JP3728518B2 - 豚、羊等の食肉屠体の除骨方法とその食肉屠体の搬送除骨システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、豚、羊等の食肉屠体の分割ブロックの除骨に関し、特に人手による筋入れと協動する動力補助により、効率のよい除骨を可能とする豚、羊等の食肉屠体の除骨方法と、その食肉屠体の搬送除骨システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
食肉屠体はおのおの脊椎方向に半截された各半截ブロックで形成されている。例えば、豚枝肉の場合図9に見るように肩、ロース、バラ、及び腿の4ブロックに分割される。
その各ブロックの除骨は、脂肪層側を下側にして調理台上に載置して、殆ど全て人手による切り削ぎと切り開き、もぎ取りによる所要の除骨を行っている。
即ち、予め、
a、前腕骨両脇を切り開き、肘頭をえぐり出す。ついで、前腕骨の先端の尺骨をつかみ押し下げるようにしながら、前腕骨と上腕骨との関節部に刃を入れ切り開く。そのあと、肘頭をつかみ上腕骨より遠ざける方向に剥ぎ起し前腕骨を除骨する。
b、前記半截ブロックの半截切断面上に露出している頚椎・胸椎の内側に添って筋入れをし、頚肋上面に肉が残らぬように肉を削ぎ落とす。
c、頚椎刺、胸椎刺裏に筋入れをし、肋骨左右に筋入れをし、各肋骨を起す。
ついで、胸椎側をつかみ頚椎側に進むよう除骨する。
d、カタバラをめくり、上腕骨と肩甲骨とをえぐり出し、関節部に刃を入れ、肩甲骨裏側に筋入れをし、肩甲骨をつかみ剥ぎ起す。
e、上腕骨の前腕骨との関節側の骨をつかみ、筋入れと切り開き剥ぎ起しの交互作業により除骨を行う。
【0003】
上記したように、従来の豚、羊等の食肉屠体のワークの除骨は、全て調理台上で、例えば捏ね回すかのようにして全て人手による筋入れ、切り開きや切り削ぎ、もぎ取り作業が除骨処理作業の大部分を占めているため、衛生的、品質的にも問題があり、
また、作業者には重量物であるワークの取り扱いと、切開箇所の剥ぎ取り、もぎ取りを主体とした人手による除骨作業のため、重労働を余儀なくされている問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記衛生的問題を解決するため、調理台上の処理を最少限に押さえた、宙吊り姿勢での除骨作業を導入するとともに、動力補助手段による、ワークの姿勢制御、姿勢保持、要切開箇所の露出、及び露出した関節部の嵌合離脱を可能とする一連の動力補助動作と、人手による要部切開筋入れ動作とを有機的に併用する除骨方式を採用し、
且つ除骨処理は全てワークの宙吊り状態のなかで行うようにして重量物取り扱い対策及び衛生的対策をなすとともに、大きな外力を必要とする分離及び要切開部位の露出、剥ぎ取り、もぎ取りはアクチュェータによる動力補助手段の使用により重労働対策をなし、人手による場合は、要部切開、切り削ぎ、筋入れ等の軽作業に終始する除骨を可能とした豚、羊等の食肉屠体の除骨方法とその食肉屠体の搬送除骨システムの提供を目的としたものである。
【0005】
そこで、本発明は、豚、羊等の食肉屠体の分割した半截ブロック状ワークにおいて、従来の除骨作業に見られた、非衛生的問題及び作業者に対する重労働対策からも十分配慮された高能率の除骨処理を可能とすべく、人手による作業は筋入れ及び切り削ぎ、切開きのみに限定し、且つその人手による作業をより効果的にするため、動力補助手段である把持、押圧、引っ張り等の機能を有機的に組合せ、除骨に必要な複数動作により可能とした豚、羊等の食肉屠体の除骨方法の提供を目的としたものである。
【0006】
特に、請求項1、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、
