JP3874917B2 - (メタ)アクリル酸系重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等の水硬性組成物において、セメント粒子の分散性を向上させるセメント用分散剤として有用な(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ポリカルボン酸系重合体はセメント用分散剤として有用であり、それに関する種々の技術が提案されている。このようなセメント用分散剤として、特公昭59−18338号公報には、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び(メタ)アクリル酸系単量体、さらにこれらの単量体と共重合可能な単量体を特定の比率で反応させることによって製造された共重合体を含むものが開示され、特開平5−238795号公報には、不飽和結合を有するポリアルキレングリコールジエステル系単量体と解離基を有する単量体を重合して得られる共重合体を含むものが開示され、特開平8−12396号公報には、不飽和結合を有するポリアルキレングリコールエステル単量体と特定の単量体との共重合体を含むものが開示されている。しかし、これらの従来技術においては、具体的な重合条件については記載されておらず、例えば、特開平8−12396号公報第4欄においては、本発明における重合体は公知の方法で製造することができる、と記載されている。
【0003】
本発明は、重合条件を具体的に設定することにより、セメント用分散剤として好適な(メタ)アクリル酸系重合体を、安定した品質で得ることができる(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、酸触媒及び重合禁止剤を含有するエステル化反応物にアルカリ剤を添加して酸触媒を失活させ、さらに特定範囲のpHに調整して重合反応をさせることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成したものである。
【0005】
即ち本発明は、(メタ)アクリル酸とポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルをモル比5:1〜50:1の範囲で添加し、酸触媒及び重合禁止剤の存在下でエステル化反応させたのち、アルカリ剤で酸触媒を失活させ、次いで未反応の(メタ)アクリル酸を留去して、(メタ)アクリル酸エステル及び未反応の(メタ)アクリル酸残留物を含むエステル化反応物を得る工程1と、
工程1で得られたエステル化反応物を、酸によりpH1.5〜3.5の範囲に調整し、(メタ)アクリル酸エステルと未反応の(メタ)アクリル酸残留物を共重合させる工程2とを具備することを特徴とする(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法を提供するものである。
【0006】
なお、本発明における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸の両方を意味するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
工程1においては、まず、(メタ)アクリル酸とポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルを、酸触媒及び重合禁止剤の存在下でエステル化反応させる。
【0008】
エステル化反応で用いる(メタ)アクリル酸としては特に限定されるものではなく、市販されている予め重合禁止剤を含むもの等を用いることができる。
【0009】
エステル化反応で用いるポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、ポリアルキレン部分が、エチレンオキシド単独の付加物又はエチレンオキシドとプロピレンオキシドの混合付加物等のアルキレンオキシド付加物からなるものを挙げることができ、アルキレンオキシドの総付加モル数は1〜300のものが好ましい。また、モノアルキルエーテル部分を構成するアルキル基としては、炭素数1〜3のものが好ましい。
【0010】
(メタ)アクリル酸とポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルの反応系における配合比率は、エステル化反応速度をより高めるため、モル比で5:1〜50:1の範囲であり、好ましくは10:1〜40:1の範囲である。
【0011】
エステル化反応で用いる酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等のスルホン酸類、硫酸、リン酸等の鉱酸類等を挙げることができる。
【0012】
酸触媒の使用量は、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましい。0.1重量部以上であると反応速度を適度に保つことができ、10重量部以下であると経済的であり、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルのアルキレンオキシド鎖を開裂させることなく、円滑に反応を進行させることができるため好ましい。
