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JP3715955B2 - 軟x線干渉計 - Google Patents

軟x線干渉計 Download PDF

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JP3715955B2 JP2002217160A JP2002217160A JP3715955B2 JP 3715955 B2 JP3715955 B2 JP 3715955B2 JP 2002217160 A JP2002217160 A JP 2002217160A JP 2002217160 A JP2002217160 A JP 2002217160A JP 3715955 B2 JP3715955 B2 JP 3715955B2
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直洋 山口
民夫 原
貞雄 青木
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はX線技術、X線光学、精密光学、応用物理学の分野に応用できる、透過回折格子をビームスプリッターとして用いた軟X線干渉計に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から存在するX線干渉光学系には、硬X線を用いるものと軟X線を用いるものがある。硬X線の干渉光学系としてはボンズ・ハート型といわれる干渉光学系があり、位相差コントラスト結像や、位相差マイクロトモグラフィーに利用されている。
【0003】
軟X線の干渉光学系としては、フレネル・バイミラー型といわれる干渉光学系があり、薄膜の屈折率の直接測定や高電圧印加金属表面形状の測定に利用されている。一方、軟X線に対する干渉光学系を形成するために、入射X線の強度あるいは波面を分割する必要がある。その強度分割する光学素子をビームスプリッターと呼んでいる。
【0004】
そして、ビームスプリッターを用いた干渉計を利用したマッハ・ツェンダー型と呼ばれる干渉光学系があり、また、入射X線の波面を分割するタイプのものとして、斜入射全反射鏡を2枚使用することによってX線ビームを空間的に分割し、干渉光学系を構成する方式がある。
【0005】
軟X線は物質との相互作用が非常に強いので、通常、ビームスプリッターにはサブミクロンの厚さをもった薄膜型X線多層膜が用いられている。しかし、X線多層膜ビームスプリッターは作製するのに高度な技術を要し、一般には市販されていないか、又は特注品となり高価であり、かつ極く薄い膜であるために取り扱いに注意を要する等の問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来のX線多層膜ビームスプリッターは高価であり、取り扱いが厄介であるので、比較的入手し易い光学素子を使った軟X線干渉計をつくる必要がある。また、波面分割型全反射干渉計はX線を分光する機能がないため入射光はあらかじめ他の方法で分光しておく必要がある。そこで、本発明はビームスプリッターに透過型回折格子を用いることで、比較的安価で取扱い易く、透過効率の高い軟X線干渉計を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この発明の請求項に係る軟X線干渉計は、入射軟X線のうち特定の波長のX線を光軸に対し上下に等しい角度を持って進む、強度の等しい2つのビームに分ける機能を有するビームスプリッターとしての第1の透過回折格子と、分かれたビームをそれぞれ反射する第1及び第2の全反射鏡と、反射されたビームが光軸に沿って同じ距離だけ進み、2つのビームが重なる位置に配置され、前記2つのビームをそれぞれ光軸上を進むように戻す機能を有する第2の透過回折格子と、該第2の透過回折格子の後段に配置された2次元X線検出器とからなる構成した。
【0010】
こうして、構成要素が軸対称に配置され(菱形構造)、構造が簡便であり、入射軟X線のうち特定の波長のX線を光軸に対し上下に等しい角度を持って進む、強度の等しい2つのビームに分ける機能を有する透過回折格子と全反射鏡を用いるので高効率の干渉計が得られ、透過回折格子の回折効率は理論的に予測可能なので、干渉計測系全体の効率予測が容易な軟X線干渉計を実現できる。
【0011】
