JP3870534B2 - 直描型水なし平版印刷版原版及び直描型水なし平版印刷版の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、湿し水を用いずに印刷が可能な水なし平版印刷版原版に関するものであり、特にレーザー光で直接製版できるポジ型の直描型水なし平版印刷版原版に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
製版用フィルムを使用しないで、原稿から直接オフセット印刷版を作製する、いわゆるダイレクト製版は、熟練度を必要としない簡易性、短時間で印刷版が得られる迅速性、多様なシステムから品質とコストに応じて選択可能である合理性などの特徴を生かして、軽印刷業界のみでなく、一般オフセット印刷、グラビア印刷の分野にも進出し始めている。
【0003】
特に最近では、プリプレスシステムやイメージセッター、レーザープリンタなどの出力システムの急激な進歩によって新しいタイプの各種平版印刷材料が開発されている。
【0004】
これらの平版印刷版を製版方法から分類すると、レーザー光を照射する方法、サーマルヘッドで書き込む方法、ピン電極で電圧を部分的に印加する方法、インクジェットでインキ反撥層またはインキ着肉層を形成する方法などが挙げられる。
【0005】
なかでも、レーザー光を用いる方法は解像度、および製版速度の面で他の方式よりも優れており、その種類も多い。
【0006】
このレーザー光を用いる平版印刷版はさらに、光反応によるフォトンモードのものと、光熱変換を行って熱反応を起こさせるヒートモードの2つのタイプに分けられる。
【0007】
フォトンモードタイプとしては、
(1)フォトポリマーを用いた高感度PS版
(2)有機光導電体や酸化亜鉛を用いた電子写真式平版
(3)銀塩方式平版
(4)銀塩複合方式平版
(5)直描マスター等があり、
ヒートモードタイプとしては、
(6)熱破壊方式平版
などが挙げられる。
【0008】
しかしながら、(1)の方式はレーザー光源に主としてアルゴンイオンレーザーを使用しているため装置が大型となり、また印刷版も高感度のフォトポリマーを使用しているため、印刷版の取扱いに注意が必要で、なおかつ保存安定性も低下しやすいといった欠点がある。
【0009】
(2)の電子写真式平版は、明室で取り扱えるといった利点はあるが、感光層の帯電後2〜5分の間で暗減衰が大きくなるため、帯電後短時間で露光現像処理をする必要があり、大判サイズを高解像力で出力するのは難しい。
【0010】
(3)の銀塩方式平版は、さまざま波長のレーザーに対応した印刷版が開発されているが、銀廃液が出ることが問題となっており、また感度が高いために、取扱いに注意を要するといった問題もある。
【0011】
(4)の銀塩複合方式平版は、感光層上に高感度ハロゲン化銀乳剤層を設けて上層のハロゲン化銀乳剤層をアルゴンイオンレーザーで露光、現像後それをマスクとしてさらに紫外線で露光、現像を行うものである。しかし、この印刷版は露光、現像工程が2回あるため、印刷版の処理が複雑になるという問題がある。
【0012】
(5)の直描マスターは、直接印刷版にレーザーで書き込むわけではないが、レーザープリンタで形成されたトナー画像をインキ着肉部として、印刷版上に転写するものである。しかし、印刷版の解像度という面では、他の方式と比較して劣っている。
【0013】
以上のフォトンモードタイプに対して、(6)の熱破壊方式は、明室で取り扱えるといった利点があり、また光源となる半導体レーザーの急激な進歩によって、最近その有用性が見直されてきている。
【0014】
例えば、特開平6−199064号公報、USP5339737号公報、USP5353705号公報、EP0580393号公報、特開平6−55723号公報、EP0573091号公報、USP5378580号公報、特開平7−164773号公報、特開平6−186750号公報、特開平7−309001号公報、特開平9−146264号公報、特開平9−146265号公報、特開平9−236927号公報、特開平9−244228号公報にはレーザー光を光源として用いる直描型水なし平版印刷版原版およびその製版方法などが記載されている。
【0015】
この熱破壊方式の印刷版原版の感熱層は、レーザー光吸収化合物として主としてカーボンブラックを用い、熱分解化合物としてニトロセルロースを使用している。そしてこのカーボンブラックがレーザー光を吸収することによって熱エネルギーに変換され、さらにその熱で感熱層が破壊される。そして最終的に、現像によってこの部分を除去することによって、表面のシリコーンゴム層が同時に剥離され、インキ着肉部となる。
【0016】
しかしながらこの印刷版は、感熱層を破壊して画像を形成することから画線部のセルの深さが深くなり、微少網点でのインキ着肉性が悪く、インキマイレージが悪いという問題点があった。更に、感熱層を熱破壊させ易くするために、架橋構造を形成しており印刷版の耐刷性が劣るという問題もあった。感熱層を柔軟化させると感度が極端に低下し、感熱層の柔軟化は困難であった。
【0017】
更にこの印刷版は感度が低く、感熱層を破壊させるために高いレーザー光の強度が必要という問題点もあった。
【0018】
特開平9−146264号公報では、光熱変換層中にレーザー光を熱に変換する化合物、フィルム形成能を有する高分子化合物、光重合開始剤、および光重合可能なエチレン性不飽和化合物を有し、シリコーンゴム層形成後にエネルギー線による全面露光を施すことにより光熱変換層と、シリコーンゴム層とを反応させたネガ型のレーザー感光性湿し水不要平版印刷版原版が提案されている。
【0019】
この版材では、シリコーンゴム層塗布後に全面露光を施すことにより、例えば小林らの文献(例えば、“印刷学会論文集,18,128(1979)”や“Journal of Applied Photographic Engineering,vol.6,pp.65−68”など)に示されている公知の機構によりシリコーンゴム層と感光層との接着力を向上させ、その結果として、画像再現性、耐傷性に優れた版材を得ている。しかしながら、前述のように、感光層の柔軟性と感度のトレードオフ的な関係は存在しており、特に感度が低いという問題を有していた。