【0013】
エステル化反応で用いる重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ベンゾキノン、メトキノン、BHT等から選ばれる1種以上のものの任意比率の組み合わせを挙げることができる。また、反応系に酸素を含む気体を通気することにより、さらに重合禁止効果を高めることができる。
【0014】
重合禁止剤の使用量は、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル100重量部に対して0.001〜1重量部が好ましい。
【0015】
エステル化反応における反応温度は、80〜130℃が好ましい。80℃以上であると適度な反応速度を保つことができ、130℃以下であるとポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルの品質の劣化を防止でき、反応系の粘度を適度に保つことができるため好ましい。
【0016】
エステル化反応における反応系の圧力は特に限定されるものではないが、反応により生成した水を系外に留去する観点から減圧であることが好ましい。
【0017】
工程1においては、エステル化反応後、アルカリ剤を添加して酸触媒を失活させる。このアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物等を挙げることができる。アルカリ剤の使用量は、使用した酸触媒に対して0.9〜1.5当量倍が好ましく、1.0〜1.3当量倍が特に好ましい。
【0018】
工程1においては、酸触媒を失活させたのち、未反応の(メタ)アクリル酸を留去して、下記の一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルを主として含み、それとともに下記の一般式(II)で表される未反応の(メタ)アクリル酸残留物を含むエステル化反応物を得る。
【0019】
【化1】
【0020】
[式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数1〜3のアルキル基を示し、AOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基を示し、nは2〜300の数を示し;R3は水素原子又はメチル基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子を示す]。
【0021】
工程1のエステル化反応においては、反応を円滑に進行させるために大過剰量の(メタ)アクリル酸を用いる。従って、工程2における所望量の(メタ)アクリル酸よりも大過剰量の(メタ)アクリル酸が存在するため、工程1において、未反応の(メタ)アクリル酸を留去するものである。この未反応の(メタ)アクリル酸の留去の程度は、次の工程2における(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合モル比により、適宜設定する。工程2において、(メタ)アクリル酸エステルと未反応の(メタ)アクリル酸残留物とを共重合させる場合には、未反応の(メタ)アクリル酸残留物の含有量は1.0〜25.0重量%が好ましく、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体をさらに添加して共重合させる場合には、未反応の(メタ)アクリル酸残留物の含有量は0.5〜10.0重量%が好ましい。
【0022】
未反応の(メタ)アクリル酸を留去する方法としては、真空蒸留法、水蒸気蒸留法又は常圧でキャリアガスとともに留去させる方法等を適用することができる。
【0023】
工程2においては、工程1で得られたエステル化反応物中に含まれる上記した(メタ)アクリル酸エステルと未反応の(メタ)アクリル酸残留物とを、pH1.5〜3.5の範囲で共重合反応させる。
【0024】
共重合反応においては、さらに一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体を添加することができる。この単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩又はアミン塩等のアクリル酸系単量体;無水マレイン酸、マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、無水シトラコン酸、シトラコン酸、フマル酸及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩又はアミン塩等の不飽和ジカルボン酸系単量体;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、スチレン、(メタ)アクリアミド、アクリロニトリル、スチレンスルホン酸及びその塩、スルホアルキル(メタ)アクリレート及びその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩等を挙げることができる。
