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JP3860768B2 - 酸素センサ素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素センサおよびその製法に関し、特に自動車等の内燃機関における空気と燃料の比率を制御するための酸素センサ素子及びその製法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
現在、自動車等の内燃機関においては、排出ガス中の酸素濃度を検出して、その検出値に基づいて内燃機関に供給する空気および燃料供給量を制御することにより、内燃機関からの有害物質、例えばCO、HC、NOxを低減させる方法が採用されている。
【0003】
この検出素子として、主として酸素イオン伝導性を有するジルコニアを主成分とする固体電解質からなり、一端が封止された円筒管の外面および内面にそれぞれ一対の電極層が形成された固体電解質型の酸素センサが用いられている。この酸素センサの代表的なものとしては、図6に示すように、ZrO2固体電解質からなり、先端が封止された円筒管31の内面には、センサ部として白金からなり空気などの基準ガスと接触する基準電極32が、また円筒管31の外面には排気ガスなどの被測定ガスと接触される測定電極33が形成されている。また、測定電極33の表面には、セラミック多孔質層34が形成されている。
【0004】
このような酸素センサにおいて、一般に、空気と燃料の比率が1付近の制御に用いられている、いわゆる理論空燃比センサ(λセンサ)としては、測定電極33の表面に、保護層としてセラミック多孔質層34が設けられており、所定温度で円筒管両側に発生する酸素濃度差を検出し、エンジン吸気系の空燃比の制御が行われている。この際、理論空燃比センサは約700℃付近の作動温度までに加熱する必要があり、そのために、円筒管の内側には、センサ部を作動温度まで加熱するため棒状ヒータ35が挿入されている。
【0005】
しかしながら、近年排気ガス規制の強化傾向が強まり、エンジン始動直後からのCO、HC、NOxの検出が必要になってきた。このような要求に対して、上述のように、ヒータ35を円筒管31内に挿入してなる間接加熱方式の円筒型酸素センサでは、センサ部が活性化温度に達するまでに要する時間(以下、活性化時間という。)が遅いために排気ガス規制に充分対応できないという問題があった。
【0006】
近年、この問題を回避する方法として、図7に示すように平板状の固体電解質の外面および内面に基準電極と測定電極それぞれ設けると同時に、セラミック絶縁体の内部に白金からなる発熱体を埋設したヒータを一体型した酸素センサ素子が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このヒータを一体化した酸素センサ素子は、上述の従来の間接加熱方式と異なり、直接加熱方式であるために急速昇温が可能ではあるが、連続通電加熱を行うと発熱体の抵抗が増加し、最終的に発熱体が断線するという問題があった。この原因について検討を重ねた結果、セラミック絶縁体の内部に略対称的に埋設された発熱体の間で、セラミック絶縁層内にNaやKなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属が、一対の発熱体間でマイグレーションを起しているためであることがわかった。
【0008】
従って、本発明は、酸素濃度などを検知するセンサ部と白金からなる発熱体を具備するヒータ部とを一体化してなり、連続通電加熱や急速昇温などの熱衝撃性に優れたヒータ寿命の長い酸素センサ素子を提供することを目的とした。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の問題について検討した結果、少なくとも平板状のジルコニア固体電解質の対向する面に、白金から成る測定電極と大気に接触する基準電極とを設けたセンサ部と、セラミック絶縁体に長手方向の中心軸に対して略対称位置に白金からなる発熱体を埋設してなるヒータ部を具備する酸素センサ素子において、センサ部とヒータ部とを積層して配置するとともに、前記略対称位置に設けられた各発熱体間に、前記セラミック絶縁層が存在せず、ジルコニアを主成分とする領域を設けることによって、NaやKのマイグレーションを有効に防止することができる結果、白金からなる発熱体の寿命が飛躍的に改善することができるのである。
