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JP3722975B2 - Ni基耐熱合金の性能回復処理方法 - Google Patents

Ni基耐熱合金の性能回復処理方法 Download PDF

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JP3722975B2 JP05574098A JP5574098A JP3722975B2 JP 3722975 B2 JP3722975 B2 JP 3722975B2 JP 05574098 A JP05574098 A JP 05574098A JP 5574098 A JP5574098 A JP 5574098A JP 3722975 B2 JP3722975 B2 JP 3722975B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高温下での使用により強度及び延性等の性能が劣化したNi基耐熱合金の性能回復処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガスタービンやジェットエンジンの動翼等の高温部材として、Ni3 (Al、Ta、Ti)のγ’金属間化合物を主体とする第2相の析出硬化及びMoやW等による固溶強化を兼ね備えるNi基耐熱合金が使用されている。これらのNi基耐熱合金の中に特開平6−57359号公報に開示されているNi基耐熱合金(以下、合金Aとする)及びインコネル738の商品名で市販されているNi基耐熱合金(以下、合金Bとする)がある。合金A及びBの組成を表1に示す。
【0003】
【表1】
Figure 0003722975
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この種のNi基耐熱合金は、高温での長時間使用による熱履歴により第2相(金属間化合物、炭化物など)の粗大化あるいは不純物元素の拡散・濃縮を生じて強度及び延性が低下し、これらの合金を使用した部材は使用に耐えきれなくなり、最終的には割れを生じるに至って廃却せざるを得なくなる。また、これらのNi基耐熱合金は一般に非常に高価である。本発明は前記従来技術の実情に鑑み、高温での長時間使用により強度、延性などの性能が劣化し廃却を余儀なくされた翼材などの高温部材に適用して、その性能を使用前の状態に回復させ、再度の使用を可能とし、資源の有効利用や環境保全に寄与することができる性能回復処理方法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく、高温での長時間使用により性能が劣化したNi基耐熱合金の性能回復処理方法について鋭意検討の結果、これらの性能劣化材を所定の温度で2段階の溶体化処理を行い、続いて時効処理を施すことにより性能回復が可能なことを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、熱履歴を受けて性能が劣化した重量%でCr:15.7〜16.3%、Co:8〜9%、Mo:1.5〜2%、W:2.4〜2.8%、Ta:1.5〜2%、Al:3.2〜3.7%、Ti:3.2〜3.7%、C:0.09〜0.13%、B:0.007〜0.012%、Zr:0.03〜0.08%、Nb:0.6〜1.1%、Fe:0.05%以下、Mn:0.02%以下、Si:0.3%以下、S:0.015%以下を含有し(但し、Al+Ti:6.5〜7.2%)、残部がNi及び不可避的不純物よりなるNi基耐熱合金の性能回復処理方法であって、前記性能の劣化したNi基耐熱合金に1200±25℃の温度で1〜5時間保持後炉冷する第1段溶体化処理を施し、続いて1140±25℃の温度で1〜5時間保持後空冷する第2段溶体化処理を施し、さらに835±25℃の温度で24±2時間保持する時効処理を施すことを特徴とするNi基耐熱合金の性能回復処理方法である。
【0007】
【発明の実施の態様】
本発明の対象となる熱履歴を受けて性能が劣化したNi基耐熱合金は前記のインコネル738の商品名で市販されているNi基耐熱合金(合金B)であり、その組成は、前記の表1に示す化学成分範囲のものである。また、その製造時の一般的な熱処理条件は1120℃で2時間保持後、室温まで空冷し、その後850℃で24時間保持後、室温まで空冷(1120℃×2h/空冷+850℃×24h/空冷と表示する)するものである。
【0008】
これらのNi基耐熱合金を、これらを使用する高温部材の通常の使用温度である700〜1000℃の温度域で長時間加熱すると、粒界、粒内に析出していた第2相(金属間化合物、炭化物を含む)が成長・粗大化して強度及び延性が著しく低下し、継続使用ができなくなる。このため、本発明の方法においては、強度、延性などの性能が劣化した合金を構成要素とする翼などの部材に、先ずこれらの第2相が固溶するような高温に保持する第1段の溶体化処理を施してこれらの第2相を再固溶させた後、第2段目の溶体化処理と時効処理とを施し、第2相を再析出させ、強度や延性などの性能を未使用(未加熱)材と同程度に回復させようとするものである。
【0009】
この第2相の再固溶のための第1段目の溶体化処理は、温度があまりに高いと粒界あるいはデンドライト境界を局部的に溶融する(部材が変形する場合がある)ため、また、温度が低いと第2相が十分固溶せず、次の第2段目の溶体化処理と時効処理での強度と延性の付与が期待できなくなる。したがって、第1段目の溶体化処理(再固溶)の温度は1200±25℃(1175〜1225℃)とするのが適切であり、これはまた炉冷制御の可能な温度範囲でもある。保持温度は部材の大きさや炉況にもよるが、1時間以下であると元素の拡散が十分に行われないため性能回復が不十分となる。また5時間以上に長くしても回復は飽和状態を示す。したがって、保持時間はコスト面も考慮して1〜5時間とするのが適切である。
