JP3711747B2 - インクジェット記録用紙及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用紙に関し、特に光沢に優れ、インクジェット記録適性に優れたインクジェット記録用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタによる記録は、騒音が少なく、高速記録が可能であり、かつ、多色化が容易なために多方面で利用されている。インクジェット記録用紙としては、インク吸収性に富むように工夫された上質紙や、表面に多孔性顔料を塗工した塗工紙等が適用されている。ところで、これらの用紙はすべて表面光沢の低い、いわゆるマット調のインクジェット記録用紙が主体であるため、表面光沢の高い、優れた外観を持つインクジェット記録用紙が要望されている。
一般に、表面光沢の高い用紙としては、表面に板状顔料を塗工し、さらに必要に応じてキャレンダー処理を施した高光沢を有する塗工紙、あるいは湿潤塗工層を鏡面を有する加熱ドラム面に圧着、乾燥することにより、その鏡面を写し取ることによって得られる、いわゆるキャスト塗工紙が知られている。
このキャスト塗工紙はスーパーキャレンダー仕上げされた通常の塗工紙に比較して高い表面光沢とより優れた表面平滑性を有し、優れた印刷効果が得られることから、高級印刷物等の用途に専ら利用されているが、インクジェット記録用紙に利用した場合、種々の難点を抱えている。
【0003】
すなわち、一般に従来のキャスト塗工紙は、例えばUS5275846号に開示されている。その塗工層を構成する顔料組成物中の接着剤等の成膜性物質がキャストコーターの鏡面ドラム表面を写し取ることにより高い光沢を得ている。他方、この成膜性物質の存在によって塗工層の多孔性が失われ、インクジェット記録時のインクの吸収を極端に低下させる等の問題を抱えている。そして、このインク吸収性を改善するには、キャスト塗工層がインクを容易に吸収できるようにポーラスにしてやることが重要であり、そのためには成膜性を減ずることが必要となるが、成膜性物質の量を減らすことにより、結果として白紙光沢が低下する。以上の如く、キャスト塗工紙の表面光沢とインクジェット記録適性の両方を同時に満足させることが極めて困難であった。
上記問題を解決する方法として、顔料および接着剤を主成分とする記録層を設けた原紙上に、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる40℃以上のガラス転移点を有する共重合体組成物を主成分とする塗工液を塗工してキャスト用塗工層を形成せしめ、該キャスト用塗工層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げることにより、優れた光沢とインク吸収性を兼ね備えるインクジェット記録用キャスト紙が得られることを本発明者等は見出し、特開平7-89220号として提案した。
ところで、近年インクジェット記録の高速化、記録画像の高精細化、フルカラー化といった用途の拡大に伴い、さらに強光沢かつ高画質、高記録濃度の品質が望まれてきており、例えば銀塩方式の写真用印画紙に匹敵する様な光沢、記録品質が求められているが、このような要求を満たすには、先に提案した技術を使用しても達成が困難であるのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、光沢性に優れ、印字濃度、記録画質等のインクジェット記録適性に優れたインクジェット記録用紙を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は下記の態様を含む。
〔1〕基材にキャスト塗工層を設けたインクジェット記録用紙において、基材に顔料および接着剤を含有する下塗り層を少なくとも1層設け、さらに該下塗り層上にキャスト塗工層が設けられており、該下塗り層の顔料が平均2次粒子径2μm〜8μmの無定形シリカ粒子を含有し、更に、下塗り層がエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂とコロイダルシリカとの複合体を含有し、且つ、キャスト塗工層が、1次粒子の平均粒子径が3nm以上40nm以下で、2次粒子の平均粒子径が10nm以上400nm以下であるシリカ微細粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0006】
〔2〕キャスト塗工層が、カチオン性化合物を含有することを特徴とする1記載のインクジェット記録用紙。
【0007】
〔3〕キャスト塗工層が、基材に若しくは基材に設けた下塗り層に、キャスト塗工層用塗工液を塗工し、その塗工層が湿潤状態にある間に、または乾燥後再湿潤した後に、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げてなる1または2記載のインクジェット記録用紙。
【0008】
