から保護する補強板の役目も果たす。また、ノズルプレート20は、流路形成基板10と熱膨張係数が略同一の材料で形成するようにしてもよい。この場合には、流路形成基板10とノズルプレート20との熱による変形が略同一となるため、熱硬化性の接着剤等を用いて容易に接合することができる。
【0039】
ここで、インク滴吐出圧力をインクに与える圧力発生室12の大きさと、インク滴を吐出するノズル開口21の大きさとは、吐出するインク滴の量、吐出スピード、吐出周波数に応じて最適化される。例えば、1インチ当たり360個のインク滴を記録する場合、ノズル開口21は数十μmの直径で精度よく形成する必要がある。
【0040】
一方、流路形成基板10の開口面とは反対側の弾性膜50の上には、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.1μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70、及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、下電極膜60は圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動ICや配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室毎に圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせて圧電アクチュエータと称する。
【0041】
また、圧電素子300の個別電極である上電極膜80の長手方向一端部近傍には、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続され、このリード電極90は、流路形成基板10の端部近傍まで引き出されている。なお、図示しないが、このリード電極90は、圧電素子300を駆動するための駆動IC等に接続される。
【0042】
なお、流路形成基板10の連通部13に対応する領域の弾性膜50上には、圧電素子300とは不連続の不連続下電極膜61、不連続圧電体層71及び不連続上電極膜81が残されており、連通部13と後述する封止基板30のリザーバ部31とを連通する貫通部51は、これらの複数の層を貫通して設けられている。
【0043】
また、流路形成基板10の圧電素子300側には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を確保した状態で、その空間を密封可能な圧電素子保持部31を有する封止基板が接合され、圧電素子300はこの圧電素子保持部31内に密封されている。
【0044】
また、封止基板30には、その厚さ方向に貫通する貫通孔、例えば、本実施形態では、複数の圧力発生室12の共通のインク室であるリザーバ100の少なくとも一部を構成するリザーバ部32が設けられている。このリザーバ部32は、封止基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述したように流路形成基板10の連通部13と貫通部51を介して連通されてリザーバ100を構成している。
【0045】
ここで、封止基板30のリザーバ部32は、異方性ウェットエッチングによって形成されたウェットエッチング部32aと、ドライエッチングによって形成されたドライエッチング部32bとで構成されている。例えば、本実施形態では、リザーバ部32の両開口部分がウェットエッチング部32aで構成され、これらウェットエッチング部32aの間の部分がドライエッチング部32bで構成されている。すなわち、両開口部分のウェットエッチング部32aがドライエッチング部32bによって連通されている。
【0046】
詳しくは後述するが、このような構成とすることにより、流路形成基板10の圧力発生室12等と、封止基板30のリザーバ部32とを比較的容易に形成することができ、製造コストを低減することができる。
【0047】
なお、このような封止基板30の材料としては、異方性ウェットエッチング及びドライエッチングによって貫通部であるリザーバ部32を比較的高精度に形成できる材料であれば、特に限定されないが、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料を用いることが好ましい。なお、本実施形態では、厚さ400μm程度のシリコン単結晶基板を用いている。
【0048】
また、この封止基板30の流路形成基板10上には、例えば、二酸化シリコン(SiO2)からなりリザーバ部32を形成する際のマスクとなる保護膜110が形成されている。
【0049】
そして、この保護膜110のリザーバ部32に対応する領域には、封止膜41及び固定板42からなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ部32の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止され、内部圧力の変化によって変形可能な可撓部33となっている。
【0050】
このように構成したインクジェット式記録ヘッドは、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路等からの記録信号に従い、上電極膜80と下電極膜60との間に電圧を印加し、弾性膜50、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
【0051】
