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JP3724026B2 - 車両用同期発電装置及びその励磁制御方法 - Google Patents

車両用同期発電装置及びその励磁制御方法 Download PDF

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JP3724026B2
JP3724026B2 JP31799495A JP31799495A JP3724026B2 JP 3724026 B2 JP3724026 B2 JP 3724026B2 JP 31799495 A JP31799495 A JP 31799495A JP 31799495 A JP31799495 A JP 31799495A JP 3724026 B2 JP3724026 B2 JP 3724026B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、同期発電機を用いた車両用発電装置に関し、詳しくは、同期発電機の固定子巻線に進相電流を給電する車両用発電装置及びその励磁制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用発電装置としては、通常、ロータに界磁コイルを有する三相同期発電機(いわゆるオルタネータ)を用い、その発電電圧を内蔵の三相全波整流器で整流してバッテリを充電している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、自動車のエンジンルームの省スペース化、高密度化のため、交流発電機の周辺温度がますます高くなる傾向にあり、界磁巻線式ロータを有する車両交流発電機は、使用頻度の高い低回転数域すなわちロータに固定された冷却ファンの能力が小さい領域で、界磁電流による発熱により界磁巻線の温度上昇を抑えることができず、界磁電流の低下、出力の低下、絶縁樹脂の耐久性の低下を招く可能性が生じた。
【0004】
上記した問題は、特に一般的なランデル形回転子では、コイルを囲包する如くポールコアがコイルの熱の放散を妨げる構成であるために、コイルに熱がこもり、昇温が著しいという問題があり、この形式の車両用交流発電機の小型軽量大出力化を図る場合、一層重大となった。
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、界磁コイル型のロータの温度上昇が抑止可能で低回転数域での出力も向上できる車両用同期発電装置及びその励磁制御方法を提供することを、その目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の構成は、界磁束発生用の界磁巻線が巻装される回転子及び発電出力発生用の固定子巻線が巻装される固定子を備える同期発電機と、該同期発電機の発電状態を制御する制御手段と、前記発電機の回転数に関連する物理量を検出する回転数検出手段とを備える車両用同期発電装置において、
前記制御手段が、前記発電機の所定の低回転数域にて前記固定子巻線へ進相電流を通電しかつ前記界磁巻線に界磁電流を通電することにより前記固定子巻線及び前記界磁巻線の両方により界磁束を形成し、かつ、前記発電機の所定の高回転数域にて前記進相電流を遮断乃至低減して前記界磁巻線により主として前記界磁束を形成する進相電流給電手段を備えることを特徴としている。
【0006】
本発明の第2の構成は、上記第1の構成において更に、前記進相電流給電手段が、前記高回転数域にて前記進相電流を遮断するものであることを特徴としている。
本発明の第3の構成は、上記第1又は第2の構成において更に、前記進相電流給電手段が、前記低回転数域の前記界磁電流を前記高い回転数域の前記界磁電流より低減するものであることを特徴としている。
【0007】
本発明の第4の構成は、上記第1乃至第3のいずれかの構成において更に、前記同期発電機の回転子がランデル型爪状鉄心を有するものであることを特徴としている。
本発明の第5の構成は、上記第1乃至第4のいずれかの構成において更に、前記進相電流給電手段は、半導体スイッチング素子で構成されるとともに複数相の前記固定子巻線の各出力端に接続される正逆両方向通電開閉回路と、該正逆両方向通電開閉回路を制御する制御回路とを有し、該制御回路が、前記半導体スイッチング素子の整流動作時の導通期間を調整して前記固定子巻線へ流入する方向へ前記進相電流を発生させるものであることを特徴としている。
【0008】
本発明の第6の構成は、上記第5の構成において更に、前記半導体スイッチング素子が、双方向導通素子からなることを特徴としている。
本発明の第7の構成は、上記第5の構成において更に、前記半導体スイッチング素子が、MOSFETからなることを特徴としている。
本発明の第8の構成は、上記第7の構成において更に、前記MOSFETが、SiCを素材とするものであることを特徴としている。
【0009】
本発明の第9の構成は、上記第5乃至第8のいずれかの構成において更に、前記同期発電機の回転子の回転位相角を検出する位相角検出手段を有し、前記進相電流給電手段が前記回転位相角に基づいて前記半導体スイッチング素子の整流動作時のターンオフ時点を制御するものであることを特徴としている。
本発明の第10の構成は、上記第1乃至第9のいずれかの構成において更に、前記所定の低回転数域と所定の高回転数域との境界回転数が、前記同期発電機の発電電圧が所定のバッテリ電圧値を超える前記同期発電機の立ち上がり回転数の2〜4倍の値に設定されていることを特徴としている。
【0010】
本発明の第11の構成は、上記第1乃至第10のいずれかの構成において更に、前記回転子の界磁巻線の温度に関連する物理量を検出する温度検出手段を備え、前記進相電流給電手段が、検出された前記物理量に基づいて前記温度が低い場合より高い場合に前記進相電流を増大するとともに前記界磁電流を低減するものであることを特徴としている。
【0011】
本発明の第12の構成は、上記第11の構成において更に、前記温度検出手段により検出された温度が所定値以上かどうかを判定する温度判定手段を有し、前記進相電流給電手段が、前記温度が所定値を超える場合に前記進相電流の給電を行うとともに前記界磁電流を低減し、前記温度が所定値以下の場合に前記進相電流の給電を低減乃至停止するものであることを特徴としている。
【0012】
本発明の第13の構成は、上記第1乃至第12の構成において更に、前記同期発電機は、三相以上の前記固定子巻線を有することを特徴としている。
本発明の第14の構成は、上記第5の構成において更に、前記電機子電流に関連する物理量を検出する電流検出手段を備え、前記制御回路が、前記電機子電流に関連する物理量に基づいて前記固定子巻線へ通電する進相電流の通電開始時点及び通電終了時点を決定するものであることを特徴としている。
【0013】
本発明の第15の構成は、同期発電機の界磁巻線に流れる界磁電流を制御して、固定子巻線より発生する発電出力を制御する車両用同期発電装置の励磁制御方法において、
