JP3722322B2 - 化粧シート及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化粧シートに関し、特に、建築物の内装、建具の表面化粧、車両内装等に用いるのに適した化粧シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、上記のような用途に用いる化粧シートとしては、ポリ塩化ビニルシートを使用し、これに印刷、エンボス加工等で装飾処理した化粧シート(特公昭28−5036号公報、特公昭58−14312号公報等参照)が用いられてきた。該ポリ塩化ビニルシートを使用した化粧シートにあっては、耐熱性が不足するとか、可塑剤のブリード(滲出)により表面の耐汚染性が悪いという欠点があった。
【0003】
近年、これに代わるものとして、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂シートを使用した化粧シート(特開昭54−62255号公報参照)が提案されている。該ポリオレフィン系樹脂シートを使用した化粧シートは、通常アイソタクチックの樹脂が用いられ、結晶性の高いシートとなるため、上記のごときポリ塩化ビニルシート特有の欠点は改善されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来提案されている上記のようなポリオレフィン系樹脂シートを用いた化粧シートは、工業的な大量生産に適した建築物の内外装材、建具、家具等の表面化粧用、車両内装用等に使用するにあたって、下記▲1▼〜▲7▼に示すよう問題点を有しており、必ずしも満足できるものではない。
【0005】
▲1▼透明性が不足する。
【0006】
▲2▼耐熱性が不足する。
【0007】
▲3▼耐候性が悪い。
【0008】
▲4▼柔軟性がない。
【0009】
▲5▼印刷やラミネート時のインキ、接着剤等との接着力が不足する。
【0010】
▲6▼耐衝撃性が弱く、Vカット加工時に亀裂破断する。特に、加熱軟化〜エンボス版押圧〜冷却というエンボス加工時の熱履歴により、結晶化が進行し、シートが脆弱化する傾向が強まる。
【0011】
▲7▼結晶化度が高いため、エンボス加工条件が非常に狭い。
【0012】
化粧シートの製造においては、特に、基材シート上に表面シートが貼り合わされて積層されることが多いが、このような積層構造の化粧シートにおいては、上記▲5▼の表面シートと基材シート間の接着力の問題や、印刷時のインキの接着力が問題となる。なお、化粧シートではないが、積層シートの接着性を改善するために表面シートの裏面に易接着層を設けることは、既に知られている(特開昭55−111226号公報)。
【0013】
さらに、積層構造の化粧シートの製造においては、例えば、シートを共押出で成形する際に発生する調整ロスや、ラミネート後にシート幅方向の両端部分(両耳)の切除により発生する耳ロス等の材料は、異種材料の積層物であるため、リサイクルができないという問題がある。
【0014】
そこで本発明は、基材シート上に表面シートが設けられた化粧シートにおいて、その製造時に発生するロスをリサイクル可能なものとし、しかも前記▲1▼〜▲7▼の従来の化粧シートの問題点を解決し、特に層間密着性の優れた化粧シートを提供すること、及び該化粧シートの製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
前記問題点を解決するために、本発明の化粧シートは、最表面層、中間層および最下層の3層で構成された表面シートが、基材シート上に押出成形により設けられ、且つ該表面シート及び/又は該基材シートに装飾処理が施されてなる化粧シートであって、該化粧シートの表面シートにおける、最表面層の材料が、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマー、中間層の材料が、最表面層と最下層の混合成分、及び最下層の材料が、易接着型ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする。
【0016】
本発明の化粧シートは、3層で構成された表面シートに施す装飾処理にはエンボス加工が適用でき、さらにエンボス加工が施された表面シートにワイピイング加工が施されてもよい。
【0017】
本発明の化粧シートに使用される前記易接着型ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーには、前記最表面層に使用されるポリプロピレン系熱可塑性エラストマーに対して後記する極性官能基を含む化合物を共重合させて得たものが使用される。本発明の化粧シートに使用される前記ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーには、アタクチック性ポリプロピレン10〜90重量%とアイソタクチック性ポリプロピレン90〜10重量%からなる混合物が使用される。
【0018】
本発明の化粧シートの製造方法は、最表面層、中間層および最下層からなる3層の表面シートと、基材シートの貼合せをインラインで行うことができる。
