JP3721185B2 - 射出成形品及びその用途 - Google Patents

Description

本発明は、射出成形時にはアンダーカット部を有さず、かつ他の部材を固定する手段を具備する射出成形品に関する。本発明はまた、射出成形時にはアンダーカット部を有さず、かつグリル取付部が開口部に露出しないようにグリルを固定できる車両用バンパーに関する。

射出成形用の金型は、閉じられたときに溶融樹脂が注入されるキャビティを構成する固定側型板と可動側型板とを有し、固定側型板と可動側型板とを離型させることによって、キャビティ形状に対応した形状の射出成形品が取り出される。射出成形品は、型板の離型方向と交差する方向に延在するアンダーカット部を有する場合があり、アンダーカット部に邪魔されず離型を行うには金型の構造が複雑化する。このため射出成形品は、極力アンダーカット部を有さない形状であるのが望ましい。

例えば射出成形により製造される合成樹脂製車両用フロントバンパーのグリル部には、一般的にフロントバンパー本体に設けた開口部に別部材のグリルを取り付ける構造が採用されているが、フロントバンパーのグリル取付部（ねじ受け部等）が、アンダーカット部となることが多い（例えば特開2002-59794号参照）。

フロントバンパーのグリル取付部がアンダーカット部とならない構造にすると、フロントバンパー本体の開口部周縁からグリル取付部が露出することが多く、このためグリルを真正面から見るとグリル取付部が見えてしまい、外観性が必ずしも良好なものとならないだけでなく、グリルの開口面積が犠牲になり、ラジエータへの通風量が減るといった機能的な問題も生じる。

これに対して、例えば特開2000-108821号（特許文献１）は、フロントバンパーへのグリル取付機構として、(1) (i) フロントバンパー開口部周縁からバンパー裏側に突出する係合突起と、(ii) グリルのブランジ部に形成され、係合突起を挿通させる貫通孔と、(iii) 貫通孔を挿通した係合突起の先端側に装着される抜け止め手段とからなる機構、(2) 上記(1)の構成と併せて、フロントバンパー開口部周縁にブランジ部を係合する係合機構、並びに(3) 上記(1)及び／又は(2)の構成と併せて、フロントバンパー開口部周縁にグリルのフランジ部をねじ止めする機構を記載している。特許文献１のグリル取付機構によれば、グリル取付部はフロントバンパー本体の開口部周縁から露出せず、かつフロントバンパー本体はアンダーカット部を有さない。

特開2000-108821号

しかし特許文献１に記載の上記(1)の機構は、貫通孔を挿通させた係合突起に抜け止め手段を装着する必要があり、上記(2)の係合機構は、ねじ等の固定具の部品点数を少なくするために補助的に用いるものであり、それだけでグリルを固定できるものではなく、上記(3)の機構はねじが必要である。このように特許文献１のグリル取付機構は、作業性が悪い、固定具の部品点数が多いという問題を十分に解決したとは言い難い。

従って、本発明の目的は、射出成形時にはアンダーカット部を有さず、かつ他の部材を固定する手段を具備し、他の部材を取り付けるための部品点数を少なくでき、良好な取り付け作業性を確保できる射出成形品を提供することである。

本発明のもう一つの目的は、射出成形時にはアンダーカット部を有さず、グリル取付部が開口部に露出しないようにグリルを固定でき、グリル取り付けのための部品点数を少なくでき、良好な取り付け作業性を確保できる車両用バンパーを提供することである。

上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、射出成形品本体（車両用バンパー）の縁部に薄肉ヒンジを介して連結された他の部材（グリル）を固定するための固定用舌片部を金型の離型方向と略直交する方向に向けることにより、成形時にアンダーカットがなく、かつ固定用舌片部を回動して射出成形品本体に対して保持させることにより、他の部材の取付作業を効率よく行うことができることを発見し、本発明を完成した。

すなわち、本発明の射出成形品は、一対の型板を具備する金型に溶融樹脂を注入して所定の形状に成形した射出成形品であって、前記射出成形品は他の部材を固定する手段を具備する固定用舌片部を有し、前記固定用舌片部は射出成形時に前記金型の離型方向と略直交する方向に、射出成形品本体の縁部に薄肉ヒンジを介して設けられており、かつ前記薄肉ヒンジと略平行に突設された係止爪を有し、前記係止爪が前記射出成形品本体縁部に設けられた保持部と係合することにより、前記固定用舌片部は前記本体に対して保持されることを特徴とする。

本発明の好ましい実施例では、前記他の部材を固定する手段は、射出成形時に前記金型の離型方向と略平行に前記固定用舌片部に突設され且つ前記他の部材が有する孔に嵌合する爪である。本発明の別の好ましい実施例では、前記他の部材を固定する手段は、射出成形時に前記金型の離型方向と略平行に前記固定用舌片部を貫通するように設けられ且つ前記他の部材が有する凸状の取付部に嵌合する孔である。本発明のさらに別の好ましい実施例では、前記固定用舌片部には前記係止爪が一対で互いに対向する位置に設けられている。