【0020】
特開平9−239942号公報では、レーザー感応層中に酸を発生する物質と、酸の作用で分解する高分子化合物を含有する剥離現像タイプの印刷版が提案されているが、レーザー光照射の工程と加熱工程という二つの工程が必要になり、また微細な網点の再現性が悪いという剥離現像固有の問題が存在する。
【0021】
また、特に特開平6−55723号公報、EP0573091号公報、USP5378580号公報では、光源としてNd−YAGレーザーを用いているために、露光装置がかなり大がかりなものとなってしまうといった、別の問題点もあった。
【0022】
その他、USP5379698号公報、特開平7−314934号公報、特開平9−236927号公報には、金属薄膜を感熱層として用いる直描型水なし平版印刷版が記載されている。
【0023】
この印刷版材は、感熱層がかなり薄いために、非常にシャープな画像が得られ、印刷版の解像度という面では有利であるが、基材と感熱層の接着性が悪く印刷中に非画線部の感熱層が剥離し、インキが付着し印刷物上で欠点となるという問題点があった。また、この印刷版も感熱層を破壊させて画像を形成させることから画線部のセルが深くなりインキ着肉性やインキマイレージが劣るという問題点があった。
【0024】
以上のようなレーザー光を用いた平版印刷版の他に、特に直描型水なし平版印刷版に関するものとして、熱接着型の直描型水なし平版印刷版が考えられる。
【0025】
このタイプの版材は、レーザー光照射部のシリコーンゴム層が選択的に残存し、非画線部として働くものである。その機構としては、レーザー光照射によりシリコーンゴム層とレーザー感応層との接着力、あるいはレーザー感応層とその下にある基板との接着力が何らかの形で向上し、その結果として、未照射部のシリコーンゴム層、あるいはシリコーンゴム層とレーザー感応層がその後の処理により選択的に除去されるというものである。
【0026】
このようなタイプの版材としては、例えば特開平9−68794号公報、特開平9−80745号公報、特開平9−120157号公報、特開平9−197659号公報などが提案されている。
【0027】
特開平9−120157号公報で提案されている版材は、レーザー光照射により発生した酸を触媒として感光層の反応を進め、画像を再現するというものである。しかしながら、酸発生後、反応を進めるためには、熱処理という工程が必要であった。さらに、酸発生後から熱処理までの時間が画像再現性に影響を与えるため、画像再現性が不安定となるという問題を有していた。
【0028】
特開平9−80745号公報、特開平9−197659号公報で提案されている版材も、感光層中に活性光線の照射で酸を発生しうる化合物および酸の存在下で反応し得る結合を有する化合物が含まれており、レーザー光照射後、発生した酸を用いて反応を進めるタイプであるため、上記と同様の問題を有していた。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる従来技術の欠点に鑑み鋭意検討を行った結果、感熱層中に光熱変換物質とブロックドイソシアネートおよび特定の構造を有するアミン化合物を含有させることによって、レーザー光照射後の煩雑な工程を必要とせずともポジ型の直描型水なし平版印刷版を得る技術を見出した。
【0030】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
【0031】
(1)基板上に、少なくとも感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に積層してなる直描型水なし平版印刷版原版において、該感熱層が少なくとも(a)光熱変換物質、(b)ブロックドイソシアネート、(c)ポリアミドアミンを含むことを特徴とする直描型水なし平版印刷版原版。
【0032】
(2)請求項1記載の直描型水なし平版印刷版原版に、レーザー光照射後、現像処理によりレーザー光未照射部のシリコーンゴム層を除去することを特徴とする直描型水なし平版印刷版の製造方法。
【0033】
(3)現像後のレーザー光未照射部の感熱層が50%以上残存していることを特徴とする請求項2記載の直描型水なし平版印刷版の製造方法。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳しく説明する。
【0035】
本発明の直描型水なし平版印刷版原版に使用する基板について説明する。
【0036】
基板としては、寸法的に安定な板状物であれば公知の金属、フィルム等のいずれも使用することができる。この様な寸法的に安定な板状物としては、従来印刷版の基板として使用されたもの等が好ましく挙げられる。かかる基板としては、紙、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)がラミネ−トされた紙、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅などの金属の板、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカ−ボネ−ト、ポリビニルアセタ−ルなどのプラスチックのフィルム、上記の如き金属がラミネ−トもしくは蒸着された紙もしくはプラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0037】
これらのうち、アルミニウム板は寸法的に著しく安定であり、しかも安価であるので特に好ましい。また、軽印刷用の基板として用いられているポリエチレンテレフタレ−トフィルムも好ましく使用される。
【0038】
これら基板と感熱層の接着性を強固にするために、エッチング処理、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理を行うことは好ましく行われる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのプラスチックフィルムを基板に用いた場合は基板自体が断熱層の役割を果たすため、このような表面処理で接着性を高めることは特に好ましく行われる。
【0039】
