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JP3879278B2 - ハイブリッド車の充電量演算方法および充電量演算装置 - Google Patents

ハイブリッド車の充電量演算方法および充電量演算装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイブリッド車等に用いられる駆動用二次電池の充電量演算方法および充電量演算装置に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
走行駆動源として内燃エンジンおよび電動モータを備え、それらの両方またはいずれか一方の駆動力により走行するハイブリッド方式の電気自動車(以下では、ハイブリッド車と呼ぶ)が知られている。このようなハイブリッド車では、モータ駆動用二次電池の充電量SOC(State of charge)の算出方法の一つとして、充放電時の電流を積算して得られるAh積算値(=Σ(I×t):Iは電流値、tは時間)と電池容量とから算出する方法がある。
【0003】
しかしながら、上述した算出方法では、電流値Iに検出誤差ΔIがあった場合に誤差が累積されることになる。このAh積算値に含まれる累積誤差Σ(ΔI×t)によって、充電量SOCの算出を行うたびに誤差が大きくなって実際の充電量SOCと大きくずれてしまうという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、二次電池の充電量SOCを精度良く算出することができるハイブリッド車の充電量演算方法および充電量演算装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
発明の実施の形態を示す図1および図8に対応付けて説明する。
図8に対応付けて説明すると、請求項の発明によるハイブリッド車の充電量演算方法は、二次電池の充放電電流値Iに基づいて電流積算値Ahを算出し、その電流積算値Ahに基づいて二次電池の第1の充電量を算出するハイブリッド車の充電量演算方法に適用され、(a)二次電池の無負荷状態時の端子電圧値E1に基づいて第2の充電量を算出し、第2の充電量と第1の充電量との差が所定値以上となったときに第1の充電量を第2の充電量で置き換える第1の補正方法、(b)二次電池の充放電時の端子電圧値Vと電流値Iとをサンプリングし、それらを一次回帰演算して得られる端子電圧値と電流値との特性直線に基づいて第1の開放電圧E2を算出し、第1の開放電圧E2に基づいて算出される第3の充電量と第1の充電量との差が所定値以上となったときに第1の充電量を第3の充電量で置き換える第2の補正方法、(c)二次電池の充放電時の端子電圧値V,電流値Iおよび内部抵抗値に基づいて第2の開放電圧E3を算出し、第2の開放電圧E3に基づいて算出される第4の充電量と第1の充電量との差が所定値以上となったときに第1の充電量を第4の充電量で置き換える第3の補正方法、の内の少なくともつの補正方法用いて第1の充電量を補正することにより上述の目的を達成する。
)請求項の発明は、請求項に記載の充電量演算方法において、第1の補正方法および第2の補正方法を用いて第1の充電量を補正する。
)請求項の発明は、請求項に記載の充電量演算方法において、第1の補正方法および第3の補正方法を用いて第1の充電量を補正する。
(4)請求項4の発明は、請求項1に記載の充電量演算方法において、第1の補正方法、第2の補正方法および第3の補正方法の内の少なくとも1つの補正方法を、車両の走行状態に基づいて選択して用いるようにした。
(5)請求項5の発明は、請求項4に記載の充電量演算方法において、車両起動時には第1の補正方法を用いて第1の充電量を補正し、車両走行時であって特性直線が得られる走行状態である場合には、第2の補正方法を用いて第1の充電量を補正し、車両走行時であって特性直線が得られない走行状態である場合には、第3の補正方法を用いて第1の充電量を補正する。
)図1および図8に対応付けて説明すると、請求項の発明は、二次電池6の充放電電流値Iを検出する電流検出手段9と、電流検出手段9の電流検出値Iに基づいて電流積算値Ahを算出する電流積算手段22とを備え、電流積算値Ahに基づいて二次電池6の第1の充電量を算出するハイブリッド車の充電量演算装置に適用され、二次電池6の端子電圧Vを検出する電圧検出手段8と、電流検出手段9の検出値Iおよび電圧検出手段8の検出値Vに基づいて二次電池6の開放電圧E2,E3を算出する開放電圧演算手段21,25と、開放電圧演算手段21,25による開放電圧算出値E2,E3に応じた第2の充電量を算出する充電量演算手段24と、第1の充電量と第2の充電量との差が所定値以上となったときに、第2の充電量に基づいて第1の充電量を補正する補正手段23,24と、を設けたことにより上述の目的を達成する。
