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JP3706971B2 - 低温硬化型好触感塗料組成物 - Google Patents

低温硬化型好触感塗料組成物 Download PDF

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JP3706971B2 JP2002019962A JP2002019962A JP3706971B2 JP 3706971 B2 JP3706971 B2 JP 3706971B2 JP 2002019962 A JP2002019962 A JP 2002019962A JP 2002019962 A JP2002019962 A JP 2002019962A JP 3706971 B2 JP3706971 B2 JP 3706971B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリウレタン樹脂微粒子、該粒子を含有する好触感の塗料組成物及び該塗料組成物を塗装してなる塗装物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
インストルメントパネルなどの自動車内装部品には、高級感及び好触感を出すため、艶消し塗装が一般的に施されている。また、インテリア用品などにも、艶消し塗装が施される場合がある。
【0003】
従来の艶消し塗料には、シリカ、珪藻土、アルミナ、炭酸カルシウムなどの無機微粉末や、アクリル樹脂微粉末などが艶消し剤として用いられている。かかる塗料により得られる塗膜は硬く、塗膜としての弾性に欠けるため、“ぬめり感(しっとり感)”に欠ける。
【0004】
ポリウレタン樹脂微粉末を艶消し剤として用いた艶消し塗膜は、弾性は有しているが、塗膜表面が凸凹になり、ざらざらっぽくなって表面の平滑性に欠ける。
【0005】
このように、従来提供されている塗料は、やはり充分な“ぬめり感(しっとり感)”は得られておらず、触感塗料としては充分でない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ぬめり感(しっとり感)を有する好触感の塗膜及び該塗膜を得るための塗料組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
従来触感を定量化することは困難と思われていたが、最近触感を定量化するための“ソフト値(S値)”の概念が確立された[(社)自動車技術会,学術講演会前刷集,No.87-99, p19-22(1999), 河津健司ら;SAE Technical Paper Series, 1362(2000-01), K.Kwazu et al.]。S値は、乾湿感、粗滑感、温冷感及び硬柔感の4つの感性因子を用いて求められる値である。
【0008】
そして、無機微粉末やアクリル樹脂微粉末を配合した塗膜の触感をS値により定量化したところ、表面が艶消し剤により硬くなり、塗膜としての弾性に欠け、乾湿感及び硬柔感がかなり乏しいことが分かった。一方、ポリウレタン微粉末を用いた塗膜は、硬柔感については無機微粉末やアクリル樹脂微粉末を配合した塗膜と比べて優位性はあるものの、乾湿感が乏しく、触感として“ぬめり感(しっとり感)”に欠けることが分かった。
【0009】
本発明者は乾湿感や硬柔感を向上させて“ぬめり感”を出すために、種々検討を行う過程において、塗料組成物にポリウレタン樹脂微粉末とラノリンを配合して得られた塗膜の触感を評価した。該塗膜は、ぬめり感を有するものの、耐牛脂性、付着性、リコート付着性、耐湿性、耐摩耗性に劣っていた。
【0010】
そこでさらに研究を続けたところ、ラノリン誘導体の存在下に、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種とイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとを、貧溶媒中で反応させて得ることができるラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子を艶消し剤として用いると、“ぬめり感”に優れ、且つ耐牛脂性、付着性、リコート付着性などに優れた好触感の塗膜を得ることができることを見いだした。
【0011】
更に、本発明者はかかる塗料組成物の低温硬化性の向上及びポットライフについて検討した。硬化性樹脂組成物においては、一般に、硬化性を向上させるために、通常塗料組成物の固形分全重量に対して0.1重量%程度の反応促進剤が添加されており、また、ポットライフを延長するために、通常使用される量の反応促進剤に対して規定量、一般に塗料組成物の固形分全重量に対して1重量%程度の反応遅延剤を配合するという手段が採用されている。本発明の塗料組成物については従来の手段では低温硬化性が達成できなかったので、反応促進剤を通常量より多く配合することを試みた。この場合に、反応遅延剤として通常量を配合してみたが、長いポットライフは得られなかった。さらに検討を進める過程において、反応遅延剤を多量に配合してしまうと、ポリイソシアネートの溶解性が低下してしまい、ポットライフの長い塗料組成物を得ることはできないと思われたが、驚くべきことに、多量の反応促進剤に多量の反応遅延剤を配合することを試みた結果、ポリイソシアネートが固まることなく、優れた低温硬化性と長いポットライフという相反する効果が同時に達成できることを見いだした。
【0012】
本発明はこれら知見に基づいて完成されたものである。
【0013】
即ち、本発明は、下記の各項に係る発明を提供するものである。
項1 ラノリン誘導体とポリウレタン樹脂微粒子からなり、ラノリン誘導体の良溶媒で洗浄してもラノリン誘導体が除去できない(保持される)ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子。
項2 ラノリン誘導体とポリウレタン樹脂微粒子からなり、ラノリン誘導体の良溶媒で洗浄してもラノリン誘導体が除去できず(保持され)、平均粒子径が5〜40μmであるラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子。
項3 ラノリン誘導体の存在下に、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種とイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとを、貧溶媒中で反応させて得ることができる項1又は2に記載のラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子。
