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JP3874992B2 - 等速自在継手 - Google Patents

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JP3874992B2
JP3874992B2 JP2000130259A JP2000130259A JP3874992B2 JP 3874992 B2 JP3874992 B2 JP 3874992B2 JP 2000130259 A JP2000130259 A JP 2000130259A JP 2000130259 A JP2000130259 A JP 2000130259A JP 3874992 B2 JP3874992 B2 JP 3874992B2
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健二 寺田
竜宏 後藤
健太 山崎
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や各種産業機械等の動力伝達装置に使用される等速自在継手に関し、特にトリポード型等速自在継手に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車のエンジンから車輪に回転動力を伝達する動力伝達装置の一要素として(ドライブシャフトやプロペラシャフトの連結用継手として)、トリポード型等速自在継手が用いられている。
【0003】
トリポード型等速自在継手は、一般に、内周部に軸方向の3本のトラック溝が形成され、各トラック溝の両側にそれぞれ軸方向のローラ案内面を有する外側継手部材と、半径方向に突出した3本の脚軸を有し、各脚軸にそれぞれローラを回転可能に配設したトリポード部材とを主体として構成される。トリポード部材の脚軸と外側継手部材のローラ案内面とがローラを介して回転方向に係合することにより、駆動側から従動側に回転トルクが等速で伝達される。また、各ローラが脚軸に対して回転しながらローラ案内面上を転動することにより、外側継手部材とトリポード部材との間の相対的な軸方向変位や角度変位が吸収されると同時に、外側継手部材とトリポード部材とが作動角を取りつつ回転トルクを伝達する際の、回転方向位相の変化に伴う、各脚軸のローラ案内面に対する軸方向変位が吸収される。
【0004】
トリポード型等速自在継手としては、上記ローラを複数のニードルローラを介して脚軸の円筒状外周面に装着したものもあるが、外側継手部材とトリポード部材とが作動角をとりつつ回転トルクを伝達する際、脚軸の傾きに伴って各ローラとローラ案内面とが互いに斜交した関係になるので、両者の間に滑りが生じ、その際の摺動抵抗によって各ローラの円滑な転動が妨げられて誘起スラストが大きくなるという問題がある。また、各ローラとローラ案内面との間の摺動抵抗によって、外側継手部材とトリポード部材とが軸方向に相対変位する際のスライド抵抗が大きくなるという問題がある。
【0005】
そこで、ローラとローラ案内面との斜交状態を解消して、誘起スラストやスライド抵抗の低減を図るため、脚軸に対するローラの傾動を自在とする機構を備えたトリポード型等速自在継手が種々提案され、実用化されている。この種のトリポード型等速自在継手として、脚軸の外周面を凸球状に形成すると共に、ローラを複数のニードルローラを介して支持リングに回転可能に組み付けてローラ機構(ローラアッセンブリ)を構成し、支持リングの円筒状の内周面を脚軸の凸球状の外周面に外嵌した構成が知られている(特公平7−117108号、特許2623216号等)。この構成によれば、支持リングの円筒状の内周面と脚軸の凸球状の外周面との間の滑りによって、脚軸に対するローラ機構の傾動及び軸方向移動が自在となる。
【0006】