【0006】
なお、本発明の構成を説明する上記課題を解決するための手段の項では、本発明を分かり易くするために発明の実施の形態の図を用いたが、これにより本発明が発明の実施の形態に限定されるものではない。
【0007】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1〜請求項5の発明によれば、異なる4つの算出方法の内の少なくとも2つの算出方法を用いて二次電池の充電量を算出することにより、種々の走行パターンにおいて充電量を精度良く算出できる。
請求項6〜請求項8の発明によれば、第1の充電量を電流検出値誤差等による累積誤差の影響の無い第2,第3または第4の充電量で置き換える3種類の補正方法の少なくとも2つを用いることにより、充電量に対する電流検出値誤差等による累積誤差の影響を低減することができるとともに、種々の走行パターンにおいて充電量を精度良く算出できる。
請求項9の発明によれば、開放電圧算出値に応じて得られる第2の充電量は電流検出値誤差等による累積誤差の影響が無いので、電流積算値に基づく第1の充電量を第2の充電量で補正することにより、充電量に対する電流検出値誤差等による累積誤差の影響を低減することができるとともに、種々の走行パターンにおいて充電量を精度良く算出できる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図10を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1はパラレル・ハイブリッド車の構成を示すブロック図である。エンジン2の主軸には電動モータ3の回転子が直結されており、エンジン2および/またはモータ3の駆動力は駆動系4を介して車軸7に伝達される。パラレル・ハイブリッド車におけるモータ3の運転モードには、車軸7を駆動する駆動モードと二次電池6を充電する発電モードとがある。車両自体の駆動モード時、すなわち加速時,平坦路走行時や登坂時等に、モータ3へ電力を供給する二次電池6が充分な充電状態にある場合には、モータ3を駆動モードで運転してエンジン2とモータ3の両方の両駆動力により走行する。
【0009】
ただし、二次電池6の充電状態が低い場合にはモータ3を発電モードで運転して、エンジン2の駆動力により走行を行うとともにエンジン2の駆動力によりモータ3の回転子を回転し、モータ3による発電を行って二次電池6を充電する。インバータ5は二次電池6からの直流電力を交流電力に変換してモータ3に供給するとともに、発電モード時にはモータ3からの交流電力を直流電力に変換して二次電池6へ供給する。
【0010】
一方、車両の制動モード時、すなわち減速時や降坂時などには、駆動系4を介した車輪の回転力によってエンジン2およびモータ3が駆動される。このとき、モータ3を発電モードで運転し回生エネルギーを吸収して二次電池6を充電する。コントローラ1はマイクロコンピュータとその周辺部品から構成され、二次電池6の端子電圧値Vを検出する電圧センサ8,充放電時の電流値Iを検出する電流センサ9,二次電池6の温度Tを検出する温度センサ10が接続される。コントローラ1の演算部1aでは上述した各センサの検出値に基づいて二次電池6のSOCを演算し、制御部1bは各検出値およびSOC等に基づいてエンジン2,インバータ5,モータ3を制御する。
【0011】
次いで、コントローラ1の演算部1aで行われる充電量演算方法について説明する。図2は演算により得られる充電量SOC(以下では充電量RSOCと記す)と真の充電量SOCとを比較して示した概念図であり、(a)は充放電時の電流値Iを積算して得られる電流積算値(以下ではAh積算値と記す)に基づく充電量RSOCを示し、(b)は本発明の充電量演算方法による充電量RSOCを示す。ここで、(a)の場合も(b)の場合も、基本的には次式(1)を用いて充電量RSOCを算出する。
【数1】
RSOC(%)=[1−Ah/Ah(Pmin)]×100 …(1)
基本式(1)においてAhはAh積算値であり、Ah(Pmin)は二次電池の電池容量である。電池容量Ah(Pmin)の算出方法については後述する。なお、Ah(Pmin)は単に定格容量(3時間率容量など)としても良い。
