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JP3865020B2 - バルブタイミング調整装置 - Google Patents

バルブタイミング調整装置 Download PDF

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JP3865020B2
JP3865020B2 JP10103998A JP10103998A JP3865020B2 JP 3865020 B2 JP3865020 B2 JP 3865020B2 JP 10103998 A JP10103998 A JP 10103998A JP 10103998 A JP10103998 A JP 10103998A JP 3865020 B2 JP3865020 B2 JP 3865020B2
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    • F01L1/00Valve-gear or valve arrangements, e.g. lift-valve gear
    • F01L1/34Valve-gear or valve arrangements, e.g. lift-valve gear characterised by the provision of means for changing the timing of the valves without changing the duration of opening and without affecting the magnitude of the valve lift
    • F01L1/344Valve-gear or valve arrangements, e.g. lift-valve gear characterised by the provision of means for changing the timing of the valves without changing the duration of opening and without affecting the magnitude of the valve lift changing the angular relationship between crankshaft and camshaft, e.g. using helicoidal gear
    • F01L1/3442Valve-gear or valve arrangements, e.g. lift-valve gear characterised by the provision of means for changing the timing of the valves without changing the duration of opening and without affecting the magnitude of the valve lift changing the angular relationship between crankshaft and camshaft, e.g. using helicoidal gear using hydraulic chambers with variable volume to transmit the rotating force
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    • F01L2001/34483Phaser return springs
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02TCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
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    • Y02T10/12Improving ICE efficiencies

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  • Valve-Gear Or Valve Arrangements (AREA)
  • Valve Device For Special Equipments (AREA)
