JP3728413B2 - 医療用ポリプロピレン系不織布 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療用ポリプロピレン系不織布に関し、詳しくは、放射線照射によっても機械物性の低下が少なく、べたつき、変色、臭いの少ない医療用ポリプロピレン系不織布に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレン等のプロピレン系樹脂は成形性、剛性に優れ、またリサイクル性や耐熱性にも優れていることから、各種成形加工され、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の他の樹脂と同様に食品容器、医療用器具、医療用容器、包装フィルム等、各種用途に広く使用されている。
【0003】
医療用器具としての不織布用途は、手術用着衣、ドレープ、人工透析や血液の濾過フィルター、注射器や薬剤の包装など多岐にわたっている。これら用途においては、滅菌の必要性があるものがほとんどである。医療用器具及び医療用容器の滅菌においては、放射線滅菌が古くから行われており、Co60によるγ線滅菌が一般的であるが、大規模設備を要するため、昨今では電子線滅菌も普及しはじめている。
【0004】
ところで、γ線滅菌は、エネルギーの強い電磁波であるため、プロピレン系樹脂を用いた容器に適用するとプロピレン系樹脂の劣化が促進される。これを抑制するため、高分子量のヒンダードアミンやヒンダードフェノール化合物を用いる添加剤処方を採用したり、ポリプロピレン樹脂自身の分子量分布を狭くする、あるいはプロピレンとエチレンとの共重合による低結晶性のポリマー設計をはかる等の方法で対処されてきた。
【0005】
しかしながら、従来のチーグラー触媒系のプロピレン重合体を用いて、このようなポリマーを設計しようとした場合、機械的物性が低下したり、製品の変色、臭いを引き起こしたりする。また、プロピレンとエチレンとの共重合を行う低結晶化の場合でも、共重合性が十分でないため、かなりの量のエチレンを導入しないと結晶性が低下せず、しかも結晶性に分布があるため、結晶性の低すぎる成分や高すぎる成分が共存し、前者はべたつきや変色、臭いの原因となり、また後者は耐放射線特性の妨げとなり、十分な性能を有するポリプロピレン系樹脂が得られないという問題を有していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記欠点を解消し、放射線照射によっても機械物性の低下が少なく、べたつき、変色、臭いの少なく、医療用不織布用原料として用いることのできるポリプロピレン系樹脂の耐放射線性不織布を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の性状を有するプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を少なくとも構成繊維の1成分とした不織布は、放射線照射によっても機械物性の低下が抑制され、べたつき、変色、臭い等が少ない耐放射線特性を有し、医療用不織布用原料として好適であることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、メタロセン触媒によって重合され、下記特性(1)〜(6)を有するプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を少なくとも1成分とする繊維からなり、スパンボンド法、メルトブロー法のいずれかの方法により製造されたシート状不織布からなることを特徴とする医療用プロピレン系不織布が提供される。
特性(1):MFRが10〜2000g/10分
特性(2):Q値が1.5〜4.0
特性(3):Tmが110〜140℃
特性(4):T80−T20が2〜8℃
特性(5):TREF測定時の0℃可溶分量が0.3重量%以下
特性(6):α−オレフィン含有量が1〜18モル%
(但し、MFRはJIS−K6921による230℃、21.18Nでのメルトフローレート、Q値はGPCにより測定した重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)、T80は温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる積分溶出曲線において80重量%が溶出する温度、T20は20重量%が溶出する温度、Tmは示差走査熱量計(DSC)によって得られる融解曲線のピーク温度をそれぞれ示す。)
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明に記載のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のα−オレフィンがエチレンであり、その含有量が1〜12モル%であることを特徴とする医療用ポリプロピレン系不織布が提供される。
【0011】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明に記載のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を少なくとも1成分とする繊維が単一繊維、芯鞘型複合繊維、あるいはサイドバイサイド型複合繊維であることを特徴とする医療用ポリプロピレン系不織布が提供される。
【0013】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明に記載の医療用ポリプロピレン系不織布に放射線処理を施した医療用不織布が提供される。
【0014】
