JP3724951B2 - 車両用交流発電機 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関により駆動される車両用交流発電機に関し、乗用車、トラック等に搭載される車両用交流発電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平3−235644号公報等に開示された従来の車両用交流発電機は、回転子の側面にファンを備えた内扇式構造を有しており、回転によって内部に取り込んだ冷却風をフレームの径方向に設けた窓を通じて吐出させることにより、固定子巻線を冷却している。
【0003】
また、車両用交流発電機に用いられる固定子として、複数の導体セグメントを接合することにより形成された巻線を有するものが従来から知られている。例えば、米国特許第1822261号やWO92/06527には、U字状の複数の導体セグメントを固定子鉄心の一方の端面側から挿入した後に、反挿入側の端部同士を接合することにより巻線が形成された固定子が開示されている。この固定子は、連続した導体巻線を巻いて巻線を構成する場合に比べて、規則的に配置された巻線が形成しやすい特長がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した米国特許第1822261号やWO92/06527に開示された固定子の巻線は、複数の導体セグメントの端部同士が接合されているため、接合前の形状である各導体セグメント端部のエッジ形状が残って、接合部においてエッジが生じやすい。
【0005】
したがって、この固定子を上述した特開平3−235644号公報に開示されたような内扇式の車両用交流発電機に適用した場合には、回転によって取り込まれる冷却風に混じった埃や塵等の浮遊物が固定子巻線の接合部のエッジ部分に付着して堆積しやすいという問題があった。特に、内扇式の車両用交流発電機のフレームには、固定子巻線の外周側に冷却風の吐出窓が形成されているため、この吐出窓の外側から塩水や水が入りやすく、これら塩水等が上述した固定子巻線の接合部分に付着すると、隣接する接合部間や接合部とフレームのアースとの間の絶縁不良の原因になる。
【0006】
また、上述したように固定子巻線の接合部分にエッジが存在すると、このエッジ部分を含む接合部全体を絶縁皮膜処理したときに、この接合部の絶縁状態が不均一になるという問題があった。特に、エッジ部分の絶縁皮膜が薄くなるため、絶縁不良が生じやすくなる。また、エッジ部分の絶縁皮膜の厚さを充分確保しようとすると、例えば絶縁を目的とした含浸処理を何度も繰り返さなければならず、工程が複雑になってコスト高を招くため好ましくない。
【0007】
このように、接合部分に残された部分的なエッジ形状は、その部分への機械的なストレスの集中、あるいは電気的化学的なストレスの集中を招くことがあった。このため、かかる接合部のエッジ部分から機械的な破損が進行したり、電気的化学的な腐食が進行したりするという問題があった。
そこで本発明は、固定子巻線を形成する電気導体の接合部における、機械的な、あるいは電気的化学的な不具合の発生を防止することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、接合部に埃等が付着しにくい固定子を有する車両用交流発電機を提供することにある。また、本発明の他の目的は、固定子の接合部の均一な厚さの絶縁処理が可能な車両用交流発電機を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、請求項1の車両用交流発電機は、固定子に含まれる電気導体を固定子上で接合する際の接合部の形状を玉形状に形成している。接合部の形状を突起(エッジ)のない玉形状とすることにより、接合部の一部分に、腐食の原因や、機械的な応力といった、不具合原因が集中することを防止でき、この接合部から機械的な破損が進行したり、電気的化学的な腐食が進行したりすることを防止することができる。
【0010】
なお、固定子上に複数の接合部を有する場合には、それらのすべての接合部を玉形状とすることが望ましい。
そして、接合部を玉形状とすることによって、例えば、この接合部を通して冷却風が流れた場合にも冷却風に含まれる埃や塵等の浮遊物が付着しにくく、塩水等がこの接合部近傍に達したときの絶縁不良の発生を防止することができる。
【0011】
また、容易に均一な絶縁皮膜が形成され、不均一な絶縁皮膜の形成による絶縁不良の発生を防止することができる。請求項2の車両用交流発電機においては、電気導体が、端部を接合された複数の導体セグメントによって提供される。かかる構成にあっては、固定子上において複数の接合部を形成する必要があるため、それら複数の接合部における不具合を防止することは、車両用交流発電機の固定子の信頼性を向上させる上できわめて重要である。本発明によると、複数の導体セグメントを接合して形成される固定子巻線の信頼性を高めることができる。
【0012】
なお、導体セグメントとしては、種々の形状の導体セグメントを採用することができる。例えば、固定子鉄心の両端面側に突出する2つの端部をもったI字状、あるいはJ字状と呼び得る導体セグメントを採用し、固定子鉄心の両端面において、それぞれ複数の接合部を形成する構成を採用することができる。
また、請求項3の車両用交流発電機のように、U字状の導体セグメントを採用してもよい。かかる構成によると、U字状導体セグメントのターン部を固定子鉄心の一方の端面側に配置し、他方の端面側から2つの端部を突出させることで、固定子上に形成すべき接合部の数を低減することができる。特に、複数のU字状導体セグメントを、それらのターン部を固定子鉄心の一方の端面側に揃えて配置し、固定子鉄心の他方の端面側においてのみ接合部を形成した構成を採用することで、接合工程の作業性を向上することができる。
【0013】
請求項4の車両用交流発電機は、固定子の電気導体の接合部が内周側から風を受けるよう配置されており、回転子に備わった冷却ファンによって電気導体が冷却されるような構造を有している。この冷却風に埃や塵等の浮遊物が含まれる場合であっても、玉形状に形成された接合部に埃や塵等の浮遊物が付着しにくいため、特に内扇式の車両用交流発電機において各接合部を玉形状に形成することにより、絶縁不良を防止する効果が大きい。
【0014】
