JP3732063B2 - リチウムポリマー二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリマー電解質を備えた二次電池、特にその負極材料が改良されたリチウムポリマー二次池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機電解液を用い、炭素材料を負極材料、リチウム含有複合酸化物を正極材料とするリチウムイオン二次電池は、水溶液系の二次電池に比べて電圧およびエネルギー密度が高く、かつ低温特性が優れ、さらにサイクル安定性にも優れているところから、急速に需要が伸びている。また、有機電解液を含有する高分子(ポリマー)ゲル状電解質を用いたリチウムポリマー電池も薄型・軽量の新電池系として開発されつつある。
【0003】
ポリマー電解質電池は、ポリエチレンオキサイドと電解質塩からなるポリマー電解質を用いた電池が提案(Second International Meeting on Solid Electrolytes, Extended Abstracts, p20-22 (1978),米国特許第4,303,748号)されて以来、種々の研究が行われている(例えば、「導電性高分子」緒方直哉編 講談社(1990)や Polymer Electrolyte Reviews, Vols.1 and 2, Elsevier, London (1987,1989))。しかし、それら各種ポリマー電解質材料は、室温でのイオン伝導度が10-4〜10-5S/cmのレベルにとまっている。イオン伝導度を向上させる別のアプローチとして、有機電解液の溶媒を可塑剤として含有させることにより、10-3〜/cmレベルのイオン伝導度を容易に達成できるタイプの電解質が提案され(J.Electrochem.Soc.,137, 1657(1990)、米国特許第5,085,952号、同第5,223,353号、同第5,275,750号など)、ポリマーゲル電解質と呼ばれている。このポリマーゲル電解質を用いたポリマー電池は、イオン伝導度の向上により、リチウムイオン二次電池と同程度の特性が期待される。
【0004】
しかし、容量面では正・負極合剤中にもポリマーを含有することが必要であるため、リチウムを吸蔵・放出可能な正・負極材料の量(密度)が低下する。従って、同一の正・負極材料を用いた場合、リチウムポリマー二次電池はリチウムイオン二次電池よりもエネルギー密度が低下するという問題があった。
負極材料として高容量であるリチウム金属を用いると、充電時に負極にデンドライト状の析出が起こり、充放電を繰り返すとその析出物がポリマーゲル電解質を突き破って正極側に達し、内部短絡を起こすおそれがある。また、析出したリチウムは、比表面積が大きいため反応活性度が高く、ポリマーゲル電解質の可塑剤(溶媒)と反応して不活性化し、充放電効率を低下させる。これらの理由で負極材料としてリチウム金属を用いたリチウム二次電池は、低い信頼性および短いサイクル寿命に問題があった。
現在、リチウム金属に替わる負極材料として、リチウムイオンを吸蔵・放出できる炭素材料を使用した電池が実用化されている。通常、炭素材料負極には金属リチウムは析出しないため、デンドライトによる内部短絡の問題はない。しかし、炭素材料の代表例である黒鉛の理論容量は372mAh/gであり、Li金属単体の理論容量の10分の1程度と少ない。
【0005】
また、他の負極材料として、リチウムを含む窒化物が高容量材料として知られている。このリチウム含有複合窒化物を電池の負極材料として用いる技術は比較的新しく、電気化学素子の電極材料としてリチウムニトリド金属化合物(リチウム含有複合窒化物と同意)が開示されている(特開平7−78609号公報)。リチウムと遷移金属の複合窒化物Li(3-x)-yMxN(MはCo、Mn、Ni、及びCuからなる群より選ばれた少なくとも一種の遷移金属)は、電位的に金属リチウムを通常析出しないため、デンドライトによる内部短絡の問題はなく、中でも、上述のx値が0.1〜0.6あたりの化合物はその可逆容量が500〜800mAh/gであり、いずれも黒鉛の理論容量よりも大きい有望な負極材料である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような炭素材料よりも高容量のこのリチウム含有複合窒化物をポリマーゲル電解質を有する電池に用いるには、以下に示すような課題があった。
