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JP3847240B2 - 押圧加熱ヒーターおよびその製造方法 - Google Patents

押圧加熱ヒーターおよびその製造方法 Download PDF

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JP3847240B2 JP2002280343A JP2002280343A JP3847240B2 JP 3847240 B2 JP3847240 B2 JP 3847240B2 JP 2002280343 A JP2002280343 A JP 2002280343A JP 2002280343 A JP2002280343 A JP 2002280343A JP 3847240 B2 JP3847240 B2 JP 3847240B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ベアチップを基板上に実装する際に用いるダイボンディングヒーターなど、被加熱物を押圧加熱する押圧加熱ヒーターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体ベアチップを基板上に実装する方法として、異方性導電膜などの樹脂系の接着材を使用したACF(ACF:Anisotropic Conductive Film)接続法、またはマルチチップモジュールに用いるようなAu−Si、Au−Snなどの低融点ロウ材を使用したフリップチップ接続法が行われている。
【0003】
例えば、フリップチップ接続法は、多層パッケージ基板上に半導体チップを載置して、その上面からセラミックヒーターを備えた押圧加熱ヒーターで加熱しながら押圧することによって、両者に備えたハンダバンプなどの接着材によって接合し配線を行うことができる。
【0004】
ボンディング用ヒーターは、使用する接着材を軟化もしくは溶融するために必要な熱を、半導体チップを介してハンダバンプに代表される接着材まで効率よく伝える必要がある。しかし、ヒーターの押圧面の温度分布が不均一で、局所的な高温部があると、半導体チップへ過剰な熱を供給し、半導体チップ自身の損傷もしくは、半導体チップ実装後の信頼性を著しく低下させる可能性がある。そのため、ヒーターの押圧面の温度分布が均一であることが重要である。
【0005】
また、生産効率の点から、所要の温度までの昇温速度が速く、押圧加熱接合後の接着材が固化するまでの温度降下速度が速いことが重要である。さらに半導体ベアチップを押圧加熱する際には、熱とともに圧力も加えるため押圧加熱ヒーターには、機械的強度や耐摩耗性、あるいは靭性が求められる。
【0006】
かかる押圧加熱ヒーターは、例えば、特許文献1に開示されているように、図5、図6に示すように被加熱物を押圧し、加熱するためのセラミックヒーター11と、セラミックツール12とからなり、セラミックヒーター11から発生した熱がセラミックツール12以外に伝熱することを防止するための断熱材13と、これらの部材を統合し他部材に結合するベース14とから構成されており、前記セラミックヒーター11は、セラミック体15中に発熱体16、および前記発熱体16の両端に接続されるリードパターン17を埋設させ、前記リードパターン17の一部を露出させ電極を取り出すためのリード端子18とから構成される。
【0007】
例えば特許文献1に示されている例では、セラミックヒーター11として熱伝導率10W/m・K以上の炭化珪素を用い、セラミックツール12に熱伝導率100W/m・K以上の窒化アルミニウム材料を用いることによって、セラミックヒーター11で発熱した熱を、セラミックツール12側に効率的に供給している。さらに、ここで断熱材13の熱伝導率を5W/m・Kの5〜30%程度の気孔率を有するムライトセラミックスやムライト−コージェライトセラミックスを用いることによって、セラミックヒーター11からベース14への伝熱を断熱材13によって効果的に遮断し、急速昇温を可能としている。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−332589号公報(第3−5頁、第1図)
【特許文献2】
