JP3711546B2 - 燃料電池の電極構造及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、電解質膜型燃料電池の電極の構造及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は電解質を介しての酸化還元反応に基づく電力をさまざまな用途に利用しようとするものであって、このために電解質の両側に電極を配し反応ガスを供給するとともに、電力を回収できるように構成している。
燃料電池の1つの形態として固体高分子型燃料電池が知られている。固体高分子型燃料電池は、一般的に、水素イオン導電性の固体高分子電解膜を白金触媒を担持したカーボン電極で挟み込んで構成される発電素子すなわち固体高分子−電極接合体及び反応ガスを供給するためのガス通路溝が設けられ、発電素子を両側から支持するガス分離部材とを積層した構造を有する。そして、一方の電極に燃料ガスを供給し、他方の電極に酸化剤ガスを供給して、燃料ガスと酸素の化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換することによって電気エネルギーを抽出するようになっている。
固体高分子型燃料電池において、水素と酸素による電気化学反応が生じると電極間に電流が発生するとともに、カソード側に水が生成する。そして、固体高分子型燃料電池においては、他の燃料電池と比較して動作温度が約80℃と比較的低温であるために、可搬型の電源、特に電気自動車用のパワーソースに適している。
【0003】
しかし、自動車用として用いる場合には、燃料である水素ガスは、可搬型のタンク又は可搬型の改質装置等により自動車で確保する必要がある。一方、酸化剤ガスとしては、システムの軽量化、コスト面等の理由から空気が使用される。この場合、純酸素に比較して酸素分圧が約1/5と低下するので、燃料電池の反応の中で酸素還元反応速度及び物質移動の問題が生じる。
この問題に対して、一般的には、空気を圧縮して燃料電池に供給する方法が取られる。しかし、この場合、空気圧縮装置を駆動するためのエネルギーを消費するために、その分、燃料電池全体のエネルギー効率は低下することに注意すべきである。
このような事情に鑑み、低酸素分圧下でも高いエネルギー効率を達成するために、さまざまな手法が提案されている。
たとえば、触媒物質(80℃程度の低温状態で酸化還元反応に対し活性を有するのは通常は白金触媒である)を微粒化させることによって触媒活性を向上させること、耐腐食カーボン担持によって触媒物質の定着性を向上させること、アノードガス、カソードガスをイオン伝導体、触媒物質及び反応ガスとからなる三界相反応領域において触媒物質を偏在させる白金スパッタ薄膜を形成することによって触媒活性を向上させること、等が知られている。触媒活性は電極における触媒層の形成方法に依存する。
【0004】
触媒層を形成する手法として、特開平7−57738号公報には、触媒粉とPTFE粉とをカーボン基材またはフィルター上に成形した後、焼成圧着することによって触媒層を形成することが開示されている。
また、白金スパッタ薄膜を触媒層表面に形成することによって触媒の電気化学的特性を発揮する表面積が向上し、酸素還元反応活性が向上する。
しかし、白金スパッタ薄膜を触媒層表面に形成することについては以下のような問題がある。すなわち電極の固体高分子電解質膜表面に形成した白金スパッタ薄膜が触媒層表面を覆い、これによって水分等の移動を阻害することによって燃料電池の全体の発電効率を改善することができなくなるという問題である。
特に従来の方法で形成された白金スパッタ薄膜を備えた触媒層においては、スパッタのクラスターが平均的に100nm程度と大きい。このために触媒としての電気化学的活性表面積を有効に増大させることができず、スパッタ薄膜が本来的に狙いとする高活性化を有効に達成することができない。
【0005】
【解決しようとする課題】