〔4〕キャスト塗工層が、基材に若しくは基材に設けた下塗り層に、キャスト塗工層用塗工液を塗工し、半乾燥した後に、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げてなる1、2、または3記載のインクジェット記録用紙。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる基材としては、特に限定されるものではなく、一般の塗工紙に使用される酸性紙、あるいは中性紙等の紙基材が適宜使用される。また透気性を有する樹脂シート類も用いることができる。 紙基材は木材パルプと必要に応じ顔料を主成分として構成される。木材パルプは、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を使用することができ、これらのパルプは、紙力、抄紙適性等を調整するために、叩解機により叩解度を調整できる。パルプの叩解度(フリーネス)は特に限定しないが、250〜550ml(CSF:JISP−8121)程度である。顔料は不透明性等を付与したり、インク吸収性を調整する目的で配合し、炭酸カルシウム、焼成カオリン、シリカ、酸化チタン等が使用できる。この場合、配合量は1〜20%程度が好ましい。多すぎると紙力が低下するおそれがある。助剤としてサイズ剤、定着剤、紙力増強剤、カチオン化剤、歩留り向上剤、染料、蛍光増白剤等を添加することができる。さらに、抄紙機のサイズプレス工程において、デンプン、ポリビニルアルコール、カチオン樹脂等を塗布・含浸させ、表面強度、サイズ度等を調整できる。サイズ度は1〜200秒程度が好ましい。サイズ度が低いと、塗工時に皺が発生する等操業上問題となる場合があり、高いとインク吸収性が低下したり、印字後のカールやコックリングが著しくなる場合がある。基材の坪量は、特に限定されないが、20〜400g/m2 程度である。
【0010】
透気性樹脂シートとしては、透明または不透明な樹脂フィルムまたはシートに機械的処理で貫通多孔を付与したもの、樹脂中に顔料等を配合しフィルムまたはシート状に成型した後、延伸し多孔を形成させたもの、樹脂中に顔料や化合物等の溶媒等で溶出するような物質を配合しフィルムまたはシート状に成型した後、溶媒で処理して顔料や化合物等を溶出させた多孔を形成させたものなどを用いることができる。
【0011】
基材上には、インクの吸収容量、吸収速度を高める目的で、下塗り層を設ける。基材上に設けられる下塗り層は、顔料と接着剤を主成分として構成される。
下塗り層中の顔料は、カオリン、クレー、焼成クレー、非晶質シリカ(無定形シリカともいう)、合成非晶質シリカ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、アルミナ、コロイダルシリカ、ゼオライト、合成ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイト、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等、一般塗工紙製造分野で公知公用の各種顔料を1種もしくはそれ以上、併用することが出来る。これらの中でも、インク吸収性の高い無定形シリカ、アルミナ、ゼオライトを主成分として使用するのが好ましい。
【0012】
本発明は、下塗り層中の顔料として、平均2次粒子径が2μm以上8μm以下であるシリカ粒子を含有する。2μm未満ではインク吸収速度が低下しインク量が多い場合にインクのニジミが生じる恐れがある。8μmを超えて大きい場合、下塗り層を設けた後の表面の平滑性が不十分となるため、光沢が不十分となったり、外観に劣るものとなる恐れがある。また、後述するように、キャスト方式により光沢層を設けた場合、キャストドラムとの密着が不十分となり、表面がざらついたり、光沢むらが生じたりし、外観の劣るものとなる恐れがある。該無定形シリカ2次粒子は、本発明の目的とする外観、印字品位に優れたものを得るため、全顔料の50%以上であるのが好ましい。平均1次粒子径は特に限定しないが、例えば3nm〜50nmである。
【0013】
下塗り層中の接着剤としては、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の各種変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、等一般に塗工紙用として用いられている従来公知の接着剤が単独、あるいは併用して用いられる。顔料と接着剤の配合割合は、その種類にもよるが、一般に顔料100重量部に対し接着剤1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部の範囲で調節される。その他、一般塗工紙の製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が適宜添加される。下塗り層中には蛍光染料、着色剤を添加することもできる。
【0014】
下塗り層中には、インクジェット記録用インク中の染料成分を定着する目的で、カチオン性化合物を配合することもできる。ただし、後で述べる様に、インク染料は下塗り層上に設けるキャスト塗工層にできるだけ定着させた方が、印字(記録)濃度が高くなるため好ましく、このためには、下塗り層中よりもキャスト塗工層中にカチオン性化合物を多く配合するのが好ましい。更に好ましくは、キャスト塗工層のみにカチオン性化合物を配合し、下塗り層中にはカチオン性化合物が実質的に存在しないのが良い。実質的に存在しないとは、例えばカチオン性界面活性剤等を助剤的に微量添加することは除外される。キャスト塗工層のみにカチオン性化合物を配合し、下塗り層中にはカチオン性化合物が実質的に存在しない場合に、キャスト塗工層を設けた際の光沢が最も発現し易い。
