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JP3871603B2 - 光ファイバケーブル、及びプラグ付き光ファイバケーブル - Google Patents

光ファイバケーブル、及びプラグ付き光ファイバケーブル Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバケーブル、及びプラグ付き光ファイバケーブルに係り、特に、自動車内通信分野に用いて好適な光ファイバケーブルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック光ファイバ(以下、単に「光ファイバ」と称す。)は、端面加工や取り扱いが容易であり、安価で軽量、大口径が得られる等の利点を有し、FA、OA、LAN等の短・中距離通信用等に利用されている。
また、近年、短・中距離通信用途の中でも、特に自動車内通信分野では、カーナビゲーションシステムの普及、ITC/ETCシステム導入等の構想を背景とした通信情報量の増加への対応、ハーネスケーブルの軽量化、安価な通信システムの構築等に対する要求が高まってきており、光ファイバの自動車内通信分野への展開が行われつつある。
【0003】
光ファイバは一般に、その外周が被覆層により被覆された光ファイバケーブルの形態で用いられるが、自動車内通信用として用いる場合には、その使用環境から、以下の3つの性能が要求される。なお、本明細書では、光ファイバケーブルを構成する光ファイバのことを「光ファイバ素線」と称す。
1)低曲げ損失性
自動車内通信用として用いる場合、光ファイバケーブルはワイヤーハーネス類と共に束ねられ、高温多湿の狭い空間内に屈曲した状態で敷設される。そのため、光ファイバケーブルには、屈曲されても光量ロスの少ない低曲げ損失性が要求される。
【0004】
2)耐熱性、難燃性等の化学的安定性
自動車内通信用として用いる場合、光ファイバケーブルは、エンジン等の高温体の近傍や夏季の高温化した車内など、高温雰囲気下で使用されることが多い。また、自動車内には、オイル、電解液、ガソリン等の引火性物質も存在する。そのため、被覆層には、耐熱性、耐熱寸法安定性、耐薬品性、難燃性等の化学的安定性が要求される。
【0005】
3)光ファイバ素線と被覆層との密着性、低ピストニング性
光ファイバケーブルでは、光ファイバ素線と被覆層との密着性が高いことが重要である。
すなわち、光ファイバ素線と被覆層との密着性が高ければ、光ファイバ素線を振動などから保護することができる。また、光ファイバケーブルの末端にプラグ等を固定する場合、光ファイバ素線と被覆層との密着性が高ければ、被覆層上からプラグ等を締め付けて固定すれば良いので、端末処理を簡略化できる。また、被覆層上からプラグ等を固定できることは、光ファイバ素線保護の観点からも好ましい。なお、密着性の指標としては引き抜き強度が挙げられる。
また、光ファイバケーブルが、高温多湿の厳しい環境で使用される場合、光ファイバ素線の熱膨張・収縮等に起因して、光ファイバ素線と被覆層とにずれが生じ、光ファイバ素線の突き出しや引っ込み(いわゆる「ピストニング」)が生じる場合がある。ピストニングが生じると、光源又は受光素子と光ファイバケーブル端面との距離が変化して光損失が大きくなり、光ファイバケーブルから出射される光量が変動してシステムに障害が生じる恐れがある。そのため、光ファイバケーブルには、低ピストニング性が要求される。
【0006】
ところで、開口数(NA)が高く高温環境でも安定な光ファイバケーブルとして、例えば特開2000−266970号公報には、芯材がポリメタクリル酸メチル(PMMA)系樹脂からなり、鞘材がフッ化ビニリデン単位40〜62モル%とテトラフルオロエチレン単位28〜40モル%とヘキサフルオロプロピレン単位8〜22モル%との3元共重合体からなり、鞘材のASTM D2240に基づくショアD硬度が38〜45である光ファイバ素線の外周に、ナイロン12からなる被覆層を備えた光ファイバケーブルが開示されている。
【0007】
また、被覆層にポリアミド系樹脂を用いることにより、光ファイバケーブルに耐熱性、耐薬品性、耐熱寸法安定性等を付与する技術は、上記の他、特開平7−77642号公報、特開平10−319281号公報、特開平11−242142号公報等にも提案されている。また、現在市販されている自動車用光ファイバケーブルにおいても、被覆層としてナイロン11やナイロン12等のポリアミド系樹脂が使用されている。
【0008】
また、光ファイバ素線と被覆層との密着性を高めピストニングを抑えることが可能な光ファイバケーブルとして、国際公開WO01/40841には、光ファイバ素線の外周に、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、グルタル酸無水物等の有機酸無水物を含有するポリアミド系樹脂からなる一次被覆層を備え、さらにその外周に二次被覆層を備えた光ファイバケーブルが開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開2000−266970号公報、特開平7−77642号公報等に開示されているように、被覆層をポリアミド系樹脂により構成した場合、耐熱性、耐薬品性、耐熱寸法安定性等を付与することはできるが、光ファイバ素線と被覆層との密着性を向上させることは困難であった。なお、特開2000−266970号公報には、引き抜き強度が7kg以上の光ファイバケーブルが開示されているが、実際には、市販されている一般のポリアミド系樹脂からなる被覆層を単に設けただけでは、このような引き抜き強度の高い光ファイバケーブルを実現することは極めて難しい。
