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JP3856303B2 - 光ファイバの特性評価方法および装置 - Google Patents

光ファイバの特性評価方法および装置 Download PDF

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JP3856303B2 JP2002082790A JP2002082790A JP3856303B2 JP 3856303 B2 JP3856303 B2 JP 3856303B2 JP 2002082790 A JP2002082790 A JP 2002082790A JP 2002082790 A JP2002082790 A JP 2002082790A JP 3856303 B2 JP3856303 B2 JP 3856303B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラマン光増幅という光ファイバが持つ非線形効果により生じた信号光の波形変化を解析して、光ファイバの長手方向にわたる光増幅特性等の分布を評価する方法、および、そのための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ラマン光増幅による光増幅効果を用いて信号品質の劣化を抑制し、光信号を長距離伝送するシステムが検討されている。特に、WDM(波長多重)システムにこのラマン光増幅効果を適用することが検討されている。そのためには、光線路の波長に対するラマン利得特性を評価することが重要となる。
【0003】
ラマン光増幅による利得特性を測定する技術として、特開平2−238339号公報で開示された「光ファイバの特性評価方法および装置」が知られている。特開平2−238339号公報が開示した技術を従来技術と呼ぶ。
【0004】
一方、本願出願人は、特願2001−357489号として、ラマン光増幅による利得特性を測定する技術「光ファイバの特性評価方法および装置」を提案している。特願2001−357489号が提案した技術を関連技術と呼ぶ。
【0005】
図1に、関連技術(特開2001−357489号)の原理を示し、図2に測定波形の模式図を示す。
【0006】
関連技術では、図1を参照するに、第1光源1からの光パルスS1を長さLの被測定光ファイバ3にその一端(第1端末)3−1から入射させ、他端(第2端末)3−2より第2光源2からのCW光(連続光)S2を被測定光ファイバ3に入射させ、被測定光ファイバ3中を光パルスS1と対向させて伝搬させて、第1光源1からの光パルスS1と第2光源2からのCW光S2との間の相互作用によりラマン光増幅を生じさせる。詳細は後にも述べるが、ラマン光増幅されたCW光は図2のように、ラマン光増幅により光パワーが増加した部分である増幅成分と、増幅前の光パワーである直流成分とに分けられる。ここで、第1端末3−1から第2端末3−2に向けて被測定光ファイバ3上にz軸座標(0≦z≦L)をとると、位置zでラマン光増幅を受けたCW光が、光カプラ5、光波長フィルタ8および光カプラまたは光スイッチ10を介して検出されるときの光パワーPcw d(z)は、次の式(1)で表される
【0007】
Figure 0003856303
【0008】
式(1)中、Pp(0)は第1端末3−1(z=0)での光パルスの光パワー、Pcw(L)は第2端末3−2(z=L)でのCW光の光パワー、α(λp)は光パルスの波長λpに対する被測定光ファイバ3の損失係数、α(λcw)はCW光の波長λcwに対する被測定光ファイバ3の損失係数、C(λcw)は光カプラ5、光波長フィルタ8および光カプラまたは光スイッチ10の総合した透過率、ER(z)は被測定光ファイバ3のラマン利得特性、vは被測定光ファイバ3中での光の速度、Tは光パルスのパルス幅である。
【0009】
式(1)中の右辺第1項Pcw(L)exp[−α(λcw)L]・C(λcw)は、第2光源2からCW光が入射したときにラマン光増幅なしに、α(λcw)およびC(λcw)による減衰を受けた光パワーを示しており、すなわちこれが直流成分である。
【0010】
また、式(1)中の右辺第2項Pcw(L)exp[−α(λcw)L]・C(λcw)・ER(z)Pp(0)exp[−α(λp)z](vT/2)が、ラマン光増幅で生じた光パワーの増加分であり、すなわち増幅成分を示している。
【0011】
したがって、式(1)から、ラマン利得特性ER(z)は、▲1▼増幅成分、▲2▼直流成分、▲3▼被測定光ファイバ3に入射したCW光S2のパワー、さらに▲4▼被測定光ファイバ3の損失分布を測定し、時間的波形変化を解析することで、求めることができる。
