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JP3707528B2 - 交流電動機の制御方法およびその制御装置 - Google Patents

交流電動機の制御方法およびその制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘導電動機、同期電動機などの交流電動機の制御において、停止時あるいは低速時においても制御軸と実際軸の軸ずれ誤差あるいは電動機パラメータ誤差を補正し、高精度な制御を実現するための交流電動機の制御方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来法としては特開平9−56199号があり、この手法は電圧、電流の検出値を用いて同期電動機の磁極の位置を計算し、角度センサの検出値の補正を行うというものである。しかしながら、角度センサや電圧センサを必要とし、コスト高になる上、検出精度に制御性能が依存するという問題がある。
永久磁石を回転子とするブラシレスDCモータを同期電動機として運転する場合、回転子の絶対位置を得て正確な電流制御を行う必要がある。回転子の絶対位置を得るためには、エンコーダやレゾルバ等の回転子位置検出器を用いることが一般的であるが、配線や構造の複雑さ、価格や使用環境などについて問題があるため、回転子位置検出器を用いないで回転子の磁極位置を求める方法が提案されている。
従来の永久磁石形同期電動機の磁極位置推定方法としては、
[1]の電学論D、113巻、5号、平成5、p579〜586、
[2]電学論D、114巻、5号、平成6、p591〜592、
[3]電学論D、115巻、4号、平成7、p420〜427、が知られている。
[1]は、固定子上に設定された軸α−β座標系に変換されたステータ電流iα、iβを観測値、ステータ電圧vα、vβを入力とし、α−β軸座標系の磁束λα、λβ、及び回転子速度を適応則を用いて推定する方法である。
[2]は、α−β座標系に変換されたステータ電流iα、iβを観測値、ステータ電圧vα、vβを入力とし、α−β軸座標系におけるα軸方向に発生する誘起電圧εα、β軸方向に発生する誘起電圧εβを外乱として推定する方法である。
[3]は、回転子上に設定した、同期速度で回転するγ−δ座標系に変換されたステータ電流iγ、iδと、モデルより算出された電流計算値iγo、iδoとの差より、γ−δ軸とd−q軸とのずれ角θeを推定する方法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来の方法では、
[1]については極性のある永久磁石形同期電動機に採用した場合は、α−β座標上では、インダクタンスがモータ回転子角θrの関数となり、状態方程式が複雑になってオブザーバを構成する際に、計算量が増大し実用化が困難である。又、磁束λα、λβを未知量としているため、状態方程式は回転子速度0において不可観測となり、推定自体が不安定となる。
[2]については、α−β軸に変換した誘起電圧は交流量となるため、オブザーバの極を大きく設定しなければ実際量と推定量との位相差が発生し、使い物にならなくなる。[3]の場合は、[1]、[2]に比較して簡便な手法であり、しかも、d−q軸とほぼ同期した角速度で回転するγ−δ軸を基準として考えているため、d−q軸とγ−δ軸のずれθeが小さい時は、状態方程式も複雑にならずに、実用化に関してすぐれた方法である。しかし、実際値と比較するものが、d−q軸にγ−δ軸が一致した時のモデルから単純に導かれた計算値であり、ズレθeがモデル化誤差などにより、正しく推定できるとは限らない。
また、角度センサや速度センサを使用せず、電圧、電流の検出値から位置、速度を推定する速度センサレスベクトル制御のほとんどが、電動機誘起電圧を利用したものであり、電動機誘起電圧は回転子の速度に比例するので、特に停止時においては電動機誘起電圧は零となり、これを利用することができなかった。
