JP3713993B2 - 反射型液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、反射型液晶テレビ,反射型液晶モニタなどの、反射型液晶パネルを使った画像表示装置に利用でき、明るく高コントラストな画像表示を実現する上で好適な光拡散シートを用いることにより、機器本体の消費電力を増やすことのない反射型液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
反射型液晶表示装置は、液晶パネルの背面(観察者とは反対側)に光反射体を配置し、装置に入射する周辺光を反射させて、液晶パネルで構成される表示画像を観察者に視認させる装置である。
前記装置は、表示光を得るためのバックライトやエッジライトなどの特殊光源を必要とせず、周辺光(日光や照明光)を利用する構成であるため、消費電力の節約の上で有効である。
【0003】
明るくコントラストが高い画像を表示するためには、光反射体は反射率が高く且つある程度の指向性を持つことが好ましい。また、視域(表示光の視覚可能な範囲や方向)を拡げたり表示画面のギラツキを抑える上で、光反射体としては、反射面が拡散性を有する反射体が好適である。
そのため、従来の反射体は、マット状に加工した金属面を有するものから形成されていた。
【0004】
従来の金属面をマット状に加工した反射体は、金属の表面をサンドブラスター処理,或いは溶液(酸性またはアルカリ性)を用いた溶解処理,などによりマット面が形成される。従って、光拡散性(粗面の状態)を制御することが難しく、反射型液晶表示装置に用いると観察に寄与しない不要な拡散光を生じ、明るさやコントラストの低下を招いてしまうという問題点がある。
【0005】
近年、液晶を駆動する電極が反射体を兼ねるタイプ(以後、反射電極と称する)の反射型液晶表示装置も開発されている。
また、表示光に拡散性を持たせることで、視覚可能な範囲を拡げたり、画面上での表示光の強度分布を均一にするなどのため、液晶パネルの前面(観察者側)に光拡散シートを配置する方式も採用されている。
【0006】
通常の光拡散シートを使用した場合、光の入射時と反射時の両方で光拡散が生じるため、画素ずれによる2重像が生じ、高精細な表示が十分にできないという問題点がある。
加えて、電極(反射体)をマット状に加工する方式も採用されているが、前記した従来の金属反射体と同様に不要な拡散光を生じてしまう問題点がある。
【0007】
液晶パネルの前面にホログラムからなる散乱板を配置することで、視域の広域化を図った提案として、特開平9−152602号公報が公知であるが、前記提案は、バックライトによる表示光の出射範囲を制御するものであり、反射型液晶表示装置での表示光に拡散性を持たせるものではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、(周辺光を表示光に利用する)特殊な光源の不要な反射型液晶表示装置の液晶パネルの前面に配置する上で好適な光拡散シートを用いた反射型液晶表示装置を提供することを課題とする。
【0009】
すなわち、特定範囲の角度での入射光のみを拡散透過させる異方性(入射角度選択性)を光拡散シートに持たせ、例えば、装置への光の入射時には光拡散は生じず、出射時にのみ光拡散が生じる(または、その逆)ようにすることで、不要な光拡散を無くし、画素ずれによる2重像を防ぐようにすると共に、
光拡散の範囲を限定することにより、観察位置で明るく高コントラストで高精細な表示ができるような反射型液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の発明は液晶パネルの背面(観察者とは反対側)に反射体が配置され、液晶パネル前面(観察者側)から入射する周辺光を、前記反射体で液晶パネル側に反射し、液晶パネルで変調された表示光を観察者に視覚させる反射型液晶表示装置において、液晶パネルの前面(観察者側)に、特定角度の入射光を透過して他の角度からの入射光を拡散する入射角選択性を持つ、または出射方向と範囲を制御可能な出射角度選択性の、光拡散シートを配置してなることを特徴とする反射型液晶表示装置である。
【0011】