また、基板が金属などのように熱伝導が比較的高い物質を使用する場合には、接着性改良と断熱効果の目的で、基板と感熱層の間に断熱層を設けることが好ましい。このような断熱層により、感熱層が熱反応を起こす際の熱が基板へ拡散するのを防止することができる。
【0040】
断熱層を設ける場合、本発明においては、次の条件を満たすことが必要である。すなわち、基板と感熱層とをよく接着し、経時において安定であること、さらに現像液、印刷時に使用する溶剤に対する耐溶剤性が高いことである。
【0041】
このような条件を満たすものとして、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノ−ル樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、尿素樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、カゼイン、ゼラチン等を含むものが挙げられる。これらの樹脂は単独であるいは二種以上混合して用いることができる。また、これらの樹脂と類似の組成物を硬化したものを使用してもよい。
【0042】
これらの中では、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂等を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることが好ましい。
【0043】
また、この断熱層中に顔料、染料等の添加剤を含有させて検版性を向上させることが好ましい。
【0044】
断熱層の厚さは被覆層にして0.5〜50g/m2 が基板表面の形態欠陥を防止し化学的悪影響を遮断する効果や経済性の点から好ましく、より好ましくは1〜10g/m2である。
【0045】
次に感熱層について説明する。
【0046】
本発明において感熱層は、少なくとも(a)光熱変換物質と(b)ブロックドイソシアネート、および(c)ポリアミドアミンを含有することが必要である。
【0047】
まず、(a)光熱変換物質について説明する。
【0048】
光熱変換物質としてはレーザー光を吸収するものであれば特に限定されない。この時、レーザー光の波長としては、紫外域、可視域、赤外域のどの領域の波長であってもよく、使用するレーザー光の波長に合わせた吸収域を有する光熱変換物質を適宜選択して使用するとよい。
【0049】
例えばカーボンブラック、アニリンブラック、シアニンブラックなどの黒色顔料、フタロシアニン、ナフタロシアニン系の緑色顔料、カーボングラファイト、ジアミン系金属錯体、ジチオール系金属錯体、フェノールチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、結晶水含有無機化合物、硫酸銅、珪酸塩化合物や、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化タングステンなどの金属酸化物、これらの金属の水酸化物、硫酸塩、さらにビスマス、鉄、マグネシウム、アルミの金属粉などの添加剤を添加することが好ましい。
【0050】
また、鉄、ストロンチウム、マンガン、ゲルマニウム、銀、コバルト、ニッケル、インジウム、クロムなどの硫化物も本発明に用いることが出来る。
【0051】
これらのなかでも、光熱変換率、経済性および取り扱い性の面から、カーボンブラックが好ましい。
【0052】
また上記の物質以外に、赤外線または近赤外線を吸収する染料も、光熱変換物質として好ましく使用される。
【0053】
これら染料としては400nm〜1200nmの範囲に極大吸収波長を有する染料が使用できるが、好ましい染料としては、シアニン系、フタロシアニン系、フタロシアニン金属錯体系、ナフタロシアニン系、ナフタロシアニン金属錯体系、ジチオール金属錯体系、ナフトキノン系、アントラキノン系、インドフェノール系、インドアニリン系、ピリリウム系、チオピリリウム系、スクワリリウム系、クロコニウム系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フェノチアジン系、フェノキサジン系、フルオラン系、チオフルオラン系、キサンテン系、インドリルフタリド系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、ロイコオーラミン系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系、フルオレノン系、モノアゾ系、ケトンイミン系、ジズアゾ系、ポリメチン系、オキサジン系、ニグロシン系、ビスアゾ系、ビスアゾスチルベン系、ビスアゾオキサジアゾール系、ビスアゾフルオレノン系、ビスアゾヒドロキシペリノン系、アゾクロム錯塩系、トリスアゾトリフェニルアミン系、チオインジゴ系、ペリレン系、ニトロソ系、1:2型金属錯塩系、分子間型CT系、キノリン系、キノフタロン系、フルキド系や、トリフェニルメタン系ロイコ色素、アゾ系などが挙げられる。
【0054】
これらのなかでも、シアニン系色素、アズレニウム系色素、スクアリリウム系色素、クロコニウム系色素、アゾ系分散色素、ビスアゾスチルベン系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、ペリレン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン金属錯体系色素、ポリメチン系色素、ジチオールニッケル錯体系色素、インドアニリン金属錯体色素、分子間型CT色素、ベンゾチオピラン系スピロピラン、ニグロシン染料などが好ましく使用される。
【0055】
また、特公平2670621号に記載されているようなジチオトロポロネート系非対称型金属錯体も本発明に好ましく用いることが出来る。
【0056】
これらの光熱変換物質は単独でも感度の向上効果はあるが、2種以上を併用して用いることによって、さらに感度を向上させることも可能である。
【0057】
吸収波長域の異なる2種以上の光熱変換物質を含有するすることにより、2種以上のレーザー光源に対応可能な版材を得ることも可能である。
【0058】