【0015】
本発明は、下塗り層中には、コロイダルシリカとエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂との複合体を配合する。配合すると、キャスト塗工層を設けた際の光沢がより発揮される。この理由は必ずしも明らかではないが、前記複合体の存在が、下塗り層のインク吸収性を維持したまま、キャスト塗工層用塗工組成物の下塗り層への浸透を抑制するためと推定される。更にその理由は不明であるがキャスト方式によりキャスト塗工層を設けた場合のキャストドラムからの離型性が向上する傾向がある。
【0016】
エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等のアルキル基炭素数が1〜18個のアクリル酸エステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のアルキル基炭素数が1〜18個のメタクリル酸エステル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、エチレン、ブタジエン等のエチレン性モノマーを重合して得られる重合体が挙げられる。
なお、重合体は、必要に応じて2種類以上のエチレン性モノマーを併用した共重合体であっても良いし、さらに、これら重合体あるいは共重合体の置換誘導体でも良い。因みに、置換誘導体としては、例えばカルボキシル基化したもの、またはそれをアルカリ反応性にしたもの等が例示される。
【0017】
コロイダルシリカとの複合化は、上記のエチレン性モノマーをシランカップリング剤等とコロイダルシリカの存在下で重合させ、Si−O−R結合(R:重合体成分)によって複合体にする、あるいは必要に応じシラノール基等で変性した重合体樹脂とコロイダルシリカを反応させ、Si−O−R結合(R:重合体成分)によって複合体にする方法が挙げられる。
上記複合体の重合体成分のTg(ガラス転移点)は40℃以上が好ましく、50〜100℃の範囲がより望ましい。Tgが低いと乾燥の際に成膜が進みすぎるためか、インクの吸収が遅くなりにじみが発生する恐れがある。さらに、その理由は不明であるが、Tgが40℃以上の場合、キャスト方式によりキャスト塗工層を設けた場合のキャストドラムからの離型性がより向上する傾向がある。
【0018】
上記材料をもって構成される下塗り層用塗工液は、一般に固形分濃度を5〜50重量%程度に調整し、紙基材上に乾燥重量で2〜100g/m2 、好ましくは5〜50g/m2 程度、更に好ましくは10〜20g/m2 程度になるように塗工する。塗工量が少ないと、インク吸収性が劣ったり、キャスト層を設けた際に光沢が十分に出なかったりする場合があり、多いと、印字濃度が低下したり、塗工層の強度が低下し粉落ちや傷が付き易くなる場合がある。下塗り層用塗工液は、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、ダイコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の各種公知公用の塗工装置により塗工、乾燥される。さらに、必要に応じて記録層(下塗り層)の乾燥後にスーパーキャレンダー、ブラシ掛け等の平滑化処理を施すこともできる。
【0019】
本発明では、基材に設けた上記の顔料と接着剤を含む下塗り層(記録層)上にさらにキャスト塗工層を設ける。このキャスト塗工層は、特定のシリカ微細粒子と接着剤を主成分とする。まず、このシリカ微細粒子について説明する。
本発明に用いるシリカ微細粒子の調製方法は特に限定するものではないが、例えば、一般的に市販されている合成非晶質シリカ(例えば平均2次粒子径は数ミクロン程度のもの)を機械的手段により強い力を与えて平均2次粒子径を小さくすることにより得ることが出来る。この機械的手段としては、超音波ホモジナイザー、圧力式ホモジナイザー、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体撹拌ミル、ジェットミル、サンドグラインダー等があげられる。このようにして処理されたシリカ微細粒子は、一般に固形分濃度が5〜20%程度の水分散体(スラリーあるいはコロイド粒子)として得られる。
【0020】
本発明でいう平均粒子径とは、電子顕微鏡(SEMとTEM)で観察した粒子径である(1万〜40万倍の電子顕微鏡写真を撮り、5cm四方中の粒子のマーチン径を測定し、平均したもの。「微粒子ハンドブック」( 朝倉書店) のP52、1991年等に記載されている。)。
本発明で用いるシリカ微細粒子(実質的に2次粒子が主体)の平均粒子径は、10nm以上400nm以下であり、好ましくは10nm以上300nm以下であり、より好ましくは15nm以上150nm以下、最も好ましくは20nm以上100nm以下に調整される。シリカ微細粒子の2次粒子の平均粒子径が400nmを越えると、キャスト塗工層の透明性が低下し、キャスト塗工層中に定着された染料の発色性が低下し、所望とする印字濃度が得られない。また、2次粒子の平均粒子径が極めて小さいシリカ微細粒子を使用すると、インキ吸収性が低下し、所望とする画像品位を得ることが出来ない。
【0021】