特開2001−93655号公報(第3−4頁、第1図、符号A)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
近年、生産効率の向上のため、押圧加熱ヒーターの加熱速度、温度分布の向上および被加熱物の大型化に伴う押圧加熱ヒーターの大型化が要求されており、加熱速度においては、従来は約1kWの電力を印加して100〜300℃間を4秒程度で昇温させていたのに対し、現在は約2.5kWの電力を印加して100〜500℃まで5秒以下で急速昇温させることが要求されている。
【0010】
また、温度分布についても、従来の加熱領域が20mm×20mmの領域で300℃時に許容される表面温度ばらつきが±5℃以下であったのに対し、現在は装置の大型化のため、加熱領域が30mm×450mmと広範囲の領域で300℃時において表面温度ばらつきを±5℃に抑えることが要求されている。
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示されているような従来の押圧加熱ヒーターに用いられるセラミックヒーター11は、下面の全面が断熱材13に載置されているために、断熱材13の熱伝導率が低くても、セラミックヒーター11から断熱材13を通して、熱がベース14に逃げてしまう。その結果、十分な加熱速度を得ることができず、現在要求されているような急速昇温に対する要求に対して応えることができないという欠点を有していた。
【0012】
これに対して、例えば、特許文献2では、セラミックヒーターが載置されるホルダの領域の一部に凹部を設け、相互の接触面積を20%〜50%とすることによって、セラミックヒーターからホルダへの熱の流出を抑え、急速昇温を可能にした例が開示されている。しかしながら、この場合、接触面が凹部の縁部に集中するために接触した箇所から熱が流出することと、セラミックヒーターが載置されるホルダの材質として、熱伝導率が高い高強度高靭性の窒化珪素質焼結体を用いたこと、の2つの理由から、セラミックヒーターとホルダが接触した箇所からの熱流出が大きくなり、現在要求されているような大面積下での表面温度分布の均一化を達成することができないという欠点を有していた。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の欠点に鑑み案出されたもので、その目的は、急速昇温を可能として短時間で半導体ベアチップの電極を配線基板の配線導体に効率よく接合させ、かつ半導体ベアチップの処理面の温度分布を均一にすることが可能とし歩留まりを向上させることができる押圧加熱ヒーターを提供することにある。
【0019】
また、本発明の押圧加熱ヒーターの製造方法は、被加熱物を押圧して加熱するためのヒーターと、該ヒーターを載置するための凸部が表面に設けられた断熱材と、を備える押圧加熱ヒーターの製造方法であって、前記断熱材上の少なくとも前記ヒーターが載置される部分に複数の前記凸部からなる凸部群を設ける工程と、前記ヒーターを前記断熱材の前記凸部群上に載置し、前記ヒーターに通電加熱して前記ヒーター表面の温度分布が均一となるように前記凸部群の一部を除去する工程と、を含んでなることを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
本発明の押圧加熱ヒーターは、図1の斜視図のように、被加熱物を押圧し、加熱するためのセラミックヒーター1と、セラミックヒーター1から発生した熱が被加熱物以外に伝熱することを防止するための断熱材2と、これらの部材を統合し他部材に結合するためのベース3から構成される。
【0022】
前記断熱材2の上面にセラミックヒーター1が載置され、該セラミックヒーター1は半導体ベアチップを配線基板上に低融点ロウ材を介して実装する際に、前記低融点ロウ材を溶融させるに必要な熱を発生する作用をなす。
【0023】
前記セラミックヒーター1は、図2に示すようにセラミック体5に発熱体6を埋設した発熱部7と、前記発熱体6から引き出されたリードパターン4を内蔵したリード部8からなり、前記リードパターン4の一部を露出させ電極を取り出すためのリード端子9とから構成される。前記セラミックヒーター1は断熱材2を介して、係合部材10によりベース3に固定されている。
【0024】