  • Output Control And Ontrol Of Special Type Engine (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関(以下、「内燃機関」をエンジンという)の排気弁の開閉タイミング(以下、「開閉タイミング」をバルブタイミングという)を運転条件に応じて変更するためのバルブタイミング調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、エンジンのクランクシャフトと同期回転するタイミングプーリやチェーンスプロケットを介してカムシャフトを駆動し、タイミングプーリやチェーンスプロケットとカムシャフトとの相対回動による位相差により吸気弁および排気弁の少なくともいずれか一方のバルブタイミングを制御するベーン式のバルブタイミング調整装置が知られている。
【0003】
ベーン式のバルブタイミング調整装置は、タイミングプーリとともに回転するハウジング内に、カムシャフトとともに回転するベーンを収容している。そして、ハウジングに対するベーンの相対回転位相差を油圧により調整することにより、カムシャフトとタイミングプーリとを相対的に回動させ、エンジンの運転条件に応じて吸気弁および排気弁の少なくともいずれか一方のバルブタイミングを調整している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
エンジンバルブの開閉時期を制御する位相制御のバルブタイミング調整装置では、エンジンの安定性向上、燃費の向上、あるいは排気エミッションを低減することを目的としており、エンジンの低負荷時においては吸入空気量が少ないため、エンジンのシリンダ内に燃焼を悪化させる残留排気ガスが少ないことが望ましい。吸気弁と排気弁とが同時に開いている期間(オーバーラップ期間)において、吸気側はスロットルにより負圧であり、排気側は正圧であるので、排ガスが吸気側に吹き返し、燃焼が悪化したり、失火したりする場合がある。このため、排気弁の閉じる時期が早く、吸気弁の開く時期が遅いことが要求される。また、吸気弁の閉じる時期が遅いと、ポンピングロスを低減し、燃費を向上することができる。したがって、アイドル運転および始動時には、排気弁の閉じる時期が早く、吸気弁の開く時期が遅い基本位相に制御する必要がある。ここで、この基本位相の吸気側の条件を最遅角とし、排気側の条件を最進角とする。
【0005】
しかし、エンジンの中負荷以上においてはEGR量を制御し、ポンピングロスの低減を内部EGRにより行い、燃費の向上と排気エミッションの低減をさせるため、吸気側の開弁時期を早くしたり、排気側の閉弁時期を遅くする必要がある。すなわち、吸気弁を進角方向に制御し、排気弁を遅角方向に制御する。
さらに、エンジンの全負荷においては、大量の空気をエンジンのシリンダ内に入れる必要があるため、低速においては早く吸気弁を閉じてマニホールドへの逆流を防止し、高速においては空気の慣性を利用して遅く吸気弁を閉じる必要がある。また排気側は、排気脈動を最大限利用できる位相に排気弁を制御し、排気脈動を利用することができない場合、最進角に制御する必要がある。すなわち排気側は、エンジンの低負荷から負荷に応じて、排気弁を最進角から遅角方向に制御し、再び進角方向に制御する必要がある。
【0006】
しかしながら、このとき運転条件が変化した場合、素早く要求位相に吸排気弁を制御可能なことが望ましい。吸排気弁の制御が不可能な場合、エンジンの失火や燃焼不安定などの問題が発生する。通常、エンジンの油圧ポンプはクランクシャフトによって駆動される。しかし結果として、エンジンの回転数によって吐出油量が変化し、低回転時において、吐出油量は低下する。このため、特に高油温時、漏れと粘度の低下により油圧が減少し、アクチュエータの作動が行われなくなる場合がある。このとき吸気側は、カムシャフトの駆動トルクによって遅角されるため、基本位相となり得る。しかし排気側は、吸気側と同じ油圧ピストン面積のアクチュエータを適用した場合、基本位置に制御することが不可能となり、エンジンのシリンダ内に残留ガスが増大し、失火したり、エンジンが停止したりすることがある。
【0007】
そこで、特開平9−264110号公報に開示されるバルブタイミング調整装置では、スプリングによる付勢力を用いて吸気側を遅角位置あるいは排気側を進角位置に移動させることにより、上記の課題を解決している。上記の従来技術においては、排気側のスプリングの付勢力を油圧作動室へ吸排される油圧による力よりも小さく設定している。上記の油圧作動室へ吸排される油圧による力はベーンの面積に依存するが、しかし、上記の従来技術にはベーンの面積に関して開示がされていない。例えばエンジンが高温になり、油の粘度が低下してアクチュエータ部の油圧がなくなった場合、あるいはエンジンが低温で油の粘度が高くなり、油圧ポンプからアクチュエータ部まで油が送られて来なくなった場合、アクチュエータ部に油圧が発生しなくなる。排気側の進角動作を行うため、排気側のスプリングによる付勢力は、温度および回転数の条件におけるエンジンの平均トルク以上が必要となる。排気側の進角動作が不可能な場合、排気弁の閉時期が遅れ、吸気弁と排気弁とのオーバーラップ期間が過大となり、各気筒内の残留ガスが増大し、燃焼不安定によりエンジンが停止したり、エンジンの再始動が不可能になる恐れがある。