露出骨部の除骨動作の態様を特定した、豚、羊等の食肉屠体の除骨方法の提供を目的としたものである。
【0007】
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、
剥ぎ取りもぎ取り動作の態様を特定した、豚、羊等の食肉屠体の除骨方法の提供を目的としたものである。
【0008】
また、請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、
骨部露出動作は、ワークの除骨に際しその前提となり、しかも煩雑な処理作業を必要とした、ワーク内に内蔵する骨部に対する効率の良い骨部露出動作の態様を特定した、豚、羊等の食肉屠体の除骨方法の提供を目的としたものである。
【0009】
また、請求項5記載の発明は、
請求項1記載の除骨方法を使用して、搬送処理ラインに組み込み可能とした、豚、羊等の食肉屠体の搬送除骨システムの提供を目的としたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1及び2記載の発明は、
食肉屠体の複数に分割されブロック状ワークの除骨において、
筋入れ、切り開き、削ぎ落とし等の人力による手段と、把持、押圧、引っ張り等による動力補助手段と、を適宜組合せて、ワークの宙吊り動作、宙吊りワークの姿勢制御動作、姿勢制御ワークの剥ぎ取りもぎ取り動作、骨部露出動作、露出骨部の除骨動作及び骨部よりの肉分離動作とを可能とした、ことを要旨とするものである。
【0011】
上記したように、ワークに対し、宙吊り用骨部の露出のための切り裂き及び、宙吊り状態では作業のやりにくい箇所の筋入れ等を前処理としてを行ったのち、把持手段による動力補助によりワークの宙吊り動作を可能とし、その結果ワークの重量負担処理を皆無とし、また、宙吊り部材よりの剥ぎ取り及びもぎ取り作業は剥ぎ取りないしもぎ取り部材の自重の助けを借りて作業は楽にすみ、作業者を重労働より解放することができるとともに、また、宙吊りにより調理台上の処理を皆無としてワークの調理台からの外部汚染を防止でき、衛生上高い品質の食品を供給できる。
また、ワークの姿勢制御の動作は、押圧手段による動力補助により可能とし、この姿勢制御により爾後の肉の剥ぎ取りもぎ取り動作、骨部露出動作、露出骨部の除骨動作の諸動作に対し、必要な動作基準を形成する。
また、本発明の除骨及び肉の分離方法を形成する各動作は、すべて把持、押圧、引っ張りの単純機能の動力補助手段の単独使用ないし併用により可能としたもので、その組合せと肉の自重垂れ下がりと相俟ってより効率よく作動させるようにしてある。
例えば押圧手段によるワークの姿勢制御動作を、反対方向の押圧手段の組合せにより発生させた曲げモーメントによる関節の嵌合離脱を可能にし、また、把持引っ張り手段による骨部の除骨や、肉の分離や要切開部位の露出動作等が可能となり、作業者より労働荷重を軽減できる。
また、人手による要部切開筋入れは、宙吊り状態にあるワークに対し多方向より自由に行うことができ、また、露出した尺骨(前腕骨)と上腕骨との関節まわりの肉削ぎや、上腕骨と肩甲骨との間の関節部位の肉削ぎ、腱、筋、靭帯、膜等の切断、関節膜の切除が可能となり、爾後の除骨が容易に可能とする状態を現出できる。
上記動力補助手段と人手による要部切開と筋入れと自重による垂れ下がり等の併用により、それぞれの利点を生かした除骨と肉分離を効率的に行うことができる。
【0012】
即ち、ワークの姿勢制御動作により、宙吊り状態にあるワークの前傾ないし後倒、左右の何れかの回動等の姿勢制御、姿勢保持を可能とし、爾後の要切開部位の露出、人手による関節部位の肉削ぎや腱、筋、靭帯、膜等の切断と筋入れ及び動力補助手段による関節の嵌合離脱と除骨を可能にしている。
