JP3855907B2 - シート状物の延伸機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シート状物、例えば熱可塑性樹脂フィルム等を延伸するシート状物の延伸機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の延伸装置は、等長のリンクプレートを折尺状に連結した無端リンク装置の一端にフィルム把持装置を設け、このリンク装置を案内するガイドレールをフィルムの両側縁部に設け、複数個のスプロケットにより前記リンク装置を駆動する延伸機において、前記リンク装置の反フィルム側のリンクプレートの蝶着部に一端を枢着され他端をピンで結合されるチェーンリンクの他端部に複数個のピン穴を設け、フィルムの長手方向(縦方向,MD方向)の延伸倍率を有段可変させている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、縦延伸倍率(MD延伸倍率),横延伸倍率(TD延伸倍率)を可変にすることを目的とし、ガイドレールの相対位置をハンドルねじ調整により可変として、無端リンク装置のピッチを変えることにより、多品種少量生産用として提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭63−115722号公報(第1−2頁,第3図)
【特許文献2】
特開昭61−58723号公報(第1−3頁,第3図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来技術の延伸装置は、高倍率の延伸や延伸区間を短縮させた急激な延伸、特にTD方向の高倍率延伸に対して配慮されていなかった。
【0006】
例えば、従来技術のように、延伸前のフィルム掴みピッチがガイドレールにより構成される案内溝に保持される軸受け外径(或いはストッパー)により決定され、延伸後のフィルム掴みピッチが反フィルム側に位置するチェーンリンクにより決定される等長リンク装置はフィルム掴みピッチを徐々に拡大するとともに、ガイドレールを末広がり状に配置することで、縦横方向を同時に延伸する。このため、急激なカーブには追従し難く(詳細は後述)、高倍率の延伸を行うためには末広がり部の勾配を比較的ゆるく取り、フィルム進行方向長さを長くして対応するのが一般的であった。従って、設備が長くなり、過大な占有面積を必要とする他,リンク数の増加やフィルムを加温する付帯設備なども増加し不経済であった。また、従来技術をTD方向の高倍率延伸を念頭に使用した横延伸(TD延伸)のみの場合、フィルム掴みピッチを等間隔に保持する必要があるが、フィルム掴みピッチを等間隔に保持させるためには、上記と同様の問題を有する。
【0007】
本発明の目的は、シート状物の性能の劣化や破断または厚み斑の発生が抑制されたシート状物の延伸装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、シート状物の両端側それぞれに配置されこのシート状物の両端部を各々把持して前記シート状物を入口側から出口側に案内するように回転駆動される無端リンク装置の対と、これら無端リンク装置の各々に配置され複数の掴み装置を前記入口側から前記出口側に移動させるためのガイドレールであってこれらのガイドレールが前記入口側から出口側に末広がり状に配置されたガイドレールとを備えたシート状物の延伸装置であって、前記ガイドレールの各々が、前記シート状物の一端部側に配置され前記掴み装置に連結された複数の第1のローラを案内する第1のガイドレールと、前記第1のガイドレールの前記シート状物と反対の側に配置され隣り合う前記第1のローラの対と等長リンクにより連結された第2のローラの複数を案内する第2のガイドレールとを有するガイドレールの組とを備え、隣り合う前記第1のローラを連結してこれらローラ間の方向に拘束するチェーンリンクとを有し、隣り合う前記第2のローラを連結する部材を有さないシート状物の延伸装置により達成される。
【0009】
さらに、前記ガイドレールが複数のレールが直列に連結されその連結角度を変化させて末広がり状に配置されたレール群により構成されたことにより達成される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例を図1〜図4により説明する。
【0011】
図1は本発明の実施例である横延伸機の平面図、図2は等長リンク31の断面図で、その構成及び動作は以下の通りである。
【0012】
シート状物1の端部を把持する複数の掴み装置2をシート状物1の両側に具備した無端リンク装置3(図中リンクの一部並びに片側の無端リンクは省略)は折尺状に形成された複数個の等長リンク31よりなり、シート状物の入口側スプロケット4で駆動され、進行方向に末広がり上に配置されたガイドレール5〜7に案内されて掴みピッチP1を保持しつつ、シート状物1を横方向に延伸させた後、シート状物1を掴み装置2より外し、出口側スプロケット8により駆動されて、入口側スプロケット4に戻るように構成されている。
