JP3880925B2 - コモンレールおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コモンレール式燃料噴射装置に使用され、燃料ポンプによって発生された高圧の燃料をインジェクタに伝えるコモンレールに関する。
【0002】
【従来の技術】
コモンレールに関する従来技術として、図9に示したように、レール本体51の内部にその長手方向に延びたレール孔52を形成し、レール本体51の外周部からレール孔52に向けて複数の分岐孔53を形成し、さらにレール孔52にその一端が開口し、他端が分岐孔53に連結した複数のオリフィス孔54を備えたコモンレール50があった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−213045号公報(第3−4頁、第1図)
【0004】
この従来技術によるコモンレール50においては、燃料ポンプによって発生された高圧の燃料をインジェクタに伝えるとともに、レール孔52と分岐孔53との間に介装されたオリフィス孔54によって、インジェクタのバルブ開閉作動に伴う燃料の脈動を抑制する機能があった。また、上述したコモンレール50においては、オリフィス孔54のレール孔52への開口端部H(図9に示す)にエッジ部があると、レール孔52内の高圧の燃料によって開口端部Hにおいて大きな応力が発生し、内圧疲労強度が低下することが考えられるため、開口端部HをR面取りしていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したコモンレール50においては、オリフィス孔54のレール孔52への開口端部HをR面取りしていることは、高圧燃料によって開口端部Hに応力集中が発生することを防ぐために有効である。しかしながら、その一方、オリフィス孔54の開口端部HをR面取りしたことにより、レール孔52に導入された高圧燃料によって、図9にJで示したオリフィス孔54が分岐孔53と連結している端部に形成されたエッジ部に、新たに応力集中が発生することが分かった。したがって、端部Jへの応力集中が起こることによって、端部J近傍において内圧疲労強度が低下する恐れがあった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、高圧燃料による特定箇所における応力集中を防ぎ、レール本体の内圧疲労強度を向上させることのできるコモンレールおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明においては、レール本体の内部に長手方向に延びるレール孔、前記レール本体の長手方向に複数個配列され、各々が前記レール本体外周部から前記レール孔へ向けて延びた分岐孔、および各々が前記レール孔の周壁にその一端が開口するとともに、他端が前記各々の分岐孔に連結する複数のオリフィス孔を備え、前記オリフィス孔の前記レール孔への開口端部および前記分岐孔へ連結する端部に、滑らかな曲面により面取りがされていることを特徴とするコモンレールとした。
【0008】
請求項2の発明においては、前記分岐孔の前記オリフィス孔と連結する連結部と前記分岐孔の側面部とによって構成された隅部を、全周に渡って滑らかな曲面により形成したことを特徴とする請求項1記載のコモンレールとした。
【0009】
請求項3の発明においては、レール本体の内部に長手方向にレール孔を形成するレール孔形成ステップ、前記レール本体外周部から前記レール孔へ向けて延びる分岐孔を、前記レール本体の長手方向に複数個形成する分岐孔形成ステップ、前記レール孔の周壁に各々の一端が開口するとともに、各々の他端が前記分岐孔のそれぞれに連結する複数のオリフィス孔を形成するオリフィス孔形成ステップ、および前記オリフィス孔の前記レール孔への開口端部および前記オリフィス孔の前記分岐孔へ連結する端部を滑らかな曲面により面取りする、面取りステップによって構成されたことを特徴とするコモンレールの製造方法とした。
【0010】
請求項4の発明においては、前記面取りステップにおいては、流体研磨法が用いられることを特徴とする請求項3記載のコモンレールの製造方法とした。