本発明は、以上のような事情に鑑みて構成されたもので、独特の手法によって触媒層を形成することによって燃料電池の発電性能を改善することができ、しかもコスト的にも有利な燃料電池の電極構造を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成される。すなわち、本発明は、固体高分子電解質膜の一方の側にアノード側触媒層を有するアノード側触媒電極を設け、他方の側にカソード側触媒層を有するカソード側触媒電極を設けた燃料電池の電極構造において、触媒物質を担持するカーボンブラックを賦活処理し、賦活処理によって有効径が10〜100オングストロームの微細ポアを表面に形成して比表面積を賦活処理前に対して増大させたこの賦活処理カーボンブラックの表面に、スパッタリングによって触媒物質を担持させたスパッタ薄膜形成し、この複合スパッタ薄膜を、少なくとも前記カソード側触媒層における前記固体高分子電解質膜の表面に接して備えたことを特徴とする。
好ましくは、前記触媒物質は白金または白金含有合金とまたはこれらとカーボン粒子との複合体である。
【0007】
【発明の実施の形態】
燃料電池の電極反応は、電解質膜の両側の触媒層の内部で生じ、その反応が活発であるほど燃料電池から取り出すことができるエネルギーは増大する。すなわち、燃料電池の性能は向上する。しかし、上記電極反応によって生じる電流は、触媒層の厚さ方向に一様ではなく、電解質膜の界面に近い位置ほど活発であり、界面から離れるにしたがって、反応活性は低下する。
本発明はこのような燃料電池における電極反応現象の実態に着目してなされたものであって、電極反応の最も活発に生じる電解質膜界面近傍の触媒層領域においてより活発な反応を促すように構成するものである。
すなわち、本発明によれば、触媒層の電解質膜近傍においては、電極反応が促進される環境を作るためにカーボンブラックをアルカリあるいは水蒸気によって賦活処理し、比表面積を処理前の約2〜3倍にした後、触媒物質あるいは触媒物質を含む合金あるいは、これらと親水性材料粒子たとえばカーボン粒子との複合材料からある触媒物質含有材料をスパッタリングによって成層された賦活処理カーボンブラックの表面から触媒物質含有材料を担持させる。上記の賦活処理カーボンブラックは表面に10〜100程度の有効径の微細ポアを無数に有する構造となっている。したがってスパッタリング操作によって触媒物質含有材料の粒子は、賦活処理カーボンブラック担持体の表面の微細ポアによって担持される。
【0008】
触媒物質は、代表的には白金または白金合金(Pt/Cr,Pt/Co,Pt/Rh,Pt/Ni)等であり、塩還元法などで導電性と耐腐食性を有するカーボンブラックを担持体として上記触媒物質を担持させたものを使用する。本発明の手法によって形成された白金−賦活カーボンブラック、白金合金−賦活カーボンブラック、白金カーボンブラック複合体−賦活カーボンブラックあるいは白金含有合金カーボンブラック複合体−賦活処理カーボンブラックの組織からなる触媒層は、極めて高い触媒活性を有する。
カーボンブラックの賦活処理として任意の手法を用いることができるが、水蒸気賦活、アルカリ賦活がよく知られており、アルカリ賦活処理は、水酸化アルカリとを混合して活性温度に加熱して処理する。なお、賦活処理自体は公知であるので本発明の内容を構成しない。
賦活処理によってカーボンブラックの比表面積が約2〜3倍に増大し、この比表面積の増大した賦活処理カーボンブラックを触媒担持体として使用することが本発明の特徴である。
好ましい態様では、上記の高い触媒活性を有する触媒層の形成に際して、上記の触媒物質密度を高める操作に対応して高いイオン伝導体密度を与える。
【0009】
本発明にかかる高活性の触媒層を有する電極は、好ましい態様では、燃料電池のカソード電極として使用される。このようにして形成されたカソード電極においては、アノード側から電解質膜を介して移動してきたプロトンすなわちH+ とアノード電極において集電されて外部仕事をして外部回路を経由してカソード電極に供給される電子とのカソード側における結合を最も効率的に行わせることができる。すなわち酸化還元反応速度を高く維持することができるとともに、燃料電池の電解質膜及びその両側に配置される触媒層、拡散層を通じての物質移動抵抗を極力低く抑えることができるものである。
【0010】