また、低速度、軽負荷時には電流、電圧の情報量が小さくなり精度が落ちるという問題があった。
そこで、本発明が解決すべき課題は、電動機誘起電圧を利用せず、d軸励磁分電流指令値に高調波を重畳し、検出電流値と指令電流値のみから制御座標軸と実際の磁軸との軸ずれ誤差を推定し、速度センサ、電圧センサを必要とせず、停止時、低速時、軽負荷時においても軸ずれ補正を実現して、速度センサ付き、速度センサレスいずれの場合でも常に高精度な交流電動機のベクトル制御方法と、その制御装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ベクトル制御を適用した交流電動機の制御において、回転子あるいは磁束ベクトルに同期して回転するd−q直交座標系を制御座標として使用し、d軸励磁分電流指令値に高周波信号を重畳し、検出するモータに供給する電流を3相2相変換して得られる2相電流の2乗和である検出電流ベクトルの振幅の2乗を計算し、前記d軸励磁分電流指令値の2乗とq軸トルク分電流指令値の2乗との和である指令電流ベクトルの振幅の2乗を計算し、前記検出電流ベクトルの振幅の2乗から前記指令電流ベクトルの振幅の2乗を差し引いて得られる値に基づいて軸ずれ誤差角を演算することにより、速度センサおよび電圧センサを必要とせずに、停止時、低速時、軽負荷時においても高精度な交流電動機のベクトル制御をすることを特徴とする
また、請求項2に記載の発明は、請求項1記載の交流電動機の制御方法において、前記検出電流ベクトルの振幅の2乗から前記指令電流ベクトルの振幅の2乗を差し引いて得られる値に基づいて軸ずれ誤差角を演算し、前記軸ずれ誤差角が零となるように速度を推定することを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1記載の交流電動機の制御方法において、前記検出電流ベクトルの振幅の2乗から前記指令電流ベクトルの振幅の2乗を差し引いて得られる値に基づいて軸ずれ誤差角を演算し、前記軸ずれ誤差角が零となるように前記交流電動機パラメータを同定することを特徴とする。
【0005】
また、請求項4に記載の発明は、交流電動機の制御装置に係り、d軸励磁分電流指令値とd−q変換器から出力されるd軸励磁分電流検出値との偏差が入力されるd軸電流制御器と、速度指令値と速度推定値との偏差が入力される速度制御器と、前記速度制御器から出力されるq軸トルク分電流指令値とd−q変換器から出力されるq軸トルク分電流検出値との偏差が入力されるq軸電流制御器と、前記d軸電流制御器から出力されるd軸電圧指令値と前記q軸電流制御器から出力されるq軸電圧指令値とから電圧指令値の振幅の大きさと位相角をインバータ回路へ出力する極座標変換器と、前記極座標変換器からの出力に基づいて交流電動機を駆動するインバータ回路とからなる交流電動機の制御装置において、前記d軸電流制御器の入力側に設けられ前記d軸励磁分電流指令に高周波信号を重畳する高周波信号発生手段と、前記交流電動機へ供給される電流から検出電流ベクトルの振幅を演算する検出ベクトル演算手段と、前記d軸励磁分電流指令値と前記q軸トルク分電流指令値から指令電流ベクトルの振幅を演算する指令電流ベクトル演算手段と、前記検出電流ベクトルの振幅の2乗と前記指令電流ベクトルの振幅の2乗との差に基づいて軸ずれ誤差角を演算する速度推定器とを備えたことにより、速度センサおよび電圧センサを必要とせずに、停止時、低速時、軽負荷時においても高精度な交流電動機のベクトル制御をすることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、交流電動機の制御方法に係り、ベクトル制御を適用した交流電動機の制御において、回転子あるいは磁束ベクトルに同期して回転するd−q直交座標系を制御座標として使用し、d軸励磁分電流指令値に高周波信号を重畳し、検出したモータに供給する電流を3相2相変換して得られる2相電流をd−q直交座標から45度離れたdm−qm座標系に座標変換して得られる2相電流idmとiqmをバンドパスフィルタに通し、前記d軸励磁分電流指令値に重畳した高周波信号と同じ周波数成分であるidmH