これらの光熱変換物質の含有量は、全感熱層組成物に対して0.1〜40重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜25重量%である。0.1重量%よりも少ない場合にはレーザー光に対する感度の向上効果が見られず、40重量%よりも多い場合には印刷版の耐刷性が低下しやすい。
【0059】
(b)のブロックドイソシアネートとは、イソシアネート基含有化合物と活性水素化合物(ブロック剤)の反応生成物であり、かつ常温においては安定であるが加熱によりブロック剤を解離し、もとの活性なイソシアネート基を再生する化合物のことをいう。
【0060】
イソシアネート化合物の具体例としては、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−または2,6−トルイレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素化キシリレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート(MXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDIあるいはHMDI)、リジンジイソシアネート(LDI)(別名4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート))、水素化TDI(HTDI)(別名メチルシクロヘキサン2,4(2,6)ジイソシアネート)、水素化XDI(H6XDI)(別名1,3−(イソシアナートメチル)シクロヘキサン)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジフェニルエーテルイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等やポリイソシアネート類の多価アルコールアダクト体、あるいはポリイソシアネート類の重合体が挙げられる。
【0061】
また、ブロック剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチルブタノール、トリメチロールプロパンなどのアルコール類や、フェノール、キシレノールなどのフェノール類、メチルエチルケトオキシムなどのオキシム類、ε−カプロラクタムなどのラクタム類、アミン類、カルボジイミド類、アセト酢酸エチルなどの活性メチレン化合物類などが挙げられる。
【0062】
ブロックドイソシアネートの解離温度はイソシアネートの種類、ブロック剤の種類などによって変わるが、本発明においては120℃以上のものが好ましい。
【0063】
120℃以下であると、感熱層やシリコーンゴム層の塗布、乾燥時にブロック剤が解離し、レーザー光照射による画像形成が起こり得ない可能性が生じるため、特に原版の製造条件上好ましくないためである。
【0064】
次に、(c)ポリアミドアミンについて説明する。
【0065】
本発明でいうポリアミドアミンは主としてダイマー酸とポリアミンの縮合により得られる下記一般式(I)又は(II)で表される化合物である。
【0066】
HOOC−R−COOH + H2N−R’−NH2
→ H2N−R’−NH(−OC−R−CONH−R’−NH−)nH (I)
HO(OC−R−CONH−R’−NH−)nH (II)
(ここでRおよびR’はそれぞれ炭素数1〜50の炭化水素基であり、水酸基、不飽和基、アミノ基、メルカプト基等の官能基を有していてもよい。nは1〜50の整数である。)
原料のダイマー酸は、乾性油、半乾性油などから得られるC18の精製植物性不飽和脂肪酸の熱重合により得られ、種々の分子量、置換基およびその位置を有する化合物群のことをさすが、その主成分は炭素数34、36の飽和あるいは不飽和ジカルボン酸である。
【0067】
その製造方法故に、ダイマー酸中には、一般に少量のトリマー酸やモノマー酸が含有されている。
【0068】
ダイマー酸は長い脂肪族炭化水素鎖を持ち、他の2,3塩基酸にない特徴を示すため、それから得られるポリアミドアミンは可とう性に富むなどの特性を示す。
【0069】
また、原料の酸成分としては、生成物の物性を制御するという観点から、酢酸、イソフタール酸、マロン酸、ジグリコール酸、ジフェノニック酸、3,9−ビス(2−カルボキシアルキル)2,4,8,10−テトラオキサスピロウンデカン、アジピン酸、セバシン酸などを共重合成分に用いることも好ましく行われる。
【0070】
原料のポリアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、プロピレンジアミン、イソフォロンジアミン、1,4−ビスアミノエチルベンゼン、4,4−ジアミノジフェニルメタンなどが使用される。
【0071】
また、上記ポリアミンと共に、エタノールアミン、メトキシプロピルアミンなどを共重合させることによって、生成物の物性を制御することも好ましく行われる。
【0072】
このようなポリアミドアミンの具体例で市販されているものとしては、例えば“バーサミド”“DSX”“ゼナミド”“バーサロン”“バーサミン”“マクロメルト”“DPX”“ミルベックス”などが挙げられる。
【0073】
ポリアミドアミンが活性アミノ基を有する場合には、感熱層中にエポキシ樹脂などを添加することも好ましく行われる。
【0074】
ブロックドイソシアネートとの反応性などとの観点から、ポリアミドアミンのアミン化は150〜500であることが好ましい。アミン化が小さすぎるとイソシアネートとの反応による架橋構造の形成、ひいてはシリコーンゴム層/感熱層間の接着力の発現が充分でなく、一方、アミン化が大きすぎると上層のシリコーンゴム層の硬化に悪影響を及ぼすためである。
【0075】
また、ポリアミドアミンは感熱層とシリコーンゴム層との接着性という観点から、水酸基あるいは不飽和基を有することが好ましい。
【0076】
さらに、レーザー光照射により、必要に応じて光熱変換物質の作用も加わって、アミノ基などを生成するようなポリアミドアミンも本発明に含まれる。
【0077】
本発明においては、感熱層にレーザー光が照射されると、光熱変換物質の作用で熱が発生し、その熱によりブロックドイソシアネートが解離する。解離により活性化したイソシアネート化合物は感熱層中に存在する(c)のポリアミドアミンと反応することにより感熱層中に架橋構造が形成される。この結果、シリコーンゴム層と感熱層の接着力が増し、その後の現像処理により、レーザー光照射部のシリコーンゴム層が選択的に残存したポジ型の水なし平版が得られる。