【0012】
図2(a)に示す充電量RSOCでは、Ahとして充放電時の電流値Iを積算したAh積算値のみが用いられる。この場合、例えば前述したように電流値Iに誤差ΔIがあると、Ah積算値には電流値Iの誤差ΔIが累積されてしまい、図2(a)のようにSOC演算開始時の充電量RSOCが真の充電量SOCと等しかったとしても、演算を行うにつれて真の充電量SOCに対する誤差が増大する。
【0013】
ところで、二次電池としてはリチウムイオン電池などが用いられるが、リチウムイオン電池では電池の劣化度や温度にかかわらず開放電圧と充電量SOCとの間に一定の相関がある。また、その再現性がとても良い。図3はそのような相関の一例を示す図であり、開放電圧が分かればこの相関から充電量SOCが一意的に決まる。図3では充電量SOC=100%に対応する開放電圧はOCV(100)であるが、例えば、開放電圧の実測値としてOCV(100)が得られれば、そのときの二次電池の充電量SOCが100%であることを相関図から求めることができる。
【0014】
そこで、本発明による充電量演算方法では、開放電圧を実測または推定し、得られた開放電圧と図3に示す相関とから充電量SOCを算出する。この充電量SOC(以下では、これを充電量CAPSOCと記す)とAh積算値に基づいて基本式(1)で算出される充電量RSOCとの差(誤差に相当する)が所定値以上となったならば、Ah積算値をその時点の充電量CAPSOCに相当するAh積算値(以下、電流積算値CAPAHと記す)に置き換えてリセットする。電流積算値CAPAHは次式(2)で算出される。
【数2】
CAPAH=Ah(Pmin)×(1−CAPSOC/100) …(2)
【0015】
充電量CAPSOCはAh積算値を用いて算出される充電量RSOCのように誤差が累積されないので、図2(b)の一点鎖線で示すように真の充電量SOCに近い値が得られる。図2(b)に示す例では、演算開始から次第に誤差が大きくなった充電量RSOCを時刻t1において充電量CAPSOCの値でリセットしている。そして、時刻t1でRSOC=CAPSOCと置き換えられた充電量RSOCは、基本式(1)のAh積算値の誤差が累積されるにつれて真の充電量SOCとの誤差が大きくなり、その誤差が所定値以上となった時点で再びリセットが行われる。このように、本発明によるS充電量算方法では、真の充電量SOCとの誤差が所定値以上となったならば上述したリセットを行うため、演算値RSOCと真の充電量SOCとの誤差を所定値以下に抑えることが可能となる。
【0016】
図3の相関を用いて充電量CAPSOCを算出する際の開放電圧としては次の三種類が考えられる。
▲1▼無負荷時に実測して得られる開放電圧E1
▲2▼充放電時にサンプリングされた電流値および電圧値から得られるIV特性により、すなわちパワー演算(放電IV外挿)により推定される開放電圧E2
▲3▼充放電時の電流値および総電圧値に基づいて、次式(3)により推定される開放電圧E3
【数3】
E3=(総電圧)+(電流)×(温度・劣化補正された内部抵抗) …(3)
【0017】
[▲1▼の開放電圧E1による充電量SOC演算]
図4は上述した▲1▼の実測開放電圧E1に基づいて充電量RSOCのリセットを行う方法を説明する図であり、(a)は開放電圧E1と充電量SOCの相関図、(b)は充電量ROSCの時間変化を示す図である。図4(b)に示す例では、演算開始後の時刻t2およびt3においてリセットを行っている。時刻t2における開放電圧E1をE1(2)とすると、図4(a)の相関から充電量CAPSOC2が得られる。そして、時刻t2における充電量RSOCを充電量CAPSOC2にリセットする。すなわち、時刻t2におけるAh積算値を、式(2)に充電量CAPSOC2を代入して得られる電流積算値CAPAHにリセットする。時刻t3の場合も同様であり、開放電圧E1(3)から充電量CAPSOC3を求め、時刻t3における充電量RSOCを充電量CAPSOC3にリセットする。図4(b)の二点鎖線RSOC’は、時刻t2,t3でリセットを行わなかった場合のSOC演算値を示している。なお、開放電圧E1の計測は無負荷時にしか行えないので、例えば、車両起動時の無負荷時(強電オン前)やキーオフ時に開放電圧E1を計測する。
【0018】
[▲2▼の開放電圧E2による充電量SOC演算]