とiqmH を抽出する手段と前記idmH の2乗とiqmH の2乗との偏差を演算する手段を有して、前記演算手段の出力をローパスフィルタに通し重畳高周波成分を遮断して得られる値に基づいて軸ずれ誤差角を演算することにより、速度センサおよび電圧センサを必要とせずに、停止時、低速時、軽負荷時においても高精度な交流電動機のベクトル制御をすることを特徴とする
また、請求項6に記載の発明は、請求項5記載の交流電動機の制御方法において、前記idmH の2乗とiqmH の2乗との偏差を演算する演算器の出力をローパスフィルタに通し重畳高周波成分を遮断して得られる値に基づいて軸ずれ誤差角が零になるように速度を推定することを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、請求項5記載の交流電動機の制御方法において、前記idmH の2乗とiqmH の2乗との偏差を演算する演算器の出力をローパスフィルタに通し重畳高周波成分を遮断して得られる値に基づいて軸ずれ誤差角を演算し、軸ずれ誤差角が零となるように前記電動機パラメータを同定することを特徴とする。
また、請求項8に記載の発明は、交流電動機の制御装置に係り、d軸励磁分電流指令値と、d−q変換器から出力されるd軸励磁分電流検出値をローパスフィルタに通し重畳された高周波成分を遮断して得られる電流値との偏差が入力されるd軸電流制御器と、速度指令値と速度推定値との偏差が入力される速度制御器と、前記速度制御器から出力されるq軸トルク分電流指令値とd−q変換器から出力されるq軸励磁分電流検出値をローパスフィルタに通し、重畳された高周波成分を遮断して得られる電流値との偏差が入力されるq軸電流制御器と、前記d軸電流制御器から出力されるd軸電圧指令値と前記q軸電流制御器から出力されるq軸電圧指令値とから電圧指令値の振幅の大きさと位相角をインバータ回路へ出力する極座標変換器と、前記極座標変換器からの出力に基づいて交流電動機を駆動するインバータ回路とからなる交流電動機の制御装置において、前記d軸電流制御器の入力側に設けられ前記d軸励磁分電流指令に高周波信号を重畳する高周波信号発生手段と、前記d軸励磁分電流検出値とq軸励磁分電流検出値をd−q直交変換から45度離れたdm−qm座標系に座標変換して得られる2相電流idmとiqmをバンドパスフィルタを通し、d軸励磁分電流指令値に重畳した高周波信号と同じ周波数成分であるidmH とiqmH を抽出する手段と、前記idmH の2乗とiqmH の2乗との偏差を演算する手段と、前記演算手段の出力をローパスフィルタに通し重畳高周波成分を遮断して得られる値に基づいて軸ずれ誤差角を演算する速度推定器とを備えたことにより、速度センサおよび電圧センサを必要とせずに、停止時、低速時、軽負荷時においても高精度な交流電動機のベクトル制御をすることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施の形態について図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る交流電動機の制御装置の構成図である。
図1において、1は速度制御器、2はd軸電流制御器、3はq軸電流制御器、4は極座標変換器、5はインバータ回路、6は速度推定器、7は積分器、8は指令電流ベクトル演算部、9は検出電流ベクトル演算部、10はd−q変換器、11は3相2相変換器、12は交流電動機、13は高周波発生器である。