【0078】
画線部の形成はレーザー光未照射部のシリコーンゴム層、あるいはシリコーンゴム層と感熱層の除去により行われるが、感熱層は塗布量に対して50%以上残存することが好ましい。感熱層が50%以上残存することで、インキマイレージが向上したり、あるいは染色、発色などによる検版性の向上が計れるためである。
【0079】
本発明の感熱層においては、上記イソシアネート化合物と(c)のポリアミドアミンの反応をより速やかに進行させるため、触媒を添加しておくことが好ましい。
【0080】
このような触媒としては、アミン系、DBU系、金属系のものが挙げられる。
【0081】
アミン系の具体例としては、テトラメチルブタンジアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルフォリン、N−エチルモルフォリン、トリエチルアミンなど、DBU系としては、1,8−ジアザ−ビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどが挙げられる。
【0082】
金属系としては、K、Na、Pb、Sn、Ni、Zn、Ca、Ba、Co、Cu、Fe、Mn等の金属元素の酢酸金属塩、金属塩化物、硫酸金属などに分類されるが、具体的にはオクトエ酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ナフテン酸コバルト、塩化第一錫、テトラ−n−ブチル錫、塩化第二錫、トリメチル錫ヒドロキシド、ジメチル2塩化錫、1,3−ジアセトキシテトラブチルスタノキサンなどが挙げられる。
【0083】
本発明において、感熱層はさらにバインダーポリマーを含有することが好ましい。この際、バインダーポリマーとしては、有機溶剤に可溶でかつフィルム形成能のあるものであれば特に限定されないが、印刷版の耐刷性の観点から、該ポリマーのガラス転移温度(Tg)が20℃以下のポリマー、コポリマー、さらに好ましくはガラス転移温度が0℃以下のポリマー、コポリマーを用いることが好ましい。
【0084】
バインダーポリマの具体例としては、公知のビニルポリマー類、未加硫ゴム、ポリオキシド類(ポリエーテル類)、ポリエステル類、ポリウレタン類などが挙げられる。
【0085】
これらのバインダーの含有量は、全感熱層組成物に対して5〜70重量%が好ましく、より好ましくは10〜50重量%である。含有量が5%よりも少ないと耐刷性や塗液の塗工性に問題が生じやすく、70重量%よりも多いと画像再現性に悪影響を与えやすい。
【0086】
上記各種バインダーポリマは単独で用いてもよいし、また数種のポリマを混合して使用してもよい。
【0087】
上記ポリマの中でも、特に、ポリウレタン、ポリエステル、ビニル系ポリマーがバインダーポリマーとして好ましい。
【0088】
また、本発明において感熱層は不飽和基含有化合物を有することが好ましい。
【0089】
不飽和基含有化合物としては、置換もしくは非置換の飽和、もしくは不飽和アルコール類の(メタ)アクリル酸エステル、カルボン酸類と(メタ)アクリル酸グリシジルまたはテトラグリシジル−m−キシリレンジアミンまたはテトラグリシジル−m−テトラヒドロキシリレンジアミンとの付加反応物、(メタ)アクリルアミド、n−メチロールアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミドなどのアミド誘導体、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応物であるエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ロジン変性アクリレート、ポリエステルアクリレート、メラミンアクリレートなどが挙げられる。
【0090】
具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、さらに、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、トリスアクリロイルオキシイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテルアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
これらのうち、分子中に水酸基やアミノ基を有するアクリレート類は好ましく用いることが出来る。
【0092】
さらに、シリル基を有する各種アクリレート類も好ましく用いられる。
【0093】
更に本発明において、感熱層には、染料、レベリング剤、界面活性剤、発色剤、可塑剤等を必要に応じて任意に添加してもよい。
【0094】
このようにして得られる感熱層の物性に関しては、得られる印刷版の印刷特性の観点から、その物性が特定の範囲にあることが好ましい。この様な物性としては引張特性、その中でも引張時の初期弾性率を代表として挙げることが出来る。具体的には、印刷版における感熱層のレーザー光照射後の引張時の初期弾性率が7kgf/mm2〜78kgf/mm2の範囲、さらには10kgf/mm2〜65kgf/mm2の範囲にあることが好ましい。
【0095】
感熱層の初期弾性率を以上のような範囲に設定することにより、印刷版としての特性、特に耐刷性を向上させることが出来る。逆に、初期弾性率が7kgf/mm2未満である場合には画線部を形成する感熱層がベタ着き易くなるため印刷時にヒッキーが発生し易くなる。また、初期弾性率が78kgf/mm2より大きい場合には、印刷時に加わる繰り返し応力により感熱層とシリコーンゴム層との接着界面で破壊が起こりやすくなり、耐刷性低下の原因となるためである。
【0096】
感熱層の厚さは、被覆層にして0.1〜10g/m2 であると、印刷版の耐刷性や、希釈溶剤を揮散し易く生産性に優れる点で好ましく、より好ましくは1〜7g/m2である。
【0097】
次にシリコーンゴム層について説明する。本発明において、シリコーンゴム層としては、従来の水なし平版印刷版において使用されるシリコーンゴム組成物からなるものが挙げられる。