請求項5の車両用交流発電機は、上述した導体セグメントの端部同士の接合を非接触方式の溶接によって行っている。また、請求項6の車両用交流発電機は、さらにこの溶接をTIG溶接によって行っている。非接触方式の溶接によって電気導体の端部を接合することにより、溶融時に表面張力によってこの溶融部分が全体的に丸みをおびるため、接合部の玉形状を容易に形成することができる。特に、TIG溶接を用いることにより、溶接時の熱量の制御が容易であり、電気導体の端部近傍の狭い範囲を溶融させて玉形状に形成することが可能になる。
【0015】
請求項7の車両用交流発電機は、電気導体が径方向に沿って二列以上配設されており、径方向に並んだ接合部同士が互いに接近するが、各接合部が玉形状に形成されているため浮遊物の付着が防止され、接近した接合部間に生じる絶縁不良を回避することができる。
請求項8の車両用交流発電機は、固定子の端面から複数の接合部までの高さがほぼ一定になっており、玉形状に形成された接合部に絶縁処理を施す場合の工程の簡略化が可能になる。例えば、絶縁材槽に各接合部を浸すだけで容易に絶縁処理を行うことができ、しかもこの場合であっても玉形状の各接合部の絶縁皮膜の厚さがほぼ均一に形成されるため、良好な絶縁性を確保することができる。
なお、前記接合部はエッジのない玉形状とすることができる。
また、前記接合部は雫状の玉形状とすることができる。
また、前記接合部が、線材を切断しただけの切断面よりも丸い玉形状であることを特徴としてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した一実施形態の車両用交流発電機について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、一実施形態の車両用交流発電機の全体構造を示す断面図である。同図に示すように、本実施形態の車両用交流発電機1は、固定子2、回転子3、フレーム4、整流器5等を含んで構成されている。
【0017】
固定子2は、固定子鉄心32と、固定子巻線を構成する複数の電気導体としての導体セグメント33と、固定子鉄心32と導体セグメント33との間を電気絶縁するインシュレータ34とを備えている。固定子鉄心32は、薄い鋼板を重ね合わせて形成されており、その内周面には多数のスロットが形成されている。また、この固定子鉄心32から露出している導体セグメント33によって固定子巻線のコイルエンド31が形成されている。固定子2の詳細構造については後述する。
【0018】
回転子3は、絶縁処理された銅線を円筒状かつ同心状に巻き回した界磁コイル8を、それぞれが6個の爪部を有するポールコア7によって、シャフト6を通して両側から挟み込んだ構成を有している。また、フロント側のポールコア7の端面には、フロント側から吸い込んだ冷却風を軸方向および径方向に吐き出すために軸流式の冷却ファン11が溶接等によって取り付けられている。同様に、リヤ側のポールコア7の端面には、リヤ側から吸い込んだ冷却風を径方向に吐き出すために遠心式の冷却ファン12が溶接等によって取り付けられている。
【0019】
フレーム4は、固定子2および回転子3を収容しており、回転子3がシャフト6を中心に回転可能な状態で支持されているとともに、回転子3のポールコア7の外周側に所定の隙間を介して配置された固定子2が固定されている。また、フレーム4は、固定子2のコイルエンド31に対向した部分に冷却風の吐出孔42が、軸方向端面に吸入孔41がそれぞれ設けられている。
【0020】
上述した構造を有する車両用交流発電機1は、ベルト等を介してプーリ20にエンジン(図示せず)からの回転力が伝えられると回転子3が所定方向に回転する。この状態で回転子3の界磁コイル8に外部から励磁電圧を印加することにより、ポールコア7のそれぞれの爪部が励磁され、固定子巻線に3相交流電圧を発生させることができ、整流器5の出力端子からは所定の直流電流が取り出される。
【0021】
次に、固定子2の詳細について説明する。図2は、固定子巻線を構成する導体セグメント33の斜視図であり、固定子鉄心32に組み付ける前の状態が示されている。また、図3は固定子2の部分的な断面図である。図4は、固定子2の部分的な外観図である。図5は、固定子巻線を構成する導体セグメントの接合部の詳細形状を示す斜視図である。図6は、固定子2の両端面のコイルエンド31の詳細を示す斜視図である。
【0022】
図2に示すように、導体セグメン33は、棒状あるいは板状の金属材料(例えば銅)をターン部33cで折り曲げたほぼU字状に形成されており、ターン部33cよりスロット35の内周側に配置される内層側導体部33aと、ターン部33cよりスロット35の外周側に配置される外層側導体部33bとを含んで構成される。また、これらの内層側導体部33aと外層側導体部33bのそれぞれは、固定子2のスロット35内に収容される直線部としての内部導体と、スロット35の外部に露出する外部導体とによって構成されている。
【0023】
固定子2の固定子巻線は、固定子鉄心32の各スロット35に2本の導体セグメント33を挿入し、異なるスロット35に挿入された導体セグメント33の端部33d同士を互いに結線することにより構成されている。図3に示すように、この導体セグメント33の内層側導体部33aおよび外層側導体部33bのそれぞれの断面形状は、周方向よりも径方向に長い長方形を有しており、この長方形の長辺が径方向に沿って配置されている。この導体セグメント33は、その表面に絶縁皮膜が形成されている場合の他に、絶縁皮膜が形成されていない場合が考えられる。なお、図3では、導体セグメント33の表面に絶縁皮膜がない場合の例が示されており、インシュレータ34は、同じスロット35内の2本の導体セグメント33間も絶縁するためにS字形状をなしている。
【0024】
また、図4に示すように、固定子巻線を構成する各導体セグメント33は、固定子鉄心32の軸方向側面の一方にターン部33cが、他方にターン部33cと反対側の端部33dが配置されている。また、固定子2の一方のコイルエンド31を構成する導体セグメント33の斜行部33eは、外層と内層とで逆方向に傾斜しており、各層内では同一方向に傾斜している。
【0025】
また、各導体セグメント33の端部33d同士の結線は、例えばTIG(tungsten inert-gas)溶接による接合によって行うことが好ましい。一般に、TIG溶接は、不活性ガス気中でタングステン電極と母材の間にアークを発生させ、このアーク熱を利用して母材と溶加材を溶融させて溶接する方法であり、入熱量と溶加材の添加量を独立に制御できる利点がある。本実施形態では、導体セグメント33の端部33d同士の溶接をTIG溶接によって行うことにより、端部33d近傍のみを局所的に溶融して接合部33fが形成されている。
