JP3860048B2 - ドラムブレーキ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブレーキシューのドラムへの押圧力をブレーキ力に応じて制御して、ブレーキの高い効きと安定性を確保することができ、しかも、ブレーキ装置の電動化にも適するドラムブレーキ装置に関し、詳しくは、制動解除時のブレーキシューの戻り不良による引き摺りの発生を防止するための改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両の走行を制動するために種々の形式のドラムブレーキ装置が用いられているが、これらのドラムブレーキ装置は、略円筒状のドラムの内周面に押圧されるブレーキシューの配置によって、リーディングトレーリング式やツーリーディング式、若しくはデュオサーボ式等に分類される。
【0003】
デュオサーボ式のドラムブレーキ装置は、一般に、円筒状のドラム内に、互いに対向して配置されたプライマリシューとセカンダリシューの一対のブレーキシューを備える。
プライマリシューは、ドラムの前進回転方向入口側が入力部とされると共に、ドラムの前進回転方向出口側は例えばアジャスタを介してセカンダリシューの入口側に連結される。一方、セカンダリシューの出口側はバッキングプレート上に装備されたアンカ部に当接させられ、プライマリシュー及びセカンダリシューに作用するブレーキ力(制動トルク)をアンカ部で受け止めるようになっている。
【0004】
これにより、プライマリシュー及びセカンダリシューを拡開させてドラムの内周面に押し付けると、プライマリシューに作用するブレーキ力がセカンダリシューの入口側に入力してセカンダリシューをドラム内周面に押し付けるように作用するため、プライマリシューとセカンダリシューの双方に自己サーボ作用が働き、非常にゲインの高い制動力を得ることができる。
【0005】
前述したデュオサーボ式ドラムブレーキ装置は、リーディングトレーリング式やツーリーディング式のドラムブレーキ装置と比較して、極めて高い制動力を得ることができるばかりでなく、小型化し易く、かつパーキングブレーキの組み込みも容易である等の多くの長所を有している。
ところが、このようなデュオサーボ式ドラムブレーキ装置は、ブレーキシューのライニングの摩擦係数の変化に敏感であるため、制動力を安定させにくい傾向にあり、制動力を安定化させる工夫が要求されている。
【0006】
また、最近の車両用のブレーキ装置は、アンチロックブレーキシステムを始めとするブレーキ機能のインテリジェント化や、環境汚染の軽減等に適した電気自動車(EV車)等への対応のため、ブレーキ装置の電動化も重要課題とされている。
【0007】
このような背景から、本願出願人は、制動時にブレーキシューを拡開するシュー駆動機構として、サービスブレーキ時に操作力発生手段から入力レバーに伝達されるシュー操作力に応じて一対のブレーキシューを拡開してドラムに押圧する一方、制動時にアンカピンに作用するブレーキ力がシュー操作力に対して所定倍率に達するとシュー操作力の作用を減ずる方向の制動制限力を入力レバーに作用させるリンク機構を、既に提案している。
このリンク機構を使用することで、デュオサーボ式ドラムブレーキ装置における制動力の安定化が図れ、更に、上記の操作力発生手段として、従来の液圧式のホイールシリンダの代わりに、電動モータ等を利用した電動式の操作力発生手段を採用するだけで、ブレーキ装置の電動化も容易に実現することができた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ドラムブレーキ装置では、一般的に、制動解除時の各ブレーキシューの戻しは、シューリターンスプリングによる引張力によって行っている。そして、従来の場合、このシューリターンスプリングは、アンカピンと該アンカピンから所定距離離れたブレーキシューのウェブ上の所定位置との間に張り渡されている。
【0009】
しかし、制動時には、入力側のブレーキシューのアンカピン側の端部は、拡径動作により、アンカピンの装備位置よりも大径のドラム側に変位していて、シューリターンスプリングの戻し力の作用線上から外れてしまう。