【0098】
具体的には線状オルガノポリシロキサン(好ましくはジメチルポリシロキサン)をまばらに架橋することにより得られるものが挙げられる。
【0099】
架橋方法としては、縮合型のものでも、付加型のものでもよい。
【0100】
縮合型の架橋を行う際には、錫、亜鉛、鉛、カルシウム、マンガンなどの金属カルボン酸塩、塩化白金酸のような触媒が添加される事が好ましい。
【0101】
付加型においては、白金単体、塩化白金、塩化白金酸、オレフィン配位白金などの触媒が添加されることが好ましい。
【0102】
また、付加型シリコーンゴム層の硬化速度を制御する目的で、不飽和基含有化合物などの反応抑制剤を添加することが好ましい。
【0103】
これらの組成物の他に、付加型シリコーンゴム組成物に縮合型シリコーンゴム層の組成物である水酸基含有オルガノポリシロキサンや加水分解性官能基含有シラン(もしくはシロキサン)を添加してもよい。
【0104】
また、これらシリコーンゴム層組成物には、ゴム強度を向上させる目的で、シリカなどの公知の充填剤を添加することも行われる。
【0105】
さらに、本発明においてシリコーンゴム層は上記組成物の他にシランカップリング剤を含有することが好ましい。
【0106】
これらシリコーンゴム層の膜厚は0.5〜20g/m2が好ましく、さらに好ましくは0.5〜5g/m2である。膜厚が0.5g/m2よりも小さい場合には印刷版のインキ反撥性や耐傷性、耐刷性が低下する傾向があり、20g/m2よりも大きい場合には経済的見地から不利であるばかりでなく、インキマイレージが悪くなるという問題がある。
【0107】
次に、本発明における直描型水なし平版印刷版原版の製造方法および製版方法について説明する。
【0108】
必要に応じて各種処理を施された基板上に、通常のコーターあるいはホエラーのような回転塗布装置を用い、必要に応じて断熱層組成物を塗布し加熱により溶媒を揮散させ、さらに熱や光の作用で硬化させた後、感熱層組成物を塗布し加熱による溶媒の揮散を行う。この後、シリコーンゴム組成物を塗布し50〜150℃の温度で数分間熱処理してシリコーンゴム層を得る。
【0109】
このようにして得られた版には、シリコーンゴム層を保護する目的で保護フィルムをラミネートするかあるいは保護層を形成してもよい。
【0110】
それ故、保護フィルムとしてはレーザー光の照射を妨げることのないものが好ましい。このようなカバーフィルムの種類としては、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルムなどが挙げられる。
【0111】
このようにして得られた直描型水なし平版印刷版原版を、保護フィルムを剥離してから、あるいは好ましくは保護フィルム上からレーザー光で画像状に露光する。
【0112】
本発明の製版露光工程で用いられるレーザー光源としては、発光波長領域が300nm〜1500nmの範囲にあるものが用いられる。すなわち、アルゴンイオン、クリプトンイオン、ヘリウム-ネオン、ヘリウム−カドミウム、ルビー、ガラス、YAG、チタンサファイア、色素、窒素、金属蒸気、エキシマ、自由電子、半導体などの各種レーザーが使用される。
【0113】
これらの中でも本発明の印刷版原版を製版する目的から、近赤外領域付近に発光波長領域が存在する半導体レーザーが好ましく、特に高出力半導体レーザーが好ましく用いられる。
【0114】
現像方法としては、水または有機溶剤の存在もしくは非存在下での摩擦処理により行われる。あるいは、保護フィルムを剥離することによって印刷版上にパターンを形成する、いわゆる剥離現像によっても印刷版を作成することも可能である。
現像処理を行う場合に使用される現像液としては、例えば、水や水に界面活性剤を添加したもの、さらには水に下記の極性溶媒を添加したものや、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などの少なくとも1種類からなる溶媒に、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、カルボン酸などの極性溶媒を少なくとも1種類添加したものが用いられる。
【0115】
また、上記の現像液組成には、公知の界面活性剤を添加することも自由に行われる。さらにアルカリ剤などを添加することもできる。
【0116】
これらの中では、水あるいは水に界面活性剤を添加したもの、さらにはアルカリを添加した水が好ましい。
【0117】
また、これらの現像液には公知の塩基性染料、酸性染料、油溶性染料を添加して現像と同時に画像部の染色化を行うことができる。
【0118】
現像する際には、これらの現像液を、不織布、脱脂綿、布、スポンジ等に含浸させて、版面を拭き取ることによって、現像することができる。
【0119】
また、現像は自動現像機を用い、上記の現像液で版面を前処理した後に水道水などでシャワーしながら回転ブラシで版面を擦ることによって行うことも好ましい。
【0120】
上記の現像液に代えて、温水や水蒸気を版面に噴射することによっても現像が可能である。
【0121】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
【0122】
【実施例】
[実施例1]
厚さ0.24mmの脱脂したアルミ板上に下記の組成よりなる溶液を塗布し、200℃、2分間乾燥し、3g/m2の断熱層を設けた。
【0123】
<断熱層>
(a)エポキシ・フェノール樹脂“カンコート”90T−25−3094(関西ペイント(株)製):15重量部
(b)“ホワイト”UL7E265(住化カラー(株)製、酸化チタン):2重量部
(c)ジメチルホルムアミド:85重量部
次いで、この断熱層上に次の組成を有する感熱層組成物を塗布し、80℃で1分間乾燥し、膜厚3g/m2の感熱層を設けた。
【0124】
<感熱層>
(a)“KAYASORB”IR−820B(赤外線吸収染料、日本化薬(株)製):10重量部
(b)“デイスモジュール”CTステープル(フェノールブロックブロックドイソシアネート、住友デュレズ(株)製):30重量部
(c)“バーサミド”125(ポリアミドアミン、ヘンケル白水(株)製):10重量部