【0026】
この接合部33fは、図5(a)に示すように、隣接する導体セグメント33の端部33d同士を接触させた状態で隣接配置した後に、この隣接部にタングステン電極が内包されたノズルを接近させてTIG溶接することにより形成される。例えば、高い熱伝導率を有する銅によって導体セグメント33を形成した場合には、溶接時の溶融が端部33dの近傍に広がるため、図5(b)に示すように、接合部33fの全体が表面張力によって丸くなってエッジのない雫状の玉形状となる。
【0027】
なお、接合部33fは、導体セグメント33の線材の断面寸法よりも大きく形成されている。図示されるように、接合部33fの厚さTは、導体セグメント33の矩形断面導体の厚さtよりも大きくされている。さらに、接合部33fの幅Wは、導体セグメント33の矩形断面導体の2本分の幅w×2よりも大きくされている。このようにして、接合部において十分に大きな断面積が確保されることにより、2つの導体セグメント33の端部を接合する接合部33fにおいて、機械的な十分な強度と、電気的な確実な接続とが得られる。しかも、その形状がエッジのない玉形状とされているため、応力が集中しやすい部分や、腐食しやすい部分が局部的に生じることがない。
【0028】
特に、この実施形態では、導体セグメント33の断面形状よりも、接合部33fのほうが丸い形状とされているため、機械的あるいは電気的な欠陥を含み易い接合部33fへの機械的あるいは電気的なストレスの集中を防ぎ、高い信頼性が実現される。
この接合部33fの横断面を、図5(c)に示す。接合部33fは、一点鎖線で示された導体セグメント33の断面形状より大きく形成されており、導体セグメント33を溶融させて形成された接合部33fの表面には、保護用かつ電気絶縁用の樹脂皮膜33gが形成されている。この樹脂皮膜33gは、接合部33fの表面に、ほぼ均一な厚さをもって形成されている。
【0029】
次に、固定子巻線の製造工程を以下に説明する。図2に示す外層導体部33bと内層導体部33aとターン部33cとで構成されたほぼ同一形状のU字状の導体セグメント33を、固定子鉄心32の軸方向側面の同一側にターン部33cが揃うように重ね、図3に示すように外層側導体部33bがスロット35の奥側に、内層側導体部33aがスロット35の開口側に位置するように、各導体セグメント33を固定子2のスロット35に挿入する。この導体セグメント33は、銅平板を折り曲げ、プレス等でほぼU字型形状に整形することにより製作され、ほぼ平行のスロット側面に外層導体部33bおよび内層導体部33aの両側面がインシュレータ34を介して当接するように圧入される。
【0030】
次に、図6に示すように、ターン部33cによって形成されるコイルエンド31とは反対側に位置する先端33dを互いに反対の周方向に折り曲げた後、異層の他の導体セグメント33の先端33d同士がTIG溶接によって接合され、この接合部33fにおいて結線される。このようにして形成された各導体セグメント33の接合部33fは、固定子鉄心32からの高さがほぼ同一に形成される。
【0031】
次に、各接合部33fが下向きになるように固定子2を配置して、例えば液体の絶縁材槽に各接合部33fを浸した後に引き上げ、この絶縁材を乾燥させることにより、各接合部33fに絶縁被膜が形成される。
このように、固定子巻線を構成する各導体セグメント33同士の接合をTIG溶接によって行うことによって、接合部33fの形状をエッジのない雫状の玉形状にすることができる。したがって、この接合部33fにおいて冷却風に混じって吸い込まれた埃や塵等の浮遊物が付着しにくい。特に、内扇式の車両用交流発電機1では、回転子3に取り付けられた冷却ファン12によって、この接合部33fの内周側からこの接合部33fの外側に形成されたフレーム4の吐出孔42に向けて冷却風が流れるため、この接合部33fにエッジがあると、冷却風に含まれる浮遊物がこのエッジ部分に堆積し、回転子3の回転が停止したときに吐出孔42から容易に進入する塩水や水等がこの堆積物にかかって絶縁不良を引き起こすおそれがあるが、本実施形態の固定子2ではこの接合部33fにエッジが生じないため、このようなおそれはない。
【0032】
また、ほぼU字状の導体セグメント33を用いることによって、固定子鉄心32の一方の端面側に導体セグメント33の全ての端部33dが配置されるため、TIG溶接が固定子鉄心32の一方の端面側において行われ、固定子鉄心32を反転させる等の工程が不要になるため、工程の簡略化が可能になる。また、ほぼ同一形状の導体セグメント33を用いているため、各接合部33fの高さがほぼ同一になり、その後に各接合部33fを絶縁処理する際に、絶縁材槽に全ての接合部33fを同時に浸すことが可能になる。このため、絶縁処理の工程を簡略化することができ、部品コストを下げることができる。また、接合部33fがエッジのない玉形状に形成されるため、絶縁処理の際にほぼ均一な厚さの絶縁被膜を形成することができる。したがって、接合部にエッジがある場合のように、エッジ部分において絶縁被膜が薄くなって部分的に絶縁不良が生じたり、このエッジ部分の絶縁皮膜を厚くするために絶縁処理の工程が複雑化する等の不都合を回避することができる。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、1スロット当たりの導体数が2本の場合を説明したが、1スロット当たりの導体数を増やすようにしてもよい。例えば、図7に示すように、固定子鉄心32に形成された各スロット135内に、4本の導体セグメント133を、スロット135の深さ方向に関してのみ配列して収容するようにしてもよい。図7では、絶縁皮膜を有する導体セグメント133を用い、複数の導体セグメント133とスロット135の内壁との間にはインシュレータ134が介装されている。このような構造においては、図8に示すような接合構造が採用できる。1つのスロット135に収容された4本の導体セグメント133は、周方向に向けて交互に延び出している。図8では、手前に図示された最外周が時計回り方向に延びており、最も奥に位置する最内周が反時計回り方向に延びている。そして、各導体セグメント133の端部133dは、所定ピッチ離れた別のスロット135から延びる他の導体セグメント133の端部133dと接合されてている。図8では、最内周の導体セグメント133と第2層の導体セグメント133とが接合され、第3層の導体セグメント133と最外層の導体セグメント133とが接合されている。したがって、複数の接合部133fは、内周側と外周側に2重の環状に配列され、各接合部133fが周方向および径方向の両方に関して互いに離間して配置される。また、それぞれの接合部133fの接合をTIG溶接によって行うことにより、各接合部133fは、図5(b)に示したようなエッジのない雫状の玉形状に形成される。