また、本発明の第5の発明によれば、電子線の照射条件が電圧4.8MeV、電流20mA、線量40KGyの電子線照射を受けた不織布の電子線照射前後での強度保持率が70%以上であることを特徴とする第4の発明に記載の医療用不織布が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の耐放射線性プロピレン系不織布で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、メタロセン触媒を使用して重合した共重合体である。メタロセン触媒は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の周期律表第4〜6族遷移金属と、シクロペンタジエニル基あるいはシクロペンタジエニル誘導体基との錯体を使用した触媒である。
【0016】
メタロセン触媒において、シクロペンタジエニル誘導体基としては、ペンタメチルシクロペンタジエニル等のアルキル置換体基、あるいは2以上の置換基が結合して飽和もしくは不飽和の環状置換基を構成した基を使用することができ、代表的にはインデニル基、フルオレニル基、アズレニル基、あるいはこれらの部分水素添加物を挙げることができる。また、複数のシクロペンタジエニル基がアルキレン基、シリレン基、ゲルミレン基等で結合したものも好ましく用いられる。
【0017】
メタロセン錯体として、具体的には、次の化合物を好ましく挙げることができる。
(1)メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(2)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(3)イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(4)エチレン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジメチルペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(5)メチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
(6)エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
(7)エチレン1,2−ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
(8)エチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
(9)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(10)ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
(11)ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
(12)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
(13)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
(14)メチルフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾ(インデニル)]ジルコニウムジクロリド、
(15)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
(16)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
(17)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
(18)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
(19)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
(20)ジフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
(21)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド、
(22)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド、
(23)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
(24)ジメチルゲルミレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
(25)ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド。
【0018】
また、チタニウム化合物、ハフニウム化合物などの他の第4、5、6族遷移金属化合物についても上記と同様の化合物が挙げられる。本発明の触媒成分および触媒については、これらの化合物を併用してもよい。
【0019】
また、これらの化合物のクロリドの一方あるいは両方が臭素、ヨウ素、水素、メチルフェニル、ベンジル、アルコキシ、ジメチルアミド、ジエチルアミド等に代わった化合物も例示することができる。さらに、上記のジルコニウムの代わりに、チタン、ハフニウム等に代わった化合物も例示することができる。
【0020】
助触媒としては、アルミニウムオキシ化合物、メタロセン化合物と反応してメタロセン化合物成分をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物もしくはルイス酸、固体酸、あるいは、イオン交換性層状珪酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物が用いられる。また、必要に応じてこれら化合物と共に有機アルミニウム化合物を添加することができる。
【0021】
