JP3866225B2 - 表面微小領域原子発光分析装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料の表面にパルスレーザーを照射し、蒸発した原子や分子からの発光スペクトルを測定する装置に関するものであり、特に、試料表面のnmレベルの微小領域に存在する原子や分子の発光分析に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、固体表面の物質を構成する原子・分子発光スペクトルを測定し、元素分析を行う方法として、レーザーアブレーションICP発光分析やグロー放電発光分析法などがある。
【0003】
これらはレーザーやプラズマを試料に照射して、その物理的効果や化学的効果により構成原子や分子を表面から蒸発させ、その一部が励起して基底状態に緩和した際に発生する発光を分光器・高感度検出器により測定するものである。
【0004】
その場合、レーザーやプラズマを集光したり、収束しても、その直径がμm程度の大きさをもつため、これに対応して得られる情報の空間分解能は直径μmの領域となる。
【0005】
さらに、空間分解能を向上させるために、パルスレーザーと近接場光学顕微鏡を組み合わせた手法が開発されている。
【0006】
例えば、先端径が100nmφ程度である光ファイバーにナノ秒パルス窒素レーザー(355nm)を導入する。
【0007】
光ファイバー先端は光の波長よりも短い開口径をもつため、光は伝播せず開口径程度の広がりをもつ近接場光に変換される。
【0008】
その結果、100nmφ程度の領域にのみ近接場光が照射されることになり、試料表面の照射領域のみが蒸発・励起され、それらの原子発光スペクトルが得られることになる。
【0009】
その結果、直径約100nm、深さ数十nmの空間分解能での元素の定性定量分析が達成されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記したような従来の、直径数百nmの空間分解能をもつ元素分析法においては、パルスレーザー励起を用いた微粒子脱離後の原子発光を実現しているが、レーザー照射に光ファイバーを用いている限り、空間分解能の向上には限界がある。例えば、光ファイバー先端は開口径を100nmとし、光の漏れがないようにAlなどの金属で光遮蔽が施されているが、一般的に微粒子蒸発に必要なエネルギー閾値以上の光を導入するとこの光遮蔽金属が融解し、開口径を維持できなくなるので、入射光パワーに制限がある。
【0011】
従って、試料(原子や分子)を蒸発させるために入射光パワーを増大すると、空間分解能を向上できないといった問題がある。
【0012】
また、同様の問題から100nm以下の開口径の光ファイバーを用いることができず、それ以上の空間分解能の向上も実現が困難である。
【0013】
そこで、本発明は、上記状況に鑑みて、直径数nm、深さ数nmの空間分解能で元素の定性定量分析を行うことができる表面微小領域原子発光分析装置を提供することを目的とする。
【0014】
〔1〕表面微小領域原子発光分析装置において、貴金属材料からなる先端を針状にした探針と、この探針の先端を試料の表面に近づける探針制御部と、前記探針および試料表面に同時に照射されるピコ秒以下のパルスレーザーとを備え、前記ピコ秒以下のパルスレーザーの照射により、前記試料の表面かつ微小領域の試料原子を、前記探針と前記ピコ秒以下のパルスレーザーとの間に発生する電場増強効果を利用してアブレーションさせ、励起した原子やイオンからの発光のエネルギーから定性分析、その発光量から定量分析することを特徴とする。
【0015】
〔2〕上記〔1〕記載の表面微小領域原子発光分析装置において、前記探針の先端の貴金属が金、銀であることを特徴とする。
【0016】
〔3〕上記〔1〕記載の表面微小領域原子発光分析装置において、前記ピコ秒以下のパルスレーザーが、ピコ秒パルスNd−YAGレーザー(355nm、266nm)やフェムト秒パルス再生増幅Tiサファイアレーザー(800nm)であることを特徴とする。
【0017】
上記したように、本発明によれば、試料表面には、原子間力顕微鏡や走査型トンネル顕微鏡のような探針が試料表面極近傍まで近づき、探針と試料に同時にピコ秒以下のパルスレーザーを照射する。その際に光と探針の間で電場増強などの相互作用が誘起され、表面原子が蒸発励起される。その際に励起原子からの原子スペクトルの発光がおこり、それを分光検出することにより定性・定量分析が可能となる。蒸発励起される領域は直径数nm、深さ数nmとなることから、微小領域表面元素の分析が達成される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の実施例を示す表面微小領域原子発光分析装置の構成図である。
【0020】
この図において、1は探針、2はカンチレバー、3はレーザー照射部、4はレーザー光、5は4分割フォトディテクター、6は試料、7は試料載置台、8は励起用パルスレーザー照射部(励起源として再生増幅フェムト秒レーザー;フェムト秒パルス再生増幅Tiサファイアレーザー)、9は励起用パルスレーザー、10はフォーカスレンズ、11は対物レンズ、12は発光スペクトル計測部(分光検出システム)である。
【0021】