それは、リチウム含有複合窒化物は、炭素負極材料にくらべて充放電サイクル特性が不十分なことである。その理由は、充放電可逆容量が大きい分、充放電における膨張・収縮による体積変化が大きくなるためである。このように充電時と放電時の体積差が大きい場合、大きなひずみが生じ、亀裂が発生して窒化物粒子そのものが微細化したり、膨張・収縮で極板内の導電剤との絡みを含めた電子伝導ネットワークが緩んだり分断されたりして、電気化学的な反応に関与できない部分が増加し、充放電容量が低下する。特に、ポリマーゲル電解質を用いた電池では、溶液系と比べて電解質の形態の自由度が低いこともあり、集電ネットワークの低下が顕著に現れ、サイクル特性の低下が著しい。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決し、リチウム含有複合窒化物を負極材料に用いた、サイクル特性および信頼性に優れ、高エネルギー密度のリチウムポリマー二次電池を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明のリチウムポリマー二次電池は、リチウム含有複合酸化物である主材料、導電剤およびポリマー材料からなる正極と、リチウム含有複合窒化物である主材料、導電材およびポリマー材料からなる負極と、有機電解液を含有するポリマーゲル電解質とを備え、リチウム含有複合窒化物として、一般式Li(3-x)-yMxN(MはCo、Mn、Ni及びCuからなる群より選ばれた少なくとも一種の遷移金属、xは遷移金属の含有量、yは充放電に伴い変化するLi含量の変化を示す変数である。)で表され、式中の遷移金属の含有量を表すx値が0.3≦x≦0.6であるものを用いる。y値は、Liをすべて放出したときの(3−x)−y=0、すなわちy=3−xを上限とし、0≦y≦3−xの範囲にある。なお、充電によりy値が3−xを超える量を蓄積することは可能であるが、Liの析出という形態となる。
また、正・負極のポリマー材料およびポリマーゲル電解質のポリマーは、フッ化ビニリデン、6フッ化プロピレン、4フッ化エチレン、およびパーフルオロアルキルビニルエーテルからなる群より選ばれた2種または3種の共重合体である。
さらに、ポリマーゲル電解質には、疎水性処理されたセラミック微粒子、ポリオレフィン系樹脂の繊維および不織布からなる群より選ばれた構造補強材が1種または2種以上含まれている。
【0009】
本発明は、高容量のリチウム含有複合窒化物の充放電に伴う体積変化に注目し、その遷移金属の含有量を制御することによって体積変化を抑制し、サイクル特性を改善するものである。特に、適切な組成のリチウム含有複合窒化物を負極材料として用い、その体積変化を最小限にとどめ、ポリマーゲル電解質電池の従来の課題を解決するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、負極材料として一般式Li(3-x)-yMxN(MはCo、Mn、Ni及びCuからなる群より選ばれた少なくとも一種の遷移金属)で表されるリチウム含有複合窒化物を用い、前記式中のx値を0.3≦x≦0.6とする。このリチウム含有複合窒化物は、窒化リチウムLi3Nに遷移金属原子を固溶した化合物である。x値は合成した時点で決定される。実験的に検討した結果、置換できる量はx≦0.6の範囲(6<xでは未反応の遷移金属が残存する)であるが、特に電池の主材料として機能するのは0.1≦x≦0.6の範囲である。なお、x<0.1ではLi3Nと同様にほとんど電気伝導性を示さず、電極の主材料となり得なかった。
【0011】
ポリマーゲル電解質を用いた本発明に係る電池に最適な材料は、x値が0.3≦x≦0.6のリチウム含有複合窒化物である。x値を限定する具体的な理由は以下のとおりである。
すなわち、溶液系の電解質を用いた場合、上記リチウム含有複合窒化物は、x値0.1≦x≦0.6の材料が充放電可能な電極機能を示すが、実験的にx<0.3の材料はポリマーゲル電解質で電池を構成すると極めてサイクル特性が悪い結果となった。負極板の厚みを測定したところ、充放電に伴う極板の厚み変化がx<0.3では著しく大きくなっていることがわかった。これら窒化物は、充放電を経験すると非晶質化するため格子定数の変化から現象をとらえることはできないが、少なくとも遷移金属の置換量が少ない領域、すなわちx<0.3の領域では、遷移金属の価数変化による結晶の歪みの緩和作用が弱まるため、結晶の膨張・収縮が促進されるものと推測される。すなわち、本発明の0.3≦x≦0.6の領域では、遷移金属の価数変化が結晶歪みを緩和するため、膨張・収縮が抑制されるものと推測される。
従って、ポリマーゲルを電解質とするリチウムポリマー二次電池で、リチウム含有複合窒化物を負極に用いる場合は、上述の一般式におけるx値が0.3≦x≦0.6の範囲の材料を用いることが必要である。
電解質の形態の自由度がさらに低い液成分を含まないポリマー電池では、このような体積変化の少ない材料を選択することはさらに重要である。
【0012】
本発明のさらに好ましい実施の形態を以下に説明する。
本発明の好ましいポリマーゲル電解質のポリマーは、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドまたはその誘導体を骨格とするポリマーである。アルキレンオキサイドは、比較的融点の低いポリマー材料であり、リチウム塩の溶解度が大きく、取り扱いが容易である特徴を有している。イオン伝導度が低いという課題は有機溶媒を可塑剤として用いることにより解決される。
