JP3855902B2 - ヒートポンプ式給湯機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ヒートポンプ式給湯機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ヒートポンプ式給湯機は、一般には図5に示すように、貯湯タンク70を有するタンクユニット71と、冷凍サイクル72を有するヒートポンプユニット73とを備える。また、冷凍サイクル72は、圧縮機74と水熱交換器75と膨張弁77と空気熱交換器(蒸発器)78とを順に接続して構成される。そして、タンクユニット71は、上記貯湯タンク70と循環路79とを備え、この循環路79には、水循環用ポンプ80と熱交換路81とが介設されている。この場合、熱交換路81は水熱交換器75にて構成される。
【0003】
上記装置においては、圧縮機74を駆動させると共に、ポンプ80を駆動(作動)させると、貯湯タンク70の底部に設けた取水口から貯溜水(温湯)が循環路79に流出し、これが熱交換路81を流通する。そのときこの温湯は水熱交換器75によって加熱され(沸き上げられ)、湯入口から貯湯タンク70の上部に返流される。これによって、貯湯タンク70に高温の温湯を貯めるものである。
【0004】
近年、冷媒として炭酸ガス等の超臨界冷媒を使用する場合がある。そして、冷媒に炭酸ガス等を使用したヒートポンプユニットを備えたヒートポンプ式給湯機としては、蒸発器の温度と、圧縮機の吸入(吸気)側温度と、圧縮機の吐出側温度等に基づいてサイクル効率が最適になるように圧縮機の運転周波数を制御するものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−139257号公報(第3頁、図1、図2)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種のヒートポンプ式給湯機は、その性質上、圧縮機の運転周波数が一定であれば、外気温度が低下すれば湯加熱能力(沸上能力)も低下し、逆に外気温度が上昇すれば湯加熱能力(沸上能力)が上昇する。そして、冷媒に炭酸ガス等を使用した場合には、冷凍サイクルは、図4に示す実線に示すものとなる。この際、沸き上げ運転中に貯湯タンクから循環路79への入水温度が変化(上昇)すれば、熱交換路81への入水温度が上昇し、この図4の仮想線(2点鎖線)で示すように、放熱過程でのエンタルピ差が狭くなり、湯加熱能力及びCOPが減少していた。
【0007】
このように、この種のヒートポンプ式給湯機では、外気温度や入水温度等の環境条件、又は機器(ヒートポンプ式給湯機)の経年変化等によって湯加熱能力が変化する。このため、従来のヒートポンプ式給湯機では、運転開始時において、必要湯加熱能力となるような運転周波数で圧縮機を駆動させても運転中に外気温度等が変化してその湯加熱能力が変化して、湯加熱能力に過不足が生じる場合があった。このため、例えば、ある能力で所定時間だけ運転して所定量の湯量を沸き上げることができる場合において、実際の能力がこの能力から低下していれば(湯加熱能力過少の場合)、上記所定時間内に必要湯量の温湯を沸き上げることができない。そのため、湯が不足する湯切れ現象が生じるおそれがある。逆に、湯加熱能力過多の場合、必要湯量の温湯が沸き上がっているにもかかわらず、無駄な沸き上げ運転が継続されてランニングコスト高となる効率の悪い運転を行うことになっていた。
【0008】
