JP3874637B2 - ガラス素子の成形方法および成形装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス素子の成形方法及び成形装置に係わるもので、特に加熱チャンバーを形成する石英ガラス管の長寿命化に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガラスレンズなどの高精度が要求されるガラス素子の製造方法としては、研削・研磨により製造されるものと、リヒートプレスにより製造されるものの二種類に大別される。
【0003】
一般に光学ガラス素子の製造方法としてガラス素材を研削・研磨して光学面を形成する方法が多く用いられる。しかし、研削・研磨による曲面形成には十数工程が必要であるうえに、作業者に有害なガラス研削粉が多量に発生する問題点、さらに、研削・研磨では、付加価値の高い非球面形状の光学面を持つガラスレンズを同じ精度で大量に製作することが困難であるという問題点を持っている。
【0004】
それに対してリヒートプレスは、溶融したガラスを一度冷却して製作したガラス素材を加熱し、プレスすることにより型の形状をガラス素材に転写させ、ガラスレンズなどのガラス素子を成形する方法であり、曲面形成に必要な工程はプレス形成の一工程のみであるという利点がある。また、型を一度製作すれば、型の精度に準じた成形品がいくつも製作することも可能である。この場合、型の周りの雰囲気を不活性雰囲気もしくは真空雰囲気として型の長寿命化を図るようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、光通信分野や医療分野で、ガラス素子は非常に注目されている。中でも、熱膨張が少ない、不純物が少ない、紫外線透過率が良い等の理由から、石英ガラス素子が注目されている。そのためガラス素子は、マイクロレンズアレイ等形状の複雑なもの、また、大きさも超小型のものから大型のものまで各種必要となっている。
【0006】
上述したように、リヒートプレスでは、型の間にガラス素材を置き、型の酸化を防止する目的で型およびガラス素材を含む成形室内を不活性ガス雰囲気にしたうえで、高周波加熱装置や赤外線ランプ等により加熱し、ガラス素材を型によりプレスした後、成形品を冷却して取り出す方法が取られるが、石英ガラスのように成形温度が約1400度と高いガラス素材では、ガラス素材を加熱させる際に、成形室を構成する石英ガラス管の温度まで上昇し、石英ガラス管の結晶化が起きるために、石英ガラス管の寿命が短いという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、ガラス素子をリヒートプレスにより成形する際に、成形室を構成する石英ガラス管の温度の上昇を防ぎ、石英ガラス管の寿命を長くする、ガラス素子成形方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために本発明は以下の構成を備える。
【0010】
(1) 成形室を構成する石英ガラス管内に一対の型間にガラス素材を配置し、これら一対の型及びガラス素材を加熱してガラス素材をプレス成形する工程と、成形後に徐冷する工程と、加熱・成形時及び徐冷時のみに、不活性ガスを前記一対の型を通すことなく加熱チャンバーの石英ガラス管の内壁に沿って流す工程とを備えたガラス素子の成形方法。
【0012】
(2) 成形室を構成する石英ガラス管内に配置され、ガラス素材をプレス成形するための一対の型と、これら一対の型及びガラス素材を加熱する加熱源と、不活性ガスを前記一対の型を通すことなく石英ガラス管の内壁に沿って流す不活性ガス供給路と、加熱・成形時及び徐冷時のみに不活性ガスがこの経路に沿って流れるように制御する制御手段を備えたガラス素子の成形装置。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、成形室をO−リング等で大気から遮断したうえで、一対の型間にガラス素材を配置し、これらを加熱してプレス成形するガラス素子の成形方法において、一連の加熱・冷却工程、特に、型およびガラス素材の加熱・成形時および徐冷時に成形室を構成する石英ガラス管の内壁に沿って不活性ガスを流して石英ガラス管を冷却し、このことにより、成形室を構成する石英ガラス管の結晶化(クリストバライト)を防止し、白濁化を防ぎ、石英ガラス管の寿命を飛躍的に延ばす方法である。さらに型がある程度冷えてからは型を直接冷却することが可能なため、型の均熱性が悪化せず、冷却時間を短縮することもできる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明の実施例を、図面を参照し説明する。