アルミニウムオキシ化合物としては、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、プロピルアルモキサン、ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルエチルアルモキサン、メチルブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン等が例示される。また、トリアルキルアルミニウムとアルキルボロン酸との反応物を使用することもできる。例えば、トリメチルアルミニウムとメチルボロン酸の2:1の反応物、トリイソブチルアルミニウムとメチルボロン酸の2:1反応物、トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムとメチルボロン酸の1:1:1反応物、トリエチルアルミニウムとブチルボロン酸の2:1反応物などである。
【0022】
イオン交換性層状珪酸塩としては、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライト等のスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族などの珪酸酸塩が用いられる。これらのケイ酸塩は化学処理を施したものであることが好ましい。ここで化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と層状ケイ酸塩の結晶構造、化学組成に影響を与える処理のいずれをも用いることができる。具体的には、(イ)酸処理、(ロ)アルカリ処理、(ハ)塩類処理、(ニ)有機物処理等が挙げられる。これらの処理は、表面の不純物を取り除く、層間の陽イオンを交換する、結晶構造中のAl、Fe、Mg等の陽イオンを溶出させ、その結果、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体等を形成し、表面積や層間距離、固体酸性度等を変えることができる。これらの処理は単独で行ってもよいし、2つ以上の処理を組み合わせてもよい。
【0023】
また、必要に応じてこれら化合物と共にトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド等の有機アルミニウム化合物を使用してもよい。
【0024】
本発明においては、上記メタロセン触媒を使用してプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を得る。α−オレフィンとしては、プロピレンを除く炭素数2〜20のα−オレフィンがあげられ、例えばエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、3−メチル−1−ブテン、ヘキセン−1、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ドデセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、オクタデセン−1、エイコセン−1等を例示できる。プロピレンと共重合されるα−オレフィンは、一種類でも二種類以上併用してもよい。このうちエチレン、ブテン−1が好適であり、特にはエチレンが好ましい。
【0025】
重合法としては、これらの触媒の存在下、不活性溶媒を用いたスラリー法、実質的に溶媒を用いない気相法や溶液法、あるいは重合モノマーを溶媒とするバルク重合法等が挙げられる。
【0026】
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、前述のメタロセン触媒で重合された共重合体であって、次の特性(1)〜(6)を有している必要がある。以下、各特性について説明する。
【0027】
特性(1):MFR
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のJIS−K6921による230℃、21.18Nでのメルトフローレート(MFR)は、10〜2000g/10分であり、好ましくは15〜1500g/10分であり、より好ましくは20〜1000g/10分である。MFRが10g/10分未満であると紡糸圧力が高くなりすぎ、高倍率で延伸が困難となり、繊維径の不均一などの弊害が生じる。一方、2000g/10分を超えると、分子鎖が短いことから、不織布化したときの強度が低くなるといった弊害が生じる。ポリマーのMFRを調節するには、例えば、重合温度、触媒量、分子量調節剤としての水素の供給量などを適宜調整する方法、あるいは重合終了後に過酸化物の添加により調整する方法がある。
【0028】
特性(2):Q値
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表されるQ値は、1.5〜4.0であり、好ましくは1.8〜3.7であり、より好ましくは2.0〜3.5である。Q値が4.0を超えると、高分子量の存在により紡糸延伸性が損なわれるといった弊害が生じる。逆に、1.5未満であると、現状メタロセン触媒系でも製造が困難なものである。
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のQ値を調整する方法は、2種以上のメタロセン触媒成分の併用した触媒系や2種以上のメタロセン錯体を併用した触媒系を用いて重合する、または重合時に2段以上の多段重合を行うことによりQ値を広く制御することができる。逆にQ値を狭く調整するためには、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を重合後、有機過酸化物を使用し溶融混練することにより調整することができる。
【0029】
なお、Q値の測定は、次の条件でおこなう。
装置 :Waters社製HLC/GPC 150C
カラム温度:135℃
溶媒 :o−ジクロロベンゼン