この発明は、上記従来の欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、外気温度等の環境条件が変化しても、湯加熱能力過多や湯加熱能力過少になることを防止できて、適正な湯加熱能力にて運転することが可能となって、効率よく所定時間でユーザが必要とする量の湯を沸き上げることが可能なヒートポンプ式給湯機を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで請求項1のヒートポンプ式給湯機は、ヒートポンプユニット2にて加熱された温水を水循環用ポンプ13で貯湯タンク3に貯湯するヒートポンプ式給湯機であって、外気温度等に応じて予め設定される初期運転周波数にて上記ヒートポンプユニット2の圧縮機25を駆動する沸き上げ運転を行い、その運転中に湯加熱能力を検出して、検出した湯加熱能力の所定時間毎の積算平均値を求め、この積算平均値が必要湯加熱能力と相違すれば、上記圧縮機25の運転周波数を調整して、湯加熱能力を必要湯加熱能力に近づけるように制御し、さらに、上記運転中の湯加熱能力を、加熱前の低温水の温度と加熱後の高温水の温度との差、及び上記水循環用ポンプ13の出力とで検出することを特徴としている。
【0010】
請求項1のヒートポンプ式給湯機では、運転中に湯加熱能力を検出して、その検出した湯加熱能力と必要湯加熱能力とを比較して、相違すれば、この必要湯加熱能力に近づけることができる。このため、運転中において環境条件等が変化したとしても、湯加熱能力を適切な能力とすることができ、湯加熱能力の過不足を回避することができる。しかも、所定時間毎の積算平均値を求め、この湯加熱能力を必要湯加熱能力と比較して、必要湯加熱能力に近づけるようにしたので、安定して湯加熱能力に過不足を生じさせないようにすることができる。さらに、運転中の湯加熱能力を、加熱前の低温水の温度と加熱後の高温水の温度との差、及び上記水循環用ポンプ13の出力とで検出するので、湯加熱能力を簡単かつ確実に検出することができ、必要湯加熱能力に近づける制御の信頼性が向上する。
【0013】
請求項2のヒートポンプ式給湯機は、上記必要湯加熱能力は、通常沸き上げモードと、この通常沸き上げモードよりも低い能力の低沸き上げモードと、この通常沸き上げモードよりも高い能力の高沸き上げモードとを有することを特徴としている。
【0014】
上記請求項2のヒートポンプ式給湯機では、必要湯加熱能力は、通常沸き上げモードと、この通常沸き上げモードよりも低い能力の低沸き上げモードと、この通常沸き上げモードよりも高い能力の高沸き上げモードとを有するので、3種類の沸き上げモードの沸き上げ運転を行うことができる。すなわち、通常沸き上げモードとして、定格能力としての4500Wである場合、例えば、低沸き上げモードを4000Wとし、高沸き上げモードを5000Wとすることができる。このため、低沸き上げモードとすれば、同じ量の湯を沸き上げるためには、通常沸き上げモード時よりも長く運転することになるが、この低沸き上げモードでは圧縮機25の運転周波数を低下させることになるので、圧縮機25の長時間運転による運転ストレスの発生を抑制することができると共に、圧縮機25の駆動による騒音を低下させることができる。また、高沸き上げモードとすれば、同じ量の湯を沸き上げるためには、通常沸き上げモード時よりも短い時間でよく、湯が不足した場合等に短時間にその不足分を沸き上げることができる。
【0015】
請求項3のヒートポンプ式給湯機は、上記ヒートポンプユニット2の冷凍サイクルの高圧側が超臨界圧力で運転することを特徴としている。
【0016】
上記請求項3のヒートポンプ式給湯機では、超臨界冷媒を用いることにより、ヒートポンプユニット2にて加熱される低温水の温度(入水温度)が上昇すれば、湯加熱能力及びCOPが減少する特徴があるので、上記各作用が顕著に現われる。また、オゾン層の破壊、環境汚染等の問題がなく、地球環境にやさしいヒートポンプ式給湯機となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、この発明のヒートポンプ式給湯機の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1はこのヒートポンプ式給湯機の簡略図を示し、このヒートポンプ式給湯機は、低温水をヒートポンプユニット2にて沸き上げて貯湯タンク3に貯えるものであり、この貯湯タンク3に貯湯された温湯が図示省略の浴槽等に供給される。すなわち、貯湯タンク3には、その底壁に給水口5が設けられると共に、その上壁に出湯口6が設けられている。そして、給水口5から貯湯タンク3に水道水が供給され、出湯口6から高温の温湯が出湯される。また、貯湯タンク3には、その底壁に取水口10が開設されると共に、側壁(周壁)の上部に湯入口11が開設され、取水口10と湯入口11とが循環路12にて連結されている。そして、この循環路12に水循環用ポンプ13と熱交換路14とが介設されている。なお、給水口5には給水用流路8が接続されている。