【0010】
電気伝導性を有する固体電解質に埋設されたセラミック絶縁層中では、例えば発熱体やセラミック絶縁層中に含有されるNa、Kなどのアルカリ金属や、アルカリ土類金属は、セラミック絶縁層を介して略対称位置に形成された発熱体への通電により生じた電界により、セラミック絶縁層中を拡散してマイナス極側の高温部に移動(マイグレーション)して、濃縮し発熱体の電気抵抗を増大させ、その結果ヒータの断線が生じる。
【0011】
しかしながら、本発明によれば、センサ部とヒータ部とを積層するように配置するとともに、長手方向の中心軸に対して略対称となる位置に形成された2つの発熱体間に、電極およびセラミック絶縁層が存在せず、ジルコニアを主成分とする領域を形成することにより、一対の発熱体間でNa、K等の移動(マイグレーション)経路を遮断することができる結果、マイナス極側の高温部に移動(マイグレーション)して濃縮することがなく、発熱体の寿命を飛躍的に延ばすことができる。また、2つの発熱体間にジルコニアを主成分とする領域を形成することで強度を向上させることもできる。
【0012】
また、本発明によれば、通常、固体電解質とセラミック絶縁層の熱膨張係数が異なるため、熱膨張係数の差に起因する内部応力を減少させるため、セラミック絶縁層が酸素センサ素子の側面に露出していることが望ましい。これにより、センサ素子の急速昇温などの熱衝撃性を飛躍的に改善することができる。
【0013】
また、本発明ではセラミック絶縁層および白金発熱体中に存在するNa、Kのアルカリ金属や、アルカリ土類金属の含有量をそれぞれ50ppm以下にすることにより、通電加熱時のおけるマイグレーションの量を減少させることが出来き、さらに発熱体や酸素センサ素子の長寿命化を図ることが可能となる。
【0014】
さらに、本発明では製造コストの観点から、ジルコニア固体電解質と、白金からなる電極と、セラミック絶縁層と、発熱体とを同時に焼成することが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の酸素センサの基本構造の一例の概略平面図を図1(a)に、図1(a)におけるx−x断面図を図1(b)に示した。この酸素センサ素子は、一般的に理論空撚比センサ素子と呼ばれるものである。
【0016】
図1においては、センサ基板1は、ジルコニアからなる酸素イオン導電性を有するセラミック固体電解質基板3と、この固体電解質基板3の対向する表面には、空気に接する基準電極4と測定電極5とが形成されており、酸素濃度を検知するセンサ部を形成している。
【0017】
即ち、固体電解質基板3は先端が封止された平板状の中空形状からなり、この中空部が大気導入孔3aを形成している。そして、この中空内壁に、空気などの基準ガスと接触する基準電極4が被着形成され、この基準電極4と対向する固体電解質基板3の外面に、排気ガスなどの被測定ガスと接触する測定電極5が形成されている。また、排気ガスによる電極の被毒を防止する観点から、測定電極5表面には電極保護層としてセラミック多孔質層6が形成されている。
【0018】
また、上記センサ部1には、ヒータ部2が積層されるように一体的に設けられている。このヒータ部2は、5〜20μmの厚みの電気絶縁性を有するセラミック絶縁層7に厚みが5〜50μmの白金からなる発熱体8が埋設されている。
【0019】
そして、セラミック絶縁層7中に配設された発熱体8は、図2のy−y断面図に示すように、セラミック絶縁層7内に長手方向の中心軸Mに対して略対称位置に2本の発熱体8が埋設されており、酸素センサ素子の先端付近で、2本の発熱体8は接続されたパターンからなる。また、発熱体8は、リード端子9を経由して端子電極(図示せず)と接続されている。
【0020】
そして、端子電極、リード端子9を通じて発熱体8に電流を流すことにより発熱体8が発熱し、測定電極5と基準電極4と固体電解質基板3を加熱する仕組みとなっている。
【0021】