前記同期発電機の回転数に関連する物理量を検出し、前記発電機の所定の低回転数域では前記固定子巻線へ進相電流を給電して前記固定子巻線から界磁束を発生させ、該固定子巻線の界磁束と前記界磁巻線に発生する界磁束とにより発電を行い、且つ、前記発電機の所定の高回転数域では前記固定子巻線への前記進相電流の通電を停止乃至低減して主として前記界磁巻線の界磁束により発電を行なうことを特徴としている。
【0014】
本発明の第1の構成は、上記第1の構成において更に、前記低回転数域の前記界磁電流を前記高い回転数域の前記界磁電流より低減することを特徴としている。
本発明の第1の構成は、界磁束発生用の界磁巻線が巻装される回転子及び発電出力発生用の固定子巻線が巻装される固定子を備える同期発電機と、各相の前記固定子巻線の出力端と高位直流電源端とを個別に接続する複数のハイサイドスイッチ及び各相の前記固定子巻線の出力端と低位直流電源端とを個別に接続する複数のローサイドスイッチを有する正逆両方向通電開閉回路と、前記ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチを断続制御して前記固定子巻線に通電される電機子電流を制御する制御回路と、前記電機子電流に関連する物理量を検出する電流検出手段とを備え、
前記制御回路が、前記電機子電流に関連する物理量に基づいて前記固定子巻線へ通電する進相電流の通電開始時点及び通電終了時点を決定することを特徴とするものであることを特徴とする車両用同期発電装置である。
【0015】
本発明の第1の構成は、上記第1の構成において更に、前記制御回路が、前記電流検出手段の出力値が所定値に達した時点から所定時間遅延後、前記ハイサイドスイッチ又はローサイドスイッチを導通又は遮断するものであることを特徴としている。
本発明の第19の構成は、上記第1の構成において更に、前記制御回路が、前記ハイサイドスイッチを流れる前記電機子電流が前記高位直流電源端へ流出する向きから前記固定子巻線へ流入する向きへ変化した時点から所定時間遅延して前記ハイサイドスイッチを遮断するものであることを特徴としている。
【0016】
本発明の第2の構成は、上記第1の構成において更に、前記制御回路が、前記ローサイドスイッチを流れる前記電機子電流が前記固定子巻線へ流入する向きから前記低位直流電源端へ流出する向きへ変化した時点から所定時間遅延して前記ローサイドスイッチを遮断するものであることを特徴としている。
本発明の第2の構成は、上記第1の構成において更に、前記制御回路が、前記制御回路が、前記ハイサイドスイッチを流れる前記電機子電流が前記高位直流電源端へ流出する向きから前記固定子巻線へ流入する向きへ変化した時点又は前記時点から所定時間遅延する時点にて前記ローサイドスイッチを導通するものであることを特徴としている。
【0017】
本発明の第2の構成は、上記第1の構成において更に、前記制御回路が、前記ローサイドスイッチを流れる前記電機子電流が前記固定子巻線へ流入する向きから前記低位直流電源端へ流出する向きへ変化した時点又は前記時点から所定時間遅延する時点にて前記ハイサイドスイッチを導通するものであることを特徴としている。
本発明の第2の構成は、上記第1の構成において更に、前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチがMOSFETからなり、前記電流検出手段が前記MOSFETとともに集積された低抵抗素子からなることを特徴としている。
【0018】
本発明の第24の構成は、上記第18の構成において更に、前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチがMOSFETからなり、前記電流検出手段が前記MOSFETとともに集積された低抵抗素子からなることを特徴としている。
【0019】
【作用及び発明の効果】
本発明の第1、第2、第3、第1及び第1の構成において、低回転数域では固定子巻線へ進相電流を給電し、かつ、界磁巻線に界磁電流を給電して進相電流により増強された界磁束(すなわち回転磁界)を発生する。一方、高回転数域では固定子巻線への進相電流を停止乃至削減して主として界磁電流による界磁束により発電を行なう。したがって、本発明によれば、低回転数域において上記進相電流により界磁束が増加され、その結果として、同一の発電出力を得るのに必要な界磁電流を低減でき、低回転数域における冷却が相対的に難しい界磁巻線の温度上昇を抑制できる。また、高回転数域においては固定子巻線の温度上昇を従来並みに抑えることもできる。
【0020】
本発明の第4の構成では、コイルを磁極鉄心でおおうための昇温が大きいランデル型爪状鉄心を有する回転子に対して上記界磁電流を減らし上記進相電流成分を増す制御を行うことにより、上記界磁電流の温度上昇の抑制効果が大きく、特にこの技術を適用した場合の有用性が大きい。
本発明の第5乃至第7の構成では、半導体スイッチング素子の整流動作時の導通期間を調整して固定子巻線へ流れ込む方向の進相電流を発生させるので、簡単に進相電流の給電が実現できる。
【0021】
例えば、三相の固定子コイルを備え、半導体スイッチング素子として双方向導通素子を用いた三相全波整流器においては、発電電流は発電相電圧のピーク位相角を中心として前後に所定の位相角度期間の幅を有し、この位相角度期間は、通常、発電相電圧から双方向導通素子の電圧降下を差し引いた差電圧がバッテリ電圧を上回る期間とされていた。これに対し、本構成では、上記差電圧がバッテリ電圧を下回るようになってもその後の所定の位相角度期間だけは双方向導通素子の導通を持続する。このようにすれば、発電相電圧のピーク位相角に対して所定位相角度期間だけずれた位相角位置にてバッテリから固定子コイルへ電流が流れる。この進相電流は、回転する界磁電流ベクトル(界磁束ベクトル)と同相成分を含むので、実質的に界磁束が増強されたと見做すことができる。
【0022】
また、半導体スイッチング素子がMOSFETの様な双方向導通素子からなるので、整流器を構成するインバータ回路は発電、充電制御用のスイッチング素子と進相電流給電用のスイッチング素子とを別個に備える必要がなく、回路構成を簡単化できる。
本発明の第8の構成では、上記MOSFETを高耐熱のSiC材にて形成するので、素子の冷却フィンを小型化できる。
【0023】
本発明の第9の構成では、回転子の回転位相角を検出して半導体スイッチング素子のターンオフ時点を制御しているので、進相電流の正確な位相制御を行うことができる。
本発明の第10の構成では、低回転数域と高回転数域との境界回転数を発電電圧が所定のバッテリ電圧を超える立ち上がり回転数(例えば、500rpm〜1500rpm)の2〜4倍に設定しているので、出力増加と発熱増加とのバランスを適切に制御できる。
【0024】
本発明の第11乃至第12のいずれかの構成では、界磁巻線の温度を検出して温度が低い場合より高い場合に進相電流を増大しかつ界磁電流を低減するので、出力電流の低下を抑止しつつ界磁巻線の温度を低減できる。また、温度が所定値以下のときに進相電流を停止するようにすることもできる。
本発明の第14、第17乃至第23のいずれかの構成では、進相電流通電制御を簡単に実施することができる。