本発明の他の好ましいポリマーゲル電解質のポリマーは、フッ化ビニリデン、6フッ化プロピレン、4フッ化エチレン、およびパーフルオロアルキルビニルエーテルからなる群より選ばれた2種または3種の共重合体である。特に好ましくはフッ化ビニリデンと6フッ化プロピレンの共重合体である。この共重合体は、化学的安定性に優れており、また熱溶着することも可能である。さらに、フタル酸エステルなどの可塑剤とともにテトラハイドロフランなどの溶媒に溶解し、キャスト、乾燥してフィルムを作製した後、エーテルなどの溶媒で可塑剤を溶出することにより、多孔質フィルムが得られる。この多孔質フィルムに電解液を注液するとゲル電解質が得られることから、一体化した電極構成を作製した後、最後に電解液を注液してゲル化することができる。
【0013】
本発明のさらに他の好ましいポリマーゲル電解質のポリマーは、ポリアクリロニトリルまたはポリアクリロニトリルを主成分とし、アクリル酸メチル、ビニルピロリドン、酢酸ビニルなどとの共重合体を骨格とするポリアクリロニトリル系ポリマーである。また、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテル系樹脂などとのポリマーアロイとして用いることも可能である。ポリアクリロニトリル系ポリマーは、最も汎用性に富む高分子材料の一つであり、ジメチルホルムアミドなどの溶媒に溶解あるいは有機電解液と加熱し溶解したものをキャストしてフィルム化することも可能であり、不織布状の多孔質体に有機電解液を含浸し、加熱、冷却することによりゲル状フィルムを得ることができるなど取り扱いが容易であり、さらに難燃性であるという特徴を有している。
本発明の他の好ましいポリマーゲル電解質のポリマーは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートまたはそれらの誘導体を骨格とし、メタクリル酸エチル、スチレン、酢酸ビニルなどとの共重合体であるポリエステル系ポリマーである。また、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテル系樹脂などとのポリマーアロイとして用いることも可能である。ポリエステル系ポリマーは、最も汎用性に富む高分子材料の一つであり、化学的安定性に優れ、フレキシブルで機械的強度が強いフィルムを作製することが可能である。
本発明の好ましいポリマーゲル電解質のポリマーは、メタクリレートとエチレンオキサイドの共重合体である。メタクリル酸エチル、ジメタクリルエチレングリコールなどと分子量10000以下のポリエチレンオキサイドの混合物の溶液に有機電解液と重合開始剤を加えた溶液を正・負極上にキャストした後、熱または紫外線照射などにより、電極上で直接重合し、ゲル電解質層を形成することが可能である。
【0014】
負極のリチウム含有複合窒化物は、水分との反応性が高く、水分で劣化するため、ペースト化等に用いる溶剤は高度に脱水されたものを用いることが望ましい。
本発明のポリマーゲル電解質のセパレータ部には、微粒子分散剤、フィラー、不織布などの構造補強材を含むことが好ましい。構造補強材としては、有機電解液やポリマー材料と化学変化を起こさない微粒子ないし繊維状材料であれば何でも用いることができるが、表面を疎水化処理、例えばシランカップリング処理をしたシリカ、アルミナなどの粒径1μm程度以下のセラミック微粒子、あるいはポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマーの繊維もしくは不織布を用いることができる。構造補強材の添加量は、特に限定されないが、ポリマーゲル電解質セパレータ部の40重量%までの範囲が好ましい。
【0015】
本発明に用いられる正極及び負極は、リチウムイオンを電気化学的かつ可逆的に吸蔵・放出できる正極材料及び上記負極材料に、それぞれ導電剤、ポリマー材料等を加えた合剤層を集電体の表面に塗着して作製される。
本発明に用いられる負極用導電剤は、電子伝導性材料であれば何でもよい。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛、膨張黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ−ボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、銅、ニッケル等の金属粉末類およびポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などを単独またはこれらの混合物として含ませることができる。これらの導電剤のなかで、人造黒鉛、アセチレンブラック、炭素繊維が特に好ましい。導電剤の添加量は、特に限定されないが、負極材料に対して1〜50重量%が好ましく、特に1〜30重量%が好ましい。本発明の負極材料は、それ自身電子伝導性を有するため、導電剤を添加しなくても電池として機能させることは可能である。
