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JP3738677B2 - 車両用自動変速機の入力トルク切換制御装置 - Google Patents

車両用自動変速機の入力トルク切換制御装置 Download PDF

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JP3738677B2
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  • Control Of Vehicle Engines Or Engines For Specific Uses (AREA)
  • Control Of Transmission Device (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用自動変速機の入力トルク切換制御装置に関し、特に自動変速機の入力トルクの切り換えに起因する変速ショックや運転性の低下を防止する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両において、原動機から該自動変速機へ入力される入力トルクを切り換えるための入力トルク切換装置が設けられる場合がある。たとえば、動力伝達経路を構成する部品を保護するために高負荷状態となると自動変速機の入力トルクを制限する入力トルク制限装置がそれである。この入力トルク制限装置によれば、たとえば自動変速機の最低速ギヤ段時においてその自動変速機の入力トルクを所定の制限値を越えないように入力トルクが制限される一方で、自動変速機が最低速ギヤ段からその上段のギヤ段へ変速されると、上記制限値が変更されるか或いは除去されることにより、その変速に関連して自動変速機へ入力される入力トルクが速やかに変化させられて切り換えられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような入力トルク切換装置によって自動変速機の入力トルクが切り換えられる時期が自動変速機の変速時期と重なる場合がある。このとき、自動変速機の入力トルクの切換によるトルク変化方向と、自動変速機の変速作動に起因して変化するトルク変化方向とが同じ方向となると、入力トルクの切換ショック或いは変速ショックが増大して運転者に違和感を与えることになり運転性が損なわれるという不都合があった。
【0004】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、自動変速機の入力トルクの切換が自動変速機の変速時期と重なったとしても入力トルクの切換ショック或いは変速ショックが好適に防止される車両用自動変速機の入力トルク切換制御装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、自動変速機を備え、原動機からその自動変速機へ入力される入力トルクが切り換えられる車両において、その自動変速機へ入力される入力トルクの切換時期を制御するための車両用自動変速機の入力トルク切換制御装置であって、(a) 前記自動変速機の変速中である場合には前記自動変速機へ入力される入力トルクの切換作動を許可する入力トルク切換許可手段と、(b) 前記車両の動力伝達経路の構成部品を保護するために前記自動変速機の入力トルクをギヤ段に対応して定められた制限値以下に制限するとともに、その自動変速機の変速に関連して、変速前のギヤ段の前記制限値から変速後のギヤ段の前記制限値に変更することによりその自動変速機の入力トルクを切り換える入力トルク制限制御手段とを、含み、 ( ) 前記自動変速機は有段変速機であり、前記入力トルク切換許可手段は、その自動変速機の変速中においてその自動変速機の入力軸の回転速度変化が発生しているイナーシャ相中であるか否かに基づいて前記自動変速機へ入力される入力トルクの切換作動を許可するものである。
【0006】
【発明の効果】
このようにすれば、入力トルク切換許可手段により自動変速機の変速期間内における入力軸の回転変動が発生しているイナーシャ相において入力トルクの切換が許可されることから、自動変速機の入力トルクの切換が自動変速機の変速時期と重なとしても自動変速機の変速中にその自動変速機の入力軸の回転速度変化が発生しているイナーシャ相中であるか否かに基づいて前記自動変速機へ入力される入力トルクの切換作動が行われるので、変速に関与する摩擦係合装置のスリップ期間内において入力トルクの切換によるトルク変動が好適に吸収されて、入力トルクの切換ショック或いは変速ショックが好適に防止される。また、車両の動力伝達経路の構成部品を保護するために前記自動変速機の入力トルクを所定の制限値以下に制限するための入力トルク切換が自動変速機の変速時期と重なとしても、自動変速機の変速中にその自動変速機の入力軸の回転速度変化が発生しているイナーシャ相中であるか否かに基づいて前記自動変速機へ入力される入力トルクの切換作動が行われて変速に関与する摩擦係合装置のスリップ期間内において入力トルクの切換によるトルク変動が好適に吸収されるので、入力トルクの切換ショック或いは変速ショックが好適に防止される。
