JP3851581B2 - 地盤の地耐力補強構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、構造体の荷重に対する地盤の地耐力を補強するための技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図8〜図10は、それぞれ深礎構造体を支持対象とする、従来の技術による地盤の地耐力補強構造を示すものである。なお、これらの図において、参照符号101は地下深いところに存在する比較的堅固な支持地盤、102は支持地盤101上にあって地下水に飽和された沖積層等からなる軟弱地盤、103はケーソンあるいはフーチング基礎等の深礎構造体である。
【0003】
まず図8は、深礎延長によって地耐力を確保するための方法を示す縦断面図である。この方法は、深礎構造体103の底面地盤を掘り下げて、軟弱地盤102から支持地盤101内に達する深礎104を構築するものである。しかしながら、この方法によれば、掘削深度が深くなるので、下部工の設計照査が必要であり、しかも、堅固な土留めを構築して、施工の安全性に留意する必要がある。また、支持地盤101が吸水によるスレーキングが生じやすいような地質である場合では、スレーキングによる支持地盤101の劣化防止対策も必要である。
【0004】
次に図9は、グラウト注入による地耐力補強方法を示す縦断面図である。この方法においては、深礎杭105による地耐力補強対象領域の地盤102aを、超微粒子セメント(グラウト)の注入により改良するもので、深礎杭105の形状の変更や、図8のような及び深礎延長等を行わないため、上下部工の設計照査が不要であり、また、新たな掘削が生じないという利点がある。しかしながら、グラウトの注入量及び改良強度を決定するためには、予め試験注入を行う必要があり、支持力を確保できる深度までグラウトの注入を行う必要がある。しかも、グラウトの注入による地盤改良効果が試験施工での載荷試験からしか確認できないため、地耐力補強の確実性の点で問題がある。
【0005】
図10は、鉄筋補強工(GRF工法)による地耐力補強方法を示すもので、(A)は縦断面図、(B)は平面図である。この方法は、深礎構造体103の側面部に、放射状に延びる多数の鉄筋補強材106を設置し、補強材106の剪断抵抗力によって、深礎構造体103に作用する荷重及び深礎構造体103の自重を懸垂状に支持するものである。この方法によれば、上述のグラウト注入による方法と同様、深礎構造体103の形状変更及び延長がないため、上下部工の設計照査が不要であり、また、新たな掘削を生じないという利点がある。しかしながら、設計法が確立されておらず、しかも、補強材106の曲げ方向の変形量が大きくなるおそれがあり、経済性及び信頼性に欠けるといった問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような問題に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、地盤の地耐力補強において、施工の合理化、補強の信頼性の確保及び安全性の向上を図ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
従来の技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る地盤の地耐力補強構造は、構造体の下側地盤に削孔された所要数のボーリング孔内にそれぞれ補強杭が打設され、この補強杭は、前記構造体の底部に埋設された支圧板と、上端を前記支圧板に支承されて前記ボーリング孔内を延びると共にこのボーリング孔と非定着の鋼管と、この鋼管の内周に挿通され下端が前記ボーリング孔の下部に達する金属芯材と、前記鋼管の内周から前記ボーリング孔の下部に充填され前記ボーリング孔と定着された固結材からなり、前記支圧板と鋼管の上端部との間、又は前記鋼管の継手部分に、弾性体又は弾性体と塑性変形体の積層体からなる変形同調体が介在され、この変形同調体は、鉛直方向の変形によって地盤及び補強杭の分担荷重を均一化させるものである。補強杭は、ボーリング孔の削孔、ボーリング孔内の鋼管への金属芯材挿入、及び固結材の注入といった工法によって、容易に施工することができる。
【0008】
請求項2の発明に係る地盤の地耐力補強構造は、請求項1に記載の構成において、構造体がフーチング基礎、ケーソン、又は深礎杭等、深礎構造体である。すなわち、フーチング基礎、ケーソン、又は深礎杭等の深礎構造体に対する地盤の支持力を有効に高める手段として実施される。
【0009】
【0010】