【0025】
本発明の第19の構成では、上記第1の構成において更に、ハイサイドスイッチを流れる電流が流出する向きから流入する向きへ変化した時点から所定時間遅延してからこのハイサイドスイッチを遮断する。
このようにすれば、以下に説明する作用効果が得られる。
まず、固定子巻線へ流入する向きに進相電流である相電流が上記所定時間(例えば第5図におけるT )だけ流れ、この所定時間において、相電圧(ここで相電圧とはその相の固定子巻線の出力端の電位をいう)はまだ反転する前であるので、相電流が先に反転したことになり、その分、電流位相が電圧位相より進相され、これにより上述したように界磁束増加効果が得られる。
【0026】
また、この所定時間T2 が終了した時点t1 ’において、上記進相電流が通電されない場合には、相電圧は通常、低位直流電源端の電圧(図1では0V)より大きい値であり、上記進相電流を通電しない場合には、時点t1 ’後、相電流(進相電流)が低位直流電源端から固定子巻線へ流れ込むことはない。
しかし、所定時間T2 の間、ハイサイドスイッチから固定子巻線へ進相電流を流入させると、時点t1 ’におけるハイサイドスイッチの遮断時に各固定子巻線に発生する逆起電力がこの相の固定子巻線の出力端の電位すなわちこの相の相電圧を低下させる向きに発生し、この逆起電力の分だけ相電圧が低下して相電圧Vaが低位直流電源端の電位より低下し、その結果として、進相電流が低位直流電源端からオンしているローサイドスイッチ又はこのローサイドスイッチと並列接続されたローサイドのダイオードを通じてこの相の固定子巻線に流入することになる。
【0027】
言い換えれば、進相電流非給電時には流れない所定時間T2 の間の進相電流により固定子巻線に電磁エネルギが蓄積され、この電磁エネルギが時点t1 ’以後に放出されると考えられる。この時点t1 ’以後の進相電流も電流波形を進相状態側に歪めるので、進相電流として界磁束を増強し、更に、この時点t1 ’以後の進相電流は実際に高位直流電源端から回収される。
【0028】
結局、図4の非進相制御モード時と、図5の進相制御モード時とを比較すると、所定時間T の間、進相電流を通電することにより、発電に有効な界磁束を増強するとともに、1周期中の固定子巻線から高位直流電源端に電流が流出する期間が増大し、発電能力が増大することがわかる。
本発明の第2の構成では、上記第1の構成において更に、ローサイドスイッチを流れる電流が固定子巻線へ流入する向きからそれから流出する向きへ変化した時点から所定時間遅延してからこのローサイドスイッチを遮断する。
【0029】
このようにすれば、上記第19の構成で説明したと同じ作用及び効果により発電能力が増大する。
なお、上述した所定時間(進相電流給電時間)の最大値は回転数に依存する最長時間(最大遅延時間)をもつことは容易にわかる。また、この最大遅延時間は各相の電機子電流の1周期(電気角2π)が回転数に応じて変化するため、回転数の増減に反比例的に変化することもわかる。更に、回転数の増大とともに各相の発電電圧の立ち上がりが早くなるので、回転数が増大すると、最大遅延時間は更に一層短縮される。したがって、最大遅延時間(最長進相電流給電期間)と回転数との関係を示すマップを予め制御回路に記憶しておき、この制御回路に回転数を導入してこの回転数に対して最大遅延時間を求めるとともに、算出遅延時間がこの最大遅延時間を超える場合には遅延時間をこの最大遅延時間に固定することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
(第1の実施例)
本発明の車両用発電装置の一実施例を図1に示すブロック図及び図2に示す三相同期発電機100の断面図を参照して説明する。
この車両用発電装置は、図1のブロック図に示すように、三相同期発電機100と、その交流発電電流を整流する三相全波整流器(整流器ともいう)11と、レギュレータ7とからなる。この三相全波整流器11及びレギュレータ7にて、本発明でいう進相電流給電手段(制御手段)を構成している。
【0031】
三相同期発電機100は、図2に示すように、ドライブフレーム1及びリアフレーム2を有し、ドライブフレーム1及びリアフレーム2は軸受3a、3bを介してロータ4を回転自在に支持している。ドライブフレーム1にはロータ4の外周を囲包してステータ5が固定され、ステータ5の電機子コイル5a〜5cで生じた発電電流はMOSFETで構成された整流器11により整流される。ロータ4の界磁コイル4cに通電される界磁電流はレギュレータ7により制御され、ロータ4のポールコア4eの両端には冷却用ファン4a、4bが取り付けられている。
【0032】
この三相同期発電機100は、良く知られているように、界磁コイル4cに界磁電流を通電し、プーリ8を介しエンジン(図には表示せず)によりロータ4を回転することにより、ステータ5の内周側に回転磁界が発生し電機子コイル5a〜5cに三相交流電圧が誘導される。
三相全波整流器11は、Si−MOSFET11a〜11fを三相ブリッジ接続したインバータ回路からなり、この三相全波整流器11は周知であり、その構造説明は省略する。三相全波整流器11の高位直流出力端はバッテリ9の高位端及び電気負荷10の+端に接続され、三相全波整流器11の低位直流出力端はバッテリ9の低位端及び電気負荷10の他端とともに接地されている。なお、上記Si−MOSFETに代えて、SiとCの化合物であるSiC材料にてMOSFETを構成してもよく、より高温下でも使用できるため冷却フィンを小型にできる。
【0033】
レギュレータ7は、マイコン構成を有し、バッテリ電圧VBを所定の発電電圧値に一致するよう界磁電流Ifの導通率をPWM制御するとともに、各Si−MOSFET11a〜11fから個別に入力する後述の電圧降下信号Pa〜Pfに基づいてゲート電圧信号Ga〜Gfを形成し、各Si−MOSFET11a〜11fのゲート電極に個別に印加する。なお、70は界磁温度検出器であり、発電機に取り付けられ、界磁巻線の温度に相当する温度信号を検出する。
【0034】
次に、本実施例の動作原理を前もって簡単に説明する。
本実施例では、低回転数域において、後述する所定のタイミングでレギュレータ7からインバータ回路11へゲート電圧信号Ga〜Gfを出力して、ステータコイル5a〜5cに進相電流を流し、この進相電流に起因する電機子反作用の増磁作用により界磁束が増加し、発電電圧及び出力電流が増加する。更に、この出力増加した分だけ界磁電流を低減し、界磁コイル4cの発熱を低減し、出力を低下することなくロータコイル4cの温度上昇を抑圧する。
【0035】
三相全波整流器11のa相のインバータを図3を参照して説明する。
ハイサイドスイッチであるSi−MOSFET11a及びローサイドスイッチであるSi−MOSFET11dはそれぞれNチャンネルタイプであり、互いに直列接続されている。Si−MOSFET11aは、発電時のドレイン領域である電機子コイル側のN型領域と、その発電時のソース領域であるバッテリ側のN型領域と、ゲート電極114a直下のPウエル領域とを有し、これらN型領域とPウエル領域との間のPN接合が寄生ダイオードを形成している。