また、人手による筋入れと協動する骨部露出動作により、宙吊り姿勢制御の後、動力補助手段の要切開部の両側を把持引っ張り動作により、該切開部位の露出を可能とし、該露出動作と筋入れとを継続的協動により、複雑な関節部位の肉削ぎ、切断、筋入れ操作を可能にしている。
また、後記するように、除骨及び肉分離動作により、関節部位の嵌合離脱、延いては容易な除骨と肉分離を可能にしてある。
【0013】
また、請求項3記載の発明は、
前記剥ぎ取りもぎ取り動作は、人力による筋入れの介入のもとに、宙吊り動作と姿勢制御動作とに対応させる把持引っ張り手段により作動させるようにした、ことを特徴とするものである。
【0014】
上記のように、簡単な人手による筋入れで分離可能な小ブロック、例えばカタ部のウデカタよりの分離の場合等は、ウデカタを把持する宙吊り動作及び姿勢制御動作に対応させ、剥ぎ取り方向にカタ部の先端を把持する引っ張り動作の作動により、小ブロックであるカタ部は前記筋入れ部位を境にして分離できる。
また、この際不十分な筋入れ箇所に対しては、上記分離作業中に人手による筋入れの追加協業により不完全筋入れ部を補完して円滑な分離を行うことができる。
【0015】
また、請求項4記載の発明は、
前記骨部露出動作は、姿勢制御動作に骨部を対応させて、筋入れ協動の継続的介入のもとに、切り開いた両側肉部を把持露出方向に引っ張り手段を作動させるようにした、ことを特徴とするものである。
【0016】
上記のように、骨部を内蔵するワークを宙吊り状に支持し、押圧手段により姿勢制御動作をなし、ワークの背中より要露出骨部の対応位置を押圧する一方、前記骨部の左右外側肉部を把持引っ張り手段により把持させ、前面露出相当部位に人手による筋入れを協動させながら後方へ適当なテンションのもとに作動させれば、骨部を支点にして左右の肉部は自重により垂れ下り開口され、容易に骨部を露出させることができる。
【0017】
また、請求項1記載の発明は、前記露出骨部の除骨動作は、
嵌合部位の骨部間の生体組織を切断する筋入介入と、姿勢制御した被嵌合骨部に対し嵌合する骨部に曲げモーメントを作動させる押圧手段と、により惹起させる骨部の嵌合離脱動作と、
嵌合離脱をさせた骨部の把持引っ張り手段によるもぎ取り動作と、
により作動させるようにした、ことを特徴とするものである。
【0018】
上記除骨動作は、例えば上腕骨に嵌合する肩甲骨とよりなる嵌合部位において、該嵌合部位の周辺の腱、筋、靭帯、膜等は人力による筋入れ介入により生体組織の切断後になされるもので、前記上腕骨は該上腕骨に嵌合する前腕骨により把持宙吊りされているため、上腕骨の背部よりの押圧手段により姿勢制御すれば自由度は制限される。
その状態で、前記姿勢制御押圧手段に対抗して肩甲骨に曲げモーメントを作用させれば、肩甲骨と上腕骨との間の嵌合離脱を容易に惹起させることができる。
ついで、上記嵌合離脱を起こした肩甲骨は把持引っ張り手段により、容易に除骨できる。
【0019】
また、請求項2記載の発明は、前記露出骨部の除骨動作は、
宙吊り骨部に嵌合する骨部において、前記嵌合部位の生体組織を切断することなく行う該嵌合部位を含む嵌合骨部の周囲肉削ぎにより可能にした、ことを特徴とするものである。
【0020】
上記除骨動作は、例えば、尺骨により宙吊りされた前腕骨と前腕骨に嵌合する上腕骨と肉部との分離に関するもので、宙吊り状態で前記前腕骨と上腕骨の二つの骨部を分離することなく、一体としてその周囲の肉部の削ぎ落としにより、肉部と骨部との間の分離を可能としたものである。
【0021】
また、請求項5記載の発明は、
豚、羊等の食肉屠体の、複数に分割されたブロック状半截ワークの搬送処理ラインの食肉屠体の搬送除骨システムにおいて、
(1)、前処理後のワークを宙吊りして、カタ部を分離させるウデカタ分離工程と、
(2)、宙吊り状態にあるウデ部に、人手による筋入れと協動させて骨部を露出させる骨部露出工程と、