【0010】
また、国際公開WO01/40841に開示されているように、被覆層を有機酸無水物を含有するポリアミド系樹脂により構成した場合、光ファイバ素線と被覆層との密着性をある程度向上させることができるものの、有機酸無水物は人体に対して刺激性を有するため、取り扱い性が低下するという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、曲げ損失が小さいと共に、光ファイバ素線と被覆層との密着性や取り扱い性に優れ、自動車内用等として好適に用いられる光ファイバケーブル、及び該光ファイバケーブルを用いたプラグ付光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の光ファイバケーブルは、芯材及びその外周に形成された単層又は複層構造の鞘材からなる光ファイバ素線が、少なくとも1層の被覆層からなる被覆材により被覆された光ファイバケーブルにおいて、
前記鞘材と前記被覆材との間には、これらの密着性を向上させるための密着層が設けられていると共に、
前記鞘材の最外層が、フッ化ビニリデン単位を有する共重合体を主成分とし、前記密着層が、ポリアミド系樹脂20〜70質量%と、フッ化ビニリデン単位を有する共重合体30〜80質量%とを含有する樹脂組成物からなり、
前記被覆材の一次被覆層が、ポリアミド系樹脂を主成分とすることを特徴とする。
なお、本明細書において、「主成分」は、含有率が60質量%以上、より好ましくは70質量%以上の成分であると定義する。また、被覆材を構成する被覆層のうち、最内層からn番目の層を「n次被覆層」と定義する。
【0013】
本発明の光ファイバケーブルにおいて、前記芯材が、メタクリル酸メチルの単独重合体、又はメタクリル酸メチルと少なくとも1種のビニル系単量体との共重合体を主成分とすることが好ましい。
また、前記鞘材の最外層を構成するフッ化ビニリデン単位を有する共重合体が、フッ化ビニリデン単位20〜50質量%とテトラフルオロエチレン単位25〜60質量%とヘキサフルオロプロピレン単位5〜35質量%との三元共重合体であると共に、アッべ屈折率計を用いて23℃で測定した屈折率が1.350〜1.385であり、ASTM D2240に基づく23℃におけるショアD硬度が59以下であることが好ましい。
【0014】
また、前記密着層を構成する樹脂組成物のフッ素原子の含有率が59質量%以下であると共に、ASTM D1238に基づき、荷重を5kgとして測定した230℃におけるメルトフローインデックスが50〜200であることが好ましい。
また、前記密着層を構成するフッ化ビニリデン単位を有する共重合体が、フッ化ビニリデン単位20〜50質量%とテトラフルオロエチレン単位25〜60質量%とヘキサフルオロプロピレン単位5〜35質量%との三元共重合体、若しくは、フッ化ビニリデン単位60〜85質量%とテトラフルオロエチレン単位15〜40質量%との二元共重合体であることが好ましい。また、前記密着層を構成するポリアミド系樹脂が、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン6-12のうち、少なくとも1種を主成分とすることが好ましい。
【0015】
また、前記一次被覆層が、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン6-12のうち、少なくとも1種を主成分とすることが好ましい。また、前記被覆材が、ポリアミド系樹脂を主成分とする二次被覆層を有することが好ましい。さらに、前記一次被覆層と前記二次被覆層との間の引き抜き強度が10〜30Nであることが好ましい。
【0016】
以上の本発明の光ファイバケーブルによれば、前記光ファイバ素線と前記密着層との間、及び前記密着層と前記一次被覆層との間の初期の引き抜き強度を25N以上とすることができると共に、温度85℃、相対湿度85%の条件で500時間放置した後の引き抜き強度の低下を5N未満とすることができる。
なお、本明細書における「引き抜き強度」の測定方法は、「実施例」の項において詳述する。
【0017】
また、本発明のプラグ付き光ファイバケーブルは、以上の本発明の光ファイバケーブルの少なくとも一端に、プラグが固定されたことを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
[光ファイバケーブル]
本発明の光ファイバケーブルは、光ファイバ素線と、光ファイバ素線を被覆する少なくとも1層の被覆層からなる被覆材とを備えると共に、これら光ファイバ素線と被覆材との間に密着層が形成されたものである。
【0019】
(光ファイバ素線)
本発明の光ファイバケーブルを構成する光ファイバ素線は、芯材とその外周に形成された鞘材とからなる。
芯材としては、公知の材料が使用可能であるが、メタクリル酸メチルの単独重合体(ポリメタクリル酸メチル(PMMA))、又はメタクリル酸メチルと少なくとも1種のビニル系単量体との共重合体を主成分として構成することが好ましい。中でも、透光性・耐久性に優れると共に安価なことから、PMMAを主成分として構成することがより好ましい。
【0020】
鞘材は、単層構造であっても複層構造であっても良いが、少なくとも密着層と接する最外層については、フッ化ビニリデン単位を有する共重合体を主成分として構成する。