【0019】
また、本発明の化粧シートの製造方法は、最表面層、中間層および最下層からなる3層の表面装飾を有する表面シートと、基材シートの貼合せをオフラインで行うことができる。
【0020】
また、本発明の化粧シートの製造方法は、最表面層、中間層および最下層からなる3層の表面装飾を有する表面シートと、基材シートの貼合せをインライン同時エンボスにより行うことができる。
【0021】
また、本発明の化粧シートの製造方法は、最表面層、中間層および最下層からなる3層の表面装飾を有する表面シートと、基材シートの貼合せをオフライン同時エンボスにより行うことができる。
【0022】
前記した本発明の化粧シートの各製造方法において、表面シートと基材シートの貼合せに際し、接着性向上のために予め基材シートに易接着プライマー層及び/又は感熱接着剤層を設けてもよい。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳細に説明する。
【0024】
表面シート:
本発明の化粧シートに使用される表面シートは、最表面層、中間層、最下層の3層からなる。
【0025】
(1)最表面層
表面シートにおける最表面層には、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーを用いることにより、柔軟性、耐衝撃性、耐熱性が付与されるので、加工性が増し、Vカット時に亀裂破断が生ずるという不都合を防止でき、また、加熱軟化〜エンボス版押圧〜冷却というエンボス加工時の熱履歴に対しても、シートが脆弱化するのを防止できる。
【0026】
最表面層に用いられるポリプロピレン系熱可塑性エラストマーは、破断伸び(TB )が400%以上、好ましくは500〜700%であり、100%伸長後の残留伸び(PS100 )が80%以下、好ましくは50〜75%であり、及び破断時応力(MB )と降伏時応力(MY )との比MB /MY が1.0以上、好ましくは1.5〜3.5の範囲であることが重要である。これらの力学的特性が前記範囲を逸脱すると本発明の目的が十分に達成されない。
【0027】
該ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーは、アタクチック性ポリプロピレン10〜90重量%とアイソタクチック性ポリプロピレン90〜10重量%からなる組成物とすることが好ましい。
【0028】
前記ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーに含まれるアタクチック性ポリプロピレンには、沸騰ヘプタンに可溶性であって、数平均分子量(Mn)が25,000以上、好ましくは30,000〜60,000の範囲にあり、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnが7以下、好ましくは2〜6の範囲にあるものが用いられる。この数平均分子量(Mn)が25,000未満のものやMw/Mnが7を越えるものでは得られる樹脂における該アタクチックポリプロピレンの力学的特性への寄与効果が十分に発揮されず、得られる樹脂の破断応力(MB )と降伏時応力(MY )との比が1.0未満になったり、100%伸長後の残留伸び(PS100 )が80%を越えたりして、本発明の目的が達成されない。
【0029】
上記アタクチックポリプロピレンはポリプロピレンの単独重合体であってもよいし、プロピレン単位と40重量%以下、好ましくは30重量%以下の他の炭素数2〜30のα−オレフィン単位とを含有するプロピレン共重合体であってもよい。また、このアタクチックポリプロピレンは1種類で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
このようなアタクチックポリプロピレンは公知の方法(例えば、特開昭63−243106号公報)によって製造することができる。具体的には、(イ)マグネシウム、チタン、ハロゲン原子及び電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(ロ)有機アルミニウム化合物、及び(ハ)次の式(1)、
【0031】
【化1】
(式中のR1 は炭素数1〜20のアルキル基、R2 は炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基又はニトロ基、mは1〜6の整数、nは0又は1〜(6−m)の整数である)
で表されるアルコキシ基含有芳香族化合物の組み合わせからなる触媒の存在下、プロピレンを重合させることにより、所望のアタクチックポリプロピレンを得ることができる。
【0032】
前記ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーに含まれるアイソタクチック性ポリプロピレンには、メルトインデックスが0.1〜4g/10分の沸騰ヘプタン不溶性の結晶性アイソタクチックポリプロピレンを用いることが好ましい。このメルトインデックスが0.1g/10分未満では溶融特性が低く、シート成形が困難になるし、4g/10分を越えると機械的強度が不十分となってVカット加工が良好に行えなくなる。