本発明に用いられる負極用集電体としては、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、材料としてステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、炭素、導電性樹脂などの他に、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケルあるいはチタンを処理させたものなどが用いられる。特に、銅あるいは銅合金が好ましい。また、表面処理により集電体表面に凹凸を付けることが望ましい。形状は、フォイルの他、フィルム、シート、ネット、パンチングされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体などが用いられる。厚みは、特に限定されないが、1〜500μmのものが用いられる。
【0016】
本発明の正極材料には、リチウム含有遷移金属酸化物を用いることができる。例えば、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-yO2、LixCoyM1-yOz、LixNi1-yMyOz、LixMn2O4、LixMn2-yMyO4(M=Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも一種、x=0〜1.2、y=0〜0.9、z=2.0〜2.3)があげられる。ここで、上記のx値は、充放電開始前の値であり、充放電により増減する。なお、リチウム含有遷移金属化合物のような通常充電から(Liの放出方向から)開始する正極材料を用いる場合は、本発明の窒化物材料が通常放電から開始する負極材料なので、状態を一致させるために正・負極のいずれか一方からあらかじめLiを抜く化成処理が必要である。また、遷移金属カルコゲン化物、バナジウム酸化物のリチウム化合物、ニオブ酸化物のリチウム化合物、有機導電性物質を用いた共役系ポリマー、シェブレル相化合物等の他の正極材料を用いることも可能である。二酸化マンガン、五酸化バナジウムなどの通常放電から開始する正極材料の場合は、化成処理を施す必要がなく、製造上は有利である。また、複数の異なった正極材料を混合して用いることも可能である。正極材料の粒子の平均粒径は、特に限定はされないが、1〜30μmであることが好ましい。
【0017】
本発明で使用される正極用導電剤は、用いる正極材料の充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何でもよい。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ−ボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物あるいはポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などを単独またはこれらの混合物として含ませることができる。これらの導電剤のなかで、人造黒鉛、アセチレンブラックが特に好ましい。導電剤の添加量は、特に限定されないが、正極材料に対して1〜50重量%が好ましく、特に1〜30重量%が好ましい。カーボンやグラファイトでは、2〜15重量%が特に好ましい。
本発明に用いられる正極用集電体としては、用いる正極材料の充放電電位において化学変化を起こさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、材料としてステンレス鋼、アルミニウム、チタン、炭素、導電性樹脂などの他に、アルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボンあるいはチタンを処理させたものが用いられる。特に、アルミニウムあるいはアルミニウム合金が好ましい。これらの材料の表面を酸化して用いることもできる。また、表面処理により集電体表面に凹凸を付けることが望ましい。形状は、フォイルの他、フィルム、シート、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群、不織布体の成形体などが用いられる。厚みは、特に限定されないが、1〜500μmのものが用いられる。
【0018】
正・負極の電極の結着剤には、通常セパレータ部に用いているポリマーと同一のポリマーを結着剤として用いるが、電極の強度および電極と集電体の接着強度を向上させるために別の結着剤を併用することも可能である。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体を挙げる事ができ、これらの材料を単独または混合物として用いることができる。
【0019】