さらに、本出願人は、この種のトリポード型等速自在継手における誘起スラストやスライド抵抗を一層効果的に低減するため、支持リングの内周面が円弧状凸断面であり、脚軸の外周面は縦断面においてはストレート形状で、横断面においては継手の軸線と直交する方向で支持リングの内周面と接触し、かつ、継手の軸線方向で支持リングの内周面との間にすきまを形成するようになっている構成について既に出願している(特願平11−059040号)。この構成によれば、支持リングの円弧状凸断面の内周面と脚軸のストレート形状の外周面との間の滑りによって、脚軸に対するローラ機構の傾動及び軸方向移動が自在となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、上述した本出願人の既出願(特願平11−059040号)に係る等速自在継手を例にとると、図11に誇張して示すように、無負荷状態において、ローラ機構Aを構成する部品間(ローラ34とニードルローラ36との間、支持リング32とニードルローラ36との間)、ローラ34とローラ案内面14との間、及び支持リング32と脚軸22との間には若干のラジアル方向隙間が存在する。そのため、図12に誇張して示すように、回転トルクの伝達時、脚軸22、ローラ機構A、及びローラ案内面14の相互間に負荷荷重が加わって上記の隙間が詰まると、同図紙面内(継手の軸線と直交する断面内)で、脚軸22の軸線Xが上記の隙間分だけローラ機構Aの軸線Yに対して傾く(傾き角β)。この脚軸22の傾きにより、脚軸22とローラ機構Aとの接触部(脚軸22の外周面22aと支持リング32の内周面32cとの接触点)Sに負荷される負荷荷重Fの向きがトルク伝達方向(継手中心Oを中心とする円の接触点Sにおける接線方向)から内向きにずれて、脚軸基端側に向いた分力fが発生する(以下、この分力を「内向き分力f」という。)。また、支持リング32と係止リング33及び係止リング35との間には若干の軸方向隙間が存在し、支持リング32はこの軸方向隙間分だけローラ34に対して軸線方向に相対移動が可能である。そのため、上記の内向き分力fが加わると、支持リング32が脚軸基端側に相対移動して係止リング35に接触した状態になり、その分、支持リング32の内周面32cの曲率中心を通る中心線L1が、ローラ34の外周面34aの曲率中心を通る中心線L2に対して脚軸基端側にΔhだけずれ、その結果、上記の内向き分力fの大きさが助長される。そして、このような内向き分力fに起因して、ローラ機構Aがローラ案内面14に対して同図紙面内で右回り方向に傾き、非負荷側(図示省略)において、ローラ34の外周面34aがローラ案内面14の脚軸基端側部分と接触する機会が多くなり、ローラ34の円滑な転動が妨げられて、継手の誘起スラストやスライド抵抗に影響することがある。
【0008】
そこで、本発明は、上記の内向き分力に起因するローラ機構の傾きを抑制することにより、誘起スラストやスライド抵抗を一層効果的に低減し、安定させ、それによって、より低振動のトリポード型等速自在継手を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、内周部に軸方向の3本のトラック溝が形成され、各トラック溝の両側にそれぞれ軸方向のローラ案内面を有する外側継手部材と、半径方向に突出した3本の脚軸を有するトリポード部材と、トリポード部材の各脚軸にそれぞれ装着されたローラ機構とを備え、ローラ機構は、ローラ案内面に沿って外側継手部材の軸線と平行な方向に案内されるローラと、ローラを回転可能に支持する支持リングとを含み、脚軸に対して傾動自在である等速自在継手において、脚軸とローラ機構との接触部に加わる負荷荷重の内向き分力に起因して、ローラ機構が継手の軸線と直交する断面内で傾くのを抑制する傾き抑制手段が設けられ、この傾き抑制手段として、ローラの外周面とローラ案内面とを2点でアンギュラコンタクトさせると共に、脚軸基端側のアンギュラコンタクト点の接触角を、脚軸先端側のアンギュラコンタクト点の接触角よりも大きくした構成を提供する。ここで、「内向き分力」は、上述したように、脚軸とローラ機構との接触部に負荷される負荷荷重の向きがトルク伝達方向から内向きにずれることにより発生する、上記負荷荷重の脚軸基端方向の荷重成分である。