本発明の車両用バンパーは、一対の型板を具備する金型に溶融樹脂を注入して所定の形状に成形した車両用バンパーであって、前記車両用バンパーはグリルを収容する開口部を有し、前記開口部の周縁には前記グリルを固定する手段を具備する固定用舌片部が設けられており、前記固定用舌片部は射出成形時に前記開口部周縁から前記開口部側に向かって前記金型の離型方向と略直交する方向に、前記開口部周縁に薄肉ヒンジを介して突設されており、かつ前記薄肉ヒンジと略平行に突設された係止爪を有し、前記係止爪が前記車両用バンパー本体縁部に設けられた保持部と係合することにより、前記固定用舌片部は前記本体に対して保持されることを特徴とする。

本発明のさらに別の好ましい実施例では、前記グリルを固定する手段は、射出成形時に前記金型の離型方向と略平行に前記固定用舌片部に突設され且つ前記グリルの周縁に設けられた取付部の孔に嵌合する爪である。本発明のさらに別の好ましい実施例では、前記グリルを固定する手段は、射出成形時に前記金型の離型方向と略平行に前記固定用舌片部を貫通するように設けられ且つ前記グリルの周縁に設けられた凸状の取付部に嵌合する孔である。本発明のさらに別の好ましい実施例では、前記固定用舌片部には前記係止爪が一対で互いに対向する位置に設けられている。

本発明の射出成形品は、他の部材を固定する手段を具備する固定用舌片部が、射出成形時に金型の離型方向と略直交する方向に、射出成形品本体の縁部に薄肉ヒンジを介して設けられるので、射出成形時にはアンダーカット部を有さず、かつ他の部材を固定する手段を具備し、他の部材を取り付けるための部品点数を少なくでき、良好な取り付け作業性を確保できる。

本発明の車両用バンパーは、グリルを固定する手段を具備する固定用舌片部が、射出成形時に金型の離型方向と略直交する方向に、車両用バンパーの開口部周縁に薄肉ヒンジを介して設けられるので、射出成形時にはアンダーカット部を有さず、グリル取付部が開口部に露出しないようにグリルを固定でき、グリル取り付けのための部品点数を少なくでき、良好な取り付け作業性を確保できる。

以下、本発明の射出成形品として車両用バンパーを例にとり、図面を参照して詳細に説明する。
[1] 車両用バンパー
図１は本発明の車両用バンパーの一実施例を示す正面図であり、図２は図１に示す車両用バンパーのA-A断面図である。図１に示すように、本発明の車両用バンパー（以下単に「バンパー」とよぶ）１は、射出成形により得られる合成樹脂製の一体成形品であって、ロアグリル（図７参照、以下単に「グリル」とよぶ）４を取り付ける開口部２が形成されている。開口部２には、バンパー１の裏側からグリル４が挿入される。図２に示すように、開口部２にはバンパー１の表側から裏側に向けて奥行きがあり、開口部２の裏側の周縁12にグリル４を固定する舌片部３が複数設けられている。固定用舌片部３はバンパー本体11の開口部裏側周縁12から開口部２側に向けて薄肉ヒンジ31を介して突設されており、その端部にはグリル４を固定する手段として、グリル４の周縁に設けられた取付部の孔に嵌合する爪3aがバンパー裏側方向に突設されている。バンパー１はポリプロピレン等の合成樹脂からなるので柔軟性を有し、このためバンパー本体11に薄肉ヒンジ31を介して設けられた固定用舌片部３は回動自在である。

図３及び図４は、開口部２の下側の固定用舌片部３及びその周辺の開口部裏側周縁12を示す。図４に示すように、固定用舌片部３は、グリル４を取り付ける際には、開口部裏側周縁12と平行な位置にする。固定用舌片部３は、開口部裏側周縁12の端からバンパー本体11の表側方向に入り込んだ位置に突設されており、使用時には嵌合爪3aが開口部裏側周縁12の端から突出する長さを有する。図３に示すように、固定用舌片部３は薄肉ヒンジ31と略平行に突設された係止爪32を有し、開口部裏側周縁12におけるバンパー本体11の内面には係止爪32と係合する保持部13が設けられている。図４に示すように、固定用舌片部３を回動させて係止爪32をバンパー本体11の内側に押し込むと、固定用舌片部３が成形時の位置に戻ろうとする弾性力により、係止爪32が保持部13と係合する。これにより固定用舌片部３は、開口部裏側周縁12と平行な位置で係止され、嵌合爪3aの位置が固定される。嵌合爪3aは射出成形時に固定用舌片部３のバンパー裏側方向に突設されているので、固定用舌片部３を開口部裏側周縁12と平行な位置で係止した時には、開口部裏側周縁12からバンパー本体11内側を向く。