【0025】
このような(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体の使用量は、一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステル100重量部に対して0.5〜100重量部が好ましく、0.5〜50重量部が特に好ましい。
【0026】
反応系のpHは1.5〜3.5の範囲であるが、pH2.0〜3.0が好ましい。pHを1.5以上にすると重合反応時における(メタ)アクリル酸エステルの加水分解反応が生じることを抑制することができる。pHを3.5以下にすると共重合速度を高く保つことができるとともに、共重合体中の各単量体の配列を適切に制御することができ、これらの結果として、安定した品質のセメント用分散剤として有用な(メタ)アクリル酸系重合体を得ることができる。なお、工程2におけるpHは、重合反応系混合物の5重量%水溶液のpHである。
【0027】
pHの調整に用いる酸としては、リン酸、硫酸、硝酸、アルキルリン酸、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも、pH緩衝作用があり、pHの所定範囲への調整が容易で、重合反応系の泡立ちを抑制できるため、リン酸が好ましい。
【0028】
工程2においては、重合反応系の粘度を低下させるため、溶媒の存在下で反応を行うことができる。この溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等を挙げることができる。これらの中でも、取り扱いが容易で、留去も容易であることから、水、低級アルコールが好ましい。
【0029】
工程2においては、重合開始剤を添加することができる。重合開始剤としては、有機過酸化物、無機過酸化物、ニトリル系化合物、アゾ系化合物、ジアゾ系化合物、スルフィン酸系化合物等を挙げることができる。重合開始剤の添加量は、一般式(I)、一般式(II)及び他の単量体の合計に対して1〜50モル倍が好ましい。
【0030】
工程2においては、連鎖移動剤を添加することができる。連鎖移動剤としては、低級アルカリメルカプタン、低級メルカプト脂肪酸、チオグリセリン、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタノール等を挙げることができる。特に水を溶媒として用いる場合には、これらの連鎖移動剤を添加することで、分子量調整をより安定に行うことができる。
【0031】
工程2における共重合反応の反応温度は、0〜120℃が好ましい。
【0032】
上記した工程1及び工程2の処理を経て得られた(メタ)アクリル酸系重合体は、必要に応じて、さらに脱臭処理をすることができる。特に連鎖移動剤としてメルカプトエタノール等のチオールを用いた場合には、不快臭が重合体中に残存するため、脱臭処理をすることが望ましい。
【0033】
連鎖移動剤としてチオールを用いた場合の脱臭処理法としては、酸化剤によりチオールをジスルフィドにする方法を挙げることができる。この方法で用いる酸化剤としては、過酸化水素、空気、酸素等を挙げることができるが、酸化による脱臭効果が高い点から過酸化水素が好ましい。過酸化水素の添加量は、重合体に対して100〜2000ppmが好ましく、100〜1000ppmが特に好ましい。100ppm以上であると充分な脱臭処理をすることができ、2000ppm以下であると過剰の過酸化水素が残存し、それが重合開始剤として作用して重合を進行させたり、過酸化水素が分解して酸素を発生させたり、金属容器中における重合体溶液のゲル化等の問題が生じない。脱臭温度は70〜100℃が好ましく、80〜90℃が特に好ましい。70℃以上であると脱臭効果が高まり、100℃以下であると重合物の熱分解による副生物の生成を防止できる。
【0034】
本発明の製造方法により得られる(メタ)アクリル酸系重合体は、酸のままでもセメント用分散剤として適用することができるが、酸によるエステルの加水分解を抑制する観点から、アルカリによる中和によって塩の形にすることが好ましい。このアルカリとしては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニウム、アルキルアンモニウム、アルカノールアミン、N−アルキル置換ポリアミン、エチレンジアミン、ポリエチレンポリアミン等を挙げることができる。(メタ)アクリル酸系重合体をセメント用分散剤として使用する場合は、中和によりpHを5〜7にすることが好ましい。
【0035】
本発明の製造方法により得られる(メタ)アクリル酸系重合体の重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法。ポリエチレンオキシド換算)は、セメント用分散剤として充分な分散性を得るため、10,000〜200,000が好ましく、20,000〜100,000が特に好ましい。
【0036】