【0013】
前記ガイドレール5〜7は一対の組になった案内溝で、シート状物1に近いほうのシート側ガイド5と中間ガイド6より形成される案内溝にはシート状物1を把持する掴み装置2が連結されたリンク軸10(図2)が軸受けローラ91を介して保持される。他方の反シート側ガイド7と中間ガイド6より形成される案内溝には掴み装置2を有さないリンク軸11(図2)が軸受けローラ92を介して保持され、リンク軸10,11はリンクプレート12により連結されるとともに、掴み装置2が連結されたリンク軸10と相隣るリンク軸はチェーンリンク13により連結され、チェーンリンク13により、掴みピッチP1が決定される。
【0014】
次に、図7に示す従来の延伸機平面方向の延伸部拡大図と図3に示す本発明の延伸機平面方向の延伸部拡大図及び図4の延伸部角度と掴みピッチ保持率の関係図により、本発明をより詳細に説明する。
【0015】
シート状物1の進行方向と平行な部分から角度θの勾配を有する延伸部において、図7の従来例では、掴み装置2を有さないリンク軸を保持する軸受けローラ92方向にチェーンリンク14が配設されているため、反シート側ガイド7と中間ガイド6より形成される案内溝にはチェーンリンク14の長さを保持する形で等間隔に軸受けローラ92が移動する。また、シート側ガイド5と中間ガイド6より形成される案内溝を移動する軸受けローラ91は、相隣る軸受けローラ91間を拘束するものがないため、前記平行部と勾配部の連結部である屈曲部15で急激に掴みピッチがP1からP2に拡大し、その後、勾配部で掴みピッチはP1に戻る。尚、図示していない延伸部出口の屈曲部では掴みピッチP1は上記とは逆に一時的に縮小されることは言うまでもない。
【0016】
一方、図3の本発明では従来例とは逆に、掴み装置2を有するリンク軸10を保持する軸受けローラ91方向にチェーンリンク13が配設されているため、シート側ガイド5と中間ガイド6より形成される案内溝を等間隔に軸受けローラ91が移動し、反シート側の軸受けローラ92は、相隣る軸受けローラ92間を拘束するものがないため、屈曲部15で間隔が縮まる。このため、屈曲部15で一対の等長リンク31が折りたたまれた形となり、掴みピッチは一時的にP1からP2に拡大され、その後、勾配部で掴みピッチはP1に戻る。
【0017】
上述の掴みピッチの拡大・縮小はシート状物1の性能(強度,繊維の配向性)を劣化させるばかりか、延伸角度θに依存した急激な掴みピッチの拡大によりシート状物1の破断やシート状物1の厚み斑を生じさせる。そこで、本発明者らは延伸角度θを因子とし、従来例と本発明の延伸角度と掴みピッチ保持率の関係を研究し、図4に示す結果を得た。
【0018】
横軸は延伸角度θ、縦軸は最大掴みピッチP2を基準掴みピッチP1で除した掴みピッチ保持率で、掴みピッチ保持率が1.0 に近いほど、掴みピッチの拡大・縮小が少ないことを意味する。本結果より、全体的には延伸角度θの増加により、掴みピッチ保持率は増加傾向となるが、従来例と本発明を比較した場合、本発明が掴みピッチの拡大・縮小の少ない延伸機であることを見出した。尚、掴みピッチ保持率の許容範囲は対象とするシート状物1の組成,使用目的などにより異なるが、1.05〜1.1程度の拡大(0.9〜0.95程度の縮小)であれば許容可能と考える。
【0019】
以上のことより、本実施例によれば、高倍率の延伸や延伸区間を短縮させた急激な延伸、特にTD方向の高倍率延伸に対して対応可能である。これにより、過大な占有面積を必要とせず,リンク数やフィルムを加温する付帯設備なども最小限で良く、経済性の高い設備が構築できる。
【0020】
尚、本実施例ではTD方向の高倍率延伸を主眼に説明したが、延伸角度が小さい場合などは、延伸部において等長リンクの交差角度を徐々に拡大するようにガイドレールを配置することで、縦横同時延伸も可能である。また、本実施例ではTD方向の高倍率延伸中、シート状物1に相対する掴みピッチP1を極力等しく保持する例を説明したが、シート状物1進行方向に平行なピッチを常にP1に保持(屈曲部15不含)することも可能である。即ち、延伸区間では掴みピッチをP1/cosθ になるように等長リンクの交差角度を調整すれば良く、本操作により延伸部でのMD方向収縮が起こらず、シート性能を向上させることが可能である。
【0021】
図5は本発明のその他の実施例である等長リンクの断面図で、図2に示す実施例との相違点は、掴み装置2をリンクプレート12の上端部に設置するとともに、フィルム側のリンク軸10上部にスプロケット駆動用ローラ16を配設したところにある。本発明の動作並びに効果等は前記実施例と同様であり、本実施例特有の効果は以下の通りである。