【0010】
一方2段目の溶体化処理及び時効処理は第2相を再析出させる工程であるが、温度と保持時間の組み合わせによっては第2相が粗大あるいは微細になってしまい、未使用(未加熱)材と同等の強度と延性が得られない。このため、適度な大きさの第2相を適切な量析出させて、未使用(未加熱)材と同等の強度と延性を得るようにすることが必要である。それには適切な条件で第2段目の溶体化処理及び時効処理を行う必要があり、第2段目の溶体化処理温度については1140±25℃(1115〜1165℃)が、時効処理温度については従来から経験的、一般的に使用されている温度である835±25℃(810〜860℃)がそれぞれ適切である。保持時間については第2段目の溶体化処理は1〜5時間、時効処理は24±2時間(22〜26時間)が適切である。
【0011】
【実施例】
以下実施例により本発明の方法をさらに具体的に説明する。
(実施例)
表2に示す化学成分組成を有する合金Bの丸棒(直径15mm、長さ90mm)を実験材とし、これを900℃で10000時間加熱して性能が劣化したものについて、所定の条件で1段溶体化処理又は2段溶体化処理後に時効処理を施し、合金Bについて、2種類の再熱処理材を作製した。なお、溶体化処理の保持時間はいずれも2時間で一定とし、第1段目溶体化処理の加熱温度のみを実験パラメータとした。また、時効処理はいずれも850℃で24時間の一定とした。得られた再熱処理材に未加熱材及び900℃で10000時間加熱した長時間加熱材を加えた試験材についてミクロ組織、硬さ、引張及びクリープ破断試験を行った。使用した試験材の区分及び再熱処理条件等を表3にまとめて示す。また、試験結果を表4〜表5に示す。
【0012】
【表2】
Figure 0003722975
【0013】
【表3】
Figure 0003722975
【0014】
【表4】
Figure 0003722975
【0015】
【表5】
Figure 0003722975
【0016】
合金Bの試験
表4に示すように、合金Bの未加熱材(試験材No.1)の硬さはHV384、室温での引張強さ及び伸びは87.2kg/mm2 及び7.8%である。これに900℃×10000時間の長時間加熱を施すと(試験材No.2)、硬さはHV325に、室温での引張強さ及び伸びは81.5kg/mm2 及び1.7%にそれぞれ低下し、また、室温での0.2%耐力及び絞り、650℃での0.2%耐力、引張強さ、伸び及び絞りも未加熱材のそれらに比べて低下した。
【0017】
表5に示すように760℃×50.5kg/mm2 における未加熱材(試験材No.1)のクリープ破断時間は183時間、クリープ破断伸びは7.6%である。これに900℃×10000時間の長時間加熱を施すと(試験材No.2)、クリープ破断時間は96時間に、クリープ破断伸びは3.1%にそれぞれ低下し、760℃×50.5kg/mm2 における絞り、980℃×11.5kg/mm2 におけるクリープ破断時間、クリープ破断伸び及び絞りも未加熱材のそれらに比べて低下した。
【0018】
このように強度と延性が低下した900℃×10000時間加熱材(試験材No.2)に2段溶体化処理と時効処理を施し、試験材No.4を作製した。この試験材No.4について硬さ試験、引張試験及びクリープ破断試験を行った結果を表4及び表5に示す。これらから、高温長時間加熱(使用)により強度や延性などの性能が低下した合金Bに、1200℃×2時間/炉冷+1120℃×2時間/空冷+850℃×24時間/空冷の熱処理を施すことにより、機械的性質及びクリープ破断性質が、未加熱材(試験材No.1)と同等以上に回復することがわかる。
【0019】
表3の試験材No.3は本発明材であるNo.4と同様に2段階溶体化処理を行ったものであり、表4及び5に示すように第1段目の溶体化処理温度が1150℃と低いため、延性の回復はまだ十分ではない。
【0020】
【発明の効果】
(1)本発明の方法にしたがって熱処理を施すことにより、熱履歴を受けて第2相の粗大化により強度と延性などの性能が低下した表1に示す組成を有するNi基耐熱合金の性能を、熱履歴を受ける前の状態に回復させることができる。(2)これにより、従来は廃却しなければならなかった部材の再使用が可能となり、高価な金属元素の節約、有効利用、さらには環境保全にも寄与することができる。

Claims (1)

  1. 熱履歴を受けて性能が劣化した重量%でCr:15.7〜16.3%、Co:8〜9%、Mo:1.5〜2%、W:2.4〜2.8%、Ta:1.5〜2%、Al:3.2〜3.7%、Ti:3.2〜3.7%、C:0.09〜0.13%、B:0.007〜0.012%、Zr:0.03〜0.08%、Nb:0.6〜1.1%、Fe:0.05%以下、Mn:0.02%以下、Si:0.3%以下、S:0.015%以下を含有し(但し、Al+Ti:6.5〜7.2%)、残部がNi及び不可避的不純物よりなるNi基耐熱合金の性能回復処理方法であって、前記性能の劣化したNi基耐熱合金に1200±25℃の温度で1〜5時間保持後炉冷する第1段溶体化処理を施し、続いて1140±25℃の温度で1〜5時間保持後空冷する第2段溶体化処理を施し、さらに835±25℃の温度で24±2時間保持する時効処理を施すことを特徴とするNi基耐熱合金の性能回復処理方法。
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