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JP3879878B2 - 刺繍縫製可能なミシン - Google Patents

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JP3879878B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、刺繍縫製可能なミシンに関し、特に刺繍模様の刺繍縫製に際して、ミシンや刺繍用外部記録媒体を個別的に特定できる識別模様を縫製するようにしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、家庭用の電子制御式刺繍ミシンは、上下駆動される縫針とこの縫針と協働する糸輪捕捉器とを含む縫製機構と、加工布が着脱自在に取付けられる刺繍枠を直交する2方向へ独立に移動駆動する駆動機構と、「乗り物」、「花」、「動物」などの複数種類の刺繍模様の模様データを格納した模様データメモリと、ディスプレイ及び操作パネル等を有し、オペレータが操作パネル等を操作し、所望の刺繍模様をディスプレイに表示させて選択してから刺繍縫製処理を実行すると、刺繍模様の模様データに基づいて駆動機構が制御され、駆動機構と縫製機構との協働により、刺繍枠に装着された加工布に前記所望の刺繍模様の縫製が施される。
【0003】
最近、この種の電子制御式刺繍ミシンでは、ミシンの制御装置に設けられた模様データメモリに格納された刺繍模様以外の多種多様の刺繍模様も刺繍縫製できるように、「動物」、「乗り物」、「花」などの複数種類の刺繍模様に関する模様データを記憶したROMカードを複数枚準備し、所望のROMカードを刺繍ミシンに装着することで、そのROMカードに格納されている刺繍可能な複数の刺繍模様がマトリックス状に一覧表として表示されるので、ディスプレイに設けられたタッチ式キーを操作するなどして所望の1つまたは複数の刺繍模様を選択することで、刺繍縫製できるようになっている。
【0004】
ところで、この種の電子制御式刺繍ミシンにおいて、制御装置に設けられた模様データメモリやROMカードに、ミシンメーカーが考案した独自のキャラクタや、テレビや映画等に登場する著名なキャラクタ(例えば、「ミッキーマウス」、「ドラエモン」などの著名な動物やロボット等)等の刺繍模様の模様データを記録するようにし、一般的には市販されていない特有のキャラクタを刺繍縫製したズボンやブラウスなどを、家庭で簡単に製作できるようになっている。
【0005】
特に、著名なキャラクタについては、ミシンメーカーがキャラクタの著作権者の許諾を得て使用している場合が多く、刺繍ミシンやROMカードを購入したユーザーだけが個人的に使用できることを明記する等、その種のキャラクタを許諾の範囲内で使用するように種々配慮している。しかし、従来、正当なミシン所有者以外の物に対するキャラクタの使用を制限する技術は何ら提案されていないのが実情である。
【0006】
尚、参考までに、特開昭63─238899号公報には、上糸と下糸の糸調子を調節する糸調子装置を夫々設け、これら上下の糸調子装置を通常用に設定することで、上糸の糸色で刺繍模様を形成する一方、上下の糸調子装置の糸調子を変更することで、下糸の糸色で刺繍模様を部分的に形成するようにした二色縫いミシンが提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、従来の電子制御式刺繍ミシンにより、模様データメモリやROMカードに格納(記録)された複数種類の刺繍模様のうちから選択した、「象」とか「バス」などの一般的な刺繍模様に加えて、独自のキャラクタや著名なキャラクタなどの刺繍模様を子供が着るズボンやスカート或いはハンカチなどに刺繍縫製したときに、刺繍模様に不具合いが発生した場合、ユーザーがその不具合いの刺繍模様を刺繍ミシンのメーカーに持参する場合が多いが、その刺繍模様からだけでは、何れのメーカーの刺繍ミシンで縫製したのかを特定できないだけでなく、そのメーカーの刺繍ミシンで縫製したものであっても、ミシンの機種や製作時期を特定することができないという問題がある。
【0008】