図５及び図６は固定用舌片部３の別の実施例を示す。図５に示すように、この例では固定用舌片部３はグリル固定手段として、固定用舌片部３を貫通し、グリル４の周縁に設けられた凸状の取付部に嵌合する孔3bを有する。嵌合孔3bは射出成形時に固定用舌片部３をバンパー前後方向に貫通するように設けられているので、固定用舌片部３を開口部裏側周縁12と平行な位置で係止させると、図６に示すように、バンパーの上下方向に貫通することになる。

バンパー１に設ける固定用舌片部３の数に特に制限はないが、通常は開口部２の上側周縁及び下側周縁のそれぞれに５〜７個設けられていれば十分である。固定用舌片部３を必要以上に設けても取り付け作業性が悪化するだけで、グリル４に対する固定能は変化しない。

[2] グリル取付機構
図１〜図４に示すバンパー１にグリル４を取り付ける際の機構について述べる。図７は、バンパー１に取り付けるグリル４の一例を示す。グリル４は、ABS樹脂等の合成樹脂からなる一体成形品であって、ほぼ矩形の枠体41と、枠体41の周縁に複数突設された取付片42と、枠体41の内部において車体幅方向に架設されかつ車体前後方向に沿って延在する横フィン43と、枠体の内部において車体上下方向に架設されかつ車体前後方向に沿って延在する複数列の縦フィン44とをそれぞれ具備している。取付片42には、固定用舌片部３を挿通させる嵌合孔42aが設けられている。嵌合孔42aの幅を、固定用舌片部３の幅とほぼ同じとするのが好ましく、これによりグリル４を堅固に固定することができる。

図８に示すように、バンパー１の裏側から開口部２にグリル４を挿入し、バンパー１の固定用舌片部３をグリル４の嵌合孔42aに挿通させると、固定用舌片部３の嵌合爪3aが取付片42の裏側の段部42bと係合することにより、バンパー１とグリル４が嵌合される。このとき固定用舌片部３は、取付片42のフィン部42c及び枠体41と当接するので、グリル４はバンパー１に堅固に固定される。このようなバンパー本体11内側を向く嵌合爪3aを有する固定用舌片部３と、グリル４の周縁に突設された取付片42とを嵌合させる取付機構により、図８に示すように、嵌合部５が開口部２の周縁から露出しない。また本発明のバンパー１にグリル４を取り付ける機構は嵌合式であるため、取り付けが容易であるだけでなく、ねじ等の固定具が不要であるため作業性が良好であり、取り付けに要する部品点数も少ない。

図５及び図６に示す固定用舌片部３を有するバンパー１にグリル４を取り付ける場合の機構について述べる。この場合、図９に示すように、グリル４として、取付片42が固定用舌片部３の嵌合孔3bと係合する嵌合爪42dを有するものを使用する。

図９に示すように、バンパー１の裏側から開口部２にグリル４を挿入し、グリル４の取付片42を固定用舌片部３の嵌合孔3bに挿通させると、取付片42の嵌合爪42dが固定用舌片部３の内側の段部3cと係合することにより、バンパー１とグリル４が嵌合される。このとき固定用舌片部３は、枠体41と当接するので、グリル４はバンパー１に堅固に固定される。取付片42の幅を嵌合孔3bの幅とほぼ同じにするのが好ましく、これによりグリル４を一層堅固に固定することができる。なお図５及び図９に示すように、固定用舌片部３には、嵌合爪42dと係合する係止爪3aを設けておくのが好ましく、これによりグリル４に対する固定能が向上する。このようなバンパー本体11の上下方向に貫通する嵌合孔3bを有する固定用舌片部３と、グリル４の周縁に突設された取付片42とを嵌合させる取付機構により、図９に示すように、嵌合部５は開口部２の周縁から露出しない。

[3] 成形方法
本発明のバンパーの成形方法について述べる。図１〜図４に示すバンパー１を射出成形する場合、図２及び図３に示すように、固定用舌片部３が開口部裏側周縁12から開口部２側に向かって金型の離型方向（図２及び図３におけるB方向）と略直交し、かつ嵌合爪3aが金型の離型方向に対して略平行となるようにする。これにより射出成形時に、バンパー１にアンダーカット部ができない。これに対して、本発明のような固定用舌片部３を設けず、嵌合爪3aが開口部裏側周縁12からバンパー本体11内側を向いた状態に射出成形すると、嵌合爪3aの突設方向が金型の離型方向と交差するので、嵌合爪3aがアンダーカット部となってしまう。