本発明の製造方法により得られる(メタ)アクリル酸系重合体は、ポルトランドセメント、アルミナセメント、各種混合セメント等の水硬セメント、石膏等のセメント以外の水硬材料等の分散剤として用いることができる。
【0037】
【実施例】
以下の例において「%」は「重量%」を表す。
【0038】
実施例1
(工程1)
80℃で溶融したエチレンオキシド付加モル数120のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(重量平均分子量5312)1000重量部を、温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に仕込んだ。次に、ハイドロキノン3重量部、p−トルエンスルホン酸32重量部を投入した。ここでポリエチレングリコールモノメチルエーテルとメタクリル酸の合計重量1kg当たり6ml/minとなる流量で空気を反応液中に導入し、さらに反応容器の気相部に12ml/minの流量で窒素を導入しながら、メタクリル酸486重量部(ポリエチレングリコールモノメチルエーテルに対して30モル倍となる量)を投入し、加熱及び反応容器内の減圧を開始した。圧力は26.7kPaに制御し、反応液温度が105℃に到達した時点を反応開始時刻とし、引き続き加熱して反応液温度を110℃に維持して反応を行った。圧力は、反応開始1時間後に12〜13.3kPaに減圧したのち、そのまま維持した。反応開始から6時間後に圧力を常圧に戻し、p−トルエンスルホン酸に対して1.05倍当量の48%水酸化ナトリウム水溶液を添加して中和し、反応を終了させた。
反応終了後、反応液温度を130℃以下に維持し、真空蒸留法により、未反応のメタクリル酸を回収し、エステル化反応物(A)−1を得た。この(A)−1の酸価は40mg−KOH/g、重合禁止剤濃度0.1%、触媒塩(p−トルエンスルホン酸ナトリウム)濃度3%、メタクリル酸濃度6.1%であった。
【0039】
(工程2)
工程1と同様のガラス製反応容器に水800重量部を仕込み、攪拌しながら反応容器の気相部を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで昇温した。次に、エステル化反応物(A)−1を600重量部、メタクリル酸35重量部、2−メルカプトエタノール3重量部、ディクエスト(ホスホン酸系キレート剤;日本モンサント社製)0.7重量部及び85%リン酸5重量部を混合溶解した液と、5%過硫酸アンモニウム水溶液120重量部の2液を同時に滴下し、両液とも90分かけて滴下を終了させた。次に、5%過硫酸アンモニウム水溶液44重量部を30分かけて滴下し、1時間程度80℃で熟成させた。重合反応中のpHは2.5であった。さらに、48%水酸化ナトリウム水溶液30重量部を加えて中和したのち、35%過酸化水素0.7重量部を滴下し、1時間90℃で熟成させて、(メタ)アクリル酸系重合体を得た。この(メタ)アクリル酸系重合体の粘度を測定(東京計器製造所社製B型粘度計,ローターNo.2,30rpm)したところ、420mPa・sであった。
【0040】
このようにして得られた(メタ)アクリル酸系重合体を用い、セメント分散剤としての評価試験を下記の方法により行った。結果を表1に示す。
(ペーストフロー値の測定)
普通ポルトランドセメント700g及び水210gに、(メタ)アクリル酸系重合体の40%水溶液0.9gを添加し、モルタルミキサー(三英製作所製)にて63rpmで1分間混合し、さらに126rpmで2分間混合した。混合終了後、平面上に下部開口部を押しつけた状態のペーストフロー測定用コーン(上部直径76mm、下部直径86mm、高さ40mm)の上部開口部から前記混合物を流し込み、測定用コーンを平面に垂直方向に引き上げて取り外した後の平面上に円形に広がったセメントペーストの直径を2点において測定し、その平均値をもってペーストフロー値(mm)とした。このペーストフロー値が大きいほど、分散性が優れていることを示している。
【0041】
実施例2
実施例1の工程2において、リン酸5重量部に代えて硫酸5重量部を用いたほかは実施例1と同様にして、(メタ)アクリル酸系重合体を得た。なお、工程2における重合反応中のpHは2.2〜2.8であった。得られた(メタ)アクリル酸系重合体の粘度は450mPa・sであった。この(メタ)アクリル酸系重合体について、実施例1と同様の方法によりペーストフロー値を求めた。結果を表1に示す。
【0042】
実施例3
実施例1の工程2において、メタクリル酸35重量部をメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(新中村化学社製,エチレンオキシド平均付加モル数23)120重量部に代えたほかは実施例1と同様にして、(メタ)アクリル酸系重合体を得た。なお、工程2における重合反応中のpHは3.1であった。得られた(メタ)アクリル酸系重合体の粘度は440mPa・sであった。この(メタ)アクリル酸系重合体について、実施例1と同様の方法によりペーストフロー値を求めた。結果を表1に示す。
【0043】
実施例4