また、フッ化ビニリデン単位を有する共重合体の中でも、フッ化ビニリデン単位とテトラフルオロエチレン単位とヘキサフルオロプロピレン単位との三元共重合体が特に好適である。かかる3元共重合体は、透明性、耐熱性、耐薬品性に優れるため、鞘材として適していると共に、これを最外層に使用することにより、取り込み可能な光量を増加させることができる。また、耐屈曲性に優れるため、曲げ損失の少ない光ファイバ素線を提供できる。
【0021】
また、この3元共重合体は、フッ化ビニリデン単位20〜50質量%とテトラフルオロエチレン単位25〜60質量%とヘキサフルオロプロピレン単位5〜35質量%からなることが好ましく、フッ化ビニリデン単位30〜50質量%とテトラフルオロエチレン単位45〜60質量%とヘキサフルオロプロピレン単位7〜23質量%からなることが、より好ましい。
この組成範囲にある3元共重合体は結晶性が低く、しかも屈折率が充分低いために、光ファイバケーブルの耐熱性を損なうことなく、光ファイバケーブルの曲げ損失光量を小さく抑えることができる。
【0022】
また、3元共重合体のASTM D2240に基づく23℃におけるショアD硬度が59以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。
かかるショアD硬度を有し、柔軟性を有する3元共重合体により鞘材の最外層を構成し、鞘材と一次被覆層との間に、詳細については後述するフッ化ビニリデン単位を有する共重合体とポリアミド系樹脂とを含有する密着層を形成すると、鞘材の最外層と一次被覆層との間に強い密着性が発現し、光ファイバケーブルのピストニングを著しく抑制することができる。
すなわち、3元共重合体が上述のようなショアD硬度を有し適度な柔軟性を備えていると、一次被覆層から光ファイバ素線を引き抜こうとする力が光ファイバ素線の軸方向に加わった際に、光ファイバ素線と密着層との界面に応力が生じるが、鞘材の最外層を構成するフッ化ビニリデン系樹脂と密着層を構成するフッ化ビニリデン系樹脂との親和性と相まって、光ファイバ素線と一次被覆層との間の引き抜き強度を高めることができる。
また、ショアD硬度が30未満の3元共重合体は、熱変形温度が低下する傾向にある。そのため、自動車内などの高温条件下で使用される光ファイバケーブルでは、ショアD硬度が30以上の3元共重合体を用いることがより好ましい。
【0023】
また、鞘材の最外層を構成する3元共重合体としては、アッベ屈折率計を用いて23℃で測定した屈折率が、1.350〜1.385のものを用いることが好ましい。かかる屈折率の3元共重合体を鞘材の最外層に用いると、光ファイバ素線の曲げ損失をより一層低減することができる。
【0024】
なお、鞘材が複層構造からなる場合、最外層以外の層については特に限定されるものではなく、適宜設計することが可能である。具体的には、最外層と同一材料により構成しても良いし、公知のフルオロアルキルメタクリレート系樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂とメタクリレート系樹脂の混合物等により構成しても良い。但し、第1層(鞘材を複層構造とする場合の鞘材の最内層)としては、比較的透明性に優れると共に、芯材や鞘材の第2層(第1層に隣接する層)に対する密着性に優れたものを用いることが好ましい。
【0025】
(密着層)
光ファイバ素線と被覆材との間に形成する密着層は、ポリアミド系樹脂20〜70質量%と、フッ化ビニリデン単位を有する共重合体30〜80質量%とを含有する樹脂組成物、好ましくは、ポリアミド系樹脂45〜65質量%と、フッ化ビニリデン単位を有する共重合体35〜55質量%とを含有する樹脂組成物により構成する。
かかる樹脂組成物は、鞘材の最外層を構成するフッ化ビニリデン単位を有する共重合体と、詳細については後述する一次被覆層を構成するポリアミド系樹脂の双方に対して、相溶性又は親和性を有するため、鞘材と被覆材との間に上述の密着層を形成することにより、鞘材の最外層と一次被覆層との密着性を著しく向上させることができ、ピストニングを著しく抑制することができる。
【0026】
密着層を構成するフッ化ビニリデン単位を有する共重合体は、鞘材の最外層を構成する上記のフッ化ビニリデン系共重合体と相溶性又は親和性を有することが必要である。かかるフッ化ビニリデン単位を有する共重合体としては、フッ化ビニリデン単位20〜50質量%とテトラフルオロエチレン単位25〜60質量%とヘキサフルオロプロピレン単位5〜35質量%との三元共重合体、若しくは、フッ化ビニリデン単位60〜85質量%とテトラフルオロエチレン単位15〜40質量%とからなる二元共重合体が好適である。
【0027】
密着層を構成するポリアミド系樹脂としては、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6-12等の単独重合体や、これらの組合せからなるナイロン共重合体、柔軟なセグメントを導入したナイロン系エラストマーを主成分とするものが好適である。
これらの中でも、ナイロン11及びナイロン12は、低温衝撃性、耐屈曲性、耐摩耗性に優れ、引っ張り破断伸び、曲げ弾性が低く、線膨張係数、ガス透過性が小さいという優れた特性を有し、柔軟で耐疲労性に優れるため、高温環境下でのピストニングを抑制することができ、特に好適である。
【0028】
