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JP3707526B2 - 廃水の硝化方法及び装置 - Google Patents

廃水の硝化方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃水の硝化方法及び装置に係り、特に、下水等の廃水中のアンモニア性窒素(以下、「NH4-N」という)を除去する際の硝化処理の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
脱窒槽と硝化槽を備え、廃水中のNH4-Nを除去する硝化・脱窒装置では、硝化槽において硝化細菌の働きにより、NH4-Nを亜硝酸性窒素や硝酸性窒素に酸化する硝化処理を行う。下水などの実際の廃水処理では、廃水のNH4-N負荷の変動や水温の年間、日間変動に対して、安定して高い窒素除去率を維持するためには、硝化槽での硝化処理を略完全に終了させることが重要である。そのため、実際の硝化・脱窒装置は、硝化に必要な酸素を廃水に供給するためのエアの散気量や硝化時間を低水温期の最大負荷に合わせて設計されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最大負荷に合わせて散気量や硝化時間を設計すると、夜間や降雨時などの負荷の低下時、または高水温期で硝化性能に余裕がある場合には、硝化槽の上流端から流入した廃水が、硝化槽の途中で硝化が終了し、その後の硝化槽の下流端から廃水が流出するまでの滞留領域におけるエアの供給が過剰となるという欠点がある。これにより、散気のための動力が無駄になるだけでなく、硝化液が最終沈殿池に流出する場合は,活性汚泥フロックの解体による処理水の透視度が悪化するという問題がある。更には、硝化液が脱窒槽に循環する場合は、脱窒槽へのエアの持ち込みによる脱窒性能の悪化が生じるという問題がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みて成されたもので、硝化槽内への過剰なエアの供給を防ぎ、必要最小限のエア散気量で略完全な硝化を達成することができる廃水の硝化方法及び装置を提供することを目的とする。
【0005】
【発明を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために、硝化槽の上流端から槽内に流入した廃水を下流端から流出させると共に、前記硝化槽内にエアを散気して前記廃水中のNH4-Nを微生物により硝化処理する廃水の硝化方法において、前記硝化槽の上流端位置における微生物含有廃水を使用してアンモニア性窒素濃度と硝化速度、または回分反応における酸素消費速度の経時変化を測定し、前記測定した結果から前記廃水中のNH4-N濃度を所定値まで低減させるために必要な必要硝化時間を演算し、前記演算した必要硝化時間と前記硝化槽内の廃水の滞留時間とを比較し、前記滞留時間のうち前記必要硝化時間を越える硝化槽内領域における散気量を、前記必要硝化時間を越える前の硝化槽内領域における散気量よりも小さくすることを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、前記目的を達成するために、硝化槽の上流端から槽内に流入した廃水を下流端から流出させると共に、前記硝化槽内にエアを散気して前記廃水中のアンモニア性窒素を微生物により硝化処理する廃水の硝化方法において、前記硝化槽の上流端位置における微生物含有廃水を使用してアンモニア性窒素濃度と硝化速度、または回分反応における酸素消費速度の経時変化を測定し、前記測定した結果から前記硝化槽内の廃水の滞留時間内に前記廃水中のアンモニア性窒素濃度を所定値まで低減させるために必要な硝化槽全体のトータル散気量を演算し、前記演算したトータル散気量の前記硝化槽内における散気量分布を、前記上流端側が大きく前記下流端側が小さくなるようにしたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、前記目的を達成するために、硝化槽の上流端から槽内に流入した廃水を下流端から流出させると共に、前記硝化槽内にエアを散気して前記廃水中のアンモニア性窒素を微生物により硝化処理する廃水の硝化装置において、前記硝化槽内の底部に前記上流端側から前記下流端側にかけて並設され、前記硝化槽内にエアを散気する複数の散気板と、前記硝化槽の上流端位置から採水した微生物含有廃水を使用してアンモニア性窒素濃度と硝化速度、または回分反応における酸素消費速度の経時変化測定する活性測定装置と、前記活性測定装置の測定結果から前記廃水中のアンモニア性窒素濃度を所定値まで低減させるために必要な必要硝化時間又は硝化槽全体のトータル散気量を演算する演算手段と、前記演算手段による演算結果に基づいて前記複数の散気板に送気するエア量を個別に制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、廃水中のNH4-N濃度を所定値まで低減させるために必要な必要硝化時間を越えた硝化槽内領域における散気量を、必要硝化時間を越える前の硝化槽内領域における散気量よりも小さくするようにしたので、硝化槽内全体への過剰なエアの供給を防ぎ、必要最小限のエア散気量で略完全な硝化を達成することができる。