本発明によれば、この2本の発熱体8の間に、セラミック絶縁層7が存在せず、ジルコニアを主成分とする領域10を設けることが重要である。また、センサ部1とヒータ部2とを積層するように配置して、発熱体8の間に電極が存在しないようにすることも重要である。このセラミック絶縁層が存在せず、ジルコニアを主成分とする領域10は、400℃以上に加熱される領域に設けることが望ましく、発熱体8間の他、リード端子9間でも400℃以上に加熱される場合があることを考慮し、ヒータ端子9間にまで形成されていないことが望ましい。
【0022】
また、この領域10は、発熱体8間が隔離されていればよく、その幅は、0.05mm以上、好ましくは0.1mm以上あれば充分である。
【0023】
また、本発明によれば、セラミック絶縁層7は、図1(b)の横断面図に示すように、センサ素子1の側面にて露出していることが望ましい。例えば、ジルコニア固体電解質基板3とアルミナセラミック絶縁層7とは、通常、熱膨張係数が異なるため、熱膨張係数の差により内部応力が発生するが、センサ素子の側面においてセラミック絶縁層7を露出させることによりこの内部応力を減少させることが出来る。その結果、センサ素子の急速昇温などの熱衝撃に対して優れた性能を示す。
【0024】
また、本発明ではセラミック絶縁層7および白金からなる発熱体8ともに、Na、K等のアルカリ金属含有量が50ppm以下に制御されていることが望ましい。Na,K等は、通電時にセラミック絶縁層7中をマイグレーションして発熱体8の高温部のマイナス側に析出して発熱体の抵抗を増加させ、その結果ヒータ寿命の低下をもたらす。セラミック絶縁層7中および発熱体8中とも、Na、K等のアルカリ金属含有量はそれぞれ20ppm以下が特に好ましい。
【0025】
本発明によれば、センサ部が大気導入孔3aを有さず、基準電極4が固体電解質基板3中に埋設された構造からなる酸素センサ素子にも適用である。
【0026】
また、本発明は、図3に示すような広域空燃比センサ素子11に対しても適用できる。この空燃比センサ素子11は、平板状のジルコニア固体電解質12にセンサ素子を構成するための一対の内側電極13と外側電極14が形成されている。具体的には、空気と接する基準電極13と、それに対向する外面には排気ガスなどの被測定ガスと接する測定電極14が形成されて、ポンピングセルが形成されている。また、測定電極14の一部または全部が露出するような空間15が形成されており、且つ空間15上部には排気ガスを取り込むための小さな拡散孔16が形成されている。
【0027】
この拡散孔16としては、空間15に取り込む排気ガス量を調整できるものであればその形状と場所は問わない。例えば、空間15内の外側電極14上に多孔質体を形成して、これを拡散律速層としてもよい。また、拡散孔16および拡散律速層はセンサ素子の上面の他に、素子の側面や先端に形成してもよい。また、空間15の形状としては、四角形の他、長方形や、楕円形、円形であってもよい。
【0028】
本発明の酸素センサにおいて用いられる固体電解質は、ZrO2を含有するセラミックスからなり、安定化剤として、Y23およびYb23、Sc23、Sm23、Nd23、Dy23等の希土類酸化物を酸化物換算で1〜30モル%、好ましくは3〜15モル%含有する部分安定化ZrO2あるいは安定化ZrO2が用いられている。また、ZrO2中のZrを1〜20原子%をCeで置換したZrO2を用いることにより、イオン導電性が大きくなり、応答性がさらに改善されるといった効果がある。さらに、焼結性を改善する目的で、上記ZrO2に対して、Al23やSiO2を添加含有させることができるが、多量に含有させると、高温におけるクリープ特性が悪くなることから、Al23およびSiO2の添加量は総量で5重量%以下、特に2重量%以下であることが望ましい。
【0029】
固体電解質基板3や固体電解質基板12の表面に被着形成される基準電極4、13、測定電極5、14、さらにはリード端子9は、いずれも白金、あるいは白金と、ロジウム、パラジウム、ルテニウムおよび金の群から選ばれる1種との合金が用いられる。
【0030】
また、センサ動作時の電極中の金属の粒成長を防止する目的と、応答性に係わる金属粒子と固体電解質と気体との、いわゆる3相界面の接点を増大する目的で、上述のセラミック固体電解質成分を1〜50体積%、特に10〜30体積%の割合で上記電極中に混合してもよい。また、電極形状としては、四角形でも楕円形でもよい。また、電極の厚さは、3〜20μm、特に5〜10μmが好ましい。