【0034】
したがって、それぞれの接合部133fを通して内周側から冷却風が流れた場合であっても、各接合部133fに埃や塵等の浮遊物が付着しにくく、付着した浮遊物に起因する絶縁不良の発生を防止することができる。特に、1つのスロット135に4本の導体セグメント133を収容した場合には、内周側と外周側に2列に接合部133fが配列され、しかもそれらが接近するため、これらの間の絶縁性の低下を防止することが必要であり、TIG溶接によって各接合部133fを玉形状に形成することは特に有効であるといえる。
【0035】
また、固定子2のスロット35の数を変更することなく小さな体格の車両用交流発電機1を実現する場合にも各接合部同士が接近するため、各接合部をTIG溶接によって形成することにより、エッジのない玉形状とすることは、各接合部間の絶縁状態を良好に保つ上で有効な手段であるといえる。
また、上述した実施形態では、固定子鉄心32の一方の側面側にターン部33cを有するほぼU字状の導体セグメント33を用いたが、このターン部33cで分離した折り返しのない導体セグメントを用い、この導体セグメントの両端部を接合するようにしてもよい。図9は、折り返しのない導体セグメントの形状を示す斜視図である。同図に示す導体セグメント233は、固定子鉄心32のスロット35内に挿入される直線部である内部導体233hと、この内部導体233hの両端において固定子鉄心32の軸方向両側に延びる外部導体233iとによって構成されている。各外部導体233iは、軸方向に対して所定の角度傾斜しており、図10に示すように、端部233dが異なるスロットに挿入された他の導体セグメント233の端部233dと接合されて結線がなされることにより、全体として固定子巻線が形成される。このような固定子巻線においては、軸方向の両端部に接合部233fが形成され、それぞれの接合部233fが回転子2の両端面に取り付けられた冷却ファン11、12によって内周側から冷却されることになるが、いずれの接合部233fもエッジのない玉形状を有しているため、冷却風に含まれる埃等の浮遊物が付着しにくく、この付着物に起因する絶縁不良の発生を防止することができる。
【0036】
また、接合部33fへ送風するための構成としては、2つの遠心方向送風型のファンを備えた上述の内扇式構造に加えて、1つのみ遠心方向送風型のファンを備えた内扇式構造としてもよい。また、接合部33fに向けて軸方向から風を当てる構成が採用されてもよい。また、本発明の接合部によると、いわゆる水冷構造においても接合部への異物の堆積、キャビテーションによる侵食、電気的化学的な腐食を低減する効果がある。
【0037】
また、導体セグメント33の線材の断面形状は、円形、楕円形、多角形などを採用してもよい。いずれの場合でも、2本の導体セグメントの端部に形成される接合部が、その線材を切断しただけの切断面よりも丸い玉形状にされることが重要である。
また、上述した実施形態では、各導体セグメント33の端部33d同士の接合をTIG溶接によって行ったが、非接触方式の他の溶接方法、例えばTIG溶接以外の各種のアーク溶接方法を用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の車両用交流発電機の全体構造を示す断面図である。
【図2】固定子巻線を構成する導体セグメントの斜視図である。
【図3】固定子の部分的な断面図である。
【図4】固定子の部分的な外観図である。
【図5】(a)は導体セグメントの接合前の端部を示す斜視図、(b)は導体セグメントの接合部の斜視図である。
【図6】固定子の両端面のコイルエンドの詳細を示す斜視図である。
【図7】各スロットに4本の導体セグメントが挿入された固定子の部分的な断面図である。
【図8】各スロットに4本の導体セグメントが挿入された固定子の部分的な斜視図である。
【図9】折り返しのない導体セグメントの形状を示す斜視図である。
【図10】図9に示した導体セグメントを用いて構成した固定子の部分的な外観図である。
【符号の説明】
1 車両用交流発電機
2 固定子
3 回転子
32 固定子鉄心
33 導体セグメント
33a 内部導体
33d 端部
33f 接合部
34 インシュレータ
35 スロット
4 フレーム
41 吐出孔
42 吸入孔
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関により駆動される車両用交流発電機に関し、乗用車、トラック等に搭載される車両用交流発電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平3−235644号公報等に開示された従来の車両用交流発電機は、回転子の側面にファンを備えた内扇式構造を有しており、回転によって内部に取り込んだ冷却風をフレームの径方向に設けた窓を通じて吐出させることにより、固定子巻線を冷却している。
【0003】
また、車両用交流発電機に用いられる固定子として、複数の導体セグメントを接合することにより形成された巻線を有するものが従来から知られている。例えば、米国特許第1822261号やWO92/06527には、U字状の複数の導体セグメントを固定子鉄心の一方の端面側から挿入した後に、反挿入側の端部同士を接合することにより巻線が形成された固定子が開示されている。この固定子は、連続した導体巻線を巻いて巻線を構成する場合に比べて、規則的に配置された巻線が形成しやすい特長がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した米国特許第1822261号やWO92/06527に開示された固定子の巻線は、複数の導体セグメントの端部同士が接合されているため、接合前の形状である各導体セグメント端部のエッジ形状が残って、接合部においてエッジが生じやすい。
【0005】