【0018】
ところで、貯湯タンク3には、上下方向に所定ピッチで4個の残湯量検出器18a、18b、18c、18dと、給水温度検出手段19を構成する温度検出器19aとが設けられている。上記各残湯量検出器18a・・及び温度検出器19aは、例えば、それぞれサーミスタからなる。また、上記循環路12には、熱交換路14の上流側に入水サーミスタ20aが設けられると共に、熱交換路14の下流側に出湯サーミスタ21aが設けられている。
【0019】
そして、ヒートポンプユニット2は冷凍サイクルを備え、この冷凍サイクルは、圧縮機25と、熱交換路14を構成する水熱交換器26と、電動膨張弁(減圧機構)27と、空気熱交換器(蒸発器)28とを順に接続して構成される。すなわち、圧縮機25と水熱交換器26とを冷媒通路29にて接続し、水熱交換器26と電動膨張弁27とを冷媒通路30にて接続し、電動膨張弁27と空気熱交換器28とを冷媒通路31にて接続し、空気熱交換器28と圧縮機25とをアキュームレータ32が介設された冷媒通路33にて接続している。また、空気熱交換器28にはこの空気熱交換器28の能力を調整するファン34が付設されている。さらに、このヒートポンプユニット2には、外気温度を検出する外気温サーミスタ36aが配置されている。そして、冷媒に超臨界で使用する超臨界冷媒(例えば、炭酸ガス)を用いた。すなわち、ヒートポンプユニット2の冷凍サイクルの高圧側が超臨界圧力で運転することになる。
【0020】
ところで、このヒートポンプ式給湯機の制御部は、図2に示すように、外気温検出手段36と、入水温度検出手段20と、出湯温度検出手段21と、後述するように圧縮機25の運転周波数等を設定する設定手段39と、各検出手段20、21、36からのデータ(数値)等が入力される制御手段38とを備える。この場合、図1に示すように、外気温検出手段36は外気温サーミスタ36aにて構成することができ、入水温度検出手段20は入水サーミスタ20aにて構成することができ、出湯温度検出手段21は出湯サーミスタ21aにて構成することができる。なお、上記制御手段38は例えばマイクロコンピュータを用いて構成することができる。
【0021】
上記のように構成されたヒートポンプ式給湯機によれば、圧縮機25を駆動させると共に、水循環用ポンプ13を駆動(作動)させると、貯湯タンク3の底部に設けた取水口10から貯溜水(低温水)が流出し、これが循環路12の熱交換路14を流通する。そのときこの温湯は水熱交換器26によって加熱され(沸き上げられ)、湯入口11から貯湯タンク3の上部に返流される。このような動作を継続して行うことによって、貯湯タンク3に高温の温湯を貯湯することができる。この場合、現状の電力料金制度は深夜の電力料金単価が昼間に比べて安価に設定されているので、この運転は、低額である深夜時間帯(例えば、23時から7時までの時間帯)に行うものである。
【0022】
すなわち、深夜時間(23時から次の日の午前7時)帯のある時刻(例えば、深夜時間開始後である24時等)から所定時間の間だけ運転して、所定時刻(深夜時間終了時刻、つまり午前7時)で所定容量(例えば、貯湯タンク3の容量)の湯を沸き上げる沸き上げ運転を行うものである。また、一日の必要湯量がこの貯湯タンク3の容量を越える場合には、深夜時間の運転を行った後、さらに深夜時間外の昼間において追加運転を行って、その一日の必要湯量を確保するものである。これによって、貯湯タンク3の湯がなくなるという「湯切れ」現象を回避するようにして、ユーザが安心して貯湯タンク3の湯を使用することができるようにしている。
【0023】
