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JP3876232B2 - 眼科用製剤、点眼液、人工涙液、コンタクトレンズケアー用品、洗眼液、および眼軟膏 - Google Patents

眼科用製剤、点眼液、人工涙液、コンタクトレンズケアー用品、洗眼液、および眼軟膏 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、眼科用製剤、点眼液、人工涙液、コンタクトレンズケアー用品、洗眼液、および眼軟膏に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、眼科用製剤については、「第14改正日本薬局方製造総則20点眼剤(7)」の「本剤または本剤に添付する溶剤は、別に規定するもののほか、無菌試験法に適合する。」との規定に応じて、製造時にメンブランフィルターを用いて除菌を行うとともに、開封以降の微生物汚染を防ぐ目的で防腐剤の添加が行われてきた。
【0003】
添加する防腐剤としては、一般使用濃度における防腐力試験で抗微生物力が強い、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、パラオキシ安息香酸エステル類等が用いられてきた。
一方、1回の使用分だけの眼科用製剤を個別に密封し、防腐剤を添加しない、いわゆる「一回使い捨てのシングルユース品」や、ろ過フィルターを備えた容器に眼科用製剤を収容し、防腐剤の添加をしない製品(特許文献1参照)が提案されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−80055号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、防腐剤を添加する点眼剤では、一般に、十分な抗微生物力を奏するだけの濃度で防腐剤を配合すると、角結膜上皮細胞毒性が高くなり、使用者に「しみる」感覚を生じさせ、差し心地が悪くなってしまうという問題があった。
【0006】
例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼントニウム、ビグナイト系のグルコン酸クロルヘキシジン等の防腐剤は、第4級アンモニウム類の陽イオン界面活性剤であり、細胞膜の損傷、酵素阻害により防腐作用を奏すると考えられるが、これらの防腐剤は、0.004%濃度で角膜表面において涙液を構成する脂質層の破壊をもたらすとの報告がある。
【0007】
従って、これらの防腐剤を含む眼科用製剤を、ドライアイに対する人工涙液、ハードコンタクト装用による損傷を受けた眼への点眼局所治療、通年性のアレルギー障害である春期カタルやアトピー性結膜炎の治療、および緑内障や白内障に対する治療の様に、長期間にわたって投薬した場合には、角膜上皮障害を招く恐れがある。
【0008】
また、一回使い捨てのシングルユース品では、1回の使用分ごとに個別に密封する必要があるため、製造コストが高くなってしまうという問題があった。
また、ろ過フィルターを備えた容器に眼科用製剤を収容し、防腐剤の添加を無くしたものでは、製造時の外気の侵入があれば、菌が繁殖してしまうこと、ろ過フィルターを備えることにより、容器の製造コストが高くなってしまうこと等の問題があった。
【0009】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、角結膜上皮障害を生じさせることなく安全性に優れ、抗菌性を有することにより安定性に優れ、使用者に不快感を生じさせない眼科用製剤、点眼液、人工涙液、コンタクトレンズケアー用品、洗眼液、および眼軟膏を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
(1)請求項1の発明は、
チアミンラウリル硫酸塩と、硫酸プロタミンと、HLB10〜17の非イオン性界面活性剤と、を含有することを特徴とする眼科用製剤を要旨とする。
【0011】
本発明の眼科用製剤は、チアミンラウリル硫酸塩と硫酸プロタミンとを含んでいることにより、細菌や真菌に対する抗菌力が高い。そのため、長期間にわたって安定に保存することができる。
また、本発明の眼科用製剤は、抗菌作用の高いチアミンラウリル硫酸塩と硫酸プロタミンとを含んでいるので、従来使用されてきた他の防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム、パラオキシ安息香酸ナトリウムとプロルエステルとの併用、ソルビン酸およびその塩等)は配合しないものとすることができる。
【0012】
また、従来使用されてきた他の防腐剤を配合するとしても、それらの濃度は低濃度で十分な抗菌性を奏することができる。