更に、ミシン所有者はもとより、他人からROMカードを借用してきた者、海賊版のROMカードを購入した者でも、独自のキャラクタや著名なキャラクタをハンカチなどに不正に刺繍して営利目的で販売することも可能であり、正当なミシン所有者が縫製したのか、或いは不正に得た者が縫製したのかを判断することが難しいという問題がある。本発明の目的は、前記の課題を解決する為に、不具合いが生じた刺繍模様を縫製した刺繍ミシンや不具合いが生じた刺繍模様を有する刺繍用外部記録媒体を容易に特定できること、正当なミシン所有者以外の者によるキャラクタの不正使用を容易に判断できるようにすること、等である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の刺繍縫製可能なミシンは、複数の刺繍用の模様の模様データを記憶した模様データ記憶手段を備えた刺繍縫製可能なミシンにおいて、模様データ記憶手段に、ミシンを個別的に特定する為の識別模様を縫製する為の識別模様データを格納したことを特徴とするものである。ここで、模様データ記憶手段は、ミシンの制御装置に固定的に設けられたものであってもよく、また着脱可能に設けられたものであってもよい。
【0010】
模様データ記憶手段(例えば、不揮発性のメモリであって、ROMや磁気ディスクや光ディスク)には、複数の刺繍用の模様の模様データに加えて、ミシンを個別的に特定する為の識別模様を縫製する為の識別模様データを記憶しているので、複数の刺繍用の模様のうちから選択された刺繍模様を縫製するとともに、ミシンを個別的に特定する為の識別模様、例えば機種毎の製造番号や製造したときのロット番号などを縫い込むことができるので、刺繍模様に不具合いが生じたときには、刺繍模様を解くなどして、その刺繍模様と同時に縫い込まれている識別模様からミシンを容易に特定することができる。
【0011】
請求項2の刺繍縫製可能なミシンは、請求項1の発明において、前記識別模様は、ミシン固有の番号の模様であることを特徴とするものである。
この場合には、刺繍模様と共に刺繍縫製される識別模様としては、ミシン固有の番号の模様、例えば、機種毎の製造番号や製造したときのロット番号などの模様であることから、刺繍模様の刺繍縫製に供したミシンを容易に特定することができる。その他、請求項1と同様の作用を奏する。
【0012】
請求項3の刺繍縫製可能なミシンは、請求項1又は2の発明において、前記識別模様は、刺繍模様の外形内の刺繍領域の内側に縫製される模様であることを特徴とするものである。
この場合、識別模様は、刺繍模様の外形内の刺繍領域の内側に、つまり刺繍模様からはみ出すことなく刺繍模様と共に刺繍縫製される。これにより、識別模様を刺繍模様から切り離すことができず、識別模様と刺繍模様とを常に一体化させておくことができる。その他、請求項1又は2と同様の作用を奏する。
【0013】
請求項4の刺繍縫製可能なミシンは、請求項1〜3の何れか1項の発明において、前記識別模様は、刺繍模様の刺繍縫目の下側に縫製される模様であることを特徴とするものである。
この場合には、識別模様を縫製してから連続させて刺繍模様を刺繍縫製するなどして、刺繍模様の刺繍縫目の下側に縫製されているので、刺繍模様の外観を損なうことなく識別模様を確実に保持でき、しかも刺繍縫目を解くことで識別模様を読取ることができる。その他、請求項1または請求項2と同様の作用を奏する。
【0014】
請求項5の刺繍縫製可能なミシンは、請求項1〜3の何れか1項の発明において、前記識別模様は、刺繍される布地の裏面側のうちの刺繍模様の外形内の刺繍領域に対応する領域内に縫製される模様であることを特徴とするものである。
この場合には、識別模様は、刺繍模様を縫製する縫製時の何れかの時期に、刺繍される布地の裏面側で且つ刺繍模様の外形内の刺繍領域に対応する領域内に縫製されているので、刺繍模様の外観を損なうことなく布地の裏側に識別模様を確実に保持でき、しかも刺繍縫目を解くことなく、布地の裏から識別模様を容易に読取ることができる。その他、請求項1〜3の何れか1項と同様の作用を奏する。
【0015】
請求項6の刺繍縫製可能なミシンは、請求項4又は5の発明において、前記識別模様は、予め設定された複数の刺繍模様の各々を縫製する際に縫製されることを特徴とするものである。