項4 ラノリン誘導体の付着量が、ラノリン誘導体の存在下にポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種とイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとを貧溶媒中で反応させた場合に、ラノリン誘導体の非存在下にポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種とイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとを貧溶媒中で反応させた場合と比べて、平均粒子径の増加分が1〜5μmとなるような量である項3に記載のラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子。
項5 ラノリン誘導体の存在下に、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種と、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとを、
貧溶媒中で反応させることを特徴とする項1又は2に記載のラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子の製造方法。
項6 (i)ガラス転移点が−30〜−70℃であり、数平均分子量が1,000〜50,000、水酸基価が30〜70mgKOH/g resinであり、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のバインダー樹脂、
(ii)イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート、
(iii)項1又は2に記載のラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子及び
(iv)有機溶媒
を含有することを特徴とする塗料組成物。
項7 前記バインダー樹脂と前記イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとの合計重量100重量部に対して、前記ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子を5〜20重量部含有することを特徴とする項6に記載の組成物。
項8 (v)反応促進剤及び(vi)反応遅延剤を更に含み、
反応促進剤の配合量が、組成物の固形分全重量に対して0.2〜2重量%であり、反応遅延剤の配合量が、組成物の固形分全重量に対して5〜15重量%であることを特徴とする項6に記載の組成物。
項9 前記バインダー樹脂が、ガラス転移点が−30〜−70℃であり、数平均分子量が1,000〜25,000であり、水酸基価が50〜70mgKOH/g resinであり、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子が、ラノリン誘導体とポリウレタン樹脂微粒子からなり、ラノリン誘導体の良溶媒で洗浄してもラノリン誘導体が除去できず(保持され)、平均粒子径5〜40μmであり、水酸基価50〜200mgKOH/g resinであり、
前記バインダー樹脂(b)と前記ポリイソシアネート(p)の配合割合が、重量比でb:p=80:20〜40:60であることを特徴とする項8に記載の組成物。
項10 前記反応促進剤(x)と前記反応遅延剤(y)の配合量の割合が、重量比で、x:y=1:20〜1:7.5であることを特徴とする項8に記載の組成物。
項11 前記反応促進剤が、錫系触媒であることを特徴とする項8に記載の組成物。
項12 項6に記載の塗料組成物を被塗物に塗装してなる塗装物品。
【0014】
項13 S値が0.51〜1の塗膜を有する塗装物品。
項14 塗膜が、項6に記載の塗料組成物を被塗物に塗装してなる塗膜である項13に記載の塗装物品。
項15 ラノリン誘導体が、ポリオキシアルキレン(付加モル数5〜75)ラノリンアルコールであることを特徴とする項5に記載の製造方法。
項16 貧溶媒が、キシレン、トルエン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン及びn−ヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする項5に記載の製造方法。
項17 カルボジイミド試薬の存在下に反応を行うことを特徴とする項5に記載の製造方法。
項18 油変性アルキッド樹脂及びナフテン酸の塩の存在下に反応を行うことを特徴とする項5に記載の製造方法。
項19 前記バインダー樹脂と前記イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとの合計重量100重量部に対して、前記ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子を5〜20重量部含有し、固形分が20〜30重量%となるような量の有機溶媒を含有することを特徴とする項6に記載の塗料組成物。
項20 項6に記載の塗料組成物を被塗物に塗装してなる自動車の内装品。
項21 前記反応促進剤の配合量が、組成物の固形分全重量に対して0.4〜2重量%であることを特徴とする項8に記載の塗料組成物。
項22 前記反応遅延剤の配合量が、組成物の固形分全重量に対して6〜12重量%であることを特徴とする項8に記載の塗料組成物。
項23 錫系触媒が、オクチル酸錫、ナフテン酸錫及びジブチルチンジラウレートからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする項11に記載の塗料組成物。
項24 反応遅延剤が、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチル及びアセチルアセトンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする項8に記載の塗料組成物。
項25 前記ポリウレタン樹脂微粒子の配合量が、前記バインダー樹脂及び前記ポリイソシアネートの合計重量100重量部に対して、5〜20重量部であることを特徴とする項8に記載の塗料組成物。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
1 本発明ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子
本発明のラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子は、ラノリン誘導体とポリウレタン樹脂微粒子からなり、ラノリン誘導体の良溶媒(例えば、キシレンやトルエン)で洗浄してもラノリン誘導体が除去でないラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子である。