従って、本発明の眼科用製剤は、これら従来の防腐剤を高濃度で配合していた眼科用製剤とは異なり、角膜上皮障害を生じさせる恐れが無く安全であり、また、使用者に、「しみる」との不快感を生じさせることがない。
【0013】
・前記チアミンラウリル硫酸塩の配合濃度は、0.065〜0.2%の範囲が好ましい。0.065以上であることにより、真菌及びかび酵母への抗菌力が増大するという点で優れており、0.2%以下であることにより、多少存在する界面活性作用による防腐剤の不活性化の減少の点で優れている。
【0014】
・前記硫酸プロタミンの配合濃度は、0.065〜0.2%の範囲が好ましい。0.065%以上であることにより、好気性細菌に対する抗菌性がより向上し、0.2%以下であることにより、淡い白色光の着色が減少するという点で優れている。
また、本発明の眼科用製剤は、安定剤として、HLB10〜17の非イオン性界面活性剤を含んでいるので、常温や冷時(例えば4°C)においても、眼科用製剤に含まれる成分が結晶様物質として析出してしまうようなことがない。
・前記HLB10〜17の非イオン性界面活性剤の配合濃度は、0.010(0.015)〜0.025%の範囲が好ましい。0.010(0.015)以上であることにより結晶様物質の出現防止効果の点で優れており、0.025%以下であることにより、非イオン界面活性剤による微生物不活化の抑制の点で優れている。
(2)請求項2の発明は、
チアミンラウリル硫酸塩と、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸およびその塩、の中から選ばれる一種以上と、HLB10〜17の非イオン性界面活性剤と、を含有することを特徴とする眼科用製剤を要旨とする。
【0015】
本発明は、チアミンラウリル硫酸塩と、チアミンラウリル硫酸塩以外の防腐剤(塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸およびその塩、の中から選ばれる一種以上)とを含有することにより、様々な菌種に対して高い抗菌性を奏することができる。
また、本発明は、チアミンラウリル硫酸塩を含有することにより、チアミンラウリル硫酸塩以外の防腐剤の濃度は低くても、十分な抗菌性を奏することができる。
【0016】
そのため、本発明は、チアミンラウリル硫酸塩以外の防腐剤の濃度を低くすることにより、角膜上皮障害を生じさせる恐れが無く安全面で優れているという効果と、使用者に「しみる」との不快感を生じさせることがないという効果を奏することができる。
本発明では、チアミンラウリル硫酸塩以外の防腐剤が上記のものであることにより、抗菌性が一層高いという効果を奏する。
・前記チアミンラウリル硫酸塩以外の防腐剤の配合濃度は、例えば、それぞれ以下のようにすることにより、十分な効果を奏することができる。
塩化ベンザルコニウム:0.0016〜0.0020%
クロロブタノール:0.1〜0.2%
グルコン酸クロルヘキシジン:0.0032〜0.0064%
パラオキシ安息香酸メチルとパラオキシ安息香酸メチルプロピルとの併用
:0.02%(前者が0.013%、後者が0.07%)
ソルビン酸:0.01〜0.05%
尚、上記の各チアミンラウリル硫酸塩以外の防腐剤の一般使用濃度より50%低い濃度であっても、一般的に角膜への障害等が生じることがない。
また、本発明の眼科用製剤は、安定剤として、HLB10〜17の非イオン性界面活性剤を含んでいるので、常温や冷時(例えば4°C)においても、眼科用製剤に含まれる成分が結晶様物質として析出してしまうようなことがない。
・前記HLB10〜17の非イオン性界面活性剤の配合濃度は、0.010(0.015)〜0.025%の範囲が好ましい。0.010(0.015)以上であることにより結晶様物質の出現防止効果の点で優れており、0.025%以下であることにより、非イオン界面活性剤による微生物不活化の抑制の点で優れている。
【0019】
(3)請求項の発明は、
前記非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート80および/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60であることを特徴とする請求項1又は2記載の眼科用製剤を要旨とする。
【0020】
本発明では、非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート80および/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60であることにより、常温や冷時(例えば4°C)においても、眼科用製剤に含まれる成分が結晶様物質として析出してしまうようなことがないという効果が一層著しい。