まず、上述した▲2▼のパワー演算による推定開放電圧E2の算出方法について図5を参照して説明する。最初に、二次電池の電流変化を捉えて電流値Iおよび電圧値Vをサンプリングする。図5の×印はサンプリングデータをIV座標上に示したものであり、これらのサンプリングデータに基づいてIV特性を一次回帰演算して特性直線Lを求める。この直線Lと縦軸(電圧)との交点の値が推定開放電圧E2である。直線Lと放電下限電圧(車両システムとしての使用下限電圧)Vminとの交点から、そのときの二次電池の最大出力Pmax=Vmin×Imaxがパワー演算値Pとして算出される。また、直線Lの傾きから二次電池の内部抵抗Rを算出することができる。ただし、Imaxは直線Lにおいて電圧が放電下限電圧Vminとなるときの値であり、放電下限電圧Vminは以下の(a),(b)の要因から決定される。
(a)電池の寿命を考慮した使用電圧範囲の下限電圧(放電終止電圧)
(b)車両搭載ユニットの性能,機能を保証可能な使用電圧範囲の下限電圧
【0019】
図6は充電量RSOCのリセットを説明する図であり、図4の場合と同様に(a)は相関図、(b)は充電量RSOCの時間変化を示す図である。上述したパワー演算により推定開放電圧E2が得られたならば、図6(a)の相関図から充電量CAPSOC4を求めてその時の充電量RSOCを充電量CAPSOC4にリセットする。なお、パワー演算による開放電圧の推定は間欠的にしか行うことができないため、充電量CAPSOCの変化は図6(b)に示すように折れ線グラフとなる。算出された充電量CAPSOCは真の充電量SOCの上下にばらついているが、このばらつきは放電IVサンプリング誤差に起因するものである。
【0020】
[▲3▼の開放電圧E3による充電量SOC演算]
図7は▲3▼の開放電圧E3による充電量SOC演算を説明する図であり、図4の場合と同様に(a)は相関図、(b)は充電量RSOCの時間変化を示す図である。充放電時の二次電池の電流値をI、電圧値をV、補正された内部抵抗をRで表すと、上述した式(3)は次式(4)のように表される。
【数4】
E3=V+I×R …(4)
ただし、Rは、内部抵抗初期値R0,温度補正係数α,内部抵抗劣化補正係数γを用いて式(5)のように表される。なお、温度補正係数α,内部抵抗劣化補正係数γについては後述する。
【数5】
R=R0/(α×γ) …(5)
【0021】
式(4)から推定される開放電圧E3と図7(a)の相関図とから充電量CAPSOC5を求め、図7(b)に示すように充電量RSOCを充電量CAPSOC5にリセットする。式(4)で算出される開放電圧E3は測定されたI,Vから逐次得ることができるが、電流値Iが大きいと補正係数γによる誤差が大きくなったり、電池容量が小さい場合には拡散抵抗増加,SOCの低下を伴うので、開放電圧E3の算出は電流値Iが小さい場合に使用すると有効である。例えば、電流値IがI≦5CAのときに用いる。なお、Cは定格容量であり、定格容量=3Ahの場合ならば5Cは15Aになる。以下では、算出時の電流値Iの上限値を5CA(=15A)として説明する。
【0022】
このように、開放電圧(E1〜E3)から得られる充電量CAPSOCを用いて充電量RSOCをリセットする場合には、上述した▲1▼〜▲3▼のいずれか一つの方法で得られた充電量CAPSOCでリセットしても良いし、これらを組み合わせて用いるようにしても良い。ただし、▲1▼の場合には無負荷時開放電圧は起動,停止時にしか得られないので、▲1▼で得られる充電量CAPSOCのみでリセットを行うよりも、他の▲2▼,▲3▼と組み合わせて行うのが好ましい。
【0023】
以下では、▲1▼〜▲3▼の三つを組み合わせてリセットする場合について説明する。
(a)起動時には、▲1▼の開放電圧E1に基づく充電量CAPSOCとAh積算値に基づく充電量RSOCとの偏差が所定値Δ1(例えば、Δ1=1%)以上となった時にリセットを行い、(b)走行時には、▲2▼の開放電圧E2に基づく充電量CAPSOCとAh積算値に基づく充電量RSOCとの偏差が所定値Δ1以上となった時にリセットを行う。
【0024】
ところで、定速走行時など負荷変動が小さな場合には図5の回帰直線Lが得られないため、開放電圧E2を推定することができない。開放電圧E2が得られないと、上述の偏差が得られなくなってリセットを行うか否かが評価できなくなり、Ah積算値に基づく充電量RSOCの偏差が実際に所定値Δ1以上となっていたとしてもリセットが行われないという不都合が生じる。そこで、このような不都合を防止するために、定速走行時などのパワー演算不可と判定された時には、▲3▼の開放電圧E3に基づく充電量CAPSOCとAh積算値に基づくRSOCとの偏差が所定値Δ2以上となったならば、充電量RSOCを算出された充電量CAPSOCでリセットする。ここで、所定値Δ2としてはΔ2≧Δ1となる値(例えば5%)に設定する。