【0033】
このアイソタクチックポリプロピレンは、アイソタクチックの立体規則性を有するプロピレン単独重合体であってもよいし、該立体規則性を有するプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。この共重合体に用いられる他のα−オフレフィンとしては、炭素数2〜8のもの、例えば、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などが好ましく、中でもエチレン及びブテン−1が好適である。また、該共重合体としては、前記の他のα−オレフィン単位を通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下含有するブロック共重合体やランダム共重合体が用いられる。
【0034】
このアイソタクチックポリプロピレンの好ましいものとしては、プロピレン単独重合体、及びエチレン単位1〜30重量%、好ましくは3〜25重量%を含有するプロピレンとエチレンとのランダム共重合体又はブロック共重合体が挙げられる。このようなアイソタクチックポリプロピレンの製造方法については特に制限はなく、従来結晶性ポリプロピレンの製造方法に慣用されている方法の中から任意の方法を選択して用いることができる。
【0035】
本発明で使用する最表面層のポリプロピレン系熱可塑性エラストマーは、1種類用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。また、前記アタクチックポリプロピレン(A成分)と前記アイソタクチックポリプロピレン(B成分)の比は、A成分の含有量が10〜90重量%、好ましくは25〜80重量%で、B成分の含有量は90〜10重量%、好ましくは75〜20重量%になるような割合で用いられる。該A成分の含有量が10重量%未満では樹脂の降伏時応力(MY )が大きくなりすぎて、破断時応力(MB )と降伏時応力(MY )との比MB /MY 1.0未満となり、かつ100%伸長後の残留伸び(PS100 )も80%より大きくなって、本発明の目的が達せられないし、一方90重量%を越えると破断時応力(MB )が小さくなりすぎて、該MB /MY が1.0未満となり、かつ機械的強度が低下し、本発明の目的が達せられない。
【0036】
(2)最下層
表面シートにおける最下層には、易接着型ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーを用いることにより、表面シートと基材シートとの密着性を改善すると共に、表面シートにおける各層の密着性を向上させることができる。
【0037】
このような易接着型ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーには、表面シートの最表面層に使用されるポリプロピレン系熱可塑性エラストマーに対して極性官能基を含む化合物を混合したものが使用される。該易接着型ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーを共重合させることにより、特に積層シートである表面シートにおける密着性を改善させることができる。該極性官能基を含む化合物には、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸等の官能基を有する化合物が挙げられる。これらのエラストマー濃度の範囲は1〜25モル%が好ましい。
【0038】
(3)中間層
中間層の材料には、前記最表面層に使用されるポリプロピレン系熱可塑性エラストマーと前記最下層に使用される易接着型ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーを混合したものが使用される。また、共押出により表面シートを製造する際に発生する調製ロス、シート幅方向の両端部分(両耳)の切除により発生する耳ロスを回収し、中間層の材料にリサイクル使用することができる。この中間層は、最表面層の熱可塑性エラストマーと最下層の熱可塑性エラストマーの各成分が混合されているので、最表面層と最下層の間にこの中間層を介在させることにより、最表面層と最下層が直接接合されるよりも接着強度が高くなるというメリットがある。
【0039】
基材シート:
本発明の化粧シートに使用される基材シートには、主原料が高密度ポリエチレン、熱可塑性エラストマー、着色剤、及び無機充填剤、隠蔽性顔料等が含まれることが望ましい。基材シートに含まれる高密度ポリエチレンとしては、好ましくは、比重が0.94〜0.95のポリエチレンであって、低圧法で得られる結晶化度が高く、分子に枝分かれ構造の少ない高分子である高密度ポリエチレンがハードセグメントとして用いられる。
【0040】