請求項2記載の発明は、前記光拡散シートが特定範囲の角度で入射する光のみを透過回折し、前記角度以外で入射する光は透過回折しないような入射角度選択性を有する体積位相透過型ホログラムからなることを特徴とする請求項1記載の反射型液晶表示装置である。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記光拡散シートが表面レリーフホログラムからなることを特徴とする請求項1記載の反射型液晶表示装置である。
【0014】
請求項4記載の発明は、反射体は、入射光を正反射させる機能を持つことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の反射型液晶表示装置である。
【0015】
請求項5記載の発明は、反射体は、入射光を光拡散させる機能を持つことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の反射型液晶表示装置である。
【0016】
請求項6記載の発明は、反射体が、液晶を駆動させるための電極を兼ねる請求項1から5の何れかに記載の反射型液晶表示装置である。
【0017】
<作用>
光拡散シートがホログラムである場合には、その撮影条件に応じて、入射角度選択性を持つ光拡散機能を付与することが可能であると共に、回折光が拡散出射する範囲(方向)を縦と横のそれぞれの方向に対して任意に制御することも可能である。言い換えれば、出射角度選択性をも付与することが可能である。これらの角度選択性を含み、以後の説明で「異方性」なる用語を用いる。
【0018】
ホログラムが体積位相透過型ホログラムである場合には、その回折光の波長幅が比較的広いため、白色に近い回折光を出射させることができ、液晶表示装置に適用した場合には、着色あるいは視点移動に伴う色変化の少ない表示光を視覚させることができる。(請求項2)
また、例えば、特定範囲以外の角度での表示装置への入射光は透過して、特定範囲の角度で出射する表示光はホログラムで回折して拡散させるような異方性(角度選択性)を持たせることができ、入射時および出射時の2度の回折に依存する画素ずれによる2重像の問題が回避される。
【0019】
ホログラムが表面レリーフホログラムである場合には、マスターホログラムから起こしたスタンパでの熱可塑性樹脂へのエンボス複製により、低コストで光拡散シートを量産することができる。(請求項3)
【0020】
本発明による反射型液晶表示装置は、液晶パネルの前面に、上述の光拡散シートを配置することにより、
液晶パネルの前面より光拡散シートを透過して入射する光は、透明シートを透過するように拡散せずに透過して反射体に達し、反射体で反射されて光拡散シートを透過して液晶パネルの前面より出射する光は、光透過性の光拡散シートを透過する時のような光拡散(または、その反対に、入射時に拡散透過し、出射時には単に透過する)を生じて、ある範囲に(観察者が表示画面を観察する範囲に)集光しながら拡散する光として出射する。
そのため、不要な表示光の拡散がなく、表示が明るくなり、且つ光の出射の際にのみ(または、入射の際にのみ)光拡散が起こるため、液晶パネルの前面より観察される表示画像に、画素ずれや2重画素や画素のにじみのような現象がなく、高精細な表示が可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る反射型液晶表示装置の実施の形態を図面を参照にして詳述する。
図1に示すように、本発明の反射型液晶表示装置1は、液晶パネル2と、その背面に配置された正反射性もしくは拡散性の反射体3と、液晶パネル2の前面に配置された光拡散シート4とで構成されている。
【0022】
同図では、光学特性(入・出射光の光路)を模式的に表すために、光拡散シート4,液晶パネル2,反射体3との間は離間させて示しているが、実際には接着層(図示せず)により接着されて積層されている。また、全ての請求項を概念的に説明できるように入射光や反射光、表示光などは全て光線として示している。
【0023】
また、反射型液晶表示装置1では、反射体3が液晶パネル2と別体ではなく、液晶パネル2中に液晶を駆動させる電極として内在していてもよい。
【0024】
前記液晶パネル2は、印加電圧の有無に応じて入射光を変調し、白/黒(透過/非透過)の切り替え表示をする公知の構造のものである。