【0010】
上記の構成によれば、ローラの外周面とローラ案内面とをアンギュラコンタクトさせているので、ローラ機構のローラ案内面に対する姿勢が安定し、しかも、脚軸基端側のアンギュラコンタクト点の接触角を脚軸先端側のアンギュラコンタクト点の接触角よりも大きくしているので、内向き分力を脚軸基端側のアンギュラコンタクト点で多く負荷させることができる。そのため、継手の軸線と直交する断面内でのローラ機構の傾きが抑制され、ローラの円滑な転動が確保される。尚、アンギュラコンタクトを実現するための手段として、ローラ案内面の断面形状をゴシックアーチ形状、テーパ形状(V字形状)、放物線形状とすることができる。
【0011】
また、上記の傾き抑制手段として、ローラの外周面を、その軸線と平行で上記接触部を通る直線の近傍に曲率中心を有する円弧状凸断面とした構成を採用することができる。この構成によれば、内向き分力の作用点となる上記接触部と、ローラ機構の傾きの支点となるローラの外周面の曲率中心とがローラ機構の半径方向に近接又は一致した位置関係になり、ローラ機構に作用する傾きのモーメント力が小さくなるので、継手の軸線と直交する断面内でのローラ機構の傾きが抑制され、ローラの円滑な転動が確保される。
【0012】
また、上記課題を解決するため、本発明は、内周部に軸方向の3本のトラック溝が形成され、各トラック溝の両側にそれぞれ軸方向のローラ案内面を有する外側継手部材と、半径方向に突出した3本の脚軸を有するトリポード部材と、トリポード部材の各脚軸にそれぞれ装着されたローラ機構とを備え、ローラ機構は、ローラ案内面に沿って外側継手部材の軸線と平行な方向に案内されるローラと、ローラを回転可能に支持する支持リングとを含み、脚軸に対して傾動自在である等速自在継手において、脚軸とローラ機構との接触部に加わる負荷荷重の内向き分力に起因して、ローラ機構が継手の軸線と直交する断面内で傾くのを抑制する傾き抑制手段が設けられ、支持リングの内周面は円弧状凸断面であり、脚軸の外周面は縦断面においてはストレート形状で、横断面においては継手の軸線と直交する方向で支持リングの内周面と接触し、かつ、継手の軸線方向で支持リングの内周面との間にすきまを形成するようになっている構成を提供する
【0013】
脚軸の横断面形状について、継手の軸線と直交する方向で支持リングの内周面と接触するとともに継手の軸線方向で支持リングの内周面との間にすきまを形成するような形状とは、言い換えれば、トリポード部材の軸方向で互いに向き合った面部分が相互方向に、つまり、仮想円筒面よりも小径側に退避している形状を意味する。その一つの具体例として略楕円形が挙げられる。「略楕円形」には、字義どおりの楕円形の他、一般に卵形、小判形等と称される形状も含まれる。
【0014】
従来円形であった脚軸の断面形状を上記の形状としたことにより、継手が作動角をとった時、ローラ機構(ローラアッセンブリ)の姿勢を変えることなく、脚軸が継手の軸線と平行な断面内で外側継手部材に対して傾くことができる。しかも、脚軸の外周面と支持リングとの接触楕円が従来の横長から点に近づくため(図1(C)参照)、ローラ機構を傾けようとする摩擦モーメントが低減する。したがって、ローラ機構の姿勢が安定し、ローラがローラ案内面と平行に保持されるため円滑に転動することができる。これにより、スライド抵抗の低減ひいては誘起スラストの低減に寄与する。
【0015】
なお、ローラ機構は脚軸と外側継手部材との間に介在してトルクを伝達する役割を果たすものであるが、この種の等速自在継手におけるトルクの伝達方向は常に継手の軸線に直交する方向であるため、当該トルクの伝達方向において脚軸と支持リングとが接していることでトルクの伝達は可能であり、継手の軸線方向において両者間にすきまがあってもトルク伝達に支障を来すことはない。
【0016】
上記構成において、支持リングの内周面の母線を、中央部の円弧部と両端部の逃げ部とで構成することができる。円弧部の曲率半径は、2〜3°程度の脚軸の傾きを許容できる大きさとするのが好ましい。