【0036】
本実施例では、Si−MOSFET11aのチャンネル直下のPウエル領域の電位設定のためにこのPウエル領域が電機子コイル側のN型領域と短絡接続されており、更にこの電機子コイル5a側のN型領域は電流検出用の低抵抗113aを通じて電機子コイル5aに接続されている。なお、この低抵抗は、チップ上に絶縁膜を介して所定抵抗率の半導体層又は金属配線層などをパターニングして形成したものである。
【0037】
同様に、Si−MOSFET11dのチャンネル直下のPウエル領域の電位設定のためにこのPウエル領域が接地端側のN型領域と短絡接続されており、更にこの接地端側のN型領域は電流検出用の低抵抗113aを通じて接地されている。他の相のSi−MOSFET11b、11e、11c、11fも同様の低抵抗を有し、各Si−MOSFET11a〜11fは、電機子コイル側のN型領域と低抵抗との接続端子Pa〜Pfを有している。寄生ダイオード112a、112dは発電電流をバッテリ9に給電する際の電流経路にもなる。
【0038】
したがって、相電圧Vaと接続端子Paの電位との差からSi−MOSFET11aがターンオンしている場合のチャンネル電流を検出することができる。同様に、各Si−MOSFET11b〜11fのチャンネル電流が検出できる。なお、ゲート電圧は充分に高く、Si−MOSFET11a〜11fは非飽和動作領域(すなわち、チャンネルが空乏層でピンチオフされない動作モード)で用いられる。
【0039】
次に、三相全波整流器11の各Si−MOSFET11a〜11fの開閉タイミングについて、説明する。
(進相電流給電を実施しない場合)
まず、進相電流給電を実施しない場合を説明する。図4は電機子コイル5aの相電圧Vaのタイミングチャートを示す。
【0040】
相電圧Vaを出力するa相のハイサイドスイッチであるSi−MOSFET11aの制御は以下のように行われる。そのターンオンは、電機子コイル5aの相電圧Vaがバッテリ電圧VB及び他の相電圧Vb、Vcより高いかどうかを調べ、高い場合にオンする。ターンオフは相電圧Vaがバッテリ電圧VBより低くなった時点に行う。他の相のハイサイドスイッチであるSi−MOSFET11b、11cの開閉制御も同じように行う。
【0041】
次に、a相のローサイドスイッチであるSi−MOSFET11dの制御は以下のように行われる。そのターンオンは、電機子コイル5aの相電圧Vaが接地電圧V及び他の相電圧Vb、Vcより低いかどうかを調べ、低い場合にオンする。ターンオフは相電圧Vaが接地電圧より高くなった時点に行う。他の相のローサイドスイッチであるSi−MOSFET11e、11fの開閉制御も同じように行う。
【0042】
(進相電流給電を実施する場合)
次に、進相電流給電を実施する場合を説明する。図5は電機子コイル5aの相電圧Vaのタイミングチャートを示す。
この実施例では、ハイサイドスイッチである各Si−MOSFET11aのターンオンタイミングは、その相電流が負から正になる時点、すなわち低抵抗113dの電圧降下Vpsdが負から正になる時点t2 よりT4 (=T2 )だけ遅れた時点t2 ’(=t0 )に実施され、他のハイサイドスイッチである各Si−MOSFET11b、11cのターンオンタイミングも同様である。また、ローサイドスイッチである各Si−MOSFET11dのターンオンタイミングは、その相電流が正から負になる時点、すなわち低抵抗113aの電圧降下Vpsaが正から負になる時点t1 よりT2 だけ遅れた時点t1 ’に実施され、他のローサイドスイッチである各Si−MOSFET11e、11fのターンオンタイミングも同様である。
【0043】
一方、各Si−MOSFET11a〜11fのターンオフタイミングは、本実施例では、ターンオンタイミングから略180度位相期間後まで延長している。すなわち、Si−MOSFET11aのターンオフはSi−MOSFET11dのターンオンと同時又はその直前に実施され、Si−MOSFET11dのターンオフはSi−MOSFET11aのターンオンと同時又はその直前に実施される。
【0044】
このようにすれば、このターンオフ時点の遅延により進相電流成分がバッテリ9から各電機子コイル5a、5b、5cに給電され、これにより界磁が増強される。例えば、Si−MOSFET11aは、図5に示すように、t1に達してもOFFせず、期間T2だけOFFタイミングを遅らせる。同様にSi−MOSFET11dのOFFタイミングはt2 からT4(=T2)だけ遅らせたt2 ' とされる。
【0045】
このようにすれば、バッテリ9から電機子コイル5a〜5cへ電流を引き込むことができ、これにより増磁作用を生むα(図5参照)だけ位相の進んだ電流がステータコイル5aに供給されることになる。ここで充電期間T1(=T3)とOFF遅延期間T2との和は電気角で180°以下にする必要がある。これら一連の制御をb相には電気的に120°遅らせて、c相には電気的に120°進ませて制御することで3相の進相制御が可能となる。
【0046】
この時、同時に増加した界磁束を元に戻すために界磁電流Ifを減少させる制御を行わなければならないが、バッテリ電圧VBと界磁巻線温度θrを逐次モニタしながら制御を行う。
本実施例では相電圧Vaを検出し、その周波数から回転子回転数を算出し、前記制御が必要な回転数域であれば、界磁巻線温度θrの上昇と共に界磁電流Ifを減少させるため界磁電流断続用スイッチングトランジスタ(図示せず)のデューティ比を小さくする。
【0047】
同時にバッテリ電圧VBの低下と共に遅延期間T2(=T4)を大きくしていく。この時、素子のON時間は電気角で180度以下にしなければならない。本例ではON時間は180度である。この制御を界磁巻線温度θr、バッテリ電圧VBが安定するまで継続する。
また、算出された回転数が前記制御を必要としない回転数域であれば、直ちに非進相制御モード(前記遅延期間T2、T4を電気角で0度とする制御モード。)にセットし、且つバッテリ電圧VBに基づいて従来の界磁電流制御に切り換える。
【0048】
上記制御の結果、固定子コイル5a〜5cは進相電流による相電流増加に伴い温度上昇するが、固定子コイル5a〜5cの温度がピークとなる回転数N2は界磁コイル4cの温度がピークとなる回転数N1に比べ高回転側であるため(図6参照)、界磁コイル4cの温度が問題となる回転数では固定子コイル5a〜5cの絶縁材料の耐熱には余裕があるため問題はない。又、固定子コイル5a〜5cの温度上昇がピークとなる回転数では界磁コイルの冷却風が充分発生しているため界磁電流を元に戻しても温度上昇は従来並みである。ちなみに、本実施例に於いては3000rpm以下で上述した進相電流給電、及び、界磁電流低減の制御を行っている。ここで、進相制御を行うか否かの境界回転数は、例えば発電電圧が所定のバッテリ電圧(通常13.5V)を超える立上り回転数(500rpm〜1500rpm)の2〜4倍の値に設定すればよく、この値は、出力の増加と発熱の増加とのバランスより決定すればよい。なお、界磁巻線温度θrが所定値(例えば170℃)以下の場合、進相電流の給電を停止してもよい。
【0049】