【0025】
なお、走行中に開放電圧E2や開放電圧E3に基づく充電量CAPSOCでリセットを行う場合、Ah演算値を式(2)で算出される電流積算値CAPAHで置き換えたときに充電量RSOCが急変する場合がある。そこで、このような走行中の充電量SOCの急変によりシステムの制御が不安定になるのを防止するために、例えば、数十秒間(次式(6)の場合には10秒間)かけて徐々に充電量RSOCを充電量CAPSOCの値に変化させる。すなわち、次式(6)で算出される電流積算値CAPAHを用いて充電量RSOCを演算する。
【数6】
CAPAH=[{Ah(Pmin)×(1−CAPSOC/100)}×T/10+{CAPAH×(1−T/10)} …(6)
【0026】
図8は図1に示したコントローラ1の演算部1aの機能ブロック図である。22は電流センサ9からの電流値Iを積算してAh積算値を算出するAh演算部であり、23はAh積算値と電池容量演算部20で算出された電池容量Ah(Pmin)とから充電量RSOCを算出するRSOC演算部である。また、21は電圧センサ8からの電圧値Vおよび電流センサ9からの電流値Iをサンプリングして二次電池6(図1参照)の開放電圧E2,内部抵抗Rおよびパワー演算値Pを演算する瞬時パワー演算部であり、25は電圧値Vおよび電流値Iに基づいて式(4)により開放電圧E3を算出する開放電圧E3演算部である。なお、パワー演算部21では、サンプリングした電圧値Vおよび電流値Iに基づきパワー演算可能か否かの判定も行われる。
【0027】
算出された開放電圧E2,E3および無負荷時に検出される開放電圧E1は、CAPAH演算部24に入力される。CAPAH演算部24は(a)各開放電圧E1〜E3に応じた充電量CAPSOCの算出、(b)算出された充電量CAPSOCとRSOC演算部23で算出された充電量RSOCとの偏差の算出、(c)充電量CAPSOCに対応する電流積算値CAPAHの算出をそれぞれ行い、上記の偏差の大きさに応じて(c)の電流積算値CAPAHをRSOC演算部23に出力する。
【0028】
すなわち、CAPAH演算部24は、開放電圧E1,E2に基づく充電量CAPSOCに対する偏差が所定値Δ1以上となった時には、起動時であれば開放電圧E1に基づく充電量CAPSOCから算出される電流積算値CAPAHを出力し、走行時であれば開放電圧E2に基づく充電量CAPSOCから算出される電流積算値CAPAHを出力する。一方、走行時に、開放電圧E3に基づく充電量CAPSOCに対する偏差が所定値Δ2以上となった時には、開放電圧E3に基づく充電量CAPSOCから算出される電流積算値CAPAHを出力する。
【0029】
なお、CAPAH演算部24では、例えば、図3に示すようなSOC対開放電圧のテーブルを予めコントローラ1のメモリ(不図示)に記憶しておき、そのテーブルを用いて充電量CAPSOCを求めるようにする。RSOC演算部23は、CAPAH演算部24からの電流積算値CAPAHを受信したならば、充電量RSOCの算出に用いるAh演算値を受信した電流積算値CAPAHで置き換える。
【0030】
[電池容量演算部20の説明]
次に、電池容量演算部20における電池容量Ah(Pmin)の算出方法の概略を説明する。図9は二次電池6の初期特性の温度補正および劣化補正を説明する図であり、それぞれパワー特性対放電電気量の関係Ah(P)を示している。図9(a)の曲線L1は電池の初期特性(劣化が無く、電池温度が基準温度である場合)を示しており、リチウムイオン電池などの場合には、Ah(P)はパワーPのn次式で近似することができる。初期特性L1は次式(7)で近似することができる。
【数7】
Ah(P)=aP3+bP2+cP+d …(7)
ここで、係数a,b,c,dは初期電池の特性から決定される。
【0031】
この初期特性L1に対して温度補正係数αで温度補正を行うと、図9(b)に示す温度補正特性L2が得られる。この温度補正特性L2は次式(8)で表される。
【数8】
Figure 0003879278
図9(b)からも分かるようにαはパワーに対する比例分であって、温度補正特性L2のP切片PrefはPref=P0×αとなる。この温度補正係数αは二次電池の内部抵抗変化を表すパラメータであり、温度センサ10からの電池温度Tに基づいて電池容量演算部20のα演算部201で算出され、温度Tに応じたテーブル参照値である。また、P0は特性L1のP切片である。
【0032】