基材シートに含まれる熱可塑性エラストマーとしては、ジエン系ゴム、水素添加ジエン系ゴム、オレフィンエラストマー等のゴム成分がソフトセグメントとして用いられる。水素添加ジエン系ゴムは、ジエン系ゴム分子の二重結合の少なくとも一部分に水素原子を付加させてなるもので、ポリオレフィン系樹脂(本発明においては、高密度ポリエチレン)の結晶化を抑え、柔軟性をアップさせる。ジエン系ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム等がある。オレフィンエラストマーとしては、2種類又は3種類以上のオレフィンと共重合しうるポリエンを少なくとも1種加えた弾性共重合体であり、オレフィンはエチレン、プロピレン、α−オレフィン等が使用され、ポリエンとしては、1,4ヘキサジエン、環状ジエン、ノルボルネン等が使用される。好ましいオレフィン系共重合体ゴムとしては、例えばエチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム、エチレン−ブタジエン共重合体ゴム等のオレフィンを主成分とする弾性共重合体が挙げられる。
【0041】
熱可塑性エラストマーの添加量としては、基材シート中に10〜60重量%、好ましくは30重量%程度である。10重量%より低いと一定荷重時伸度の変化が急峻になり過ぎ、また、破断時伸度、耐衝撃性の低下が生じ、60重量%より高いと透明性、耐候性及び耐クリープ性の低下が生じる。
【0042】
基材シートに含まれる無機充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等の粉末が用いられる。添加量としては、基材シート中に5〜60重量%程度、好ましくは30重量%程度である。5重量%より低いと耐クリープ変形性及び易接着性の低下が生じ、60重量%より高いと破断時伸度及び耐衝撃性の低下が生じる。
【0043】
基材シートに含まれる着色剤は、基材シートに化粧シートとして必要な色彩を持たせるためのものであり、チタン白、亜鉛藍、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー等の有機顔料、あるいは染料、アルミニウム、真鍮等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸亜鉛等の箔粉からなる真珠光沢顔料等が用いられる。着色は透明着色、不透明(隠蔽)着色いずれでも可であるが、一般的には、被着体を隠蔽するために不透明着色が好ましい。
【0044】
基材シートには、さらに必要に応じて、熱安定剤、難燃剤、ラジカル捕捉剤等を添加してもよい。熱安定剤は、フェノール系、サルファイト系、フェニルアルカン系、フォスファイト系、アミン系等公知のものであり、熱加工時の熱変色等の劣化の防止性をより向上させる場合に用いられる。
【0045】
基材シートに含まれる難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の粉末が用いられ、これらは、難燃性を付与する必要がある場合に添加する。
【0046】
以上の材料を適宜ブレンドしたものをカレンダー製法等の常用の方法により製膜して不透明着色基材シートを得る。前記のように、得られる基材シートは化粧シートの基材シートに求められる前記▲1▼〜▲7▼の条件を満足する。基材シートの厚みは50〜300μm程度、好ましくは100μm程度である。
【0047】
基材シートの表面には、好ましくは、易接着性樹脂の塗布、コロナ放電処理、プラズマ処理等の易接着処理が施される。本明細書において、「易接着性」とは、易接着性樹脂の塗布のみならず、コロナ放電処理や、プラズマ処理、溶剤処理等の各種表面処理によって得られた易接着性表面が付与される場合も含む。
【0048】
易接着層:
基材シートの表面と表面シートとの接着性向上のために易接着層(プライマー層、或いはアンカー層ともいう)を設けることが好ましい。易接着層としては、アクリル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、2液硬化ポリエステル、ポリウレタン、2液硬化ポリウレタン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が使用でき、特に、2液硬化ポリエステル、2液硬化ポリウレタンが望ましい。
【0049】
例えば、易接着層に使用できるアクリルとしては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなるアクリル樹脂(ただし、ここで(メタ)アクリルとはアクリル又はメタアクリルを意味する)等が用いられる。
【0050】
また例えば、易接着層に使用できるポリウレタンとしては、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とする2液硬化型ポリウレタンを挙げることができ、該ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が用いられる。また、前記イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(ないしは脂環族)イソシアネートが用いられる。
【0051】
装飾処理:
本発明の化粧シートに用いられる基材シート及び/又は表面シート上には適宜の装飾処理が施されている。基材シート上に装飾処理を施す場合には直接又は、前記易接着層を介して装飾処理を形成することができる。装飾処理には、模様の印刷、エンボス加工(加熱プレス)、ヘアライン加工等による凹凸模様賦形等であってもよく、さらに、凹凸模様の凹部に公知のワイピング法によって、着色インキを充填することもできる。
【0052】
模様印刷としては、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷等公知の印刷法を用いインキ、或いは塗料にて模様を形成することができる。模様としては、木目模様、石目模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、或いは全面ベタ等があげられる。
【0053】
インキ或いは塗料には、バインダー樹脂として、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂等を用い、一種又は二種以上混合して用いる。
【0054】
基材シートに直接印刷する場合は、バインダー樹脂として塩素化ポリオレフィン、ポリウレタン等が接着性の点で好ましいが、易接着プライマーを適当に選択して層形成すれば、その他のバインダー樹脂を用いても十分な接着性を与える。但し、耐摩耗性の点で、2液硬化型ウレタン樹脂をバインダー樹脂とすることが好ましい。
【0055】
エンボス加工としては、基材シートを加熱軟化させ、エンボス版で加圧、賦形し、冷却固定して形成するもので、公知の枚葉式、或いは輪転式のエンボス機が用いられる。凹凸形状としては、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等である。
【0056】
感熱接着剤層:
基材シートの表面と表面シートとの接着を行うには、感熱接着剤層を介して接着されることが、共押出等の手段による工業的な大量生産方法に適した化粧シートの製造方法とする点において必要である。
【0057】
感熱接着剤層に使用できる接着剤には、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ゴム等の接着剤が挙げられ、また、密着強度は落ちるが、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の化合物からなるイソシアネート系アンカーコートも用いることができる。
【0058】
化粧シートの製造方法:
(1)基材シートの調製法
図1は、表面シートと貼り合わされるべき基材シートの調製法の1例を示し、基材シート1(図1a)を用意し、該基材シート1上に易接着プライマーをコートすることにより易接着層2とし(図1b)、さらにその上に絵柄インキにより印刷することにより絵柄インキ層3とし(図1c)、さらにその上に感熱接着剤をコートすることにより感熱接着剤層4として装飾基材シート11とする(図1d)。
【0059】
(2)インライン同時エンボス加工法
図2は共押出により押し出された表面シートを、引き続き連続して前記(1)の基材シートの調製法で得られた装飾基材シート11上にラミネート成形する様子を示した図である。共押出用のT型ダイス7により、易接着型ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーの最下層5、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーの最表面層6、及び最下層5と最表面層6の材料が混合された中間層14からなる3層の積層シートとしての表面シートが共押出される。このようにT型ダイス7から押し出された表面シートに装飾基材シート11を貼合わせるために、該表面シートの供給速度と同じ速度で装飾基材シート11を供給し、表面にエンボス版を有する冷却ロール8と圧胴9により両シートを圧着し、ラミネートすると同時に表面シート側にエンボス加工を施す。得られた化粧シートの断面構造を図3に示す。
【0060】
さらに、図4に示すように図3の化粧シートに対してワイピング加工して凹部10に着色インキ12を充填し、さらにその上に、例えば、2液硬化型ポリウレタン等で上塗塗膜13を形成して化粧シートとしてもよい。また、前記冷却ロール8の表面にエンボス版が無いものを使用して、表面シート側にエンボス加工が施されてない化粧シートを得ることもできる。
【0061】
(3)オフライン同時エンボス加工法
図5は共押出により押し出された表面シートを巻き取っている状態を示す図である。図5において、共押出用のT型ダイス7により、易接着型ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーの最下層5、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーの最表面層6、及び最下層5と最表面層6の材料が混合された中間層14からなる3層の積層シートとしての表面シートを共押出し、表面が鏡面の冷却ロール15と圧胴19により表面シートを圧着冷却し、巻き取り機により巻き取り、表面シートの巻き取り16を得、これを一旦、ストックする。