この発明の請求項に係る軟X線干渉計は、入射軟X線のうち特定の波長のX線を光軸に対し上下に等しい角度を持って進む、強度の等しい2つのビームに分ける機能を有するビームスプリッターとしての第1の透過回折格子と、分光された軟X線をそれぞれ反射し、かつそれぞれ光軸に垂直な方向に互いに反対方向に等しい距離移動可能な第1及び第2の全反射鏡と、反射された軟X線が光軸に沿って同じ距離だけ進み、2つの軟X線が重なる位置に配置され、前記2つのビームをそれぞれ光軸上を進むように戻す機能を有する第2の透過回折格子と、該第2の透過回折格子の後段に配置された2次元X線検出器とからなり、適用波長を可変にした構成とした。
【0012】
こうして、透過回折格子は、ビームスプリッターとしてだけでなく分光素子としても機能するので、入射する軟X線を分光した後、その単色X線に対して干渉光学系が構成できるので、適用波長を変える度に光学素子を変える必要がなく、透過回折格子は波長に応じた回折角をもって入射光を分光する。そして、分光された軟X線を反射する全反射鏡は、それぞれ光軸に垂直な方向に互いに反対に等しい距離移動するだけで干渉する軟X線の波長変化に対応できるので、適用波長を変えるために動かす構成要素が全反射鏡のみで、波長変化に容易に対応可能な軟X線干渉計を実現することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を図を参照して説明する。図において、1は第1の透過回折格子、2は第2の透過回折格子、3は第1(上部)の全反射鏡、4は第2(下部)の全反射鏡、5は2次元X線検出器、6は0次光遮蔽板、7は測定対象となる位相物体である。
【0014】
第1の透過回折格子1は入射軟X線のうち特定の波長のX線を光軸に対し上下に等しい角度を持って進む、強度の等しいビーム1とビーム2の2つのビームに分ける機能を有する。第2の透過回折格子2はビーム1とビーム2をそれぞれ光軸上を進むように戻す機能を有する。上部の全反射鏡3はビーム1を鏡面反射して折り返す機能を有し、下部の全反射鏡4はビーム2を鏡面反射して折り返す。2次元X線検出器5はビーム1とビーム2によって形成される干渉パターンを検出し、記録するものである。
【0015】
次に、本発明の軟X線干渉計の動作を説明する。軟X線発生装置(図示せず)からの入射軟X線を第1の透過回折格子1に入射すると、第1の透過回折格子1は入射軟X線のうち特定の波長のX線を光軸に対し上下に等しい角度を持って進む、強度の等しいビーム1とビーム2の2つのビームに分ける。このとき0次光は0次光遮蔽板6により遮蔽される。
【0016】
一方のビーム1は上部の全反射鏡3において鏡面反射して折り返され、参照光となる。他方のビーム2は下部の全反射鏡4において鏡面反射して折り返され、測定対象の位相物体7に照射される。ビーム1とビーム2は図のように等しい角度で光軸に向かうので、光軸上の同一点で交わる。
【0017】
第2の透過回折格子2はビーム1とビーム2をそれぞれ分光する機能を有し、入射される参照光のビーム1と、物体光のビーム2の回折格子2への人射角に従って、それぞれ光軸に平行に進むようになりビームが重なって干渉する。ビーム1とビーム2によって形成される干渉パターンは、後段の2次元X線検出器5により検出され記録され、位相物体の軟X線に対する屈折率の直接測定ができると、同時に物体の位相差顕微鏡とすることができる。
【0018】
また、このような構成とすることにより、(1)構成要素が軸対称に配置され(菱形構造)、構造が簡便である。(2)透過回折格子と全反射鏡を用いるので高効率の干渉計ができる。(3)透過回折格子の回折効率は理論的に予測可能なので、干渉計測系全体の効率予測が容易となる等の有用な効果が得られる。
【0019】
本発明に用いられる透過回折格子1は、ビームスプリッターとしてだけでなく分光素子としても機能するので、透過回折格子を用いて入射する軟X線を分光したのち、その単色X線に対して干渉光学系が構成できる。このことにより適用波長を変える度に光学素子を変える必要はない。
【0020】
即ち、透過回折格子1は波長に応じた回折角をもって入射光を分光する。また、第1(上部)の全反射鏡3及び第2(下部)の全反射鏡4をそれぞれ光軸に垂直な方向に互いに反対に等しい距離移動できるような構造にしておくことにより、分光された軟X線を反射する上部の全反射鏡3及び下部の全反射鏡4は、それぞれ光軸に垂直な方向に互いに反対に等しい距離移動するだけで干渉する軟X線の波長変化に対応できるので、適用波長を変えるために動かす構成要素が全反射鏡のみであるので、波長変化に容易に対応することができる軟X線干渉計を実現することができる。