ところで、上記ヒートポンプ式給湯機において、圧縮機25の運転周波数が一定とした場合、外気温度が低下すれば湯加熱能力(沸上能力)も低下し、逆に外気温度が上昇すれば湯加熱能力(沸上能力)が上昇する。すなわち、図3に示すように、例えば、外気温度が5℃程度のときに、圧縮機25の運転周波数を75Hz程度とすれば、能力(湯加熱能力)が4500W(いわゆる定格能力)となるが、外気温度が低下すれば、運転周波数を上昇させなければ、4500Wを維持できず、逆に外気温度が上昇すれば、運転周波数を下降させることによって、4500Wを維持することができる。また、入水温度が上昇すれば、湯加熱能力が低下する。
【0024】
そして、ヒートポンプ式給湯機の湯加熱能力(必要加熱能力)としては、表1の周波数維持の欄におけるように、定格能力としての4500Wの能力の運転を行う通常沸き上げモードと、この通常沸き上げモードよりも低い能力(例えば、4000W)の能力の運転を行う低沸き上げモードと、この通常沸き上げモードよりも高い能力(例えば、5000W)の運転を行う高沸き上げモードとを有する。ここで、低沸き上げモードは、例えば、圧縮機25の運転周波数を通常沸き上げモード時よりも低下させるものであり、運転ストレスの解消や低騒音での運転が可能である。すなわち、深夜時間帯での運転時においてこの低沸き上げモードで運転を行えば、長時間運転による圧縮機25の運転ストレスの発生を抑制して、圧縮機25の長寿命化を図ることができ、さらには、低騒音運転が可能となって深夜時間帯において騒音に悩まされることなく快適生活を営むことができる。また、高沸き上げモードは、圧縮機25の運転周波数を通常沸き上げモード時よりも上昇させるものであり、沸き上げ時間の短縮を図っている。すなわち、貯湯タンク3内の湯が不足する場合等において、この高沸き上げモードで運転することによって、短時間でその不足分を沸き上げるものであって、貯湯タンク3内の湯がなくなる「湯切れ」現象を回避することができる。
【0025】
【表1】
【0026】
このため、通常沸き上げモードは、これらの外気温度等の環境条件に対応して、運転周波数(初期運転周波数)を上記設定手段39にて次の表2のように決定(設定)している。この場合、出湯温度(出湯サーミスタ21aの温度であって、ヒートポンプユニット2に沸き上げられた温湯の温度)が所定温度(例えば、75℃)である場合について、外気温度や入水温度(入水サーミスタ20aの温度であって、ヒートポンプユニット2にて沸き上げられる前の低温水の温度)等の環境条件に基づいて、圧縮機25の運転周波数を決定(設定)し、環境条件毎に設定されたこの運転周波数で沸き上げ運転を行うようにしている。
【0027】
【表2】
【0028】
また、この表2では、外気温度を季節モード1から季節モード7の7モードに分け、入水温度を入水モード1から入水モード7の7モードに分けている。例えば、季節モード1を5℃以下とし、季節モード2を5℃を越えかつ9℃以下とし、季節モード3を9℃を越えかつ13℃以下とし、季節モード4を13℃を越えかつ18℃以下とし、季節モード5を18℃を越えかつ23℃以下とし、季節モード6を23℃を越えかつ28℃以下とし、季節モード7を28℃を越える場合としている。また、入水モード1を5℃以下とし、入水モード2を5℃を越えかつ10℃以下とし、入水モード3を10℃を越えかつ15℃以下とし、入水モード4を15℃を越えかつ20℃以下とし、入水モード5を20℃を越えかつ27℃以下とし、入水モード6を27℃を越えかつ33℃以下とし、入水モード7を33℃を越える場合としている。なお、夏場においても水道水の温度が33℃を越える場合はほとんどないので、入水モード7の基準を33℃としている。
【0029】