【0031】
一方、発熱体8を埋設するセラミック絶縁層体7としては、相対密度が80%以上、開気孔率が5%以下の緻密質なセラミックスによって構成されていることが望ましい。この際、焼結性を改善する目的でMg、Ca、Siを総和で1〜10重量%含有していてもよいが、Na、K等のアルカリ金属の含有量としては、マイグレーションしてヒータ基板2の電気絶縁性を悪くするため酸化物換算で50ppm以下に制御することが望ましい。また、相対密度を上記の範囲とすることによって、基板強度が高くなる結果、酸素センサ自体の機械的な強度を高めることができるためである。なお、セラミックスとしては、アルミナセラミックス、AlとMgとの複合酸化物を主体とするセラミックス、Alと希土類元素との複合酸化物を主体とするセラミックスの群から選ばれる少なくとも1種からなることが耐食性、高強度化の点で望ましい。
【0032】
また、測定電極5の表面に形成されるセラミック多孔質層6は、厚さ10〜800μmで、気孔率が10〜50%のジルコニア、アルミナ、γ−アルミナおよびスピネルの群から選ばれる少なくとも1種によって形成されていることが望ましい。この多孔質層6の厚さが10μmより薄いか、あるいは気孔率が50%を超えると、電極被毒物質P、Si等が容易に電極に達して電極性能が低下する。それに対して、多孔質層6の厚さが800μmを超えるか、あるいは気孔率が10%より小さくなるとガスの多孔質層6中の拡散速度が遅くなり、電極のガス応答性が悪くなる。特に、多孔質層6の厚さとしては気孔率にもよるが100〜500μmが適当である。
【0033】
ヒータ基板2に埋設された発熱体8は、白金が用いられるが、場合によっては白金とロジウム、パラジウム、ルテニウムの群から選ばれる1種との合金を用いることができる。この場合、発熱体8とリード部の抵抗比率は室温において、9:1〜7:3の範囲に制御することが好ましい。発熱体の構造としては、左右で折り返す構造と長手方向で折り返す構造のいずれも用いることが可能である。
【0034】
なお、ヒータ基板2における発熱体8の発熱パターンとしては、図2に示したようなミアンダ(波型)構造のみならず、長手方向に伸び、長手方向の端部で折り返したU字構造であってもよい。
【0035】
次に、本発明の酸素センサの製造方法について、図1の酸素センサ素子を例に取りその製造方法を図4をもとに説明する。
【0036】
まず、図4に示すようにジルコニアのグリーンシート20を作製する。このグリーンシート20は、ジルコニアの酸素イオン導電性を有するセラミック固体電解質粉末に対して、適宜、成形用有機バインダーを添加してドクターブレード法や、押出成形や、静水圧成形(ラバープレス)あるいはプレス形成などの周知の方法により作製される。
【0037】
次に、上記のグリーンシート20の両面に、それぞれ測定電極5および基準電極4となるパターン21、リードパターン22、電極パッド23やスル−ホール24などを例えば、白金を含有する導電性ペーストを用いてスラリーデッィプ法、あるいはスクリーン印刷、パット印刷、ロール転写で印刷形成した後、大気導入孔25を形成したグリーンシート26をアクリル樹脂や有機溶媒などの接着剤を介在させるか、あるいはローラ等で圧力を加えながら機械的に接着することによりセンサ基板用積層体を作製する。
【0038】
なお、この時に測定電極5となるパターン21の表面に、セラミック多孔質層6を形成するための多孔質スラリーを印刷塗布形成してもよい次に、ジルコニアグリーンシート27表面に、例えば、アルミナからなるセラミックグリーンシート28aを形成する。この際、セラミックグリーンシート28aにセラミック絶縁層を形成しない領域29を形成する。この後、このセラミックグリーンシート28aの表面に白金を含有する導電性ペーストを用いて発熱体30およびリード部31をスラリーデッィプ法、あるいはスクリーン印刷、パット印刷、ロール転写で印刷形成し、さらにこの表面にもう一度、アルミナのセラミックグリーンシート28bを形成する。また、このセラミックグリーンシート28bに対しても、セラミック絶縁層を形成しない領域29を形成しておく。
【0039】