そのため、制動解除時に、入力側のブレーキシューの端部を正確にアンカピンに戻すには、ブレーキシューの端部をアンカピン側に向ける回転力が必要となり、シューリターンスプリングによる直線的な引張力だけでは正確にアンカピンに戻すことが難しくなり、戻り不良等によって、ブレーキシューの引き摺りを発生する虞があった。
【0010】
また、シュー駆動機構としてのリンク機構を採用した場合、ブレーキシューを拡開するリンク機構側の機構部材とブレーキシューとの当接部の形態の如何によって制動動作時にブレーキシューの端部に偏荷重が作用し、制動解除時のブレーキシューの戻りを妨げて、ブレーキシューの引き摺りを発生する虞があった。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、ブレーキ力に応じ制動力を制御可能で、ブレーキの安定した効きを確保できると同時に、制動解除時のブレーキシューの戻りを確実にして、ブレーキシューの引き摺りを発生させない信頼性の高いドラムブレーキ装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係る請求項1記載のドラムブレーキ装置は、ドラム内に対向配置される一対のブレーキシューと、これら一対のブレーキシューの一方の対向端側においてバッキングプレートに立設されたアンカピンと、制動操作に応じたシュー操作力を発生する操作力発生手段と、前記アンカピン周りを回転可能なカム板とこのカム板に支持されたカムピンとを有するシュー駆動カムとを備え、前記操作力発生手段の発生するシュー操作力を受けて前記カム板が前記アンカピン周りを回転して前記カムピンにより前記ブレーキシューを拡開すると共に、制動時には前記ブレーキシューから前記カムピンに作用するブレーキ力に応じて前記カム板が前記シュー操作力の作用を減ずる方向に回転して制動力を制御するドラムブレーキ装置において、
前記カムピンが、前記カム板に回転自在に支持された本体軸部と、前記ブレーキシューに当接する外周面の曲率中心が前記本体軸部の中心軸に対して偏心した位置に設定されたカム軸部とを具備して構成されることを特徴とする。
【0013】
このように構成されたドラムブレーキ装置においては、制動操作時には、操作力発生手段の出力するシュー操作力を受けたシュー駆動カムのカム板がアンカピン周りに回転し、このカム板の回転に伴い、カム板上の各カムピンが各ブレーキシューを拡開して、制動力を発生させる。そして、制動時には、出力側のブレーキシューからカムピンに作用するブレーキ力に応じてカム板がシュー操作力の作用を減ずる方向に回転して制動力を制限する。
【0014】
また、制動時に各ブレーキシューの端部をドラム側に押圧するシュー駆動カム上の各カムピンは、各ブレーキシューの端部に当接するカム軸部がカム板に回転自在に支持された本体軸部の中心軸から偏心して設けられていて、制動開始時や制動解除時に、各ブレーキシューから各カムピンに偏荷重が作用すると、各カムピンの本体軸部の回転により、各ブレーキシューの拡径方向及び縮径方向への変位を許容して、偏荷重の作用を軽減する。
【0015】
また、本発明に係る請求項2記載のドラムブレーキ装置は、上記請求項1記載のドラムブレーキ装置において、前記本体軸部の中心軸と、前記カム軸部の外周面の曲率中心と、前記カム軸部の外周面及びブレーキシューの接触点とが、制動解除時に前記ブレーキシューを戻すシューリターンスプリングの付勢力の作用線上に略一直線状に並ぶように、前記本体軸部の中心軸付近に前記シューリターンスプリングを係止させることを特徴とする。
【0016】
そして、制動時に拡径変位したブレーキシューから作用する偏荷重によってカムピンが本体軸部を中心に回転すると、各カムピン上のブレーキシューとの接触点がシューリターンスプリングの付勢力の作用線上からドラム内面側に外れるが、本体軸部の中心軸付近にシューリターンスプリングの一端部を係止させているため、シューリターンスプリングの付勢力が、作用線上から外れた接触点を作用線上に戻そうとする回転モーメントを各カムピンに作用させる。