したがって、この固定子を上述した特開平3−235644号公報に開示されたような内扇式の車両用交流発電機に適用した場合には、回転によって取り込まれる冷却風に混じった埃や塵等の浮遊物が固定子巻線の接合部のエッジ部分に付着して堆積しやすいという問題があった。特に、内扇式の車両用交流発電機のフレームには、固定子巻線の外周側に冷却風の吐出窓が形成されているため、この吐出窓の外側から塩水や水が入りやすく、これら塩水等が上述した固定子巻線の接合部分に付着すると、隣接する接合部間や接合部とフレームのアースとの間の絶縁不良の原因になる。
【0006】
また、上述したように固定子巻線の接合部分にエッジが存在すると、このエッジ部分を含む接合部全体を絶縁皮膜処理したときに、この接合部の絶縁状態が不均一になるという問題があった。特に、エッジ部分の絶縁皮膜が薄くなるため、絶縁不良が生じやすくなる。また、エッジ部分の絶縁皮膜の厚さを充分確保しようとすると、例えば絶縁を目的とした含浸処理を何度も繰り返さなければならず、工程が複雑になってコスト高を招くため好ましくない。
【0007】
このように、接合部分に残された部分的なエッジ形状は、その部分への機械的なストレスの集中、あるいは電気的化学的なストレスの集中を招くことがあった。このため、かかる接合部のエッジ部分から機械的な破損が進行したり、電気的化学的な腐食が進行したりするという問題があった。
そこで本発明は、固定子巻線を形成する電気導体の接合部における、機械的な、あるいは電気的化学的な不具合の発生を防止することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、接合部に埃等が付着しにくい固定子を有する車両用交流発電機を提供することにある。また、本発明の他の目的は、固定子の接合部の均一な厚さの絶縁処理が可能な車両用交流発電機を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、請求項1の車両用交流発電機は、固定子に含まれる電気導体を固定子上で接合する際の接合部の形状を玉形状に形成している。接合部の形状を突起(エッジ)のない玉形状とすることにより、接合部の一部分に、腐食の原因や、機械的な応力といった、不具合原因が集中することを防止でき、この接合部から機械的な破損が進行したり、電気的化学的な腐食が進行したりすることを防止することができる。
【0010】
なお、固定子上に複数の接合部を有する場合には、それらのすべての接合部を玉形状とすることが望ましい。
そして、接合部を玉形状とすることによって、例えば、この接合部を通して冷却風が流れた場合にも冷却風に含まれる埃や塵等の浮遊物が付着しにくく、塩水等がこの接合部近傍に達したときの絶縁不良の発生を防止することができる。
【0011】
また、容易に均一な絶縁皮膜が形成され、不均一な絶縁皮膜の形成による絶縁不良の発生を防止することができる。請求項2の車両用交流発電機においては、電気導体が、端部を接合された複数の導体セグメントによって提供される。かかる構成にあっては、固定子上において複数の接合部を形成する必要があるため、それら複数の接合部における不具合を防止することは、車両用交流発電機の固定子の信頼性を向上させる上できわめて重要である。本発明によると、複数の導体セグメントを接合して形成される固定子巻線の信頼性を高めることができる。
【0012】
なお、導体セグメントとしては、種々の形状の導体セグメントを採用することができる。例えば、固定子鉄心の両端面側に突出する2つの端部をもったI字状、あるいはJ字状と呼び得る導体セグメントを採用し、固定子鉄心の両端面において、それぞれ複数の接合部を形成する構成を採用することができる。
また、請求項3の車両用交流発電機のように、U字状の導体セグメントを採用してもよい。かかる構成によると、U字状導体セグメントのターン部を固定子鉄心の一方の端面側に配置し、他方の端面側から2つの端部を突出させることで、固定子上に形成すべき接合部の数を低減することができる。特に、複数のU字状導体セグメントを、それらのターン部を固定子鉄心の一方の端面側に揃えて配置し、固定子鉄心の他方の端面側においてのみ接合部を形成した構成を採用することで、接合工程の作業性を向上することができる。
【0013】
請求項4の車両用交流発電機は、固定子の電気導体の接合部が内周側から風を受けるよう配置されており、回転子に備わった冷却ファンによって電気導体が冷却されるような構造を有している。この冷却風に埃や塵等の浮遊物が含まれる場合であっても、玉形状に形成された接合部に埃や塵等の浮遊物が付着しにくいため、特に内扇式の車両用交流発電機において各接合部を玉形状に形成することにより、絶縁不良を防止する効果が大きい。
【0014】
請求項5の車両用交流発電機は、上述した導体セグメントの端部同士の接合を非接触方式の溶接によって行っている。また、請求項6の車両用交流発電機は、さらにこの溶接をTIG溶接によって行っている。非接触方式の溶接によって電気導体の端部を接合することにより、溶融時に表面張力によってこの溶融部分が全体的に丸みをおびるため、接合部の玉形状を容易に形成することができる。特に、TIG溶接を用いることにより、溶接時の熱量の制御が容易であり、電気導体の端部近傍の狭い範囲を溶融させて玉形状に形成することが可能になる。
【0015】
請求項7の車両用交流発電機は、電気導体が径方向に沿って二列以上配設されており、径方向に並んだ接合部同士が互いに接近するが、各接合部が玉形状に形成されているため浮遊物の付着が防止され、接近した接合部間に生じる絶縁不良を回避することができる。
請求項8の車両用交流発電機は、固定子の端面から複数の接合部までの高さがほぼ一定になっており、玉形状に形成された接合部に絶縁処理を施す場合の工程の簡略化が可能になる。例えば、絶縁材槽に各接合部を浸すだけで容易に絶縁処理を行うことができ、しかもこの場合であっても玉形状の各接合部の絶縁皮膜の厚さがほぼ均一に形成されるため、良好な絶縁性を確保することができる。
なお、前記接合部はエッジのない玉形状とすることができる。
また、前記接合部は雫状の玉形状とすることができる。
また、前記接合部が、線材を切断しただけの切断面よりも丸い玉形状であることを特徴としてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した一実施形態の車両用交流発電機について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、一実施形態の車両用交流発電機の全体構造を示す断面図である。同図に示すように、本実施形態の車両用交流発電機1は、固定子2、回転子3、フレーム4、整流器5等を含んで構成されている。