(3)、露出した上腕骨と肩甲骨との嵌合部位より、筋入れ介入のもとに行う肩甲骨裏筋入れと、肩甲骨起しと、よりなる肩甲骨除骨工程と、
(4)、露出残存した前腕骨とそれに嵌合する上腕骨において、二つの骨部の周囲肉部の削ぎ落としにより除骨をする、骨・肉分離工程と、
(5)、分離したカタ部より筋入れ肉部を分離するカタ部の除骨工程と、
より構成したことを特徴とするものである。
【0022】
上記、搬送除骨システムの構成により、流れ式豚、羊等の食肉屠体の除骨処理が効率的に可能となり、衛生的にも格段に高い処理ができるため、高品質の食肉を供給できる。また、豚、羊等の食肉屠体の解体搬送ラインに組み込み可能となる。
また、従来の人手によるワークの保持、剥ぎ取り、もぎ取り、姿勢制御等が皆無となり、作業者を従来の重労働より解放できる。
即ち、前処理工程の次のウデカタ分離工程では、宙吊り動作によりワークを宙吊り状態にし、宙吊り状態のワーク背面を押圧手段により姿勢制御固定し、把持引っ張り手段とその自重とによりカタ部を把持曲げながら剥ぎ取り、ワークをウデ部とカタ部に分離する。
ついで行われる、次工程の骨部露出工程では、露出骨部背面よりの押圧手段による姿勢制御に対抗して、筋入れ協動の継続的介入のもとに形成された切開肉部の両側を把持、引っ張り手段により切り開き骨部を露出可能にしたものである。
ついで行われる、次工程の肩甲骨除骨工程の肩甲骨裏筋入れは、肩甲骨の上腕骨との嵌合部位の腱、筋、靭帯、膜等の切断切開の介入のもとに、前記嵌合部位背面よりの姿勢制御用押圧手段に対抗方向に、作動する傾動押圧手段による曲げモーメントにより、肩甲骨の嵌合離脱を可能とし、肩甲骨起しは把持引っ張り手段により可能にしてある。
ついで行われる、次工程の骨・肉分離工程では、把持手段による宙吊り状態にある前腕骨と前腕骨に嵌合する上腕骨の骨・肉分離は、前記嵌合部位を含む前腕骨と上腕骨の周辺肉部を、宙吊り状態で切り削ぐことにより、肉の自重による垂れ下がりを利用して肉部と骨部とを分離するようにしたものである。
また、カタ部除骨工程では、筋入れ介入のもとに骨部と肉部との間の把持引っ張り手段により可能にしたものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例の形態を、図示例と共に説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、形状、その相対的位置等は特に特定的な記載がないかぎりは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。以下図面に基づいて本発明につき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態である豚枝肉の肩部の前処理後の半截ブロックの搬送除骨システムを示すブロック図である。
【0024】
図1のブロック図に見るように、
本搬送除骨システムは、前処理工程21の下流に設けられた、ウデカタ分離工程22と、骨部露出工程23と、肩甲骨除骨工程24と、骨・肉分離工程25と、カタ部除骨工程26とより構成してある。以下図面を参照して各工程につき説明する。
前処理工程21は、図2に示すようにワークを調理台上に半截ブロック30の半截面を上側にして載置し、半截面より露出骨部周囲と宙吊り用骨部の露出のための筋入れ(1)〜(6)までを行う、即ち、
1)筋入れ(1)を行い、手根骨(ウデの先側)を手前に向け、肋関節付近より前腕骨上面に肉が残らぬように左側を切り開く。
2)筋入れ(2)を行い、尺骨(前碗骨)右側を肋関節付近より手根骨側に切り開く。
3)筋入れ(3)を行い、左手ですね肉を持ち上げ、肘頭をえぐり出す。
4)筋入れ(4)を行い、頚椎、胸椎内側及び頚肋上面を出す(頚椎、胸椎に沿って刃を入れ骨部に沿って肉をめくり上げながら削ぎ起こす)。