【0009】
また、本発明によれば、硝化槽内の廃水の滞留時間内に廃水中のNH4-N濃度を所定値まで低減させるために必要な硝化槽全体のトータル散気量を演算し、演算したトータル散気量の硝化槽内における散気量分布を、上流端側が大きく下流端側が小さくなるようにしたので、硝化槽内への過剰なエアの供給を防ぎ、必要最小限の酸素供給量で略完全な硝化を達成することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面により本発明の廃水の硝化方法及び装置の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は、本発明の廃水の硝化装置10を組み込んだ硝化・脱窒装置12の構成図である。
【0011】
硝化・脱窒装置12は、主として、脱窒槽14と硝化槽16の各1槽から成る反応槽18と、固液分離槽20と、活性測定装置22とで構成される。
硝化槽16内の底部には、硝化槽16の上流端A側から下流端B側にかけて複数の散気板24、24…が並設され、各散気板24はそれぞれ枝管26、26…を介して合流管28に合流し、合流管28がブロア30に接続される。また、各枝管26にはそれぞれエア量調整バルブ32、32…が設けられる。これにより、各散気板24から散気されるエアにより硝化槽16内に好気性条件を形成すると共に、各散気板24からの散気量をエア量調整バルブ32により個別に調整することができる。
【0012】
一方、脱窒槽14の底部には攪拌器34が設けられ、脱窒槽14内の廃水をゆっくりと攪拌して廃水からエアを脱気することにより脱窒槽14内に嫌気性条件を形成する。そして、原水供給管36から脱窒槽14内に供給された廃水は、脱窒槽14において活性汚泥微生物と混合された後、硝化槽16の上流端A位置に流入する。硝化槽16内に流入した廃水は、硝化槽16内を流れながら散気板24からのエアによる好気性条件下で廃水中のNH4-Nが硝化処理される。硝化処理された硝化液は、硝化槽16の下流端B位置から循環配管38を介して脱窒槽14に循環され、嫌気性条件下で脱窒処理される。これにより、廃水中のNH4-Nが窒素ガスとなって除去される。硝化槽16と脱窒槽14との間の循環において、硝化槽16の硝化液の一部が処理水として処理水配管40を介して固液分離槽20に排出される。固液分離槽では、処理水に同伴した活性汚泥微生物を沈降分離した後の上澄液が、上澄液配管42を介して排出される。一方、固液分離槽20に沈降した沈降汚泥は、汚泥返送配管44を介して原水供給管36に戻される。また、沈降汚泥のうちの余剰汚泥は、引抜き配管46を介して装置12外に抜き出される。
【0013】
活性測定装置22は、送液ポンプ48により硝化槽16の上流端A位置から測定容器50に一定量の活性汚泥微生物を含有した廃水(以下「微生物含有廃水」という)を採水管51を介して採水する。測定容器50には、測定容器50内にエアを散気するエアポンプ52が接続されると共に、測定容器50内の微生物含有廃水のDO濃度を測定するDO濃度計54が設けられる。そして、エアポンプ52から微生物含有廃水中にエアを散気しながら、微生物含有廃水のDO濃度値が変化しなくなるまでDO濃度の経時変化を測定する。この回分操作におけるDO濃度の経時変化と微生物含有廃水に供給するエアの酸素溶解効率から微生物含有廃水の酸素消費速度、およびアンモニア性窒素(NH4-N)濃度と硝化速度を自動的に測定する。
【0014】
次に、最適な散気方法を決めるための第1の実施の形態を説明する。