)請求項の発明は、
pHが5.0〜8.0の範囲にあることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の眼科用製剤を要旨とする。
【0021】
本発明は、pHが上記範囲にあることにより、健康な人の涙液のpHに近く、涙液の緩衝能を乱すことがない。また、pHがこの範囲であることにより、使用時に「しみる」という不快感を生じることがない。
)請求項の発明は、
請求項1〜のいずれかに記載の眼科用製剤から成ることを特徴とする点眼液を要旨とする。
【0022】
本発明の点眼液は、請求項1〜の発明と同様の効果を奏する。
点眼液としては、水溶性点眼液、懸濁性点眼液、用時溶解式点眼液等が挙げられる。
)請求項の発明は、
請求項1〜のいずれかに記載の眼科用製剤から成ることを特徴とする人工涙液を要旨とする。
【0023】
本発明の人工涙液は、請求項1〜の発明と同様の効果を奏する。
)請求項の発明は、
請求項1〜のいずれかに記載の眼科用製剤から成ることを特徴とするコンタクトレンズケアー用品を要旨とする。
【0024】
本発明のコンタクトレンズケアー用品は、請求項1〜の発明と同様の効果を奏する。
・前記コンタクトレンズケアー用品としては、例えば、コンタクトレンズの保存液、洗滌液、装着液等が挙げられる。
)請求項の発明は、
請求項1〜のいずれかに記載の眼科用製剤から成ることを特徴とする洗眼液を要旨とする。
【0025】
本発明の洗眼液は、請求項1〜の発明と同様の効果を奏する。
)請求項の発明は、
請求項1〜のいずれかに記載の眼科用製剤から成ることを特徴とする眼軟膏を要旨とする。
【0026】
本発明の眼軟膏は、請求項1〜の発明と同様の効果を奏する。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の眼科用製剤、点眼液、人工涙液、コンタクトレンズケアー用品、洗眼液、眼軟膏の形態の例(実施例)を説明する。
(実施例1)
次のようにして、0.1%ヒアルロン酸ナトリウム点眼液(角結膜上皮障害治療用点眼剤、眼科用製剤)を調製した。
【0028】
まず、下記の成分を約半量(約50ml)の精製水に溶解した。
無水リン酸二水素ナトリウム:560mg
無水リン酸一水素ナトリウム:470mg
塩化ナトリウム:430mg
エデト酸ナトリウム:10mg
ポリソルベート80(HLB10〜17の非イオン性界面活性剤):15mg
チアミンラウリル硫酸塩:65mg
硫酸プロタミン:65mg
次に、この水溶液に、ヒアルロン酸ナトリウム100mgを約45mlの精製水に溶解したものを添加した。その後、pH調整剤でpHを6.7に調製し、次いで全量を精製水で100mlにメスアップし、最後に、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した。
(実施例2)
次のようにして、0.1%ヒアルロン酸ナトリウム点眼液(角結膜上皮障害治療用点眼剤、眼科用製剤)を調製した。
【0029】
まず、下記の成分を約半量(約50ml)の精製水に溶解した。
無水リン酸二水素ナトリウム:560mg
無水リン酸一水素ナトリウム:470mg
塩化ナトリウム:430mg
エデト酸ナトリウム:10mg
ポリソルベート80(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、HLB10〜17の非イオン性界面活性剤):15mg
チアミンラウリル硫酸塩:65mg
この水溶液に、ヒアルロン酸ナトリウム(平均分子量100万)100mgを約35mlの精製水に溶解したものを添加し、更に、塩化ベンザルコニウム1.6mg(局方)を約10mlの精製水に溶解したものを添加した。その後、pH調整剤でpHを6.7に調製し、次いで全量を精製水で100mlにメスアップし、最後に、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した。
(実施例3)
次のようにして、0.5%マレイン酸チモロール点眼液(抗緑内障剤、眼科用製剤)を調製した。
【0030】
まず、下記の成分を約半量(約50ml)の精製水に溶解した。
無水リン酸二水素ナトリウム:560mg
無水リン酸一水素ナトリウム:470mg
塩化ナトリウム:430mg
エデト酸ナトリウム:10mg
ポリソルベート80(HLB10〜17の非イオン性界面活性剤):15mg
チアミンラウリル硫酸塩:70mg
硫酸プロタミン:70mg
次に、この水溶液に、マレイン酸チモロール500mgを約45mlの精製水に溶解したものを添加した。その後、pH調整剤でpHを6.8に調製し、次いで全量を精製水で100mlにメスアップし、最後に、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した。