従って、制動解除時には、カム板の復帰動作に伴い、シューリターンスプリングの付勢力によって各カムピンの回転も初期状態に速やかに戻り、シューリターンスプリングの戻し力だけでも、ブレーキシューの端部をカムピンの動きに追従させて速やかに初期位置に戻すことが可能になる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るドラムブレーキ装置の好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係るドラムブレーキ装置の一実施の形態の正面図である。
この実施の形態のドラムブレーキ装置1は、所謂、デュオサーボ式ドラムブレーキ装置で、略円筒形のドラム内の空間に対向配備されるプライマリシュー3及びセカンダリシュー4の一対のブレーキシュー3,4と、これら一対のブレーキシュー3,4の一方の対向端側に配設されてサービスブレーキの操作時にこれら各ブレーキシュー3,4をドラムに押圧するためのシュー操作力を発生する操作力発生手段6と、この操作力発生手段6の発生する操作力を各ブレーキシュー3,4に伝達するシュー駆動機構であるシュー駆動カム7と、各ブレーキシュー3,4の他方の対向端間に配設されてプライマリシュー3の出力をセカンダリシュー4に入力するリンク機能を兼ねたアジャスタユニット8と、これらの構成部材を支持するバッキングプレート上に立設されたアンカピン10とを備えている。
【0018】
なお、図1では、バッキングプレートやドラムの図示は省略している。また、各ブレーキシュー3,4の端部相互を互いに接近する方向に付勢するシューリターンスプリングや、アジャスタユニット8を駆動する機構等も、図示を省略している。
なお、図示せぬドラムは、バッキングプレートと同心で、車両の前進時には図1の矢印R方向に回転する。
【0019】
また、ブレーキシュー3,4は、ドラムの内周面に向かって移動可能に、図示せぬシューホールドダウン装置によりバッキングプレートに取り付けられている。 そして、各ブレーキシュー3,4の操作力発生手段6側の端部は、図2に拡大して示すように、シューリターンスプリング91,92を介して、それぞれのシューの端部が互いに接近する方向(即ち、ドラムから離間する方向)に付勢されている。
また、各ブレーキシュー3,4のアジャスタユニット8側の端部相互も、図示せぬシュートゥシュースプリングの付勢力によって、アジャスタユニット8の端部に当接した状態が維持されるように付勢されている。
【0020】
本実施の形態の場合、操作力発生手段6は、サービスブレーキ用のブレーキペダル等のブレーキ操作に応じて出力ロッド6aを矢印(イ)方向に進出させて、シュー操作力W(図3参照)となる押圧力を出力するホイールシリンダである。
【0021】
アジャスタユニット8は、本来は、各ブレーキシュー3,4のライニングの摩耗の進行に応じて、これらのブレーキシュー3,4の端部間の間隔を調整するもので、制動時のブレーキシュー3,4の変位量に応じて回転するアジャスタレバーの回転により調整用歯車8aを回転操作して、ブレーキシュー3,4の端部間の間隔を自動調整するように構成される。
【0022】
本実施の形態のシュー駆動カム7は、図2乃至図4に示すように、ピン嵌合穴76aによってアンカピン10に回転自在に支持されるカム板76上に、プライマリシュー3の端部に当接するシュー係合カム部としてのプライマリカムピン21と、セカンダリシュー4の端部に当接するシュー係合カム部としてのセカンダリカムピン23と、操作力発生手段6からシュー操作力Wを受ける入力受け部としての入力ピン25とを設けた構成である。
【0023】
プライマリカムピン21及びセカンダリカムピン23は、アンカピン10を挟んで、プライマリカムピン21がドラムの半径方向外側の位置に、セカンダリカムピン23がドラムの半径方向内側の位置に配置されている。
そして、入力ピン25は、セカンダリカムピン23よりも更に半径方向内径側に離間した位置に配置されている。