【0012】
しかし、式(1)から分かるように、増幅成分は直流成分に依存するため、ラマン利得特性ER(z)を測定するには直流成分と増幅成分のそれぞれの値を知る必要があるが、増幅成分は直流成分に比較して非常に小さく、これら2つの成分を同時に測定するには高ダイナミックレンジかつ高分解能な信号処理装置が必要となるという問題がある。
【0013】
この問題を解決するため、関連技術(特開2001−357489号)では、これら増幅成分と直流成分を、光カプラ5、光波長フィルタ8および光カプラまたは光スイッチ10を介して、第1光検出器6と第2光検出器9で分けて検出し、それぞれを信号処理装置7で信号処理することで、ラマン利得特性ER(z)の測定精度を向上させている。
【0014】
また、図1に示すような装置構成によって、複数の光ファイバを接続したために測定光ファイバ3の区間毎にファイバ損失が異なり途中に接続点が存在する場合においても、各光ファイバや接続点の損失は波長に対して変動するが、2つの光検出器6、9にてその変動を含めて増幅成分と直流成分を測定することから、第2光源2の波長に対する各光ファイバおよび接続点毎での光損失を測定する必要がない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、ラマン利得特性ER(z)は、▲1▼増幅成分、▲2▼直流成分、▲3▼被測定光ファイバ3に入射した光パルスの光パワー、さらに▲4▼被測定光ファイバ3の損失分布を測定し、時間的波形変化を解析することにより求められる。
【0016】
しかし、上記▲1▼〜▲4▼という多くの測定項目があるため、多くの装置を使用する必要がある。このため、装置構成が複雑になり、かつ,測定に手間がかかるという問題がある。さらに、測定の結果からラマン利得特性ER(z)を算出する上での計算が煩雑になるという問題もある。
【0017】
そこで本発明の目的は、ラマン利得特性が既に分かっている光ファイバを参照光ファイバとして被測定光ファイバと接続させることで、上記の測定項目を削減し、簡易化された光ファイバの特性評価方法および装置構成を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
第1発明は上記課題を解決する光ファイバの特性評価方法であり、第1光源からの光パルスを被測定光ファイバの一端から入射させ、第2光源からのCW光を前記被測定光ファイバのもう一方の端から入射させて、前記第1光源からの光パルスと対向させて伝搬させて、前記第1光源からの光パルスと第2光源からのCW光との間の相互作用によりラマン光増幅を生じさせ、光カプラ、光波長フィルタを介して前記CW光を光検出器に導く光ファイバの特性評価方法において、ラマン利得特性について既知の光ファイバを参照光ファイバとして1本または複数本の被測定光ファイバと位置を特定して接続させて同時に測定を行い、参照光ファイバのラマン利得特性と被測定光ファイバのラマン利得特性の比率を求めることにより、被測定光ファイバのラマン利得特性を算出することを特徴とする。
第2発明は、第1発明において、前記被測定光ファイバの長手方向に前記参照光ファイバを接続することを特徴とする光ファイバの特性評価方法である。
第3発明は、第1発明又は第2発明において、前記比率を、被測定光ファイバの各位置で測定した増幅成分および光パルスの波長に対する損失分布と、参照光ファイバのすくなくとも1つの位置で測定した増幅成分および光パルスの波長に対する損失分布とから求めることを特徴とする光ファイバの特性評価方法である。
第4発明は、第1発明又は第2発明において、前記比率を、一端から前記光パルスを入射し、もう一方の端から前記CW光を入射して測定した被測定光ファイバの各位置での増幅成分および参照光ファイバのすくなくとも1つの位置での増幅成分と、一端から前記CW光を入射し、もう一方の端から前記光パルスを入射することにより、前記光パルスと前記CW光の入射端を入れ替えた後に測定した被測定光ファイバの各位置での増幅成分および参照光ファイバの前記すくなくとも1つの位置での増幅成分とから求めることを特徴とする光ファイバの特性評価方法である。
【0019】