【0017】
上記構成の等速自在継手において、ローラと支持リングとがそれらの軸線方向に相対移動するのを係止リングや係止鍔などの係止手段で両側から規制することによって、ローラ機構のアッセンブリ体としての一体性を確保することができる。しかしながら、ローラ又は支持リングと係止手段との間には軸方向隙間を確保する必要があり、支持リングはこの軸方向隙間分だけローラに対して軸線方向に相対移動可能である。したがって、上記の内向き分力が加わると、支持リングがローラに対して脚軸基端側に相対移動することにより、支持リングの内周面の曲率中心を通る中心線がローラの外周面の曲率中心を通る中心線に対して脚軸基端側にずれる。その結果、内向き分力の大きさが助長される。これを防止するため、上記の傾き抑制手段として、ローラ機構を構成する部品間の隙間に起因して支持リングがローラに対して脚軸基端側に相対移動した時に、ローラの外周面の曲率中心を通る中心線と支持リングの内周面の曲率中心を通る中心線とが一致するようした構成を採用することができる。この構成によれば、上記の内向き分力が低減される結果、継手の軸線と直交する断面内でのローラ機構の傾きが抑制され、ローラの円滑な転動が確保される。
【0018】
また、上記の傾き抑制手段として、脚軸の外周面を縦断面において基端側に開いた傾斜状とすることもできる。この構成によれば、継手の軸線と直交する断面内で、脚軸の軸線がローラ機構の軸線に対して傾いた場合でも、脚軸の外周面自体の傾きは抑制され又は解消される。したがって、上記の内向き分力が低減され、その結果、継手の軸線と直交する断面内でのローラ機構の傾きが抑制され、ローラの円滑な転動が確保される。
【0019】
以上に説明した傾き抑制手段の具体的構成は、単独で採用しても良いし、2以上の構成を組み合わせて採用しても良い。
【0020】
以上の構成において、支持リングとローラの間に複数の転動体を配置して支持リングとローラを相対回転可能とすることができ、その転動体として、ニードルローラやボール等を用いることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
図1及び図2は、第1の実施形態に係るトリポード型等速自在継手を示している。図1(A)は継手の軸線と直交する断面を示し、図1(B)は脚軸の軸線と直交する断面を示し、図1(C)は支持リングの断面を示し、図2は継手の軸線と平行な断面において、継手が作動角(θ)をとった時の状態を示している。
【0023】
図1に示すように、この実施形態の等速自在継手は外側継手部材10とトリポード部材20とを主体として構成され、連結すべき2軸の一方が外側継手部材10の軸部10a(図2参照)と連結され、他方がトリポード部材20と連結される。
【0024】
外側継手部材10は内周部に軸方向に延びる3本のトラック溝12を有する。各トラック溝12の円周方向で向かい合った側壁にそれぞれローラ案内面14が形成されている。トリポード部材20は半径方向に突設した3本の脚軸22を有し、各脚軸22にはローラ34が取り付けてあり、このローラ34が外側継手部材10のトラック溝12内に収容される。ローラ34の外周面34aはローラ案内面14に適合する凸曲面である。
【0025】
ここでは、ローラ34の外周面34aは脚軸22の軸線から半径方向に離れた位置に曲率中心を有する円弧を母線とする円弧状凸断面であり、ローラ案内面14の断面形状はゴシックアーチ形状であって、これにより、ローラ34の外周面34aとローラ案内面14とが2点でアンギュラコンタクトをなす。尚、球面状のローラ外周面に対してローラ案内面14の断面形状をテーパ形状、放物線形状等としても両者のアンギュラコンタクトが実現する。このようにローラ34の外周面34aとローラ案内面14とが2点でアンギュラコンタクトをなす構成を採用することによって、ローラの姿勢が安定する。なお、アンギュラコンタクトを採用しない場合には、たとえば、ローラ案内面14を軸線が外側継手部材10の軸線と平行な円筒面の一部で構成し、その断面形状をローラ34の外周面34aの母線に対応する円弧とすることもできる。