流量 :1.0ml/min
カラム :東ソー株式会社製 GMHHR−H(S)HT 60cm×1
注入量 :0.15ml(濾過処理無し)
溶液濃度 :5mg/3.4ml
試料調整 :o−ジクロロベンゼンを用い、5mg/3.4mlの溶液に調整し140℃で1〜3時間溶解させる。
検量線 :ポリスチレン標準サンプルを使用する。
検量線次数:1次
PP分子量:PS×0.639
【0030】
特性(3):T80−T20(TREFによる溶出量差温度)
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、温度上昇溶離分別(TREF:Temperature Rising ElutionFraction)によって得られる積分溶出曲線において、80重量%が溶出する温度(T80)と20重量%が溶出する温度(T20)の差、T80−T20が、2〜8℃である。T80−T20が8℃を超えると、低温溶出成分が増加するため、構成繊維のべたつき、不織布とした時の表面すべり特性の悪化、紡糸性能の低下等の弊害が生じる。また、低温溶出成分に共重合体とすべく導入しているエチレンを多く取られてしまうため、このような成分は放射線照射後に変色や臭いの原因となってしまう。ポリマーのT80−T20が上記のように特定の狭い範囲にあることは、ポリマーの分子量分布がより均一であることを意味している。
【0031】
ここで、上記温度上昇溶離分別(TREF)とは、不活性担体の存在下に一定高温下でポリマーを完全に溶解させた後に冷却し、該不活性担体表面に薄いポリマー層を生成させ、次に、温度を連続又は段階的に昇温して、溶出した成分を回収し、その濃度を連続的に検出して、その溶出量と溶出温度によって描かれるグラフ(積分溶出曲線)により、ポリマーの組成分布を測定する方法である。温度上昇溶離分別(TREF)の測定の詳細については、Journal of Applied Polymer Science第26巻 第4217〜4231頁(1981年)に記載されており本発明においてもこれに従って行う。
【0032】
なお、具体的には、次の条件で測定する。測定装置はダイヤインスツルメンツ製CFC T−102Lを使用し、まず、測定すべきサンプルを溶媒(o−ジクロロベンゼン)を用い、3mg/mlとなるように、140℃で溶解し、これを測定装置内のサンプルループ内に注入する。以下の測定は設定条件にしたがって自動的に行われる。サンプルループ内に保持された試料溶液は、溶解温度の差を利用して分別するTREFカラム(不活性担体であるガラスビーズが充填された内径4mm、長さ150mmの装置付属のステンレス製カラム)に0.4ml注入される。次に該サンプルを1℃/分の速度で140℃から0℃の温度まで冷却させる。TREFカラムが0℃で更に30分間保持された後、0℃の温度で溶解している成分2mlが1ml/分の流速でTREFカラムからSECカラム(昭和電工製AD806MS 3本)へ注入される。SECで分子サイズの分別が行われている間に、TREFカラムでは次の溶出温度(10℃)に昇温され、その温度に約30分保持される。SECでの各溶出区分の測定は39分間隔で行われる。溶出温度は0℃から40℃まで10℃毎に、40℃から90℃まで5℃毎に、90℃から140℃までは4℃毎に階段的に昇温される。該SECカラムで分子サイズによって分別された溶液は装置付属の赤外線分光光度計で検出され、各溶出温度区分におけるクロマトグラフが得られる。なお、赤外線分光光度計での検出は検出波数3.42μmにおける吸光度を使用して行われ、溶液中のポリマー成分量と吸光度とが比例するものとして以下のデータ処理が行われる。各溶出温度区分におけるクロマトグラムは内蔵のデータ処理ソフトにより処理され、各クロマトグラムの面積を基に、積算が100%となるように規格化された各溶出温度区分の溶出量が計算される。更に、得られた各溶出温度区分の溶出量から、積分溶出曲線が作成される。0℃可溶分量とは0℃で溶出したポリマー成分の量(%)を示すものであり、T20とは積算溶出量が20%となる温度を、T80とは積算溶出量が80%となる温度を示すものである。
【0033】
特性(4):TREF測定における0℃可溶分量;
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のTREF測定時の0℃可溶分量は、0.3重量%以下である。TREF測定時の0℃可溶分量が0.3重量%を超えると、放射線照射後の変色や臭いの原因となるため好ましくない。プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のTREF0℃可溶分の量は、担体にメタロセン触媒成分を担持する際、担持が不均一である触媒を使用して重合した場合、低分子量が増え、これに伴いTREF0℃可溶分の量が増加してしまう。したがってメタロセン触媒成分を担体に均一に担持する触媒を使用して重合することによりTREF0℃可溶分の量を0.3重量%以下に調整することができる。
【0034】
特性(5):α−オレフィン含有量
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体中のα−オレフィン(コモノマー)含有量は、1〜18モル%であり、好ましくは2.5〜10モル%であり、より好ましくは3〜8モル%である。特にコモノマーがエチレンの場合は、1〜12モル%が好ましい。コモノマー含有量が1モル%未満であると放射線照射後の機械特性の低下(不織布強度の低下)が著しい。一方、18モル%を超えると紡糸時の固化が遅く、生産性が損なわれる、また不織布強度や剛性が大きく低下してしまうといった弊害が生じる。ポリマー中のα−オレフィン含有量は、重合反応系へ供給するα−オレフィンの量を制御することにより容易に調節することができる。なお、本発明において、α−オレフィン含有量は、フーリエ変換赤外分光光度計により定量されるものである。