この場合には、選択された刺繍模様が予め設定された複数の刺繍模様の何れかに該当する場合に限って識別模様が縫製されるので、メーカーが考案した独自のキャラクタや著作権の対象となるキャラクタなどを予め設定しておくことで、これらのキャラクタに加えて識別模様を同時に縫製することができる。その他、請求項4又は5と同様の作用を奏する。
【0016】
請求項7の刺繍縫製可能なミシンは、請求項6の発明において、前記予め設定された複数の刺繍模様は、著作権の対象である刺繍模様または文字列模様を含むことを特徴とするものである。
この場合には、選択された刺繍模様が、例えばテレビや映画等に登場する著名なキャラクタであって、著作権の対象となる刺繍模様のときに、その刺繍模様と同時に識別模様を縫製することができ、また選択された文字列が、例えば著名なキャラクタの名称などであって、著作権の対象となる文字列模様のときに、その刺繍模様と同時に識別模様を縫製することができる。その他、請求項6と同様の作用を奏する。
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態は、刺繍装置を着脱可能に装着して種々の刺繍模様の縫製が可能な刺繍装置付き電子制御式刺繍ミシンに本発明を適用した場合の例である。
電子制御式刺繍ミシンM(刺繍縫製可能なミシンに相当する)は、図1に示すように、ミシンベッド部1と、ベッド部1の右端部から立設された脚柱部2と、脚柱部2の上端からベッド部1に対向するように左方へ延びるアーム部3を有する。
【0026】
ベッド部1には、送り歯を上下動させる送り歯上下動機構(図示略)及び前後動させる送り歯前後動機構(図示略)、下糸ボビンを収容し縫針6と協働する糸輪捕捉器(例えば、水平釜)等が設けられている。脚柱部2には、オプション的に追加される多数の刺繍模様の模様データ(縫製データと模様表示データ)を記録したROMカード27(これが刺繍用外部記録媒体に相当する)を、内部のカード用コネクタ13(図3参照)に接続する為のカード用スロット2aが形成されている。
【0027】
アーム部3には、下端に縫針6を装着した針棒5を上下動させる針棒駆動機構、針棒5を布送り方向と直交する方向に揺動させる針棒揺動機構(図示略)、天秤を針棒5の上下動に調時して上下動させる天秤駆動機構(図示略)等が設けられている。尚、送り歯上下動機構と針棒駆動機構と天秤駆動機構とはミシンモータ17で駆動され、針棒揺動機構は針棒揺動用ステッピングモータ18で駆動され、送り歯前後動機構は送り歯前後駆動用ステッピングモータ19で駆動される(図3参照)。アーム部3の頭部4には、縫製作業の起動と停止を指令する起動・停止スイッチ12が設けられている。
【0028】
アーム部3の前面には大型の液晶ディスプレイ10が設けられ、この液晶ディスプレイ10には、実用模様や刺繍模様等の種々の縫目模様や各種の機能名、更には種々のメッセージ等が表示される。この液晶ディスプレイ10の前面には、複数の刺繍模様や機能を示す機能名の表示位置の各々に対応させて、透明電極からなるタッチキー11がマトリックス状に設けられている。即ち、所望の刺繍模様の選択や機能の指示を、これら刺繍模様や機能名に対応するタッチキー11を押圧操作することで実現することができる。
【0029】
前記ベッド部1の左端側部分には、通称フリーアームと称されるフリーベッド部が形成され、このフリーベッド部に刺繍装置30が着脱可能に装着される。
刺繍装置30は、その本体ケース30aと、加工布Wを着脱自在に装着する刺繍枠34と、刺繍枠34をY方向(前後方向)へ駆動するY方向駆動機構を内蔵した収容ケース31と、収容ケース31とその内部のY方向駆動機構をX方向(左右方向)へ駆動するX方向駆動機構であって本体ケース30a内に収容されたX方向駆動機構とを備えており、X方向駆動機構は第1ステッピングモータ32で駆動され、Y方向駆動機構は第2ステッピングモータ33で駆動される(図3参照)。
【0030】
刺繍装置30がフリーベッド部に装着されると、第1,第2ステッピングモータ32,33が、コネクタ14を介してミシンMの制御装置Cに電気的に接続され、制御装置Cにより第1,第2ステッピングモータ32,33が駆動制御され、刺繍枠43と加工布WとをX方向とY方向とに独立に移動駆動しつつ刺繍縫製できる状態になる。