なお、密着層を構成するフッ化ビニリデン単位を有する共重合体とポリアミド系樹脂とは相溶性が低いため、両者をニ軸押出機で溶融混錬する際や、両者を混合して得られる樹脂組成物を、光ファイバ素線に押出被覆する際には、流動性や押出の際の吐出安定性が低下する傾向がある。そこで、流動性や成形性を改善するために、低分子量又は高流動性のフッ化ビニリデン系樹脂又はフッ化ビニリデン系エラストマーを適宜配合することが好ましい。具体的には、デュポン・ダウ・エラストマー・ジャパン社製「Free Flow 10(商標)」、Solvey社製「SOLEF−1006(商標)」、アトフィナ・ジャパン社製「KYNAR−9300(商標)」、旭硝子社製「セフラルソフト G150(商標)」等を適宜配合することが好ましい。ここで、高流動性とは、ASTM D1238に基づき、荷重を5kgとして測定した230℃におけるメルトフローインデックスが50以上、より好ましくは100以上であることを意味する。また、密着層を構成する樹脂組成物において、低分子量のフッ化ビニリデン系樹脂の添加量は2〜30質量%とすることが好ましく、5〜20質量%とすることがより好ましい。この範囲で低分子量のフッ化ビニリデン系樹脂を添加することにより、流動性や成形性が良好なフッ化ビニリデン単位を有する共重合体とポリアミド系樹脂との混合物が得られる。添加量が2質量%未満では、流動性や成形性の改善効果が不十分となるおそれがあり、添加量が30質量%超では、密着層を構成する樹脂組成物の溶融粘度が低くなりすぎて、密着層の厚み斑が生じる恐れがある。
【0029】
また、密着層を構成する樹脂組成物の、ASTM D1238に基づき、荷重を5kgとして測定した230℃におけるメルトフローインデックスが50〜200であることが好ましい。メルトフローインデックスが50未満では、密着層を均一な厚みで形成できない恐れがある。また、メルトフローインデックスが200超では、密着層を構成する樹脂組成物の溶融粘度が、一次被覆層の樹脂より低くなりすぎ、密着層の厚みに斑が生じる恐れがあるため好ましくない。
また、密着層を構成する樹脂組成物のフッ素原子の含有率が59質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。フッ素原子の含有率が59質量%超では、一次被覆層との密着性が不十分になる恐れがあるため好ましくない。
【0030】
また、密着層の厚みは5〜300μmであることが好ましく、50〜200μmであることがより好ましい。密着層の厚みが5μm未満では、光ファイバ素線と一次被覆層の間の引き抜き強度を十分に維持できない恐れがある。また、密着層の厚みが300μm超では、それ以上の引き抜き強度向上の効果が得られないばかりか、プラグの引き抜き強度が低下する傾向があるため好ましくない。
【0031】
(被覆材)
光ファイバ素線の外周には、少なくとも1層の被覆層からなる被覆材が形成され、これによって、光ファイバ素線は保護される。なお、各被覆層は単層構造であっても複層構造であっても良い。
本発明において、被覆材の最内層である一次被覆層は、ポリアミド系樹脂を主成分として構成する。ポリアミド系樹脂は、融点が比較的低いため、光ファイバ素線の伝送性能を熱劣化させない低い温度で一次被覆層を形成でき加工性に優れていることに加えて、耐熱性、耐薬品性等にも優れているため、被覆層材料として好ましい。また、被覆層材料としてポリアミド系樹脂を用いると、得られる光ファイバケーブルは耐屈曲性に優れたものとなると共に、寸法安定性(熱収縮性)に優れた被覆層を形成できるため、ピストニングを抑制することができる。
【0032】
ポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6-12などの単独重合体や、これらの組合せからなる共重合体、柔軟なセグメントを導入したナイロン系エラストマーなどが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、必要に応じて、他の重合体や化合物を含有するものであっても良い。
【0033】
中でも特に、ナイロン11及びナイロン12は、成形性が良好で、光ファイバ素線に熱的・機械的ダメージを与えにくいだけではなく、上述した3元共重合体を主成分とする鞘材の最外層との密着性が非常に優れるため、好適である。また、ナイロン11及びナイロン12は、寸法安定性にも優れるため、鞘材との密着性と寸法安定性との相乗効果により、ピストニングを効果的に抑制することができる。さらに、ナイロン11及びナイロン12は、低温衝撃性、耐屈曲性、耐摩耗性に優れ、引っ張り破断伸び、曲げ弾性が低く、線膨張係数、ガス透過性が小さいという優れた特性を有するため、柔軟で耐疲労性に優れると共に、高温環境下でのピストニングを抑制でき、伝送特性の劣化が少ない光ファイバケーブルを提供できる。
【0034】
なお、ナイロン11は、ナイロン12に比較して弾性率が高いため、光ファイバケーブルに適度な弾性力が要求される場合にはナイロン11を用いることが好ましく、適度な柔らかさが要求される場合はナイロン12を用いることが好ましい。
また、ナイロン11は、ナイロン12に比較して耐屈曲性や耐摩耗性に優れるため、ナイロン11を用いることにより、光ファイバケーブルが変形した場合でも、光ファイバ素線に加わる応力などの力学的緩衝作用をより抑制することができると共に、高温環境下での光ファイバ素線の収縮をより抑制することができる。また、ナイロン11はナイロン12に比較して単位質量あたりのアミド結合数の量が多いため、このアミド結合と鞘材の最外層の極性基との間により強い相互作用を生じさせることが可能となり、光ファイバ素線と一次被覆層との密着性をより向上させ、ピストニングをより一層抑制することが可能となる。
【0035】
なお、被覆材には、ポリアミド系樹脂の他、必要に応じて、他の重合体や、難燃剤、着色剤、光ファイバ素線への外光の入射を防止するためのカーボンブラック等の黒色無機成分等の添加剤や化合物を添加しても良い。