(d)“TSL”8350(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、東芝シリコーン(株)製):5重量部
(e)ペンタオキシプロピレンジアミン/グリシジルメタクリレート/メチルグリシジルエーテル=1/3/1mol比付加反応物:40重量部
(f)“サンプレン”T−1331(ポリウレタン樹脂 三洋化成工業(株)製、 ガラス転移温度Tg:−37℃):40重量部
(g)テトラヒドロフラン :1000重量部
(g)ジメチルホルムアミド :165重量部
さらに、この感熱層の上に下記の組成を有するシリコ−ンゴム組成物をバーコーターで塗布した後、120℃で2分間加熱硬化させて2.0μmのシリコ−ンゴム層を設けた。
【0125】
<シリコーンゴム層>
(a)α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン(重合度770) : 100重量部
(b)HMS−501(チッソ(株)製 両末端メチル(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジメチルシロキサン)共重合体 SiH基数/分子量=0.69mol/g) : 4重量部
(c)オレフィン配位白金 : 0.02重量部
(d)“BY24−808”(ダウコーニングシリコーン(株)製 反応抑制剤) : 0.3重量部
(e)“アイソパー”E(エッソ化学(株)製) : 1000重量部
上記のようにして得られた積層板に、厚さ8μmのポリプロピレンフィルム“トレファン”BO(東レ(株)製)をカレンダーローラーを用いてラミネートし、直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0126】
この後、この印刷版原版をFX400−AP(製版機、東レエンジニアリング(株)製)に装着し、半導体レーザー(波長830nm、ビーム直径20μm、出力0.75W)を用いて露光時間10μsでパルス露光を行った。
【0127】
レーザー照射後の版は、カバーフィルムを剥離した後、“アイソパー”Eを浸した“ハイゼガーゼ”(旭化成工業(株)製)を用いて版面を摩擦したところ、レーザー光が照射されていない部分のシリコーンゴム層のみが選択的に除去されたポジ型の水なし平版印刷版が得られた。
【0128】
シリコーンゴム層が除去された部分の感熱層の厚さを重量法により測定したところ2.2g/m2であり、残存率73%であった。残存率は以下の算式により算出した。
【0129】
残存率(wt%)=K1/K0
K1:現像処理後の感熱層重量(g/0.01m2)
K0:感熱層重量(g/0.01m2)
K1の算出方法は以下に述べる方法で行った。10cm×10cmの断熱層、感熱層およびシリコーンゴム層を塗布乾燥した版材を現像処理し、シリコーンゴム層を除去した後、乾燥させその重量(W1)を測定した。その後、必要に応じて適当な溶剤を用い、残存する感熱層を除去した後、乾燥し、重量(W2)を測定した。W1とW2の差より、現像後残存する感熱層の重量(K1)を算出した。
【0130】
また、K0は、10cm×10cmの断熱層を塗布した基板に感熱層を塗布乾燥し、感熱層塗布乾燥前後の重量変化より算出した。
【0131】
さらに、得られた刷版を印刷機HAMADA RS46L(ハマダ印刷機械(株)製)に取り付け、水なし平版用インキ(ドライオカラーNSI 藍 大日本インキ化学工業(株)製)を使用して上質紙に印刷を行ったところポジ画像を再現した印刷物が得られた。
【0132】
また、感熱層の初期弾性率は16kgf/mm2であった。
【0133】
[比較例1]
実施例1において感熱層中の成分(b)“デイスモジュール”CTステープル(フェノールブロックブロックドイソシアネート、住友デュレズ(株)製):30重量部を、(b)“ミリオネート”MR−400(ポリメチレンジイソシアネート、日本ポリウレタン工業(株)製):20重量部に変更した以外は全く同様に印刷版原版を作製した。実施例1と同様にレーザー光を照射し、現像を行ったところ、レーザー光の照射、未照射に関わらず、シリコーンゴム層が除去されない状態であった。
【0134】
[比較例2]
実施例1において感熱層中の成分(c)“バーサミド”125(ポリアミドアミン、ヘンケル白水(株)製):10重量部を、(c)“スミライトレジン”PR50622(フェノールノボラック樹脂、住友デュレズ(株)製):10重量部に変更した以外は全く同様に印刷版原版を作製した。実施例1と同様にレーザー光を照射し、現像を行ったところ、レーザー光の照射、未照射に関わらず、シリコーンゴム層が全て除去されたシリコーンゴム層剥がれの状態であった。
【0135】
[実施例2]
厚さ0.24mmの脱脂したアルミ板上に下記の組成よりなる溶液を塗布し、200℃、2分間乾燥し、3g/m2の断熱層を設けた。
【0136】
<断熱層>
(a)ポリウレタン樹脂“ミラクトラン”P22S(日本ミラクトラン(株)製):100重量部
(b)ブロックドイソシアネート“タケネートB830”(武田薬品工業(株)製):20重量部
(c)エポキシ・フェノール・尿素樹脂“SJ9372”(関西ペイント(株)製):8重量部
(d)ジブチル錫ジアセテート:0.5重量部
(e)“FINEX”25(白色顔料、堺化学(株)製):10重量部
(f)“KET−YELLOW”402(黄色顔料、大日本インキ化学工業(株)製):10重量部
(g)ジメチルホルムアミド:720重量部
この断熱層上に、下記感熱層を乾燥膜厚2.5g/m2になるように塗布し、80℃×1分間乾燥した。
【0137】
<感熱層>
(a)SPRIT NIGROSINE SJ(Dye Specialities,INC.):10重量部
(b)“デイスモジュール”CTステープル(フェノールブロックブロックドイソシアネート、住友デュレズ(株)製):15重量部
(c)“バーサミド”150(ポリアミドアミン、ヘンケル白水(株)製):10重量部
(d)m−キシリレンジアミン/グリシジルメタクリレート/3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン=1/3/1mol比付加反応物:30重量部
(e)“デナコール”EX−411(ペンタエリスルトールポリグリシジルエーテル、ナガセ化成工業(株)製):5重量部