【0024】
また、本実施の形態の場合、図2にも示すように、上記の各カムピン21,23は、カム板76に回転自在に支承された本体軸部21a,23aと、ブレーキシュー3,4に当接する外周面の曲率中心C21,C23が本体軸部21a,23aの中心軸O21,O23に対して偏心した位置に設定されたカム軸部21b,23bとを具備した構成である。
【0025】
また、組み付け時に、本体軸部21a,23aの中心軸O21,O23と、カム軸部21b,23bの外周面の曲率中心C21,C23と、カム軸部21b,23bの外周面及びブレーキシュー3,4の接触点T21,T23とが、制動解除時にブレーキシュー3,4を戻すシューリターンスプリング91,92の付勢力の作用線l3 ,l4 上に略一直線状に並ぶように、本体軸部21a,23aの中心軸付近にシューリターンスプリング91,92の一端部を係止させている。
なお、図示はしないが、本体軸部21a,23aの中心軸付近のシューリターンスプリング91,92の係止部は、例えば、アンカピン10に取り付けられる別体のスプリングブラケット等によって提供することができる。
【0026】
以上のシュー駆動カム7では、例えば前進制動時には、図3に示すように、入力ピン25に操作力発生手段のシュー操作力Wを受けることで、カム板76に図中反時計方向の回転を生じさせ、カム板76上の各カムピン21,23を介して各ブレーキシュー3,4を拡開方向に押圧して制動力を発生させる。そして、制動時には、出力側のブレーキシュー(前進制動時であればセカンダリシュー4、後進制動時であればプライマリシュー3)からカムピン23(前進制動時)を介してカム板76に作用するブレーキ力Faを利用して、シュー操作力の作用を減ずる方向(即ち、時計方向)の回転モーメントM3 をカム板76に働かせることで、制動力を制御する。
【0027】
図3において、シュー駆動カム7の入力ピン25とアンカピン10との間の離間距離をL1 、操作力発生手段6から入力するシュー操作力をWとすると、シュー操作力Wによってカム板76に働く反時計方向の回転モーメントM1 は、
M1 =W×L1 ……(1)
である。
また、プライマリカムピン21がプライマリシュー3をドラムに押圧する力をF0 、アンカピン10とプライマリカムピン21との間の離間距離をL2 とすると、プライマリシュー3からの反力によってカム板76に作用する時計方向の回転モーメントM2 は、
M2 =F0 ×L2 ……(2)
である。
【0028】
また、図3に示す前進制動時において、セカンダリシュー4からセカンダリカムピン23を介してカム板76に作用するブレーキ力をFa、セカンダリカムピン23とアンカピン10との間の離間距離をsとすると、カム板76に作用するブレーキ力Faによってカム板76に働く時計方向の回転モーメントM3 は、 M3 =Fa×s ……(3)
である。
シュー駆動カム7は、これらの(1)〜(3)に示す回転モーメントがつり合うように、制動力を制御する。
【0029】
以上に説明したドラムブレーキ装置1において、前進制動時には、出力側のブレーキシュー4からカムピン23に作用するブレーキ力Faが、カム板76にシュー操作力Wの作用を低減させる方向の回転モーメントM3 を発生させて制動力を制限するため、安定したブレーキの効きを確保することができる。
なお、詳述はしないが、後進制動時には、出力側のブレーキシュー3からカムピン21に作用するブレーキ力Faが、シュー操作力Wによるカム板76の回転を低減させる方向の回転モーメントを発生させて制動力を制限することで、同様に、安定したブレーキの効きを確保することができる。
【0030】
また、以上のシュー駆動カム7は、操作力発生手段6と各ブレーキシュー3,4との間に配置されて制動力の制御をメカ的に行うため、操作力発生手段6としては、従来の油圧式ホイールシリンダ等の液圧式のアクチュエータだけでなく、電動モータ等の電動式のアクチュエータを使用することができ、ブレーキ機能のインテリジェント化や車両のハイブリッド化等のための電動化も容易にできる。