発明は上記課題を解決する光ファイバの特性評価装置であり、第1光源、既にラマン利得特性が分かっている参照光ファイバ、出力する光の波長を変えることができる第2光源、光カプラ、光波長フィルタ、光検出器および信号処理装置から構成され、1本または複数本の被測定光ファイバに、位置を特定して前記参照光ファイバを接続して1本の光ファイバ列とし、第1光源からの光パルスを前記光ファイバ列の一端から入射させ、第2光源からのCW光を前記光ファイバ列のもう一方の端から入射させ、前記第1光源からの光パルスと対向させて伝搬させて、前記第1光源からの光パルスと前記第2光源からのCW光との間の相互作用によりラマン光増幅を生じさせ、光カプラ、光波長フィルタを介して、CW光の光パワーのうち、ラマン光増幅による成分を検出する光検出器および信号処理装置を配置して、前記光ファイバ列の測定を行い、参照光ファイバのラマン利得特性と被測定光ファイバのラマン利得特性の比率を求めることにより、被測定光ファイバのラマン利得特性を算出することを特徴とする。
第6発明は、第5発明において、前記被測定光ファイバの長手方向に前記参照光ファイバを接続することを特徴とする光ファイバの特性評価装置である。
発明は、第発明又は第6発明において、前記光検出器にて、前記被測定光ファイバの各位置でのCW光の増幅成分および前記参照光ファイバのすくなくとも1つの位置でのCW光の増幅成分を測定し、前記信号処理装置にて、前記被測定光ファイバおよび前記参照光ファイバの前記測定した増幅成分と、前記被測定光ファイバの各位置での光パルスの波長に対する損失分布と、前記参照光ファイバのすくなくとも1つの位置での光パルスの波長に対する損失分布とから、前記参照光ファイバのラマン利得特性と前記被測定光ファイバのラマン利得特性の比率を求め、求めた比率と前記参照光ファイバのラマン利得特性から前記被測定光ファイバのラマン利得特性を算出することを特徴とする光ファイバの特性評価装置である。
発明は、第発明又は第6発明において、前記光検出器にて、前記光パルスを入射する一端と前記CW光を入射するもう一方の端とを入れ替える前における前記被測定光ファイバの各位置での増幅成分および前記参照光ファイバのすくなくとも1つの位置での増幅成分と、前記一端と前記もう一方の端とを入れ替えた後における前記被測定光ファイバの各位置での増幅成分および前記参照光ファイバの前記すくなくとも1つの位置での増幅成分とを測定し、前記信号処理装置にて、前記一端と前記もう一方の端とを入れ替える前に測定した増幅成分および前記一端と前記もう一方の端とを入れ替えた後に測定した増幅成分とから、前記参照光ファイバのラマン利得特性と前記被測定光ファイバのラマン利得特性の比率を求め、求めた比率と前記参照光ファイバのラマン利得特性から前記被測定光ファイバのラマン利得特性を算出することを特徴とする光ファイバの特性評価装置である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
[装置構成例]
図3は、本発明の実施の形態に係る光ファイバの特性評価装置の構成例を示す。図3において、1は光パルスS1を出力する第1光源、2はCW光(連続光)S2を出力する第2光源、3は被測定光ファイバ、4は参照光ファイバ、5は光カプラ、6は光検出器、7は信号処理装置、8は光波長フィルタである。
【0022】
本発明では、詳細は後述するが基本的な光ファイバの特性評価方法として、第1光源1からの光パルスS1を被測定光ファイバ3の一端から入射させ、第2光源2からのCW光S2を被測定光ファイバ3のもう一方の端から入射させて、第1光源1からの光パルスS1と対向させて伝搬させて、第1光源1からの光パルスS1と第2光源2からのCW光S2との間の相互作用によりラマン光増幅を生じさせ、光カプラ5、光波長フィルタ8を介してCW光を光検出器6に導く光ファイバの特性評価方法において、ラマン利得特性について既知の光ファイバ4を参照光ファイバとして1本または複数本の被測定光ファイバ3と接続させて同時に測定し、参照光ファイバ4のラマン利得特性と被測定光ファイバ3のラマン利得特性の比率を求めることにより、被測定光ファイバ3のラマン利得特性を算出する。
【0023】
また、本発明では、詳細は後述するが基本的な光ファイバの特性評価装置として、第1光源1、既にラマン利得特性が分かっている参照光ファイバ4、出力する光の波長を変えることができる第2光源2、光カプラ5、光波長フィルタ8、光検出器6および信号処理装置7で構成し、被測定光ファイバ3と参照光ファイバ4を接続し、第1光源1からの光パルスS1を参照光ファイバ4または被測定光ファイバ3の一端から入射させ、第2光源2からのCW光S2を被測定光ファイバ3または参照光ファイバ4のもう一方の端から入射させ、第1光源1からの光パルスS1と対向させて伝搬させて、第1光源1からの光パルスS1と第2光源2からのCW光S2との間の相互作用によりラマン光増幅を生じさせ、光カプラ5、光波長フィルタ8を介して、CW光の光パワーのうち、ラマン光増幅による成分を検出する光検出器6および信号処理装置7を配置する。
【0024】
[第1実施例]