以下、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図3〜図5を参照して説明する。なお、図3〜図5は、圧力発生室12の長手方向の断面図である。
【0052】
まず、図3(a)に示すように、流路形成基板10となる単結晶シリコン基板のウェハを約1100℃の拡散炉で熱酸化してその両面のそれぞれに二酸化シリコンからなる弾性膜50及び保護膜55を形成する。
【0053】
次に、図3(b)に示すように、弾性膜50上の全面にスパッタリングで下電極膜60を形成すると共に、所定形状にパターニングする。例えば、本実施形態では、流路形成基板10の圧力発生室12が形成される領域に、下電極膜60を所定形状にパターニングすると共に、連通部13が形成される領域に圧電素子300を構成する下電極膜60とは不連続の不連続下電極膜61を残している。
【0054】
この下電極膜60の材料としては、白金等が好適である。これは、スパッタリング法やゾル−ゲル法で成膜する後述の圧電体層70は、成膜後に大気雰囲気下又は酸素雰囲気下で600〜1000℃程度の温度で焼成して結晶化させる必要があるからである。すなわち、下電極膜60の材料は、このような高温、酸化雰囲気下で導電性を保持できなければならず、殊に、圧電体層70としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた場合には、酸化鉛の拡散による導電性の変化が少ないことが望ましく、これらの理由から白金、イリジウム又はそれらの複層膜が好適である。
【0055】
次に、図3(c)に示すように、下電極膜60及び不連続下電極膜61上に亘って圧電体層70を成膜する。例えば、本実施形態では、金属有機物を触媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて形成した。圧電体層70の材料としては、PZT系の材料がインクジェット式記録ヘッドに使用する場合には好適である。なお、この圧電体層70の成膜方法は、特に限定されず、例えば、スパッタリング法又はMOD法(有機金属熱塗布分解法)等のスピンコート法により成膜してもよい。
【0056】
さらに、ゾル−ゲル法又はスパッタリング法もしくはMOD法等によりチタン酸ジルコン酸鉛の前駆体膜を形成後、アルカリ水溶液中での高圧処理法にて低温で結晶化させる方法を用いてもよい。
【0057】
何れにしても、このように成膜された圧電体層70は、バルクの圧電体とは異なり結晶が優先配向しており、且つ本実施形態では、圧電体層70は、結晶が柱状に形成されている。なお、優先配向とは、結晶の配向方向が無秩序ではなく、特定の結晶面がほぼ一定の方向に向いている状態をいう。また、結晶が柱状の薄膜とは、略円柱体の結晶が中心軸を厚さ方向に略一致させた状態で面方向に亘って集合して薄膜を形成している状態をいう。勿論、優先配向した粒状の結晶で形成された薄膜であってもよい。なお、このように薄膜工程で製造された圧電体層の厚さは、一般的に0.2〜5μmである。
【0058】
次に、図3(d)に示すように、圧電体層70上に上電極膜80を成膜する。上電極膜80は、導電性の高い材料であればよく、アルミニウム、金、ニッケル、白金、イリジウム等の多くの金属や、導電性酸化物等を使用できる。本実施形態では、白金をスパッタリングにより成膜している。
【0059】
次に、図4(a)に示すように、圧電体層70及び上電極膜80のみをエッチングして圧電素子300のパターニングを行うと同時に、保護膜55をエッチングによりパターニングして圧力発生室12、連通部13及びインク供給路14が形成される領域に開口部55aを形成する。このとき、不連続下電極膜60上には、圧電素子300とは不連続の不連続圧電体層71及び不連続上電極膜81を残すようにしている。
【0060】
次に、図4(b)に示すように、リード電極90を流路形成基板10の全面に亘って形成すると共に圧電素子300毎にパターニングする。
【0061】
次に、図4(c)に示すように、流路形成基板10の圧電素子300側の面に、封止基板30を接着剤等によって接合する。
【0062】
ここで、封止基板30には、圧電素子保持部31と共に流路形成基板10との接合面側にリザーバ部32の一部となる第1のリザーバ形成用凹部35を異方性ウェットエッチングにより予め形成しておく。なお、このような第1のリザーバ形成用凹部35は、異方性ウェットエッチングにより圧電素子保持部31を形成する際に、同時に形成することが好ましい。
【0063】
また、封止基板30の流路形成基板10とは反対側の面には、例えば、二酸化シリコン(SiO2)からなり、リザーバ部32が形成される領域に開口部111を有する保護膜110を予め形成しておく。この保護膜110は、封止基板30をエッチングしてリザーバ部32を形成する際のマスクとなるものであり、その形成方法は特に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、封止基板30を熱酸化することによって形成している。
【0064】
このような封止基板30を流路形成基板10に接合後、前述したアルカリ溶液によるシリコン単結晶基板の異方性ウェットエッチングを行う。すなわち、図5(a)に示すように、流路形成基板10を保護膜55の開口部55aを介して異方性エッチングすることにより圧力発生室12、連通部13及びインク供給路14を形成する。また、同時に、保護膜110の開口部111を介して封止基板30をエッチングして第2のリザーバ形成用凹部36を形成する。
【0065】