【0007】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記自動変速機は有段変速機であり、前記入力トルク切換許可手段は、その自動変速機の変速中においてその自動変速機の入力軸の回転速度変化が発生しているイナーシャ相中であるか否かに基づいて前記自動変速機へ入力される入力トルクの切換作動を許可するものである。このようにすれば、自動変速機の変速期間内において入力軸の回転変動が発生しているイナーシャ相において入力トルク切換が行われるので、一層好適に入力トルクの切換ショック或いは変速ショックが防止される。
【0009】
また、好適には、前記自動変速機の変速は最低速ギヤ段とその最低速ギヤ段よりも高速側に隣接したギヤ段との間で行われるものである。このようにすれば、最も変速比が大きいために入力トルク制限値が低くされる最低速ギヤ段とその高速側に隣接して入力トルク制限値が相対的に高い値に設定されるか或いは除去されるギヤ段との間の変速と、入力トルク切換とが重なった場合でも、入力トルクの切換ショック或いは変速ショックが好適に防止される。
【0010】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の制御装置が適用された車両の動力伝達装置の構成を説明する骨子図である。図において、混合気吸入式内燃機関、燃料噴射式内燃機関、或いは外燃機関などの原動機であるエンジン10の出力は、トルクコンバータ12を介して自動変速機14に入力され、図示しない差動歯車装置および車軸を介して駆動輪へ伝達されるようになっている。
【0012】
上記トルクコンバータ12は、エンジン10のクランク軸16に連結されたポンプ翼車18と、自動変速機14の入力軸20に連結されたタービン翼車22と、それらポンプ翼車18およびタービン翼車22の間を直結するロックアップクラッチ24と、一方向クラッチ26によって一方向の回転が阻止されているステータ28とを備えている。
【0013】
上記自動変速機14は、ハイおよびローの2段の切り換えを行う第1変速機30と、後進ギヤ段および前進4段の切り換えが可能な第2変速機32を備えている。第1変速機30は、サンギヤS0、リングギヤR0、およびキャリヤK0に回転可能に支持されてそれらサンギヤS0およびリングギヤR0に噛み合わされている遊星ギヤP0から成るHL遊星歯車装置34と、サンギヤS0とキャリヤK0との間に設けられたクラッチC0および一方向クラッチF0と、サンギヤS0およびハウジング41間に設けられたブレーキB0とを備えている。
【0014】
第2変速機32は、サンギヤS1、リングギヤR1、およびキャリヤK1に回転可能に支持されてそれらサンギヤS1およびリングギヤR1に噛み合わされている遊星ギヤP1から成る第1遊星歯車装置36と、サンギヤS2、リングギヤR2、およびキャリヤK2に回転可能に支持されてそれらサンギヤS2およびリングギヤR2に噛み合わされている遊星ギヤP2から成る第2遊星歯車装置38と、サンギヤS3、リングギヤR3、およびキャリヤK3に回転可能に支持されてそれらサンギヤS3およびリングギヤR3に噛み合わされている遊星ギヤP3から成る第3遊星歯車装置40とを備えている。
【0015】
上記サンギヤS1とサンギヤS2は互いに一体的に連結され、リングギヤR1とキャリヤK2とキャリヤK3とが一体的に連結され、そのキャリヤK3は出力軸42に連結されている。また、リングギヤR2がサンギヤS3に一体的に連結されている。そして、リングギヤR2およびサンギヤS3と中間軸44との間にクラッチC1が設けられ、サンギヤS1およびサンギヤS2と中間軸44との間にクラッチC2が設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2の回転を止めるためのバンド形式のブレーキB1がハウジング41に設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2とハウジング41との間には、一方向クラッチF1およびブレーキB2が直列に設けられている。この一方向クラッチF1は、サンギヤS1およびサンギヤS2が入力軸20と反対の方向へ逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0016】