本発明の第1実施例として、図3に示す構成により被測定光ファイバ3のラマン利得特性を評価する方法および装置を説明する。
【0025】
ここで、参照光ファイバ4の長さをl*(ただし、l*はアルファベット「L」の小文字を表す)、被測定光ファイバ3の長さをL−l*とし、互いに接続したものを用いて測定を行う。本実施例では、被測定光ファイバ3と参照光ファイバ4とが接続されてなる全体の光ファイバうち、第1光源1から出射された光パルスS1が参照光ファイバ4に入射する位置を第1端末3−1と定義し、第2光源2から出射されたCW光(連続光)S2が被測定光ファイバ3に入射する位置を第2端末3−2と定義する。また、第1端末3−1から第2端末3−2に向けてz軸座標と定義する。このような定義の下で、参照光ファイバ4と被測定光ファイバ3上の任意の位置z(0≦z≦L)での光パルスの光パワーPp(z)は、次の式(2)となる。また、任意の位置z(0≦z≦L)でのCW光のパワーPcw(z)は、次の式(3)となる。
p(z)=Pp(0)exp[−α(λp)z] 式(2)
cw(z)=Pcw(L)exp[−α(λcw)(L−z)] 式(3)
【0026】
式(2)中、Pp(0)は第1端末3−1(z=0)での光パルスの光パワー、α(λp)は光パルスの波長λpに対する被測定光ファイバ3の損失係数でありる。また、式(3)中、Pcw(L)は第2端末3−2(z=L)でのCW光の光パワー、α(λcw)はCW光の波長λcwに対する被測定光ファイバ3の損失係数である。
【0027】
また、参照光ファイバ4と被測定光ファイバ3を合わせた全体の光ファイバでのラマン利得特性をER(z)=g(λcw,z)/A(z)と定義する。ここで、g(λcw,z)は位置zにおけるCW光の波長λcwでのラマン利得であり、A(z)は位置zにおける光ファイバの実効断面積である。さらに、光ファイバ中での光の速度をv=c/n(cは光速、nは参照光ファイバ4と被測定光ファイバ3のコア屈折率で同一の値とする。)、Tを光パルスのパルス幅と定義する。このような定義の下で、位置zではラマン増幅によって、CW光は次の式(4)で与えられるG(z)で増幅される。
G(z)=exp[ER(z)Pp(z)(vT/2)] 式(4)
【0028】
R(z)Pp(z)(vT/2)が小さな領域では、式(4)は次の式(5)と近似することができる。この条件は通常成立する。
G(z)≒1+ER(z)Pp(z)(vT/2) 式(5)
【0029】
したがって、位置zでは、ラマン光増幅によってCW光の光パワーはG(z)Pcw(z)となる。さらに、ラマン光増幅によって増幅したCW光は光検出器6に到達するまでに、光ファイバの光損失exp[−α(λcw)z]で減衰し、また、参照光ファイバ4と被測定光ファイバ3との接続点、光カプラ5および光波長フィルタ8を合わせた透過率C(λcw)によって減衰する。光検出器6の前段に配置された光波長フィルタ8は、第1光源1からの光パルスにより発生する後方レーリー散乱光を除去し、ラマン光増幅による効果のみを取り出す役目を果たす。
【0030】
これらの減衰(exp[−α(λcw)z]およびC(λcw))を考慮して、式(2)、式(3)および式(5)より、光検出器6にて受光される光パワーPcw d(z)は、次の式(6)となる。
Figure 0003856303
【0031】
式(6)中の右辺第1項は、第2光源2からCW光が入射したときにラマン光増幅なしに、α(λcw)およびC(λcw)による減衰を受けた光パワーを示しており、すなわちこれが直流成分であり、式の簡略化のために直流成分をPcont dと定義すると、次の式(7)となる。また、式(6)中の右辺第2項がラマン光増幅で生じた光パワーの増加分であり、すなわち増幅成分を示しており、これも同様にPamp d(z)と定義すると、次の式(8)となる。これより、増幅成分Pamp d(z)は直流成分Pcont dの大きさに依存することが分かる。
Figure 0003856303
【0032】
ここで、全体のラマン利得特性ER(z)(0≦z≦L)のうち、参照光ファイバ4の既知のラマン利得特性、すなわち0≦z≦1*の範囲におけるラマン利得特性をER(zref)と定義し、被測定光ファイバ3の未知のラマン利得特性、すなわち1*≦z≦Lの範囲におけるラマン利得特性をER(zm)と定義すると、式(8)は次の2つの式(9)、式(10)に分けることができる。zrefは0から1*の任意の位置、zmは1*からLの任意の位置である。
Figure 0003856303
【0033】
式(9)を式(10)で除算すると、次の式(11)を得る。
Figure 0003856303
【0034】