以上により出力低下を招くことなく界磁コイル4cの温度を低減でき、絶縁劣化の問題が解決できる。図6に本実施例の実験結果を参考として示す。界磁コイル4cの温度を約摂氏15℃だけ低下することができた。尚、上記した進相制御及び非進相制御はレギュレータ7から各Si−MOSFET11a〜11fのゲート電極への開閉指令電圧のタイミング制御で行われる。
【0050】
この実施例1の詳細な制御を図7のフローチャートを参照して説明する。このフローチャートはレギュレータ7により遂行される。
まず、非進相モードで運転して各相電圧Va〜Vcを検出し(100)、この電圧(又は波形)より回転数を算出する(102)。次に、この回転数に基づいて、具体的に説明すれば回転数が所定のしきい値回転数以下かどうかにより進相制御が必要か否かを判定する(104)。以下であれば進相制御が必要であるとしてステップ105に進んで回転数に基づいて最大遅延時間(最長進相電流給電時間)Tmaxをマップから読出し、その後、界磁コイル温度θr検出し(106)、θrが上記所定値を超えれば界磁電流Ifを所定値に減少させる(108、110)。次に、バッテリ電圧VBを検出し(112)、VBが所定値(例えば、13.5V)より低下すれば遅延期間T2=T4を小さい一定値ΔTだけ増加させて(114、116)、ステップ130に進む。VBが所定値以上なら非進相モードにセットして(118)。ステップ100にリターンする。
【0051】
ステップ130では、遅延期間T2=T4の今回値が最大遅延時間Tmaxを超えたかどうかを調べ、超えていなければステップ100にリターンし、超えていれば遅延期間T2=T4を最大遅延時間Tmaxにセットし(132)、進相モードにセットして(134)、ステップ100にリターンする。
一方、ステップ104にて進相制御不要と判定すれば、非進相制御モード(遅延期間T2、T4を電気角で0度に制御する制御モード)にセットし(120)、かつ、バッテリ電圧VBに基づいて従来の界磁電流制御に切り換える(122、124、126)。
【0052】
前記非進相モードはまた、MOSFET111a〜111fを全てOFFし、MOSFETの寄生ダイオード112a〜112fにて三相全波整流しても同様の効果が得られる。
本実施例では界磁コイル温度、及びバッテリ電圧を検出してそれぞれの検出値により制御を行っているが予め発電機のそれぞれの回転数での界磁コイル温度上昇が最低になるように、遅延期間T2、T4、界磁流Ifを算出しておきマップ情報として与えておいても同様の効果が得られる。
【0053】
図8のフローチャートにより、非進相モードを行うサブルーチンを説明する。なお、このサブルーチンは、図7のルーチンにより非進相モードが選択されている場合に所定間隔毎に割り込んで実行される割り込みルーチンである。
まず、x相の相電圧Vaがバッテリ電圧VBを超えるかどうかを調べ(200)、超えればハイサイドスイッチ11aをオンし(202)、以下であればハイサイドスイッチ11aをオフする(204)。次に、x相の相電圧Vaがバッテリ低位端の電位である0Vより小さいかどうかを調べ(206)、小さければローサイドスイッチ11dをオンし(208)、小さくなければローサイドスイッチ11dをオフする(210)。
【0054】
次に、y相の相電圧Vbがバッテリ電圧VBを超えるかどうかを調べ(212)、超えればハイサイドスイッチ11bをオンし(214)、以下であればハイサイドスイッチ11bをオフする(216)。次に、y相の相電圧Vbがバッテリ低位端の電位である0Vより小さいかどうかを調べ(218)、小さければローサイドスイッチ11eをオンし(220)、小さくなければローサイドスイッチ11eをオフする(222)。
【0055】
次に、z相の相電圧Vcがバッテリ電圧VBを超えるかどうかを調べ(224)、超えればハイサイドスイッチ11cをオンし(226)、以下であればハイサイドスイッチ11cをオフする(228)。次に、z相の相電圧Vcがバッテリ低位端の電位である0Vより小さいかどうかを調べ(230)、小さければローサイドスイッチ11fをオンし(232)、小さくなければローサイドスイッチ11fをオフする(234)。そして、メインルーチン(図7)にリターンする。
【0056】
図9及び図10のフローチャートにより、進相制御モードを行うサブルーチンを説明する。
なお、このサブルーチンは、図7のルーチンのステップ134により進相モードが選択された場合に所定間隔毎に割り込んで実行される割り込みルーチンである。
ある。
【0057】
図9はゼロクロス点を判定するルーチンであり、図10はMOSFET11a〜11fを開閉制御するルーチンである。
まず、このルーチンを実行するのが初回か2回目以降かを判定するフラグF2が1かどうかを調べ(290)、2回目以降(F2=1)であれば、ステップ300に飛び、初回(F2=0)であれば、各MOSFET11a〜11fの導通(オン)動作だけを図8のルーチンを用いて行い(292)、フラグF2を1にセットしてステップ300に進む(294)。なお、フラグF2は電源電圧投入時に0にリセットされるものとする。
【0058】
ステップ300では、まず、ローサイドスイッチ11dがオンしている期間においてローサイドスイッチ11dの電流すなわち電機子電流ixが負から正へ、すなわち固定子巻線5aへ流入する向きから低位直流電源端(0V)へ流出する向きに変化したかどうかを調べ、変化したら内蔵タイマdをスタートし(302)、変化していなければ、ハイサイドスイッチ11aがオンしている期間においてハイサイドスイッチ11aの電流すなわち電機子電流ixが正から負へ、すなわち固定子巻線5aから高位直流電源端へ流出する向きから固定子巻線5aへ流入する向きに変化したかどうかを調べ(304)、変化したら内蔵タイマaをスタートし(306)、変化しなければステップ308へ進む。
【0059】
ステップ308では、まず、ローサイドスイッチ11eがオンしている期間においてローサイドスイッチ11eの電流すなわち電機子電流iyが負から正へ、すなわち固定子巻線5bへ流入する向きから低位直流電源端(0V)へ流出する向きに変化したかどうかを調べ、変化したら内蔵タイマeをスタートし(310)、変化していなければ、ハイサイドスイッチ11bがオンしている期間においてハイサイドスイッチ11bの電流すなわち電機子電流iyが正から負へ、すなわち固定子巻線5bから高位直流電源端へ流出する向きから固定子巻線5bへ流入する向きに変化したかどうかを調べ(312)、変化したら内蔵タイマbをスタートし(314)、変化しなければステップ316へ進む。
【0060】
ステップ316では、まず、ローサイドスイッチ11fがオンしている期間においてローサイドスイッチ11fの電流すなわち電機子電流izが負から正へ、すなわち固定子巻線5cへ流入する向きから低位直流電源端(0V)へ流出する向きに変化したかどうかを調べ、変化したら内蔵タイマfをスタートし(318)、変化していなければ、ハイサイドスイッチ11cがオンしている期間において、ハイサイドスイッチ11cの電流すなわち電機子電流izが正から負へ、すなわち固定子巻線5cから高位直流電源端へ流出する向きから固定子巻線5cへ流入する向きに変化したかどうかを調べ(320)、変化したら内蔵タイマcをスタートし(322)、変化しなければステップ400へ進む。