キャリヤK1とハウジング41との間にはブレーキB3が設けられており、リングギヤR3とハウジング41との間には、ブレーキB4と一方向クラッチF2とが並列に設けられている。この一方向クラッチF2は、リングギヤR3が逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0017】
このような自動変速機14は、例えば図2に示す作動表に従って後進1段および変速比が順次異なる前進5段のギヤ段のいずれかに切り換えられる。図2において○印は係合状態を示し、空欄は解放状態を示し、●はエンジンブレーキを発生させるときの係合状態を示している。たとえば、第1速ギヤ段(1st)から第2速ギヤ段(2nd)へのアップ変速はブレーキB3が係合させられることにより達成され、第2速ギヤ段から第1速ギヤ段へのダウン変速はブレーキB3が解放されることにより達成される。第1速ギヤ段は自動変速機14の前進ギヤ段のうちの最大の変速比γ(NIN/NOUT )で動力を伝達し、その第1速ギヤ段の高速側に隣接する第2速ギヤ段は第1速ギヤ段の変速比γ1 の次に大きい変速比γ2 を備えている。
【0018】
図3は車両に備えられた制御装置を説明する図である。アクセルペダル50の操作量θACC (%)がアクセル操作量センサ51により検出されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の要求出力に応じて大きく踏み込み操作されるもので、アクセル操作部材に相当する。車両のエンジン10の吸気配管には、スロットルアクチュエータ54によって基本的にアクセルペダル50の操作量θACC に応じたスロットル開度θTH(%)とされるスロットル弁56が設けられている。また、アイドル回転制御のために上記スロットル弁56をバイパスさせるバイパス通路52には、エンジン10のアイドル回転を制御するためにスロットル弁56全閉時の吸気量を制御するISC弁53が設けられている。エンジン10の回転速度NE を検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン10の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TA を検出するための吸入空気温度センサ62、上記スロットル弁56の全閉状態およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットルセンサ64、出力軸42の回転速度NOUT すなわち車速Vを検出するための車速センサ66、エンジン10の冷却水温度TW を検出するための冷却水温センサ68、ブレーキの作動を検出するためのブレーキスイッチ70、シフトレバー72の操作位置PSHを検出するための操作位置センサ74、入力軸20の回転速度NINすなわちクラッチC0の回転速度NCO(=タービン回転速度NT )を検出するための入力軸回転センサ73、油圧制御回路84の作動油温度TOIL を検出するための油温センサ75などが設けられており、それらのセンサから、エンジン回転速度NE 、吸入空気量Q、吸入空気温度TA 、スロットル弁開度θTH、車速V、エンジン冷却水温TW 、ブレーキの作動状態BK、シフトレバー72の操作位置PSH、入力軸回転速度NCO、作動油温度TOIL を表す信号がエンジン用電子制御装置76或いは変速用電子制御装置78に供給されるようになっている。
【0019】
図3のエンジン用電子制御装置76は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェースを備えた所謂マイクロコンピュータであって、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、種々のエンジン制御を実行する。例えば、燃料噴射量制御のために燃料噴射弁79を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ80を制御し、アイドルスピード制御のためにISC弁53を制御し、入力トルク制限制御のためにスロットルアクチュエータ54によりスロットル弁56を制御する。エンジン用電子制御装置76は、スロットル弁56の制御において、予め記憶された関係から実際のアクセルペダル操作量θACC に基づいてスロットルアクチュエータ54を駆動し、アクセルペダル操作量θACC が増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させる。上記エンジン用電子制御装置76は、変速用電子制御装置78と相互に通信可能に接続されており、一方に必要な信号が他方から適宜送信されるようになっている。
【0020】