【0017】
固定子2は、固定子鉄心32と、固定子巻線を構成する複数の電気導体としての導体セグメント33と、固定子鉄心32と導体セグメント33との間を電気絶縁するインシュレータ34とを備えている。固定子鉄心32は、薄い鋼板を重ね合わせて形成されており、その内周面には多数のスロットが形成されている。また、この固定子鉄心32から露出している導体セグメント33によって固定子巻線のコイルエンド31が形成されている。固定子2の詳細構造については後述する。
【0018】
回転子3は、絶縁処理された銅線を円筒状かつ同心状に巻き回した界磁コイル8を、それぞれが6個の爪部を有するポールコア7によって、シャフト6を通して両側から挟み込んだ構成を有している。また、フロント側のポールコア7の端面には、フロント側から吸い込んだ冷却風を軸方向および径方向に吐き出すために軸流式の冷却ファン11が溶接等によって取り付けられている。同様に、リヤ側のポールコア7の端面には、リヤ側から吸い込んだ冷却風を径方向に吐き出すために遠心式の冷却ファン12が溶接等によって取り付けられている。
【0019】
フレーム4は、固定子2および回転子3を収容しており、回転子3がシャフト6を中心に回転可能な状態で支持されているとともに、回転子3のポールコア7の外周側に所定の隙間を介して配置された固定子2が固定されている。また、フレーム4は、固定子2のコイルエンド31に対向した部分に冷却風の吐出孔42が、軸方向端面に吸入孔41がそれぞれ設けられている。
【0020】
上述した構造を有する車両用交流発電機1は、ベルト等を介してプーリ20にエンジン(図示せず)からの回転力が伝えられると回転子3が所定方向に回転する。この状態で回転子3の界磁コイル8に外部から励磁電圧を印加することにより、ポールコア7のそれぞれの爪部が励磁され、固定子巻線に3相交流電圧を発生させることができ、整流器5の出力端子からは所定の直流電流が取り出される。
【0021】
次に、固定子2の詳細について説明する。図2は、固定子巻線を構成する導体セグメント33の斜視図であり、固定子鉄心32に組み付ける前の状態が示されている。また、図3は固定子2の部分的な断面図である。図4は、固定子2の部分的な外観図である。図5は、固定子巻線を構成する導体セグメントの接合部の詳細形状を示す斜視図である。図6は、固定子2の両端面のコイルエンド31の詳細を示す斜視図である。
【0022】
図2に示すように、導体セグメン33は、棒状あるいは板状の金属材料(例えば銅)をターン部33cで折り曲げたほぼU字状に形成されており、ターン部33cよりスロット35の内周側に配置される内層側導体部33aと、ターン部33cよりスロット35の外周側に配置される外層側導体部33bとを含んで構成される。また、これらの内層側導体部33aと外層側導体部33bのそれぞれは、固定子2のスロット35内に収容される直線部としての内部導体と、スロット35の外部に露出する外部導体とによって構成されている。
【0023】
固定子2の固定子巻線は、固定子鉄心32の各スロット35に2本の導体セグメント33を挿入し、異なるスロット35に挿入された導体セグメント33の端部33d同士を互いに結線することにより構成されている。図3に示すように、この導体セグメント33の内層側導体部33aおよび外層側導体部33bのそれぞれの断面形状は、周方向よりも径方向に長い長方形を有しており、この長方形の長辺が径方向に沿って配置されている。この導体セグメント33は、その表面に絶縁皮膜が形成されている場合の他に、絶縁皮膜が形成されていない場合が考えられる。なお、図3では、導体セグメント33の表面に絶縁皮膜がない場合の例が示されており、インシュレータ34は、同じスロット35内の2本の導体セグメント33間も絶縁するためにS字形状をなしている。
【0024】
また、図4に示すように、固定子巻線を構成する各導体セグメント33は、固定子鉄心32の軸方向側面の一方にターン部33cが、他方にターン部33cと反対側の端部33dが配置されている。また、固定子2の一方のコイルエンド31を構成する導体セグメント33の斜行部33eは、外層と内層とで逆方向に傾斜しており、各層内では同一方向に傾斜している。
【0025】
また、各導体セグメント33の端部33d同士の結線は、例えばTIG(tungsten inert-gas)溶接による接合によって行うことが好ましい。一般に、TIG溶接は、不活性ガス気中でタングステン電極と母材の間にアークを発生させ、このアーク熱を利用して母材と溶加材を溶融させて溶接する方法であり、入熱量と溶加材の添加量を独立に制御できる利点がある。本実施形態では、導体セグメント33の端部33d同士の溶接をTIG溶接によって行うことにより、端部33d近傍のみを局所的に溶融して接合部33fが形成されている。
【0026】
この接合部33fは、図5(a)に示すように、隣接する導体セグメント33の端部33d同士を接触させた状態で隣接配置した後に、この隣接部にタングステン電極が内包されたノズルを接近させてTIG溶接することにより形成される。例えば、高い熱伝導率を有する銅によって導体セグメント33を形成した場合には、溶接時の溶融が端部33dの近傍に広がるため、図5(b)に示すように、接合部33fの全体が表面張力によって丸くなってエッジのない雫状の玉形状となる。
【0027】
なお、接合部33fは、導体セグメント33の線材の断面寸法よりも大きく形成されている。図示されるように、接合部33fの厚さTは、導体セグメント33の矩形断面導体の厚さtよりも大きくされている。さらに、接合部33fの幅Wは、導体セグメント33の矩形断面導体の2本分の幅w×2よりも大きくされている。このようにして、接合部において十分に大きな断面積が確保されることにより、2つの導体セグメント33の端部を接合する接合部33fにおいて、機械的な十分な強度と、電気的な確実な接続とが得られる。しかも、その形状がエッジのない玉形状とされているため、応力が集中しやすい部分や、腐食しやすい部分が局部的に生じることがない。
【0028】
特に、この実施形態では、導体セグメント33の断面形状よりも、接合部33fのほうが丸い形状とされているため、機械的あるいは電気的な欠陥を含み易い接合部33fへの機械的あるいは電気的なストレスの集中を防ぎ、高い信頼性が実現される。
この接合部33fの横断面を、図5(c)に示す。接合部33fは、一点鎖線で示された導体セグメント33の断面形状より大きく形成されており、導体セグメント33を溶融させて形成された接合部33fの表面には、保護用かつ電気絶縁用の樹脂皮膜33gが形成されている。この樹脂皮膜33gは、接合部33fの表面に、ほぼ均一な厚さをもって形成されている。