【0025】
図示のように、周辺光である入射光5が表示装置1の前面側から光拡散シート4に入射すると、入射時にはそのまま透過して、透過光は液晶パネル2の背面側の反射体3で反射し、出射時には光拡散シート4によって光拡散が生じて前面に出射し、観察者7の観察域に集光するように表示光が到達することになる。
【0026】
図2および図3は、図1に示した光拡散シート4をホログラム記録により作製する光学系の一例を示す構成図である。
【0027】
光拡散シートへの入射光の光軸に対して、光拡散シートからの出射光(拡散光)の光軸がずれるものは、図2に示すように1つのレーザー光源10から出射されたレーザービームをビームスプリッタ11により2つに分け、一方をすりガラスなどの拡散板12を照明した拡散光13である物体光とし、他方を球面波や平面波である参照光14として、その2つの光波の干渉縞をまずホログラム用感光材料15に記録し、現像漂白処理することにより作製することができる。
【0028】
また、光拡散シートへの入射光の光軸と光拡散シートからの出射光(拡散光)の光軸が同じであるものは、図3に示すように、図2のように作製したマスターホログラム22を再生して拡散板の像をホログラム用感光材料25上に結像し、また再生光23の光軸と参照光23の光軸を一致させた参照光23でホログラム用感光材料25を照明して、再度ホログラフィックな撮影記録を行ない、それを現像漂白処理することにより作製することができる。
【0029】
図2および図3の光学系を用いた上記のようなホログラム記録方法により、光拡散シート4を作製することができ、液晶表示パネル2の前面に配置して使用される。
【0030】
なお、図2および図3の光学系における、前記光拡散シート4を作成する際の、拡散板12とホログラム用感光材料15との距離や拡散板12のサイズが前記光拡散シート4の光拡散性を決定するため、本発明の反射型液晶表示装置1の最も良好に観察できる視域を考慮して0〜1m程度の距離における、液晶パネルの中心からの法線方向に対して0〜±75度程度の範囲で適宜選定している。
【0031】
また、図2および図3においては、露光光線が感光材料に対して斜めに入射しているが、この入射角が光拡散/直接透過という機能を生じさせる角度の選択性に影響するため、反射型液晶表示装置1の用途に応じて、0〜80度の間で適宜選択される。
【0032】
また、拡散板21のサイズと拡散性は光拡散シート4の光拡散性に影響するため、サイズは一辺の長さが1〜500mmの範囲で、拡散性は擦りガラスの番数で10〜10000番の間の適当番数で適宜選択している。
【0033】
本発明の反射型液晶表示装置の液晶表示パネル2には、R・G・B画素に対応してカラーフィルタを搭載したカラー表示用パネル、またはモノクロ表示用パネルのいずれを使用しても良い。
また、TN方式,STN方式,ゲストホスト方式,ポリマー分散型など液晶の駆動方式に特に限定されるものではない。
【0034】
また、液晶表示パネル2の背面に配置される反射板3には、正反射性の反射板または光拡散性の反射板のいずれを使用しても良い。
あるいは、液晶パネル2中に内在する液晶を駆動させる電極を反射電極としても良い。
【0035】
光拡散シート4の作製に使用するアルゴンイオンレーザは、514.5nmの波長のレーザ光(緑色),488nmのレーザー光(青緑色)または波長457.9nmの波長のレーザ光(青色)を用いることができる。
また、アルゴンイオンレーザー以外でもコヒーレント性の良いレーザー光源であれば使用可能で、例えばヘリウムネオンレーザーやクリプトンイオンレーザーなどが使用できる。
【0036】
また、被写体の拡散板12としては、例えば、すりガラスを用い、ホログラム用感光材料15,25としては、例えばアグファゲバルト社製の緑用、青用のホログラム用銀塩感光材料を用いることができる。
【0037】
本発明の一実施例では、ホログラム記録方法により1000番のすりガラスをアルゴンレーザーの514.5nmの発振光を用いて、アグファゲバルト社製8E56ホログラム用銀塩感光材料に記録した後、現像にはCWC2現像液を用い、漂白にはPBQ2漂白液を用いて現像,漂白,水洗,乾燥を行なったものを、TN型液晶を用いた反射型液晶表示装置に図1のような構成にて実施した。