さらに、図3に示すように、断熱材2はセラミックヒーター1が載置される領域に複数の凸部2aを有し、この上にセラミックヒーター1を載置するようになっている。これにより、セラミックヒーター1から断熱材2の凸部2aを経由してベース3へ流出する熱を制御することができ、セラミックヒーター1の表面温度分布を均一にすることが可能となる。
【0025】
セラミックヒーター1から断熱材2の凸部2aを経由して流出する熱を制御するためには、接触面積が大きい箇所からは、流出する熱量が多く、接触面積が小さい箇所からは流出する熱量が少ないという現象を利用すればよい。すなわち、セラミックヒーター1の表面温度が高い部分は、凸部2aとの接触面積が大きくなるように、逆にセラミックヒーター1の表面温度が低い部分は、凸部2aとの接触面積が小さくなるように、凸部2aのサイズを適切に配合させてやることによって、セラミックヒーター1の表面温度分布を均一にすることができる。
【0026】
ここで、断熱材2上に形成した凸部2a1つ当たりのセラミックヒーター1との接触面積をセラミックヒーター1下面の面積に対し、0.5%〜15%の範囲内とすることが好ましく、1%〜9%とすることがより好ましい。その理由は、前記凸部2a1つ当たりの接触面積が0.5%未満のときは、セラミックヒーター1によって、被加熱物を押圧したときに、応力が凸部2aに集中するため、セラミックヒーター1が破損しやすいという問題があり、逆に、15%を超えると、該凸部2aから断熱材2を介してベース3に逃げる熱量が大きくなり過ぎ、セラミックヒーター1の温度分布を細かく制御することが難しくなるという問題があるからである。
【0027】
また、断熱材2の凸部2aとセラミックヒーター1と接触している部分の面積の総和が、セラミックヒーター1下面の面積に対して4%〜50%とするのが好ましく、12%〜27%とするのがより好ましい。その理由は、面積の総和が4%未満のときは、セラミックヒーター1によって被加熱物を押圧したときに、セラミックヒーター1に局所的に大きな圧力がかかるため、セラミックヒーター1がたわんで、破損してしまうという問題があり、逆に50%を超えると、セラミックヒーター1から発生した熱が断熱材2を介してベース3に逃げる量が大きくなるために、急速に昇温することが難しくなるからである。
【0028】
また、セラミックヒーター1の下面において、前記断熱材2上の凸部2aと前記セラミックヒーター1との、単位面積当たりでの接触比率が、前記セラミックヒーター1の外周部から内側部に向けて小さくなっていることが好ましい。
【0029】
その理由として、セラミックヒーター1を断熱材2上の凸部2aで安定に載置させるためには、セラミックヒーター1の外周部に近い領域で本体を支えることが必要だからである。逆に、セラミックヒーター1の内側に近い領域で本体を支えているときには、被加熱物を押圧したときに、本体の外周部でがたつきが生じ、精度よく被加熱物を処理することができなくなる。
【0030】
また、特に前記の断熱材2の凸部2aとの単位面積当たりの接触比率が外周部で大きくなっているタイプの押圧加熱ヒーターについては、セラミックヒーター1を単独で通電加熱させたときの表面温度が、ヒーター外周部は高く、内側部に向けて低くなるような分布をもつことが望ましい。
【0031】
この理由としては、上で述べたように、接触面積が大きい箇所からは、流出する熱量が多く、接触面積が小さい箇所からは流出する熱量が少ないため、広い範囲で均一な温度分布を得るためには、接触面積が大きい箇所ほどヒーターの発熱量を多く、逆に接触面積が小さい箇所ほどヒーターの発熱量を少なくしてやる必要があるからである。
【0032】
なお、このように外周部で表面温度が高く、内側に向けて低くなるような分布を有する特性を持つヒーターを作製するためには、セラミックヒーター1に埋設される発熱体6の断面積を外周部で小さく、内側に向けて大きく分布するようにすればよい。
【0033】
また、断熱材2については、熱伝導率が35W/m・K以下の範囲にあることが望ましい。熱伝導率が35W/m・Kを超えると、セラミックヒーター1と接触している凸部2aから断熱材2を介してベース3に逃げる熱量が大きくなり過ぎ、セラミックヒーター1の温度分布を細かく制御することが難しくなるからである。なお、熱伝導率の下限としては、1W/m・Kよりも大きいことが望ましい。これよりも小さいと、セラミックヒーター1と接触している凸部2aからの熱流出が非常に少なくなるため、セラミックヒーター1の表面温度分布の調節が難しくなる恐れがあるからである。