実施例1の工程2において、メタクリル酸35重量部をアクリル酸メチル60重量部に代えたほかは実施例1と同様にして、(メタ)アクリル酸系重合体を得た。なお、工程2における重合反応中のpHは3.0であった。得られた(メタ)アクリル酸系重合体の粘度は450mPa・sであった。この(メタ)アクリル酸系重合体について、実施例1と同様の方法によりペーストフロー値を求めた。結果を表1に示す。
【0044】
実施例5
(工程1)
実施例1の工程1において、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(エチレンオキシド平均付加モル数200,重量平均分子量8864)1000重量部とメタクリル酸291重量部とを用いたほかは実施例1と同様にして、エステル化反応物(A)−2を得た。この(A)−2の酸価は10mg−KOH/g、重合禁止剤濃度0.1%、触媒塩(p−トルエンスルホン酸ナトリウム)濃度5%、メタクリル酸濃度1.5%であった。
【0045】
(工程2)
エステル化反応物(A)−2を用い、実施例1の工程2においてメタクリル酸35重量部を添加しなかったほかは実施例1と同様にして、(メタ)アクリル酸系重合体を得た。なお、工程2における重合反応中のpHは3.1であった。得られた(メタ)アクリル酸系重合体の粘度は450mPa・sであった。この(メタ)アクリル酸系重合体について、実施例1と同様の方法によりペーストフロー値を求めた。結果を表1に示す。
【0046】
比較例1
実施例1の工程2において、リン酸5重量部を添加しなかったほかは実施例1と同様にして、(メタ)アクリル酸系重合体を得た。なお、工程2における重合反応中のpHは4.0であった。得られた(メタ)アクリル酸系重合体の粘度は480mPa・sであった。この(メタ)アクリル酸系重合体について、実施例1と同様の方法によりペーストフロー値を求めた。結果を表1に示す。
【0047】
比較例2
実施例5の工程2において、リン酸5重量部を用いなかったほかは実施例5と同様にして、(メタ)アクリル酸系重合体を得た。なお、工程2における重合反応中のpHは4.2であった。得られた(メタ)アクリル酸系重合体の粘度は460mPa・sであった。この(メタ)アクリル酸系重合体について、実施例1と同様の方法によりペーストフロー値を求めた。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例1〜5の製造方法により得られた(メタ)アクリル酸系重合体は、いずれもペーストフロー値が高く、しかも実施例1〜5におけるペーストフロー値の差は最大でも5mmとほぼ近似した値が得られた。よって、本発明の製造方法を適用することにより、ペーストフロー値の分布幅の狭い(メタ)アクリル酸系重合体を得ることができ、その結果、安定した、しかも高い品質を有するセメント用分散剤が提供できることが確認された。
【0050】
これに対して、比較例1、2の製造方法により得られた(メタ)アクリル酸系重合体は、工程2における重合反応系のpHが本発明で規定する範囲外であるため、ペーストフロー値が大きく劣っており、その差も13mmと大きかった。よって、本発明の製造方法を適用しない場合は、ペーストフロー値の分布幅の広い(ペーストフロー値にばらつきが大きい)(メタ)アクリル酸系重合体が得られ、品質の安定したセメント用分散剤を提供できないことが確認された。
【0051】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、品質が安定した、しかも高いセメント分散性を有する、セメント用分散剤として好適な(メタ)アクリル酸系重合体を得ることができる。
Claims (3)
- (メタ)アクリル酸とポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルをモル比5:1〜50:1の範囲で添加し、酸触媒及び重合禁止剤の存在下でエステル化反応させたのち、アルカリ剤で酸触媒を失活させ、次いで未反応の(メタ)アクリル酸を留去して、(メタ)アクリル酸エステル及び未反応の(メタ)アクリル酸残留物を含むエステル化反応物を得る工程1と、
工程1で得られたエステル化反応物を、酸によりpH1.5〜3.5の範囲に調整し、(メタ)アクリル酸エステルと未反応の(メタ)アクリル酸残留物を共重合させる工程2とを具備することを特徴とする(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法。 - 工程2において、さらに(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体を添加し、共重合させる請求項1記載の(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法。
- 工程2において用いる酸がリン酸である請求項1又は2記載の(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法。
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