【0008】
高油温時のアイドル時のカムシャフトの平均トルク以上の付勢力を有するスプリングを排気側に搭載すれば上記の問題は解決される。しかし、必要以上に大きな付勢力を有するスプリングを排気側に搭載した場合、その付勢力に打ち勝つようにベーンの面積を増加させる必要があり、アクチュエータの体格が大型化したり、ベーンの枚数が増加して製造コストが増大したり、あるいは位相可変に必要な油の流量が増加して応答性が低下するという問題が発生する。さらにスプリングの付勢力を上記の平均トルクの2倍以上に設定した場合、スプリングを搭載しないバルブタイミング調整装置に比べて応答性が確実に低下するという問題が発生する。
【0009】
そこで、駆動力伝達手段としてリング状歯車を備え、スプリングの付勢力を規定したバルブタイミング調整装置として、特開平9−170408号公報に開示されるバルブタイミング調整装置が知られている。特開平9−170408号公報に開示されるバルブタイミング調整装置においては、スプリングの付勢力をある範囲内に設定している。しかし、カムシャフトには通常トルク変動があり、その変動トルクが上記のスプリングの付勢力を越えると位相可変の調節ピストンが移動し、トルク変動によりスプリングの付勢力が回復すると逆方向に調整ピストンが移動してストッパに衝突し、エンジンの始動時等に毎回打音が発生するという問題があった。
【0010】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、簡単な構成で、通常時の応答性を悪化させることなく、確実に動作可能なバルブタイミング調整装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載のバルブタイミング調整装置によると、駆動軸に対し従動軸が進角する方向にベーン部材を付勢する第1の付勢手段の付勢力は、高油温時のアイドル時の従動軸の平均トルク以上、かつこの平均トルクの2倍以下である。このため、エンジンのアイドル以上の常用回転域において、流体圧力がなくてもベーン部材を進角方向に回動することが可能になり、排気弁を最進角位置に移動することが可能となる。したがって、排気弁と吸気弁とが重複して開弁するオーバーラップ期間を少なくともエンジン始動可能な程度に減少可能であるため、エンジン始動性が向上する。さらに、吸気弁から吸入した燃料が未燃燃料となって排気弁から排出される量を低減することができる。さらにまた、ハウジング部材内に形成された収容室に流入する流体の流量を減少することにより、位相変換の応答性を改善することができる。
【0012】
本発明の請求項2記載のバルブタイミング調整装置によると、拘束手段の当接部は、駆動手段から供給される流体圧力を受けてハウジング部材とベーン部材との拘束を解除する第1および第2受圧面を有しており、ハウジング部材に対してベーン部材を進角方向に相対回転させるように駆動手段から供給される第1流体圧力が作用する第1受圧面は、ハウジング部材に対してベーン部材を遅角方向に相対回転させるように駆動手段から供給される第2流体圧力が作用する第2受圧面よりも受圧面積が小さい。このため、流体供給源を大型化して作動流体圧力を増加させることなく、ならびに当接部を大型化して受圧面積を増加させることなく、作動流体の低圧時においても拘束手段によるにハウジング部材とベーン部材との拘束が確実に解除される。したがって、ハウジング部材とベーン部材との相対回動が可能となる。
【0013】
本発明の請求項3記載のバルブタイミング調整装置によると、第1受圧面に作用する圧力は、第1の付勢手段の付勢力と第1流体圧力とにより最進角時に発生するトルクが高油温時のアイドル時の従動軸の変動トルクの正ピークトルクよりも大きくなるように設定されている。このため、エンジン始動時において、配管や収容室から流体が漏れて流体圧力がなくなっても確実にベーン部材を拘束することができる。さらに、流体圧力が復帰した場合、確実にハウジング部材とベーン部材との拘束を解除してハウジング部材とベーン部材との相対回動が可能となる。さらにまた、流体圧力が低下し、変動トルクの正ピークトルクに耐えるだけの流体圧力を発生することができなくなった場合、ハウジング部材とベーン部材とを速やかに拘束状態にし、ハウジング部材とベーン部材との打音の発生を確実に防止することができる。
【0014】
本発明の請求項4記載のバルブタイミング調整装置によると、第2受圧面に作用する圧力は、第1の付勢手段の付勢力から従動軸の平均トルクを差引いたトルクを発生するときの圧力以上、かつ従動軸の変動トルクの負ピークトルクよりも大きいトルクを発生するときの圧力以下である。このため、排気弁を遅角方向に移動させようと制御した場合、流体制御弁を制御して従動軸の位相を保持させる圧力に流体圧力を設定しておけば、従動軸の変動トルクの負ピークトルクにより第2受圧面に流体圧力が作用し、拘束手段の当接部にせん断力がかかって引掛かることなくハウジング部材とベーン部材との拘束を速やかに解除することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示す実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の一実施例によるエンジン用バルブタイミング調整装置を図1〜図5に示す。本実施例のバルブタイミング調整装置100は油圧制御式であり、排気弁のバルブタイミングを制御するものである。