(f)“サンプレン”T−1331(ポリウレタン樹脂 三洋化成工業(株)製、 ガラス転移温度Tg:−37℃):40重量部
(g)テトラヒドロフラン :1000重量部
(h)ジメチルホルムアミド :165重量部
次いで、下記シリコーンゴム層を乾燥膜厚2.0μm、乾燥条件は120℃×1分間として塗設し、実施例1と同様に原版を作製した。
【0138】
<シリコーンゴム層>
(a)ポリジメチルシロキサン(分子量約35,000、末端水酸基):100重量部
(b)エチルトリアセトキシシラン:10重量部
(c)ジブチル錫ジアセテ−ト:0.3重量部
(d)“アイソパ−G”(エクソン化学(株)製):1200重量部
得られた原版は実施例1と同様に評価を行ったところ、レーザー光が照射された部分のシリコーンゴム層のみが残存したポジ型の水なし平版印刷版が得られた。
【0139】
シリコーンゴム層が除去された部分の感熱層の厚さを重量法により測定したところ2.0g/m2であり、残存率80%であった。
【0140】
[実施例3]
実施例2で得た断熱層の上に、次の組成を有する感熱層組成物を塗布し、60℃で1分間乾燥し、膜厚2g/m2の感熱層を設けた。
【0141】
<感熱層>
(a)“SOHN BLACK”(Waterbase)(三菱化学(株)製、カーボンブラックの水分散ペースト):10重量部
(b)“メイカネート”TP−10(水分散型ブロックドイソシアネート、明成化学工業(株)製):20重量部
(c)“バーサミド”415(ポリアミドアミン、ヘンケル白水(株)製):30重量部
(d)“マルカリンカー”PHM−C(ポリパラヒドロキシスチレン、丸善石油化学(株)製):20重量部
(e)“ゴーセノール”KL−05(ポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製):5重量部
(f)m−キシリレンジアミン/グリシジルメタクリレート/3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン=1/3/1mol比付加反応物:0.5重量部
(g)ジブチル錫ジアセテ−ト:0.3重量部
(h)精製水:80重量部
(h)エタノール:840重量部
この感熱層の上に下記の組成を有するシリコ−ンゴム組成物をバーコーターで塗布した後、110℃で1分間湿熱硬化させて2.0μmのシリコ−ンゴム層を設け、さらに“ルミラー”(東レ(株)製、ポリエチレンテレフタレートフィルム 12μm)をラミネートし、直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0142】
<シリコーンゴム層>
(a)ポリジメチルシロキサン(分子量約35,000、末端水酸基):100重量部
(b)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン:8重量部
(c)“アイソパ−E”(イソパラフィン系炭化水素、エクソン化学(株)製):1400重量部
実施例1と同様にレーザー照射後の版は、カバーフィルムを剥離した後、水/ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル:95/5(重量部/重量部)の混合溶液に1分間浸漬し、さらに精製水を浸した現像パッド(3M(株)製)を用いて版面を摩擦したところ、レーザー光が照射されなかった部分のシリコーンゴム層のみが選択的に除去されたポジ型の水なし平版印刷版が得られた。
【0143】
[実施例4]
実施例2において、感熱層の組成を下記のように変更した以外は全く同様に印刷版原版を作製し、同様に評価を行ったところ、レーザー光が照射されなかった部分のシリコーンゴム層のみが選択的に除去されたポジ型の水なし平版印刷版が得られた。
【0144】
<感熱層>
(a)カーボンブラック分散ロジン変性マレイン酸樹脂(内カーボンブラック20重量部):30重量部
(b)“DMS−6X”(メチルエチルケトオキシムブロックブロックドイソシアネート、明成化学工業(株)製):20重量部
(c)“ゼナミド”250(ポリアミドアミン、ヘンケル白水(株)製):15重量
(d)m−キシリレンジアミン/グリシジルメタクリレート/3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン=1/3/1mol比付加反応物:30重量部
(e)ジブチル錫ジアセテ−ト:0.3重量部
(f)“サンプレン”T−1331(ポリウレタン樹脂 三洋化成工業(株)製、 ガラス転移温度Tg:−37℃):40重量部
(g)テトラヒドロフラン :800重量部
(h)ジメチルホルムアミド :170重量部
[実施例5]
実施例4で得られた印刷版原版に、波長1064nm、ビーム径100μm(1/e2)の半導体励起YAGレーザーを用いて連続線の書き込みを行った。記録エネルギーは0.75J/cm2とした。
【0145】
その後、実施例5と同様に現像処理したところ、レーザー光が照射されなかった部分のシリコーンゴム層のみが除去されたポジ型の水なし平版印刷版が得られた。
【0146】
【発明の効果】
本発明は、直描型水なし平版印刷版原版において、感熱層が光熱変換物質と、ブロックドイソシアネートおよびポリアミドアミンを含有することで、ポジ型の直描型水なし平版印刷版が得られる。
Claims (3)
- 基板上に、少なくとも感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に積層してなる直描型水なし平版印刷版原版において、該感熱層が少なくとも
(a)光熱変換物質
(b)ブロックドイソシアネート
(c)ポリアミドアミン
を含むことを特徴とする直描型水なし平版印刷版原版。 - 請求項1記載の直描型水なし平版印刷版原版に、レーザー光照射後、現像処理によりレーザー光未照射部のシリコーンゴム層を除去することを特徴とする直描型水なし平版印刷版の製造方法。
- 現像後のレーザー光未照射部の感熱層が50%以上残存していることを特徴とする請求項2記載の直描型水なし平版印刷版の製造方法。
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