【0026】
脚軸22の外周面22aに支持リング32が外嵌している。この支持リング32とローラ34とは複数のニードルローラ36を介してアッセンブリ(ユニット化)され、相対回転可能なローラ機構(ローラアッセンブリ)Aを構成している。
【0027】
すなわち、図5に拡大して示すように、支持リング32の円筒形外周面を内側軌道面とし、ローラ34の円筒形内周面を外側軌道面として、これらの内外軌道面間に複数のニードルローラ36が転動自在に介装されている。そして、支持リング32、ローラ34、及びニードルローラ36が、それらの軸線方向に相対移動するのを規制するために、ローラ機構Aの軸方向両側にそれぞれ係止手段が設けられている。同図に示す例では、両側の係止手段は係止リング33、35で構成され、それぞれ、ローラ34の端部内周に設けられた円周溝34c、34dに嵌合される。係止リング33及び35と支持リング32との間、係止リング33及び35とニードルローラ36との間には、それぞれ僅かな軸方向隙間がある。このようにして、ローラ34に装着された係止リング33、35は、支持リング32の端面、ニードルローラ36の端面と接触することによって、これらの部材がローラ34に対して軸方向に相対移動するのを規制する。尚、係止リング33、35は、例えば一部をスリットによって分割した分割リングである。また、図1(B)に示すように、ニードルローラ36は、できるだけ多くのころを入れた、保持器のない、いわゆる総ころ状態で組み込まれている。
【0028】
あるいは、ローラ機構Aとして、図6に示す構造を採用しても良い。この例では、ローラ機構Aの一方側の係止手段を係止リング33で構成し、他方側の係止手段を係止鍔34eで構成している。係止リング33は、ローラ34の一方側の端部内周に設けられた円周溝34cに嵌着される。また、係止鍔34eはローラ34の他方側の端部に一体に設けられる。図5に示す構造に比べ、他方側の係止手段を係止リングで構成することによる組付け公差を排除して、支持リング32及びニードルローラ36との間の軸方向クリアランスを半減できるという利点がある。
【0029】
脚軸22の外周面22aは、縦断面{図1(A)}で見ると脚軸22の軸線と平行なストレート形状であり、横断面{図1(B)}で見ると、長軸が継手の軸線に直交する楕円形状である。脚軸の断面形状は、トリポード部材20の軸方向で見た肉厚を減少させて略楕円状としてある。言い換えれば、脚軸の断面形状は、トリポード部材の軸方向で互いに向き合った面が相互方向に、つまり、仮想円筒面よりも小径側に退避している。
【0030】
支持リング32の内周面32cは円弧状凸断面を有する。すなわち、内周面32cの母線が半径rの凸円弧である{図1(C)}。このことと、脚軸22の断面形状が上述のように略楕円形状であり、脚軸22と支持リング32との間には所定のすきまが設けてあることから、支持リング32は脚軸22の軸方向での移動が可能であるばかりでなく、脚軸22に対して傾動自在である。また、上述のとおり支持リング32とローラ34はニードルローラ36を介して相対回転自在にアッセンブリされているため(ローラ機構A)、脚軸22に対し、支持リング32とローラ34がユニットとして傾動可能な関係にある。ここで、傾動とは、脚軸22の軸線を含む平面内で、脚軸22の軸線に対して支持リング32およびローラ34の軸線(ローラ機構Aの軸線)が傾くことをいう。
【0031】
上述のように、この実施形態の等速自在継手は、脚軸22の横断面が略楕円状で、支持リング32の内周面32cの横断面が円弧状凸断面であることから、図1(C)に破線で示すように、両者の接触楕円は点に近いものとなり、同時に面積も小さくなる。したがって、ローラ機構Aを傾かせようとする力が従来のものに比べると非常に低減し、ローラ34の姿勢の安定性が一層向上する。
【0032】