5)筋入れ(5)を行い、第1頚椎から第7頚椎脇と、肋骨1本毎に筋入れをし、先端を刳り出す。
6)筋入れ(6)を行い、頚椎棘、胸椎棘の下面(裏面)に肉を残さぬように筋入れをする。
【0025】
前処理工程21の終わったワーク30は搬送除骨システムに移行され、その最初の工程であるウデカタ部分離工程22は、爾後の除骨処理を宙吊り状態で行うべくワーク30をステーション1で宙吊りし、分離可能のカタ部を分離剥ぎ取る工程である。
図3に示すように、
1、宙吊り工程22aで、
1)前処理工程21で露出させた手根骨部33aに、宙吊り手段を形成する。クランプKaで把持して、ワーク30をクランプして宙吊りの状態にする。
2、カタ部分離工程22bで、
姿勢制御と把持引っ張り手段と筋入れで行うようにしたもので、
1)姿勢制御動作を形成するテーブルBaを押圧手段によりPa方向に移行させ、ワーク30の背面を押圧して姿勢制御安定させる。
2)把持引っ張り手段を形成するクランプKbにより、カタ部30bの先端のカタバラをクランプして、斜め下方のTa方向に引っ張り外力を作用させる。
3)同時に筋入れを協動させる。
即ち、筋入れ(7)を協動させ、ワーク30をウデ部30aとカタ部30bとに分離してカタ部30bを切り離す。
【0026】
次の骨部露出工程23では、ワーク(ウデ部30a)をステーション2に移行させ、該ステーション2で、ウデ部30aに内蔵する、前記前碗骨に連接する上腕骨及び肩甲骨を外側より肉部を切り開くことにより露出する工程で、姿勢制御下に大型の把持引っ張り手段と筋入れ協動とにより形成される骨部露出を行うようにしてある。
即ち、図4(A)に示すように、
1)ワークであるウデ部30aをクランプKaで把持宙吊りした状態でステーション2に移行させる、
2)ついで、大型の把持引っ張り手段のクランプKcでウデ部30aの露出骨部前面相当部位の両側肉部の両側を挟むように開口した状態で前進させ、両側の肉部を把持する、
3)図4(B)に示すように、ウデ部30aの背後よりテーブルBaをPa方向に押圧手段により押圧姿勢制御をする。
4)クランプKcで切り開き部位の両側肉部をクランプさせた状態で適当なテンションTb(3Kgf)が掛かるように予め設定した設定圧力のもとにウデ部30aの背後方向へ後退させ、主に上腕骨32と肩甲骨31両側の肉部をその自重の助けを借りながら後方へ開き勝手に引っ張る。
5)同時に筋入れを協動させる。
即ち、筋入れ(8)を協動させ、肘頭から上腕骨32の左側を骨に沿って切り開き、上腕骨32と肩甲骨31のつなぎ目を切断し、肩甲骨の右側へ渡って、骨に沿って肩甲骨31の右側を切り開く。
さらに、筋入れ(9)を協動させ、上腕骨32の上面に肉が残らぬように上腕骨の右側を切り開き且つ筋入れ(8)と合流させ関節筋の継目を切断する。
さらに、筋入れ(10)を協動させ、肩甲骨31の右側の切開部より肩甲骨上面に着いている肉を肉の自重による垂れ下がりを利用しながら肩甲骨左側面まで削ぎ起こす。
さらに、筋入れ(11)を協動させ、前記筋入れ(10)で肩甲骨31の左側面まで削ぎ起こし、ついでその骨に沿って筋入れをし、肩甲骨を剥出しにする。
【0027】
次の肩甲骨除骨工程24では、前記露出骨部は、前腕骨33と、前腕骨に嵌合する上腕骨32と、該上腕骨に嵌合する肩甲骨31とより形成されているが、該肩甲骨31を上腕骨32との嵌合部位より嵌合離脱を行わせた後、除骨させるようにしたものである。
上記肩甲骨31と上腕骨32との嵌合部位を形成する関節回りの生体結合を筋入れ(12)により切開した後嵌合離脱を惹起させる肩甲骨裏筋入れ24aと、嵌合離脱させた肩甲骨31の除骨をする肩甲骨起し24bと、より構成してある。
肩甲骨裏筋入れ24aは図5(A)に示すように、
1)前記クランプkcの嘴を左右に回動させ解放する。