触媒物質密度は触媒物質と担持体との重量比を変化させることによって調節することができる。スパッタリング操作を行なうための原料として、触媒物質と組み合わされる複合材料は、カーボンブラックのような親水性材料であることが好ましい。このように親水性材料と白金とを組合せることによって、良好な物質移動特性を容易に確保できるという利点がある。したがって、代表的には、上記のような触媒物質、触媒物質含有合金あるいは、触媒物質−親水性材料との複合材料を使用して通常の触媒層の表面にスパッタリングによって触媒物質含有材料担持賦活カーボンブラックの触媒層を形成する。
上記のイオン伝導体としてはスルホン酸基を有するフッ素樹脂などがあげられる。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
(本発明の実施例にかかる固体高分子電解質膜電極接合体)
全体構造
図1には、本発明の1実施例にかかる単一の固体高分子電解質膜電極接合体からなる燃料電池の断面の概略が示されている。
本例の燃料電池1は中央に固体高分子電解質膜2を備えその一方の側に燃料としての水素が供給される酸化電極すなわちアノード電極3、他方の側に還元反応用の酸素源としての空気が供給される還元極すなわちカソード電極4を備える基本構造になっている。
アノード電極3は、カーボンクロス31、その内側に拡散層32さらにその内側に触媒層33を積層して接合することによって構成されている。そして、アノード電極3の外側には、ガスの分離及び発電した電力の集電機能を有する溝付ガス分離板30が設けられている。
溝付ガス分離板30は、内部を燃料ガスである水素ガスがプロトンH+ を電解質膜側に供給しつつ流通するアノードガス通路34を画成するための深さ約1mmの溝を備えている。
【0012】
アノード電極3と溝付ガス分離板30とでアノード側電極接合体を構成する。カーボンクロス31の拡散層32との面接触部は、水素分子から発生する電子を集電する集電部を構成する。
カソード電極側も同様な構成になっており、カーボンクロス41、拡散層42、触媒層43の積層接合構造を有する。そしてカーボンクロス41の外側には溝付ガス分離板40を備えており、酸素ガスが外部に漏れ出ないようにまた、カーボンクロス表面を屈曲しつつ延びる溝をガスがショートパスしないように分離を行なう役割をもつ。
そして、溝付ガス分離板40は、電解質膜側からのプロトンH+ と接触して水を生成する酸素を流通させるカソードガス通路44を画成する溝を有している。
カソード電極4と溝付ガス分離板40とでカソード側電極接合体を構成する。
上記構成によって図1に概念的に示すようにアノード側から電解質膜2を介して移動してきたプロトンすなわちH+ とアノード電極3において集電されて外部仕事をして外部回路を経由してカソード電極4に供給される電子とのカソード電極側で結合される。すなわちアノード電極側では、水素分子が電子を奪われることによってプロトンH+ が発生し、カソード電極側では、電解質膜2を介して伝導されたプロトンH+ と外部負荷を有する外部回路からの電子とカソードガス通路から供給される酸素分子とが反応して水分子が生成する。
カソード電極4の中間の電解質膜2から各電極3、4に至る積層状態の詳細が図2に示されており、電解質膜2の外側には触媒層43が設けられ、その触媒層の電解質膜側表面には、白金−カーボンブラック複合スパッタ薄膜431が形成されている。そして、その外側に拡散層42が設けられ、さらにその外側にカーボンクロス41が接合されて電極4が構成され、その外側に溝付ガス分離板400が接合されることによってカソード側電極接合体が構成される。
【0013】
カーボンクロス
カーボンクロス31、41は、固体高分子電解質膜電極接合体において、溝付ガス分離板30、40のすぐ内側に配置される電極部分の基層を成す部分であって、基本的に上記のアノード電極反応、カソード電極反応にかかる電子の移動を担う集電部材としての役割を持つ。さらに、各電極3、4における物質移動、特にアノードガス、カソードガスをイオン伝導体、触媒物質及び反応ガスとからなる三界相反応領域に対して効果的に供給することができるようになっていること、およびカソード電極4において発生する水分の排出を効果的に行うことができるようになっていることが望ましい。
【0014】