例えば、難燃性を付与するために、公知の各種金属水酸化物、燐化合物、トリアジン系化合物等の難燃剤を添加しても良い。これらの中でも、ポリアミド系樹脂の難燃性向上効果が大きいトリアジン系化合物が好ましく、特にシアヌル酸メラミンが好ましい。
【0036】
また、一次被覆層の厚みは20〜1000μmであることが好ましく、50〜600μmであることがより好ましい。一次被覆層の厚みが20μm未満では、光ファイバ素線の保護機能が低下し、光ファイバ素線が高温下で機械的作用を受けた場合に鞘材が変形して光学特性が劣化する恐れがあると共に、耐熱性、耐薬品性等が不十分となる恐れもある。また、一次被覆層の厚みが1000μm超では、一次被覆層の材料コストが高くなると共に、光ファイバケーブルの曲げ弾性率が高くなり取り扱い性が低下する恐れがある。
【0037】
本発明の光ファイバケーブルによれば、光ファイバ素線と密着層との間、及び密着層と一次被覆層との間の初期の引き抜き強度(光ファイバ素線と一次被覆層との間の初期の引き抜き強度)を25N以上とすることができ、35N以上とすることも可能である。
このように、光ファイバ素線と一次被覆層との間の初期の引き抜き強度が25N以上であれば、光ファイバ素線と一次被覆層との密着性が十分強く、ピストニングを抑制できる。また、光ファイバケーブルの一端にプラグを固定し、プラグを介して他の機器等と接続した後振動などの機械的作用を受けた場合、光ファイバ素線と一次被覆層との密着性が不十分であれば、光ファイバ素線に過剰な力が作用して、光ファイバ素線が破断する場合もあるが、密着性が優れていれば、かかる恐れもない。
【0038】
また、温度85℃、相対湿度85%の条件で500時間放置した後の、光ファイバ素線と密着層との間、及び密着層と一次被覆層との間の引き抜き強度(光ファイバ素線と一次被覆層との間の引き抜き強度)の低下も5N未満に抑えることができる。
光ファイバ素線と一次被覆層との間の引き抜き強度の低下が5N未満であると、高温環境下における光ファイバケーブルのピストニングに起因する特性劣化がほとんどなく、高い信頼性が得られる。
【0039】
なお、一次被覆層が複層構造からなる場合、一次被覆層の各層間の引き抜き強度はいずれも50N以上であることが好ましく、60N以上であることがより好ましい。一次被覆層の各層間の引き抜き強度が50N未満では、一次被覆層の層間の密着性が不十分なことに起因して、ピストニングが発生する場合がある。
【0040】
また、耐久性、耐環境特性などをさらに向上させるために、被覆材において、一次被覆層の外周に熱可塑性樹脂からなる二次被覆層を形成する構成としても良い。
二次被覆層の材料としては、光ファイバケーブルの使用環境に応じて適宜選択することができるが、特に自動車内配線用などでは、二次被覆層として、耐油性、耐熱性等に優れた材料を用いることが好ましい。具体的には、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6-12等の単独重合体や、これらの組合せからなるナイロン共重合体、柔軟なセグメントを導入したナイロン系エラストマーを主成分とするポリアミド系樹脂が好ましい。また、これらの中でも、成形性が良好で、光ファイバケーブルに熱的及び機械的ダメージを与えにくいことから、ナイロン系エラストマー、又はナイロン系エラストマーと他のポリアミド系樹脂との混合物が好ましい。
【0041】
また、二次被覆層は、光ファイバケーブルの接続作業時などに必要に応じて剥離可能に構成することが好ましい。具体的には、一次被覆層と二次被覆層との間の引き抜き強度は10〜30Nであることが好ましく、15〜25Nであることがより好ましい。一次被覆層と二次被覆層との間の引き抜き強度が10N未満では、二次被覆層から一次被覆層と共に光ファイバ素線が簡単に抜けてしまうなど、取り扱い性が低下する恐れがある。また、一次被覆層と二次被覆層との間の引き抜き強度が30N超ではストリッピング性が悪くなり、光ファイバケーブルの接続作業時などにおいて二次被覆層を剥離する際に、一次被覆層が伸びてしまい、取り扱い性が低下する恐れがある。
なお、一次被覆層と二次被覆層との間の引き抜き強度は、一次被覆層の最外層と二次被覆層の最内層に用いる材料の組合せや、被覆方法等により調整可能である。また、二次被覆層が複層構造である場合、各層間の引き抜き強度は適宜設定できる。
【0042】
また、被覆材の最外層には着色剤等を添加しても良く、かかる構成とすることにより、光ファイバケーブルの識別性、意匠性を容易に高めることができる。着色剤としては公知のものを使用できるが、染料系の着色剤は高温下などで光ファイバ素線に移行して伝送損失を増大させる恐れがあるため、無機顔料を用いることが好ましい。
【0043】
本発明の光ファイバケーブルは、公知の方法により製造できる。例えば、クロスヘッド型被覆装置を用いた押出被覆により、光ファイバ素線の外周に、密着層、被覆材の各層を順次積層する方法や、光ファイバ素線の材料に、密着層、被覆材の各層の材料を積層して、複合紡糸する方法などが挙げられる。
これらの中でも、光ファイバ素線と一次被覆層との間や、一次被覆層と二次被覆層との間の引き抜き強度を、所望の値に簡易に制御することができることから、クロスヘッド型被覆装置を用いて、光ファイバ素線の外周に、密着層、被覆材の各層を順次積層する方法が好ましい。
【0044】