式(11)の右辺で、分子は参照光ファイバ4について検出されたCW光の増幅成分Pamp d(zref)と光パルスの波長λpに対する損失分布exp[−α(λpref]の逆数との積を示しており、分母は被測定光ファイバ3について検出されたCW光の増幅成分Pamp d(zm)と光パルスの波長λpに対する損失分布exp[−α(λp)zm]の逆数との積を示している。
【0035】
すなわち、参照光ファイバ4と被測定光ファイバ3のラマン利得特性の比率ER(zref)/ER(zm)は、参照光ファイバ4と被測定光ファイバ3のそれぞれについてCW光の増幅成分および光パルスの波長に対する損失分布の測定結果(Pamp d(zref)、Pamp d(zm)、exp[−α(λp)zref]、exp[−α(λp)zm])より求でることができる。
【0036】
比率ER(zref)/ER(zm)をRとすれば、例えば、R={Pamp d(zref)exp[α(λp)zref]}/{Pamp d(zm)exp[α(λp)zm]}である。そして、参照光ファイバ4のラマン利得特性ER(zref)は既知であるので、したがって、得られたラマン利得特性の比率Rより、被測定光ファイバ3のラマン利得特性ER(zm)は、一般にER(zref)/Rの演算で求めることができる。次の式(12a)〜式(12d)に、ER(zm)=ER(zref)/Rと等価な演算式の例を示す。
Figure 0003856303
【0037】
式(11)は、0から1*の任意の位置zref、および、1*からLの任意の位置zmにおいて成立する。したがって、ER(zm)=ER(zref)/Rや式(12a)〜式(12d)で被測定光ファイバ3のラマン利得特性ER(zm)を求めるには、被測定光ファイバ3については、1*からLの範囲の各位置zmでのPamp d(zm)と、光パルスの波長に対する損失分布exp[−α(λp)zm]を知る必要があるが、参照光ファイバ4については、任意の1つの位置におけるラマン利得特性ER(zref)と、CW光の増幅成分Pamp d(zref)と、光パルスの波長に対する損失分布exp[−α(λp)zref]が判れば良い。
【0038】
参照光ファイバ4の増幅成分Pamp d(zref)および被測定光ファイバ3の増幅成分Pamp d(zm)は、光検出器6にて検出する。つまり、参照光ファイバ4および被測定光ファイバ3の直流成分は測定せず、増幅成分Pamp d(zref)とPamp d(zm)のみ測定すれば良い。
【0039】
そのため、高ダイナミックレンジを持つ光検出器は必要なく、関連技術(特願平2001−357489号)に述べられているような第2検出器9を用いることもなく、ラマン利得特性ER(zm)が測定可能である。
【0040】
さらに、第1光源1からの光パルスS1の光パワーPp(0) を測定する必要がなく、光パルスの波長λpに対する損失分布exp[−α(λp)z]を測定すれば良い。
【0041】
参照光ファイバ4と被測定光ファイバ3のラマン利得特性の比率Rの算出および比率Rから被測定光ファイバ3のラマン利得特性ER(zm)=ER(zref)/Rの算出、あるいは式(12a)〜式(12d)による被測定光ファイバ3のラマン利得特性ER(zm)の算出は、信号処理装置7にて行われる。その際、被測定光ファイバ3については、1*からLの範囲の各位置zmでのPamp d(zm)と、光パルスの波長に対する損失分布exp[−α(λp)zm]を測定する必要がある。参照光ファイバ4については、少なくとも任意の1つの位置におけるラマン利得特性ER(zref)と、CW光の増幅成分Pamp d(zref)と、光パルスの波長に対する損失分布exp[−α(λp)zref]が判れば良い。なお、信号処理装置7は算出結果や測定結果等の表示も行うようにしている。
【0042】
損失分布exp[−α(λp)z]の測定方法としては、公知の技術を用いることができる。例えば、従来技術(特開平2−238339号公報)のように、第1端末3−1と第2端末3−2を入れ替えてそれぞれラマン光増幅波形を得る両方向測定によって、損失分布exp[−α(λp)z]を簡単に求めることができる。あるいは、第1光源1と同じ波長のパルス光源を持つOTDR(Optical time Domain Reflectmeter)と呼ばれる光パルス試験器を用いて、損失分布exp[−α(λp)z]を測定しても良い。
【0043】
なお、参照光ファイバ4に複数の被測定光ファイバ3を接続し、長手方向にわたって光ファイバの損失が分布するような場合においても、同様に、上記原理で被測定光ファイバ3のラマン利得特性ER(zm)を簡単に測定することができる。
【0044】