【0015】
図1はガラス素子34の成形装置の1例を示す。この成形装置は、フレーム1の上部から固定軸2が下方に向かって伸びており、その下端にセラミック製の断熱筒3を介して上型組み立て4が図示しないボルト等により取り付けられている。上型組み立て4は、金属製又はセラミック・カーボン製のダイプレート5、セラミックや超硬合金などで作られた上型6、ならびにこの上型6をダイプレート5に取り付けると共に型の一部を形成する固定ダイ7からなっている。
【0016】
フレーム1の下部にはサーボモータ8aを駆動源とし、サーボモータ8aの回転運動を直線運動推力に変換するスクリュージャッキ等の駆動装置8が設けられ、駆動装置8には荷重検出装置8bを介して移動軸9が取り付けられている。移動軸9は制御装置29に入力したプログラムにより、速度、位置およびトルク制御可能に上下動し、固定軸2と対向して上方に向かって伸びている。移動軸9の上端には断熱筒3と同様の断熱筒10が取り付けられている。下型組み立て11は、ダイプレート12、下型13および移動ダイ14からなっている。
【0017】
固定軸2には図示しない駆動装置によって上下動させるブラケット15が移動可能に結合されている。ブラケット15には対をなす型組み立て4、11の周囲を囲むフランジ付透明石英ガラス管16が取り付けられている。ブラケット15には石英ガラス管16と外筒18が取り付けられ、外筒18にはランプユニット19が取り付けられている。ランプユニット19は、赤外線ランプ20とその後方に配置された反射ミラー21、さらに反射ミラー21を冷却するための図示しない水冷パイプから構成されており、型組み立て4、11を加熱するようになっている。
【0018】
石英ガラス管16の上端はブラケット15に、はめ込まれたO−リングに気密当接している。また、フランジ付透明石英管16の下端は、移動軸9が貫通している中間プレート1aのO−リングに気密当接し、型組み立て4、11の周囲に大気から遮断される成形室17を形成するようになっている。
【0019】
固定軸2、移動軸9、中間プレート1aには、成形室17内を不活性ガス雰囲気にしたり、型組み立て4、11を冷却するための不活性ガス供給路及び石英ガラス管の内壁を冷却するための不活性ガス供給路が設けられ、これらはライン切換バルブ37(図2,3参照)により切換可能となっている。
【0020】
型組み立て4、11を冷却するための不活性ガス供給路は、図2に示すように、固定軸2側に、型組み立て4内に不活性ガスを流すための経路22a,22b,35,26を形成し、移動軸9側に、型組み立て11内に不活性ガスを流すための経路23a,23b,36,26を形成している。
【0021】
石英ガラス管の内壁を冷却するための不活性ガス供給路は、図3に示すように、24,25,26を形成し、型組み立て4、11内を通すことなく、石英ガラス管の内壁を冷却するようになっている。これら不活性ガス供給路には、不活性ガスを図示しない流量コントロール計を介して所定流量供給されるようになっている。成形室17へ供給された不活性ガスは、ガス排出路26から排気される。なお、28は下型組み立て11の温度検出用熱電対、29は温度検出用熱電対からの信号を受けて赤外線ランプ20、駆動装置8、及びライン切換バルブ37を制御する制御装置部、27は真空排気口、30は真空バルブ、31はガス排気バルブ、32は真空排気装置、33は真空計である。
【0022】
この実施例では、ガラス素材34を型組み立て4、11とともに所定温度まで加熱し、プレス成形し、その後、徐冷し、急冷する。その際、制御装置部29で加熱・成形時及び徐冷時を検出し、切換バルブ37を切り替えて、不活性ガスが図3に示す経路(型組み立て内を通らないで石英ガラス管内壁を通る経路)を通るようにし、急冷時には、切換バルブ37を切り替えて、不活性ガスが図2に示す経路(型組み立て内を通る経路)を通るようにした。若しくは、いずれの場合も不活性ガスが図3に示す経路(型組み立て内を通らないで石英ガラス管内壁を通る経路)を通るようにした。
【0023】
次に、本発明の実験例を説明する。
【0024】
従来のガラス素子成形方法と本発明によるガラス素子成形方法との比較を、図1に示す装置で成形することにより行った。