【0034】
熱伝導率を35W/m・K以下とするためには、断熱材2の材料として、アルミナやコージェライト、あるいはマセライトが好適に用いられる。また、同じアルミナ系焼結体でも、焼成前の成形体密度や焼成条件を変えることによって、焼結体の気孔率を制御し、熱伝導率をコントロールすることが可能である。
【0035】
また、本発明の押圧加熱ヒーターによれば、前記断熱材2の凸部2aのセラミックヒーター1が載置される面、もしくは前記セラミックヒーター1の前記凸部2aと接触する面の平坦度を0.03mm以下とすることによって、凸部2aと前記セラミックヒーター1との間で熱の流出が良好に行われ、セラミックヒーター1を所定温度まで均一な温度分布で急速昇温することが可能となる。
【0036】
なお、平坦度0.03mmの面とは、0.03mm間隔の2枚の理想平行面におさまる平面を指す。平坦度の悪い面同士を接触させようとすると、実際に接触する凸部と接触しない凸部が発生し、表面温度分布の制御が難しくなる。
【0037】
ここで、凸部2aの高さは、0.5mm〜5mmに調整されることが望ましい。この理由として、高さが0.5mm未満であるとセラミックヒーター1からの輻射熱などの熱伝達が大きいため、十分な断熱性が得られず、5mmを越えると凸部2aの強度が不足し、被加熱物を押圧する際に破損してしまう恐れがあるからである。
【0038】
前記セラミックヒーター1は、高温強度が高く、高靭性である窒化珪素質焼結体から成るセラミック体5にタングステンやモリブデンなどの高融点金属からなる発熱体6を埋設して形成されており、前記セラミック体5は例えば、主成分としての窒化珪素に焼結助剤としての希土類元素酸化物、酸化アルミニウム、酸化珪素を添加混合して原料粉末を調整し、しかる後、前記原料粉末をプレス成形法などにより所定形状に成形するとともに約1650℃〜1800℃の温度で焼結することによって製作されている。
【0039】
また、前記発熱体6はタングステンやモリブデンなど、あるいはこれらの炭化物、窒化物などに適当な有機溶剤、溶媒を添加混合して発熱体ペーストを作り、これを焼成によってセラミック体5となる成形体にあらかじめスクリーン印刷法などにより所定パターンに被着させておくことによって一体的に形成される。前記発熱体6は、それが有する電気抵抗により電力が印加される際にジュール発熱を起こし、半導体ベアチップをハンダや低融点ロウ剤を介して配線基板上に実装するときに、ハンダや低融点ロウ剤を溶融させるために必要な温度に発熱する。
【0040】
なお、前記セラミック体5は、窒化珪素90〜92モル%、希土類元素酸化物2〜10モル%とし、Al23、SiO2は窒化珪素と希土類元素酸化物の総量に対して外添加で各々0.2〜2.0重量%と1〜5重量%添加して形成すると、窒化珪素質焼結体が緻密化し、使用中に発熱体6付近まで空気中の酸素が拡散し、発熱体6が酸化して断線するのを有効に防止することができ、常温及び高温強度が極めて高いものとなる。したがって前記セラミック体5として、窒化珪素を主成分としたセラミックを用いるときには、窒化珪素90〜92モル%、希土類元素酸化物2〜10モル%とし、Al23、SiO2は窒化珪素と希土類元素酸化物の総量に対して外添加で各々0.2〜2.0重量%と1〜5重量%添加しておくことが好ましい。
【0041】
また前記セラミックヒーター1は、セラミック体5の熱伝導率を常温での熱伝導率を50W/m・K以上のものにしておくと、発熱体6が発した熱はセラミック体5の全体に短時間に広がってセラミックヒーター1を短時間に昇温して、かつ温度むらの発生をほとんどない状態で所望する温度に昇温することができる。したがって、昇温速度をより速く、かつ温度むらの発生を少なくするためにはセラミックヒーター1のセラミック体5の熱伝導率を50W/m・K以上としておくことが好ましい。
【0042】
さらに前記セラミックヒーター1はその厚みを1mm〜2mmの範囲としておくとセラミックヒーター1の機械的強度を高いものに維持しつつ、熱容量を小さくし、昇温速度をより速いものとなすことができる。これによって半導体ベアチップを押圧加熱して配線基板に実装する際、セラミックヒーター1に割れなどの破損を発生させることなく短時間に実装可能となる。したがって、前記セラミックヒーター1は、その厚みを1mm〜2mmの範囲としておくことが好ましい。