請求項3の発明に係る地盤の地耐力補強構造は、請求項1又は2に記載の構成において、補強杭が非鉛直に打設された斜杭を含むものである。このため、補強領域の拡大あるいは補強効率の向上が図られる。
【0011】
【0012】
請求項4の発明に係る地盤の地耐力補強構造は、請求項1に記載の構成において、鋼管が、下端に掘削ビットを有する削孔ケーシングからなる。すなわち、ボーリング孔の削孔に用いた削孔ケーシングを、そのまま補強杭の要素として転用したものである。
【0013】
請求項5の発明に係る地盤の地耐力補強構造は、請求項1に記載の構成において、固結材が、セメント、グラウト又はモルタル等の無機材から選択される。このため、補強杭から地盤への荷重伝達機能を確実に得ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る地盤の地耐力補強構造の好ましい実施の形態を示す縦断面斜視図である。この図1において、参照符号Gは岩盤等からなる補強地盤、参照符号1はフーチング基礎あるいはケーソン等の深礎構造体、参照符号2は深礎構造体1の底部11から地盤Gに鉛直下方へ延びる補強杭としての口径杭を示している。
【0015】
口径杭2は、鉄筋コンクリートで構築された深礎構造体1の底部11に埋設された支圧板21と、地盤Gに鉛直方向に削孔されたボーリング孔Ghにその下部近傍まで挿入され、上端(杭頭)が深礎構造体1の底部11に埋設されると共に支圧板21の下面に支承された鋼管22と、この鋼管22の内周に挿通され下端部が鋼管22の下端から突出してボーリング孔Ghの下部に達する異形鉄筋あるいは鋼材等からなる金属芯材23と、鋼管22の内周及びボーリング孔Ghの下部に充填され上端が鋼管22の下部外周に回り込んだ状態にある固結材24とで構成される。固結材24は、セメントミルク、グラウトあるいはモルタル等の無機材が固化したものである。
【0016】
鋼管22は、地盤Gを削孔してボーリング孔Ghを形成する削孔手段として用いられたものであって、鋼管継手25を介して軸方向に複数連結され、下端には掘削ビット26が残存している。
【0017】
本形態の口径杭2によれば、鋼管22の上端部及び支圧板21は、杭頭定着部2aを構成しており、この杭頭定着部2aは、深礎構造体1の底部11からの構造体の荷重を受け、これを支持する機能を有する。また、鋼管22の上端部及び下端部を除く外周面は、ボーリング孔Ghの内周面とは定着しておらず、非定着部2bとなっている。そして、固結材24は、ボーリング孔Ghの内周面すなわち地盤Gの掘削面に定着されることによって、杭下部定着部2cを構成しており、この杭下部定着部2cは、杭頭定着部2aから非定着部2bを介して作用する軸荷重を、地盤Gの掘削面との摩擦により支持する機能、及び全長にわたって地盤Gに伝達する機能を有する。
【0018】
したがって、本形態の口径杭2を所定の間隔で打設することによって、地盤Gの地耐力が著しく補強され、補強の信頼性が高いので、地盤Gへのセメント等の注入による改良や、下層支持地盤まで深掘りすることなく、深礎構造体1の底部11からの荷重を確実に支持することができる。
【0019】
杭頭定着部2aには、ばね、ゴム、又は鉛とゴムの積層構造体等からなる変形同調体27が装着されている。この変形同調体27は、支圧板21と鋼管22の上端部との間に介在している。
【0020】
変形同調体27は、ばね、あるいはゴム等の弾性特性や、鉛の塑性変形特性によって、地盤Gと口径杭2の鉛直変形を同等とすることができる。これを詳しく説明すると、地盤Gと口径杭2は、変形係数が異なるため、同一面で上載荷重を受ける場合、地盤Gが荷重を受け持つ比率が小さく、口径杭2の荷重分担が大きくなる。そこで、口径杭2の鉛直変形度合を調整し、地盤Gと均等に荷重を分担させるために、変形同調体27が設けられたものである。
【0021】
図2〜図4は、口径杭2の施工状況を工程順に示す縦断面斜視図で、参照符号Gaは、図1に示されるフーチング基礎あるいはケーソン等の深礎構造体1の底部11が施工される根切底面であり、すなわち予め、岩盤等からなる地盤Gが、前記深礎構造体1の構築に必要な深さに根切掘削される。
【0022】
図1に示される実施の形態による口径杭2の施工においては、まず図2に示されるように、根切底面Gaから、ケーシング掘りによって、地盤Gにボーリング孔Ghを削孔する。このケーシング掘りにおいては、下端に掘削ビット26を有する鋼管22をケーシングとして用い、削孔深さが深くなるのにしたがって、鋼管継手25を介して鋼管22を順次継ぎ足して延長して行く。
【0023】
所定深さのボーリング孔Ghの削孔が完了したら、図3に示されるように、根切底面Ga上に突出した鋼管22の上端開口22aから、異形鉄筋あるいは鋼材等からなる金属芯材23をその下端がボーリング孔Ghの底部に到達するまで挿入する。