【0035】
特性(6):融解ピーク温度(Tm)
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のTmは、示差走査熱量計(DSC)によって得られる融解曲線のピーク温度を表し、110〜140℃である。Tmが140℃を超えると、放射線照射後の機会特性の低下(不織布強度の低下)が著しい。一方、110℃未満であると、紡糸時の固化が遅く、生産性が損なわれる、また不織布強度や剛性が大きく低下してしまうといった弊害が生じる。
融解ピーク温度(Tm)の測定は、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計(DSC)を用い、サンプル量10mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、更に10℃/分の昇温速度で融解させたときに描かれる曲線のピーク位置を、融解ピーク温度Tm(℃)とする。
【0036】
さらに、本発明のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体には、本発明の目的が損なわれない範囲で、各種添加剤、例えば、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、結晶造核剤、銅害防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、抗ブロッキング剤、防曇剤、着色剤、充填剤、エラストマー、石油樹脂などを配合することができる。
【0037】
本発明における繊維不織布成形材料は、上記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体と、必要に応じて、上記の各種添加剤、さらに他の樹脂成分等をドライブレンドの状態あるいは溶融混練機を用いて、好ましくは180〜300℃で加熱溶融混練し、粒状に裁断されたペレットの状態で提供される。
【0038】
本発明のポリプロピレン系不織布は、上述の繊維不織布成形材料をスパンボンド法、メルトブローン法等で直接製造するか、一旦繊維化して、水流交絡法、カード法などの成形法により製造される。該不織布の目付量は、5〜200g/m2であるのが好ましい。また、不織布は単層での使用だけでなく、例えば、スパンボンド法で得られた不織布とメルトブローン法で得られた不織布の積層体、あるいは不織布とフィルムとの積層体としても好適に使用できる。
【0039】
不織布を成形する際、構成繊維は、単一繊維、芯鞘型複合繊維、あるいはサイドバイサイド型複合繊維であっても良く、複合繊維の場合は、上記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が複合繊維の1成分として含まれていれば良い。
【0040】
本発明の医療用ポリプロピレン系不織布は、電子線の照射条件が電圧4.8MeV、電流20mA、線量40KGyの電子線照射を受けた不織布の電子線照射前後での強度保持率が70%以上であることが好ましい。電子線照射後の不織布強度保持率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である。強度保持率が70%未満では、医療用不織布として強度不足等により使用に問題が生じる。
放射線の照射は、放線線として電子線を使用し、200mm×300mmの大きさの不織布の片面に、電子照射装置「ダイナミトロン 5MeV電子加速器」(RDI社製)を用いて、出力5.0Mev 200kW、線量が40KGyとなる照射条件により定義される。なお、線量測定装置は、日立製作所製U−2000分光光度計を用いる。
放射線を照射した不織布の強度は、放射線量が高いほど低くなり、電子線照射よりもγ線照射の方が低くなるものであるが、本発明においては、前記の放射線照射条件に基づくものとする。
なお、不織布の強度は、JIS L1096に従って測定する。すなわち50mm×300mmの不織布をチャック間距離が200mm、引張速度が200mm/分の条件で測定し、その変位−強度曲線における最大強度を不織布の引長強度とする。
電子線照射後の不織布の強度保持率は、放射線照射前後で引張強度がどれだけ保持されているかを次式で算出する。
(電子線照射前後の強度保持率)=(電子線照射後の引張強度)/(電子線照射前の引張強度)×100(%)
【0041】
ここで、放射線照射処理は、滅菌処理として用いられる処理であって、電子線又はγ線の高エネルギー電離線を照射し、その照射線量は、通常の工業的な標準である20〜50KGyの範囲である。放射線照射処理により、成形品及びその中に含まれる物質を効果的に滅菌することができ、じゃがいもの発芽防止、注射筒や点滴器具などの医療用器具の殺菌として広く用いられている。
【0042】
上記の方法で製造される本発明のポリプロピレン系不織布は、放射線照射後の強度保持率が高く、放射線滅菌して用いる医療用不織布材料、例えば、医療用器具、手術用着衣、ドレープ、手術用シーツ、人口透析や血液の濾過フィルター、注射器や薬剤の包装材料として用いることができる。
【0043】
本発明のポリプロピレン系不織布は、上述の繊維不織布成形材料をスパンボンド法、メルトブローン法で直接製造される。該不織布の目付量は、5〜200g/m2であるのが好ましい。また、不織布は単層での使用だけでなく、例えば、スパンボンド法で得られた不織布とメルトブローン法で得られた不織布の積層体、あるいは不織布とフィルムや吸水紙との積層体としても好適に使用できる。
【0044】
(1)MFR:JIS−K6921−2附属書に準拠し測定した。(条件:温度/230℃、荷重21.18N)
【0045】
(2)融解ピーク温度(Tm):前述した方法により測定した。
【0046】
(3)Q値:測定は、Waters社製HLC/GPC 150Cを用い、発明の実施の形態において記載した方法に従っておこない、検量線として以下のポリスチレン標準サンプルを使用した。