【0043】
また、前記セラミックヒーター1は断熱材2を介して該ベース3に取着されている係合部材10とで挟持されてベース3上に固定されている。セラミックヒーター1および断熱材2はベース3上に載置されているだけであるため、セラミックヒーター1と断熱材2とベース3との熱膨張係数が各々異なるとしても、相互の熱膨張係数の差に起因する大きな熱応力は発生することはない。その結果、セラミックヒーター1や断熱材2やベース3にクラックや割れが発生することが少ない。
【0044】
前記セラミックヒーター1をベース3上に固定する係合部材10はステンレスや、Ni−Mn−Feの合金、Fe−Ni−Coの合金などの耐熱性金属やセラミックスからなり、一端はベース3上にネジ止めされており、他端はセラミックヒーター1の表面を押圧する。
【0045】
前記断熱材2上の凸部2aは、例えば、断熱材2がセラミック材料であるとき、周知の研削加工法により加工することによって所定形状に形成される。この凸部2aの加工は、次のような方法によって行う。
【0046】
まず、前記断熱材2上の少なくとも前記セラミックヒーター1が載置される部分に、図4(a)に示すように、あらかじめ複数の切り込みを入れて凸部群31を設けておく。切り込みを入れる方法としては、例えば、万能研削盤やレーザー加工機、あるいは超音波加工機を用いることができるが、切り込み形状による応力集中を避けるために、万能研削盤を用いることがより望ましい。
【0047】
前記セラミックヒーター1と接触する前記凸部群31を構成する各凸部の上面は、上述のような理由から、前記セラミックヒーター1下面の面積に対し0.5%〜15%、好ましくは1%〜9%となるように加工する。このとき、前記各凸部のサイズを全て略同一にしても良いが、上記指定のサイズの範囲内でばらつかせても良い。その場合、後で説明する前記セラミックヒーター1の表面温度分布を均一にするための工程で、凸部群31の中から凸部の一部を除去するときに、より細かい調節が可能となるという利点がある。
【0048】
次に、本発明の押圧加熱ヒーターにおける表面温度分布の調節方法について説明する。
【0049】
まず、前記セラミックヒーター1を前記断熱材2の前記凸部群31上に載置し、通電加熱を行う。ここで、赤外線温度計などを用いてセラミックヒーター1の押圧面の表面温度分布を測定し、目的とする温度分布になるように、凸部群31の中から凸部を選択し、NC旋盤を用いて加工除去し、図4(b)のように凸部が除去された部分32を得る。
【0050】
具体的には、周囲の温度よりも高い領域は凸部を残し、周囲の温度よりも低い領域は凸部を除去する。これによって、温度が高い領域は断熱材2の凸部2aが接することにより、熱が凸部を介してベース3に流出するため温度が下がるが、逆に温度が低い領域は、断熱材2の凸部が除去されることにより、セラミックヒーター1に断熱材2が接しなくなるため、温度が下がりにくくなる。この通電加熱−表面温度分布測定−凸部除去の操作を繰り返すことによって、セラミックヒーター1の表面温度を、例えば設定温度300℃のときに、±2℃程度にまで均一な分布にすることができる。
【0051】
なお、この温度調整を行うときのセラミックヒーター1の設定温度は、実際の工程で使用される温度を元に決定され、通常300℃〜500℃程度である。
【0052】
このように、上述の押圧加熱ヒーターによれば、配線基板上に間に低融点ロウ材を介して半導体ベアチップを載置させるとともに、半導体ベアチップの上面にセラミックヒーター1を当接させ、次にベース3を介してセラミックヒーター1を半導体ベアチップ側に一定の圧力で押圧させるとともに発熱体6に電力を印加して所定温度に発熱させ、この発熱で前記低融点ロウ材を溶融させることによって半導体ベアチップの実装に用いることができる。
【0053】
なお、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0054】
例えばセラミックヒーター1の上面に荷重500gでのビッカース硬度が10GPa以上の高硬度の材料からなる平坦な表面を有するツールを配置しておいても良い。半導体ベアチップを配線基板に繰り返し実装したとしても押圧加熱ヒーターのセラミックヒーター1が、ツールにより補強されるため長期間の使用に耐え得ることが可能となる。
【0055】