【0011】
【発明の作用及び効果】
<請求項1の発明>
オリフィス孔の分岐孔へ連結する端部を滑らかな曲面により面取りしたことによって、オリフィス孔の端部への応力集中を防いで、レール本体の内圧疲労強度を向上させることができる。
【0012】
<請求項2の発明>
分岐孔のオリフィス孔と連結する連結部と分岐孔の側面部とによって構成された隅部を全周に渡って滑らかな曲面により形成したことによって、分岐孔の隅部への応力集中を防いで、レール本体の内圧疲労強度を向上させることができる。
【0013】
<請求項3の発明>
コモンレールの製造方法を従来の工法を多用することにより、レール孔形成ステップ、分岐孔形成ステップ、オリフィス孔形成ステップ、および面取りステップによって構成したため、従来のコモンレールの製造工程を大幅に変えることなく、本発明のコモンレールを製造することができる。
【0014】
<請求項4の発明>
流体研磨法を用いることによって、レール本体内に工具を進入させることなく容易に面取りを施すことができる。また、流体研磨法を施すことによって、分岐孔内壁の面粗さが向上するため、分岐孔内壁への応力集中も防ぐことができ、内圧疲労強度を向上させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態を図1ないし図7によって説明する。コモンレール1を構成する長尺状のレール本体2は、S45C材による鍛造品またはSCM(クロム・モリブデン鋼)材等によって形成されており、その内部に長手方向に延びたレール孔3が形成されている。レール孔3の左右端には、それぞれ図示しない接続部材が螺合される第1ねじ部2aおよび第2ねじ部2bが形成され、第1ねじ部2aに螺合された接続部材には圧力センサが連結される。コモンレール1は4気筒エンジン用であり、レール本体2にはその長手方向に均等な間隔で5つの円筒形の燃料管接続部4が形成されている。
【0016】
各々の燃料管接続部4はレール本体2から突出しており、それぞれには分岐孔5が形成され、分岐孔5の燃料管接続部4の上面への開口部には、テーパ状の配管座面5aが形成されている。燃料管接続部4のうちのいずれか1つの配管座面5aには、入力用として燃料供給用の高圧ポンプが連結された燃料供給管が接続され、高圧ポンプによって燃料タンクの燃料が昇圧された後、レール孔3内に導入される。その他の4つの燃料管接続部4の配管座面5aには、図示しない各インジェクタに接続される燃料供給管のシール面が液密的に係合する。また、レール孔3の内周壁には、各々のオリフィス孔6の一端が開口され、オリフィス孔6の他端は各々の分岐孔5に連結されている。尚、各々の燃料管接続部4の外周部には上述した燃料供給管を連結する際に、配管締付用のナットが螺合するねじ部4aが形成されている。
【0017】
図2に示すように、分岐孔5は図1に示した配管座面5aと連結した直管部5bと、直管部5bの下端に形成され、オリフィス孔6に向けて先細りとなるテーパ部5cとによって構成されている。直管部5bおよびテーパ部5cは、それぞれ本発明の分岐孔5の側面部および分岐孔5とオリフィス孔6とを連結する連結部に該当する。オリフィス孔6はその上端部においてテーパ部5cと連結している。オリフィス孔6のレール孔3への開口端部6aにおいてはエッジ形状を無くすために、その全周に渡り滑らかなR面取りが施されている。ここで、R面取りとは、適当な大きさの半径による曲面が形成される面取りを言う。
【0018】
一方、オリフィス孔6のテーパ部5cへ連結する端部6bも、エッジ形状を無くすために、その全周に渡って滑らかに面取りが行われている。本実施形態においては、オリフィス孔6の端部6bは、図2のB部を詳細に表した図3に示すように、単一の半径の曲面部6b1によるR面取りが施されている。さらに、分岐孔5の直管部5bとテーパ部5cとによって形成された隅部5dも、エッジ形状を無くすために、その全周に渡って滑らかな曲面によって形成されている。それぞれの曲面の半径の大きさは、特に限定されるものではなく、各部への応力集中を防ぐことができる大きさのものであればよい。