本例においては、アノード側カーボンクロス31およびカソード側カーボンクロス41はいずれもカーボン繊維を織って構成されるカーボンクロスを用いる。本例において電極として使用されるカーボンクロスは米国E−TEK社製の商品名: “A”Cloth であり、重量は、116g/m2 、厚さは、約0.35mmである。本例の電極を構成するに当たってフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEという))分散溶液(約0.2μm程度の粒径のPTFEが54〜55重量パーセント含まれており、所定量の界面活性剤とともに安定分散している(三井・デュポンフロロケミカル(株)から商品名TEFLON FEP120-Jとして提供されている))によってカーボンクロスの表面処理を行い撥水性を付与した。
このカーボンクロスの撥水化処理は、PTFEを界面活性剤とともに分散させた溶液を脱イオン水で49重量%に希釈した溶液中に上記カーボンクロスを5分間浸した後濾紙で余分な溶液を拭き取り、その後、窒素雰囲気の電気炉中で温度約340℃で1時間PTFEを焼結させた。
拡散層
拡散層は、カーボンクロスの内側に触媒層と接触するように設けられるものであって、電極と同様に触媒層に対し、および触媒層からの物質移動が効果的に行われるように機能する必要があるとともに、触媒層と電極との間に介在する媒体として集電機能を効果的に発揮するものでなければならない。
本例では、拡散層は、賦活処理カーボンブラックとPTFEとの焼結体として構成されている。両者の重量比は、6:4であり、その単位面積当たりの密度は、それぞれ2.4mg、1.6mgである。なお、カーボンブラックとしては、Cabot Corporation から提供されている商標名Vulcan XC-72( 表面積250m2 /g)を賦活処理した賦活カーボンブラック(比表面積約600m2 /g)を用いた。
【0015】
拡散層の製造
賦活カーボンブラック315mgと上記市販のPTFE分散溶液389mgを40mlの純水および40mlのイソプロパノールとともに混合し、超音波洗浄器を用いて分散させた。この分散調製液を上記の電極として撥水処理したカーボンクロス上にスプレーを用いドライヤーを用いて乾燥させながら吹きつけた。上記分散溶液がカーボンクロス上に付着する率は5〜30%である。吹きつけ完了後、約50kgのローラーによって拡散層を形成したカーボンクロスを約0.2〜0.5mmの厚さに圧縮した。次に、上記の窒素雰囲気の電気炉中で約300℃〜350℃で約1時間PTFEを焼結させることによってカーボンクロス上に拡散層を形成した。
【0016】
触媒層
(カソード電極側)
本例では、カソード電極側の触媒層全体として約40μmの厚さを有する。触媒層43の電解質膜側表面には、スパッタリングによって白金担持カーボンブラックスパッタ触媒層が形成される。上記のように本発明では賦活処理によってカーボンブラックの比表面積は大幅に増大しており、表面には微細ポアが無数に存在する。このためスパッタリングによって白金を含む触媒物質含有材料が賦活カーボンブラックに付着する触媒層の影響領域は、約5μmの範囲に及ぶ。従って触媒物質含有材料担持賦活カーボンブラック触媒層は本例では、約5μmとなる。したがって触媒層(20%Pt/C(重量パーセント))の部分の厚さは約35μmとなる。この触媒層における白金の平均粒径は約2.5nmである。
各触媒層の組成は、図3に示す通りである。
なお、図3において、Nafionは、デュポン社から提供される電解質膜の商品名にかかるポリマー含有液であり、そのポリマーの構造は、図4に示すAciplex-S(1004) と類似の構造を有する。このポリマー含有液Nafionは、水とエタノールを等量混合した溶液中に所定量のポリマーを分散させたものである。本例では、ポリマーの濃度は、5wtパーセントのものを使用している。
カソード電極側の触媒層の製造について説明する。
触媒層を形成するに当たってまず、所定量の原料を含む分散溶液を調製する。
触媒層43については、重量比20パーセントの白金を担持したカーボンブラックを賦活処理し、この賦活カーボンブラックを160mg、重量比55%のPTFE分散溶液(TEFLON FEP120-J)を158mgとを調製し、これを純水40mlおよびイソプロパノール40mlと混合し超音波洗浄器を用いて分散させた。上記PTFE分散溶液中においては約0.2μm程度の粒径のPTFEが54〜55重量パーセント含まれており、所定量の界面活性剤とともに安定分散している。