変速用電子制御装置78も、上記と同様のマイクロコンピュータであって、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、油圧制御回路84の各ソレノイドバルブSL1、SL2、SL3、SL4或いはリニアソレノイドバルブSLU、SLT、SLNを駆動する。具体的には、例えば変速制御のために予め記憶された変速線図から実際のスロットル弁開度θTHおよび車速Vに基づいて自動変速機14のギヤ段を決定し、この決定されたギヤ段を成立させるように電磁弁SL1、SL2、SL3、或いはSL4を駆動する。ダウンシフトスイッチ86D およびアップシフトスイッチ86U は、図示しないモード切換スイッチの操作によって自動変速モードからマニュアル変速モードへ切り換えられたときに有効化されるものであり、手動操作に応答して自動変速機14の手動変速が行われるようになっている。
【0021】
図4は、上記エンジン用電子制御装置76、変速用電子制御装置78などの制御機能の要部すなわち変速中入力トルク切換制御機能を中心として説明する機能ブロック線図である。図4において、変速制御手段90は、予め記憶された変速線図から実際のスロットル弁開度θTHおよび車速Vに基づいて自動変速機14の変速を判断し、現ギヤ段からその変速後のギヤ段を成立させるように電磁弁SL1、SL2、SL3、或いはSL4を駆動する。たとえば1→2変速の場合には、ブレーキB3を係合させるように電磁弁SL1、SL2、SL3、或いはSL4を駆動する。この変速過程では、たとえば図5のタイムチャートに示すように、エンジン回転速度NE や自動変速機14の出力トルクが変化させられる。
【0022】
入力トルク制限制御手段92は、たとえば車両の動力伝達系を構成する部品を過負荷から保護するために、自動変速機14の入力トルクTINすなわちエンジン出力トルクTE を所定の制限値以下に制限するものである。たとえば図6に示すように、自動変速機14が第1速ギヤ段であるときには、アクセル開度θACC に係わらずエンジン出力トルクTE が予め設定された一定の第1速用制限値TINmax1を越えないようにスロットル弁開度θTHが調節されるので、上方に凸となるトルク曲線は中央部が水平とされている。自動変速機14が第2速ギヤ段であるときには、制限値が設けられていないので、上方に凸となるトルク曲線とされる。上記第1速用制限値TINmax1は、自動変速機14が第1速の変速比γ1 である状態でエンジン10の出力トルクが入力させられたときのような最大負荷時に、プロペラシャフト、自在継手、作動歯車装置などを保護するためにそれらのトルク容量に基づいて決定された値である。したがって、自動変速機14の変速に関連して制限値が変更されると、たとえば自動変速機14が第1速ギヤ段から第2速ギヤ段へ変速されて第1速用制限値TINmax1が除去されると、図6の第1速時のトルク曲線から第2速時のトルク曲線へ切り換えられるので、図6の矢印に示す大きさだけ自動変速機14の入力トルクが速やかに増大させられる。この意味において、入力トルク制限制御手段92は、入力トルク切換制御手段としても機能している。
【0023】
切換許可要求手段94は、上記入力トルク制限制御手段92による自動変速機14への入力トルクの切換が要求されている状態か否かを判定する。たとえば、上記入力トルク制限制御手段92によって自動変速機14の入力トルクTINすなわちエンジン出力トルクTE を所定の制限値以下に制限する制御が実行されている状態で自動変速機14の変速が開始された場合などは、その変速によって制限値が変更或いは除去されて自動変速機14の入力トルクTINがその制限値の変更或いは除去により切り換えられる状態となるので、入力トルクの切換が要求されている状態と判定する。
【0024】
入力トルク切換許可手段96は、自動変速機14の変速中である場合、特にはそのイナーシャ相が開始された場合には上記入力トルク制限制御手段92による入力トルクの切換作動を許可する。このイナーシャ相とは、自動変速機14の変速中において摩擦係合装置たとえば1−2変速ではブレーキB3のスリップ係合によって入力軸回転速度NE の変化が行われている期間である。
【0025】
図7は、エンジン用電子制御装置76の制御作動の要部すなわち変速中入力トルク切換制御ルーチンを説明するフローチャートである。図7において、ステップ(以下、ステップを省略する)SA1では、前記入力トルク制限制御手段92による入力トルク制限制御中であるか否かが判断される。このSA1の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は、SA2において1→2アップ変速中であるか否かが判断される。このSA2の判断が否定される場合は、SA3において2→1ダウン変速中であるか否かが判断される。このSA3の判断が否定される場合はSA1以下が再び実行される。しかし、上記SA2またはSA3の判断が肯定される場合すなわち1→2アップ変速中であるか2→1ダウン変速中である場合は、前記入力トルク切換許可手段96に対応するSA4およびSA5が実行される。上記SA1乃至SA3は、その入力トルク切換許可手段96に対応するSA4およびSA5の実行を求めるためのものであるので、前記切換許可要求手段94に対応している。