ところで、糸駒(図示略)から延びる上糸8を縫針6に供給する上糸供給路には、図2に示すように、上糸8の繰り出し量を調節する上糸繰り出し機構40が設けられている。
【0031】
この上糸繰り出し機構40について簡単に説明すると、ミシンフレームに固定された上糸繰り出しモータ41の駆動軸に駆動ローラ42が固着され、この駆動ローラ42と平行で且つ押圧状に従動ローラ43が配設され、回転可能に枢支されている。そして、針棒5の上下動に調時した所定の糸繰り出しタイミングで上糸繰り出しモータ41が回転駆動されることで、上糸8が所定量ずつ繰り出されるようになっている。その糸繰り出しタイミングにおける上糸繰り出しモータ41の回転量に応じて、上糸8と下糸との交絡点を加工布W(図13参照)の内部に設ける正規の糸調子に設定できる一方、交絡点を加工布Wの裏面側に設ける下糸調子にも設定できる。
次に、ミシンMの制御系について説明する。
【0032】
図3に示すように、制御装置Cは、入力インターフェース21と、CPU23とROM24とRAM25とを含むコンピュータと、出力インターフェース26と、これらを接続するバス22とを有する。入力インターフェース21には、起動・停止スイッチ12、タッチキー11、ミシン主軸の複数の回転位相を検出するタイミング信号発生器16が夫々接続され、出力インターフェース26には、ミシンモータ17、針棒揺動用ステッピングモータ18、送り歯前後駆動用ステッピングモータ19、上糸繰り出しモータ41、液晶ディスプレイであるLCD10の為のディスプレイコントローラ(LCDC)20と、刺繍装置30の第1,第2ステッピングモータ32,33が夫々接続されたコネクタ14等が続されている。前記ROMカード27のROM28は、コネクタ13を介してバス22に接続されている。
【0033】
ROM24(これが模様データ記憶手段に相当する)には、実用模様を縫製する縫製制御や表示制御の一般的な制御プログラムに加えて、選択した刺繍模様に対してディスプレイ10を介してサイズ設定や位置設定等の編集処理を施す編集処理と、選択された刺繍模様を刺繍縫製する刺繍縫製処理とを含む模様選択編集縫製制御の制御プログラム、糸調子を下糸調子に変更する為に上糸繰り出し量を補正する補正量データと、本願特有の後述の模様選択表示制御や縫製制御の制御プログラム等が予め格納されている。
【0034】
更に、ROM24には、数字やアルファベットの文字模様の各々に関する表示データとその縫製データ、複数の実用模様の各々に関する表示データとその縫製データが格納されるとともに、図4に示すように、比較的使用頻度の高い多数の刺繍模様(第1刺繍模様、第2刺繍模様、第3刺繍模様・・・・・)の模様データが格納され、多数の刺繍模様の模様データは、刺繍模様の種類別にグループ分けし模様番号を付して格納されている。ところで、ROMカード27としては、複数枚分準備されており、これらROMカード27のROM28には、比較的使用頻度の低い多数の刺繍模様(第1刺繍模様、第2刺繍模様、第3刺繍模様・・・・・)の模様データ、種々の種類の文字、図形や形象、マーク、キャラクタ(例えば、テレビや映画等に登場する著名な人物、動物、ロボット等)等の刺繍模様の模様データが、刺繍模様の種類別にグループ分けし模様番号を付して、ROM24と同様に記録されている。
【0035】
即ち、各刺繍模様の模様データは同様の構成なので、第1刺繍模様の模様データについて説明すると、図4に示すように、模様データには、刺繍模様と刺繍模様に含まれる複数の色別模様部を表示する為の模様表示データと、刺繍縫製の為の縫製データと、付随情報を表示する為の付随情報表示データとが区別して格納されている。
第1刺繍模様の模様表示データは、例えば図8に示すように、刺繍模様(例えば、「象」)の3つの第1〜第3色別模様部と、各色別模様部の外周部を囲む矩形枠とを表示する為に、矩形枠のビットデータ(ドットデータ)と、第1〜第3色別模様部のビットデータとが格納されている。
【0036】