【0016】
図1に示すタイミングプーリ8は、図示しないタイミングベルトにより図示しないエンジンの駆動軸としてのクランクシャフトと結合して駆動力を伝達され、クランクシャフトと同期して回転する。フロント部材50はプレート部51および軸受部52からなり、ボルト53によりプレート部51とタイミングプーリ8と後述するシューハウジング7とが結合されている。従動軸としてのカムシャフト1は、タイミングプーリ8から駆動力を伝達され、図示しない吸気弁を開閉駆動する。カムシャフト1は、図示しないシリンダヘッドに支持され、タイミングプーリ8に対し所定の位相差をおいて相対回動可能である。タイミングプーリ8およびカムシャフト1は図1の左方向からみて時計方向に回転する。以下、この回転方向を進角方向とする。
【0017】
シューハウジング7は、タイミングプーリ8およびフロント部材50とともにハウジング部材を構成している。ベーンロータ4の軸方向両端面はタイミングプーリ8およびフロント部材50のプレート部51により覆われている。タイミングプーリ8、シューハウジング7およびフロント部材50は駆動側回転体を構成し、互いにボルト53により同軸上に結合されている。
【0018】
第1の付勢手段としての捩じりスプリング60はタイミングプーリ8に形成された円周溝61に挿入され、一方の端部はタイミングプーリ8に固定され、他方の端部はベーンロータ4に固定されている。捩じりスプリング60は、タイミングプーリ8に対しベーンロータ4が進角する方向、すなわちクランクシャフトに対しカムシャフト1が進角する方向にベーンロータ4を付勢している。捩じりスプリング60の付勢力は、高油温時のアイドル時のカムシャフト1の平均トルク以上、かつこの平均トルクの2倍以下となるように設計されている。
【0019】
図2に示すように、シューハウジング7は周方向にほぼ等間隔に台形状に形成されたシュー7a、7b、7cを有している。シュー7a、7b、7cの周方向の三箇所の間隙にはそれぞれベーン部材としてのベーン4a、4b、4cを収容する扇状空間部55が形成されており、シュー7a、7b、7cの内周面は断面円弧状に形成されている。
【0020】
ベーンロータ4は周方向にほぼ等間隔にベーン4a、4b、4cを有し、このベーン4a、4b、4cがシュー7a、7b、7cの周方向の間隙に形成されている扇状空間部55に回動可能に収容されている。図2に示す遅角方向、進角方向を表す矢印は、シューハウジング7に対するベーンロータ4の遅角方向、進角方向を表している。図2において、各ベーンは各扇状空間部55の一方の周方向端部に位置し、ベーンロータ4はシューハウジング7に対し最進角位置にある。最進角位置は、ベーン4aの進角側側面がシュー7aの遅角側側面に係止されることにより規定されている。図1に示すように、ベーンロータ4は、ボルト5によりカムシャフト1に一体に結合されており、ブッシュ6はベーンロータ4に圧入支持され、従動側回転体を構成している。ボルト5に設けられた穴32は、油路14からの作動油によりカムシャフト1をスプロケット8との軸受部を潤滑するものである。
【0021】
カムシャフト1およびブッシュ6はそれぞれフロント部材50の軸受部52に相対回動可能に嵌合している。したがって、カムシャフト1およびベーンロータ4はタイミングプーリ8およびシューハウジング7に対して同軸に相対回動可能である。
図2に示すように、シール部材9はベーンロータ4の外周壁に嵌合している。ベーンロータ4の外周壁とシューハウジング7の内周壁との間には微小クリアランスが設けられており、このクリアランスを介して油圧室間に作動油が漏れることをシール部材9により防止している。
【0022】
図4に示すように、ガイドリング91はベーン4aの内壁に圧入保持され、このガイドリング91に当接部としてのストッパピストン17が挿入されている。ストッパピストン17は、ほぼ同一外径の有底円筒状に形成されており、有底の円筒部17aと円筒部17aの開口端部に設けられたフランジ部17bとからなる。ストッパピストン17はカムシャフト1の軸方向に摺動可能にガイドリング91に収容されている。ストッパピストン17は第2の付勢手段としてのスプリング16によりタイミングプーリ8側に付勢されている。タイミングプーリ8に形成されたストッパ穴8aに被当接部としてのテーパ穴54aを有する嵌合リング54が圧入保持されており、ストッパピストン17は図2に示す最遅角位置においてテーパ穴54aに嵌合可能である。ストッパピストン17がテーパ穴54aに嵌合し、ストッパピストン17がテーパ穴54aに回転方向で当接した状態ではシューハウジング7に対するベーンロータ4の相対回動は拘束される。つまり、ストッパピストン17とテーパ穴54aとは最遅角位置において拘束位置にある。ストッパピストン17、テーパ穴54aおよびスプリング16は拘束手段を構成している。