また、シリカ微細粒子の1次粒子の平均粒子径は、3nm以上40nm以下に調整する必要があり、好ましくは5nm以上30nm以下、より好ましくは7nm以上20nm以下である。この1次粒子径の平均が3nm未満になると1次粒子間の空隙が著しく小さくなり、インキ中の溶剤やインキを吸収する能力が低下し、所望とする画像品位を得ることが出来ない。また、1次粒子径の平均が40nmを越えると、凝集した2次粒子が大きくなり、キャスト塗工層の透明性が低下し、キャスト塗工層中に定着された染料の発色性が低下し、所望とする印字濃度が得られない。本発明の効果を阻害しない範囲で上記特定のシリカ微細粒子以外の顔料(例えば下塗り層に関し例示したもの)を併用することもできるが、粒子径は500nm以下が好ましく、より好ましくはシリカ微細粒子に関し前記した平均2次粒子径の範囲である。
【0022】
キャスト塗工層の全顔料中におけるシリカ微細粒子の比率は、記録層の透明性を維持するために、50%以上が望ましい。全顔料中のシリカ微細粒子の比率が50%未満になると透明性の低下が著しく、印字濃度等の画像品位が低下する場合もある。
接着剤としては、水溶性樹脂(例えばポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白質類、でんぷん、カルボキシルメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体)、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系重合体ラテックス、スチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体ラテックス等の水分散性樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等、その他一般に塗工紙分野で公知公用の各種接着剤が単独あるいは併用して使用される。
接着剤の配合量は顔料100重量部に対し1〜200重量部、より好ましくは10〜100重量部の範囲で調節される。ここで接着剤の量が少ないと、塗工層の強度が弱くなり表面が傷つきやすくなったり、粉落ちが発生する場合がある。逆に接着剤の量が多いと、インク吸収性が低下し、所望のインクジェット記録適性が得られなくなる場合がある。
【0023】
キャスト塗工層には、インク中の染料成分を定着させる目的で、カチオン性化合物を配合するのが好ましい。配合の方法は、前記シリカ微細粒子に混合すれば良いのだが、シリカ微細粒子は一般にアニオン性であり、混合の際凝集が起こり、粒子径が大きくなる場合がある。この場合、一般的に市販されている非晶質シリカ(数ミクロンの平均2次粒子径を有する) を機械的手段により強い力を与えて微細粒子化処理する際、処理前の非晶質シリカにカチオン性化合物を一緒に混合分散してから機械的手段により分散・粉砕するか、あるいは微細化したシリカ2次粒子分散体に混合し、一旦増粘・凝集させた後、再度機械分散・粉砕する方法等をとることにより前記特定の平均2次粒子径とすることができる。尚、平均1次粒子径は、粉砕処理しても変化しない。
【0024】
カチオン性化合物としては、カチオン性樹脂や低分子カチオン性化合物(例えばカチオン性界面活性剤等)が例示できる。印字濃度向上の効果の点ではカチオン性樹脂が好ましく、水溶性樹脂あるいはエマルジョンとして使用できる。更にカチオン性樹脂を架橋等の手段により不溶化し粒子状の形態としたカチオン性有機顔料としても使用できる。このようなカチオン性有機顔料は、カチオン性樹脂を重合する際、多官能性モノマーを共重合し架橋樹脂とする、あるいは反応性の官能基(水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アセトアセチル基等)を有するカチオン性樹脂に必要に応じ架橋剤を添加し、熱、放射線等の手段により架橋樹脂としたものである。
カチオン性化合物、特にカチオン性樹脂は接着剤としての役割を果たす場合もある。
【0025】
カチオン性樹脂は下記のものが例示できる。
具体的には、1)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類またはその誘導体、2)第2級アミン基や第3級アミン基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、3)ポリビニルアミン、ポリビニルアミジン類、4)ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カチオン樹脂、5)ジシアンジアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カチオン樹脂、6)エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、7)ジメチルジアリルアンモニウムクロライド−S02 共重合物、8)ジアリルアミン塩−S02 共重合物、9)ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、10)アリルアミン塩の重合物、11)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩重合物、12)アクリルアミド−ジアリルアミン塩共重合物等のカチオン性化合物。
【0026】