また、前記ベース3及びセラミックヒーター1が、かどばった角部を有する場合、その角部を、例えば0.2mm以上のC面加工あるいは半径0.2mm以上のR面加工を施しておくと、ベース3及びセラミックヒーター1に応力が作用した際、その応力を有効に分散させてベース3及びセラミックヒーター1にクラックや割れなどが発生するのを防止することができる。
【0056】
上述の実施例では、半導体ベアチップを実装する際に使用する押圧加熱ヒーターを例に挙げて本発明の押圧加熱ヒーターを説明したが、これに限定されるものではなく被加熱物を短時間で加熱する応力加熱装置、具体的にはFPC(Flexible Print Cable)などの半田接続、半導体パッケージキャップのシール、レーザーヘッドなどの光学系ヘッドのキャンシール、チップ接続のリワークなどに用いられる押圧加熱ヒーターにも適用可能である。
【0057】
【実施例】
次に本発明の実施例を説明する。
【0058】
図2に示すような押圧加熱ヒーター用のセラミックヒーター1を作製した。
【0059】
まず、主成分として90〜92モル%の窒化珪素に焼結助剤として希土類元素酸化物を2〜10モル%、酸化アルミニウム、酸化珪素を窒化珪素と希土類元素酸化物の総量に対して各々0.2〜2.0重量%と1〜5重量%添加混合して原料粉末を調整した。その後、原料粉末をプレス成形法などにより30mm×150mmの成形体を得、該成形体の上面にタングステンに適当な有機溶剤、溶媒を添加混合した発熱体ペーストを作り、これを発熱部7およびリード部8の導体形状にスクリーン印刷法などによりプリントした。さらに、上記二つの成形体の間に、貫通孔を形成しこの中にタングステンを主成分とする導電性ペーストを充填した成形体を挟み込んで密着させ、約1650〜1800℃の温度でホットプレス焼成した。その後、導体部の一部を露出させ、電極取り出し部を形成し、Ag−Cuを含有したペーストを塗布し、真空中で焼成してメタライズ層を形成、Niからなるメッキ層を施した後、係合部材10でセラミックヒーター1、断熱材2、ベース3を組み付けた。
【0060】
セラミックヒーター1の加工は平面研削盤、および超音波加工機を用いて、25mm×140mmの発熱部主面を持つセラミック体5を形成した。また、セラミックヒーター1の発熱部7の厚みは2mmとした。
【0061】
断熱材2としては、セラミックヒーター1の面積と略同一の面積を持つアルミナ製のブロック体を加工して用いた。このブロック体の高さは30mmであった。断熱材2への凸部群31の加工は、万能研削盤を用いた。これにより、図4に示すような複数箇所に深さ1mmの切り込みを入れ、凸部群31を構成する凸部の上部面積の総和がセラミックヒーター1の発熱部面積に対して70%〜90%の範囲となるように加工した試料を得た。なお、各凸部の高さは1mmであり、上部面積は0.4%〜16%の範囲で略同一となるようにした。
【0062】
また、断熱材2は、上記範囲内および範囲外にてセラミックヒーター1との接触面積および凸部2a1つ当たりの接触面積を様々に変えて、複数の試料を得た。さらに、上記で利用した断熱材ブロックと同一形状で気孔率を変えたアルミナ系セラミックスのブロックを用いて、断熱材2の形状に加工し、熱伝導率が異なる複数の試料を得た。
【0063】
上記で作製したセラミックヒーター1については、すべて各試料における断熱材2の凸部群31上に載置し、設定温度を300℃として通電加熱を行った。ここで、赤外線温度計を用いてセラミックヒーター1の押圧面の表面温度分布を測定し、表面温度のばらつきが最小となるよう、凸部群31の中から凸部を選択し、NC旋盤によって加工除去を行い、凸部2aの形成処理を行った。
【0064】
また、本発明の実施例の一例として、セラミックヒーター1を作製する際に、発熱体6の断面積を内側に比べて外周部の方を細くして、セラミックヒーター1の外周部の発熱量が内側よりも高くなるように形成したほかは、すべて上記と同様の方法で前記凸部2aまで形成を行った。このセラミックヒーター1を用いて、表面温度分布が均一となるように形成した前記凸部2aは、前記セラミックヒーター1との単位面積当たりでの接触比率が、前記外周部から内側に向けて小さくなっていた。
【0065】
なお、今回作製したセラミックヒーター1の凸部2aとの接触面および、凸部2a上のセラミックヒーター1を載置する面はすべて、平坦度が0.03mm以下であった。