【0029】
次に、固定子巻線の製造工程を以下に説明する。図2に示す外層導体部33bと内層導体部33aとターン部33cとで構成されたほぼ同一形状のU字状の導体セグメント33を、固定子鉄心32の軸方向側面の同一側にターン部33cが揃うように重ね、図3に示すように外層側導体部33bがスロット35の奥側に、内層側導体部33aがスロット35の開口側に位置するように、各導体セグメント33を固定子2のスロット35に挿入する。この導体セグメント33は、銅平板を折り曲げ、プレス等でほぼU字型形状に整形することにより製作され、ほぼ平行のスロット側面に外層導体部33bおよび内層導体部33aの両側面がインシュレータ34を介して当接するように圧入される。
【0030】
次に、図6に示すように、ターン部33cによって形成されるコイルエンド31とは反対側に位置する先端33dを互いに反対の周方向に折り曲げた後、異層の他の導体セグメント33の先端33d同士がTIG溶接によって接合され、この接合部33fにおいて結線される。このようにして形成された各導体セグメント33の接合部33fは、固定子鉄心32からの高さがほぼ同一に形成される。
【0031】
次に、各接合部33fが下向きになるように固定子2を配置して、例えば液体の絶縁材槽に各接合部33fを浸した後に引き上げ、この絶縁材を乾燥させることにより、各接合部33fに絶縁被膜が形成される。
このように、固定子巻線を構成する各導体セグメント33同士の接合をTIG溶接によって行うことによって、接合部33fの形状をエッジのない雫状の玉形状にすることができる。したがって、この接合部33fにおいて冷却風に混じって吸い込まれた埃や塵等の浮遊物が付着しにくい。特に、内扇式の車両用交流発電機1では、回転子3に取り付けられた冷却ファン12によって、この接合部33fの内周側からこの接合部33fの外側に形成されたフレーム4の吐出孔42に向けて冷却風が流れるため、この接合部33fにエッジがあると、冷却風に含まれる浮遊物がこのエッジ部分に堆積し、回転子3の回転が停止したときに吐出孔42から容易に進入する塩水や水等がこの堆積物にかかって絶縁不良を引き起こすおそれがあるが、本実施形態の固定子2ではこの接合部33fにエッジが生じないため、このようなおそれはない。
【0032】
また、ほぼU字状の導体セグメント33を用いることによって、固定子鉄心32の一方の端面側に導体セグメント33の全ての端部33dが配置されるため、TIG溶接が固定子鉄心32の一方の端面側において行われ、固定子鉄心32を反転させる等の工程が不要になるため、工程の簡略化が可能になる。また、ほぼ同一形状の導体セグメント33を用いているため、各接合部33fの高さがほぼ同一になり、その後に各接合部33fを絶縁処理する際に、絶縁材槽に全ての接合部33fを同時に浸すことが可能になる。このため、絶縁処理の工程を簡略化することができ、部品コストを下げることができる。また、接合部33fがエッジのない玉形状に形成されるため、絶縁処理の際にほぼ均一な厚さの絶縁被膜を形成することができる。したがって、接合部にエッジがある場合のように、エッジ部分において絶縁被膜が薄くなって部分的に絶縁不良が生じたり、このエッジ部分の絶縁皮膜を厚くするために絶縁処理の工程が複雑化する等の不都合を回避することができる。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、1スロット当たりの導体数が2本の場合を説明したが、1スロット当たりの導体数を増やすようにしてもよい。例えば、図7に示すように、固定子鉄心32に形成された各スロット135内に、4本の導体セグメント133を、スロット135の深さ方向に関してのみ配列して収容するようにしてもよい。図7では、絶縁皮膜を有する導体セグメント133を用い、複数の導体セグメント133とスロット135の内壁との間にはインシュレータ134が介装されている。このような構造においては、図8に示すような接合構造が採用できる。1つのスロット135に収容された4本の導体セグメント133は、周方向に向けて交互に延び出している。図8では、手前に図示された最外周が時計回り方向に延びており、最も奥に位置する最内周が反時計回り方向に延びている。そして、各導体セグメント133の端部133dは、所定ピッチ離れた別のスロット135から延びる他の導体セグメント133の端部133dと接合されてている。図8では、最内周の導体セグメント133と第2層の導体セグメント133とが接合され、第3層の導体セグメント133と最外層の導体セグメント133とが接合されている。したがって、複数の接合部133fは、内周側と外周側に2重の環状に配列され、各接合部133fが周方向および径方向の両方に関して互いに離間して配置される。また、それぞれの接合部133fの接合をTIG溶接によって行うことにより、各接合部133fは、図5(b)に示したようなエッジのない雫状の玉形状に形成される。
【0034】
したがって、それぞれの接合部133fを通して内周側から冷却風が流れた場合であっても、各接合部133fに埃や塵等の浮遊物が付着しにくく、付着した浮遊物に起因する絶縁不良の発生を防止することができる。特に、1つのスロット135に4本の導体セグメント133を収容した場合には、内周側と外周側に2列に接合部133fが配列され、しかもそれらが接近するため、これらの間の絶縁性の低下を防止することが必要であり、TIG溶接によって各接合部133fを玉形状に形成することは特に有効であるといえる。
【0035】
また、固定子2のスロット35の数を変更することなく小さな体格の車両用交流発電機1を実現する場合にも各接合部同士が接近するため、各接合部をTIG溶接によって形成することにより、エッジのない玉形状とすることは、各接合部間の絶縁状態を良好に保つ上で有効な手段であるといえる。