上記セラミック絶縁層は、上記のグリーンシート28a,28bを積層する代わりに、アルミナ粉末からなるペーストをスラリーデッィプ法、あるいはスクリーン印刷、パット印刷、ロール転写で印刷して形成することもできる。
【0040】
また、セラミック絶縁層を形成しない領域29を形成するには、予めセラミックグリーンシート28a,28bの所定箇所にパンチングなどによって開口するか、または領域29を除いてスラリーを塗布することによって形成することができる。また、この領域29は、凹部が形成されることになるため、この部分にはグリーンシート20を形成するジルコニアのペーストをスクリーン印刷、パット印刷、ロール転写を用いて、凹部に充填すればよい
【0041】
なお、グリーンシート27の裏面には、電極パッド32が設けられ、リード部31と、グリーンシート28aや27に形成されたスルーホール33を通じて、電極パッド32と接続されている。
【0042】
次に、上述のセンサ用積層体Aとヒータ用積層体Bをアクリル樹脂や有機溶媒などの接着剤を介在させるか、あるいはローラ等で圧力を加えながら両者を機械的に接着することにより接着して積層体を作製する。
【0043】
その後、積層体を焼成は、大気中または不活性ガス雰囲気中、1300℃〜1700℃の温度範囲で1〜10時間焼成する。この際、焼成時の反りを抑制するため、錘として平滑なアルミナ等の基板を積層体の上に置くことにより反り量を低減することができる。
【0044】
なお、測定電極表面のセラミック多孔質層は、焼成後、プラズマ溶射法等により,アルミナ、ジルコニア、スピネル等のセラミックを測定電極表面に形成して,作製することもできる。
【0045】
【実施例】
実施例1
図1に示すヒータを一体化した理論空燃比センサ素子を図4に従い以下のようにして作製した。
【0046】
まず、市販の純度が99.9%アルミナ粉末と、Siを0.1重量%含む5モル%Y23含有のジルコニア粉末と、平均粒子径が0.1μmで8モル%のイットリからなるジルコニア粉末を30体積%結晶内に含有する白金粉末と、アルミナ粉末を20体積%含有する白金粉末をそれぞれ準備した。
【0047】
まず、5モル%Y23含有のジルコニア粉末にポリビニルアルコール溶液を添加して坏土を作製し、押出成形により焼結後厚さが0.4mmになるようなジルコニアのグリーンシート20を作製した。その後、グリーンシート20の両面に8モル%のイットリアを含むジルコニア粉末を30体積%結晶内に含有する白金粉末をスクリーン印刷して、測定電極と基準電極のパターン21、リードパターン22、電極パッド23を印刷形成した後、大気導入孔25を形成したグリーンシート26をアクリル樹脂の密着剤により積層しセンサ用積層体Aを得た。
【0048】
次に、ジルコニアのグリーンシート27表面に上記のアルミナ粉末からなるペーストを用いて、スクリーン印刷により焼成後10μmの厚みになるように、略対称的に配置される発熱体パターン30の間に空間の領域29を設けた本発明のセラミック絶縁層28aを形成した。その後、アルミナ粉末を含有する白金を用いて、焼成後ヒータの厚みが約15μmとなるようにスクリーン印刷により発熱体パターン30とリードパターン31を形成した。そして、その表面にもう一度セラミック絶縁層28bを焼成後10μmになるように形成した。その後、空間領域29にはジルコニアのスラリーをスクリーン印刷にて充填し、空間領域29を閉塞して、ヒータ用積層体Bを作製した。
【0049】
この際、比較のために発熱体パターンの間に空間領域29を形成しないヒータ用積層体も合わせて作製した。また、セラミック絶縁層28a,28b中および発熱体パターン30中の、NaおよびK(アルカリ金属の合計量)はいずれも20〜30ppmであった。
【0050】
この後、センサ用積層体Aとヒータ用積層体Bを接合してヒータ一体化センサ素子の積層体を1500℃、1時間焼成してヒータ一体化酸素センサ素子を作製した。
【0051】
作製した酸素センサ素子において、ヒータ端子電極間に12Vを印加してセンサ素子を、大気中5000時間連続加熱(素子温度約700℃)し、所定時間毎に室温(20℃)において発熱体の抵抗値を求めた。
【0052】