カチオン性化合物は、さらに印字画像耐水性を向上させる効果も有する。キャスト塗工層に配合するカチオン性化合物は顔料100重量部に対し、1〜100重量部、より好ましくは5〜50重量部の範囲で使用することができる。配合量が少ないと印字濃度向上の効果が得られにくく、多いと逆に印字濃度が低下したり、画像のニジミが発生する恐れもある。
キャスト方式とは、塗工層を、平滑性を有するキャストドラム(鏡面仕上げした金属、プラスチック、ガラス等のドラム)、鏡面仕上げした金属板、プラスチックシートやフィルム、ガラス板等上で乾燥し、平滑面を塗工層上に写し取ることにより、平滑で光沢のある塗工層表面を得る方法である。鏡面等の平滑面は好ましくは表面粗さ(JIS B−0601)は、Raが0.5μm以下であり、より好ましくは0.05μm以下である。
キャスト塗工層を設ける方法としては加熱下で平滑面と接することにより平滑な塗工層を得ることが好ましい。例えば、上記のキャスト塗工層用塗工液を下塗り層上に塗工して、該塗工層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(ウェットキャスト法)、あるいは一旦乾燥後再湿潤した後加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(リウェットキャスト法)等が例示できる。一般にウェットキャスト法の方が光沢、インク吸収性に優れるものとなり易く、リウェットキャスト法の方が生産性に優れたものとなり易い。
【0027】
また加熱された鏡面ドラムに直接キャスト塗工層用塗工液を塗工した後、基材面に或いは下塗り層を設けた基材の下塗り層面に圧接、乾燥して仕上げる方法(プレキャスト法)も採用することができる。
加熱温度は例えば40〜200℃、好ましくは70〜150℃で、鏡面ドラム等に接する時間も限定しないが、例えば1〜60秒程度である。
【0028】
さらに、上記のキャスト塗工層用塗工液を基材に設けた下塗り層上に塗工して、このキャスト塗工層をある程度乾燥し、半乾燥の状態にある間に、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げると、均一な塗工層が形成されやすく、印字濃度が高く、光沢の優れたキャスト塗工層が得られ易いため特に好ましい。ここで半乾燥とは、塗工層の流動性はほとんど無くなっているが、水分は多く含んでいる状態を意味し、塗工層絶乾重量に対して20〜400%(即ち塗工層の絶乾重量100重量部に対し20〜400重量部の水分を含む)程度とするのが好ましく、より好ましくは50〜200%の範囲で調整される。水分が少ないと鏡面ドラムに圧接した際の鏡面の転写が不十分となり、十分に光沢が発揮されにくい。多いと鏡面ドラムに圧接した際、塗工層が押しつぶされ均一で十分な塗工量の塗工層が得られず、印字濃度や光沢が不十分となり易い。さらに、塗工層が鏡面ドラムに転移付着して光沢が低下したり、鏡面ドラムが汚れて操業上問題となるおそれが生じる。
【0029】
キャスト塗工層用塗工液を基材上に設けた下塗り層上に塗工して、キャスト塗工層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる場合、均一で十分な塗工量の塗工層を得る目的で、キャスト塗工層用塗工液の不動化を促進する方法を採ることもできる。この方法としては例えば、(1)下塗り層中にキャスト塗工層用塗工液の不動化を促進する様なゲル化剤を配合しておく、(2)下塗り層上にキャスト塗工層用塗工液の不動化を促進する様なゲル化剤を塗工・含浸させる、(3)キャスト塗工層用塗工液を塗工した後、キャスト塗工層用塗工液の不動化を促進する様なゲル化剤を表面に塗工・含浸させる、(4)キャスト塗工層用塗工液中に塗工液が乾燥する過程で不動化が促進されるようなゲル化剤を配合しておくことが挙げられる。この様なゲル化剤としては、キャスト塗工層用塗工液中の接着剤の架橋剤であるほう酸、ぎ酸等およびそれらの塩、アルデヒド化合物、エポキシ化合物等が例示できる。
キャスト塗工層用塗工組成物と同様の組成物を、下塗り層上に塗工し乾燥または半乾燥した後、該塗工層上にさらにキャスト塗工層用塗工組成物を塗工し、キャストドラム上で乾燥することもできる。
【0030】
キャスト塗工層用塗工組成物中には白色度、粘度、流動性等を調節するために、一般の印刷用塗工紙やインクジェット用紙に使用されている顔料、消泡剤、着色剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、防腐剤及び分散剤、増粘剤等の各種助剤が適宜添加される。また、キャストドラム等からの離型性を付与する目的で、離型剤を添加することができる。
前述したキャスト塗工層用塗工液を下塗り層上に塗工する場合、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、グラビアコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等の各種公知の塗工装置が使用できる。
キャスト塗工層の塗工量は、乾燥固形分で1〜30g/m2 、好ましくは1.5〜20g/m2 、より好ましくは、3〜15g/m2 である。ここで、1g/m2 未満では印字濃度や光沢が十分に出ない場合があり、30g/m2 を越えて多いと効果は飽和し、乾燥に負担がかかり操業性が低下する恐れがある。
キャスト塗工層をキャスト仕上げにより設けた後で、さらにスーパーカレンダー等により平滑化処理を行うこともできる。