【0026】
SA4では、自動変速機14の変速中においてイナーシャ相が開始(図5のt1 時点)されてから所定時間αが経過した(図5のt2 時点)か否かが判断される。このイナーシャ相の開始はたとえばエンジン回転速度NE すなわち入力軸回転速度NINの回転変化が開始されたことに基づいて判定される。また、上記所定時間αは確実にイナーシャ相中であることを判定するために予め設定された時間値である。
【0027】
上記SA4の判断が否定される場合は繰り返しSA4が実行されて待機させられるが、肯定されると、SA5において入力トルクの切換が許可されるとともに、SA6において、入力トルク制限制御手段92において制限値の変更或いは除去が行われて入力トルクの切換が行われる。図5のt2 時点はこの状態を示している。この入力トルク切換によって入力トルクTINが所定幅上昇させられても、破線に示すようにブレーキB3のスリップ係合期間すなわちイナーシャ相期間が長くされるだけで変速中の出力軸トルクTO の大きさはほとんど変化しない。
【0028】
因みに、図8および図9は、変速直後すなわちイナーシャ相開始前のtA 時点、および変速終了直後すなわちtB 時点において入力トルク切換が行われた従来の作動を示している。たとえば図8において、tA 時点において入力トルク切換が行われたことにより入力トルクTINが所定幅上昇させられた場合には、一点鎖線Aに示すように出力軸トルクTO が立ち上がった後、変速作動による低下と相まって大きく落ち込む振幅の大きい上ピークトルクが発生する。また、図9において、tB 時点において入力トルク切換が行われたことにより入力トルクTINが所定幅下降させらた場合には、一点鎖線Bに示すように出力軸トルクTO の急上昇が発生する。これら出力軸トルクTO の上ピークトルクや急上昇が運転者に違和感を与えて、運転性が損なわれていたのである。
【0029】
上述のように、本実施例によれば、入力トルク切換許可手段96(SA4)により自動変速機14の変速中である場合にはその自動変速機14への入力トルクの切換が許可されることから、たとえば図5のt2 時点に示すように自動変速機14の入力トルクの切換がその自動変速機14の変速時期と重なったとしても、自動変速機14の変速中にその自動変速機14へ入力される入力トルクの切換作動が行われて、変速に関与する摩擦係合装置たとえばブレーキB3のスリップ係合期間内において入力トルクの切換によるトルク変動が好適に吸収されるので、図5の破線に示す出力軸トルクTO に示すようにイナーシャ相期間が延長されるにとどまって、入力トルクの切換ショック或いは変速ショックが好適に防止される。
【0030】
また、本実施例によれば、入力トルク切換許可手段96(SA4)は、自動変速機14の変速中においてその自動変速機14の入力軸20の回転速度NINすなわちエンジン回転速度NE の変化が発生しているイナーシャ相中であるか否かに基づいて自動変速機14へ入力される入力トルクの切換作動を許可するものであることから、自動変速機14の変速期間内において入力軸20の回転変動が発生しているイナーシャ相において入力トルク切換が行われるので、一層好適に入力トルクの切換ショック或いは変速ショックが防止される。
【0031】
また、本実施例によれば、前記車両は、その車両の動力伝達経路の構成部品たとえばプロペラシャフト、自在継手、差動歯車装置などを保護するために自動変速機14の入力トルクを所定の制限値以下に制限するとともに、その自動変速機14の変速に関連してその所定の制限値を変更することによりその自動変速機14の入力トルクを切り換える入力トルク制限制御手段92を備えたものであることから、それら車両の動力伝達経路の構成部品のトルク容量が最大負荷より低いトルク容量であっても保護され、車両の部品重量が軽減されるなどの利点がある。
【0032】
また、本実施例によれば、入力トルク制限制御手段92によって入力トルク切換が行われる変速は、自動変速機14の最低速ギヤ段(第1速ギヤ段)とその最低速ギヤ段よりも高速側に隣接した第2速ギヤ段との間で行われるものであることから、最も変速比が大きいために入力トルク制限値が低くされる第1速ギヤ段とその高速側に隣接して入力トルク制限値が相対的に高い値に設定されるか或いは除去されるギヤ段との間の変速と、入力トルク切換とが重なった場合でも、入力トルクの切換ショック或いは変速ショックが好適に防止される。