また、上述した実施形態では、固定子鉄心32の一方の側面側にターン部33cを有するほぼU字状の導体セグメント33を用いたが、このターン部33cで分離した折り返しのない導体セグメントを用い、この導体セグメントの両端部を接合するようにしてもよい。図9は、折り返しのない導体セグメントの形状を示す斜視図である。同図に示す導体セグメント233は、固定子鉄心32のスロット35内に挿入される直線部である内部導体233hと、この内部導体233hの両端において固定子鉄心32の軸方向両側に延びる外部導体233iとによって構成されている。各外部導体233iは、軸方向に対して所定の角度傾斜しており、図10に示すように、端部233dが異なるスロットに挿入された他の導体セグメント233の端部233dと接合されて結線がなされることにより、全体として固定子巻線が形成される。このような固定子巻線においては、軸方向の両端部に接合部233fが形成され、それぞれの接合部233fが回転子2の両端面に取り付けられた冷却ファン11、12によって内周側から冷却されることになるが、いずれの接合部233fもエッジのない玉形状を有しているため、冷却風に含まれる埃等の浮遊物が付着しにくく、この付着物に起因する絶縁不良の発生を防止することができる。
【0036】
また、接合部33fへ送風するための構成としては、2つの遠心方向送風型のファンを備えた上述の内扇式構造に加えて、1つのみ遠心方向送風型のファンを備えた内扇式構造としてもよい。また、接合部33fに向けて軸方向から風を当てる構成が採用されてもよい。また、本発明の接合部によると、いわゆる水冷構造においても接合部への異物の堆積、キャビテーションによる侵食、電気的化学的な腐食を低減する効果がある。
【0037】
また、導体セグメント33の線材の断面形状は、円形、楕円形、多角形などを採用してもよい。いずれの場合でも、2本の導体セグメントの端部に形成される接合部が、その線材を切断しただけの切断面よりも丸い玉形状にされることが重要である。
また、上述した実施形態では、各導体セグメント33の端部33d同士の接合をTIG溶接によって行ったが、非接触方式の他の溶接方法、例えばTIG溶接以外の各種のアーク溶接方法を用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の車両用交流発電機の全体構造を示す断面図である。
【図2】固定子巻線を構成する導体セグメントの斜視図である。
【図3】固定子の部分的な断面図である。
【図4】固定子の部分的な外観図である。
【図5】(a)は導体セグメントの接合前の端部を示す斜視図、(b)は導体セグメントの接合部の斜視図である。
【図6】固定子の両端面のコイルエンドの詳細を示す斜視図である。
【図7】各スロットに4本の導体セグメントが挿入された固定子の部分的な断面図である。
【図8】各スロットに4本の導体セグメントが挿入された固定子の部分的な斜視図である。
【図9】折り返しのない導体セグメントの形状を示す斜視図である。
【図10】図9に示した導体セグメントを用いて構成した固定子の部分的な外観図である。
【符号の説明】
1 車両用交流発電機
2 固定子
3 回転子
32 固定子鉄心
33 導体セグメント
33a 内部導体
33d 端部
33f 接合部
34 インシュレータ
35 スロット
4 フレーム
41 吐出孔
42 吸入孔
Claims (8)
- 回転子と、固定子鉄心およびこの固定子鉄心に装備された固定子巻線をなす電気導体を有する固定子と、前記回転子と前記固定子とを支持するフレームとを有する車両用交流発電機において、
前記電気導体は、端部が前記固定子上で接合された複数個の導体セグメントを有し、この接合部はエッジのない玉形状に形成されて、互いに離間して配置されると共に、その表面には電気絶縁用の樹脂被膜がほぼ均一な厚さをもって形成され、
前記接合部は前記固定子の内周側から冷却風を受け、この接合部を通して冷却風が流れるように配置され、
前記フレームには、前記冷却風が流れる孔が設けられることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1において、
前記導体セグメントは、ほぼU字状の導体セグメントを有することを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1または2のいずれかにおいて、
前記複数の導体セグメントの端部同志の接合は、非接触方式の溶接によって行われることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項3において、
前記非接触方式の溶接は、TIG溶接であることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記電気導体は、前記固定子鉄心に設けられたスロット内に径方向に沿って二列以上配設されたことを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記固定子上には複数の接合部が形成され、前記固定子の端面から前記接合部のそれぞれまでの高さが、ほぼ一定に設定されていることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1〜6のいずれかにおいて、
前記接合部は雫状の玉形状であることを特徴とする車両用交流発電機。 - 請求項1〜7のいずれかにおいて、
前記接合部が、線材を切断しただけの切断面よりも丸い玉形状であることを特徴とする車両用交流発電機。
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---|---|---|---|---|
JPS54129404A (en) * | 1978-03-31 | 1979-10-06 | Fujitsu Ltd | Manufacture of print rotor |
JPS54129403A (en) * | 1978-03-31 | 1979-10-06 | Fujitsu Ltd | Manufacture of print rotor |
JPS6163378U (ja) * | 1984-09-27 | 1986-04-30 | ||
JPH0744797B2 (ja) * | 1986-05-20 | 1995-05-15 | 日本電装株式会社 | 電機子コイル |
JP3376496B2 (ja) * | 1992-09-29 | 2003-02-10 | ミネベア株式会社 | プリントモータのロータ |
-
1998
- 1998-05-25 JP JP14300998A patent/JP3724951B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH11341730A (ja) | 1999-12-10 |
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