【0023】
フランジ部17bの右側の油圧室18は、図2に示す油路19を介して後述する進角油圧室85と連通している。また、円筒部17aの先端側に形成された油圧室27は、図2に示す油路31を介して後述する遅角油圧室80と連通している。油圧室18の油圧を受けるフランジ部17bの第1受圧面の面積は、油圧室27の油圧を受ける円筒部17aの第2受圧面の面積よりも小さくなるように設定されている。第1受圧面および第2受圧面がそれぞれ油圧室18と油圧室27との作動油から受ける力はテーパ穴54aからストッパピストン17を抜け出させる方向に働く。第1受圧面の受圧面積はフランジ部17bと円筒部17aの径差に相当する環状部の面積にほぼ等しく、第2受圧面の受圧面積は円筒部17aの断面積にほぼ等しい。進角油圧室85または遅角油圧室80に所定圧以上の作動油が供給されると、これら作動油の油圧によりスプリング16の付勢力に抗してストッパピストン17はテーパ穴54aから抜け出す。
【0024】
ストッパピストン17の位置とテーパ穴54aの位置とは、シューハウジング7に対してベーンロータ4が最進角位置にあるとき、つまりクランクシャフトに対してカムシャフト1が最進角位置にあるときにスプリング16の付勢力によりストッパピストン17がテーパ穴54aに嵌合可能な位置に設定されている。
図1に示すように、ベーン4aのフロント部材50側にストッパピストン17の背圧室30と連通する連通路29が形成されている。連通路29は最進角位置において軸受部52に形成された図示しない油路を経由して図示しないエンジンの油潤滑空間に大気開放されているので、最進角位置において背圧室30は大気開放されている。したがって、最進角位置においてストッパピストン17の移動が妨げられない。
【0025】
図2に示すように、シュー7aとベーン4aとの間に遅角油圧室80が形成され、シュー7bとベーン4bとの間に遅角油圧室81が形成され、シュー7cとベーン4cとの間に遅角油圧室82が形成されている。また、シュー7aとベーン4bとの間に進角油圧室83が形成され、シュー7bとベーン4cとの間に進角油圧室84が形成され、シュー7cとベーン4aとの間に進角油圧室85が形成されている。
【0026】
図2に示すように、ベーンロータ4には、カムシャフト1との当接部において油路13が設けられており、ブッシュ6との当接部において油路12が設けられている。図3および図5に示すように、油路13は、油路12を介してカムシャフト1とボルト5との間に形成された油路14、およびハウジング101に形成された油路15を経由し、切換弁42を介して駆動手段としての油圧ポンプ40またはドレイン41と連通している。油圧ポンプ40はエンジン潤滑油の駆動源を兼ねている。さらに油路13は、図2に示すように、遅角油圧室80、81、82と連通している。また、油路13は、油路31を介して油圧室27と連通している。ここで、遅角油圧室80、81、82に供給される作動油の油圧は第2流体圧力である。
【0027】
図3および図5に示すように、フロント部材50のプレート部51には、ベーンロータ4との当接部において油路32が設けられており、油路32は、フロント部材50の軸受部52に形成された油路33、およびハウジング101に形成された全周溝11を介してハウジング101に形成された油路16、17を経由し、切換弁42を介して油圧ポンプ40またはドレイン41と連通している。さらに油路32は、進角油圧室83、84、85と連通しており、図2に示す油路19を介して油圧室18と連通している。ここで、進角油圧室83、84、85に供給される作動油の油圧は第1流体圧力である。切換弁42は電子制御装置(ECU)43からの指示により、油路15および17と油圧ポンプ40およびドレイン41との接続状態を切換える。
【0028】
拘束手段の遅角側解除油圧は、図6に矢印で示す遅角側設定範囲に設定されている。すなわち、図6に示すように、第2受圧面に作用する圧力は、進角スプリングトルクつまり捩じりスプリング60の付勢力から高油温時のアイドル時のカムシャフト1の平均駆動トルクを差引いたトルクを発生するときの圧力以上、かつ高油温時のアイドル時のカムシャフト1の変動トルクの負ピークトルクよりも大きいトルクを発生するときの圧力以下に設定されている。
【0029】