【0017】
つぎに、上記で調製した分散溶液をスプレーを用いて上記の拡散層を形成した半製品の拡散層の面上に吹きつけて、触媒層43を形成した。
そして、上記拡散層形成の場合と同様に、窒素雰囲気の電気炉中でPTFEのガラス転移温度付近(約300〜350℃)でPTFEの焼結処理を約1時間かけて行った。
次に触媒層43が表面に形成された拡散層−カーボンクロス接合体に白金を原料とするスパッタリングを施すことによってスパッタ薄膜を形成した。スパッタリングは低圧アルゴン雰囲気中(2.7Pa)で行い、加速電圧は、1.8kV、プレート電流は、80mAであった。この場合堆積速度は0.3μg/cm2 /sであった。最終的にスパッタ領域中のスパッタ白金量は、0.05mg/cm2 であった。なおスパッタ領域中のカーボンブラック量は白金と原子数比でほぼ同量であった。
次に上記のようにして形成したカーボンクロス41、このカーボンクロス41上の拡散層42、拡散層上の触媒層43からなる固体高分子電解質膜電極接合体半製品のスパッタ薄膜の表面上から上記の高分子電解質溶液Nafionを塗布した。本例では、Nafionを適当なブラシに浸漬してNafionを含ませてスパッタ薄膜431の表面に塗布した。塗布量は約0.6mg/cm2 であった。
【0018】
(アノード電極側)
本例のアノード電極側の触媒層は触媒密度を均一とした単一層から構成されている。そして、上記のカーボンブラック(Vulcan XC-72)に白金を担持したもの(20%Pt/C、平均白金粒径2.5nm)を0.4mg/cm2 となるように触媒層を上記カソード側の触媒層を形成する手法と同じ要領で、分散液の拡散層表面への吹きつけおよびその後のPTFEの焼結処理を行なうことによって形成した。
この場合、カーボンブラックの量は、触媒層、拡散層あわせて約4.0mg/cm2 程度となるように調製した。そしてアノード側電極接合体全体として約0.35mm程度とした。
電解質膜
固体高分子電解質膜は、無孔性の高分子材料であって、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEという))から構成することができる。本例の電解質膜は、旭化成(株)から提供される商品名: Aciplex-S(1004) である。その厚さは、約2〜6mil(約50〜150μm)程度である。
この化学構造は、図4に示す通りである。
上記したように固体高分子型燃料電池における基本的な動作によれば、アノード電極で燃料ガスである水素から電子が奪われる反応が生じ、これによって電子と水素イオン(プロトンH+ )が発生し、電子は負荷を通り、一方プロトンH+ は、電解質膜中を伝導してカソード電極に到達する。カソード電極において、プロトンH+ は、酸素の反応することによって反応水を生成する。すなわち、電解質膜は上記の基本動作から明らかなようにプロトンH+ をカソード側に伝導する役割を果たすとともに、未反応水素ガスが分子状態でカソード側に進入することを防止する役割を持つものである。
なおプロトンH+ が電解質膜中をカソード側に向かって移動する場合には水分子を媒体として移動するので、電解質膜は、このための水分子を保有する水分子保有機能も有していなければならない。また、イオン伝導体基(本例ではスルホン酸基)を有する電解質膜では単位重量当たりのスルホン酸基の重量の比すなわちスルホン酸基当量は、約500〜1500(g/eq)でことが好ましい。
電解質膜は、(1)プロトンH+ の伝導機能、(2)アノードガス通路の水素ガスとカソードガス通路の酸素ガス(空気)とを隔離するためのセパレーション機能、および(3)所定の保水機能を有する必要があるこの条件を満たすものであれば、任意のものを使用することができる。
電解質膜のアノード側にはアノード側触媒層、カソード側にはカソード側触媒層が形成される。
【0019】
電極接合体の形成