本発明における負極板と正極板の構成は、少なくとも正極合剤面の対向面に負極合剤面が存在していることが好ましい。
本発明のポリマー電解質に用いられる非水電解質は、溶媒と、その溶媒に溶解するリチウム塩とから構成される。可塑剤としても作用する非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネ−ト、プロピレンカ−ボネ−ト、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、などの非プロトン性有機溶媒を挙げることができ、これらの一種または二種以上を混合して使用する。なかでも環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合系または環状カーボネートと鎖状カーボネート及び脂肪族カルボン酸エステルとの混合系が好ましい。
【0020】
これらの溶媒に溶解するリチウム塩としては、例えばLiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCl、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li(CF3SO2)2、LiAsF6、LiN(CF3SO2)2、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、イミド類等を挙げることができ、これらを使用する電解液等に単独または二種以上を組み合わせて使用することができるが、特にLiPF6を含ませることがより好ましい。
本発明における特に好ましい非水電解質は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを少なくとも含み、支持塩としてLiPF6を含む電解液である。これら電解質を電池内に添加する量は、特に限定されないが、正極材料や負極材料の量や電池のサイズによって必要量を用いることができる。支持電解質の非水溶媒に対する溶解量は、特に限定されないが、0.2〜2mol/lが好ましい。特に、0.5〜1.5mol/lとすることがより好ましい。
【0021】
放電や充放電特性を改良する目的で、他の化合物を電解質に添加することも有効である。例えば、トリエチルフォスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グライム、ピリジン、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、クラウンエーテル類、第四級アンモニウム塩、エチレングリコールジアルキルエーテル等を挙げることができる。
電池の形状はコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型、電気自動車等に用いる大型のものなどいずれにも適用できる。
本発明のリチウムポリマー二次電池は、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に用いることができるが、特にこれらに限定されるわけではない。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
《実施例1》
[負極材料の合成方法]
窒化リチウムと遷移金属の粉末を所定量混合して磁製坩堝に入れ、窒素雰囲気中700℃で8時間加熱することにより、遷移金属が窒化リチウム中に固溶した目的の化合物リチウム含有複合窒化物が凝固物として得られた。その凝固物をボールミルで粉砕し、篩で分級することにより45μm以下の粒子にした。
本実施例では遷移金属としてCoを用い、比較サンプルとして上記x値を0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、および0.6とした6種類のリチウム含有複合窒化物をそれぞれ合成した。
【0024】
[扁平型リチウムポリマー二次電池の製造方法]
図1は扁平型非水電解質電池の断面図を示し、1は樹脂フィルムとアルミニウムフィルムとのラミネートフィルムからなる電池ケースを表す。この電池ケース1内には、銅製の負極リード2を挟んだ負極3、その外側にポリマー材料と電解液および構造補強材からなるポリマーゲル電解質のセパレータ部4を介して配置した正極5およびアルミニウム製の正極リード6が収容されている。リード2および6の取り出し部にはリード部溶着シール7が設けられている。