コントローラ58では、活性測定装置22で測定したNH4-N濃度〔NeI 〕と硝化速度〔KNI〕から廃水中のNH4-N濃度を所定値まで低減させるために必要な必要硝化時間〔TN 〕を演算し、演算した必要硝化時間〔TN 〕と硝化槽16内の廃水の滞留時間〔TMAX 〕とを比較する。そして、硝化槽16内における廃水の滞留時間〔TMAX 〕のうち必要硝化時間〔TN 〕を越えた硝化槽16内領域における散気量を、必要硝化時間〔TN 〕を越える前の硝化槽16内領域における散気量よりも小さくするように、信号ケーブル60を介して各散気板24のエア量調整バルブ32の開閉度を個別に制御する。ここで、硝化槽16の水理学的な滞留時間〔TMAX 〕は、硝化槽容積を、原水供給管36で反応槽18に供給される原水量、汚泥返送配管44で原水供給配管36に返送される返送汚泥量、循環配管38で硝化槽16から脱窒槽14に循環される硝化液の循環量の合計で割った値として求められる。
【0015】
図2は、NH4-N濃度〔NeI 〕と硝化速度〔KNI〕から上記した必要硝化時間〔TN 〕を決める方法である。図2の縦軸は硝化速度〔KN 〕、横軸は必要硝化時間〔TN 〕であり、TN1は硝化後のNH4-N濃度、即ち前記所定値を0.1mg/Lとした時の必要硝化時間〔TN 〕である。図2から分かるように、硝化速度〔KN 〕は、ある時間まで最大の硝化速度であるKNIのほぼ一定値を保ち、その後NH4-N濃度が0.3〜0.5mg/L以下になると急激に減少してゼロに近づくKN 曲線を描く。そして、硝化速度は、その単位〔mg−N/L・時間〕から分かるように、単位時間当たりのNH4-Nの減少速度を表したものである。従って、硝化速度〔KN 〕の時間積分値、即ち図2のKN 曲線、横軸及び縦軸で囲まれた部分の面積が、NH4-N濃度〔NeI 〕になるように必要硝化時間〔TN1〕を決定する。これにより、硝化後のNH4-N濃度を0.1mg/Lまで低減するにするに必要な必要硝化時間〔TN1〕を決定することができる。
【0016】
また、硝化後のNH4-N濃度が0.1mg/Lよりも高くてよい場合、例えば0.3〜0.5mg/L程度の場合には、硝化速度〔KN 〕がKNIを維持した状態の時間TN2を必要硝化時間〔TN 〕とすることも可能である。更には、TN1とTN2の間の任意の時間を必要硝化時間〔TN 〕とすることもできる。
図3は、酸素消費速度〔Kr 〕の経時変化から必要硝化時間〔TN 〕を決める方法であり、酸素消費速度〔Kr 〕は、初期にほぼ一定値KrIを示すが、ある時点で急激に低下し、その後、ほぼ一定な低い値で推移するKr 曲線を描く。そして、この場合にも硝化速度〔KN 〕の経時変化から必要硝化時間〔TN 〕を決める場合と同様に硝化後のNH4-N濃度を所定値まで低減するのに必要な必要硝化時間〔TN 〕を求めることができる。
【0017】
このように、本発明の硝化方法を採用すれば、硝化槽16内全体への過剰なエアの供給を防ぎ、必要最小限のエア散気量で略完全な硝化を達成することができる。この場合、必要硝化時間〔TN 〕を越えた硝化槽16内領域における散気量は、廃水のDO濃度が3mg/L以下、好ましくは2mg/L以下になるようにするとよい。これにより、硝化槽16からの硝化液を循環配管38を介して脱窒槽14に循環させた時に、硝化液に同伴する酸素を極力抑制し、脱窒性能に悪影響を与えないようにできる。
【0018】
次に、最適な散気方法を決めるための第2の実施の形態を説明する。
第2の実施の形態は、コントローラ58では、活性測定装置22で測定した酸素消費速度〔Kr 〕の経時変化から、硝化槽16内の廃水の滞留時間内に廃水中のNH4-N濃度を所定値まで低減させるために必要な硝化槽16全体の酸素消費量の時間積算値〔W〕を算出する。さらに、それを硝化槽16の酸素溶解効率を考慮して空気量に換算してトータル散気量として求める。そして、演算したトータル散気量の硝化槽16内における散気量分布を、上流端A側が大きく下流端B側が小さくなるように各散気板24の各エア量調整バルブ32の開閉度を個別に制御する。この場合、上流端A側から下流端B側にいくに従って直線的に散気量を減少させてもよく、或いは階段状に散気量を減少させてもよい。要は、硝化槽16内の廃水の滞留時間内に廃水のNH4-N濃度を所定値まで低減させるために硝化槽16全体で必要なトータル散気量だけを散気すると共に、NH4-N濃度の高い上流端A側の散気量が大きく、NH4-N濃度の低い下流端B側の散気量が小さくなるようにすればよい。
【0019】
図4は、廃水中のNH4-N濃度を所定値まで低減させるために硝化槽16全体において必要なトータル散気量を決定するための酸素消費量の時間積算値〔W〕と時間との関係を示した図である。酸素消費量の時間積算値〔W〕は、図3で説明した酸素消費速度〔Kr 〕の経時変化から求めることができる。また、W1 は硝化後のNH4-N濃度を0.1mg/Lまで低減する場合の酸素消費量の時間積算値〔W〕であり、W2 は硝化後のNH4-N濃度を0.3〜0.5mg/L程度まで低減する場合の酸素消費量の時間積算値〔W〕である。従って、硝化後のNH4-N濃度をどの程度にするかによって、酸素消費量の積算値〔W〕W1 又はW2 、更にはW1 又はW2 の間の任意の値を設定することができる。