【0062】
図6は、ストックされている表面シートの巻き取り16と前記(1)の基材シートの調製法で得られた装飾基材シート11と接合して本発明の化粧シートを製造する様子を示す。装飾基材シート11を加熱装置17で加熱し、供給する。一方、ストックされている表面シートの巻き取り16を加熱装置18により加熱し、該表面シートを前記装飾基材シート11の供給速度と同じ速度で供給し、表面にエンボス版を有する冷却ロール8と圧胴9により両シートを圧着し、ラミネートすると同時に表面シート側にエンボス加工を施す。得られた化粧シートは、前記(2)のインライン同時エンボス加工法で得られた化粧シートと同様な図3に示すものとなる。また、同様にワイピング加工、上塗り塗装を施して図4に示すような化粧シートとすることもできる。
【0063】
【実施例】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0064】
〔実施例1〕
工程(1):不透明着色シートの製造
ポリエチレン60重量%をベースに熱可塑性エラストマーとしてスチレン−ブタジエンゴム30重量%、無機添加剤として炭酸カルシウム10重量%、また、着色顔料として弁柄とカーボンブラック各5重量%ブレンドしたものをカレンダー製法にて厚み100μmに成膜し、不透明着色シートを得た。
【0065】
工程(2):印刷シートの製造
上記工程(1)で得られた不透明着色シートの表裏面にコロナ放電処理を施した後、裏面側にウレタン系プライマーコート(ヘキサンメチルイソシアネート+アクリルポリオール)(昭和インク株式会社製:AFX)を、表面側にウレタン系プライマーコート(同上)及び柾目絵柄印刷(昭和インク株式会社製:化X)を施し、印刷シートを得た。
【0066】
工程(3):3層同時押し出し同時エンボス貼合せ積層
上記工程(2)で得られた印刷シートの、ウレタン系プライマー及び柾目絵柄印刷上に、表面シートとして、下記の3種の樹脂を3層押し出し同時エンボスで貼合せ積層した。この時、各層の厚みは最表面層20μm、最下層20μm、中間層60μmとした。
【0067】
(最表面層)アイソタクチックポリプロピレン50重量%とアタクチックポリプロピレン50重量%の混合系ポリプロピレンに紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を3000ppm、光安定剤としてヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤を5000ppm添加したことからなるポリプロピレン系熱可塑性エラストマー。
【0068】
(最下層)上記ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーに対して、マレイン酸を共重合させて極性官能基(−COOH)を導入したことからなる易接着型ポリプロピレン系熱可塑性エラストマー(出光石油化学製:ポリタック)。
【0069】
(中間層)上記ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーと上記易接着型ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーを混合比5:1で混合させた混合エラストマー。
【0070】
工程(4):ワイピング加工
上記工程(3)で得られた3層押し出し同時エンボス貼合せ積層シートのエンボス加工面にコロナ放電を施した後、エンボス加工面に2液硬化型ウレタン系樹脂(昭和インク株式会社製:ワイピングNo.18)でワイピング加工を行い、本実施例1の化粧シートを得た。
【0071】
〔実施例2〕
前記実施例1の工程(3)に示す3種の樹脂を用いて3層押し出しを行い、表面シートを製造した。一方、上記実施例1の工程(1)及び工程(2)を行うことにより、印刷シートを得た。該印刷シートのウレタン系プライマーコート及び柾目絵柄印刷面と、前記表面シートの最下層の表面が向かい合うようにラミネート同時エンボスを行って、本実施例2の化粧シートを得た。
【0072】
〔比較例〕
表面シート及び基材シートとして、延伸倍率3倍の2軸延伸アイソタクチックポリプロピレン製の厚さ100μmのシートを用いた。その他は前記実施例1と同様にして比較例の化粧シートを得た。
【0073】
〔性能評価試験〕
上記実施例1及び2、並びに比較例の各化粧シートについて、透明性、耐候性、耐熱性、Vカット時のシート破断・亀裂性、凹凸模様の再現性、接着力、加熱寸法収縮率の評価試験を次の方法で行った。その結果を下記の表1に示す。
【0074】
透明性:ヘイズ値を東洋精機株式会社製の直読式ヘイズメータにて測定した。装飾処理無しのポリオレフィン樹脂シート層単層で測定した。
【0075】
耐候性:カーボンアーク燈型サンシャインウエザオメータで最長3000時間迄照射し、亀裂、白化、変色等の外観変化が著しくなったところ(目視判定)で停止した。ブラックパネル温度63℃、照射後のサンプルを目視にて評価した。
耐熱性:80℃雰囲気中で3分間加熱し、その前後での変色状態を目視で確認した。