電池の製造方法をさらに詳しく説明する。電解質ポリマー材料には分子量80万から200万のポリエチレンオキサイド(PEO)にポリフッ化ビニリデンを混合しポリマアロイ化したものを用い、これをエチレンカーボネイトとエチルメチルカーボネイトの混合溶媒に溶解した(以下、この溶液をPEO溶液という)。そして、負極材料である窒化物粒子と導電剤のカーボンブラックをPEO溶液に混合分散させたペーストを負極集電体である銅製芯材に塗着し、揮発成分を乾燥除去した後、所定寸法に切断することにより負極板を作製した。正極板は、正極材料のリチウム含有複合酸化物と導電剤のカーボンブラックを同様にPEO溶液に混合分散したペーストを正極集電体であるアルミニウム製芯材に塗着し、同様に加工することにより作製した。セパレータ部は、PEOを有機電解液に加熱、溶解し、これを構造補強材であるポリプロピレン製不織布に含浸後、冷却してゲル電解質層を形成したものである。正極板、セパレータ部と負極板を積層、加圧して電極群とし、電池ケース1内に入れた後、開口部のラミネートフィルムを熱溶着し、扁平型電池とした。ゲル化あるいは電極、セパレータ部の接合が不十分な場合は、封口前に加熱工程を組み込むことも可能である。
【0025】
有機電解液はエチレンカーボネイトとエチルメチルカーボネイトを体積比1:1で混合した混合溶媒に、電解質である6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.0モル/dm3の濃度に溶解させたものを用いた。
本実施例では、正極材料としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を用いた。負極のリチウム含有複合窒化物は、合成時には充電状態のいわゆるLiの吸蔵状態であり、また正極のLiCoO2も初期状態が放電状態のいわゆるLi吸蔵状態である。このため、このままで電池を構成することはできない。正・負極いずれかの電極材料からLiを脱離させて、Li放出状態にして電池を組み合わせる必要がある。そこで、ここでは正極のLiCoO2からあらかじめLiを酸処理で抜き取った正極材料、組成式Li0.5CoO2相当品を電池作製時に用いた。
正極材料にはLi0.5CoO2相当品、負極材料には上述の遷移金属にCoを用いた6種類の組成の窒化物を用いて、それぞれ図1に示した扁平型リチウムポリマー二次電池を作製し、その電池特性を比較した。充放電は100mAの定電流で、その充電および放電の終止電圧をそれぞれ4.1Vおよび2.0Vとして50サイクル繰り返した。
【0026】
図2は6種類のx値を有するリチウム含有複合窒化物をそれぞれ用いた上述のリチウムポリマー二次電池のサイクル特性を比較したものである。例えば、図2中のx=0.4、すなわち組成Li2.6Co0.4Nのリチウム含有複合窒化物を用いた電池(正極にLiを脱離したLi0.5CoO2を使用)では、正極材料は約4g充填してあり、540mAhの初期容量が得られている。また、このときの負極材料であるリチウム含有複合窒化物の充填量は約0.8gであった。この電池は、50サイクル目の容量が499mAhであったので、サイクル劣化率は0.152%/サイクルとなる。
ここで用いたサイクル劣化率は、初期容量540mAhから50サイクル目の容量499mAhを引いた容量低下量を初期容量の540mAhとサイクル数50で割った値を百分率で表したもので、いわゆる1サイクル当たりの初期容量を基準とした容量低下率である。
図2から明らかなように、0.3≦x≦0.6の範囲でサイクル可逆性が優れていることがわかる。なお、この時のサイクル劣化率はx=0.1、0.2、0.3、0.4、0.5及び0.6のリチウム含有複合窒化物を用いた電池では、それぞれ0.642%、0.537%、0.181%、0.152%、0.139%、及び0.147%であった。
【0027】
《実施例2》
ポリマー材料としてフッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン共重合体を用い、負極用リチウム含有複合窒化物材料と導電材のカーボンブラックを結着剤兼電解質ポリマーのフッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン共重合体と混合し、溶剤のN−メチル−2−ピロリドンの溶液に混合分散して得られたペーストを負極集電体である銅製芯材に塗着し、乾燥後、所定寸法に切断することにより負極板3が得られた。正極5は正極材料のLi0.5CoO2と導電剤のカーボンブラックを同様にフッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン共重合体、N−メチル−2−ピロリドン、フタル酸ジブチル溶液に混合分散したペーストを正極集電体であるアルミニウム製芯材に塗着し、同様に加工することにより作製した。セパレータ部4は、フッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン共重合体と構造補強材材である疎水性処理をし酸化珪素微粒子を同様の溶液に分散してペースト化し、塗着、乾燥して得た。正極板、セパレータ部および負極板を熱ローラーで溶着した後、ジエチルエーテル中に可塑剤のフタル酸ジブチルを溶出させることにより、多孔質ポリマー電極群が得られた。この電極群を電池ケース内に入れた後、実施例1と同じ有機電解液を注液し、ゲルポリマー電解質を形成した。最後に開口部のラミネートフィルムを熱溶着して完成電池とした。