そして、例えば、圧縮機25の運転周波数は、季節モード1でかつ入水モード1である場合には110Hzとされ、季節モード1でかつ入水モード7である場合にも110Hzとされ、季節モード7でかつ入水モード1である場合には46Hzとされ、季節モード7でかつ入水モード7である場合にも46Hzとされる。この場合、各入水モードにおいては、季節モード1からモードが増加するに従って運転周波数が減少する。また、各季節モードにおいては、各入水モードで同じ運転周波数としているが、入水モード1からそのモードが増加するに従って運転周波数が増加するようにするのが好ましい。すなわち、外気温度が高くなるほど圧縮機25の運転周波数を減少させ、入水温度が高くなるほど圧縮機25の運転周波数を増加させているのが好ましい。なお、各季節モードにおいて、入水モード1からモードが増加するに従って運転周波数を増加させる場合、入水モード毎に変化させても、数モードを同一の周波数としてもよい。また、各入水モードにおいては、季節モード1からモードが増加するに従って運転周波数を減少させる場合は、季節モード毎に相違させるのが好ましい。
【0030】
また、低沸き上げモードでは、次の表3のように、通常沸き上げモード時よりも圧縮機25の運転周波数を低下させている。この場合、例えば、FSRS1を10Hzとし、FSRS2を10Hzとし、FSRS3を6Hzとし、FSRS4を6Hzとし、FSRS5を4Hzとし、FSRS6を4Hzとし、FSRS7を4Hzとしている。すなわち、各季節モードにおいてこれらの補正量だけ減じた運転周波数で運転するようにしている。これによって、低沸き上げモード時の初期の湯加熱能力を、通常沸き上げモード時の初期の湯加熱能力が4500Wであれば、例えば4000Wとなるようにしている。
【0031】
【表3】
【0032】
また、高沸き上げモードでは、次の表4のように、通常沸き上げモード時よりも圧縮機25の運転周波数を上昇させている。この場合、例えば、FSRP1と0HzとFSRP2とFSRP7とをそれぞれ0Hzとし、FSRP3を6Hzとし、FSRP4を6Hzとし、FSRP5を4Hzとし、FSRP6を4Hzとしている。すなわち、季節モード3〜6においてこれらの補正量だけ加えた運転周波数で運転するようにしている。これによって、高沸き上げモード時の初期の湯加熱能力を、通常沸き上げモード時の初期の湯加熱能力が4500Wであれば、例えば5000Wとなるようにしている。
【0033】
【表4】
【0034】
このように、外気温度および入水温度に応じた運転周波数を、各モード毎に上記設定手段39にて決定(設定)して、これを表2のようなテーブルとして制御手段38に入力しておき、これに応じて運転すれば、初期段階では各モード毎の運転を行うことができる。しかしながら、運転中の外気温度や入水温度等の環境条件変化や長年使用したことによる経年変化により、上記初期運転周波数では、湯加熱能力に過不足が生じるおそれがある。
【0035】
すなわち、表1に示すように、低沸き上げモードにおいて、初期段階(初期モード)で湯加熱能力が4000Wである場合に、3500Wや4500Wとなったり、また、通常沸き上げモードにおいて、初期段階で湯加熱能力が4500Wである場合に、4000Wや5000Wとなったり、また、高沸き上げモードにおいて、初期段階で湯加熱能力が5000Wである場合に、4500Wや5500Wとなったりする。
【0036】
このため、このヒートポンプ式給湯機では、運転中において湯加熱能力を検出し、この検出した湯加熱能力を、各沸き上げモード毎に相違する必要湯加熱能力と比較して、相違すれば、圧縮機25の運転周波数を調整して、必要湯加熱能力に近づけるようにする。すなわち、上記表1のように、例えば、低沸き上げモードにおいて、検出した湯加熱能力が3500Wであれば、4000Wとなるように、圧縮機25の運転周波数を増加させ、検出した湯加熱能力が4500Wであれば、4000Wとなるように、圧縮機25の運転周波数を減少させる。また、通常沸き上げモードにおいて、検出した湯加熱能力が4000Wであれば、4500Wとなるように、圧縮機25の運転周波数を増加させ、検出した湯加熱能力が5000Wであれば、4500Wとなるように、圧縮機25の運転周波数を減少させる。また、高沸き上げモードにおいて、検出した湯加熱能力が4500Wであれば、5000Wとなるように、圧縮機25の運転周波数を増加させ、検出した湯加熱能力が5500Wであれば、5000Wとなるように、圧縮機25の運転周波数を減少させる。