【0047】
【表1】
検量線次数:1次
PP分子量:PS×0.639
【0048】
(4)温度上昇溶離分別(TREF)による、T80−T20、0℃可溶分量:温度上昇溶離分別(TREF)は次の条件で測定した。測定装置はダイヤインスツルメンツ製CFC T−102Lを使用し測定条件は発明の実施の形態において記載した方法に従っておこなった。
【0049】
(5)不織布の引張強度:JIS L1096に従って、50mm×300mmの不織布をチャック間距離が200mm、引張速度が200mm/分の条件で測定し、その変位−強度曲線における最大強度を不織布の引張強度とした。
【0050】
(6)放射線照射後の強度保持率:放射線照射前後での不織布の引張強度保持率は、放射線照射前後で引張強度がどれだけ保持されているかを次式で算出した。
(放射線照射前後の強度保持率)=(放射線照射後の引張強度)/(放射線照射前の引張強度)×100(%)
なお、放射線照射は、電子線照射とγ線照射を行い、その照射条件を次に示す。
(i)電子線照射
照射不織布片:200mm×300mm
電子加速器:ダイナミトロン
出力:電圧4.8MeV 電流20mA
サンプル搬送:カートコンベア速度13.5m/分
線量:20KGy、40KGyの2水準
照射方向:片面
(ii)γ線照射
照射不織布片:200mm×300mm
線源:Co60線源、45万Ci
照射台:コンベア式自動照射台
線量:40KGy
【0051】
(7)色相の判定:10人のパネラーに、放射線照射前後での不織布変色度を判定してもらい、次の判定基準で判断した。
○:8人以上が変色していないと判断
△:4〜7人が変色していないと判断
×:3人以下が変色していないと判断
【0052】
(8)臭いの判定:10人のパネラーに放射線照射前後での不織布臭いを判定してもらい、次の判定基準で判断した。
○:8人以上が臭いに問題無いと判断
△:4〜7人が臭いに問題無いと判断
×:3人以下が臭いに問題無いと判断
【0053】
重合例1
(1)触媒の調整
3つ口フラスコ(容積1L)中に硫酸で逐次的に処理されたスメクタイト族ケイ酸塩(水沢化学社製ベンクレイSL)20g、ヘプタン200mLを仕込み、トリノルマルオクチルアルミニウム50mmolで処理後ヘプタンで洗浄し、スラリー1とした。また別のフラスコ(容積200mL)中に、ヘプタン90mL、〔(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム〕0.3mmol、トリイソブチルアルミニウム1.5mmolを仕込みスラリー2とした。スラリー2を、上記スラリー1に加えて、室温で60分攪拌した。その後ヘプタンを210mL追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。オートクレーブの内部温度を40℃にしたのちプロピレンを10g/時の速度でフィードし4時間40℃を保ちつつ予備重合、1時間残重合を、行い予備重合触媒83gを得た。
【0054】
(2)プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体の製造
内容積270Lの反応器に液状プロピレン、エチレン、水素、およびトリイソブチルアルミニウム(TIBA)のヘキサン希釈溶液を連続的に供給し、内温を62℃に保持した。プロピレンの供給量は、38kg/hrであり、エチレンの供給量は1.1kg/hrであり、水素の供給量は0.25g/hrであり、TIBAの供給量は18g/hrであった。前記予備重合触媒を流動パラフィンによりスラリー状とし、1.1g/hrでフィードした。その結果、11.2kg/hrのプロピレン・エチレンランダム共重合体Iを得た。得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体Iは、MFR=24.0g/10分、エチレン含量=5.0mol%、Tm=125.9℃、Q値=2.7であった。
【0055】
重合例2
重合例1で調整した固体触媒を用い、水素の供給量を0.36g/hr、予備重合触媒を流動パラフィンによりスラリー状としたフィード量を0.87g/hrに変更した以外は、重合例1と同様にして重合を行った。その結果、12.1kg/hrのプロピレン・エチレンランダム共重合IIを得た。得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体IIは、MFR=44.0g/10分、エチレン含量=5.0mol%、Tm=125.2℃、Q値=2.8であった。
【0056】
このプロピレン・エチレンランダム共重合体IIのパウダー100重量部に対して、結晶造核剤として3−メチルブテン重合体のマスターバッチを0.10重量部、酸化防止剤として1、3、5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2、6−キシリル)メチル]−1、3、5−トリアジン−2、4、6(1H、3H、5H)−トリオン(サイテック製、商品名サイアノックス1790)を0.04重量部、トリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、商品名イルガホス168)を0.05重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム(日東化成工業製、商品名Ca−St)を0.05重量部、及び過酸化物(パーヘキサ25B:日本油脂社製)を4000ppm配合し、ヘンシェルミキサーで500rpm、3分間高速混合した後、φ50mm単軸押出機(ユニオンプラスチック社製)を使用し、押出温度230℃の条件で溶融、混練、冷却、カットしてペレット状のプロピレン共重合体組成物II*を調製した。得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体組成物II*は、MFR=1000g/10分、エチレン含量=5.0mol%、Tm=125.2℃、Q値=1.7であった。