【0061】
ステップ400では、タイマdがオーバーしたかどうかすなわち所定の遅延時間ΔT=T2 =T4 (図5参照)だけ経過したかどうかを調べ、オーバーしていなければ直接にステップ404に進み、オーバーしていれば、ローサイドスイッチ11dをオフし、ハイサイドスイッチ11aをオンし、タイマdを0にリセットしてからステップ404へ進む。
【0062】
ステップ404では、タイマaがオーバーしたかどうかすなわち所定の遅延時間ΔT=T2 =T4 (図5参照)だけ経過したかどうかを調べ、オーバーしていなければ直接にステップ408に進み、オーバーしていれば、ローサイドスイッチ11dをオンし、ハイサイドスイッチ11aをオフし、タイマaを0にリセットしてからステップ408へ進む。
【0063】
ステップ408では、タイマeがオーバーしたかどうかすなわち所定の遅延時間ΔT=T2 =T4 (図5参照)だけ経過したかどうかを調べ、オーバーしていなければ直接にステップ412に進み、オーバーしていれば、ローサイドスイッチ11eをオフし、ハイサイドスイッチ11bをオンし、タイマeを0にリセットしてからステップ412へ進む。
【0064】
ステップ412では、タイマbがオーバーしたかどうかすなわち所定の遅延時間ΔT=T2 =T4 (図5参照)だけ経過したかどうかを調べ、オーバーしていなければ直接にステップ416に進み、オーバーしていれば、ローサイドスイッチ11eをオンし、ハイサイドスイッチ11bをオフし、タイマbを0にリセットしてからステップ416へ進む。
【0065】
ステップ416では、タイマfがオーバーしたかどうかすなわち所定の遅延時間ΔT=T2 =T4 (図5参照)だけ経過したかどうかを調べ、オーバーしていなければ直接にステップ420に進み、オーバーしていれば、ローサイドスイッチ11fをオフし、ハイサイドスイッチ11cをオンし、タイマfを0にリセットしてからステップ420へ進む。
【0066】
ステップ420では、タイマcがオーバーしたかどうかすなわち所定の遅延時間ΔT=T2 =T4 (図5参照)だけ経過したかどうかを調べ、オーバーしていなければメインルーチン(図7)にリターンし、オーバーしていれば、ローサイドスイッチ11fをオンし、ハイサイドスイッチ11cをオフし、タイマcを0にリセットしてからメインルーチンにリターンする。
【0067】
なお上記実施例では、各スイッチ11a〜11fはそれぞれ180度期間だけオンするようにしたが、オン期間は180度未満としてもよい。この場合には、各相インバータ回路においてそれぞれハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチの両方がオフする期間が生じるので、この場合には、以下のように制御を行えばよい。
【0068】
例えば、a相について説明すれば、ハイサイドスイッチ11a及びローサイドスイッチ11dがオフしている期間に、a相の固定子巻線5aの相電圧Vaがバッテリ電圧VBより高くなればハイサイドスイッチ11aをオンする。一方、オンしたハイサイドスイッチ11aのオフは、上記と同様に相電圧Vaがバッテリ電圧VBより低くなってから所定の遅延時間ΔT後、実施すればよい。
【0069】
同様に、ハイサイドスイッチ11a及びローサイドスイッチ11dがオフしている期間に、相電圧Vaが接地電位より低くなればローサイドスイッチ11dをオンする。一方、オンしたローサイドスイッチ11dのオフは、上記と同様に相電圧Vaが接地電圧0Vより高くなってから所定の遅延時間ΔT後、実施すればよい。b、c相の制御も同じである。なお、上記素子開閉制御はa相だけに行い、b、c相のスイッチ11b、11c、11e、11fの制御はa相スイッチングタイミンを120度ずらして行うこともできる。
【0070】
(実施例2)
図11に第2の実施例の車両用交流発電機のブロック回路図を示す。この発電機はロータの磁極位置を検出する磁極位置検出器16を備える他は実施例1(図1参照)のブロック回路図と同じである。なお、この実施例では、各Si−MOSFET17a〜17fは上記電流検出用の低抵抗を持たない点がSi−MOSFET11a〜11fと異なっている。
【0071】
すなわち、本実施例では、図12に示す通り磁極位置検出器16によりロータの磁極位置を検出する。tmは磁極位置検出器16の角度位置にロータのN極が来た時点であり、tm’は磁極位置検出器16の角度位置にロータのS極が来た時点であり、tm−tm’が電気角180度に該当する。
したがって、Si−MOSFET17aのターンオン時点(位相角)は時点tmから予め求めて記憶した所定の位相角差δ1に基づいて決定し、同様に、Si−MOSFET17dのターンオン時点(位相角)は時点tm’から上記所定の位相角差δ1に基づいて決定する。
【0072】
同様に、Si−MOSFET17bのターンオン時点(位相角)は時点tmから予め求めて記憶した所定の位相角差δ2(=δ1+電気角120度)に基づいて決定し、同様に、Si−MOSFET17eのターンオン時点(位相角)は時点tm’から上記所定の位相角差δ2に基づいて決定する。
同様に、Si−MOSFET17cのターンオン時点(位相角)は時点tmから予め求めて記憶した所定の位相角差δ3(=δ1−電気角120度)に基づいて決定し、同様に、Si−MOSFET17fのターンオン時点(位相角)は時点tm’から上記所定の位相角差δ3に基づいて決定する。なお、この実施例でも、各Si−MOSFET17a〜17fのターンオン期間はほぼ電気角180度にされている。
【0073】
このようにすれば、正確に進相角を決定することができる。上記した進相制御及び非進相制御はレギュレータ7から各Si−MOSFET17a〜17fのゲート電極への開閉指令電圧のタイミング制御で行われる。
この実施例2の制御を図13のフローチャートを参照して説明する。なお、このフローチャートはレギュレータ7により遂行される。
【0074】
図13のフローチャートのステップ番号100番台のステップは図7と同じであるので、その説明は省略し、相違点であるステップ番号1000番台のステップについて説明する。
ステップ1010にて、磁極位置検出器16から角度信号を読み込み、以後のステップでは図7と同様の処理を行う。また、バッテリ電圧VBが所定値以下であれば(114)、所定の遅延角δに所定値Δδを加えて(1160)、ステップ1300へ進む。なおこの実施例では実施例1と同様に、同一相のハイサイドスイッチとローサイドスイッチとは逆動作させている。また、本実施例での非進相モードとはδ1=90°である。
【0075】
ステップ1050では、回転数に基づいて可能な最大遅延角δmaxをマップから求める。
ステップ1300では、遅延角δの今回値が最大遅延角δmaxを超えたかどうかを調べ、超えていなければステップ100にリターンし、超えていれば遅延遅延角δを最大遅延角δmaxにセットし(1320)、進相制御モードにセットして(1340)、ステップ100にリターンする。