【0031】
本発明により、光沢およびインクジェット記録適性に特に優れたインクジェット用紙が得られる理由は、以下の如く考えられる。
まず、印字品質を向上させる理由について述べる。キャスト塗工層に使用するシリカ微細粒子の2次粒子径を小さくすると、キャスト塗工層の透明性が増し、光沢層に保持されたインキの発色が、より透明性の増したキャスト塗工層によって妨げられ難くなり、結果として、画像品位(印字濃度)が向上すると思われる。さらに、キャスト塗工層にカチオン性化合物が含有される態様では、キャスト塗工層にインク中の染料成分が選択的に定着されるため上記の効果がより発現され好ましい。また、下塗り層の存在は、インクを速やかに吸収する働きをするが、キャスト塗工層にカチオン性化合物が含有され、且つ下塗り層中には実質的にカチオン性化合物が含有されない態様では、キャスト塗工層はインク中の染料成分を選択的に定着し、下塗り層はインク中の溶媒成分を速やかに吸収するためか、印字濃度と吸収性に優れる。
次に、光沢性が向上する理由について述べる。キャスト塗工層はキャスト方式により設けるため、キャストドラムの平滑性が転写され、光沢に優れたものとなるのに加え、キャスト塗工層に使用するシリカ微細粒子の2次粒子径が十分に小さいため、光の乱反射が少なくキャスト塗工層表面の光沢は一層高いものとなる。
尚、75度光沢度は30%以上が好ましく、より好ましくは35%以上であり、最も好ましくは50%以上である。
【0032】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。また、例中の部および%は特に断らない限り、それぞれ重量部および重量%を示す。
「紙基材の作製」
木材パルプ(LBKP;ろ水度500mlCSF)100部、焼成カオリン(商品名:アンシレックス、エンゲルハードミネラル社製)10部、市販サイズ剤0.05部、硫酸バンド1.5部、湿潤紙力剤0.5部、澱粉0.75部よりなる製紙材料を使用し、長網抄紙機にて坪量120g/m2 の紙基材を製造した。この紙基材のステキヒトサイズ度は10秒であった。本発明の実施例、比較例ではすべてこの紙基材を用いた。
【0033】
「シリカ微細粒子の調製」
[シリカ微細粒子A]合成非晶質シリカ(トクヤマ社製、商品名:ファインシールX−45、平均2次粒子径4.5μm、平均1次粒子径15nm)の水分散液を用い、圧力式ホモジナイザー(SMT社製、商品名:超高圧式ホモジナイザーGM−1)を用いて粉砕の操作を繰り返した(加圧500kg/cm2 )。処理後の分散液中のシリカの平均2次粒子径は50nm、固形分濃度は12%であった(平均1次粒子径は15nmのまま)。
[シリカ微細粒子B]合成非晶質シリカ(日本シリカ工業社製、商品名:Nipsil HD−2、平均2次粒子径3μm、平均1次粒子径11nm)の水分散液を用い、圧力式ホモジナイザー(SMT社製、商品名:超高圧式ホモジナイザーGM−1)を用いて粉砕の操作を繰り返した(加圧500kg/cm2 )。処理後の分散液中のシリカの平均2次粒子径は200nm、固形分濃度は12%であった(平均1次粒子径は11nmのまま)。
【0034】
[シリカ微細粒子C]合成非晶質シリカ(日本シリカ工業社製、商品名:Nipsil LP、平均2次粒子径9μm、平均1次粒子径16nm)の水分散液を用い、圧力式ホモジナイザー(SMT社製、商品名:超高圧式ホモジナイザーGM−1)を用いて粉砕の操作を繰り返した(加圧500kg/cm2 )。処理後の分散液中のシリカの平均2次粒子径は500nm、固形分濃度は12%であった(平均1次粒子径は16nmのまま)。
「シリカ微細粒子とカチオン性化合物の混合」以下の実施例、比較例で、上記したシリカ微細粒子A、BまたはCとカチオン性化合物を混合する際は、両者を混合分散後、さらに圧力式ホモジナイザー(SMT社製、商品名:超高圧式ホモジナイザーGM−1)を用いて粉砕し(加圧500kg/cm2 )、分散液中のシリカの平均2次粒子径が、それぞれもとのシリカ微細粒子の平均2次粒子径になるまで処理した(平均1次粒子径は処理前と同じ)。
【0035】
実施例1
紙基材上に、下記下塗り層用塗工液を、乾燥重量で12g/m2 になるように、エアーナイフコーターで塗工、乾燥した。
次に、下記キャスト塗工層用塗工液を、上記の下塗り層上にエアーナイフコーターで塗工し、冷風で20秒乾燥し半乾燥状態にした後(塗工層絶乾量に対する水分率150%)、表面温度が90℃の鏡面ドラムに圧接し、乾燥後、離型させ、光沢タイプのインクジェット記録用紙を得た。このときのキャスト塗工層の塗工量は固形分重量で、5g/m2 であった。鏡面ドラムは、鋼鉄ロール表面にニッケルをメッキし、更にその上にクロムをメッキし研磨して鏡面仕上げしたもの。表面粗さRaは0.03μmであった。
【0036】
[下塗り層用塗工液](固形分濃度17%、部は固形分重量部を示す。)
合成非晶質シリカ(ファインシールX−60;トクヤマ製、平均2次粒子径6.0μm、平均1次粒子径15nm)80部、ゼオライト(トヨビルダー;トーソー製、平均粒子径1.5μm)20部、シリル変性ポリビニルアルコール(R1130;クラレ製)20部、ガラス転移点75℃のスチレン−2メチルヘキシルアクリレート共重合体と粒子径30nmのコロイダルシリカとの複合体エマルジョン(共重合体とコロイダルシリカは重量比で40:60、エマルジョンの粒子径は80nm)40部、蛍光染料(WhitexBPSH;住友化学製)2部。