さらに、温度補正された式(8)に対して次式(9)で表されるような劣化補正を行うことによって、温度補正および劣化補正が施された関係式Ah(P)がパワー容量演算部203で算出される。
【数9】
Figure 0003879278
ここで、γは電池の内部抵抗変化を、βは電気容量変化を表すパラメータであり、それぞれ内部抵抗劣化補正係数、容量劣化補正係数と呼ばれる。上述した電池容量Ah(Pmin)は、式(9)で得られるAh(P)に車両のシステムに必要な最低保証出力Pminを代入して得られる。
【0033】
上述した内部抵抗劣化補正係数γは、α演算部201で算出された温度補正係数αおよび瞬時パワー演算部21で算出された内部抵抗Rに基づき、電池容量演算部20のγ演算部202おいて次式(10)により算出される。
【数10】
γ=(R0/α)/R …(10)
ここで、R0は電池の初期内部抵抗である。一方、容量劣化補正係数βは、Ah演算部22で算出されるAh積算値およびパワー容量演算部203で算出されるAh(P/αγ)に基づき、電池容量演算部20のβ演算部204において次式(11)により算出される。
【数11】
β=(Ah積算値)/Ah(P/αγ) …(11)
式(9)で表されるAh(P)は図9(c)の曲線L3のようになる。図9(c)において曲線L2’は特性曲線L2を内部抵抗劣化補正係数γで補正した曲線であり、特性曲線L2はこの曲線L2’を容量劣化補正係数βで補正したものである。
【0034】
なお、上述した方法はパワー特性対放電電気量の関係に上記のようなパラメータで表現可能な相関があれば適用可能であり、鉛酸電池,ニッケル水素電池などの電池種を問わず使用できる。ただし、温度補正,劣化補正をどの係数(α、β、γ)に当てはめるかについては各電池毎に検討をする必要がある。なお、必ずしもAh(P)はPのn次式で近似する必要はなく、例えば、PとAhの関係をテーブルとして持てば、補間計算を用いることによって上述した計算手順と同様に解を求めることができる。
【0035】
図10は充電量演算の手順を示すフローチャートであり、IGキー・オンによりフローがスタートする。なお、以下では開放電圧E1,E2に基づく充電量CAPSOCを充電量ECAPSOCと記し、開放電圧E3に基づく充電量CAPSOCを充電量VCAPSOCと記すことにする。ステップS1は無負荷状態か否かを判定するステップであり、無負荷状態の場合にはステップS2へ進み、負荷状態(充放電時)の場合にはステップS7へ進む。ステップS1からステップS2へ進んだ場合には、ステップS2で開放電圧E1を算出するとともにその開放電圧E1に基づく充電量ECAPSOCを図3に示す相関から求め、その後ステップS3へ進む。
【0036】
一方、ステップS1からステップS7へ進んだ場合には、ステップS7においてパワー演算が可能か否かの判定(例えば、瞬時パワー演算部21において電流値I,電圧値Vの変化をとらえたサンプリングデータが所定数以上収集できたか否かで判定する)を行い、パワー演算可能な場合にはステップS8へ、パワー演算不可能な場合にはステップS10へ進む。ステップS8では、開放電圧E2を算出するとともにその開放電圧E2に基づく充電量ECAPSOCを図3に示す相関から求め、その後ステップS3へ進む。なお、ステップS8で充電量ECAPSOCを算出する際には、開放電圧E2の移動平均、すなわち演算により得られる過去3回の値の平均値を用いる。次いで、ステップS3ではステップS2またはステップS8で算出された充電量ECAPSOCに対する充電量RSOC(Ah積算値から得られる)の偏差ESOCOFSを次式(12)により算出する。
【数12】
ESOCOFS=RSOC−ECAPSOC …(12)
【0037】
ステップS4は偏差ESOCOFSの絶対値が1%以上か否かを判定するステップであり、1%以上の場合にはステップS5に進み、1%より小さい場合にはステップS9へ進みAh積算値に基づく充電量RSOCを式(1)により算出した後にステップS16へ進む。ステップS5では、式(2)(または式(6))の充電量CAPSOCにステップS2またはステップS8で算出した充電量ECAPSOCを代入して電流積算値CAPAHを算出し、その電流積算値CAPAHでAh積算値をリセットする。ステップS6では、ステップS5で算出された電流積算値CAPAHに基づく充電量RSOCを式(1)により算出し、その後ステップS16へ進む。
【0038】