本発明が従来技術と違う点は、d軸励磁分電流指令値isd* に高周波を重畳する高周波信号発生器13と、検出電流ベクトルの振幅の2乗計算をする検出ベクトル演算部9と指令電流ベクトルの振幅の2乗計算をする指令電流ベクトル演算部8と、検出電流ベクトルの振幅の2乗から指令電流ベクトルの振幅の2乗を差し引いて得られる値に基づいて速度センサレス時は速度推定を行い、速度センサ付きの場合は軸ずれ補償又は電動機パラメータ調整をする速度推定器6を設けた点である。
つぎに動作について説明する。
d軸励磁分電流指令値isd* に高周波信号、すなわち正弦波信号Iinj sin ωh t、を重畳し、d−q変換器10から出力されるd軸励磁分電流検出値1sd’との偏差をとりd軸電流制御器に入力し、d軸電圧指令値usd* を得る。又、速度指令値ωr* と速度推定器6の出力である速度推定値ωrest 、との偏差を速度制御器1に入力し、その出力をq軸トルク分電流指令値isq* とする。isq* とd−q変換器10から出力されるq軸トルク分電流検出値isq’との偏差をとりq軸電流制御器に入力してq軸電圧指令値usq* を得る。極座標変換器4はusd* 、usq* を入力とし、電圧指令値の振幅の大きさと位相角をインバータ回路5へ出力する。インバータ回路5は電圧指令値の振幅の大きさと位相、そして速度推定器6の出力である出力周波数ωrest を積分器7で積分して得られる2次磁束ベクトルの基準軸であるd軸の位相角を入力とし3相電圧指令値を計算し、モータへの供給電圧を前記電圧指令値になるようにPWM制御を行いモータを駆動する装置である。
速度制御器6では、検出したモータに供給する電流を3相2相変換して得られる2相電流の2乗和、すなわち検出電流ベクトルの振幅の2乗を演算部9で計算し、d軸励磁分電流指令値の2乗とq軸トルク分電流値の2乗との和である指令電流ベクトルの振幅の2乗を演算部8で計算し、検出電流ベクトルの振幅の2乗から、指令電流ベクトルの振幅の2乗を差し引いて得られる値に基づいて軸ずれ誤差角を計算し、軸ずれ誤差角が零となるように速度を推定する速度推定器である。
具体的には、d軸励磁分電流指令値isd* に高周波信号、すなわち正弦波信号Iinj sinωh tを重畳することにより、実電流ベクトルの振幅の2乗Is2 と指令電流ベクトルの振幅の2乗Is*2との偏差をとると、以下の式(1)の関係が得られる。
ここで、θは2次磁束ベクトルの基準線であるd軸の位相角で、θest はベクトル制御上の制御基準軸であるd軸の位相角であり、理想的なベクトル制御では、この2つの位相角に差があってはならない。
Figure 0003707528
式(1)の結果をローパスフィルタを通すか、あるいは、ωhの1周期で平均することによって、θest −θ、が得られることになる。
この差を零にするように速度推定器6により速度を推定することができる。
速度推定器6では速度センサレス時は、式(1)のように、(Is2 −Is*2)をローパスフィルタを通し、次式のように比例積分調節器を用いて、速度推定値ωrest を推定することができる。
Figure 0003707528
又、速度センサ付きの場合は、式(3)のように測定された位相角θの電動機パラメータのミスマッチによる軸ずれθ’を補償(同期電動機の場合)として適用することができる。
Figure 0003707528
誘導電動機の場合は、(4)式のように直接2次抵抗Rr’などの電動機パラメータ補償として利用できる。
Figure 0003707528
但し、以上の中で、τはフィルタ時定数、Kpは比例ゲイン、Kiは積分ゲインである。
【0007】
次に、本発明の第2の実施の形態について図を参照して説明する。
図2は本発明の第2の実施の形態に係る交流電動機の制御装置の構成図である。図2の構成は、図1の構成に、d−q座標軸を45度ずらすためのdm−qm変換部30と、ローパスフィルタ26、バンドパスフィルタ29を加えて2乗の演算は速度推定器28内で行うようにしたもので、直流成分の推定により推定精度を上げるものである。