(実施例4)
次のようにして、0.5%マレイン酸チモロール点眼液(抗緑内障剤、眼科用製剤)を調製した。
【0031】
まず、下記の成分を約半量(約50ml)の精製水に溶解した。
ホウ酸:650mg
ホウ砂:200mg
塩化ナトリウム:180mg
エデト酸ナトリウム:10mg
ポリソルベート80(HLB10〜17の非イオン性界面活性剤):15mg
チアミンラウリル硫酸塩:70mg
次に、この水溶液に、マレイン酸チモロール500mgを約35mlの精製水に溶解したものを添加し、更に、塩化ベンザルコニウム2.0mg(局方)を約10mlの精製水に溶解したものを添加した。その後、pH調整剤でpHを6.6に調製し、次いで全量を精製水で100mlにメスアップし、最後に、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した。
(実施例5)
次のようにして、2.0%クロモグリク酸ナトリウム点眼液(抗アレルギー剤、眼科用製剤)を調製した。
【0032】
まず、下記の成分を約半量(約50ml)の精製水に溶解した。
無水リン酸二水素ナトリウム:560mg
無水リン酸一水素ナトリウム:470mg
塩化ナトリウム:230mg
エデト酸ナトリウム:10mg
ポリソルベート80(HLB10〜17の非イオン性界面活性剤):10mg
チアミンラウリル硫酸塩:65mg
硫酸プロタミン:70mg
次に、この水溶液に、クロモグリク酸ナトリウム2gを約45mlの精製水に溶解したものを添加した。その後、pH調整剤でpHを7.4に調製し、次いで全量を精製水で100mlにメスアップし、最後に、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した。
(実施例6)
次のようにして、2.0%クロモグリク酸ナトリウム点眼液(抗アレルギー剤、眼科用製剤)を調製した。
【0033】
まず、下記の成分を約半量(約50ml)の精製水に溶解した。
無水リン酸二水素ナトリウム:560mg
無水リン酸一水素ナトリウム:470mg
塩化ナトリウム:230mg
エデト酸ナトリウム:10mg
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HLB10〜17の非イオン性界面活性剤):15mg
チアミンラウリル硫酸塩:70mg
次に、この水溶液に、クロモグリク酸ナトリウム2gを約45mlの精製水に溶解したものを添加し、更に、塩化ベンザルコニウム2.0mg(局方)を約10mlの精製水に溶解したものを添加した。その後、pH調整剤でpHを6.7に調製し、次いで全量を精製水で100mlにメスアップし、最後に、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した。
(実施例7)
次のようにして、0.1%フルオロメトロン点眼液(懸濁性コルチゾン点眼液、眼科用製剤)を調製した。
【0034】
まず、下記の成分を約85mlの精製水に溶解した。
ホウ酸:750mg
ホウ砂:260mg
塩化ナトリウム:100mg
エデト酸ナトリウム:10mg
ポリソルベート80(HLB10〜17の非イオン性界面活性剤):10mg
チアミンラウリル硫酸塩:65mg
硫酸プロタミン:70mg
次に、この水溶液のpHをpH調整剤でpHを7.0に調製し、全量を精製水で100mlにメスアップしてから、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、最後に、フルオロメトロン100mgを無菌的に添加し、分散懸濁させた。
(実施例8)
次のようにして、0.1%フルオロメトロン点眼液(懸濁性コルチゾン点眼液、眼科用製剤)を調製した。
【0035】
まず、下記の成分を約85mlの精製水に溶解した。
無水リン酸ニ水素ナトリウム:560mg
無水リン酸一水素ナトリウム:470mg
塩化ナトリウム:430mg
エデト酸ナトリウム:10mg
ポリソルベート80(HLB10〜17の非イオン性界面活性剤):10mg
チアミンラウリル硫酸塩:65mg
次に、この水溶液に、塩化ベンザルコニウム1.6mg(局方)を約10mlの精製水に溶解したものを添加し、pH調整剤でpHを6.6に調製した。その後、全量を精製水で100mlにメスアップしてから、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、最後に、フルオロメトロン100mgを無菌的に添加し、分散懸濁させた。
(実施例9)
次のようにして、0.1%ジクロフェナクナトリウム点眼液(非ステロイド消炎剤、眼科用製剤)を調製した。