【0024】
更に、鋼管22の上端開口22aから、セメントミルク、グラウトあるいはモルタル等の無機材からなる固結材24を注入し、これに合わせて、鋼管22を適当な高さまで引き上げる。そしてボーリング孔Ghの下部へ注入されて行く固結材24が、鋼管22の下部外周へ廻り込むまで十分に充填されたら、根切底面Ga上に突出した余分な鋼管22を取り外す。
【0025】
固結材24は、経時的に固化することによって、所要の機械的強度を発生すると共に、鋼管22及び金属芯材23と一体化され、ボーリング孔Ghの下部掘削面と定着される。なお、鋼管22の下側でペデスタル状に拡散させるようにしても良い。
【0026】
次に、図4に示されるように、根切底面Ga上に突出した鋼管22の上端に、ばね、ゴム、又は鉛とゴムの積層構造体等からなる変形同調体27を装着し、その上に、鋼鈑等からなる支圧板21を取り付ける。支圧板21は、鋼管22の断面積よりも十分に広い面積を持つものであって、その中央には、金属芯材23を挿通可能な小孔21aが開設されている。支圧板21の取り付けが完了したら、根切底面Ga上に、コンクリートの打設によって図1に示される深礎構造体1を構築する。これによって、支圧板21、変形同調体27及び鋼管22の上端部が、深礎構造体1の底部11に埋設され、施工を完了する。
【0027】
したがって、この地耐力補強構造は、根切底面Gaから、ボーリング孔Ghの削孔、ボーリング孔Gh内の鋼管22への金属芯材23の挿入、及び固結材24の注入といった手順で、所要数の口径杭2を打設することによって、容易に施工することができる。しかも、口径杭2を構成する鋼管22は、下端に掘削ビット26を設けてボーリング孔Ghの削孔に用いたものをそのまま残したものであるため、削孔後に新たに鋼管を挿入するといった作業は不要であり、この点でも、施工を著しく容易にすることができる。
【0028】
【0029】
【0030】
なお、図1においては、変形同調体27を口径杭2における杭頭定着部2aに設けたが、非定着部2bに設けても良い。この場合、変形同調体27は例えば鋼管22の継手部分に介在させる。
【0031】
上述した図1〜図4においては、口径杭2を鉛直に打設するものとして説明したが、地耐力補強地盤を構築する杭には、その打設角度によって、直杭と斜杭がある。図5〜図7は、このような直杭又は斜杭の配置例を概略的に示すもので、各図における(A)は縦断面図、(B)は(A)におけるB−B’線断面図である。
【0032】
まず図5は、全ての口径杭2を直杭2Aとして打設した場合の配置例である。すなわちこの配置例では、全ての口径杭2が、フーチング基礎又はケーソン等の深礎構造体1の底部11から、その下の地盤Gへ鉛直に延びている。
【0033】
次に図6は、外周側の口径杭2を斜杭2B、この斜杭2Bに包囲された領域の口径杭2を直杭2Aとして打設した場合の配置例である。すなわちこの配置例では、最も外周側の口径杭2が、下端がフーチング基礎又はケーソン等の深礎構造体1を鉛直方向に投影した領域よりも外側へ延びるように傾斜して打設され、それ以外の口径杭2は鉛直に延びている。したがって、地盤Gにおける地耐力補強領域G’が、図中に破線で示されるように、深礎構造体1を鉛直方向に投影した領域よりも外側へ拡大されるという利点がある。
【0034】
次に図7は、全ての口径杭2を斜杭2Bの組み杭として打設した場合の配置例である。すなわちこの配置例では、複数の口径杭2を一組として、下端が互いに開くように傾斜して打設されている。したがって、地盤Gにおける地耐力補強領域G’が、図中に破線で示されるように、深礎構造体1を鉛直方向に投影した領域よりも外側へ拡大されるばかりでなく、一種の筋交的な作用によって効率良く地耐力が補強されるため、図5及び図6の配置例に比較して、口径杭2の打設数を削減することができるという利点がある。
【0035】
【発明の効果】
請求項1の発明に係る地盤の地耐力補強構造によれば、構造体の下側地盤に削孔された所要数のボーリング孔内に打設された補強杭が、杭頭定着部から、地盤との非定着部を介して下部定着部から地盤へ、構造体の荷重を分散して伝達するため、補強杭の打設長さ及び打設数によって、適切な地耐力の補強を行うことができ、構造体の荷重に対する支持の信頼性を向上させることができ、従来の深礎延長による方法と異なり、施工の安全性を向上させることができる。しかも、弾性体又は弾性体と塑性変形体の積層体からなる変形同調体によって、補強杭と地盤の荷重分担が均一化されるので、補強杭自体の耐久性を高めることができ、ボーリング孔の削孔、ボーリング孔内の鋼管への金属芯材挿入、及び固結材の注入といった工法によって、補強杭を容易に施工することができるといった効果が実現される。