【0019】
上述したように、本実施形態によるコモンレール1は、オリフィス孔6の分岐孔5へ連結する端部6bおよび分岐孔5の直管部5bとテーパ部5cとによって形成された隅部5dを滑らかに面取りしたことによって、オリフィス孔6の端部6bおよび分岐孔5の隅部5dへの応力集中を防ぎ、内圧疲労強度を向上させることができる。
【0020】
次に、本実施形態によるコモンレール1の製造方法について説明する。図4に示すように、最初に、円柱状の本体部MBの上に等間隔に5つの円柱形のボス部BSが形成された素材WMに、ガンドリル等によって本体部MBの長手方向にレール孔3を形成する(レール孔形成ステップ)。必要であれば、ガンドリルによる切削の後、リーマー等によってレール孔3の表面仕上げを行ってもよい。その後、レール孔3の両端部にねじ切り用の下穴を開けた後、図1に示した第1ねじ部2aおよび第2ねじ部2bを形成する。第1ねじ部2aおよび第2ねじ部2bは、レール孔3が形成された後であれば、いつ形成されてもよく、分岐孔5およびオリフィス孔6が形成された後に形成されてもよい。
【0021】
次に、図5に示すように、ドリルあるいはエンドミル等によってボス部BSの上端面からレール孔3に向けて分岐孔5が形成される(分岐孔形成ステップ)。その後、図6に示すように、分岐孔5とレール孔3とを連結させるように、オリフィス孔6を貫通させる(オリフィス孔形成ステップ)。オリフィス孔6の形成については、分岐孔5内にドリルを挿入して、その底部から切削する方法、または分岐孔5側からレール孔3に向けてポンチによって穿孔する方法、もしくはレール孔3側から分岐孔5に向けてポンチによって穿孔する方法等が使用できる。また、ボス部BSの外周部にはねじ部4aを形成するとともに、分岐孔5の開口部にテーパ状の配管座面5aが形成されて燃料管接続部4が完成する。ねじ部4aおよび配管座面5aは、分岐孔5およびオリフィス孔6が形成される前後のいずれにおいて形成されてもよい。
【0022】
最後に図7に示すように、流体研磨ノズル7の先端のテーパ面7aを燃料管接続部4の配管座面5aに液密的に係合させて、流体研磨ノズル7の流体通路7bを介して分岐孔5に流体を注入する。流体研磨ノズル7からは砥粒または研磨剤を含んだ流体が吐出され、通路内に流通することによって通路壁面を滑らかに加工する。流体研磨ノズル7からは上述した研磨剤を含んだ流体が数百秒程度吐出され、分岐孔5からオリフィス孔6を介してレール孔3内に流入する。流体が分岐孔5およびオリフィス孔6に流通することにより、流体に含まれた研磨剤が分岐孔5の隅部5d、オリフィス孔6の端部6bおよび開口端部6aを滑らかに加工してそれぞれの面取りを行う(面取りステップ)。
【0023】
上述したように、本実施形態によるコモンレールの製造方法は従来の工法を多用することにより、レール孔形成ステップ、分岐孔形成ステップ、オリフィス孔形成ステップ、および面取りステップによって構成しているため、従来のコモンレールの製造工程を大幅に変えることなく、本発明のコモンレール1を製造することができる。また、流体研磨法を用いることによって、レール本体2内に工具等を進入させることなく容易に面取りを施すことができる。さらに、流体研磨法を施すことによって、分岐孔5の直管部5bおよびテーパ部5cの面粗さが向上するため、直管部5bおよびテーパ部5cへの応力集中を防ぎ、内圧疲労強度を向上させることができる。
【0024】
コモンレール1の製造工程は、必ずしも上述した順序でなければならないわけではなく、種々の変更は可能である。例えば、分岐孔形成ステップ、オリフィス孔形成ステップ、レール孔形成ステップ、面取りステップの順にしてもよいし、あるいは分岐孔形成ステップ、レール孔形成ステップ、オリフィス孔形成ステップ、面取りステップの順にしてもよい。
【0025】
<第2実施形態>
オリフィス孔6の端部6bの面取りは、必ずしも、単一の半径の曲面によるR面取りにて行われなければならないわけではなく、図2のB部を詳細に表した図8に示すように、微小長さの直線部6b2とそれをそれぞれテーパ部5cおよびオリフィス孔6と接続する曲面部6b3および6b4によっても形成できる。