【0036】
まず、下記の成分を適量の精製水に溶解した。
ホウ酸:760mg
ホウ砂:230mg
塩化ナトリウム:100mg
エデト酸ナトリウム:10mg
ポリソルベート80(HLB10〜17の非イオン性界面活性剤):15mg
チアミンラウリル硫酸塩:65mg
硫酸プロタミン:65mg
次に、この水溶液に、ジクロフェナクナトリウム100mgを添加し、溶解させた。その後、pH調整剤でpHを6.8に調製し、次いで全量を精製水で100mlにメスアップし、最後に、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した。
(実施例10)
次のようにして、0.1%ジクロフェナクナトリウム点眼液(非ステロイド消炎剤、眼科用製剤)を調製した。
【0037】
まず、下記の成分を適量の精製水に溶解した。
無水リン酸二水素ナトリウム:560mg
無水リン酸一水素ナトリウム:470mg
塩化ナトリウム:370mg
エデト酸ナトリウム:10mg
ポリエキシエチレン硬化ヒマシ油60(HLB10〜17の非イオン性界面活性剤):15mg
チアミンラウリル硫酸塩:65mg
次に、この水溶液に、ジクロフェナクナトリウム100mgとクロロブタノール100mgとを添加し、溶解させた。その後、pH調整剤でpHを6.6に調製し、次いで全量を精製水で100mlにメスアップし、最後に、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した。
(実施例11)
次のようにして、0.25%酢酸プレドニゾロン眼軟膏(コルチゾン製剤、眼科用製剤)を調製した。
【0038】
まず、下記の成分を約40mlの精製水に溶解した。
エデト酸ナトリウム:10mg
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HLB10〜17の非イオン性界面活性剤):15mg
チアミンラウリル硫酸塩:70mg
硫酸プロタミン:70mg
次に、この水溶液を精製水で50mlにメスアップし、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過してから、酢酸プレドニゾロン250mgを無菌的に攪拌懸濁分散させた。更に、この水溶液と、別に加熱処理しておいたマクロゴール軟膏を約60°Cで合わせ、全量を100gとし、室温下で固まるまでかき混ぜた。
(実施例12)
次のようにして、0.25%酢酸プレドニゾロン眼軟膏(コルチゾン製剤、眼科用製剤)を調製した。
【0039】
まず、下記の成分を約40mlの精製水に溶解した。
エデト酸ナトリウム:10mg
ポリソルベート80(HLB10〜17の非イオン性界面活性剤):10mg
チアミンラウリル硫酸塩:70mg
パラオキシ安息香酸メチル(メチルパラベン):13mg
パラオキシ安息香酸プロピル(プロピルパラベン):7mg
次に、この水溶液を精製水で50mlにメスアップし、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過してから、酢酸プレドニゾロン250mgを無菌的に攪拌懸濁分散させた。更に、この水溶液と、別に加熱処理しておいたマクロゴール軟膏を約60°Cで合わせ、全量を100gとし、室温下で固まるまでかき混ぜた。
(実施例13)
次のようにして、人工涙液(塩化ナトリウムと塩化カリウムとを主体とするもの、眼科用製剤)を調製した。
【0040】
まず、下記の成分を適量の精製水に溶解した。
塩化ナトリウム:770mg
塩化カリウム:120mg
エデト酸ナトリウム:10mg
ポリオキシエチレンヒマシ油60(HLB10〜17の非イオン性界面活性剤):15mg
チアミンラウリル硫酸塩:65mg
硫酸プロタミン:65mg
次に、pH調整剤でこの水溶液のpHを7.5に調製し、全量を精製水で100mlにメスアップした。最後に、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した。
(実施例14)
次のようにして、人工涙液(塩化ナトリウムと塩化カリウムとを主体とするもの、眼科用製剤)を調製した。
【0041】
まず、下記の成分を適量の精製水に溶解した。
塩化ナトリウム:770mg
塩化カリウム:120mg
エデト酸ナトリウム:10mg
ポリソルベート80(HLB10〜17の非イオン性界面活性剤):10mg
チアミンラウリル硫酸塩:65mg
次に、この水溶液に、ソルビン酸10mgを加えてから、pH調整剤でpHを7.3に調製した。その後、全量を精製水で100mlにメスアップし、最後に、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した。