また、縫製データとして、例えば3色用のときには、第1〜第3色別模様部の3色分の縫製データが格納されている。また、付随情報の表示データとしては、種々の表示画面の際に表示する文字や機能名の為の表示データが格納されている。
これらROM24,28には更に、縫目形成時に上糸繰り出しモータ41による上糸繰り出し量を補正して下糸調子にする為の補正データに加えて、識別模様の縫製データとして、ROM24には刺繍ミシンMの製造番号(例えば、「123」)、ROM28にはROMカード27の製造番号(例えば、「R412」)のミラーイメージの縫製データ、複数の刺繍模様のうちで著作権対象である刺繍模様の番号(第1刺繍模様、第5刺繍模様、第8刺繍模様・・)、著作権対象である文字列模様(例えば、「AEGLN」、「DEFHOQ」・・)のデータが夫々格納されている。
【0037】
前記RAM25には、前記種々の制御に必要なメモリ類(フラグやポインタやカウンタ等のメモリ、レジスタやバッファ等)が設けられている。
次に、制御装置Cで実行される模様選択表示制御のルーチンについて、図5のフローチャートを参照して説明する。尚、図中符号Si(i=10,11,12・・・)は各ステップを示すものである。
電源の投入によりこの制御が開始されると、先ずディスプレイ10には、模様の種類(分類)を選択する為の初期画面が表示される(S10)。例えば、巣7に示すように、文字模様を書体に応じて選択する選択キー11a〜11d、実用模様を選択する選択キー11e、具象模様を選択する選択キー11f〜11h、更には装着されているROMカード27に記録されている刺繍模様を選択する選択キー11iを含む選択画面が表示される。
【0038】
そして、所望の刺繍模様群の種類を、その種類に対応するタッチキー11を押圧操作することで選択するメニュー選択処理が実行され(S11)、その選択された模様群に含まれる多数の刺繍模様がマトリックス状に一覧表として表示される(S12)。例えば、タッチキー11iを操作してROMカード27に格納されている「動物・乗り物」に関する模様群を選択したときには、図8に示すように、多数の動物や乗り物に関する模様群がマトリックス状に表示される。ここで、「次ページ」や「前ページ」を操作することで、複数ページに亙って刺繍模様を表示させることができる。
【0039】
ここで、選択キー11a〜11dを操作して文字模様を選択したときには、図9に示すように、文字模様の選択画面が表示される。
次に、タッチキー11を操作して、模様群のうちから1つを選択する選択処理が実行されたときには、その選択された刺繍模様番号(但し、文字模様については、その文字模様番号)がRAM25の選択模様番号メモリに格納され(S13)、その刺繍模様に関する色別模様部が表示される(S14)。但し、タッチキー11を操作して「戻る」を指示したときには、S10に戻り、初期画面が再度表示される。
例えば、動物「象」を選択したときには、図10に示すように、ディスプレイ10には、刺繍模様「象」と、その「象」に含まれる3つの色別模様部とが表示される。
【0040】
次に、縫製する刺繍模様が決定したのに伴って「確定」キーが操作されたとき、ディスプレイ10には編集画面が表示されるので、縫製位置やサイズなどを変更する編集処理が実行される(S15)。例えば、図11に示すように、ディスプレイ10には、前記刺繍枠34に対応する刺繍可能領域が矩形枠Eで表示され、その矩形枠Eの内部に、選択した刺繍模様「象」が表示される一方、縫製位置を8方向に移動させる為の8つの移動機能記号(矢印)、刺繍模様の向きを90°回転させる回転機能、縫製サイズの大きさを変更する大きさ変更機能などの複数の機能名が表示される。
【0041】
ここで、この編集処理自体は一般的な処理であり、公知の種々の編集処理を適用してもよい。
次に、刺繍枠34に刺繍縫製に供する加工布Wがセットされた後、刺繍縫製を実行する為に起動・停止スイッチ12が操作されたときには(S16:Yes )、縫製制御を起動させて縫製を開始するように指令され、刺繍縫製時の画面表示が実行される(S17)。例えば、図12に示すように、ディスプレイ10に、前述した刺繍模様「象」や色別模様部、種々の付随情報が表示されるとともに、刺繍縫製に要する残りの所要時間(残り時間)、その他縫製時に必要な機能名が表示される。