【0037】
[キャスト塗工層用塗工液](固形分濃度12%、部は固形分重量部を示す)
シリカ微細粒子A100部、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(カチオン性化合物:日東紡績社製、商品名;PAS−J−81) 10部、カチオン性アクリル樹脂(XC−2010;星光化学製、四級アミン変性アクリル水性樹脂、Tg85℃)20部、シリル変性ポリビニルアルコール(R1130;クラレ製)10部、離型剤(レシチン)2部。
【0043】
比較例1
下塗り層用塗工液として下記のものを用いた以外は、実施例1と同様にし光沢タイプのインクジェット記録用紙を得た。
[下塗り層用塗工液](固形分濃度17%、部は固形分重量部を示す。)
合成シリカ(ファインシールX−60;トクヤマ製、平均2次粒子径6.0μm、平均1次粒子径15nm)80部、ゼオライト(トヨビルダー;トーソー製)20部、シリル変性ポリビニルアルコール(R1130;クラレ製)20部、蛍光染料(WhitexBPSH;住友化学製)2部。
【0044】
比較例2
実施例1と同様のキャスト塗工層用塗工液を、紙基材上に直接(下塗り層を設けず)、エアーナイフコーターで塗工し、冷風で20秒乾燥し半乾燥状態にした後(塗工層絶乾量に対する水分率150%)、表面温度が100℃の鏡面ドラムに圧接し、乾燥後離型させ、光沢タイプのインクジェット記録用紙を得た。この時のキャスト層の塗工量は10g/m2であった。
比較例3
実施例1で用いたキャスト層用塗工液において、シリカ微細粒子をAからCに変更した以外は、実施例1と同様にして光沢タイプのインクジェット記録用紙を得た。
【0045】
比較例4
実施例1の下塗り層上に、ロールコーターを用いて下記のキャスト塗工層用塗工液を塗工した後、直ちに表面温度が85℃の鏡面ドラムに圧接し、乾燥後離型させ、光沢タイプのインクジェット記録用紙を得た。このときのキャスト塗工層の塗工量は固形分重量で、6g/m2であった。
[キャスト塗工層用塗工液](固形分濃度25%、部は固形分重量部。)
ガラス転移点75℃のスチレン−2メチルヘキシルアクリレート共重合体と粒子径30nmのコロイダルシリカ(一次粒子の分散体であり凝集していない)との複合体エマルジョン(共重合体とコロイダルシリカは、重量比で40:60、エマルジョンの粒子径は80nm)100部、増粘・分散剤(アルキルビニルエーテル・マレイン酸誘導体共重合体)5部、離型剤(レシチン)3部。
【0046】
比較例5
実施例1において下塗り層まで設けたものを用いた(キャスト塗工層なし)。
比較例6
紙基材をそのまま用いた。
【0047】
この様にして得られたインクジェット記録用紙のインクジェット記録適性、白紙光沢を表1にまとめて示した。
なお、上記の評価については下記の如き方法で評価を行った。
[インクジェット記録適性]
インクジェットプリンターBJC600J(キヤノン(株)製)を用いて印字を行なった。
(ベタ印字部の均一性)
シアンインクとマゼンタインクの2色混合のベタ印字部の印字ムラ(濃淡ムラ)を目視にて評価した。
○:印字ムラは全くなく優れたレベル。
○−:印字ムラは殆どなく良好なレベル。
△:印字ムラがあり、実用上やや問題となるレベル。
×:印字ムラが著しく、実用上重大な問題となるレベル。
(インクの乾燥性)
シアンインクとマゼンタインクの2色混合のベタ印字部につきインクの乾燥性を評価した。
○:印字直後に指で触れてもまったく汚れない。
×:印字直後に指で触れると汚れる。
(インクジェット記録後の印字濃度)
黒ベタ印字部分の印字濃度をマクベスRD−914で測定。
【0048】
〔光沢度〕
JIS−P8142に準じて白紙部の75°光沢を測定した。
〔目視外観〕
光沢感、平滑感を目視により評価
◎:極めて優れる。
○:優れる。
△:やや劣る。
×:劣る。
【0049】
〔総合評価〕
印字品位、光沢を総合的に評価
5:極めて優れる。
4:優れる。
3:普通。
2:やや劣る。
1:劣る。
【0050】
【表1】
【0051】
「シリカ微細粒子とカチオン性化合物の混合」前記したシリカ微細粒子Aとカチオン性化合物を混合する際は、両者を混合分散後、さらに圧力式ホモジナイザー(SMT社製、商品名:超高圧式ホモジナイザーGM−1)を用いて粉砕し(加圧500kg/cm2 )、分散液中のシリカの平均2次粒子径が、もとのシリカ微細粒子の平均2次粒子径になるまで処理した(1次粒子径は15nmのまま)。
【0052】
実施例2
紙基材上に、下記下塗り層用塗工液を、乾燥重量で10g/m2 になるように、エアーナイフコーターで塗工、乾燥した。
次に、下記キャスト塗工層用塗工液を、上記の下塗り層上にエアーナイフコーターで塗工し、冷風で20秒乾燥し半乾燥状態にした後(塗工層絶乾量に対する水分率150%)、表面温度が90℃の鏡面ドラムに圧接し、乾燥後、離型させ、光沢タイプのインクジェット記録用紙を得た。このときのキャスト塗工層の塗工量は固形分重量で、4g/m2であった。
[下塗り層用塗工液](固形分濃度17%、部は固形分重量部を示す。)