さらに、この実施形態では、図7に拡大して示すような傾き抑制手段を設けている。すなわち、ローラ34の外周面34aとローラ案内面14とを2点p、qでアンギュラコンタクトさせると共に、脚軸基端側のアンギュラコンタクト点qの接触角α1を、脚軸先端側のアンギュラコンタクト点pの接触角α0よりも大きくしている(α1>α0)。この構成によれば、ローラ34の外周面34aとローラ案内面14とを2点p、qアンギュラコンタクトさせているので、ローラ機構Aのローラ案内面14に対する姿勢が安定し、しかも、接触角α1を接触角α0よりも大きくしているので、内向き分力fを脚軸基端側のアンギュラコンタクト点qで多く負荷させることができる。そのため、同図紙面内(継手の軸線と直交する断面内)でのローラ機構Aの傾きが抑制され、ローラ34の円滑な転動が確保される。
【0033】
図8〜図10は、第2〜第4の実施形態に係るトリポード型等速自在継手の傾き抑制手段を拡大して示している。尚、第2〜第4の実施形態に係るトリポード型等速自在継手の他の構成は、第1の実施形態に係るトリポード型等速自在継手と同じであるので、記載を省略する。
【0034】
図8に示す第2の実施形態に係る傾き抑制手段は、ローラ機構Aを構成する部品間の隙間、この例では支持リング32と係止リング33及び35との間の軸方向隙間に起因して、支持リング32がローラ34に対して脚軸基端側に相対移動した時に、ローラ34の外周面34aの曲率中心を通る中心線L2と支持リング32の内周面32cの曲率中心を通る中心線Llとが一致するようにしたものである。この構成は、例えば、支持リング32について、中心線L1を軸方向中心(支持リング32の軸方向中心)から脚軸先端側にΔhだけずらすことによって実現することができる。この構成によれば、内向き分力fが低減する結果、同図紙面内(継手の軸線と直交する断面内)でのローラ機構Aの傾きが抑制され、ローラ34の円滑な転動が確保される。
【0035】
図9に示す第3の実施形態に係る傾き抑制手段は、ローラ34の外周面34aを、ローラ34の軸線と平行で接触部Sを通る直線L3の近傍に曲率中心O1を有する半径Rの円弧状凸断面としたものである。この構成によれば、内向き分力fの作用点となる接触部Sと、ローラ機構Aの傾きの支点となるローラ34の外周面34aの曲率中心O1とがローラ機構Aの半径方向に近接した位置関係になり(離間距離Δt)、ローラ機構Aに作用する傾きのモーメント力が小さくなる。そのため、同図紙面内(継手の軸線と直交する断面内)でのローラ機構Aの傾きが抑制され、ローラ34の円滑な転動が確保される。尚、ローラ34の外周面34aの曲率中心O1を直線L3上に設定しても良い(Δt=0)。
【0036】
図10に示す第4の実施形態に係る傾き抑制手段は、脚軸22の外周面22aを縦断面において基端側に開いた傾斜状にしたものである。同図に示す例では、外周面22aの傾斜角を、脚軸22の軸線Xが前述した態様でローラ機構Aの軸線Yに対して角度βだけ傾いた時に、外周面22aがローラ機構Aの軸線Yと平行になるような角度、すなわち脚軸22の傾き角βと同じ角度(β)にしている。この構成によれば、負荷荷重Fの向きとトルク伝達方向とのずれがなくなるので、内向き分力fが発生せず、その結果、同図紙面内(継手の軸線と直交する断面内)でのローラ機構Aの傾きが抑制され、ローラ34の円滑な転動が確保される。尚、外周面22aの傾斜角をβ未満とした場合でも、内向き分力fの低減、それによるローラ機構Aの傾き抑制に一定の効果が期待できる。
【0037】
以上に説明した第1〜第4の実施形態に係るトリポード型等速自在継手は、それぞれ、傾き抑制手段(図7〜図10)を単独で採用したものであるが、2以上の傾き抑制手段を併用しても良い。
【0038】