【0036】
請求項2の発明に係る地盤の地耐力補強構造によれば、請求項1の発明による効果によって、フーチング基礎、ケーソン、又は深礎杭等の深礎構造体に対する地盤の支持力を有効に高めることができる。
【0037】
【0038】
請求項3の発明に係る地盤の地耐力補強構造によれば、補強杭が非鉛直に打設された斜杭を含むことによって、補強領域の拡大あるいは補強効率の向上が図られるため、請求項1の発明による効果に加え、構造体の荷重に対する支持の信頼性が一層向上するといった効果が実現される。
【0039】
【0040】
請求項4の発明に係る地盤の地耐力補強構造によれば、ボーリング孔の削孔に用いた削孔ケーシングを、そのまま補強杭の鋼管として転用したものであるため、請求項1の発明による効果に加え、ボーリング孔から削孔ケーシングを抜き取って鋼管を挿入するといった煩雑さがなく、補強杭の施工が一層容易になるといった効果が実現される。
【0041】
請求項5の発明に係る地盤の地耐力補強構造によれば、固結材が、セメント、グラウト又はモルタル等の無機材からなるため、請求項1の発明による効果に加え、補強杭から地盤への荷重伝達機能を確実に得るといった効果が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る地盤の地耐力補強構造における実施の形態を示す縦断面斜視図である。
【図2】 図1の口径杭の施工において、地盤のボーリング状況を示す縦断面斜視図である。
【図3】 図1の口径杭の施工において、金属芯材の挿入及び固結材の注入状況を示す縦断面斜視図である。
【図4】 図1の口径杭の施工において、杭頭への変形同調体の装着状況を示す縦断面斜視図である。
【図5】 本発明に係る地盤の地耐力補強構造において、全ての口径杭を直杭として打設した場合の配置例を示すもので、(A)は縦断面図、(B)は(A)におけるB−B’線断面図である。
【図6】 本発明に係る地盤の地耐力補強構造において、外周側の口径杭を斜杭、その内側の口径杭を直杭として打設した場合の配置例を示すもので、(A)は縦断面図、(B)は(A)におけるB−B’線断面図である。
【図7】 本発明に係る地盤の地耐力補強構造において、全ての口径杭を斜杭の組み杭として打設した場合の配置例を示すもので、(A)は縦断面図、(B)は(A)におけるB−B’線断面図である。
【図8】 従来の技術として、深礎延長によって地耐力を確保するための方法を示す縦断面図である。
【図9】 従来の技術として、グラウトの注入による地耐力補強方法を示す縦断面図である。
【図10】 従来の技術として、鉄筋補強工による地耐力補強方法を示すもので、(A)は縦断面図、(B)は平面図である。
【符号の説明】
1 深礎構造体
11 底部
2 口径杭(補強杭)
2a 杭頭定着部
2b 非定着部
2c 杭下部定着部
21 支圧板
22 鋼管
23 金属芯材
24 固結材
25 鋼管継手
26 掘削ビット
27 変形同調体
G 地盤
Ga 根切底面
Gh ボーリング孔
Claims (5)
- 構造体の下側地盤に削孔された所要数のボーリング孔内にそれぞれ補強杭が打設され、この補強杭は、前記構造体の底部に埋設された支圧板と、上端を前記支圧板に支承されて前記ボーリング孔内を延びると共にこのボーリング孔と非定着の鋼管と、この鋼管の内周に挿通され下端が前記ボーリング孔の下部に達する金属芯材と、前記鋼管の内周から前記ボーリング孔の下部に充填され前記ボーリング孔と定着された固結材からなり、前記支圧板と鋼管の上端部との間、又は前記鋼管の継手部分に、弾性体又は弾性体と塑性変形体の積層体からなる変形同調体が介在され、この変形同調体は、鉛直方向の変形によって地盤及び補強杭の分担荷重を均一化させるものであることを特徴とする地盤の地耐力補強構造。
- 構造体がフーチング基礎、ケーソン、又は深礎杭等、深礎構造体であることを特徴とする請求項1に記載の地盤の地耐力補強構造。
- 補強杭が、非鉛直に打設された斜杭を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤の地耐力補強構造。
- 鋼管が、下端に掘削ビットを有する削孔ケーシングからなることを特徴とする請求項1に記載の地盤の地耐力補強構造。
- 固結材が、セメント、グラウト又はモルタル等の無機材から選択されることを特徴とする請求項1に記載の地盤の地耐力補強構造。
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