【0076】
一方、ステップ104にて進相制御不要と判定すれば、非進相制御モード(遅延角度δ1を電気角で90度に制御する制御モード)にセットし(120)、かつ、バッテリ電圧VBに基づいて従来の界磁電流制御に切り換える(122、124、126)。
なお、実施例2における進相モードの実施は、各スイッチ17a〜17fのオン、オフタイミングが位相角で決定されるので、この位相角タイミングで制御すればよく、その詳細説明は省略する。
【0077】
なお、上記説明では、三相同期発電機について説明したが、その代わりに三相以上の多相同期発電機にも、本発明の進相電流給電方式の発電技術を採用できることは、もちろんである。
また、上記説明した進相電流の内の無効電流成分はバッテリから回収されたり、持ち出したりするので、発熱損失を無視すればバッテリ容量の消費とはならない。また、上記実施例では、各Si−MOSFETのターンオン期間を180電気位相角としたが、それ以下の電気位相角度範囲でもよいことは当然である。
(実施例3)
この実施例の発電装置を図14を参照して説明する。図14の装置は、図1の三相全波整流器11のMOSFET11a〜11fを、実施例2と同様に、電流検出用の低抵抗素子を内蔵しないMOSFET17a〜17fに置換しただけのものである。
【0078】
以下、非進相制御自体は図8の制御方式を採用できるので、この実施例の進相電流制御の方式を前述の図9、図10のフローチャートを参照して以下に説明する。この実施例では、MOSFET17a〜17fの開閉タイミングを、MOSFET17a〜17fのソース・ドレイン間の電位差に基づいて決定する点が実施例1と異なっている。なお、図15は本実施例の各電機子電流のゼロクロス点を判定するルーチンであり、ステップ300’、304’、308’、312’、316’、320’以外は図9と同じである。なお、MOSFET17a〜17fを開閉制御するルーチンは図10と同様である。
【0079】
まず、このルーチンを実行するのが初回か2回目以降かを判定するフラグF2が1かどうかを調べ(290)、2回目以降(F2=1)であれば、ステップ300に飛び、初回(F2=0)であれば、各MOSFET17a〜17fの導通(オン)動作だけを図8のルーチンを用いて行い(292)、フラグF2を1にセットしてステップ300に進む(294)。なお、フラグF2は電源電圧投入時に0にリセットされるものとする。
【0080】
ステップ300’では、まず、ローサイドスイッチ17dがオンしている期間において相電圧Vaが0V以上になったかどうかにより、ローサイドスイッチ17dの電流すなわち電機子電流ixが負から正へ、すなわち固定子巻線5aへ流入する向きから低位直流電源端(0V)へ流出する向きに変化したかどうかを調べ、変化したら内蔵タイマdをスタートし(302)、変化していなければ、ハイサイドスイッチ17aがオンしている期間において相電圧Vaが出力電圧VB以下になったかどうかにより、ハイサイドスイッチ17aの電流すなわち電機子電流ixが正から負へ、すなわち固定子巻線5aから高位直流電源端へ流出する向きから固定子巻線5aへ流入する向きに変化したかどうかを調べ(304’)、変化したら内蔵タイマaをスタートし(306)、変化しなければステップ308’へ進む。
【0081】
ステップ308’では、まず、ローサイドスイッチ17eがオンしている期間において相電圧Vbが0V以上になったかどうかにより、ローサイドスイッチ17eの電流すなわち電機子電流iyが負から正へ、すなわち固定子巻線5bへ流入する向きから低位直流電源端(0V)へ流出する向きに変化したかどうかを調べ、変化したら内蔵タイマeをスタートし(310)、変化していなければ、ハイサイドスイッチ17bがオンしている期間において相電圧Vbが出力電圧VB以下になったかどうかにより、ハイサイドスイッチ17bの電流すなわち電機子電流iyが正から負へ、すなわち固定子巻線5bから高位直流電源端へ流出する向きから固定子巻線5bへ流入する向きに変化したかどうかを調べ(312’)、変化したら内蔵タイマbをスタートし(314)、変化しなければステップ316’へ進む。
【0082】
ステップ316’では、まず、ローサイドスイッチ17fがオンしている期間において相電圧Vcが0V以上になったかどうかにより、ローサイドスイッチ17fの電流すなわち電機子電流izが負から正へ、すなわち固定子巻線5cへ流入する向きから低位直流電源端(0V)へ流出する向きに変化したかどうかを調べ、変化したら内蔵タイマfをスタートし(318)、変化していなければ、ハイサイドスイッチ17cがオンしている期間において相電圧Vcが出力電圧VB以下になったかどうかにより、ハイサイドスイッチ17cの電流すなわち電機子電流izが正から負へ、すなわち固定子巻線5cから高位直流電源端へ流出する向きから固定子巻線5cへ流入する向きに変化したかどうかを調べ(320’)、変化したら内蔵タイマcをスタートし(322)、変化しなければ図10のステップ400へ進む。ステップ400以後の処理は図10と同様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車両用発電装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】図1の三相同期発電機100の断面図である。
【図3】図1の三相全波整流器11の1相分を示す等価回路図である。
【図4】図1のSi−MOSFET11a、11fのオンタイミングを示す非進相制御時のタイミングチャートである。
【図5】図1のSi−MOSFET11a、11dのオンタイミングを示す進相制御時のタイミングチャートである。
【図6】同じ三相同期発電機を進相制御した場合と、進相制御しない場合とにおける界磁コイル温度とオルタ回転数とコイル温度との関係の実験結果を示すグラフである。
【図7】図1の実施例の制御を示すフローチャートである。
【図8】実施例1の非進相モードの実行ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】実施例1の進相モードの実行ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】実施例1の進相モードの実行ルーチンを示すフローチャートである。
【図11】実施例2の車両用発電装置のブロック回路図である。
【図12】図8のSi−MOSFET17a、17dのオンタイミングを示す進相制御時のタイミングチャートである。
【図13】図8の実施例の制御を示すフローチャートである。
【図14】実施例3の車両用発電装置のブロック図である。
【図15】実施例3の進相モードの実行ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
100は三相同期発電機、11a〜11fはSi−MOSFET(半導体スイッチング素子)、11は三相全波整流器(正逆両方向通電開閉回路であり、制御手段の一部をなす)、7はレギュレータ(制御回路であり、制御手段の残部をなす)。

Claims (23)