2)傾動押圧用バーBbで図5(B)に示すように肩甲骨31の下端を押圧し、先の骨部露出工程23でウデ部30aの背後に前進して、押圧位置にあるテーブルBaとの間に隙間を形成し、
3)筋入れ(12)を行い、上腕骨32と肩甲骨31との境目を切断し、肩甲骨裏側に筋入れをするとともに、曲げモーメントにより嵌合離脱を惹起させる。
4)傾動押圧用のバーBbを後退させる。
5)テーブルBaを後退させ肩甲骨31の肩甲骨裏筋入れ24aは終了する構成にしてある。
【0028】
次に肩甲骨起し24bでは、ステーション3にワークを移行させ、該ステーション3で、図6(A)(B)に示すように、嵌合離脱した肩甲骨を肉部より剥ぎ起す工程で、
1)ワークであるウデ部30aを反転させる。
2)クランプKdを持つ肩甲骨起し装置(公知)をPc方向へ前進させ、且つ、クランプの高さを把持しようとする肩甲骨31のくびれ部位に位置合せをする。
3)上記肩甲骨のくびれ部位をクランプKdでクランプする。
4)クランプKdをTc方向へ後退させて肩甲骨を剥ぎ起す。(20Kgf以上のテンションを掛ける)
【0029】
次に骨・肉分離工程25では、ステーション4にワークを移行させ、該ステーション4で、図7に示すように筋入れ介入のもとに上腕骨、前碗骨より肉部を分離させるようにしたもので、
1)ワークをステーション4へ移行させる。
2)図7(A)、(B)に示すように、クランプKeを前進させ上腕骨の略中央をクランプして、上腕骨の振れを防止固定する、
ついで、図7(B)、(C)に示すように筋入れ(13)〜(15)を行う。
3)筋入れ(13)を行う、前腕骨の上面(正面)の肉を削ぐように関節下までめくる。
前腕骨の反対側は関節部の腱を切断させぬように関節部の下、上腕骨の骨頭部分の骨回りを一周させるように刃を入れ、膜を切る。
4)筋入れ(14)を行う、上腕骨頭は丸骨部の膜を下の関節部まで切除する。
5)筋入れ(15)を行う、関節回りの腱、膜を切断し、肉をつかみながら肉の自重による垂れ下がりを利用しながら筋入れの継続介入をなし、上腕骨、前腕骨より肉を剥がす。
【0030】
次にカタ部除骨工程26では、先のウデカタ分離工程22で分離したカタ部30bの骨、肉の分離をさせるようにしたもので、
1)予め剥出して置いた肋骨の先端を、クランプKgでクランプさせる。
2)カタ部30bの先端肉部のカタバラ部をクランプKfでクランプする。
3)略2Kgf程度のテンションをTd方向へ掛け、クランプ中のクランプKfを介して掛けゆっくり引っ張る。
4)上記引っ張り過程に筋入れ(16)を継続介入させる、即ち、骨にこするように刃を入れ、カタ部からロースにかけて、肋骨、胸椎、頚椎、棘突起から分離させる。
【0031】
なお、本システムに於いては、図示してない適当な搬送機構を設け、ワークの宙吊り工程より最終工程まで例えばこの場合はステーション1よりステーション4までシーケンス制御のもとに運転されるようにしてある。
【0032】
【発明の効果】
上記構成により、
調理台上の処理を最少限に押さえ、宙吊り姿勢での除骨作業を導入するとともに、アクチュェータ等による動力補助手段により、ワークの姿勢制御、姿勢保持、要切開箇所の露出、及び露出した関節部の嵌合離脱を可能とする一連の動力補助動作と人手による要部切開筋入れ動作と肉部の自重による分離とを有機的に併用する除骨及び肉分離方式を可能にしたため、
軽労働で衛生的にも保障された高品質の除骨と肉分離を可能とした。
また、上記豚、羊等の食肉屠体の除骨方法を使用した食肉屠体の搬送除骨システムにより豚、羊等の食肉屠体の解体用搬送処理ラインに組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態である前処理後の豚枝肉の肩部の半截ブロックの搬送除骨システムを示すブロック図である。
【図2】 図1の前処理工程の状況を示す模式図である。