(実施例15)
次のようにして、洗眼薬(眼科用製剤)を調製した。
【0042】
まず、下記の成分を約80mlの精製水に溶解した。
ホウ酸:850mg
エデト酸ナトリウム:10mg
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HLB10〜17の非イオン性界面活性剤):15mg
チアミンラウリル硫酸塩:65mg
硫酸プロタミン:65mg
次に、この水溶液に、イプシロン−アミノカプロン酸200mg、マレイン酸クロルフェニラミン3mg、グリチルリチン酸二カリウム20mg、塩酸ピリドキシン10mgを順次添加、溶解させた。その後、pH調整剤でpHを7.2に調整し、全量を精製水で100mlにメスアップしてから、最後に、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した。
(実施例16)
次のようにして、洗眼薬(眼科用製剤)を調製した。
【0043】
まず、下記の成分を約80mlの精製水に溶解した。
ホウ酸:850mg
エデト酸ナトリウム:10mg
ポリソルベート80(HLB10〜17の非イオン性界面活性剤):10mg
チアミンラウリル硫酸塩:65mg
次に、この水溶液に、イプシロン−アミノカプロン酸200mg、マレイン酸クロルフェニラミン3mg、グリチルリチン酸二カリウム20mg、塩酸ピリドキシン10mgを順次添加、溶解させ、更に、グルコン酸クロルヘキシジン3.2mgを10mlの精製水に溶かしたものを添加した。その後、pH調整剤でpHを7.0に調整し、全量を精製水で100mlにメスアップしてから、最後に、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した。
(実施例17)
次のようにして、コンタクトレンズケアー用品であるコンタクトレンズ用洗浄液を調製した。
【0044】
まず、下記の成分を約半量(約50ml)の精製水に溶解した。
クエン酸:300mg
クエン酸ナトリウム:700mg
チアミンラウリル硫酸塩:65mg
ポリソルベート80;15mg
硫酸プロタミン;65mg
ビオブラーゼ(ナガセ生化学工業(株)製、微生物由来のプロテアーゼ):5g
次に、この水溶液に、キシリトール1g、プロピレングリコール35gを溶解し、pH調整剤でpHを6.8に調整した。そして、全量を精製水で100mlにメスアップし、最後に、4.5μmのメンブレンフィルターでろ過した。
(実施例18)
次のようにして、コンタクトレンズケアー用品であるコンタクトレンズ用洗浄液を調製した。
【0045】
まず、下記の成分を約半量(約50ml)の精製水に溶解した。
クエン酸:300mg
クエン酸ナトリウム:700mg
チアミンラウリル硫酸塩:65mg
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油:15mg
ソルビン酸:10mg
ビオブラーゼ(ナガセ生化学工業(株)製、微生物由来のプロテアーゼ):5g
次に、この水溶液に、キシリトール1g、プロピレングリコール35gを溶解し、pH調整剤でpHを7.1に調整した後、全量を精製水で100mlにメスアップし、最後に、4.5μmのメンブレンフィルターでろ過した。
【0046】
b)次に、本実施例の眼科用製剤が奏する効果を説明する。
▲1▼本実施例の眼科用製剤は、チアミンラウリル硫酸塩と硫酸プロタミンとを含んでいることにより、細菌や真菌に対する抗菌力が高い。そのため、長期間にわたって安定に保存することができる。
【0047】
(2)本実施例の眼科用製剤は、抗菌作用の高いチアミンラウリル硫酸塩を含んでいるので、従来使用されてきた他の防腐剤(塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム、パラオキシ安息香酸ナトリウムとプロルエステの併用、ソルビン酸およびその塩等)は、実施例1、3、5、7、9、11、13、15、17の様に、配合しないものとすることができる。
【0048】
また、実施例2、4、6、8、10、12、14、16、18の様に、従来使用されてきた他の防腐剤を配合するとしても、それらの濃度は低濃度で十分な抗菌性を奏することができる。
具体的には、実施例2、4、6、8、10、12、14、16、18において配合された防腐剤の濃度と、それらの防腐剤の一般的使用濃度は表1の通りである。このように、上記各実施例の眼科用製剤は、他の防腐剤の濃度が、従来の一般的濃度より低くても、十分な抗菌性を奏することができる。
【0049】
【表1】
Figure 0003876232
【0050】
従って、本実施例の眼科用製剤は、これらの防腐剤を高濃度で配合していた従来の眼科用製剤とは異なり、角膜上皮障害を生じさせる恐れが無く安全であり、また、使用者に、「しみる」との不快感を生じさせることがない。