また、拘束手段の進角側解除油圧は、図6に矢印で示す進角側設定範囲に設定されている。すなわち、図6に示すように、第1受圧面に作用する圧力は、捩じりスプリング60の付勢力と第1流体圧力とにより最進角時に発生するトルクが高油温時のアイドル時のカムシャフト1の変動トルクの正ピークトルクよりも大きくなるように設定されている。
【0030】
次に、バルブタイミング調整装置1の作動を説明する。
(1) エンジンが正常停止すると、遅角油圧室80、81、82はドレン側に解放され、各進角油圧室83、84、85には作動油圧が加わった状態で保持されるようにECU43からの指示により切換弁42が切換制御される。すると、シューハウジング7に対しベーンロータ4が最進角位置に移動し、拘束手段によりタイミングプーリ8とベーンロータ4とが結合されるので、タイミングプーリ8に対してカムシャフト1が最進角位置に保持される。
【0031】
本実施例では、図2に示す最進角状態において排気弁と吸気弁との開弁期間が重複しないように設計されているので、内部EGR量を低減でき、エンジンは正常に始動する。エンジンが始動しても、各油路および各油圧室に加わる作動油圧が所定圧より大きくなるまでは、拘束手段によりタイミングプーリ8とベーンロータ4とは結合された状態に保持されているので、タイミングプーリ8に対してカムシャフト1は最進角位置にある。
【0032】
(2) エンジンが正常運転に移行し各油路および各油圧室に所定圧よりも油圧の大きい作動圧油が導入されると、高油温時のアイドル時のカムシャフト1の変動トルクの負ピークトルクにより第2受圧面に圧力が作用し、拘束手段によるタイミングプーリ8とベーンロータ4との結合が解除される。このとき、ストッパピストン17にせん断力がかかって引掛かることなくタイミングプーリ8とベーンロータ4との拘束を速やかに解除することができる。したがって、遅角油圧室80、81、82と、進角油圧室83、84、85とに加わる作動油圧により、捩じりスプリング60の付勢力に関係なく、シューハウジング7に対してベーンロータ4が相対回動し、タイミングプーリ8に対するカムシャフト71の相対位相差が調整される。
【0033】
(3) エンジン異常停止時、捩じりスプリング60の付勢力が高油温時のアイドル時のカムシャフト1の平均駆動トルクよりも大きいので、各油路および各油圧室に油圧がなくてもベーンロータ4が最進角側へ保持された状態で停止し、再始動時正常に始動することができる。また、第1受圧面に作用する圧力は、捩じりスプリング60の付勢力と第1流体圧力とにより最進角時に発生するトルクが高油温時のアイドル時のカムシャフト1の変動トルクの正ピークトルクよりも大きい。このため、エンジンが異常停止して油圧制御が途中で打ち切られクランクシャフトに対しカムシャフト1が最進角位置で停止できない場合、カムシャフト1が受ける駆動トルクによりベーンロータ4が進角側へ変位したとき、拘束手段によりロックされ最進角位置で保持されるので、エンジンを正常に始動させることが可能である。さらに、エンジン始動時油圧が低下し、高油温時のアイドル時のカムシャフト1の変動トルクの正ピークトルクに耐えるだけの油圧を発生することができなくなった場合、タイミングプーリ8とベーンロータ4とを速やかに拘束状態にし、シューハウジング7とベーンロータ4との打音の発生を確実に防止することができる。
【0034】
本実施例においては、捩じりスプリング80の付勢力は、高油温時のアイドル時のカムシャフト1の平均トルク以上、かつこの平均トルクの2倍以下である。このため、エンジンのアイドル以上の常用回転域において、油圧がなくてもベーンロータ4を進角方向に回動することが可能になり、排気弁を最進角位置に移動することが可能となる。したがって、排気弁と吸気弁とが重複して開弁するオーバーラップ期間を少なくともエンジン始動可能な程度に減少可能であるため、内部EGR量を低減することができ、エンジンの始動性を向上することができる。さらに、未燃燃料が排ガス中に排出されるのを防止するので、排ガスの浄化効果を向上することができる。さらにまた、シューハウジング7に形成される各油圧室に流入される油の流量を減少することにより、位相変換の応答性を改善することができる。
【0035】
また本実施例においては、排気弁を駆動する際にカムシャフト1が正、負のトルク変動を受けても、ベーンロータ4はシューハウジング7に対して遅角側および進角側への動きを規制されることにより相対的な回転振動を発生することはなく、シューハウジング7とベーンロータ4とが衝突して打音を発生するのを防止することができる。
【0036】
以上説明した本実施例では、拘束手段によりタイミングプーリ8とベーンロータ4とを最進角位置で結合し、排気弁と吸気弁との開弁期間が重複しないようにしたが、本発明では、エンジンが正常に始動し運転状態に移行できる範囲内であれば排気弁と吸気弁との開弁期間は重複してもよく、拘束手段によるハウジング部材とベーン部材との結合位置は最進角位置よりも遅角側でも良い。
【0037】
また本実施例では、ベーンを三つ有するベーンロータ4について説明したが、本発明では、ベーンの数は構成上可能であれば一つまたはそれ以上のいくつでも構わない。