【0037】
ところで、湯加熱能力は、加熱前の低温水の温度(入水温度)と加熱後の高温水の温度(出湯温度)との差、及び上記水循環用ポンプ13の出力とで検出する。すなわち、次の数1の式から求めることができる。
【0038】
【数1】
【0039】
このように、湯加熱能力(沸き上げ能力)CAP=係数×ポンプ出力×(出湯温度−入水温度)で求めることができる。この場合、入水温度は入水サーミスタ20aにて検出することができ、出湯温度は出湯サーミスタ21aにて検出することができる。また、所定時間毎に沸き上げ能力(湯加熱能力)の積算平均値を求めることも可能で、この場合、上記能力を所定時間毎に算出して、この合計から積算平均値を次の数2の式のように求める。ここで、CAPAVは平均能力であり、ΣCAPはCAP(湯加熱能力)の積算値であり、NSAMPは積算回数である。
【0040】
【数2】
【0041】
従って、所定時間毎の積算平均値を求め、この湯加熱能力を必要湯加熱能力と比較して、必要湯加熱能力に近づけるようにすれば、安定して湯加熱能力に過不足を生じさせないようにすることができる。これによって、効率のよい運転が可能であると共に、所定時間でユーザが必要とする湯量の湯を沸き上げることができる。
【0042】
ところで、初期運転周波数を決定する場合、外気温度に代えて、給水温度(水道水の温度)を用いてもよい。これは、水道水の温度が外気温度と略同一か又は略比例するので、この水道水の温度に基づいて運転周波数を制御しても、初期湯加熱能力による運転を行うことができるからである。この場合、温度検出器19aにて構成する給水温度検出手段19にてこの給水温度を検出することができる。すなわち、初期運転を行う場合、上記ヒートポンプユニット2の圧縮機25の運転周波数を、外気温度、貯湯タンク3へ供給する水道水の温度、上記低温水の温度(入水温度)、及び上記ヒートポンプユニット2にて沸き上げられる温湯の温度(出湯温度)のうちいずれかの温度に基づいて制御することが可能であり、好ましくはこれらの温度のうち2種類以上に基づくのがよい。また、湯加熱能力を調整する場合、上記運転周波数の調整に加えて、上記空気熱交換器28に付設されたファン34の回転数を調整するようにしてもよい。
【0043】
以上にこの発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、各沸き上げモードでの運転周波数としては、設定する能力(必要湯加熱能力)等に応じて変更することができる。さらに、各季節モードや各入水モードの温度範囲、モード数の変更も自由である。また、運転中に行う湯加熱能力の比較を、所定時間毎に行っても、連続的に行ってもよい。所定時間毎に行う場合の間隔としては任意に設定でき、例えば、10〜15分間隔としたり、3〜5分間隔としたりすることができる。さらに、各沸き上げモード毎にその比較間隔を相違させたり、同一間隔としたりすることができる。また、沸き上げモードの切換えは、このヒートポンプ式給湯機に付設される運転操作用のリモコン(台所用や浴室用等があり、どちらのリモコンであってもよい)にてユーザ等が任意に行えるようにすることができる。これにより、ユーザは希望する運転を簡単かつ確実に行わせることができる。
【0044】
なお、上記実施の形態のヒートポンプ式給湯機では、貯湯タンク3と、この貯湯タンク3に連結される循環路12と、この循環路12に介設される熱交換路14とを備え、この熱交換路14をヒートポンプユニットにて加熱して、上記貯湯タンク3の下部から循環路12に流出した低温水を沸き上げてこの貯湯タンク3の上部に出湯する運転が可能であるが、ヒートポンプ式給湯機としては、低温水をヒートポンプユニット2にて沸き上げて貯湯タンク3に貯えるものであればよいので、このような循環路12を有さなくてもよい。すなわち、ヒートポンプユニット2にて沸き上げるための低温水を貯湯タンク3以外から供給したりしてもよい。また、冷凍サイクルの冷媒としては、炭酸ガス、エチレン、エタン、酸化窒素等の超臨界で使用する超臨界冷媒を用いるのが好ましいが、ジクロロジフルオロメタン(R−12)やクロロジフルオロメタン(R−22)のような冷媒であってもよい。