【0042】
そして、刺繍縫製が終了したときには(S18:Yes )、S10に戻って、最初の初期画面表示が実行される。
次に、縫製制御を起動するように指令されたことにより、図6に示す縫製制御が実行される。
この制御が開始されると、先ずRAM25の選択模様番号メモリから縫製に供する縫製模様番号が読み込まれる(S20)。次に、その模様番号の模様が刺繍模様のときには(S21:Yes )、その模様番号について著作権対象の刺繍模様番号か否かが検索され、著作権対象の刺繍模様のときには(S22:Yes )、識別模様縫製データが読み込まれ、刺繍模様番号の刺繍模様の縫製データに基づいて、刺繍模様の外形内の刺繍領域に対応する領域内に位置するように、その識別模様縫製データがRAM25の刺繍データメモリに展開して格納される(S23)。
【0043】
次に、編集された刺繍模様に含まれる複数の色別模様部の縫製データが刺繍データメモリに展開して格納され(S24)、刺繍縫製処理が実行される(S25)。即ち、この刺繍縫製処理においては、刺繍装置30の第1,第2ステッピングモータ32,33を駆動制御するとともに、モータ17,19,41を駆動制御して、先ず刺繍データメモリの識別模様縫製データが下糸調子で縫製され、正規の糸調子に復帰させて連続的に第1色別模様部が刺繍縫製された後、刺繍糸を交換する毎に残りの色別模様部について同様に刺繍縫製される。
【0044】
例えば、図13(a)に示すように、ROMカード27から選択された刺繍模様「象」50を刺繍縫製する場合には、加工布Wの裏面側Wbのうちの刺繍模様「象」50の外形50aの内側刺繍領域に対応する領域内に、先ず刺繍ミシンMの製造番号である識別模様「123」が下糸調子で縫製されるととも、ROMカード27の製造番号である識別模様「R413」が下糸調子で縫製される。そして、図13(b)に示すように、正規の糸調子で第1色別模様部が連続的に縫製された後、刺繍糸を交換する毎に残りの色別模様部について同様に刺繍縫製され、刺繍模様「象」50が加工布Wの表面側Waにカラフルに形成される。
【0045】
ところで、選択模様番号メモリから読み込まれた縫製模様番号が複数であって文字列模様のときには(S21:No)、複数の文字列模様番号組み合わせについて著作権対象の文字列模様か否かが検索され、著作権対象の文字列模様のときには(S26:Yes )、S23以降が同様に実行され、文字列模様の刺繍縫製に先立って、文字列模様の刺繍領域の内側に対応する刺繍領域内に、刺繍ミシンMの製造番号である識別模様とROMカード27の製造番号である識別模様とが夫々下糸調子で縫製される。
【0046】
次に、前記電子制御式刺繍ミシン1の作用・効果について、刺繍模様縫製方法を含めて説明する。
制御装置CのROM24やROMカード27のROM28に、複数の刺繍模様の各々に関する模様表示データや縫製データを格納するとともに、上糸繰り出し量補正データ、刺繍ミシンMやROMカード27の製造番号からなる識別模様縫製データ、著作権対象の刺繍模様番号、著作権対象の文字列模様などを格納し、複数の刺繍用の模様のうちから選択された著作権の対象である刺繍模様または文字列模様を縫製するのに際して、刺繍ミシンMやROMカード27の製造番号からなる識別模様が下糸調子により、加工布Wの裏面側Wbに必ず自動的に縫製されるので、刺繍模様に不具合いが生じたときに、刺繍模様を解くことなく加工布Wの裏面Wbに現れている識別模様から刺繍ミシンMやROMカード27を容易に特定することができる。
【0047】
また、その識別模様は、刺繍模様の刺繍領域からはみ出すことなく刺繍模様と共に刺繍縫製されることから、識別模様を刺繍模様から切り離すことができず、識別模様と刺繍模様とを常に一体化させておくことができ、その識別模様から、刺繍ミシンMの所有者以外の者の不正使用を容易に判断することができる。更に、その識別模様は、刺繍される加工布Wの裏面側Wbのうちの刺繍模様の外形内の刺繍領域に対応する領域内に縫製されるので、刺繍模様の外観を損なうことなく加工布Wの裏面側Wbに識別模様を確実に保持でき、しかも刺繍縫目を解くことなく、加工布Wの裏から識別模様を容易に読取ることができ、刺繍ミシンMやROMカード27を確実に特定することができる。