図3および図4は、本発明の第5の実施形態に係るトリポード型等速自在継手を示している。この実施形態の等速自在継手は、支持リング32の内周面32cの母線が、上述の実施形態の等速自在継手では単一の円弧で形成されているのに対して、中央の円弧部32aとその両側の逃げ部32bとの組合せで形成されている点で相違する。逃げ部32bは、図3(C)のように作動角(θ)をとったときの脚軸22との干渉を避けるための部分であり、円弧部32aの端から支持リング32の端部に向かって徐々に拡径した直線または曲線で構成する。ここでは、逃げ部32bを円錐角α=50°の円錐面の一部とした場合を例示してある。円弧部32aは、支持リング32に対する脚軸22の2〜3°程度の傾きを許容するため、たとえば30mm程度の大きな曲率半径(r)とする。トリポード型等速自在継手では、機構上、外側継手部材10が1回転するときトリポード部材20は外側継手部材10の中心に対して3回振れ回る。このとき符号e{図2(A)}で表わされる偏心量は作動角(θ)に比例して増加する。そして、3本の脚軸22は120°ずつ離間しているが、作動角(θ)をとると、図2(B)に示すように、図の上側に表われている垂直な脚軸22を基本として考えると、他の2本の脚軸22は、一点鎖線で示す作動角0のときのそれらの軸線からわずかに傾く。その傾きは作動角(θ)が例えば約23°のとき2〜3°程度となる。この傾きが支持リング32の内周面32cの円弧部32aの曲率によって無理なく許容されるため、脚軸22と支持リング32との接触部における面圧が過度に高くなるのを防止することができる。なお、図2(B)は、図2(A)の左側面から見たトリポード部材20の3本の脚軸22を模式的に図示したもので、実線が脚軸を表わしている。この実施形態の等速自在継手においても、図7〜図10に示す構成と同様の傾き抑制手段を、単独で、あるいは2以上の構成を併用することにより、継手の軸線と直交する断面内でのローラ機構Aの傾きを抑制して、ローラ34の円滑な転動を確保している。尚、ローラ機構Aの係止手段として図6に示す構造を採用しても良い。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、脚軸とローラ機構との接触部に加わる負荷荷重の内向き分力に起因するローラ機構の傾きが抑制されることにより、継手の誘起スラストやスライド抵抗が一層効果的に低減され、安定し、それによって、より低振動のトリポード型等速自在継手を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るトリポード型等速自在継手を示し、図1(A)は一部を断面にした端面図、図1(B)は図1(A)における脚軸に垂直な断面図、図1(C)は接触楕円を説明するための支持リングの断面図である。
【図2】図2(A)は図1の等速自在継手の縦断面図であって作動角をとった状態を示し、図2(B)は図2(A)におけるトリポード部材の模式的側面図である。
【図3】本発明の第5の実施形態に係るトリポード型等速自在継手を示し、図3(A)は一部を断面にした端面図、図3(B)は図3(A)における脚軸に垂直な断面図、図3(C)は作動角をとった状態を示す縦断面図である。
【図4】図3における支持リングの拡大断面図である。
【図5】図1および図2におけるローラ機構の部分拡大断面図である。
【図6】ローラ機構の他の形態を示す部分拡大断面図である。
【図7】図1のトリポード型等速自在継手の傾き抑制手段を示す部分断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るトリポード型等速自在継手の傾き抑制手段を示す部分断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るトリポード型等速自在継手の傾き抑制手段を示す部分断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係るトリポード型等速自在継手の傾き抑制手段を示す部分断面図である。
【図11】継手に荷重が負荷されていない時の状態を示す部分断面図である。
【図12】内向き分力の発生について説明する部分断面図である。
【符号の説明】
10 外側継手部材
12 トラック溝
14 ローラ案内面