本実施例でも比較検討のため、実施例1と同様に6種類のx値を持つリチウム含有複合窒化物を用いて電池を試作した。溶剤のN−メチル−2−ピロリドンはリチウム含有複合窒化物の水分による劣化を考慮して、高度に脱水したものを使用した。
【0028】
《実施例3》
ポリマー材料としてポリアクリロニトリルを用い、溶剤のジメチルホルムアミドに溶解させた。このポリアクリロニトリル溶液に、リチウム含有複合窒化物と導電材のカーボンブラックを混合分散させたペーストを負極集電体である銅製芯材に塗着して負極を作製した。また、実施例1のPEO溶液の代わりに上記ポリアクリロニトリル溶液を用いた他は実施例1と同様にしてLi0.5CoO2の正極を作製した。次に、正極板をアセトンまたはエタノールで、負極板は脱水N−メチル−2−ピロリドンでそれぞれ洗浄してジメチルホルムアミドを除去した。セパレータ部にはポリアクリロニトリル製不織布状フィルムを用い、正極板5、セパレータ部および負極板を積層して電極群を作製し、実施例1と同じ有機電解液を注液した後、熱板に挟み込み加熱、圧縮後、冷却することにより電極群の一体化と電解液のゲル化を行い、電池ケース1に挿入、封止して完成電池とした。
比較検討のため、実施例1と同様に6種類のx値を持つリチウム含有複合窒化物を用いて電池を試作した。溶剤のジメチルホルムアミドはリチウム含有複合窒化物の水分による劣化を考慮して、高度に脱水したものを使用した。
【0029】
《実施例4》
ポリマー材料としてポリブチレンテレフタレートとメタクリル酸エチルとの共重合体であるポリエステル系ポリマーを用い、酢酸エチルに溶解した。このポリマー溶液にリチウム含有複合窒化物と導電剤を加えてペーストを調合し、銅製心材に塗着、乾燥して負極7を作製した。実施例1のPEO溶液の代わりに上記ポリマー溶液を用いた他は実施例1と同様にしてLi0.5CoO2の正極を作製した。セパレータ部はポリエステル系ポリマーを構造補強材であるポリプロピレン製不織布に含浸後、乾燥により溶剤を除去して多孔質化した。正極板、セパレータ部および負極板を積層して電極群を作製し、実施例1と同じ有機電解液を注液した後、熱板に挟み込み加熱圧縮、冷却することにより電極群の一体化と電解液のゲル化を行い、電池ケースに挿入、封止して完成電池とした。
比較検討のため、実施例1と同様に6種類のx値を持つリチウム含有複合窒化物を用いて電池を試作した。溶剤の酢酸エチルはリチウム含有複合窒化物の水分による劣化を考慮して、高度に脱水したものを使用した。
【0030】
実施例2〜4におけるx値の異なる各種電池について、実施例1と同じ条件で充放電し、実施例1と同様に50サイクル目までのサイクル劣化率を求めた。図3に実施例1〜4のポリマー電池のx値(横軸)とサイクル劣化率(縦軸)の関係を示す。
上記の実施例で用いたポリマーゲル電解質は、いずれも10-3S/cmレベルのイオン伝導度を有していた。
また、上記実施例では、置換する遷移金属種としてCoを用いたが、Coの代わりにMn、Ni、またはCuを用いた場合、およびこれらを混合して用いた場合も同様の効果が得られた。
【0031】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、サイクル特性および信頼性に優れた、高エネルギー密度のリチウムポリマー二次電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例におけるリチウムポリマー二次電池の縦断面略図である。
【図2】本発明のリチウムポリマー二次電池のサイクル特性を比較した図である。
【図3】本発明のリチウムポリマー二次電池のサイクル劣化率を比較した図である。
【符号の説明】
1 電池ケース
2 負極リード
3 負極
4 ポリマーゲル電解質セパレータ部
5 正極
6 正極リード
7 リード部溶着シール
Claims (1)
- 一般式Li(3-x)-yMxN(MはCo、Mn、Ni及びCuからなる群より選ばれた少なくとも一種の遷移金属、0.3≦x≦0.6、0≦y≦3−x)で表されるリチウム含有複合窒化物、導電材およびポリマー材料からなる負極と;リチウム含有複合酸化物、導電材およびポリマー材料からなる正極と;有機電解液を含有するポリマーゲル電解質とを具備し、
正・負極のポリマー材料およびポリマーゲル電解質のポリマーが、フッ化ビニリデン、6フッ化プロピレン、4フッ化エチレン、およびパーフルオロアルキルビニルエーテルからなる群より選ばれた2種または3種の共重合体であり、
ポリマーゲル電解質には、疎水性処理されたセラミック微粒子、ポリオレフィン系樹脂の繊維および不織布からなる群より選ばれた構造補強材が1種または2種以上含まれていることを特徴とするリチウムポリマー二次電池。
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