▲3▼本実施例1、3、5、7、9、11、13、15、17の眼科用製剤は、チアミンラウリル硫酸塩に加えて、硫酸プロタミンを含んでいるので、一層抗菌作用が高い。
【0051】
▲4▼本実施例の眼科用製剤は、安定剤として、ポリソルベート80又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(いずれもHLB10〜17の非イオン性界面活性剤)を含んでいるので、常温や冷時(例えば4°C)においても、眼科用製剤に含まれる成分が結晶様物質として析出してしまうようなことがない。
【0052】
▲5▼本実施例の眼科用製剤が含むチアミンラウリル硫酸塩は、他剤との配合禁忌がない。例えば、従来使用されていた陽イオン界面活性剤である塩化ベンザルコニウムのように、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、クロモグリク酸ナトリウム等と併用した場合でも、白濁や沈殿を生じることがない。
【0053】
c)次に、本実施例の眼科用製剤が奏する効果を確かめるために行った実験について説明する。
(i)保存抗力試験
実施例1〜18の眼科用製剤と、比較例としての滅菌生理食塩水とに対し、抗微生物防腐剤試験を実施した。試験方法は、第14改正日本薬局方の保存効力試験法と、米国薬局方(USP)28に規定される微生物試験との2法に従って実施した。試験に用いた菌種は、第14改正日本薬局方の保存効力試験法では、S.aureus、P.aeruginosa、C.sporogenes、B.subtilis、C.albicans、およびA.nigerを用いた。また、米国薬局方(USP)28に規定される微生物試験では、S.aureus、E.coli、P.aeruginosa、C.albicans、及びA.nigerを用いた。
【0054】
試験結果の評価基準としては、細菌に関しては、14日後に接種菌数の0.1%以下であり、28日後に14日後の段階と同等以下の菌数であれば「適合」とした。また、真菌に対しては、14日後と、28日後にそれぞれ、接種菌数と同等以下の菌数であれば「適合」とした。
【0055】
評価結果を表2〜表5に示す。尚、表2〜表5における配合量の単位はmgである。
【0056】
【表2】
Figure 0003876232
【0057】
【表3】
Figure 0003876232
【0058】
【表4】
Figure 0003876232
【0059】
【表5】
Figure 0003876232
【0060】
この表2〜表5に示す様に、第14改正日本薬局方の無菌試験法と、米国薬局方(USP)28に規定される微生物試験との2法において、実施例1〜18の眼科用製剤は全て、「適合」となった。
この実験結果から、実施例1〜18の眼科用製剤は、防腐効果が高く、好適であることが確かめられた。
【0061】
(ii)結晶様物質の析出試験
<実験1>
▲1▼試験に用いる溶液の調製
点眼剤として常用されるリン酸系緩衝液に、チアミンラウリル硫酸塩を0.065%の濃度(実施例1〜18におけるチアミンラウリル硫酸塩の濃度と同一又は近似する濃度)となるように溶解させた。
【0062】
次に、この溶液に、表6に示す各添加剤(界面活性剤)を、それぞれ対応する濃度となるように配合し、各試験用溶液を調製した。
【0063】
【表6】
Figure 0003876232
【0064】
▲2▼評価方法
前記▲1▼で調製した各試験溶液を、常温および冷時(4°C)環境下で2週間保存し、結晶様物質出現の有無を観察した。
▲3▼評価結果
評価結果を上記表6にしめす。試験溶液の中で、HLB10〜17の非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80およびポリソルベート80)を添加したものは、常温下だけではなく、冷時で保存した場合でも結晶様物質の析出が見られなかった。
【0065】
それに対し、他の添加剤を添加した試験溶液では、冷時保存の場合は、結晶様物質の析出が生じた。
尚、この表6及び後述する表7〜9において、「−」は結晶様物質の析出がないことを示し、「+」は結晶様物質の析出があることを示す。
【0066】
また、実験1は、リン酸系緩衝液の代わりに、ホウ酸系緩衝液を用いても同様の結果が得られた。
<実験2>
前記実験1と同様に、点眼剤として常用されるリン酸系緩衝液に、チアミンラウリル硫酸塩を0.065%の濃度(実施例1〜18におけるチアミンラウリル硫酸塩と同一又は近似する濃度)となるように溶解させた。そして、この溶液に、表7、表8に示すHLB10〜17の非イオン性界面活性剤を、それぞれ対応する濃度となるように配合し、各試験用溶液を調製した。それぞれの試験溶液について、冷時(4°C)下に保存し、結晶様物質出現の有無を観察した。