【0057】
重合例3
重合例1で調整した固体触媒を用い、エチレンの供給量を1.6kg/hr、水素の供給量を0.33g/hr、予備重合触媒を流動パラフィンによりスラリー状としたフィード量を0.76g/hrに変更した以外は、重合例1と同様にして重合を行った。その結果、12.6kg/hrのプロピレン・エチレンランダム共重合IIIを得た。得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体IIIは、MFR=24.0g/10分、エチレン含量=6.2mol%、Tm=120.3℃、Q値=2.8であった。
【0058】
重合例4
重合例1で調整した固体触媒を用い、水素の供給量を0.03g/hr、予備重合触媒を流動パラフィンによりスラリー状としたフィード量を1.5g/hrに変更した以外は、重合例1と同様にして重合を行った。その結果、12.5kg/hrのプロピレン・エチレンランダム共重合IVを得た。得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体IVはMFRが6.0g/10分、エチレン含量=5.0mol%、Tm=125.4℃、Q値=2.7であった。
【0059】
重合例5
内容積200リットルの攪拌式オートクレーブをプロピレンで十分に置換した後、脱水・脱酸素処理したn―ヘプタン60Lを導入し、ジエチルアルミニウムクロリド16g、三塩化チタン触媒(エム・アンド・エム社製)4.1gを50℃でプロピレン雰囲気下で導入した。更に気相水素濃度を6.0容量%に保ちながら、50℃の温度で、プロピレン5.7kg/時及びエチレン0.28kg/時の速度で4時間フィードした後、更に1時間重合を継続した。その結果、12kgのプロピレン・エチレンランダム共重合体Vを得た。得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体Vは、MFR=6.4g/10分、エチレン含量=5.9mol%、Tm=140℃、Q値=4.4であった。
【0060】
重合例6
重合例5で、エチレンの供給量を0.35g/hrとした以外は、重合例5と同様にしてプロピレンとエチレンのランダム共重合を行った。その結果、20kg/hrのプロピレン・エチレンランダム共重合体VIを得た。得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体VIは、MFR=6.0g/10分、エチレン含量=6.5mol%、Tm=130℃、Q値=4.5であった。
【0061】
プロピレン・エチレンランダム共重合体V、VIを用いて、過酸化物(パーヘキサ25B:日本油脂社製)の配合量を4000ppmとした以外は、重合体組成物II*の調整方法と同様にして、重合体組成物V*、VI*を得た。
得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体組成物V*は、MFR=25g/10分、エチレン含量=5.9mol%、Tm=140℃、Q値=3.8であった。得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体組成物VI*は、MFR=25g/10分、エチレン含量=6.5mol%、Tm=130℃、Q値=3.8であった。
【0062】
上記の重合例1〜6で製造したプロピレン・エチレンランダム共重合体I〜Vの各物性を表2に示す。表2から明らかな通り、重合体I〜IIIは、特性(1)〜(6)を有する本発明のプロピレン・エチレンランダム共重合体であり、重合体IV〜VI及び重合体組成物II*、IV*〜VI*は本発明外の共重合体である。
【0063】
【表2】
【0064】
実施例1〜3
表2に示す重合体I〜IIIのパウダー100重量部に対して、結晶造核剤として3−メチルブテン重合体のマスターバッチを0.10重量部、酸化防止剤として1、3、5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2、6−キシリル)メチル]−1、3、5−トリアジン−2、4、6(1H、3H、5H)−トリオン(サイテック製、商品名サイアノックス1790)を0.04重量部、トリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、商品名イルガホス168)を0.05重量部、及び中和剤としてステアリン酸カルシウム(日東化成工業製、商品名Ca−St)を0.05重量部配合し、ヘンシェルミキサーで500rpm、3分間高速混合した後、φ50mm単軸押出機(ユニオンプラスチック社製)を使用し、押出温度230℃の条件で溶融、混練、冷却、カットしてペレット状のプロピレン共重合体組成物を調製した。次に得られた組成物を原料として、ホール数24個の紡糸口金を用いて溶融紡糸を行った。溶融紡糸は紡糸温度230℃、吐出量0.8g/分・孔で行い、その後エアサッカーにて延伸し、繊度2デシテックスの単一繊維を得た。この単一繊維をエアサッカー下方にあるコンベアーに集積させた後、110℃に設定したエンボスロールにより繊維同士を融着させ、目付量40g/m2の不織布を得た。次に、得られた不織布に放射線を照射して、色相、臭いを判断すると共に、照射前後の強度を測定し、強度保持率を求めた。その結果を表3に示す。
【0065】
実施例4
重合体組成物II*を原料として、メルトブローン法を用い、繊度が0.3デシテックス、目付量が40g/m2の不織布を得た。得られた不織布に実施例1と同様の放射線を照射して、色相、臭いを判断すると共に、照射前後の強度を測定し、強度保持率を求めた。その結果を表3に示す。なお、メルトブローン法の条件は、以下の通りである。
【0066】