また、本実施例では参照光ファイバ4は光パルスS1が入射する第1端末3−1に位置させているが、被測定光ファイバ3との接続における参照光ファイバ4の位置に関係なく式(11)は成立し、同様に測定可能である。
【0045】
さらに、波長に対するラマン利得特性を測定する場合においても、式(11)で示す関係が成立し、第2光源2のCW光S2の波長λcwを変化させるだけで、同様に被測定光ファイバ3の波長に対するラマン利得特性ER(zm)を簡単に測定可能である。
【0046】
[第2実施例」
次に、本発明の第2実施例として、図3に示す構成により被測定光ファイバ3のラマン利得特性を評価する別の方法および装置を説明する。本実施例では、後述するように、被測定光ファイバ3および参照光ファイバ4ともに、光パルスの波長に対する損失分布exp[−α(λp)zm]、損失分布exp[−α(λp)zref]の測定は不要である。
【0047】
本実施例の測定方法は、先ず第1端末3−1において第1光源1からの光パルスS1を入射させ、第2端末3−2において第2光源2からのCW(連続)光S2を入射させて光検出器6にて測定した波形と、次に第1端末3−1と第2端末3−2を入れ替えて、第2端末3−2において第1光源1からの光パルスS1を入射させ、第1端末3−1において第2光源2からのCW(連続)光S2を入射させて光検出器6にて測定した波形との両者を比較することにより、被測定光ファイバ3のラマン利得特性を求めるという測定方法である。
【0048】
第1実施例と同様、第1端末3−1から第1光源1の光パルスS1を入射させ、第2端末3−2から第2光源2のCW(連続)光S2を入射させ、ラマン光増幅によって増幅されたCW光の光パワーを、光カプラ5および光波長フィルタ8を介して、光検出器6で検出して得られる増幅成分Pamp d(z)は、前述した式(8)となる。
amp d(z)=Pcont dR(z)Pp(0)exp[−α(λp)z](vT/2) 式(8)
【0049】
次に、第1端末3−1と第2端末3−2を入れ替えて同様の測定を行うと、得られる増幅成分Pamp d(z)'、つまり、第2端末3−2から第1光源1の光パルスS1を入射させ、第1端末3−1から第2光源2のCW(連続)光S2を入射させ、ラマン光増幅によって増幅されたCW光の光パワーを同様に光検出器6で検出して得られる増幅成分Pamp d(z)'は、次の式(13a)となる。式(13a)は、zをL−zと入れ替えることで、次の式(13b)となる
amp d(z)'=Pcont dR(L-z)Pp(0)exp[−α(λp)z](vT/2) 式(13a)
amp d(L-z)'=Pcont dR(z)Pp(0)exp[−α(λp)(L-z)](vT/2) 式(13b)
【0050】
そして、式(8)と式(13b)より、左辺どうし、右辺どうしを掛け合わせてることで、次の式(14)を得る。
Figure 0003856303
【0051】
この式(14)について、第1実施例と同様に参照光ファイバ4、すなわち0≦z≦1*の範囲におけるラマン利得特性をER(zref)と定義し、被測定光ファイバ3の未知のラマン利得特性、すなわち1*≦z≦Lの範囲におけるラマン利得特性をER(zm)と定義すると、式(14)は次の2つの式(15)、式(16)に分けることができる。zrefは0から1*の任意の位置、zmは1*からLの任意の位置である。
Figure 0003856303
【0052】
式(15)を式(16)で除算すると、次の式(17)の関係が得られる。
Figure 0003856303
【0053】
第1端末3−1と第2端末3−2を入れ替える前の位置zと、入れ替えた後の位置L−zは、各光ファイバの同じ部分を示している。そこで、式(17)の右辺は、参照光ファイバ4について両方向から測定した任意の同一位置での増幅成分どうしを掛け合わせた時の値と、被測定光ファイバ3について両方向から測定した任意の同一位置での増幅成分どうしを掛け合わせた時の値との比であり、この比が参照光ファイバ4のラマン利得特性をER(zref)と、被測定光ファイバ3のラマン利得特性ER(zm)との比の自乗となることを示している。式(17)の増幅成分Pamp d(zref)、Pamp d(L-zref)'、Pamp d(zm)およびPamp d(L-zm)'は光検出器6にて測定される。
【0054】
したがって、参照光ファイバ4と被測定光ファイバ3のラマン利得特性の比率ER(zref)/ER(zm)は、参照光ファイバ4と被測定光ファイバ3のそれぞれについてCW光の増幅成分の測定結果(Pamp d(zref)、Pamp d(L-zref)'、Pamp d(zm)、Pamp d(L-zm)')より求めることができる。