また本実施例では、ストッパピストン17がベーンロータ4の軸方向に移動してテーパ穴に嵌合する構成としたが、本発明では、ストッパピストンがベーンロータの径方向に移動してテーパ穴に嵌合する構成としてもよいし、シューハウジングにストッパピストンを収容することも可能である。
【0038】
また本実施例では、タイミングプーリによりクランクシャフトの回転駆動力をカムシャフトに伝達する構成を採用したが、チェーンスプロケットやタイミングギア等を用いる構成にすることも可能である。また、駆動軸としてのクランクシャフトの駆動力をベーンロータで受け、従動軸としてのカムシャフトとシューハウジングとを一体に回転させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例によるバルブタイミング調整装置を示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII −III 線断面図である。
【図4】図1の主要部拡大図である。
【図5】図2のV−V線断面図である。
【図6】本発明の一実施例の拘束手段の解除油圧の設定範囲を説明するための特性図である。
【符号の説明】
1 カムシャフト(従動軸)
4 ベーンロータ
4a、4b、4c ベーン(ベーン部材)
7 シューハウジング(ハウジング部材)
8 タイミングプーリ(ハウジング部材)
16 スプリング(第2の付勢手段)
18 油圧室
17 ストッパピストン(当接部)
27 油圧室
50 フロント部材(ハウジング部材)
54a テーパ穴(被当接部)
55 扇状空間部(収容室)
60 捩じりスプリング(第1の付勢手段)
80、81、82 遅角油圧室
83、84、85 進角油圧室
100 バルブタイミング調整装置

Claims (4)

  1. 内燃機関の駆動軸から内燃機関の排気弁を開閉する従動軸に駆動力を伝達する駆動力伝達系に設けられ、前記駆動軸または前記従動軸のいずれか一方とともに回転するハウジング部材と、
    前記駆動軸または前記従動軸の他方とともに回転し、前記ハウジング部材内に形成された収容室に所定角度範囲に限って前記ハウジング部材に対して相対回動可能に収容されるベーン部材と、
    流体圧力によって前記ハウジング部材と前記ベーン部材とのいずれか一方を他方に対して進角方向に相対回動させる進角室、および流体圧力によって前記ハウジング部材と前記ベーン部材とのいずれか一方を他方に対して遅角方向に相対回動させる遅角室に作動流体を供給する流体駆動式の駆動手段と、
    前記駆動軸に対し前記従動軸が進角する方向に前記ベーン部材を付勢する第1の付勢手段とを備え、
    前記第1の付勢手段の付勢力は、高油温時のアイドル時の前記従動軸の平均トルク以上、かつ前記平均トルクの2倍以下であることを特徴とするバルブタイミング調整装置。
  2. 前記ハウジング部材と前記ベーン部材とにそれぞれ設けられる当接部および被当接部であって、前記収容室の一方の周方向端部に前記ベーン部材が位置するときに互いに当接することにより前記ハウジング部材に対する前記ベーン部材の相対回動を拘束する当接部および被当接部、ならびに前記被当接部との当接方向へ前記当接部を付勢する第2の付勢手段を有し、前記第2の付勢手段の付勢力に抗し前記当接部を拘束解除方向に変位可能に構成される拘束手段を備え、
    前記当接部は、前記駆動手段から供給される流体圧力を受けて前記ハウジング部材と前記ベーン部材との拘束を解除する第1および第2受圧面を有し、前記第1受圧面には前記ハウジング部材に対して前記ベーン部材を進角方向に相対回転させるように前記駆動手段から供給される第1流体圧力が作用し、前記第2受圧面には前記ハウジング部材に対して前記ベーン部材を遅角方向に相対回転させるように前記駆動手段から供給される第2流体圧力が作用するように構成され、
    前記第1受圧面は、前記第2受圧面よりも受圧面積が小さいことを特徴とする請求項1記載のバルブタイミング調整装置。
  3. 前記第1受圧面に作用する圧力は、前記第1の付勢手段の付勢力と前記第1流体圧力とにより最進角時に発生するトルクが高油温時のアイドル時の前記従動軸の変動トルクの正ピークトルクよりも大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項2記載のバルブタイミング調整装置。
  4. 前記第2受圧面に作用する圧力は、前記第1の付勢手段の付勢力から前記平均トルクを差引いたトルクを発生するときの圧力以上、かつ高油温時のアイドル時の前記従動軸の変動トルクの負ピークトルクよりも大きいトルクを発生するときの圧力以下であることを特徴とする請求項2または3記載のバルブタイミング調整装置。
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