【0022】
リンク軸10は相隣るリンク軸とチェーンリンクで拘束されているため、スプロケット駆動用ローラ16をフィルム側のリンク軸10上部に配設することで、スプロケットに連結される掻き取り装置(図示せず)との位置決めが容易となる。
【0023】
また、等長リンク装置31の軸受け部には、軸受け寿命の延命化のためオイル噴霧を行うが、そのオイルがシート状物1に付着し、製品不良を来たすケースがある。しかし、本実施例では掴み装置2をリンクプレート12の上端部に設置するため、シート状物1へのオイル付着が抑制され、図5の一点鎖線で示すように等長リンク装置31を囲うことで、その抑制効果は更に向上する。
【0024】
図6は本発明のその他の実施例を示す多関節ガイドレールの一例である。本発明はガイドレール5〜7が、両端をピン結合で拘束される複数のレール17を直列に連結した多関節ガイドレールにより構成され、前記レール17の連結角度を変化させことにより末広がり状に配置させた例である。本発明により、高倍率の延伸や延伸区間を短縮させた急激な延伸が具現化でき、TD方向の延伸倍率を無段変換可能なシート状物の延伸機が可能となる。
【0025】
尚、本実施例では勾配部の全てのレール17を同一角度で示したが、延伸部入口から延伸部中央部にかけ角度を徐々に急にし、延伸部中央部から延伸部出口にかけ角度を徐々に戻すよう配置できることは言うまでもない。また、レール17をベースとし、その上面にガイドレール5〜7を配設し、そのベースを直列に連結することで、延伸倍率を無段変換可能なガイドレールとすることも可能である。
【0026】
更に、レール17連結部に最低2箇所(延伸部入口,出口)の凹凸部が発生するが、等長リンク31の軸受けローラ91,92とレールの接触面は必ず凸部となるようレール,リンクを配置することで、軸受けローラ91,92に与える負荷を軽減する方法や連結部の段差部、或いは、軸受けローラ91,92とレールの接触面側の全面をガイドレール軌跡に追従可能な薄肉板で覆い、段差を防止させることも可能である。
【0027】
上記実施例によれば、高倍率の延伸や延伸区間を短縮させた急激な延伸、特にTD方向の高倍率延伸に対して対応可能なシート状物の延伸機を実現できる。また、多関節ガイドレールを用いることにより、TD方向の延伸倍率を無段変換可能にすることができる。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、シート状物の性能の劣化や破断または厚み斑の発生が抑制されたシート状物の延伸装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例である横延伸機の平面図である。
【図2】本発明の実施例である等長リンクの断面図である。
【図3】本発明の延伸機平面方向の延伸部拡大図である。
【図4】延伸部角度と掴みピッチ保持率の関係図である。
【図5】本発明のその他の実施例である等長リンクの断面図である。
【図6】本発明のその他の実施例を示す多関節ガイドレールの延伸部を示す平面図である。
【図7】従来の延伸機平面方向の延伸部拡大図である。
【符号の説明】
1…シート状物、2…掴み装置、3…無端リンク装置、4…入口スプロケット、5…シート側ガイド、6…中間ガイド、7…反シート側ガイド、8…出口スプロケット、10…シート側リンク軸、11…反シート側リンク軸、12…リンクプレート、13…チェーンリンク、21…把持部、31…等長リンク装置、91,92…軸受けローラ。
Claims (2)
- シート状物の両端側それぞれに配置されこのシート状物の両端部を各々把持して前記シート状物を入口側から出口側に案内するように回転駆動される無端リンク装置の対と、これら無端リンク装置の各々に配置され複数の掴み装置を前記入口側から前記出口側に移動させるためのガイドレールであってこれらのガイドレールが前記入口側から出口側に末広がり状に配置されたガイドレールとを備えたシート状物の延伸装置であって、
前記ガイドレールの各々が、前記シート状物の一端部側に配置され前記掴み装置に連結された複数の第1のローラを案内する第1のガイドレールと、前記第1のガイドレールの前記シート状物と反対の側に配置され隣り合う前記第1のローラの対と等長リンクにより連結された第2のローラの複数を案内する第2のガイドレールとを有するガイドレールの組とを備え、隣り合う前記第1のローラを連結してこれらローラ間の方向に拘束するチェーンリンクとを有し、隣り合う前記第2のローラを連結する部材を有さないシート状物の延伸装置。 - 請求項1に記載のシート状物の延伸装置であって、前記ガイドレールが複数のレールが直列に連結されその連結角度を変化させて末広がり状に配置されたレール群により構成されたシート状物の延伸装置。
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