ところで、ステップS7においてパワー演算不可能と判定されてステップS10へ進んだ場合には、ステップS10において電流値Iが15A以下であるか否かを判定し、15A以下の場合にはステップS11へ進み、15Aを越える場合にはステップS9へ進む。ステップS11では、負荷時の開放電圧E3を式(4)により算出し、その開放電圧E3に基づく充電量VCAPSOCを図3に示す関係から求める。ステップS12では、ステップS11で算出された充電量VCAPSOCに対する充電量RSOC(Ah積算値から得られる)の偏差VSOCOFSを次式(13)により算出する。
【数13】
VSOCOFS=RSOC−VCAPSOC …(13)
【0039】
ステップS13は偏差VSOCOFSの絶対値が5%以上か否かを判定するステップであり、5%以上の場合にはステップS14に進んで式(2)または式(6)の充電量CAPSOCにステップS11の充電量VCAPSOCを代入して得られる電流積算値CAPAHでAh積算値をリセットし、5%より小さい場合にはステップS9へ進む。次いで、ステップS15において、ステップS14で算出された電流積算値CAPAHに基づく充電量RSOCを式(1)により算出したならば、ステップS16へ進む。
【0040】
ステップS16〜ステップS20は内部抵抗劣化補正係数γおよび容量劣化補正係数βの学習に関するステップであり、これらのステップを実行することにより最新のγ,βに更新される。まず、ステップS16はパワー演算条件が成立したか否か、すなわち、電流値I,電圧値Vの変化をとらえたサンプリングデータが所定数以上収集できたか否かを判定するステップであり、条件が成立したならばステップS17へ進む。ステップS17は充電量RSOCが所定値KCMSOC(例えば、40%)以上か否かを判定するステップであり、充電量RSOCが所定値KCMSOCより小さい場合にはステップS19へ進み、所定値KCMSOC以上の場合にはステップS18へ進んでγを次式(14)で算出されるγで更新した後にステップS19へ進む。
【数14】
γ=(R0/α)/R …(14)
ただし、R0は内部抵抗初期値、Rはパワー演算により算出される内部抵抗である。
【0041】
ステップS19は充電量RSOCが所定値KCLSOC(例えば、50%)以下か否かを判定するステップであり、充電量RSOCが所定値KCLSOCより大きい場合にはステップS7へ戻り、所定値KCLSOCより大きい場合にはステップS20へ進んでβを次式(15)で算出されるβで更新した後にステップS7へ戻る。
【数15】
β=CAPAH/Ah(P/αγ) …(15)
ただし、電流積算値CAPAHには最新の値を用いる。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態では、Ah積算値に基づく充電量RSOCの誤差が所定値Δ1やΔ2以上となったならば、充電量RSOCを算出する際のAh積算値を開放電圧E1〜E3から算出される電流積算値CAPAHで置き換えることにより、充電量RSOCに対するAh積算値の累積誤差の影響を低減することができる。また、走行状態、例えば定速走行や電流値Iが15Aを越えるような大きな場合、に応じて開放電圧E1〜E3を使い分けることにより、種々の走行パターンにおいて精度良く充電量を算出することができる。
【0043】
以上説明した実施の形態と特許請求の範囲の要素との対応において、開放電圧E 2 およびE 3 は開放電圧算出値を構成するとともに、開放電圧E 2 は第1の開放電圧を、開放電圧E 3 は第2の開放電圧を構成する。
【0044】
また、電流センサ9は電流検出手段を、電圧センサ8は電圧検出手段を、Ah演算部22は電流積算手段を、瞬時パワー演算部21および開放電圧E3演算部25は開放電圧演算手段を、CAPAH 演算部24は充電量演算手段をそれぞれ構成し、RSOC演算部23およびCAPAH演算部24により補正手段が構成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】パラレル・ハイブリッド車の構成を示すブロック図。
【図2】充電量SOCの変化の概念図でり、(a)はAh積算値に基づく充電量RSOCと真の充電量SOCとを示す図、(b)は本発明による充電量演算方法による充電量RSOCを示す図。
【図3】開放電圧と充電量SOCとの相関を示す図。
【図4】無負荷時の開放電圧に基づく充電量RSOCのリセットを説明する図であり、(a)は開放電圧と充電量SOCとの相関図、(b)は充電量RSOCの変化を示す図。
【図5】パワー演算を説明する図。