この第2のリザーバ形成用凹部36の深さは、第1のリザーバ形成用凹部35と連通しない程度の深さであればよいが、本実施形態では、圧力発生室12と同時に形成しているため、第2のリザーバ形成用凹部36の深さは、圧力発生室12と略同一となっている。
【0066】
次に、図5(b)に示すように、第1のリザーバ形成用凹部35と第2のリザーバ形成用凹部36との間の封止基板30をドライエッチングすることにより、これら第1のリザーバ形成用凹部35と第2のリザーバ形成用凹部36とを連通する連通部37を形成する。これにより、ウェットエッチング部32a(35,36)とドライエッチング部32b(37)とからなるリザーバ部32が形成される。
【0067】
このように、本実施形態では、流路形成基板10に圧力発生室12を形成後、封止基板30の貫通孔、本実施形態では、リザーバ部32を貫通させるようにしたので、圧力発生室12を異方性ウェットエッチングで形成する際に、封止基板30上に、例えば、ステンレス鋼やシリコン単結晶基板等からなる保護板を設ける必要がない。これにより、材料費を削減することができると共に、作業工程が減少するため、製造コストを大幅に低減することができる。
【0068】
また、本実施形態では、圧電素子保持部31と第1のリザーバ用形成凹部35とを同時に形成するようにし、また圧力発生室12と第2のリザーバ用形成凹部36とを同時に形成するようにしたので、製造効率をさらに向上することができる。
【0069】
なお、その後、図5(c)に示すように、弾性膜50、不連続下電極膜61、不連続圧電体層71及び不連続上電極膜81を貫通する貫通孔51を形成し、連通部13とリザーバ部32とを連通させてリザーバ100を形成する。
【0070】
そして、流路形成基板10の圧電素子300とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接着剤等によって接合し、リザーバ形成基板30上に封止膜41と固定板42とからなるコンプライアンス基板40を接合することによってインクジェット式記録ヘッドとする。
【0071】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態を説明したが、インクジェット式記録ヘッドの基本的構成は上述したものに限定されるものではない。
【0072】
例えば、上述の実施形態では、成膜及びリソグラフィプロセスを応用して製造される薄膜型のインクジェット式記録ヘッドを例にしたが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型のインクジェット式記録ヘッドにも本発明を採用することができる。
【0073】
また、これら各実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図6は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0074】
図6に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0075】
そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8上を搬送されるようになっている。
【0076】
【発明の効果】
以上説明したように本発明では、接合基板の貫通孔を異方性ウェットエッチングにより形成されるウェットエッチング部とドライエッチングにより形成されるドライエッチング部とで構成するようにしたので、圧力発生室を形成する際に、保護板等を設ける必要がないため、材料費を削減することができる。また、保護板等を設ける必要がないことによって作業工数が減少するため、製造コストを大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの平面図及び断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るインクジェット式記録装置の概略図である。
【符号の説明】
10 流路形成基板
12 圧力発生室
20 ノズルプレート
21 ノズル開口
30 封止基板
31 圧電素子保持部
32 リザーバ部
32a ウェットエッチング部
32b ドライエッチング部
40 コンプライアンス基板
60 下電極膜
70 圧電体層
80 上電極膜
90 リード電極
100 リザーバ[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
According to the present invention, a part of a pressure generating chamber communicating with a nozzle opening for ejecting ink droplets is constituted by a diaphragm, and a piezoelectric element is formed on the surface of the diaphragm, and ink droplets are ejected by displacement of the piezoelectric element. The present invention relates to an ink jet recording head, a manufacturing method thereof, and an ink jet recording apparatus.