上記のようにしてアノード側電極接合体およびカソード側電極接合体を構成した後、カソード側電極接合体およびアノード側電極接合体をそれぞれ触媒層側が対面する姿勢で向き合わせ、その間に固体高分子電解質膜を挟んで接合した。そして、プレス治具を用いて固定し、約155℃の温度で電極接合体の単位面積当たり約25kgf/cm2 の圧力でホットプレスすることにより固体高分子電解質膜電極接合体を製造した。
【0020】
(比較例にかかる固体高分子電解質膜電極接合体)
比較例の構成では、カソード側電極もアノード側電極と同様に単一の触媒層から構成した。
触媒層を形成するために実施例と同様に分散溶液を調製した。この場合、白金担持カーボンブラック(Vulcan XC-72)は白金重量比Pt/C20パーセントを160mg、PTFE分散溶液(FEP120-J) 158mgを用いて上記と同様に分散液を調製し、スプレーによる吹きつけによって触媒層を形成した。なお、吹きつけによる分散液の付着率は吹きつけ量の15〜20%である。その後同様に焼結処理を行なった。他の構成は、実施例と同じである。
このようにして形成した実施例および比較例にかかる固体高分子電解質膜電極接合体からなる燃料電池による発電の実験を行った。
本発明の実施例にかかる燃料電池では、比較例にかかるものに比して発生電圧に関し、500mA/cm2 において約20mV程度高くなることが判明した。このことは、燃料電池の発電効率が約60%から63%に向上することを意味するものである。単一の固体高分子電解質膜電極接合体からなる燃料電池構成におけるこの実験結果によれば、多数の積層構造から成る燃料電池においては発電効率の向上は顕著なものとなる。
なお、本例では、カソード電極側の触媒層を触媒密度が異なる2層によって構成したが、さらに多くの密度が異なる層を積層して構成することもできる。この場合場合、電解質膜側の触媒密度が高くなるように積層する。また、本例では、アノード電極は単一の均一な触媒密度を有する触媒層によって形成したが、かならずしもこのようにする必要はなく、カソード電極と同様に複数の触媒密度の異なる層を積層して構成することもできる。
【0021】
さらに、本例では、触媒密度の異なる層をそれぞれ積層することによって、触媒層を構成したが、触媒密度勾配が電解質膜側から拡散層側に向かって減少するような構成であれば単一の層であってもよい。
さらに、触媒層の製造において、上記のような触媒勾配が得られる手法であれば、スプレー、ブラシ塗布によらず薄い10〜100μm程度の薄い層を形成するために、公知の任意の手段を用いることができる。
【0022】
【発明の効果】
上記したように、本発明では、固体高分子電解質膜燃料電池において、簡単な構成でしかも製造コストを増大させることなく、発電効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例にかかる固体高分子型燃料電池の電極接合体の概略断面図、
【図2】図1の燃料電池の各層の積層状態を示す断面図
【図3】カソード側触媒層の組成を示すグラフ、
【図4】イオン伝導体を構成するPTFEの構造の一例を示す図、
【図5】燃料電池の特性を示すための電圧と電流密度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 燃料電池
2 固体高分子電解質膜
3 アノード電極
4 カソード電極
43、33 触媒層
431 白金含有物質担持賦活カーボンブラック触媒層。
Claims (2)
- 固体高分子電解質膜の一方の側にアノード側触媒層を有するアノード側触媒電極を設け、他方の側にカソード側触媒層を有するカソード側触媒電極を設けた燃料電池の電極構造において、触媒物質を担持するカーボンブラックを賦活処理し、賦活処理によって有効径が10〜100オングストロームの微細ポアを表面に形成して比表面積を賦活処理前に対して増大させたこの賦活処理カーボンブラックの表面に、スパッタリングによって触媒物質を担持させたスパッタ薄膜を形成し、この複合スパッタ薄膜を、少なくとも前記カソード側触媒層における前記固体高分子電解質膜の表面に接して備えた電極構造。
- 請求項1において、前記触媒物質が白金または白金含有合金とカーボン粒子との複合体であることを特徴とする電極構造。
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