【図6】開放電圧E2に基づく充電量RSOCのリセットを説明する図であり、(a)は開放電圧と充電量SOCとの相関図、(b)は充電量RSOCの変化を示す図。
【図7】開放電圧E3に基づく充電量RSOCのリセットを説明する図であり、(a)は開放電圧と充電量SOCとの相関図、(b)は充電量RSOCの変化を示す図。
【図8】演算部1aの機能ブロック図。
【図9】二次電池の初期特性の温度補正および劣化補正を説明する図であり、(a)は初期特性L1を示す図、(b)は温度補正特性L2を示す図、(c)は温度補正および劣化補正された特性L3を示す図。
【図10】充電量SOCの演算手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
1 コントローラ
1a 演算部
1b 制御部
2 エンジン
3 モータ
6 二次電池
8 電圧センサ
9 電流センサ
10 温度センサ
20 電池容量演算部
21 瞬時パワー演算部
22 Ah演算部
23 RSOC演算部
24 CAPAH演算部
25 開放電圧E3演算部
201 α演算部
202 γ演算部
203 パワー容量演算部
204 β演算部

Claims (6)

  1. 二次電池の充放電電流値に基づいて電流積算値を算出し、その電流積算値に基づいて前記二次電池の第1の充電量を算出するハイブリッド車の充電量演算方法において、
    (a)前記二次電池の無負荷状態時の端子電圧値に基づいて第2の充電量を算出し、前記第2の充電量と前記第1の充電量との差が所定値以上となったときに前記第1の充電量を前記第2の充電量で置き換える第1の補正方法、
    (b)前記二次電池の充放電時の端子電圧値と電流値とをサンプリングし、それらを一次回帰演算して得られる端子電圧値と電流値との特性直線に基づいて第1の開放電圧を算出し、前記第1の開放電圧に基づいて算出される第3の充電量と前記第1の充電量との差が所定値以上となったときに前記第1の充電量を前記第3の充電量で置き換える第2の補正方法、
    (c)前記二次電池の充放電時の端子電圧値,電流値および内部抵抗値に基づいて第2の開放電圧を算出し、前記第2の開放電圧に基づいて算出される第4の充電量と前記第1の充電量との差が所定値以上となったときに前記第1の充電量を前記第4の充電量で置き換える第3の補正方法、の内の少なくとも1つの補正方法を用いて前記第1の充電量を補正することを特徴とするハイブリッド車の充電量演算方法。
  2. 請求項1に記載の充電量演算方法において、
    前記第1の補正方法および前記第2の補正方法を用いて前記第1の充電量を補正することを特徴とするハイブリッド車の充電量演算方法。
  3. 請求項1に記載の充電量演算方法において、
    前記第1の補正方法および前記第3の補正方法を用いて前記第1の充電量を補正することを特徴とするハイブリッド車の充電量演算方法。
  4. 請求項1に記載の充電量演算方法において、
    前記第1の補正方法、前記第2の補正方法および前記第3の補正方法の内の少なくとも1つの補正方法を、車両の走行状態に基づいて選択して用いることを特徴とするハイブリッド車の充電量演算方法。
  5. 請求項4に記載の充電量演算方法において、
    車両起動時には前記第1の補正方法を用いて前記第1の充電量を補正し、
    車両走行時であって前記特性直線が得られる走行状態である場合には、前記第2の補正方法を用いて前記第1の充電量を補正し、
    車両走行時であって前記特性直線が得られない走行状態である場合には、前記第3の補正方法を用いて前記第1の充電量を補正することを特徴とするハイブリッド車の充電量演算方法。
  6. 二次電池の充放電電流値を検出する電流検出手段と、
    前記電流検出手段の電流検出値に基づいて電流積算値を算出する電流積算手段とを備え、前記電流積算値に基づいて前記二次電池の第1の充電量を算出するハイブリッド車の充電量演算装置において、
    前記二次電池の端子電圧を検出する電圧検出手段と、
    前記電流検出手段の検出値および前記電圧検出手段の検出値に基づいて前記二次電池の開放電圧を算出する開放電圧演算手段と、
    前記開放電圧演算手段による開放電圧算出値に応じた第2の充電量を算出する充電量演算手段と、
    前記第1の充電量と前記第2の充電量との差が所定値以上となったときに、前記第2の充電量に基づいて前記第1の充電量を補正する補正手段と、を設けたことを特徴とするハイブリッド車の充電量演算装置。
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