d軸励磁分電流指令値isd* に高周波信号発生器34からの高周波信号、すなわち正弦波信号Iinj sinωh t、を重畳し、d−q変換器31から出力されるd軸励磁分電流検出値isd’をローパスフィルタ26に通して、その出力との偏差をとりd軸電流制御器22へ入力してd軸電圧指令値usd* を得る。又、速度指令ω* と速度推定器28の出力である速度推定値ωest との偏差を速度制御器21に入力し、その出力をq軸トルク分電流指令値isq* とする。isq* とd−q変換器31から出力されるq軸トルク分電流検出値isq’をローパスフィルタ26に通し、その出力との偏差をとりq軸電流制御器23に入力し、q軸電圧指令値usq* を得る。次の極座標変換器24は各電圧指令usd* 、usq* を入力とし、電圧指令値の振幅の大きさと位相角を出力する。 インバータ回路25では電圧指令値の振幅の大きさと位相、そして、速度推定器28の出力である速度推定値ωest を積分器27で積分して得られる主磁束ベクトルの基準軸であるd軸の位相角を入力とし3相電圧指令値を計算して、モータ33への供給電圧を電圧指令値になるようにPWM制御を行いモータを駆動している。
速度推定器28では、d−q変換器31から出力される電流検出値isd’、isq’をd−q直交座標から45度離れたdm−qm座標系にdm−qm変換器30により座標変換する。その出力電流idm、iqmをバンドパスフィルタ29に通し、d軸励磁分電流指令値に重畳した高周波信号と同じ周波数成分であるidmH とiqmH を抽出し、速度推定器28において、idmH の2乗とiqmH の2乗との偏差を演算し、その結果をローパスフィルタ26に通し、重畳高周波成分を遮断して得られる値に基づいて軸ずれ誤差角を演算し、軸ずれ誤差角が零になるように速度を推定するものである。
具体的には、d軸励磁分電流指令値isd* に高周波信号、すなわち正弦波信号iinj sinωh t、を重畳することにより、dm−qm座標軸上でのidmH の2乗とiqmH の2乗との偏差をとると、
Figure 0003707528
式(5)のような関係が得られる。
更に、ローパスフィルタ(LPF)を通し、高周波成分を遮断すると、
Figure 0003707528
式(6)のように略、軸ずれ角度θerr に比例した信号が得られる。
従って、理想的なベクトル制御では、軸ずれ角度θerr があってはならないので、上式(6)の結果を零にするように速度推定器28では、比例積分調節器を用いて、次の(7)式により、
ωest =(Kp+Ki/s)Err’ ・・・ (7)
(但し、Kpは比例ゲイン、Kiは積分ゲイン)
速度推定値ωest を推定することができる。
又、本実施の形態では、速度センサ付きの場合も、(7)式の結果を軸ずれ補正値として検出速度に足し込み、積分器27で積分して位相角をインバータ回路25に入力することによって、パラメータミスマッチによる軸ずれを補正することができる。
また、誘起電圧定数(トルク定数)等の電動機定数を直接推定することも可能となる。
【0008】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ベクトル制御を適用した交流電動機の制御において、回転子あるいは磁束ベクトルに同期して回転するd−q直交座標系を制御座標として使用し、d軸励磁分電流指令値に高周波信号を重畳し、検出したモータに供給する電流を3相2相変換して得られる2相電流の2乗和、すなわち検出電流ベクトルの振幅の2乗を計算し、d軸励磁分電流指令値の2乗とq軸トルク分電流値の2乗との和である指令電流ベクトルの振幅の2乗を計算し、検出電流ベクトルの振幅の2乗から指令電流ベクトルの振幅の2乗を差し引いて得られる値に基づいて軸ずれ誤差角を演算するようにしたので、検出電流値と指令電流値のみから制御座標軸と実際の磁軸との軸ずれ誤差を推定できる。これにより、速度センサ、電圧センサを必要とせず、停止時、低速時、軽負荷時においても軸ずれ補正を実現し、磁極位置検出器無しで、速度センサ付き、速度センサレス時での高精度な交流電動機のベクトル制御方法を実現し、その制御装置が得られる効果がある。