[0002]
[Prior art]
A part of the pressure generation chamber communicating with the nozzle opening for discharging ink droplets is constituted by a vibration plate, and the vibration plate is deformed by a piezoelectric element to pressurize the ink in the pressure generation chamber to discharge ink droplets from the nozzle opening. Two types of ink jet recording heads have been put into practical use: those using a longitudinal vibration mode piezoelectric actuator that extends and contracts in the axial direction of the piezoelectric element, and those using a flexural vibration mode piezoelectric actuator.
[0003]
The former can change the volume of the pressure generation chamber by bringing the end face of the piezoelectric element into contact with the vibration plate, and it is possible to manufacture a head suitable for high-density printing, while the piezoelectric element is arranged in an array of nozzle openings. There is a problem that the manufacturing process is complicated because a difficult process of matching the pitch into a comb-like shape and an operation of positioning and fixing the cut piezoelectric element in the pressure generating chamber are necessary.
[0004]
On the other hand, the latter can flexibly vibrate, although a piezoelectric element can be built on the diaphragm by a relatively simple process of sticking a green sheet of piezoelectric material according to the shape of the pressure generation chamber and firing it. There is a problem that a certain amount of area is required for the use of, and high-density arrangement is difficult.
[0005]
On the other hand, in order to eliminate the inconvenience of the latter recording head, a uniform piezoelectric material layer is formed by a film forming technique over the entire surface of the diaphragm as seen in Japanese Patent Laid-Open No. 5-286131. A material in which a piezoelectric layer is formed so that a material layer is cut into a shape corresponding to a pressure generation chamber by a lithography method and is independent for each pressure generation chamber has been proposed.
[0006]
This eliminates the need to affix the piezoelectric element to the diaphragm, so that not only can the piezoelectric element be created by a precise and simple technique called lithography, but also the thickness of the piezoelectric element can be reduced. There is an advantage that high-speed driving is possible.
[0007]
Further, a structure has been proposed in which a sealing substrate having a piezoelectric element holding portion for sealing a piezoelectric element is bonded to a flow path forming substrate in which a pressure generating chamber is formed. According to this, the piezoelectric element can be shielded from the atmosphere, and the piezoelectric element can be prevented from being destroyed by moisture in the atmosphere.
[0008]
[Problems to be solved by the invention]
However, in such an ink jet recording head, generally, a sealing substrate is provided with a through-hole that penetrates the sealing substrate in the thickness direction, such as a reservoir that serves as a common ink chamber for the pressure generation chamber. Has been.
[0009]
For this reason, when forming the pressure generating chamber by anisotropic wet etching of the flow path forming substrate, for example, a protective plate made of stainless steel (SUS) or a silicon single crystal substrate is bonded onto the sealing substrate. It is necessary to seal the through hole of the sealing substrate. That is, it is necessary to prevent the flow path forming substrate and the like from being etched through the through hole, and there is a problem that the working efficiency is lowered and the manufacturing cost is increased.
[0010]
In view of such circumstances, it is an object of the present invention to provide an ink jet recording head, a manufacturing method thereof, and an ink jet recording apparatus capable of improving manufacturing efficiency and reducing cost.