ダイ:ダイサイズ 20インチ、ノズル孔 720個、ノズル径 0.3mm紡糸条件:紡糸温度 270℃、空気温度 250℃、空気流量 70Nm3/hr
繊維補集条件:エジェクター−コンベア距離 200mm、コンベア速度 3.2m/min
【0067】
実施例5
実施例1で調製した重合体I組成物を第1成分(鞘成分)として用い、ホモポリプロピレン(SA05;日本ポリケム社製)を第2成分(芯成分)として用い、芯鞘比1/1となるように、ホール数24個の芯鞘型の紡糸口金を用いて溶融紡糸を行った。溶融紡糸は紡糸温度230℃、吐出量0.8g/分・孔で行い、その後エアサッカーにて延伸し、繊度2デシテックスの芯鞘型複合繊維を得た。この繊維をエアサッカー下方にあるコンベアーに集積させた後、110℃に設定したエンボスロールにより繊維同士を融着させ、目付量40g/m2の不織布を得た。得られた不織布に実施例1と同様の放射線を照射して、色相、臭いを判断すると共に、照射前後の強度を測定し、強度保持率を求めた。その結果を表3に示す。
【0068】
比較例1
重合体として、ホモポリプロピレン(SA05(日本ポリケム社製))を用い、エンボスロール温度を140℃とした以外は、実施例1と同様にして不織布の製造を行なった。得られた不織布に実施例1と同様の放射線を照射して、色相、臭いを判断すると共に、照射前後の強度を測定し、強度保持率を求めた。その結果を表3に示す。
【0069】
比較例2〜3
重合体V、VIに過酸化物(パーヘキサ25B:日本油脂社製)を300ppm加え、それぞれ最終MFRが25g/10分になるように調製した重合体を用いる以外は、実施例1と同様にして不織布を得た。ただし、比較例3はエンボスロール温度を120℃とした。得られた不織布に実施例1と同様の放射線を照射して、色相、臭いを判断すると共に、照射前後の強度を測定し、強度保持率を求めた。その結果を表3に示す。
【0070】
比較例4
SA05(日本ポリケム社製)に過酸化物(パーヘキサ25B:日本油脂社製)を3000ppm加え、最終MFRが800g/10分となるように調製した重合体を用いる以外は、実施例4と同様にして繊度0.3デシテックス、目付量40g/m2の不織布を得た不織布を得た。得られた不織布に実施例1と同様の放射線を照射して、色相、臭いを判断すると共に、照射前後の強度を測定し、強度保持率を求めた。その結果を表3に示す。
【0071】
比較例5
重合体IVのパウダーを使用した以外は、実施例1と同様にして溶融紡糸を行ったが、エアサッカーでの延伸追随性が非常に悪く、延伸切れを多発したため、不織布を得ることができなかった。
【0072】
【表3】
【0073】
表3から明らかなように、上記に示した各実施例によれば、いずれも耐放射線性に優れたポリプロピレン系樹脂不織布が得られる。一方、ホモポリプロピレンを用いた不織布は、放射線照射により強度保持率は低下し、色相、臭いも悪化する(比較例1及び4)。Q値、T80−T20、0℃可溶分量が範囲外の重合体を用いた不織布は、放射線照射により、色相、臭いが悪化する(比較例2及び3)。
【0074】
【発明の効果】
本発明のポリプロピレン系不織布は、特定のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を用いているので、放射線照射によっても機械物性の低下が少なく、べたつき、変色、臭いの少ない医療用ポリプロピレン系不織布であり、手術用着衣、ドレープ、人工透析や血液の濾過フィルター、注射器や薬剤の包装などの医療用不織布として好適に用いることができる。
Claims (5)
- メタロセン触媒によって重合され、下記特性(1)〜(6)を有するプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を少なくとも1成分とする繊維からなり、スパンボンド法、メルトブロー法のいずれかの方法により製造されたシート状不織布からなることを特徴とする医療用プロピレン系不織布。
特性(1):MFRが10〜2000g/10分
特性(2):Q値が1.5〜4.0
特性(3):Tmが110〜140℃
特性(4):T80−T20が2〜8℃
特性(5):TREF測定時の0℃可溶分量が0.3重量%以下
特性(6):α−オレフィン含有量が1〜18モル%
(但し、MFRはJIS−K6921による230℃、21.18Nでのメルトフローレート、Q値はGPCにより測定した重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)、T80は温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる積分溶出曲線において80重量%が溶出する温度、T20は20重量%が溶出する温度、Tmは示差走査熱量計(DSC)によって得られる融解曲線のピーク温度をそれぞれ示す。) - プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のα−オレフィンがエチレンであり、その含有量が1〜12モル%であることを特徴とする請求項1に記載の医療用プロピレン系不織布。
- プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を少なくとも1成分とする繊維が単一繊維、芯鞘型複合繊維、あるいはサイドバイサイド複合型繊維であることを特徴とする請求項1又は2に記載の医療用プロピレン系不織布。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用ポリプロピレン系不織布に放射線処理を施した医療用不織布。
- 電子線の照射条件が電圧4.8MeV、電流20mA、線量40KGyの電子線照射を受けた不織布の電子線照射前後での強度保持率が70%以上であることを特徴とする請求項4に記載の医療用不織布。
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