また、d−q直交座標系を制御座標として使用してd軸励磁分電流指令値に高周波を重畳し、検出したモータ供給電流を3相2相変換して得られる2相電流を推定角d−q直交座標から45度離れたdm−qm座標系に座標変換して得られる2相電流idmとiqmをバンドパスフィルタに通し、d軸励磁分電流指令値に重畳した高周波信号と同じ周波数成分であるidmH とiqmH を抽出し、idmH の2乗とiqmH の2乗との偏差を演算して得られた出力をローパスフィルタに通し、重畳高周波成分を遮断して得られる値に基づいて軸ずれ誤差角を演算するようにしたので、検出電流値と指令電流値のみから制御座標軸と実際の磁極との軸ずれ誤差が推定可能となり、速度センサ、電圧センサを必要とせず、停止時、低速時、軽負荷時においても軸ずれ補正が実現できる、高精度の交流電動機のベクトル制御方法、制御装置が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る交流電動機の制御装置の構成図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る交流電動機の制御装置の構成図である。
【符号の説明】
1、21 速度制御器
2、22 d軸電流制御器
3、23 q軸電流制御器
4、24 極座標変換器
5、25 インバータ回路
6、28 速度推定器
7、27 積分器
8 指令電流ベクトル演算部
9 検出電流ベクトル演算部
10、31 d−q変換器
11、32 3相2相変換器
12、33 交流電動機
13、34 高周波信号発生器
26 ローパスフィルタ
29 バンドパスフィルタ
30 dm−qm変換器

Claims (8)

  1. ベクトル制御を適用した交流電動機の制御において、回転子あるいは磁束ベクトルに同期して回転するd−q直交座標系を制御座標として使用し、d軸励磁分電流指令値に高周波信号を重畳し、検出するモータに供給する電流を3相2相変換して得られる2相電流の2乗和である検出電流ベクトルの振幅の2乗を計算し、前記d軸励磁分電流指令値の2乗とq軸トルク分電流指令値の2乗との和である指令電流ベクトルの振幅の2乗を計算し、前記検出電流ベクトルの振幅の2乗から前記指令電流ベクトルの振幅の2乗を差し引いて得られる値に基づいて軸ずれ誤差角を演算することにより、速度センサおよび電圧センサを必要とせずに、停止時、低速時、軽負荷時においても高精度な交流電動機のベクトル制御をすることを特徴とする交流電動機の制御方法。
  2. 前記検出電流ベクトルの振幅の2乗から前記指令電流ベクトルの振幅の2乗を差し引いて得られる値に基づいて軸ずれ誤差角を演算し、前記軸ずれ誤差角が零となるように速度を推定する請求項1記載の交流電動機の制御方法。
  3. 前記検出電流ベクトルの振幅の2乗から前記指令電流ベクトルの振幅の2乗を差し引いて得られる値に基づいて軸ずれ誤差角を演算し、前記軸ずれ誤差角が零となるように前記交流電動機パラメータを同定する請求項1記載の交流電動機の制御方法。
  4. d軸励磁分電流指令値とd−q変換器から出力されるd軸励磁分電流検出値との偏差が入力されるd軸電流制御器と、速度指令値と速度推定値との偏差が入力される速度制御器と、前記速度制御器から出力されるq軸トルク分電流指令値とd−q変換器から出力されるq軸トルク分電流検出値との偏差が入力されるq軸電流制御器と、前記d軸電流制御器から出力されるd軸電圧指令値と前記q軸電流制御器から出力されるq軸電圧指令値とから電圧指令値の振幅の大きさと位相角をインバータ回路へ出力する極座標変換器と、前記極座標変換器からの出力に基づいて交流電動機を駆動するインバータ回路とからなる交流電動機の制御装置において、前記d軸電流制御器の入力側に設けられ前記d軸励磁分電流指令に高周波信号を