【0055】
比率ER(zref)/ER(zm)をRとすれば、例えば、R={Pamp d(zref)Pamp d(L-zref)'}1/2/{Pamp d(zm)Pamp d(L-zm)'}1/2である。そして、参照光ファイバ4のラマン利得特性ER(zref)は既知であるので、第1実施例と同様、得られたラマン利得特性の比率Rより、被測定光ファイバ3のラマン利得特性ER(zm)は、一般にER(zref)/Rの演算で求めることができる。次の式(18)に、ER(zm)=ER(zref)/Rと等価な演算式の例を示す。
Figure 0003856303
【0056】
式(17)は、0から1*の任意の位置zref、および、1*からLの任意の位置zmにおいて成立する。したがって、ER(zm)=ER(zref)/Rや式(18)で被測定光ファイバ3のラマン利得特性ER(zm)を求めるには、被測定光ファイバ3については、1*からLの範囲の各位置zmでのCW光の増幅成分Pamp d(zm)およびPamp d(L-zm)'を知る必要があるが、参照光ファイバ4については、任意の1つの位置におけるラマン利得特性ER(zref)と、CW光の増幅成分Pamp d(zref)およびPamp d(L-zref)'が判れば良い。
【0057】
本実施例では、式(17)から見ても分かるように、光パルスはもとより、直流成分の光パワーを測定する必要がなく、簡単に被測定光ファイバ3のラマン利得特性を測定することが可能である。さらに、本実施例では、測定結果からラマン利得特性を算出する過程において、第1実施例で求めていた光パルスの波長λpにおける損失分布exp[−α(λp)z]を測定する必要がなく、利得の算出が容易にできるという利点がある。
【0058】
参照光ファイバ4と被測定光ファイバ3のラマン利得特性の比率Rの算出および比率Rから被測定光ファイバ3のラマン利得特性ER(zm)=ER(zref)/Rの算出、あるいは式(18)による被測定光ファイバ3のラマン利得特性ER(zm)の算出は、信号処理装置7にて行われる。その際、被測定光ファイバ3については、1*からLの範囲の各位置zmでのCW光の増幅成分Pamp d(zm)およびPamp d(L-zm)'を測定する必要がある。参照光ファイバ4については、少なくとも任意の1つの位置におけるラマン利得特性ER(zref)と、CW光の増幅成分Pamp d(zref)およびPamp d(L-zref)'とが判れば良い。
【0059】
なお本実施例でも、第1実施例と同様、参照光ファイバ4に複数の被測定光ファイバ3を接続する場合、被測定光ファイバ3に対する参照光ファイバ4の位置を変えた場合、さらに、第2光源2の波長λcwを変化させて波長に対するラマン利得特性を測定する場合、いずれについても式(17)の関係が成立し、同様に上記原理で被測定光ファイバ3のラマン利得特性ER(zm)を簡単に測定することができる。
【0060】
【発明の効果】
以上の説明したように、本発明では、ラマン利得特性(ラマン光増幅の特性分布)の評価において、ラマン利得特性が既知の参照光ファイバを被測定光ファイバと接続し、同時に測定することによって、参照光ファイバの既知のラマン利得特性と被測定光ファイバのラマン利得特性との比率を求めることにより、被測定光ファイバのラマン利得特性を算出する。このような本発明の光ファイバの特性評価方法および装置を用いることで、ラマン利得特性を算出する上で従来技術では必要な測定項目であった第1光源からの光パルスのパワーの測定および検出されるCW光の直流成分の測定が不要となった。したがって、ラマン利得特性を簡単に求めることが可能であり、測定方法および測定装置を大幅に簡素化でき、短時間で光ファイバのラマン利得特性の分布を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】関連技術(特開2001−357489号)の測定装置の構成を示す図。
【図2】同関連技術における測定波形例を模式的に示す図。
【図3】本発明の実施の形態における装置構成を示す図。
【符号の説明】
1 第1光源
2 第2光源
3 被測定光ファイバ
3−1 第1端末
3−2 第2端末
4 参照光ファイバ
5 光カプラ
6 光検出器
7 信号処理装置
8 光波長フィルタ

Claims (8)

  1. 第1光源からの光パルスを被測定光ファイバの一端から入射させ、第2光源からのCW光(連続光)を前記被測定光ファイバのもう一方の端から入射させて、前記第1光源からの光パルスと対向させて伝搬させて、
    前記第1光源からの光パルスと第2光源からのCW光との間の相互作用によりラマン光増幅を生じさせ、光カプラ、光波長フィルタを介して前記CW光を光検出器に導く光ファイバの特性評価方法において、