【図3】 図1のウデカタ部よりカタ部の分離工程の作動状況を示す模式図である。
【図4】 図1の骨部露出工程の作動状況を示す模式図で、(A)は正面図で、(B)は側面図である。
【図5】 図1の肩甲骨除骨工程の肩甲骨裏筋入れ工程の作動状況を示す模式図で、(A)は正面図で、(B)は側面図である。
【図6】 図1の肩甲骨起し工程の作動状況を示す模式図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図7】 図1の骨・肉分離工程の作動状況を示す模式図で、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は背面図である。
【図8】 図1のカタ部除骨工程の作動状況を示す模式図である。
【図9】 豚枝肉の分割状況を示す断面模式図である。
【符号の説明】
21 前処理工程
22 ウデカタ分離工程
23 骨部露出工程
24 肩甲骨除骨工程
25 骨・肉分離工程
26 カタ部除骨工程
30 ワーク
31 肩甲骨
32 上腕骨
33 前碗骨
Claims (5)
- 食肉屠体の、複数に分割されブロック状ワークの除骨において、
筋入れ、切り開き、削ぎ落とし等の人力による手段と、把持、押圧、引っ張り等による動力補助手段と、を適宜組合せて、ワークの宙吊り動作、宙吊りワークの姿勢制御動作、姿勢制御ワークの剥ぎ取りもぎ取り動作、骨部露出動作、露出骨部の除骨動作及び骨部よりの肉部分離動作とを可能とし、
前記露出骨部の除骨動作は、嵌合部位の骨部間の生体組織を切断する筋入介入と、姿勢制御した被嵌合骨部に対し嵌合する骨部に曲げモーメントを作動させる押圧手段と、により惹起させる骨部の嵌合離脱動作と、
嵌合離脱をさせた骨部の把持引っ張り手段によるもぎ取り動作と、
により作動させるようにしたことを特徴とする豚、羊等の食肉屠体の除骨方法。 - 食肉屠体の、複数に分割されブロック状ワークの除骨において、
筋入れ、切り開き、削ぎ落とし等の人力による手段と、把持、押圧、引っ張り等による動力補助手段と、を適宜組合せて、ワークの宙吊り動作、宙吊りワークの姿勢制御動作、姿勢制御ワークの剥ぎ取りもぎ取り動作、骨部露出動作、露出骨部の除骨動作及び骨部よりの肉部分離動作とを可能とし、
前記露出骨部の除骨動作は、
宙吊り骨部に嵌合する骨部において、前記嵌合部位の生体組織を切断することなく行う該嵌合部位を含む嵌合骨部の周囲肉削ぎにより可能にしたことを特徴とする豚、羊等の食肉屠体の除骨方法。 - 前記剥ぎ取りもぎ取り動作は、人力による筋入れの介入のもとに、宙吊りと姿勢制御動作とに対応させる把持引っ張り手段により作動させるようにした請求項1又は2記載の豚、羊等の食肉屠体の除骨方法。
- 前記骨部露出動作は、姿勢制御手段に骨部を対応させて、筋入れ協動の継続的介入のもとに、切り開いた両側肉部を把持露出方向に引っ張り手段を作動させるようにした請求項1又は2記載の豚、羊等の食肉屠体の除骨方法。
- 食肉屠体の、複数に分割されたブロック状半截ワークの搬送処理ラインにおいて、
(1)、前処理後のワークを宙吊りして、カタ部を分離させるウデカタ分離工程と、
(2)、宙吊り状態にあるウデ部に、人手による筋入れと協動させて骨部を露出させる骨部露出工程と、
(3)、露出した上腕骨と肩甲骨との嵌合部位より、筋入れ介入のもとに行う肩甲骨裏筋入れと、肩甲骨起しと、よりなる肩甲骨除骨工程と、
(4)、露出残存した前腕骨とそれに嵌合する上腕骨において、二つの骨部の周囲肉部の削ぎ落としにより肉部を分離する、骨・肉分離工程と、
(5)、分離したカタ部より筋入れ肉部を分離するカタ部の除骨工程と、
より構成したことを特徴とする、豚、羊等の食肉屠体の搬送除骨システム。
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