重畳する高周波信号発生手段と、前記交流電動機へ供給される電流から検出電流ベクトルの振幅を演算する検出ベクトル演算手段と、前記d軸励磁分電流指令値と前記q軸トルク分電流指令値から指令電流ベクトルの振幅を演算する指令電流ベクトル演算手段と、前記検出電流ベクトルの振幅の2乗と前記指令電流ベクトルの振幅の2乗との差に基づいて軸ずれ誤差角を演算する速度推定器とを備えたことにより、速度センサおよび電圧センサを必要とせずに、停止時、低速時、軽負荷時においても高精度な交流電動機のベクトル制御をすることを特徴とする交流電動機の制御装置。
  5. ベクトル制御を適用した交流電動機の制御において、回転子あるいは磁束ベクトルに同期して回転するd−q直交座標系を制御座標として使用し、d軸励磁分電流指令値に高周波信号を重畳し、検出したモータに供給する電流を3相2相変換して得られる2相電流をd−q直交座標から45度離れたdm−qm座標系に座標変換して得られる2相電流idmとiqmをバンドパスフィルタに通し、前記d軸励磁分電流指令値に重畳した高周波信号と同じ周波数成分であるidmH とiqmH を抽出する手段と前記idmH の2乗とiqmH の2乗との偏差を演算する手段を有して、前記演算手段の出力をローパスフィルタに通し重畳高周波成分を遮断して得られる値に基づいて軸ずれ誤差角を演算することにより、速度センサおよび電圧センサを必要とせずに、停止時、低速時、軽負荷時においても高精度な交流電動機のベクトル制御をすることを特徴とする交流電動機の制御方法。
  6. 前記idmH の2乗とiqmH の2乗との偏差を演算する演算器の出力をローパスフィルタに通し重畳高周波成分を遮断して得られる値に基づいて軸ずれ誤差角が零になるように速度を推定することを特徴とする請求項5記載の交流電動機の制御方法。
  7. 前記idmH の2乗とiqmH の2乗との偏差を演算する演算器の出力をローパスフィルタに通し重畳高周波成分を遮断して得られる値に基づいて軸ずれ誤差角を演算し、軸ずれ誤差角が零となるように前記電動機パラメータを同定することを特徴とする請求項5記載の交流電動機の制御方法。
  8. d軸励磁分電流指令値と、d−q変換器から出力されるd軸励磁分電流検出値をローパスフィルタに通し重畳された高周波成分を遮断して得られる電流値との偏差が入力されるd軸電流制御器と、速度指令値と速度推定値との偏差が入力される速度制御器と、前記速度制御器から出力されるq軸トルク分電流指令値とd−q変換器から出力されるq軸励磁分電流検出値をローパスフィルタに通し、重畳された高周波成分を遮断して得られる電流値との偏差が入力されるq軸電流制御器と、前記d軸電流制御器から出力されるd軸電圧指令値と前記q軸電流制御器から出力されるq軸電圧指令値とから電圧指令値の振幅の大きさと位相角をインバータ回路へ出力する極座標変換器と、前記極座標変換器からの出力に基づいて交流電動機を駆動するインバータ回路とからなる交流電動機の制御装置において、前記d軸電流制御器の入力側に設けられ前記d軸励磁分電流指令に高周波信号を重畳する高周波信号発生手段と、前記d軸励磁分電流検出値とq軸励磁分電流検出値をd−q直交変換から45度離れたdm−qm座標系に座標変換して得られる2相電流idmとiqmをバンドパスフィルタを通し、d軸励磁分電流指令値に重畳した高周波信号と同じ周波数成分であるidmH とiqmH を抽出する手段と、前記idmH の2乗とiqmH の2乗との偏差を演算する手段と、前記演算手段の出力をローパスフィルタに通し重畳高周波成分を遮断して得られる値に基づいて軸ずれ誤差角を演算する速度推定器とを備えたことにより、速度センサおよび電圧センサを必要とせずに、停止時、低速時、軽負荷時においても高精度な交流電動機のベクトル制御をすることを特徴とする交流電動機の制御装置。
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