[0027]
[Means for Solving the Problems]
A first aspect of the present invention that solves the above problem is provided with a flow path forming substrate in which a pressure generation chamber communicating with a nozzle opening is defined, and provided on one surface side of the flow path forming substrate via a diaphragm. The space is sealed with a piezoelectric element composed of a lower electrode, a piezoelectric layer, and an upper electrode and a space that is bonded to the piezoelectric element side of the flow path forming substrate and does not hinder the movement of the piezoelectric element. An ink jet recording head manufacturing method comprising: a sealing substrate having a piezoelectric element holding portion and a through hole penetrating in a thickness direction, wherein the vibration plate and the piezoelectric element are disposed on the flow path forming substrate. A step of forming, and a step of bonding a sealing substrate having a first through-hole forming recess that constitutes a part of the through-hole on the bonding surface side with the flow channel forming substrate, The flow is caused by anisotropic wet etching. Forming the pressure generating chamber in the formation substrate and forming a second through-hole forming recess that constitutes a part of the through-hole on the side of the sealing substrate opposite to the joint surface with the flow path formation substrate And a step of forming the through hole by causing the first through hole forming concave portion and the second through hole forming concave portion to communicate with each other by dry etching the sealing substrate. And an ink jet recording head manufacturing method.
[0028]
In the first aspect, the through hole of the sealing substrate can be formed relatively easily, and the manufacturing efficiency is improved. Further, when the pressure generating chamber is formed, the piezoelectric element and the like are protected by the sealing substrate, and it is not necessary to separately provide a protective plate or the like, so that the manufacturing cost can be greatly reduced.
[0029]
According to a second aspect of the present invention, there is provided the ink jet recording head manufacturing method according to the first aspect, wherein the first through hole forming recess of the sealing substrate is formed by anisotropic wet etching. .
[0030]
In the second aspect, the piezoelectric element holding portion and the first through-hole forming recess can be formed relatively easily at the same time, and the manufacturing efficiency is further improved.
[0031]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
Hereinafter, the present invention will be described in detail based on embodiments.
[0032]
(Embodiment 1)
FIG. 1 is an exploded perspective view showing an ink jet recording head according to Embodiment 1 of the present invention, and FIG. 2 is a plan view and a cross-sectional view of FIG.
[0033]
As shown in the figure, the flow
[0034]
Further, one surface of the flow
[0035]
Here, the anisotropic etching is performed by utilizing the difference in etching rate of the silicon single crystal substrate. For example, in this embodiment, when a silicon single crystal substrate is immersed in an alkaline solution such as KOH, the first (111) plane perpendicular to the (110) plane is gradually eroded, and the first (111) plane. And a second (111) plane that forms an angle of about 70 degrees with the (110) plane and an angle of about 35 degrees appears, and the (111) plane is compared with the etching rate of the (110) plane. This is performed using the property that the etching rate is about 1/180. By this anisotropic etching, precision processing can be performed based on the parallelogram depth processing formed by two first (111) surfaces and two oblique second (111) surfaces. The
[0036]
In the present embodiment, the long side of each
[0037]
The thickness of the flow
[0038]
Further, a
[0039]
Here, the size of the
[0040]
On the other hand, on the
[0041]
Further, a
[0042]
A discontinuous
[0043]
In addition, a sealing substrate having a piezoelectric
[0044]
In addition, the sealing
[0045]
Here, the
[0046]
Although details will be described later, with such a configuration, the
[0047]
The material of the sealing
[0048]
On the flow
[0049]
A
[0050]
The ink jet recording head configured in this way takes in ink from an external ink supply means (not shown), fills the interior from the
[0051]
Hereinafter, a method for manufacturing such an ink jet recording head will be described with reference to FIGS. 3 to 5 are cross-sectional views of the
[0052]
First, as shown in FIG. 3A, a single-crystal silicon substrate wafer to be the flow
[0053]
Next, as shown in FIG. 3B, the
[0054]
As a material of the
[0055]
Next, as shown in FIG. 3C, the
[0056]
Further, after forming a lead zirconate titanate precursor film by a sol-gel method, sputtering method, MOD method, or the like, a method of crystallizing at a low temperature by a high-pressure treatment method in an alkaline aqueous solution may be used.