その結果を図5に示す。発熱体間にセラミック絶縁層が存在せず、ジルコニアを主成分とする領域を形成した試料No.1のヒータ抵抗値の増加は小さかった。それに対して、発熱体間に前記領域を設けていない試料No.2では、2000時間を過ぎてヒータの抵抗値が急激に増加して、3900時間後に断線した。
【0053】
実施例2
実施例1と同様にしてセンサ用積層体Aを作製した。
【0054】
そして、実施例1と同様にしてヒータ用積層体Bを形成するにあたり、セラミック絶縁層が図1に示すように端面に露出したものと、図7に示すように、セラミック絶縁層が固体電解質基板3の内部に埋設されているものを作製した。
【0055】
このようにして、形成したヒータ用積層体と実施例1で作製したセンサ用積層体を接合して、大気中1500℃、30分間焼成して、素子端面にセラミック絶縁層が露出したものと、露出していないヒータ一体化した酸素センサ素子をそれぞれ5個ずつ作製した。
【0056】
その後、それぞれのセンサ素子の発熱体に12V印加して、室温から約700℃まで1分で加熱し、その後、印加電圧を切ってファンによる強制空冷により、室温まで1分で素子を冷却するという温度サイクルを行い、これ1サイクルとして素子が破壊するまでのサイクル数を求めた。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
Figure 0003860768
【0058】
表1より、セラミック絶縁層がセンサ素子の側面に露出していないセンサ素子は、5万〜7万サイクルによりセンサ素子が破壊することがわかる。それに対して、本発明のセラミック絶縁層が素子の側面に露出したセンサ素子は、12万〜14万サイクルと良好な耐熱衝撃性を示した。
【0059】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明によれば、センサ部1とヒータ部2とを積層するように配置するとともに、略対称位置に設けられた各発熱体間に、セラミック絶縁層が存在せず、ジルコニアを主成分とする領域を設けることによって、NaやKのマイグレーションを有効に防止することができる結果、白金からなる発熱体の寿命が飛躍的に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酸素センサ素子の一例を説明するための(a)概略平面図と、(b)概略x−x断面図である。
【図2】本発明の酸素センサ素子の発熱体形成箇所でのy−y断面図である。
【図3】本発明における他の酸素センサ素子の概略断面図である。
【図4】図1の酸素センサ素子の製造方法を説明するための分解斜視図である。
【図5】本発明の実施例における特性変化を観察するためのものである。
【図6】従来の円筒型のヒータ一体型酸素センサ素子の構造を説明するための概略断面図である。
【図7】従来の他の平板型のヒータ一体型酸素センサ素子の構造を説明するための概略斜視図を示した。
【符号の説明】
1 センサ部
2 ヒータ部
3 固体電解質
4 基準電極
5 測定電極
6 セラミック多孔質層
7 セラミック絶縁層

Claims (4)

  1. 少なくとも平板状のジルコニア固体電解質の対向する面に、白金から成る測定電極と大気に接触する基準電極とを設けたセンサ部と、セラミック絶縁層に長手方向の中心軸に対して略対称位置に白金からなる発熱体を埋設してなるヒータ部を具備する酸素センサ素子において、前記センサ部と前記ヒータ部とが積層されて配置されているとともに、前記略対称位置に設けられた各発熱体間に、前記セラミック絶縁層が存在せず、ジルコニアを主成分とする領域を設けたことを特徴とする酸素センサ素子。
  2. 前記ヒータ部におけるセラミック絶縁層が、酸素センサ素子の側面に露出していることを特徴とする請求項1記載の酸素センサ素子。
  3. 前記セラミック絶縁層および発熱体中におけるアルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量が50ppm以下であることを特徴とする請求項1記載の酸素センサ素子。
  4. 前記ジルコニア固体電解質、前記測定電極、前記基準電極、前記セラミック絶縁層、前記発熱体を同時に焼成してなることを特徴とする請求項1記載の酸素センサ素子。
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