本発明の光ファイバケーブルは、鞘材の少なくとも最外層を、フッ化ビニリデン単位を有する共重合体を主成分して構成し、一次被覆層をポリアミド系樹脂により構成したものであるので、耐屈曲性に優れ、曲げ損失の少ないものとなる。また、本発明の光ファイバケーブルは、鞘材の最外層を、フッ化ビニリデン単位を有する共重合体を主成分として構成し、被覆材の一次被覆層を、ポリアミド系樹脂を主成分として構成すると共に、鞘材と被覆材との間に、ポリアミド系樹脂20〜70質量%と、フッ化ビニリデン単位を有する共重合体30〜80質量%とを含有する樹脂組成物からなる密着層を形成する構成としたので、光ファイバ素線と被覆層との密着性に著しく優れ、ピストニングを著しく抑制できるものとなる。
また、酸無水物を含有するポリアミド系樹脂などの特殊な被覆層を形成することがなく、光ファイバ素線と被覆層との間の高い密着性を実現できるので、人体に刺激を与える恐れもなく、取り扱い性にも優れたものとなる。
さらに、被覆材の最外層をポリアミド系樹脂等により構成すれば、耐熱性、難燃性、耐薬品性等の化学的安定性に優れた光ファイバケーブルを提供することができる。
したがって、本発明によれば、曲げ損失が小さいと共に、光ファイバ素線と被覆層との密着性や取り扱い性に優れ、耐熱性、難燃性、耐薬品性等の化学的安定性に優れ、自動車内など、狭く、高温多湿の厳しい環境下で使用した場合であっても優れた特性を示すと共に、狭い空間への敷設も容易な光ファイバケーブルを提供することができる。
【0045】
(プラグ付き光ファイバケーブル)
以上の本発明の光ファイバケーブルの少なくとも一端に、プラグを接続、固定することにより、本発明のプラグ付き光ファイバケーブルを提供することができる。光ファイバケーブルにプラグを接続、固定し、プラグ付き光ファイバケーブルとすることにより、信号源である光源や検知器に組み込まれたユニットのハウジング、他の光ファイバケーブル等と容易に接続することができる。
【0046】
プラグの形態については特に限定されるものではなく、光ファイバケーブルを挿入する挿入孔が形成されたプラグ本体と、光ファイバケーブルをこのプラグ本体に固定するためのストッパを備えたものなどが使用できる。また、光ファイバケーブルにプラグを固定する箇所についても限定されるものではないが、例えば、光ファイバケーブルのプラグを接続する側の端部の一次被覆層上が好適である。なお、二次被覆層を備えた光ファイバケーブルで、一次被覆層にプラグを固定する場合には、端部の二次被覆層を剥離して一次被覆層を露出させ、この露出した部分の一次被覆層にプラグを取り付ければ良い。
【0047】
本発明のプラグ付き光ファイバケーブルによれば、本発明の光ファイバケーブルと同等の効果が得られる。特に、本発明の光ファイバケーブルはピストニング性を著しく抑制できるものであるので、本発明のプラグ付き光ファイバケーブルは、高温環境下で他の機器などと接続して使用した場合にも、高い性能を安定に維持できるものとなる。
【0048】
【実施例】
次に、本発明に係る実施例及び比較例について説明する。なお、各実施例、比較例において、ショアD硬度は、ASTM D2240に準拠し、高分子計器(株)ASKER CL−150を用いて23℃で測定した。
【0049】
(実施例1)
以下のようにして芯材が単層構造、鞘材が2層構造の光ファイバ素線を得た。すなわち、芯材としてPMMA、鞘材の第1層(最内層)材料として、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(3FM)/2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート(17FM)/メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体(各成分の質量比51/31/17/1)、鞘材の第2層材料として、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(各成分の質量比48.0/42.7/9.3、ショアD硬度42、屈折率1.374)を用い、これらを溶融して、225℃の紡糸ヘッドに供給し、同心円状複合ノズルを用いて複合紡糸した後、150℃の熱風加熱炉中で繊維軸方向に2倍に延伸し、鞘材の第1層の厚み10μm、鞘材の第2層の厚み10μmの外径1mmの光ファイバ素線を得た。
次いで、得られた光ファイバ素線を60℃で48時間熱処理した。
次に、220℃に設定したクロスヘッドダイにて、密着層材料として、ナイロン11(アトフィナ社製「Rilsan BMF−0」)55質量%とフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体(各成分の質量比72.0/28.0、ダイキン工業製「VP−100」)45質量%との混合物、一次被覆層材料として、ナイロン11(アトフィナ社製「Rilsan BMF−0」)を用い、これらをクロスヘッドケーブル被覆装置にて、上記光ファイバ素線に一括被覆して、100μmの厚みの密着層と150μmの厚みの単層構造の一次被覆層を形成し、外径1.5mmの光ファイバケーブルを得た。
さらに、この光ファイバケーブルの外周に、メラミンシアヌレートを含有するナイロン6-12(ダイセル・デグサ社製「ダイアミド N1901」)を、クロスヘッドケーブル被覆装置を用いて被覆し、350μmの厚みの単層構造の二次被覆層を形成した。以上のようにして、2層構造の被覆材を有する外径2.2mmの光ファイバケーブルを得た。
また、得られた光ファイバケーブル端部の二次被覆層を剥離して、一次被覆層上からプラグをカシメ固定して、プラグ付き光ファイバケーブルを得た。
【0050】
(実施例2)