図５及び図６に示す固定用舌片部３を有するバンパー１を射出成形する場合、図５に示すように、固定用舌片部３が開口部裏側周縁12から開口部２側に向かって金型の離型方向と略直交し、かつ嵌合孔3bの貫通方向が金型の離型方向に対して略平行となるようにすると、バンパー１には、アンダーカット部ができない。これに対して、本発明のような固定用舌片部３を設けず、嵌合孔3bがバンパー本体11の上下方向に貫通した状態に射出成形すると、固定用舌片部３の端部が金型の離型方向と交差するので、固定用舌片部３の端部がアンダーカット部となってしまう。

以上の通り、図面を参照して本発明を説明したが、本発明はそれらに限定されず本発明の趣旨を変更しない限り種々の変更を加えることができる。

本発明の車両用バンパーの一実施例を示す正面図である。 図１に示す車両用バンパーのA-A断面図である。 図１に示す車両用バンパーの固定用舌片部を示す斜視図である。 図３に示す固定用舌片部が係止された状態を示す斜視図である。 固定用舌片部の別の実施例を示す斜視図である。 図５に示す固定用舌片部が係止された状態を示す斜視図である。 ロアグリルの一例を示す正面図である。 ロアグリルの取付機構の例を示す断面図である。 ロアグリルの取付機構の別の例を示す断面図である。

符号の説明

１・・・車両用バンパー
11・・・車両用バンパー本体
12・・・開口部裏側周縁
13・・・保持部
２・・・開口部
３・・・固定用舌片部
3a・・・嵌合爪（係止爪）
3b・・・嵌合孔
31・・・薄肉ヒンジ
32・・・係止爪
４・・・ロアグリル
41・・・枠体
42・・・取付片
42a・・・貫通孔
42b・・・段部
42c・・・フィン部
42d・・・嵌合爪
43・・・横フィン
44・・・縦フィン
５・・・嵌合部

Claims (8)

1. 一対の型板を具備する金型に溶融樹脂を注入して所定の形状に成形した射出成形品において、前記射出成形品は他の部材を固定する手段を具備する固定用舌片部を有し、前記固定用舌片部は射出成形時に前記金型の離型方向と略直交する方向に、射出成形品本体の縁部に薄肉ヒンジを介して設けられており、かつ前記薄肉ヒンジと略平行に突設された係止爪を有し、前記係止爪が前記射出成形品本体縁部に設けられた保持部と係合することにより、前記固定用舌片部は前記本体に対して保持されることを特徴とする射出成形品。
2. 請求項１に記載の射出成形品において、前記他の部材を固定する手段は、射出成形時に前記金型の離型方向と略平行に前記固定用舌片部に突設され且つ前記他の部材が有する孔に嵌合する爪であることを特徴とする射出成形品。
3. 請求項１に記載の射出成形品において、前記他の部材を固定する手段は、射出成形時に前記金型の離型方向と略平行に前記固定用舌片部を貫通するように設けられ且つ前記他の部材が有する凸状の取付部に嵌合する孔を具備することを特徴とする射出成形品。
4. 請求項１〜３のいずれかに記載の射出成形品において、前記固定用舌片部には前記係止爪が一対で互いに対向する位置に設けられていることを特徴とする射出成形品。
5. 一対の型板を具備する金型に溶融樹脂を注入して所定の形状に成形した車両用バンパーにおいて、前記車両用バンパーはグリルを収容する開口部を有し、前記開口部の周縁には前記グリルを固定する手段を具備する固定用舌片部が設けられており、前記固定用舌片部は射出成形時に前記開口部周縁から前記開口部側に向かって前記金型の離型方向と略直交する方向に、前記開口部周縁に薄肉ヒンジを介して突設されており、かつ前記薄肉ヒンジと略平行に突設された係止爪を有し、前記係止爪が前記車両用バンパー本体縁部に設けられた保持部と係合することにより、前記固定用舌片部は前記本体に対して保持されることを特徴とする車両用バンパー。
6. 請求項５に記載の車両用バンパーにおいて、前記グリルを固定する手段は、射出成形時に前記金型の離型方向と略平行に前記固定用舌片部に突設され且つ前記グリルの周縁に設けられた取付部の孔に嵌合する爪であることを特徴とする車両用バンパー。
7. 請求項５に記載の車両用バンパーにおいて、前記グリルを固定する手段は、射出成形時に前記金型の離型方向と略平行に前記固定用舌片部を貫通するように設けられ且つ前記グリルの周縁に設けられた凸状の取付部に嵌合する孔を具備することを特徴とする車両用バンパー。
8. 請求項５〜７のいずれかに記載の車両用バンパーにおいて、前記固定用舌片部には前記係止爪が一対で互いに対向する位置に設けられていることを特徴とする車両用バンパー。
   

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