20 トリポード部材
22 脚軸
22a 外周面
32 支持リング
32c 内周面
34 ローラ
34a 外周面
36 ニードルローラ
p アンギュラコンタクト点
q アンギュラコンタクト点
α0 接触角
α1 接触角
S 接触部
L1 支持リングの内周面の曲率中心を通る中心線
L2 ローラの外周面の曲率中心を通る中心線
L3 接触部Sを通る直線

Claims (9)

  1. 内周部に軸方向の3本のトラック溝が形成され、各トラック溝の両側にそれぞれ軸方向のローラ案内面を有する外側継手部材と、半径方向に突出した3本の脚軸を有するトリポード部材と、前記トリポード部材の各脚軸にそれぞれ装着されたローラ機構とを備え、前記ローラ機構は、前記ローラ案内面に沿って外側継手部材の軸線と平行な方向に案内されるローラと、前記ローラを回転可能に支持する支持リングとを含み、前記脚軸に対して傾動自在である等速自在継手において、
    前記脚軸と前記ローラ機構との接触部に加わる負荷荷重の内向き分力に起因して、前記ローラ機構が継手の軸線と直交する断面内で傾くのを抑制する傾き抑制手段が設けられ、
    前記傾き抑制手段として、前記ローラの外周面と前記ローラ案内面とを2点でアンギュラコンタクトさせると共に、脚軸基端側のアンギュラコンタクト点の接触角を、脚軸先端側のアンギュラコンタクト点の接触角よりも大きくしたことを特徴とする等速自在継手。
  2. 前記傾き抑制手段として、前記ローラの外周面を、その軸線と平行で前記接触部を通る直線の近傍に曲率中心を有する円弧状凸断面とした請求項記載の等速自在継手。
  3. 内周部に軸方向の3本のトラック溝が形成され、各トラック溝の両側にそれぞれ軸方向のローラ案内面を有する外側継手部材と、半径方向に突出した3本の脚軸を有するトリポード部材と、前記トリポード部材の各脚軸にそれぞれ装着されたローラ機構とを備え、前記ローラ機構は、前記ローラ案内面に沿って外側継手部材の軸線と平行な方向に案内されるローラと、前記ローラを回転可能に支持する支持リングとを含み、前記脚軸に対して傾動自在である等速自在継手において、
    前記脚軸と前記ローラ機構との接触部に加わる負荷荷重の内向き分力に起因して、前記ローラ機構が継手の軸線と直交する断面内で傾くのを抑制する傾き抑制手段が設けられ、
    前記支持リングの内周面は円弧状凸断面であり、前記脚軸の外周面は縦断面においてはストレート形状で、横断面においては継手の軸線と直交する方向で前記支持リングの内周面と接触し、かつ、継手の軸線方向で前記支持リングの内周面との間にすきまを形成するようになっていることを特徴とする等速自在継手。
  4. 前記傾き抑制手段として、前記ローラの外周面と前記ローラ案内面とを2点でアンギュラコンタクトさせると共に、脚軸基端側のアンギュラコンタクト点の接触角を、脚軸先端側のアンギュラコンタクト点の接触角よりも大きくした請求項記載の等速自在継手。
  5. 前記傾き抑制手段として、前記ローラの外周面を、その軸線と平行で前記接触部を通る直線の近傍に曲率中心を有する円弧状凸断面とした請求項3又は4記載の等速自在継手。
  6. 前記脚軸の横断面が、継手の軸線と直交する長軸をもった略楕円形である請求項記載の等速自在継手。
  7. 前記傾き抑制手段として、前記ローラ機構を構成する部品間の隙間に起因して前記支持リングが前記ローラに対して脚軸基端側に相対移動した時に、前記ローラの外周面の曲率中心を通る中心線と前記支持リングの内周面の曲率中心を通る中心線とが一致するようした請求項3から6の何れかに記載の等速自在継手。
  8. 前記傾き抑制手段として、前記脚軸の外周面を縦断面において脚軸基端側に開いた傾斜状にした請求項3から7の何れかに記載の等速自在継手。
  9. 前記ローラと前記支持リングとの間に複数の転動体が転動自在に介装されている請求項1からの何れかに記載の等速自在継手。
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