【0033】
以上、本発明の一実施例を図面を用いて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0034】
たとえば、前述の実施例の入力トルクの切換或いは変更は、入力トルク制限制御手段92によって行われるものであったが、たとえば理論空燃比に近い通常燃焼モードからリーン燃焼モードへ切り換える燃焼モード切換装置、エヤコンなどの補機をエンジン10に作動させるためにその補機をクラッチにより作動的に連結させる補機連結装置などにより行われるものであってもよい。
【0035】
また、前述の実施例では、イナーシャ相の開始に基づいて自動変速機14へ入力される入力トルクの切換が許可されていたが、イナーシャ相の前のトルク相の開始或いはその後半から入力トルクの切換が許可されてもよい。このように予備(スタンバイ)的にトルク相から入力トルクの切換が許可されることにより、入力トルク切換に比較的大きな応答時間がある場合でも丁度イナーシャ相で入力トルク切換が行われる利点がある。
【0036】
また、前述の実施例の自動変速機14は、複数のギヤ段の間で変速が行われる有段式の自動変速機であったが、変速比が無段階に変化させられる無段変速機であってもよい。無段変速機であっても所定の変速比から他の変速比まで段階的に変速させられる場合があるので、その変速期間内に入力トルクの切換が許可されるようにしてもよい。
【0037】
また、前述の実施例では、アップ変速時およびダウン変速時において入力トルクの切換が許可されるようにされていたが、アップ変速時およびダウン変速時のいずれか一方のときだけに入力トルクの切換が許可されるようにされてもよい。
【0038】
なお、上述したのはあくまでも本発明の一実施形態であり、本発明はその主旨を逸脱いない範囲で当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の入力トルク切換制御装置が適用された車両の動力伝達装置の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1の車両に設けられた自動変速機において、複数のギヤ段とそれを達成するための油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する図表である。
【図3】図1の車両において、エンジンおよび自動変速機を制御するための制御装置の電気的構成を説明するブロック線図である。
【図4】図3のエンジン用電子制御装置および変速用電子制御装置などの制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図5】図3のエンジン用電子制御装置および変速用電子制御装置などの制御作動を説明するタイムチャートである。
【図6】図4の入力トルク制限制御手段の入力トルクを制限する作動を説明するためのエンジン出力トルク特性図である。
【図7】図3のエンジン用電子制御装置などの制御作動を説明するフローチャートである。
【図8】従来の作動を説明するタイムチャートである。
【図9】従来の作動を説明するタイムチャートである。
【符号の説明】
10:エンジン(原動機)
14:自動変速機
20:入力軸
92:入力トルク制限制御手段
96:入力トルク切換許可手段

Claims (2)

  1. 自動変速機を備え、原動機から該自動変速機へ入力される入力トルクが切り換えられる車両において、該自動変速機へ入力される入力トルクの切換時期を制御するための車両用自動変速機の入力トルク切換制御装置であって、
    前記自動変速機の変速中である場合には前記自動変速機へ入力される入力トルクの切換作動を許可する入力トルク切換許可手段と、
    前記車両の動力伝達経路の構成部品を保護するために前記自動変速機の入力トルクをギヤ段に対応して定められた制限値以下に制限するとともに、該自動変速機の変速に関連して、変速前のギヤ段の前記制限値から変速後のギヤ段の前記制限値に変更することにより該自動変速機の入力トルクを切り換える入力トルク制限制御手段と
    を、含み、
    前記自動変速機は有段変速機であり、前記入力トルク切換許可手段は、該自動変速機の変速中において該自動変速機の入力軸の回転速度変化が発生しているイナーシャ相中であるか否かに基づいて前記自動変速機へ入力される入力トルクの切換作動を許可するものであることを特徴とする車両用自動変速機の入力トルク切換制御装置。
  2. 前記自動変速機の変速は最低速ギヤ段と該最低速ギヤ段よりも高速側に隣接したギヤ段との間で行われるものである請求項1車両用自動変速機の入力トルク切換制御装置。
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