【0021】
次に、本発明の軟X線干渉計の干渉光学系を検証するために、軟X線とは波長が異なるが、He−Neレーザーによる原理実証について図2に説明する。図2において図1と同一物には同符号を付しており、8はスクリーン、9は干渉パターンである。
【0022】
He−Neレーザーの波長は632.8nmとし、1000本/mmの透過回折格子を用いて干渉光学系を構成した。He−Neレーザーを第1の透過回折格子1に垂直に入射させ、1次および−1次回折光をそれぞれの全反射鏡3、4に照射した後、第2の透過回折格子2に入射させた。
【0023】
第2の透過回折格子2の後段にスクリーン8を置き、所定の光軸上に全反射鏡3、4によりビーム1及びビーム2を一致させたところ干渉縞が出現し、図2に示す干渉縞のパターンが観測された。このことにより、本発明の軟X線干渉計の有用性が実証された。
【0024】
このように、本発明の軟X線干渉計は使用する光の波長を越える分解能で変位を測定することができる。そして、一方の全反射鏡を試験ミラーとすると、反射ミラー形状のナノメーターオーダーの精密計測が可能になる。また、一方のビームに位相物体を挿入すると、物質の軟X線に対する屈折率の直接測定ができると同時に、物体の位相差顕微鏡としての応用もできる。更に、位相変化をもたらす物質内部の元素分布、ホログラフィー法による3次元構造の計測等、可視光で実現されている多様な方法をX線領域でも可能とするものである。
【0025】
【発明の効果】
以上のように本発明は、従来の高価で取り扱いが厄介なX線多層膜ビームスプリッターではなく、ビームスプリッターに透過型回折格子を用いることで、比較的安価で取扱い易く、透過効率の高い軟X線干渉計を得ることができる。また、構成要素が軸対称に配置され(菱形構造)、構造が簡便であり、透過回折格子と全反射鏡を用いるので高効率の干渉計が得られ、透過回折格子の回折効率は理論的に予測可能なので、干渉計測系全体の効率予測が容易な軟X線干渉計を実現できる。
【0026】
また、透過回折格子は、ビームスプリッターとしてだけでなく分光素子としても機能するので、入射する軟X線を分光した後、その単色X線に対して干渉光学系が構成できるので、適用波長を変える度に光学素子を変える必要がなく、透過回折格子は波長に応じた回折角をもって入射光を分光する。そして、分光された軟X線を反射する全反射鏡は、それぞれ光軸に垂直な方向に互いに反対に等しい距離移動するだけで干渉する軟X線の波長変化に対応できるので、適用波長を変えるために動かす構成要素が全反射鏡のみで、波長変化に容易に対応可能な軟X線干渉計を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の軟X線干渉計の構成図。
【図2】He−Neレーザーによる本発明の軟X線干渉計の検証構成図。
【図3】He−Neレーザーによる干渉縞パターン図。
【符号の説明】
1 第1の透過回折格子
2 第2の透過回折格子
3 第1(上部)の全反射鏡
4 第2(下部)の全反射鏡
5 2次元X線検出器
6 0次光遮蔽板
7 位相物体
8 スクリーン
9 干渉パターン

Claims (2)

  1. 入射軟X線のうち特定の波長のX線を光軸に対し上下に等しい角度を持って進む、強度の等しい2つのビームに分ける機能を有するビームスプリッターとしての第1の透過回折格子と、分かれたビームをそれぞれ反射する第1及び第2の全反射鏡と、反射されたビームが光軸に沿って同じ距離だけ進み、2つのビームが重なる位置に配置され、前記2つのビームをそれぞれ光軸上を進むように戻す機能を有する第2の透過回折格子と、該第2の透過回折格子の後段に配置された2次元X線検出器とからなることを特徴とする軟X線干渉計。
  2. 入射軟X線のうち特定の波長のX線を光軸に対し上下に等しい角度を持って進む、強度の等しい2つのビームに分ける機能を有するビームスプリッターとしての第1の透過回折格子と、分光された軟X線をそれぞれ反射し、かつそれぞれ光軸に垂直な方向に互いに反対方向に等しい距離移動可能な第1及び第2の全反射鏡と、反射された軟X線が光軸に沿って同じ距離だけ進み、2つの軟X線が重なる位置に配置され、前記2つのビームをそれぞれ光軸上を進むように戻す機能を有する第2の透過回折格子と、該第2の透過回折格子の後段に配置された2次元X線検出器とからなり、適用波長を可変にしたことを特徴とする軟X線干渉計。
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