【0067】
【表7】
Figure 0003876232
【0068】
【表8】
Figure 0003876232
【0069】
この実験の結果、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20を0.025%以上添加した試験用溶液、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40を0.025%以上添加した試験用溶液、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を0.015%(実施例における添加濃度)以上添加した試験用溶液、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを0.01%(実施例における添加濃度)以上添加した試験用溶液、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレートを0.025%以上添加した試験用溶液、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテートを0.025%以上添加した試験用溶液、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを0.025%以上添加した試験用溶液については、常温だけではなく、冷時においても結晶様物質の析出がなかった。
【0070】
尚、実験2は、リン酸系緩衝液の代わりに、ホウ酸系緩衝液を用いても同様の結果が得られた。
<実験3>
等張リン酸系緩衝液に0.065%のチアミンラウリル硫酸塩と、0.025%ポリソルベート80(HLB10〜17の非イオン性界面活性剤)とを溶解させた。この溶液に、表9に示す添加物をそれぞれ加えた試験溶液を調製し、常温および冷時における結晶様物質の析出の有無を観察した。
【0071】
【表9】
Figure 0003876232
【0072】
この実験3の結果として、いずれも試験溶液についても、常温および冷時のいずれの場合も、結晶様物質の析出は生じなかった。
以上実験1〜実験3の結果から、チアミンラウリル硫酸塩を含む眼科用製剤において、HLB10〜17の非イオン性界面活性剤を添加することにより、結晶様物質の析出が防止でき、防腐剤、溶解補助剤、緩衝剤、安定剤等との配合禁忌がないことが確認できた。
【0073】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。

Claims (9)

  1. チアミンラウリル硫酸塩と、
    硫酸プロタミンと、
    HLB10〜17の非イオン性界面活性剤と、
    を含有することを特徴とする眼科用製剤。
  2. チアミンラウリル硫酸塩と、
    塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸およびその塩、の中から選ばれる一種以上と、
    HLB10〜17の非イオン性界面活性剤と、
    を含有することを特徴とする眼科用製剤。
  3. 前記非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート80および/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60であることを特徴とする請求項1又は2記載の眼科用製剤。
  4. pHが5.0〜8.0の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の眼科用製剤。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の眼科用製剤から成ることを特徴とする点眼液。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の眼科用製剤から成ることを特徴とする人工涙液。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載の眼科用製剤から成ることを特徴とするコンタクトレンズケアー用品。
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載の眼科用製剤から成ることを特徴とする洗眼液。
  9. 請求項1〜4のいずれかに記載の眼科用製剤から成ることを特徴とする眼軟膏。
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