【0045】
【発明の効果】
請求項1のヒートポンプ式給湯機によれば、運転中において環境条件等が変化したとしても、湯加熱能力を適切な能力とすることができ、湯加熱能力の過不足を回避することができる。しかも、所定時間毎の積算平均値を求め、この湯加熱能力を必要湯加熱能力と比較して、必要湯加熱能力に近づけるようにしたので、安定して湯加熱能力に過不足を生じさせないようにすることができる。これによって、効率のよい運転が可能であると共に、所定時間でユーザが必要とする湯量の湯を沸き上げることができる。さらに、湯加熱能力を簡単かつ確実に検出することができ、必要湯加熱能力に近づける制御の信頼性が向上する。このため、効率のよい運転が一層可能であり、しかもユーザは正確な沸き上げ時間を知ることができる。
【0047】
請求項2のヒートポンプ式給湯機によれば、低沸き上げモードとすれば、同じ量の湯を沸き上げるためには、通常沸き上げモード時よりも長く運転することになるが、この低沸き上げモードでは圧縮機の運転周波数を低下させることになるので、長時間運転による圧縮機の運転ストレスの発生を抑制して、圧縮機の長寿命化を図ることができ、さらには、低騒音運転が可能となって深夜時間帯において騒音に悩まされることなく快適生活を営むことができる。また、高沸き上げモードとすれば、同じ量の湯を沸き上げるためには、通常沸き上げモード時よりも短い時間でよく、湯が不足した場合等に短時間にその不足分を沸き上げることができる。しかも、各沸き上げモード時のおいても、その必要湯加熱能力に近づけることができ、安定した運転が可能である。
【0048】
請求項3のヒートポンプ式給湯機によれば、超臨界冷媒を用いることにより、ヒートポンプユニットにて加熱される低温水の温度(入水温度)が上昇すれば、湯加熱能力及びCOPが減少する特徴があるので、上記各効果が顕著に現われる。また、オゾン層の破壊、環境汚染等の問題がなく、地球環境にやさしいヒートポンプ式給湯機となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のヒートポンプ式給湯機の実施の形態を示す簡略図である。
【図2】上記ヒートポンプ式給湯機の制御部の簡略ブロック図である。
【図3】上記ヒートポンプ式給湯機の能力と圧縮機の運転周波数と外気温度との関係を示すグラフ図である。
【図4】従来のヒートポンプ式給湯機の入水が上昇した場合の問題点を説明する冷凍サイクル図である。
【図5】従来のヒートポンプ式給湯機の簡略図である。
【符号の説明】
2 ヒートポンプユニット
3 貯湯タンク
13 水循環用ポンプ
25 圧縮機
Claims (3)
- ヒートポンプユニット(2)にて加熱された温水を水循環用ポンプ(13)で貯湯タンク(3)に貯湯するヒートポンプ式給湯機であって、外気温度等に応じて予め設定される初期運転周波数にて上記ヒートポンプユニット(2)の圧縮機(25)を駆動する沸き上げ運転を行い、その運転中に湯加熱能力を検出して、検出した湯加熱能力の所定時間毎の積算平均値を求め、この積算平均値が必要湯加熱能力と相違すれば、上記圧縮機(25)の運転周波数を調整して、湯加熱能力を必要湯加熱能力に近づけるように制御し、さらに、上記運転中の湯加熱能力を、加熱前の低温水の温度と加熱後の高温水の温度との差、及び上記水循環用ポンプ(13)の出力とで検出することを特徴とするヒートポンプ式給湯機。
- 上記必要湯加熱能力は、通常沸き上げモードと、この通常沸き上げモードよりも低い能力の低沸き上げモードと、この通常沸き上げモードよりも高い能力の高沸き上げモードとを有することを特徴とする請求項1のヒートポンプ式給湯機。
- 上記ヒートポンプユニット(2)の冷凍サイクルの高圧側が超臨界圧力で運転することを特徴とする請求項1又は請求項2のヒートポンプ式給湯機。
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