  1. 界磁束発生用の界磁巻線が巻装される回転子及び発電出力発生用の固定子巻線が巻装される固定子を備える同期発電機と、該同期発電機の発電状態を制御する制御手段と、前記発電機の回転数に関連する物理量を検出する回転数検出手段とを備える車両用同期発電装置において、
    前記制御手段は、前記発電機の所定の低回転数域にて前記固定子巻線へ進相電流を通電しかつ前記界磁巻線に界磁電流を通電することにより前記固定子巻線及び前記界磁巻線の両方により界磁束を形成し、かつ、前記発電機の所定の高回転数域にて前記進相電流を遮断乃至低減して前記界磁巻線により主として前記界磁束を形成する進相電流給電手段を備えることを特徴とする車両用同期発電装置。
  2. 前記進相電流給電手段は、前記高回転数域にて前記進相電流を遮断するものである請求項1記載の車両用同期発電装置。
  3. 前記進相電流給電手段は、前記低回転数域の前記界磁電流を前記高い回転数域の前記界磁電流より低減するものである請求項1又は2記載の車両用同期発電装置。
  4. 前記同期発電機の回転子はランデル型爪状鉄心を有するものである請求項1乃至3のいずれか記載の車両用同期発電装置。
  5. 前記進相電流給電手段は、半導体スイッチング素子で構成されるとともに複数相の前記固定子巻線の各出力端に接続される正逆両方向通電開閉回路と、該正逆両方向通電開閉回路を制御する制御回路とを有し、該制御回路は、前記半導体スイッチング素子の整流動作時の導通期間を調整して前記固定子巻線へ流入する方向へ前記進相電流を発生させるものである請求項1乃至4のいずれか記載の車両用同期発電装置。
  6. 前記半導体スイッチング素子は、双方向導通素子からなる請求項5記載の車両用同期発電装置。
  7. 前記半導体スイッチング素子は、MOSFETからなる請求項5記載の車両用同期発電装置。
  8. 前記MOSFETは、SiCを素材とするものである請求項7記載の車両用同期発電装置。
  9. 前記同期発電機の回転子の回転位相角を検出する位相角検出手段を有し、前記進相電流給電手段は前記回転位相角に基づいて前記半導体スイッチング素子の整流動作時のターンオフ時点を制御するものである請求項5乃至8のいずれかに記載の車両用同期発電装置。
  10. 前記所定の低回転数域と所定の高回転数域との境界回転数は、前記同期発電機の発電電圧が所定のバッテリ電圧値を超える前記同期発電機の立ち上がり回転数の2〜4倍の値に設定されている請求項1乃至9のいずれかに記載の車両用同期発電装置。
  11. 前記回転子の界磁巻線の温度に関連する物理量を検出する温度検出手段を有し、前記進相電流給電手段は、検出された前記物理量に基づいて前記温度が低い場合より高い場合に前記進相電流を増大するとともに前記界磁電流を低減するものである請求項1乃至10のいずれかに記載の車両用同期発電装置。
  12. 前記温度検出手段により検出された温度が所定値以上かどうかを判定する温度判定手段を有し、前記進相電流給電手段は、前記温度が所定値を超える場合に前記進相電流の給電を行うとともに前記界磁電流を低減し、前記温度が所定値以下の場合に前記進相電流の給電を低減乃至停止するものである請求項11記載の車両用同期発電装置。
  13. 前記同期発電機は、三相以上の前記固定子巻線を有する請求項1乃至12記載の車両用同期発電装置。
  14. 前記電機子電流に関連する物理量を検出する電流検出手段を備え、
    前記制御回路は、前記電機子電流に関連する物理量に基づいて前記固定子巻線へ通電する進相電流の通電開始時点及び通電終了時点を決定するものであることを特徴とする請求項5記載の車両用同期発電装置
  15. 同期発電機の界磁巻線に流れる界磁電流を制御して、固定子巻線より発生する発電出力を制御する車両用同期発電装置の励磁制御方法において、
    前記同期発電機の回転数に関連する物理量を検出し、前記発電機の所定の低回転数域では前記固定子巻線へ進相電流を給電して前記固定子巻線から界磁束を発生させ、該固定子巻線の界磁束と前記界磁巻線に発生する界磁束とにより発電を行い、且つ、前記発電機の所定の高回転数域では前記固定子巻線への前記進相電流の通電を停止乃至低減して主として前記界磁巻線の界磁束により発電を行なうことを特徴とする車両用同期発電装置の励磁制御方法。
  16. 前記低回転数域の前記界磁電流を前記高い回転数域の前記界磁電流より低減する請求項1記載の車両用同期発電装置の励磁制御方法。
  17. 界磁束発生用の界磁巻線が巻装される回転子及び発電出力発生用の固定子巻線が巻装される固定子を備える同期発電機と、
    各相の前記固定子巻線の出力端と高位直流電源端とを個別に接続する複数のハイサイドスイッチ及び各相の前記固定子巻線の出力端と低位直流電源端とを個別に接続する複数のローサイドスイッチを有する正逆両方向通電開閉回路と、
    前記ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチを断続制御して前記固定子巻線に通電される電機子電流を制御する制御回路と、
    前記電機子電流に関連する物理量を検出する電流検出手段とを備え、
    前記制御回路は、前記電機子電流に関連する物理量に基づいて前記固定子巻線へ通電する進相電流の通電開始時点及び通電終了時点を決定することを特徴とするものであることを特徴とする車両用同期発電装置。
  18. 前記制御回路は、前記電流検出手段の出力値が所定値に達した時点から所定時間遅延後、前記ハイサイドスイッチ又はローサイドスイッチを導通又は遮断するものである請求項1記載の車両用同期発電装置。
  19. 前記制御回路は、前記ハイサイドスイッチを流れる前記電機子電流が前記高位直流電源端へ流出する向きから前記固定子巻線へ流入する向きへ変化した時点から所定時間遅延して前記ハイサイドスイッチを遮断するものである請求項1記載の車両用同期発電装置。
  20. 前記制御回路は、前記ローサイドスイッチを流れる前記電機子電流が前記固定子巻線へ流入する向きから前記低位直流電源端へ流出する向きへ変化した時点から所定時間遅延して前記ローサイドスイッチを遮断するものである請求項1記載の車両用同期発電装置。
  21. 前記制御回路は、前記ハイサイドスイッチを流れる前記電機子電流が前記高位直流電源端へ流出する向きから前記固定子巻線へ流入する向きへ変化した時点又は前記時点から所定時間遅延する時点にて前記ローサイドスイッチを導通するものである請求項19記載の車両用同期発電装置。
  22. 前記制御回路は、前記ローサイドスイッチを流れる前記電機子電流が前記固定子巻線へ流入する向きから前記低位直流電源端へ流出する向きへ変化した時点又は前記時点から所定時間遅延する時点にて前記ハイサイドスイッチを導通するものである請求項1記載の車両用同期発電装置。
  23. 前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチはMOSFETからなり、前記電流検出手段は前記MOSFETとともに集積された低抵抗素子からなる請求項1記載の車両用同期発電装置。
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