【0038】
また、体積位相型ホログラムの場合は、上記の銀塩感光材料や重クロム酸ゼラチン、フォトポリマーなどを使用して作製される。
表面レリーフホログラムの場合は、図3におけるホログラム用感光材料25にフォトレジストを使用して作製、あるいはそれを原版(スタンパ)として熱可塑性樹脂シートへのエンボス法などで複製したエンボスホログラムを使用することができる。
【0039】
尚、図1の実施形態では、表示装置への周辺光の入射時に光拡散せずに透過し、表示装置から表示光が出射時に光拡散するような異方性についての説明であったが、その逆に、表示装置への周辺光の入射時に光拡散して透過し、表示装置から表示光が出射時に光拡散せずに透過するような異方性であっても良い。
【0040】
実際、光拡散シートを反射型液晶表示装置に適用する場合、反射体からの反射光が液晶パネルを通過して変調される表示パターンを鮮明に視覚するには、変調後の表示パターンを拡散させるよりも、変調前(表示装置への周辺光の入射時)に拡散させた方が、高精細な表示の上では好適となる。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、異方性を持ち、範囲の限定された光拡散性を持つ光拡散シートを反射型液晶表示装置の光拡散板として液晶表示パネルの前面に配置することにより、以下のような効果が列挙できる。
異方性(入射角度選択性)により、不要な光拡散を無くし、画素ずれによる2重像を防ぐようにできる。
集光させることによる光拡散範囲の限定(出射角度選択性)により、観察位置に表示光を多く出射させることができ、明るく高コントラストで高精細な表示が可能となる。
【0042】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の反射型液晶表示装置を概念的に示す説明図。
【図2】光拡散シートをホログラム記録により作製する光学系(1ステップ目)の一例を示す説明図。
【図3】光拡散シートをホログラム記録により作製する光学系(2ステップ目)の一例を示す説明図。
【符号の説明】
1…反射型液晶表示装置
2…液晶表示パネル
3…反射体
4…光拡散シート
5…入射光(周辺光)
6…出射光(表示光)
7…観察者
10…レーザー光源
11…ビームスプリッタ
12…拡散板
13…拡散光
14…参照光
15…ホログラム用感光材料
16a,16b,16c,26a,26b,26c…反射鏡
17 a,17b,27 a,27b…空間フィルタ
18 a,18b,28 a,28b…レンズ
20…レーザー光源
21…ビームスプリッタ
22…マスターホログラム
23…回折光
24…参照光
25…ホログラム用感光材料
Claims (6)
- 液晶パネルの背面(観察者とは反対側)に反射体が配置され、液晶パネル前面(観察者側)から入射する周辺光を、前記反射体で液晶パネル側に反射し、液晶パネルで変調された表示光を観察者に視覚させる反射型液晶表示装置において、液晶パネルの前面(観察者側)に、特定角度の入射光を透過して他の角度からの入射光を拡散する入射角選択性を持つ、または出射方向と範囲を制御可能な出射角度選択性の、光拡散シートを配置してなることを特徴とする反射型液晶表示装置。
- 前記光拡散シートが特定範囲の角度で入射する光のみを透過回折し、前記角度以外で入射する光は透過回折しないような入射角度選択性を有する体積位相透過型ホログラムからなることを特徴とする請求項1記載の反射型液晶表示装置。
- 前記光拡散シートが表面レリーフホログラムからなることを特徴とする請求項1記載の反射型液晶表示装置。
- 反射体は、入射光を正反射させる機能を持つことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の反射型液晶表示装置。
- 反射体は、入射光を光拡散させる機能を持つことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の反射型液晶表示装置。
- 反射体が、液晶を駆動させるための電極を兼ねる請求項1から5の何れかに記載の反射型液晶表示装置。
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