【0025】
ガラス素材である石英ガラス(ES:日本石英ガラス)を、金型温度200℃から加熱し、加熱温度1400℃、プレス時間120secで成形し、650℃まで徐冷し、200℃まで急冷した場合、図4に示すような温度線図を描くが、それに準じた温度線図を描くように加熱テストを行った。
【0026】
方法としては、図2に示すように、加熱時間A・プレス時間B・徐冷時間C・急冷時間Dともに、型組み立て内を通る経路のみを使用した場合(パターン1:従来例)と、加熱時間A・プレス時間B・徐冷時間Cには、図3に示すように、型組み立て内を通らないで石英ガラス管内壁を通る経路を用い、急冷時間Dのみ図2に示すように、型組み立て内を通るガス供給路を使用した場合(パターン2:実施例1)とでそれぞれ200回ずつテストを行った。
その結果、パターン1の場合、石英ガラス管に明確な白濁が観察され、分析の結果、クリストバライトが発生していることが確認された。
それに比べ、パターン2の場合は、石英ガラス管には変化は見られなかった。
【0027】
また、パターン1、パターン2・および、加熱時間A・プレス時間B・徐冷時間C・急冷時間D全ての時間に於いて、図3に示すように、石英ガラス管に沿って不活性ガスを流した場合(パターン3:参考例)の時間を比較した。下記に結果を記す。
【0028】
【表1】
【0029】
この結果、パターン1の場合が最もテスト時間が早く、パターン3の場合が最も遅かった。さらにパターン3の場合は、200℃冷却後の上下型の温度差が30℃と大きく、次回の成形では上下の型の温度調節に支障をきたすことも確認された。
【0030】
パターン2の場合、パターン1と比べると3分遅いが、石英ガラス管の寿命が長くなることから、トータルコストとしては安くなることが分かる。
【0031】
さらに、流量コントロールを行うことにより、冷却中の金型温度差も解消されるため、1400℃で成形時に、金型温度差をなくすことができる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明のガラス素子の成形方法によれば、石英ガラスなどの高融点ガラスを成形する場合でも、石英ガラス管の結晶化を防止することが出来、石英ガラス管の寿命を長くすることができるため、ガラス素子の製作コストの削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による光学素子の成形装置の実施例を示す概略断面図である。
【図2】ガラス成形方法の1例を示す図である。
【図3】ガラス成形方法の1例を示す図である。
【図4】ガラス成形の時間を示す図である。
【符号の説明】
1 フレーム
1a 中間プレート
2 固定軸
3 断熱筒
4 上型組み立て
5 ダイプレート
6 上型
7 固定ダイ
8 駆動装置
8a サーボモータ
8b 荷重検出器
9 移動軸
10 断熱筒
11 下型組み立て
12 ダイプレート
13 下型
14 移動ダイ
15 ブラケット
16 石英ガラス管
17 成形室
18 外筒
19 ランプユニット
20 赤外線ランプ
21 反射ミラー
22a,22b,23a,23b,36 型組み立て内を通る経路
24,25,26 型組み立て内を通らないで石英ガラス管内壁を通る経路
26 ガス排出路
27 真空排気口
28 温度検出用熱電対
29 制御装置部
30 真空バルブ
31 ガス排気バルブ
32 真空排気装置
33 真空計
34 ガラス素材
35 上型ガス流路
36 下型ガス流路
37 ライン切替バルブ
Claims (2)
- 成形室を構成する石英ガラス管内に一対の型間にガラス素材を配置し、これら一対の型及びガラス素材を加熱してガラス素材をプレス成形する工程と、成形後に徐冷する工程と、加熱・成形時及び徐冷時のみに、不活性ガスを前記一対の型を通すことなく加熱チャンバーの石英ガラス管の内壁に沿って流す工程とを備えたガラス素子の成形方法。
- 成形室を構成する石英ガラス管内に配置され、ガラス素材をプレス成形するための一対の型と、これら一対の型及びガラス素材を加熱する加熱源と、不活性ガスを前記一対の型を通すことなく石英ガラス管の内壁に沿って流す不活性ガス供給路と、加熱・成形時及び徐冷時のみに不活性ガスがこの経路に沿って流れるように制御する制御手段を備えたガラス素子の成形装置。
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