【0031】
また、本実施の形態のシュー駆動カム7は、制動時に各ブレーキシュー3,4の端部をドラム側に押圧する各カムピン21,23は、各ブレーキシューの端部に当接するカム軸部21b,23bがカム板76に回転自在に支持された本体軸部21a,23aの中心軸O21,O23から偏心して設けられていて、制動開始時や制動解除時に、各ブレーキシュー3,4から各カムピン21,23に偏荷重が作用すると、各カムピン21,23の本体軸部21a,23aの回転により、各ブレーキシュー3,4の拡径方向及び縮径方向への変位を許容して、偏荷重の作用を軽減する。
【0032】
また、組み付け時には、各カムピン21,23の本体軸部21a,23aの中心軸O21,O23と、カム軸部21b,23bの外周面の曲率中心C21,C23と、カム軸部21b,23bの外周面及びブレーキシュー3,4の接触点T21,T23とが、制動解除時にブレーキシュー3,4を戻すシューリターンスプリング91,92の付勢力の作用線l3 ,l4 上に略一直線状に並ぶように、本体軸部21a,23aの中心軸O21,O23付近にシューリターンスプリング91,92の一端を係止させている。
そのため、制動時に拡径変位したブレーキシュー3,4から作用する偏荷重によってカムピン21,23が本体軸部21a,23aを中心に回転すると、図4に示すように、各カムピン21,23上のブレーキシュー3,4との接触点T21,T23がシューリターンスプリング91,92の付勢力の作用線l3 ,l4 上からドラム内周面側に外れるが、シューリターンスプリング91,92の付勢力が、作用線l3 ,l4 上から外れた接触点T21,T23を作用線l3 ,l4 上に戻そうとする回転モーメントM4 ,M5 を各カムピン21,23に作用させる。
従って、制動解除時には、カム板76の復帰動作に伴い、シューリターンスプリング91,92の付勢力によって各カムピン21,23の回転も初期状態に速やかに戻り、シューリターンスプリング91,92の戻し力だけでも、ブレーキシュー3,4の端部をカムピン21,23の動きに追従させて速やかに初期位置に戻すことが可能になり、ブレーキシュー3,4の戻り不良に起因する引き摺りの発生を解消することができる。
【0033】
なお、本実施の形態では、ブレーキシュー3とアンカピン10との干渉を避けるために、アンカピン10の外周面の一部を、平坦面10aに切除している。これにより、カムピン21をアンカピン10に接近させた高密度な部品配置が可能になり、シュー駆動カム7のコンパクト化が実現される。
【0034】
また、本実施の形態では、カムピン21,23のカム軸部21b,23bは横断面形状が真円形であるが、カム軸部21b,23bの外周面を真円形以外の曲面に設定することも可能である。その場合には、ブレーキシューに当接するカム軸部の外周の曲面の曲率中心を、本体軸部21a,23aの中心軸から偏心させた位置に設定する。
【0035】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1に記載した本発明のドラムブレーキ装置によれば、制動操作時には、操作力発生手段の出力するシュー操作力を受けたシュー駆動カムのカム板がアンカピン周りに回転し、このカム板の回転に伴い、カム板上の各カムピンが各ブレーキシューを拡開して、制動力を発生させる。そして、制動時には、出力側のブレーキシューからカムピンに作用するブレーキ力が、カム板にシュー操作力の作用を低減させる方向の回転モーメントを発生させて制動力を制限するため、安定したブレーキの効きを確保することができる。
【0036】
また、シュー駆動カムは、操作力発生手段と各ブレーキシューとの間に配置されて制動力の制御をメカ的に行うため、操作力発生手段としては、従来の油圧式ホイールシリンダ等の液圧式のアクチュエータだけでなく、電動モータ等の電動式のアクチュエータを使用することができ、ブレーキ機能のインテリジェント化や車両のハイブリッド化等のための電動化も容易にできる。
【0037】