【0066】
従来構造の試料としては、図5に示す構造の押圧加熱ヒーターを作製した。セラミックヒーター11は、実施例と同様に窒化珪素質のセラミック焼結体を作製した後、25mm×140mmの発熱部と、長さ20〜50mmのリード部を形成し、Ag−Cuを含有したメタライズ層を形成しAg−Cuでリード端子18をロウ付けするとともにリード線を接続して、外寸30mm×150mmの試料を得た。
【0067】
次に、各押圧加熱ヒーター用のセラミックヒーターの発熱体に2.5kWの電力を印加して発熱体をジュール発熱させ、セラミックヒーターが100℃から500℃に加熱するまでに要する時間(昇温時間)を調べた。
【0068】
また、各押圧加熱ヒーター用のセラミックヒーターの表面温度が300℃に到達後、10秒後のセラミックヒーターの表面温度を赤外線温度計にて測定した。
【0069】
さらに、配線基板上に間に低融点ロウ材を介して半導体ベアチップを載置させるとともに、半導体ベアチップの上面に各押圧加熱ヒーターを当接させ、半導体ベアチップ側に5MPaの圧力で押圧させるとともに電力を印加して300℃に発熱させ、この発熱で前記低融点ロウ材を溶融させることによって半導体ベアチップの実装テストを行い、搭載された前記半導体ベアチップの搭載精度の評価を行った。
【0070】
表1に実験の条件について示す。また、表2に結果を示す。
【0071】
なお、昇温時間については100℃から500℃まで昇温させるのに要した時間で評価し、5秒未満のものを○、5秒以上6秒以下のものを△、6秒を超えるものを×とした。また、ヒーター表面温度分布については、設定温度を300℃としたときに表面の温度分布が±4℃未満のものを○、±4℃以上±5℃以下のものを△、±5℃を超えるものを×とした。搭載テスト時のチップ精度については、押圧加熱前後でのチップの位置ずれの大きさで判断し、位置ずれが認められないものを○、位置ずれはあるが後工程に影響のない程度の微小なものを△、後工程に影響が出る可能性があるものを×とした。
【0072】
さらに総合判定として、上記の3つの評価項目に対して、○が3つのものを◎(大変良い)、○が2つのものを○(良い)、○が1つのものを△(許容範囲内)、○がないものを×(不可)とした。
【0073】
【表1】
Figure 0003847240
【0074】
【表2】
Figure 0003847240
【0075】
表1および表2に示した結果より、本発明の範囲内であるNo.1〜22の試料については、昇温速度、ヒーターの表面温度分布、実装時のチップ精度の評価項目すべてにおいて、許容範囲内の結果を得ることができた。しかしながら、試料No.23に示した本発明の範囲外である従来構造の押圧加熱ヒーターは、昇温速度、表面温度分布、実装時のチップ精度の全項目にわたって良好な結果を得ることができなかった。
【0076】
本発明の範囲内の試料の中でも、No.1〜5の試料については、凸部1つ当たりの前記セラミックヒーターとの接触面積が、前記セラミックヒーター下面の面積に対して0.5%〜15%であり、セラミックヒーターの表面温度分布のばらつきは±2℃以下の良好な結果が得られた。それに対して、上記接触面積が15%を超えた試料であるNo.6は、セラミックヒーターの表面温度分布のばらつきは±4℃以上となり、許容範囲内ではあるが、やや悪い傾向であった。また、上記接触面積が0.5%よりも小さい試料であるNo.7は、押圧加熱試験を繰り返したときに、断熱材の凸部に応力がかかって先端の一部に欠けが発生し、わずかではあるが、表面温度の分布が変動する傾向があった。
【0077】
また、本発明の範囲内の試料の中でもNo.8〜13の試料については、前記凸部と前記セラミックヒーターとの接触している部分の面積の総和が、前記セラミックヒーター下面の面積に対して4%〜50%であり、セラミックヒーターの表面温度分布のばらつきは±4℃以下の良好な結果が得られた。それに対して、上記接触面積の総和が50%を超えた試料であるNo.14は、セラミックヒーターが500℃までの昇温時間がやや遅く、許容範囲ではあるが、5秒を超えてしまった。また、上記接触面積の総和が4%よりも小さい試料であるNo.15は、押圧加熱時にセラミックヒーターとの接触部に応力がかかってセラミックヒーターがたわんだために、許容範囲内ではあるが、チップの実装試験時の精度が悪くなる傾向があった。