鞘材の第2層材料を、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体(各成分の質量比72.0/28.0)に変更した以外は、実施例1と同様にして、2層構造の被覆材を有する外径2.2mmの光ファイバケーブル、及びプラグ付き光ファイバケーブルを得た。
【0051】
(比較例1)
密着層材料を、ナイロン11(アトフィナ社製「Rilsan BMF−0」)100質量部に無水マレイン酸1質量部を配合した樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にして、2層構造の被覆材を有する外径2.2mmの光ファイバケーブル、及びプラグ付き光ファイバケーブルを得た。
【0052】
(実施例3〜8、比較例2、3)
光ファイバケーブルの光ファイバ素線、密着層、被覆材の各層の材料を変更したした以外は実施例1と同様にして、光ファイバケーブル、及びプラグ付き光ファイバケーブルを得た。
【0053】
各実施例、比較例において作製した光ファイバケーブルの光ファイバ素線、密着層、被覆材の各層の組成を表1に示す。また、鞘材の第2層材料(鞘材の最外層材料)についてはショアD硬度についても合わせて示す。
なお、表1における各略号は以下の化合物を示す。
VdF:フッ化ビニリデン
TFE:テトラフルオロエチレン
HFP:ヘキサフルオロプロピレン
PA11:ナイロン11(アトフィナ社製「Rilsan BMF0」)
PA612:ナイロン6-12(ダイセル・デグサ社製「ダイアミド-N1901」)
PMMA:ポリメタクリル酸メチル(三菱レイヨン社製)
VdF-TFE:フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体(各成分の質量比72/28、ダイキン工業製「VP−100」)
VdF-TFE−HFP(THV220G):フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(各成分の重量比20/60/20/、ダイニオン社製「THV220G(商標)」)
VdF-TFE−HFP(KYNAR9301):フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(アトフィナ社製「KYNAR9301(商標)」)
FreeFlow10:デュポン・ダウ・エラストマージャパン社製「FreeFlow10(商標)」)
フッ素化メタクリレート共重合体:2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート/2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート/メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体(各成分の質量比51/31/17/1)
セフラルソフト:旭硝子社製「セフラルソフト G150F100(商標)」
【0054】
(評価項目及び評価方法)
各実施例、比較例において得られた光ファイバケーブル及びプラグ付き光ファイバケーブルについて以下の評価を行った。
<伝送損失>
光ファイバケーブルの伝送損失(dB/km)を25m−5mカットバック法により測定した。なお、650nmの波長の光を用い、入射光のNA(開口数)を0.1とした。また、初期の伝送損失の他、光ファイバケーブルを温度85℃、相対湿度(RH)95%のオーブンに1000時間放置した後の伝送損失についても測定した。
【0055】
<曲げ損失>
光ファイバケーブルの長さを11mとし、その一端から光を入射させた状態で、1mおきに計10箇所、曲げ半径10mmで90度づつ屈曲させ、他端から出射される光量を測定した。同様に、直線状に配置した場合の出射光量についても測定し、その差を曲げ損失として求めた。
【0056】
<引き抜き強度>
光ファイバケーブルの引き抜き強度を、図1に示す、光ファイバケーブル10を保持する治具12と、治具12の一端部に形成された突起14を把持するチャック8と、光ファイバケーブル10の剥離部分5を把持するチャック7とを備えた測定装置20を用いて測定した。治具12には、光ファイバケーブル10の被覆部分4が収容される保持室13と、光ファイバケーブル10の剥離部分5よりも大きく被覆部分4よりも狭い貫通孔15が形成されている。
測定にあたっては、一端側の被覆層を剥離した長さ100cmの光ファイバケーブル10を用意し、光ファイバケーブル10の被覆部分4の長さが30mmになるように切断した。なお、光ファイバ素線と一次被覆層との間の引き抜き強度を測定する場合は一次被覆層及び二次被覆層を剥離し、一次被覆層と二次被覆層との間の引き抜き強度を測定する場合は、二次被覆層のみを剥離した。
次に、治具12に形成されている保持室13内に光ファイバケーブル10の被覆部分4を収容し、光ファイバケーブル10の剥離部分5を貫通孔15から抜き出した。次に、治具12の一端部に形成されている突起14をチャック8で把持し、光ファイバケーブル10の剥離部分5をチャック7で把持した。
次に、光ファイバケーブル10の中心軸方向(図中矢印方向)に沿って、一定速度50mm/minでチャック8を移動させて治具12を引っ張り、光ファイバケーブル10の被覆部分4において剥離部分5よりも厚い部分を引き抜いた。このときの引き抜き応力と、光ファイバケーブル10の被覆部分4において剥離部分5よりも厚い部分の引き抜き方向へのずれ量との関係を示す曲線から、引き抜く際の応力のピーク値を読みとり測定値とした。