【0020】
これにより、第2の実施の形態の場合にも、硝化槽16内への過剰なエアの供給を防ぎ、必要最小限のエア散気量で略完全な硝化を達成することができる。また、硝化槽16の下流端B側の散気量の目安としては、廃水のDO濃度が3mg/L以下、好ましくは2mg/L以下になるようにすることが好ましい。これにより、硝化槽16からの液を循環配管38を介して脱窒槽14に循環させた時に、硝化液に同伴する酸素を極力抑制し、脱窒性能に悪影響を与えないようにできる。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の廃水の硝化方法及び装置によれば、硝化槽内への過剰なエアの供給を防ぎ、必要最小限のエア散気量で略完全な硝化を達成することができる。
また、硝化槽から脱窒槽に廃水を循環させる場合には、循環液に同伴する酸素を極力抑制することができるので、脱窒槽での脱窒性能に悪影響を与えない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の硝化装置を組み込んだ硝化・脱窒装置の構成図
【図2】アンモニア性窒素濃度と硝化速度から必要硝化時間を決定する方法の説明図
【図3】アンモニア性窒素濃度と硝化速度から必要硝化時間を決定する方法の説明図
【図4】トータル散気量を決定するための酸素消費量の積算値と時間との関係を示した図
【符号の説明】
10…硝化装置、12…硝化・脱窒装置、14…脱窒槽、16…硝化槽、22…活性測定装置、24…散気板、30…ブロア、32…エア量調整バルブ、36…原水供給管、38…循環配管、44…汚泥返送配管、58…コントローラ

Claims (4)

  1. 硝化槽の上流端から槽内に流入した廃水を下流端から流出させると共に、前記硝化槽内にエアを散気して前記廃水中のアンモニア性窒素を微生物により硝化処理する廃水の硝化方法において、
    前記硝化槽の上流端位置における微生物含有廃水を使用してアンモニア性窒素濃度と硝化速度、または回分反応における酸素消費速度の経時変化を測定し、
    前記測定した結果から前記廃水中のアンモニア性窒素濃度を所定値まで低減させるために必要な必要硝化時間を演算し、
    前記演算した必要硝化時間と前記硝化槽内の廃水の滞留時間とを比較し、
    前記滞留時間のうち前記必要硝化時間を越える硝化槽内領域における散気量を、前記必要硝化時間を越える前の硝化槽内領域における散気量よりも小さくすることを特徴とする廃水の硝化方法。
  2. 前記必要硝化時間を越えた硝化槽内領域における散気量の目安として、前記廃水のDO濃度が2mg/L以下になるようにすることを特徴とする請求項1の廃水の硝化方法。
  3. 硝化槽の上流端から槽内に流入した廃水を下流端から流出させると共に、前記硝化槽内にエアを散気して前記廃水中のアンモニア性窒素を微生物により硝化処理する廃水の硝化方法において、
    前記硝化槽の上流端位置における微生物含有廃水を使用してアンモニア性窒素濃度と硝化速度、または回分反応における酸素消費速度の経時変化を測定し、
    前記測定した結果から前記硝化槽内の廃水の滞留時間内に前記廃水中のアンモニア性窒素濃度を所定値まで低減させるために必要な硝化槽全体のトータル散気量を演算し、
    前記演算したトータル散気量の前記硝化槽内における散気量分布を、前記上流端側が大きく前記下流端側が小さくなるようにしたことを特徴とする廃水の硝化方法。
  4. 硝化槽の上流端から槽内に流入した廃水を下流端から流出させると共に、前記硝化槽内にエアを散気して前記廃水中のアンモニア性窒素を微生物により硝化処理する廃水の硝化装置において、
    前記硝化槽内の底部に前記上流端側から前記下流端側にかけて並設され、前記硝化槽内にエアを散気する複数の散気板と、
    前記硝化槽の上流端位置から採水した微生物含有廃水を使用してアンモニア性窒素濃度と硝化速度、または回分反応における酸素消費速度の経時変化を測定する活性測定装置と、
    前記活性測定装置の測定結果から前記廃水中のアンモニア性窒素濃度を所定値まで低減させるために必要な必要硝化時間又は硝化槽全体のトータル散気量を演算する演算手段と、
    前記演算手段による演算結果に基づいて前記複数の散気板に送気するエア量を個別に制御する制御手段と、
    を備えたことを特徴とする廃水の硝化装置。
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