このように、表面微小領域原子発光分析装置は、原子間力を利用した探針制御部(図示なし)、励起用パルスレーザー照射部8、発光スペクトル計測部12からなる。探針制御部により、金や銀などの材料からなる先端を針状にした探針1を保有するカンチレバー2により、探針1を試料6直上数nm近傍まで近接させる。
【0022】
探針1を近接させる方法としては、ここでは光てこ方式を用い、カンチレバー2にレーザー光4を照射し、試料6表面で反射した光を4分割フォトディテクター5で検出し、その反射位置から原子間力を見積もり、試料6から探針1までの距離を制御する。
【0023】
試料6に探針1を近づけた状態で、励起源である再生増幅フェムト秒レーザー8からの励起用パルスレーザー9をフォーカスレンズ10を通して探針(その先端)1と試料6表面に直径数μmで照射する。
【0024】
励起用パルスレーザー9と探針1の相互作用により試料6表面から発生した超微粒子からの原子発光を対物レンズ11で集光し、分光検出システム12に導入し、発光スペクトルを測定する。
【0025】
これにより、測定された発光波長から元素種の同定、発光量(光強度)から定量分析が可能となる。
【0026】
本発明の装置においては、微粒子蒸発に、探針1とピコ秒以下の励起用パルスレーザー9の間に発生する電場増強効果を利用することから、その相互作用が及ぶ領域である数nm以下の空間分解能、数nm以下の深さの分解能で、表面の原子を蒸発・励起することが可能である。
【0027】
適用例としては、図2にPdCu合金微粒子を吸着させたけい素表面の原子間力顕微鏡像を示す。図2(a)ではけい素表面に10nm径のPdCu合金微粒子が吸着している状態が原子間力顕微鏡像として観察されている。本装置によりその一部を蒸発させた結果、その部分がクレーター状に削り取られていることが原子間力顕微鏡像として図2(b)に示されている。
【0028】
この図から、10nmφ程度の領域のみの蒸発を実現していることが分かる。
【0029】
また、図2(b)のクレーター部からPdCu合金微粒子を蒸発させたときの発光スペクトルが図3に示されている。この図3において、横軸は波長(nm)、縦軸は光強度(相対単位)である。
【0030】
この図から明らかなように、波長283.3nmのパラジウムと、327.4nmの銅による原子スペクトルが検出され、けい素による発光は観察されていない。
【0031】
また、励起用レーザー9をピコ秒パルスNd−YAGレーザー(355nm、266nm)にしても同様の結果が得られる。
【0032】
以上の結果は、本装置により、数nmφの空間分解能で試料表面に存在する原子の発光分光分析が達成されていることを示している。
【0033】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0034】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0035】
(A)表面構成物質の蒸発に光と貴金属からなる探針との間の電場増強効果を用いることから励起蒸発領域を数nmに制限し、数nmの空間分解能での元素の同定および定量分析が可能となる。
【0036】
(B)数nmの空間分解能で原子の発光スペクトルが得られることから、原子同定・定量が可能である。また、走査型プローブ顕微鏡や近接場光学顕微鏡では困難であった原子同定といった問題を解決できる。
【0037】
(C)電界などを用いないことから非電導体への適用を可能とした。これらの特徴により、金属表面の吸着原子の同定はもちろんのこと、半導体表面吸着原子の同定、さらには生体細胞膜の局所に存在する原子の同定やその挙動解明に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す表面微小領域原子発光分析装置の構成図である。
【図2】PdCu合金微粒子を吸着させたけい素表面の原子間力顕微鏡像を示す図である。
【図3】図2のクレーター部を形成した際に発生した原子発光スペクトルである。
【符号の説明】
1 探針
2 カンチレバー
3 レーザー照射部(レーザー光源)
4 レーザー光
5 4分割フォトディテクター
6 試料
7 試料載置台
8 励起用パルスレーザー照射部
9 励起用パルスレーザー
10 フォーカスレンズ
11 対物レンズ
12 発光スペクトル計測部(分光検出システム)
Claims (3)
- (a)貴金属材料からなる先端を針状にした探針と、
(b)該探針の先端を試料の表面に近づける探針制御部と、
(c)前記探針および試料表面に同時に照射されるピコ秒以下のパルスレーザーとを備え、
(d)前記ピコ秒以下のパルスレーザーの照射により、前記試料の表面かつ微小領域の試料原子を、前記探針と前記ピコ秒以下のパルスレーザーとの間に発生する電場増強効果を利用してアブレーションさせ、励起した原子やイオンからの発光のエネルギーから定性分析、その発光量から定量分析することを特徴とする表面微小領域原子発光分析装置。 - 請求項1記載の表面微小領域原子発光分析装置において、前記探針の先端の貴金属が金、銀であることを特徴とする表面微小領域原子発光分析装置。
- 請求項1記載の表面微小領域原子発光分析装置において、前記ピコ秒以下のパルスレーザーが、ピコ秒パルスNd−YAGレーザー(355nm、266nm)やフェムト秒パルス再生増幅Tiサファイアレーザー(800nm)であることを特徴とする表面微小領域原子発光分析装置。
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