また、引き抜き強度の耐熱安定性を見るため、光ファイバ素線と一次被覆層との間の引き抜き強度については、85℃、相対湿度85%のオーブンに500時間放置した後についても、同様に測定した。
また、プラグ付き光ファイバケーブルのプラグの引き抜き強度を同様に測定した。
【0057】
(結果)
各実施例、比較例において得られた結果を表2に示す。なお、表2において、「一次引き抜き強度」、「二次引き抜き強度」は、各々、光ファイバ素線と一次被覆層との間の引き抜き強度、一次被覆層と二次被覆層との間の引き抜き強度を示す。
【0058】
鞘材の最外層(鞘材の第2層)をフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体により構成し、一次被覆層をナイロン11により構成し、密着層をナイロン11 30〜65質量%とフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、またはフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体35〜70質量%とを含有する樹脂組成物により構成した実施例1〜8において得られた光ファイバケーブルの初期の伝送損失は133〜137dB/kmと良好であり、温度85℃、相対湿度95%で1000時間放置した後の伝送損失も154〜158dB/kmと良好であった。また、曲げ損失も小さく良好であった。また、光ファイバ素線と一次被覆層との間の初期の引き抜き強度は30〜43Nと良好であり、一次被覆層と二次被覆層との間の初期の引き抜き強度も20〜22Nと良好であった。また、温度85℃、相対湿度85%で500時間放置しても、引き抜き強度はほとんど変化しなかった。また、プラグ付き光ファイバケーブルのプラグの初期の引き抜き強度も47〜53Nと良好であった。
このように、実施例1〜8では、伝送損失や曲げ損失が小さいと共に、光ファイバ素線と被覆層との密着性に優れ、自動車内用等として好適な光ファイバケーブルが得られた。
【0059】
これに対して、密着層を、ナイロン11に無水マレイン酸を添加した樹脂組成物により構成した比較例1では、温度85℃、相対湿度85%で500時間放置した後に、光ファイバ素線と一次被覆層との間の引き抜き強度が著しく低下した。
また、密着層を、ナイロン11とフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体とを含有する樹脂組成物により構成しても、その配合比を質量比で20〜70:30〜80の範囲外とした比較例2、3では、光ファイバ素線と一次被覆層との間の初期の引き抜き強度が23〜24Nと不十分であった。
【0060】
【表1】
Figure 0003871603
【0061】
【表2】
Figure 0003871603
【0062】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、曲げ損失が小さいと共に、光ファイバ素線と被覆層との密着性や取り扱い性に優れ、自動車内用等として好適に用いられる光ファイバケーブル、及び光ファイバケーブルを用いたプラグ付光ファイバケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明に係る実施例及び比較例における引き抜き強度の測定方法を説明する断面図である。
【符号の説明】
10 光ファイバケーブル
20 測定装置

Claims (5)

  1. 芯材及びその外周に形成された単層又は複層構造の鞘材からなる光ファイバ素線が、少なくとも1層の被覆層からなる被覆材により被覆された光ファイバケーブルにおいて、
    前記鞘材と前記被覆材との間には、これらの密着性を向上させるための密着層が設けられていると共に、
    前記鞘材の最外層が、フッ化ビニリデン単位を有する共重合体を主成分とし、 前記密着層が、ポリアミド系樹脂20〜70質量%と、フッ化ビニリデン単位を有する共重合体30〜80質量%とを含有する樹脂組成物からなり、
    前記被覆材の一次被覆層が、ポリアミド系樹脂を主成分とすることを特徴とする光ファイバケーブル。
  2. 前記鞘材の最外層を構成するフッ化ビニリデン単位を有する共重合体が、フッ化ビニリデン単位20〜50質量%とテトラフルオロエチレン単位25〜60質量%とヘキサフルオロプロピレン単位5〜35質量%との三元共重合体であると共に、アッべ屈折率計を用いて23℃で測定した屈折率が1.350〜1.385であり、ASTM D2240に基づく23℃におけるショアD硬度が59以下であることを特徴とする請求項に記載の光ファイバケーブル。
  3. 前記光ファイバ素線と前記密着層との間、及び前記密着層と前記一次被覆層との間の初期の引き抜き強度が25N以上であると共に、温度85℃、相対湿度85%の条件で500時間放置した後の引き抜き強度の低下が5N未満であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光ファイバケーブル。
  4. 前記被覆材が、ポリアミド系樹脂を主成分とする二次被覆層を有することを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の光ファイバケーブル。
  5. 請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の光ファイバケーブルの少なくとも一端に、プラグが固定されたことを特徴とするプラグ付き光ファイバケーブル。
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