    ラマン利得特性について既知の光ファイバを参照光ファイバとして1本または複数本の被測定光ファイバと位置を特定して接続させて同時に測定を行い、
    参照光ファイバのラマン利得特性と被測定光ファイバのラマン利得特性の比率を求めることにより、被測定光ファイバのラマン利得特性を算出することを特徴とする光ファイバの特性評価方法。
  2. 請求項1において、
    前記被測定光ファイバの長手方向に前記参照光ファイバを接続することを特徴とする光ファイバの特性評価方法。
  3. 請求項1又は請求項2において、
    前記比率を、
    被測定光ファイバの各位置で測定した増幅成分および光パルスの波長に対する損失分布と、
    参照光ファイバのすくなくとも1つの位置で測定した増幅成分および光パルスの波長に対する損失分布と
    から求めることを特徴とする光ファイバの特性評価方法。
  4. 請求項1又は請求項2において、
    前記比率を、
    一端から前記光パルスを入射し、もう一方の端から前記CW光を入射して測定した被測定光ファイバの各位置での増幅成分および参照光ファイバのすくなくとも1つの位置での増幅成分と、
    一端から前記CW光を入射し、もう一方の端から前記光パルスを入射することにより、前記光パルスと前記CW光の入射端を入れ替えた後に測定した被測定光ファイバの各位置での増幅成分および参照光ファイバの前記すくなくとも1つの位置での増幅成分と
    から求めることを特徴とする光ファイバの特性評価方法。
  5. 第1光源、既にラマン利得特性が分かっている参照光ファイバ、出力する光の波長を変えることができる第2光源、光カプラ、光波長フィルタ、光検出器および信号処理装置から構成され、
    1本または複数本の被測定光ファイバに、位置を特定して前記参照光ファイバを接続して1本の光ファイバ列とし、第1光源からの光パルスを前記光ファイバ列の一端から入射させ、第2光源からのCW光(連続光)を前記光ファイバ列のもう一方の端から入射させ、前記第1光源からの光パルスと対向させて伝搬させて、前記第1光源からの光パルスと前記第2光源からのCW光との間の相互作用によりラマン光増幅を生じさせ、光カプラ、光波長フィルタを介して、CW光の光パワーのうち、ラマン光増幅による成分を検出する光検出器および信号処理装置を配置して、
    前記光ファイバ列の測定を行い、参照光ファイバのラマン利得特性と被測定光ファイバのラマン利得特性の比率を求めることにより、被測定光ファイバのラマン利得特性を算出することを特徴とする光ファイバの特性評価装置。
  6. 請求項5において、
    前記被測定光ファイバの長手方向に前記参照光ファイバを接続することを特徴とする光ファイバの特性評価装置。
  7. 請求項5又は請求項6において、
    前記光検出器にて、前記被測定光ファイバの各位置でのCW光の増幅成分および前記参照光ファイバのすくなくとも1つの位置でのCW光の増幅成分を測定し、
    前記信号処理装置にて、前記被測定光ファイバおよび前記参照光ファイバの前記測定した増幅成分と、前記被測定光ファイバの各位置での光パルスの波長に対する損失分布と、前記参照光ファイバのすくなくとも1つの位置での光パルスの波長に対する損失分布とから、前記参照光ファイバのラマン利得特性と前記被測定光ファイバのラマン利得特性の比率を求め、
    求めた比率と前記参照光ファイバのラマン利得特性から前記被測定光ファイバのラマン利得特性を算出することを特徴とする光ファイバの特性評価装置。
  8. 請求項5又は請求項6において、
    前記光検出器にて、前記光パルスを入射する一端と前記CW光を入射するもう一方の端とを入れ替える前における前記被測定光ファイバの各位置での増幅成分および前記参照光ファイバのすくなくとも1つの位置での増幅成分と、前記一端と前記もう一方の端とを入れ替えた後における前記被測定光ファイバの各位置での増幅成分および前記参照光ファイバの前記すくなくとも1つの位置での増幅成分とを測定し、
    前記信号処理装置にて、前記一端と前記もう一方の端とを入れ替える前に測定した増幅成分および前記一端と前記もう一方の端とを入れ替えた後に測定した増幅成分とから、前記参照光ファイバのラマン利得特性と前記被測定光ファイバのラマン利得特性の比率を求め、求めた比率と前記参照光ファイバのラマン利得特性から前記被測定光ファイバのラマン利得特性を算出することを特徴とする光ファイバの特性評価装置。
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