合成非晶質シリカ(ファインシールX−45;トクヤマ製、平均2次粒子径4.5μm、平均1次粒子径15nm)80部、ゼオライト(トヨビルダー;トーソー製、平均粒子径1.5μm)20部、シリル変性ポリビニルアルコール(R1130;クラレ製)20部、ガラス転移点75℃のスチレン−2メチルヘキシルアクリレート共重合体と粒子径30nmのコロイダルシリカとの複合体エマルジョン(共重合体とコロイダルシリカは重量比で40:60、エマルジョンの粒子径は80nm)40部、蛍光染料(WhitexBPSH;住友化学製)2部。
【0053】
[キャスト塗工層用塗工液](固形分濃度12%、部は固形分重量部を示す)
シリカ微細粒子A100部、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(カチオン性化合物:日東紡績社製、商品名;PAS−J−81)10部、カチオン性水性ウレタン樹脂(F−8564D;第一工業製薬製、Tg=73℃)25部、ステアリン酸アミド5部
【0054】
実施例3
合成非晶質シリカとして、ファインシールX−45に替えて、ファインシールX−37(トクヤマ製、平均2次粒子径2.5μm、平均1次粒子径15nm)を使用した以外は、実施例2と同様にして光沢タイプのインクジェット記録用紙を得た。
【0055】
比較例7
合成非晶質シリカとして、ファインシールX−45に替えて、ファインシールX−12(トクヤマ製、平均2次粒子径12.5μm、平均1次粒子径15nm)を使用した以外は、実施例2と同様にして光沢タイプのインクジェット記録用紙を得た。
【0056】
比較例5
合成非晶質シリカとして、ファインシールX−45に替えて、ファインシールF−80(トクヤマ製、平均二次粒子径1.5μm、平均1次粒子径15nm)を使用した以外は、実施例2と同様にして光沢タイプのインクジェット記録用紙を得た。
【0057】
この様にして得られたインクジェット記録用紙のインクジェット記録適性、白紙光沢を表2にまとめて示した。
なお、上記の評価については下記の如き方法で評価を行った。
[インクジェット記録適性]
インクジェットプリンターBJC600J(キヤノン(株)製)を用いて印字を行なった。
(ベタ印字部の均一性)
シアンインクとマゼンタインクの2色混合のベタ印字部の印字ムラ(濃淡ムラ)を目視にて評価した。
○:印字ムラは見られず良好なレベル。
△:印字ムラがややあり、実用上やや問題となるレベル。
×:印字ムラが著しく、実用上重大な問題となるレベル。
【0058】
(にじみ)
シアンインクとマゼンタインクのベタ印字部を境界を接して印字させた時のにじみの程度を目視にて評価した。
◎:にじみは見られず良好なレベル。
○:にじみはわずかに見られるが実用上問題のないレベル。
△:にじみが目立ち、実用上問題となるレベル。
×:にじみが著しく、実用上重大な問題となるレベル。
(インクの乾燥性)
シアンインクとマゼンタインクの2色混合のベタ印字部につきインクの乾燥性を評価した。
○:印字直後に指で触れてもまったく汚れない。
△:印字直後に指で触れると少し汚れるが実用上問題ない。
×:印字直後に指で触れると汚れが著しい。
(インクジェット記録後の印字濃度)
黒ベタ印字部分の印字濃度をマクベスRD−914で測定。
【0059】
〔光沢度〕
JIS−P8142に準じて白紙部の75°光沢を測定した。
〔外観〕
光沢ムラやざらつき等の表面の荒れ状態を目視により評価
◎:極めて優れる。
○:優れる。
△:やや劣るが実用上問題ない。
×:極めて劣る。
【0060】
【表2】
【0061】
【発明の効果】
本発明は、インク乾燥性、外観、光沢性に優れ、印字濃度、記録画質、ベタ均一性等のインクジェット記録適性に優れたインクジェット記録用紙であった。
Claims (4)
- 基材にキャスト塗工層を設けたインクジェット記録用紙において、基材に顔料および接着剤を含有する下塗り層を少なくとも1層設け、さらに該下塗り層上にキャスト塗工層が設けられており、該下塗り層の顔料が平均2次粒子径2μm〜8μmの無定形シリカ粒子を含有し、更に、下塗り層がエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂とコロイダルシリカとの複合体を含有し、且つ、キャスト塗工層が、1次粒子の平均粒子径が3nm以上40nm以下で、2次粒子の平均粒子径が10nm以上400nm以下であるシリカ微細粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
- キャスト塗工層が、カチオン性化合物を含有することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用紙。
- キャスト塗工層が、基材に若しくは基材に設けた下塗り層に、キャスト塗工層用塗工液を塗工し、その塗工層が湿潤状態にある間に、または乾燥後再湿潤した後に、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げてなる請求項1または2記載のインクジェット記録用紙。
- キャスト塗工層が、基材に若しくは基材に設けた下塗り層に、キャスト塗工層用塗工液を塗工し、半乾燥した後に、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げてなる請求項1、2、または3記載のインクジェット記録用紙。
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