[0057]
In any case, the
[0058]
Next, as shown in FIG. 3D, an
[0059]
Next, as shown in FIG. 4A, only the
[0060]
Next, as shown in FIG. 4B, the
[0061]
Next, as illustrated in FIG. 4C, the sealing
[0062]
Here, on the sealing
[0063]
In addition, a
[0064]
After the sealing
[0065]
The depth of the second
[0066]
Next, as shown in FIG. 5B, the sealing
[0067]
As described above, in this embodiment, after the
[0068]
In the present embodiment, the piezoelectric
[0069]
After that, as shown in FIG. 5C, a through
[0070]
Then, the
[0071]
(Other embodiments)
While the embodiments of the present invention have been described above, the basic configuration of the ink jet recording head is not limited to that described above.
[0072]
For example, in the above-described embodiment, the thin film type ink jet recording head manufactured by applying the film forming and lithography processes is taken as an example. However, the present invention is not limited to this, and for example, a green sheet is pasted. The present invention can also be applied to a thick film type ink jet recording head formed by such a method.
[0073]
In addition, the ink jet recording head of each of these embodiments constitutes a part of a recording head unit including an ink flow path communicating with an ink cartridge or the like, and is mounted on the ink jet recording apparatus. FIG. 6 is a schematic view showing an example of the ink jet recording apparatus.
[0074]
As shown in FIG. 6, in the
[0075]
The driving force of the driving
[0076]
【The invention's effect】
As described above, in the present invention, the through hole of the bonding substrate is configured by the wet etching part formed by anisotropic wet etching and the dry etching part formed by dry etching. Since there is no need to provide a protective plate or the like when forming, material costs can be reduced. In addition, since it is not necessary to provide a protective plate or the like, the number of work steps is reduced, so that the manufacturing cost can be greatly reduced.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is an exploded perspective view of an ink jet recording head according to a first embodiment of the invention.
2A and 2B are a plan view and a cross-sectional view of the ink jet recording head according to the first embodiment of the invention.
FIG. 3 is a cross-sectional view showing a manufacturing process of the ink jet recording head according to the first embodiment of the invention.
FIG. 4 is a cross-sectional view showing a manufacturing process of the ink jet recording head according to the first embodiment of the invention.
FIG. 5 is a cross-sectional view showing a manufacturing process of the ink jet recording head according to the first embodiment of the invention.
FIG. 6 is a schematic view of an ink jet recording apparatus according to an embodiment of the present invention.
[Explanation of symbols]
DESCRIPTION OF
Claims (2)
前記流路形成基板上に前記振動板及び前記圧電素子を形成する工程と、前記流路形成基板との接合面側に前記貫通孔の一部を構成する第1の貫通孔形成用凹部を有する封止基板を前記流路形成基板に接合する工程と、異方性ウェットエッチングにより前記流路形成基板に前記圧力発生室を形成すると共に前記封止基板の前記流路形成基板との接合面とは反対面側に前記貫通孔の一部を構成する第2の貫通孔形成用凹部を形成する工程と、前記封止基板をドライエッチングすることにより前記第1の貫通孔形成用凹部と第2の貫通孔形成用凹部とを連通させて前記貫通孔を形成する工程とを有することを特徴とするインクジェット式記録ヘッドの製造方法。A flow path forming substrate in which a pressure generating chamber communicating with the nozzle opening is defined; and a piezoelectric element including a lower electrode, a piezoelectric layer, and an upper electrode provided on one surface side of the flow path forming substrate via a vibration plate A through hole penetrating in the thickness direction and having a piezoelectric element holding portion that seals the space in a state of securing a space that is bonded to the piezoelectric element side of the flow path forming substrate and does not hinder the movement of the piezoelectric element A method of manufacturing an ink jet recording head comprising a sealing substrate having holes,
A step of forming the diaphragm and the piezoelectric element on the flow path forming substrate, and a first through hole forming concave portion constituting a part of the through hole on a joint surface side with the flow path forming substrate. Bonding the sealing substrate to the flow path forming substrate, forming the pressure generating chamber in the flow path forming substrate by anisotropic wet etching, and joining the sealing substrate to the flow path forming substrate; Forming a second through-hole forming recess forming a part of the through-hole on the opposite surface side, and dry-etching the sealing substrate to form the first through-hole forming recess and the second And a step of forming the through hole by communicating with a through hole forming concave portion of the ink jet recording head.
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