【0076】
Vカット時のシート破断・亀裂性:化粧シートの基材シート側を、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョンの接着剤を用い、厚さ10mmのラワン合板に接着、積層し、該合板の化粧シート側と反対側に、合板と接着剤層との界面にまで達する断面V字型の条溝を切削し、該条溝内にエチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョンの接着剤を塗布し、該条溝を閉じるようにして合板を折り曲げて合板をL字型(断面)に折り曲げた。加工時の雰囲気温度は10℃であった。
【0077】
凹凸模様の再現性:目視で評価した。
【0078】
接着力:基材シート/表面シートの積層体を幅1cmに切り抜いたサンプルを幅方向と直交する方向に引張速度50mm/分、雰囲気温度20℃で、両サンプルの引張方向が互いに180°になるように引張試験を行い、層間界面の剥離時の張力を測定した。
【0079】
加熱寸法収縮率:化粧シートを100℃雰囲気中で30分間加熱して、
〔(加熱後の寸法)−(加熱前の寸法)〕×100/(加熱前の寸法)=加熱寸法収縮率(%)
を長手方向(MD)、及び幅方向(TD)各々について求めた。
【0080】
【表1】
【0081】
【発明の効果】
基材シート上に表面シートが設けられた化粧シートを製造するのに、その製造時に発生するロスについてリサイクルが可能である。
【0082】
本発明の化粧シートは、上記特徴に加え、透明性が良好で、耐熱性に優れ、耐候性に優れ、柔軟性があり、印刷やラミネート時のインキ、接着剤等との接着力に優れ、耐衝撃性に優れ、Vカット加工時に亀裂破断することがない。特に、加熱軟化〜エンボス版押圧〜冷却というエンボス加工時の熱履歴を受けても化粧シートの脆弱化を防止できる。また本発明の化粧シートは結晶化度が低いため、エンボス加工条件が良好である。
【図面の簡単な説明】
【図1】表面シートと貼り合わされるべき基材シートの調製法の1例を示す。
【図2】共押出により押し出された表面シートを、引き続き連続して装飾基材シート上にラミネート成形して本発明の化粧シートを製造する様子を示した図である。
【図3】図2の製造例により得られた本発明の化粧シートの断面構造を示す。
【図4】図3の化粧シートに対してワイピング加工して凹部に着色インキを充填し、さらにその上に上塗塗膜を形成して得た本発明の化粧シートを示す。
【図5】共押出により押し出された表面シートを巻き取っている状態を示す図である。
【図6】表面シートの巻き取りと装飾基材シートと接合して本発明の化粧シートを製造する様子を示す。
【符号の説明】
1 基材シート
2 易接着層
3 絵柄インキ層
4 感熱接着剤層
5 最下層
6 最表面層
7 T型ダイス
8,15 冷却ロール
9 圧胴
10 凹部
11 装飾基材シート
12 着色インキ
13 上塗塗膜
14 中間層
16 巻き取り
17,18 加熱装置
Claims (7)
- 最表面層、中間層および最下層の3層で構成された表面シートが、基材シート上に押出成形により設けられ、且つ該表面シート及び/又は該基材シートに装飾処理が施されてなる化粧シートであって、該化粧シートの表面シートにおける、
最表面層の材料が、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーであって、該ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーが、アタクチック性ポリプロピレン10〜90重量%とアイソタクチック性ポリプロピレン90〜10重量%からなり、
中間層の材料が、最表面層と最下層の混合成分、及び
最下層の材料が、易接着型ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーであって、該易接着型ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーが、最表面層に使用されるポリプロピレン系熱可塑性エラストマーに対して極性官能基を含む化合物を共重合させて得たものであることを特徴とする化粧シート。 - 前記表面シートに施される装飾処理がエンボス加工である請求項1記載の化粧シート。
- 前記エンボス加工が施された表面シートにワイピイング加工が施されてなる請求項2記載の化粧シート。
- 請求項1、2又は3記載の表面シートと、基材シートをインラインで貼合わせることを特徴とする化粧シートの製造方法。
- 請求項1、2又は3記載の表面シートと、基材シートをオフラインで貼合わせることを特徴とする化粧シートの製造方法。
- 請求項1、2又は3記載の表面シートと基材シートの貼合せをインライン同時エンボスにより行うことを特徴とする化粧シートの製造方法。
- 請求項1、2又は3記載の表面シートと基材シートの貼合せをオフライン同時エンボスにより行うことを特徴とする化粧シートの製造方法。
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