【0048】
ところで、ROM24に、刺繍ミシンMやROMカード27の製造番号をミラーイメージでない通常イメージの縫製データを記憶するようにし、図14(a)に示すように、前記縫製制御における刺繍縫製処理において、それらの識別模様「123」、「R412」を正規の糸調子で加工布Wの表面側Waのうちの外形50a内の刺繍領域に縫製した後、連続させて複数の色別模様部を順次縫製するようにしてもよい。この場合には、識別模様は、刺繍模様の刺繍縫目の下側に縫製されるので、刺繍模様の外観を損なうことなく識別模様を確実に保持でき、しかも刺繍縫目を解くことで識別模様を容易に読取ることができる。
【0049】
ここで、上述した実施の形態においては、フラッシュメモリ等より構成されるROMカード27を用いたが、本件出願人による特願平8−133263号に記載されたようにCD−ROMに、刺繍模様のデータを記憶しても良い。その場合、ミシンのカード用スロット2aに装着可能なカード型アダプタを介して、データ読取器より刺繍模様のデータがミシンに供給される。このカード型アダプタはROMカード27と同一形状であり、データ読取器は、光学式記憶媒体であるCD−ROMから読み取ったデータを、半導体記憶媒体であるフラッシュメモリのデータ形式に変換し、ミシンにその変換したデータを供給できる。従って、ミシンはROMカード27が装着された場合と同じになる。また、データ読取器のそういった変換機能をミシン本体に持たせれば、データ読取器は汎用のCD−ROMの装置で良い。特に詳細な情報を詳細な画像(例えば、写真のような画像)やカラーで表示する場合、大量の記憶容量を要するので、CD−ROMを用いた方が良い。
【0050】
尚、前記実施形態では、識別模様縫製データが刺繍模様の縫製に先行して縫製されたが、複数の色別模様部の何れかを縫製するときに同時に縫製するようにしてもよい。また、各刺繍模様の模様データが縫製データと模様表示データとを含む場合を例として説明したが、模様データが縫製データだけで構成されている場合は、その縫製データを処理して模様表示データを作成することもできる。また、ディスプレイ10はCRTディスプレイであってもよい。また前記ROMカード27の代わりに、磁気ディスクに複数の模様の模様データを格納し、その磁気ディスクを制御装置CのFDDに着脱自在に装着するように構成することもあるし、その他コンパクトディスクやCD−ROM、更には磁気光ディスクを適用することも可能である。前記実施形態に係る模様選択表示制御や縫製制御は、一例を示すものにすぎず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施し得る。
【0051】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、模様データ記憶手段に、ミシンを個別的に特定する為の識別模様を縫製する為の識別模様データを格納したので、複数の刺繍用の模様のうちから選択された刺繍模様を縫製するとともに、ミシンを個別的に特定する為の識別模様、例えば機種毎の製造番号や製造したときのロット番号などを縫い込むことができるので、刺繍模様に不具合いが生じたときには、刺繍模様を解くなどして、その刺繍模様と同時に縫い込まれている識別模様からミシンを容易に特定することができる。
【0052】
請求項2の発明によれば、請求項1と同様の効果を奏するが、前記識別模様は、ミシン固有の番号の模様であるので、ミシン固有の番号の模様として、例えば機種毎の製造番号や製造したときのロット番号などの模様を用いることで、刺繍模様の刺繍縫製に供したミシンを容易に特定することができる。
請求項3の発明によれば、請求項1又は2と同様の効果を奏するが、前記識別模様は、刺繍模様の外形内の刺繍領域の内側に縫製される模様であるので、刺繍模様からはみ出すことなく刺繍模様と共に刺繍縫製されることから、識別模様を刺繍模様から切り離すことができず、識別模様と刺繍模様とを常に一体化させておくことができ、ミシンを確実に特定することができる。
【0053】
請求項4の発明によれば、請求項1〜3の何れか1項と同様の効果を奏するが、前記識別模様は、刺繍模様の刺繍縫目の下側に縫製されるので、刺繍模様の外観を損なうことなく識別模様を確実に保持でき、しかも刺繍縫目を解くことで識別模様を容易に読取ることができる。