【0026】
<他の実施形態>
本発明は上述の記載及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、以下の記載以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)本発明によるコモンレールは、4気筒エンジン以外の多気筒エンジンにも適用され、分岐孔およびオリフィス孔について、それぞれ7個または4個、あるいはそれ以外の数を有していてもよい。
(2)面取り部の加工方法は流体研磨加工法のみでなく、電解加工法、カッターによる切削あるいは分岐孔側またはレール孔側からポンチによってエッジ部を押さえて面取り部を形成する面押し等も適用可能である。
(3)面取り部の形状は、互いに半径の異なる複数の曲面によるR面取りを組み合わせたもの、複数の直線を曲面で連結したもの、曲面を徐変させたもの等、応力が集中することを防ぐことができる形状のものであればあらゆる形状の面取りが可能である。
(4)レール本体を形成する材料には、機械構造用炭素鋼鋼管(シームレス鋼管)あるいはSTS480相当の高圧配管用の鋼管等を使用することもできる。これらの材料を使用する場合、分岐孔を備えた燃料管接続部は、溶接、ロウ付け、ねじ締め等によって本体部に結合される。また、上述の材料を使用する場合、レール孔形成ステップは省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態によるコモンレールの縦断面図である。
【図2】図1のA部詳細図である。
【図3】第1実施形態による、オリフィス孔の端部の面取り部の形状を示す断面図である。
【図4】レール孔形成ステップを示す図である。
【図5】分岐孔形成ステップを示す図である。
【図6】オリフィス孔形成ステップを示す図である。
【図7】流体研磨法による面取りステップを示す図である。
【図8】第2実施形態による、オリフィス孔の端部の面取り部の形状を示す断面図である。
【図9】従来のコモンレールの要部詳細図である。
【符号の説明】
1…コモンレール
2…レール本体
3…レール孔
5…分岐孔
5b…直管部
5c…テーパ部
5d…隅部
6…オリフィス孔
6a…オリフィス孔開口端部
6b…オリフィス孔端部
6b1、6b3、6b4…曲面部
6b2…直線部
7…流体研磨ノズル
Claims (4)
- レール本体の内部に長手方向に延びるレール孔、
前記レール本体の長手方向に複数個配列され、各々が前記レール本体外周部から前記レール孔へ向けて延びた分岐孔、および
各々が前記レール孔の周壁にその一端が開口するとともに、他端が前記各々の分岐孔に連結する複数のオリフィス孔を備え、
前記オリフィス孔の前記レール孔への開口端部および前記分岐孔へ連結する端部に、滑らかな曲面により面取りがされていることを特徴とするコモンレール。 - 前記分岐孔の前記オリフィス孔と連結する連結部と前記分岐孔の側面部とによって構成された隅部を、全周に渡って滑らかな曲面により形成したことを特徴とする請求項1記載のコモンレール。
- レール本体の内部に長手方向にレール孔を形成するレール孔形成ステップ、
前記レール本体外周部から前記レール孔へ向けて延びる分岐孔を、前記レール本体の長手方向に複数個形成する分岐孔形成ステップ、
前記レール孔の周壁に各々の一端が開口するとともに、各々の他端が前記分岐孔のそれぞれに連結する複数のオリフィス孔を形成するオリフィス孔形成ステップ、および
前記オリフィス孔の前記レール孔への開口端部および前記オリフィス孔の前記分岐孔へ連結する端部を滑らかな曲面により面取りする、面取りステップによって構成されたことを特徴とするコモンレールの製造方法。 - 前記面取りステップにおいては、流体研磨法が用いられることを特徴とする請求項3記載のコモンレールの製造方法。
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