【0078】
また、本発明の範囲の一形態である、断熱材の凸部とセラミックヒーターとの単位面積当たりでの接触比率が、前記外周部から内側に向けて小さくなっている試料No.16については、昇温速度、表面温度分布、チップの実装精度とも良い結果が得られた。特に、セラミックヒーターの外周部近傍でヒーターが断熱材の凸部に安定して支えられているために、良好な結果が得られたと考えられる。
【0079】
さらに、本発明の範囲内の試料の中でも、No.17〜21の試料については、断熱材の熱伝導率が35W/mk以下であり、セラミックヒーターの表面温度分布のばらつきは±4℃以下の良好な結果が得られた。それに対して、断熱材の熱伝導率が35W/mkより大きい試料であるNo.22は、セラミックヒーターの表面温度分布のばらつきが、許容範囲内ではあるが、±5℃と悪くなる傾向にあった。
【0080】
【発明の効果】
本発明の押圧加熱ヒーターは、被加熱物を押圧し加熱するためのセラミックヒーターと、前記セラミックヒーターを載置するための断熱材と、これらの部材を統合し他部材に結合するベースとからなる押圧加熱ヒーターにおいて、前記断熱材の表面に複数の凸部を設け、該凸部上に前記セラミックヒーターを載置し、さらに、前記凸部1つ当たりの前記セラミックヒーターとの接触面積が、前記セラミックヒーター下面の面積に対して0.5%〜15%であり、かつ、前記凸部と前記セラミックヒーターとの接触している部分の面積の総和が、前記セラミックヒーター下面の面積に対して4%〜50%であるようにしたことから、前記セラミックヒーターに通電した際、前記セラミックヒーターから発生した熱が前記ベースに流出するのが有効に抑止され、かつ、前記セラミックヒーターと前記断熱材との接触状態が、前記セラミックヒーターの表面温度分布が均一になるように、最適に調節されていることから、前記セラミックヒーターを所定温度に均一な状態で急速に昇温することができる。
【0081】
また、本発明の押圧加熱ヒーターは、前記セラミックヒーターの下面において、前記凸部と前記セラミックヒーターとの、単位面積当たりでの接触比率が、前記セラミックヒーターの外周部から内側部に向けて小さくなるときに、最も均一な表面温度分布となるようになっていることから、前記セラミックヒーターの外周部に近い領域で本体を支えることができ、被加熱物を押圧したときに、安定に精度よく被加熱物を処理することができる。
【0082】
また、本発明の押圧加熱ヒーターは、前記断熱材の熱伝導率が35W/mk以下であるため、前記断熱材を介して前記ベースに逃げる熱量を小さく抑えることができ、前記セラミックヒーターの温度分布を細かく制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の押圧加熱ヒーターの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の押圧加熱ヒーターに用いられるセラミックヒーターの分解斜視図である。
【図3】本発明の押圧加熱ヒーターに用いられる断熱材の斜視図である。
【図4】(a)、(b)は本発明の押圧加熱ヒーターに用いられる断熱材の加工方法を示す平面図である。
【図5】従来の押圧加熱ヒーターを示す斜視図である。
【図6】従来の押圧加熱ヒーターに用いられるセラミックヒーターの分解斜視図である。
【符号の説明】
1:セラミックヒーター
2:断熱材
2a:断熱材上に形成された凸部
3:ベース
4:リードパターン
5:セラミック体
6:発熱体
7:発熱部
8:リード部
9:リード端子
10:係合部材
31:凸部群
32:凸部が除去された部分

Claims (1)

  1. 被加熱物を押圧して加熱するためのヒーターと、
    該ヒーターを載置するための凸部が表面に設けられた断熱材と、を備える押圧加熱ヒーターの製造方法であって、
    前記断熱材上の少なくとも前記ヒーターが載置される部分に複数の前記凸部からなる凸部群を設ける工程と、
    前記ヒーターを前記断熱材の前記凸部群上に載置し、前記ヒーターに通電加熱して前記ヒーター表面の温度分布が均一となるように前記凸部群の一部を除去する工程と、を含んでなることを特徴とする押圧加熱ヒーターの製造方法。
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