請求項5の発明によれば、請求項1〜3の何れか1項と同様の効果を奏するが、前記識別模様は、刺繍される布地の裏面側のうちの刺繍模様の外形内の刺繍領域に対応する領域内に縫製される模様であるので、刺繍模様の外観を損なうことなく布地の裏面側に識別模様を確実に保持でき、しかも刺繍縫目を解くことなく、布地の裏から識別模様を容易に読取ることができる。
【0054】
請求項6の発明によれば、請求項4又は5と同様の効果を奏するが、前記識別模様は、予め設定された複数の刺繍模様の各々を縫製する際に縫製されるので、メーカーが考案した独自のキャラクタや著作権の対象となるキャラクタなどを予め設定することで、これらのキャラクタと識別模様とを同時に縫製することができ、その識別模様からミシンの所有者以外の者の不正使用を容易に判断することができる。
【0055】
請求項7の発明によれば、請求項6と同様の効果を奏するが、前記予め設定された複数の刺繍模様は、著作権の対象である刺繍模様または文字列模様を含むので、これら著作権の対象である刺繍模様または文字列模様を縫製するときには必ず識別模様を縫製されることになり、その識別模様からミシンの所有者以外の者の不正使用を容易に判断することができる。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る電子制御式刺繍ミシンの斜視図である。
【図2】上糸繰り出し機構の概略斜視図である。
【図3】前記刺繍ミシンの制御系のブロック図である。
【図4】ROMやROMカードに記憶されている各種のデータ構造の説明図表である。
【図5】模様選択表示制御のルーチンのフローチャートである。
【図6】縫製制御のルーチンのフローチャートである。
【図7】模様種類選択時の表示画面の説明図である。
【図8】刺繍模様群の表示画面の説明図である。
【図9】文字列模様群の表示画面の説明図である。
【図10】刺繍模様とそれに含まれる色別模様部の表示画面の説明図である。
【図11】編集処理するときの表示画面の説明図である。
【図12】刺繍縫製時の表示画面の説明図である。
【図13】(a)は加工布の裏面側に現れた識別模様の説明図であり、(b)は加工布の表面側に形成した「象」の刺繍模様である。
【図14】(a)は加工布の表面側に現れた識別模様の説明図であり、(b)は加工布の表面側に形成した「象」の刺繍模様である。
【符号の説明】
M 電子制御式刺繍ミシン
C 制御装置
24 ROM
27 ROMカード
30 刺繍装置

Claims (7)

  1. 複数の刺繍用の模様の模様データを記憶した模様データ記憶手段を備えた刺繍縫製可能なミシンにおいて、
    前記模様データ記憶手段に、ミシンを個別的に特定する為の識別模様を縫製する為の識別模様データを格納したことを特徴とする刺繍縫製可能なミシン。
  2. 前記識別模様は、ミシン固有の番号の模様であることを特徴とする請求項1に記載の刺繍縫製可能なミシン。
  3. 前記識別模様は、刺繍模様の外形内の刺繍領域の内側に縫製される模様であることを特徴とする請求項1又は2に記載の刺繍縫製可能なミシン。
  4. 前記識別模様は、刺繍模様の刺繍縫目の下側に縫製される模様であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の刺繍縫製可能なミシン。
  5. 前記識別模様は、刺繍される布地の裏面側のうちの刺繍模様の外形内の刺繍領域に対応する領域内に縫製される模様であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の刺繍縫製可能なミシン。
  6. 前記識別模様は、予め設定された複数の刺繍模様の各々を縫製する際に縫製されることを特徴とする請求項4又は5に記載の刺繍縫製可能なミシン。
  7. 前記予め設定された複数の刺繍模様は、著作権の対象である刺繍模様または文字列模様を含むことを特徴とする請求項6に記載の刺繍縫製可能なミシン。
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