さらに、制動時に各ブレーキシューの端部をドラム側に押圧するシュー駆動カム上の各カムピンは、各ブレーキシューの端部に当接するカム軸部がカム板に回転自在に支持された本体軸部の中心軸から偏心して設けられていて、制動開始時や制動解除時に、各ブレーキシューから各カムピンに偏荷重が作用すると、各カムピンの本体軸部の回転により、各ブレーキシューの拡径方向及び縮径方向への変位を許容して、偏荷重の作用を軽減する。
【0038】
また、請求項2に記載した本発明のドラムブレーキ装置によれば、各カムピンの本体軸部の中心軸と、カム軸部の外周面の曲率中心と、カム軸部の外周面及びブレーキシューの接触点とが、制動解除時にブレーキシューを戻すシューリターンスプリングの付勢力の作用線上に略一直線状に並ぶように、本体軸部の中心軸付近にシューリターンスプリングを係止させている。
そのため、制動時に拡径変位したブレーキシューから作用する偏荷重によってカムピンが本体軸部を中心に回転すると、各カムピン上のブレーキシューとの接触点がシューリターンスプリングの付勢力の作用線上からドラム内面側に外れるが、シューリターンスプリングの付勢力が、作用線上から外れた接触点を作用線上に戻そうとする回転モーメントを各カムピンに作用させる。
従って、制動解除時には、カム板の復帰動作に伴い、シューリターンスプリングの付勢力によって各カムピンの回転も初期状態に速やかに戻り、シューリターンスプリングの戻し力だけでも、ブレーキシューの端部をカムピンの動きに追従させて速やかに初期位置に戻すことが可能になり、ブレーキシューの戻り不良に起因する引き摺りの発生を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るドラムブレーキ装置の一実施の形態の要部正面図である。
【図2】図1に示したシュー駆動カムの拡大正面図である。
【図3】図1に示したシュー駆動カムの前進制動時における動作説明図である。
【図4】図1に示したシュー駆動カムの前進制動時における各カムピンの回転挙動の説明図である。
【符号の説明】
1 ドラムブレーキ装置
3 プライマリシュー(ブレーキシュー)
3d 接触面
4 セカンダリシュー(ブレーキシュー)
4d 接触面
6 操作力発生手段(ホイールシリンダ)
7 シュー駆動カム(シュー駆動機構)
8 アジャスタユニット
10 アンカピン
10a 平坦面
21 プライマリカムピン(カムピン)
23 セカンダリカムピン(カムピン)
21a,23a 本体軸部
21b,23b カム軸部
25 入力ピン
76 カム板
91,92 シューリターンスプリング
Claims (2)
- ドラム内に対向配置される一対のブレーキシューと、これら一対のブレーキシューの一方の対向端側においてバッキングプレートに立設されたアンカピンと、制動操作に応じたシュー操作力を発生する操作力発生手段と、前記アンカピン周りを回転可能なカム板とこのカム板に支持されたカムピンとを有するシュー駆動カムとを備え、前記操作力発生手段の発生するシュー操作力を受けて前記カム板が前記アンカピン周りを回転して前記カムピンにより前記ブレーキシューを拡開すると共に、制動時には前記ブレーキシューから前記カムピンに作用するブレーキ力に応じて前記カム板が前記シュー操作力の作用を減ずる方向に回転して制動力を制御するドラムブレーキ装置において、
前記カムピンが、前記カム板に回転自在に支持された本体軸部と、前記ブレーキシューに当接する外周面の曲率中心が前記本体軸部の中心軸に対して偏心した位置に設定されたカム軸部とを具備して構成されることを特徴とするドラムブレーキ装置。 - 前記本体軸部の中心軸と、前記カム軸部の外周面の曲率中心と、前記カム軸部の外周面及びブレーキシューの接触点とが、制動解除時に前記ブレーキシューを戻すシューリターンスプリングの付勢力の作用線上に略一直線状に並ぶように、前記本体軸部の中心軸付近に前記シューリターンスプリングを係止させることを特徴とする請求項1記載のドラムブレーキ装置。
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