【0017】
該ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子は、例えば、塗料組成物に配合して使用できる。該微粒子を塗料組成物に配合する場合は、平均粒子径が5〜40μm程度であることが好ましく、5〜35μm程度であることがより好ましく、10〜35μm程度がさらに好ましい。
【0018】
また、該ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子を配合した塗料組成物について優れた低温硬化性と長いポットライフを得ようとする場合には、以下の様な微粒子が、一般的に好ましい:
該微粒子の水酸基価が50〜200mgKOH/g resin程度、特に50〜150mgKOH/g resin程度である、及び/又は
該微粒子の粒度分布の幅が狭く、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置による粒度分布測定において、粒子径が、20〜30μm程度のものが、90%以上であること。
【0019】
1−1 ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子の物性
本発明ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子は、ポリウレタン樹脂を溶解させないが、ラノリン乃至ラノリン誘導体を溶解する溶剤で洗浄してもラノリン誘導体が実質的に除去されない(即ち、キシレンやトルエンなどでの洗浄前後でラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子の重量減少及び粒子径の変化が実質上ない)ので、詳細は完全には解明されていないが、ポリウレタン樹脂表面にラノリン誘導体が共有結合を介して結合していると思われる。洗浄は、15〜40℃程度にて、ラノリン誘導体の良溶媒中に本発明ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子を分散させ、30〜60分間程度撹拌することにより行うことができる。
【0020】
ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置[LA500((株)堀場製作所製)]を用いることにより測定することができる。
【0021】
また、ラノリンの付着量は、ラノリン誘導体の存在下にポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種とイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとを貧溶媒中で反応させた場合の平均粒子径が、ラノリン誘導体を存在させないこと以外は同様にしてポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種とイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとを貧溶媒中で反応させた場合の平均粒子径に比べて、平均粒子径の増加分が1〜5μm程度となるような量が好ましく、1〜3μm程度となるような量がより好ましい。
【0022】
即ち、ラノリンの付着量は、上記ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種とイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとを貧溶媒中で反応させる場合に、ラノリンの存在下で反応させて得られる本発明のラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子の平均粒子径が、ラノリンを存在させないで同様に反応させて得られるポリウレタン樹脂微粒子の平均粒子径に比べて、1〜5μm程度、特に1〜3μm程度大きくなるような量である。
【0023】
1−2 製造方法
該ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子は、例えば以下のようにして製造することができる。即ち、ラノリン誘導体の存在下に、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種とイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとを、貧溶媒中で反応させることにより、本発明のラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子を製造することができる。
【0024】
1−2−1 ラノリン誘導体
ラノリン誘導体の原料となるラノリンは、羊の原毛から羊毛をとる際に副生する羊毛脂で動物性ロウの一種である。その化学組成は羊の種類や産地、気象条件などにより必ずしも一定ではないが、そのアルコール部分は脂肪族アルコール類、コレステロール類、トリテルペンアルコール類が大部分を占め、酸部分はノルマル脂肪酸、イソ脂肪酸、アンチイソ脂肪酸、ヒドロキシ脂肪酸が大部分を占めるとされる。このように、ラノリンは多くの化合物の混合物であるので、通常、常温でペースト状をなし、加温すると、数十度で溶融する性質を有するが、本質的に水には溶解しない。
【0025】
このようなラノリンを精製したり、化学修飾を加えたりして様々な誘導体が得られる。例えば、ラノリンを加水分解して得られるアルコールや酸部分を溶剤分別などにより分別精製したものは誘導体の例であるが、それらの加水分解物又はラノリン自体にアセチル化、アルコキシル化、スルホン化、水素化、エステル交換、還元などの化学的作用を加えたものなども、またラノリン誘導体である。
【0026】
本発明では、これらラノリン誘導体がいずれも使用できるが、それらのなかでも、特に、ラノリン及びその誘導体にエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを導入したもの(=ポリオキシアルキレンラノリンアルコール;通常、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加モル数が5〜75程度、特に10〜30程度であるものが好ましい。)、硫酸基やリン酸基などの親水基を導入したもの及びその塩、並びにラノリン脂肪酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩などが例示できる。
【0027】
ラノリン誘導体としては、市販のものであってもよく、例えば、商品名ベルポールA-20、ベルポールL-30、ベルポールL-50、ベルポールL-75[いずれも、日本精化(株)製]などを例示できる。
【0028】
ラノリン誘導体の使用量は、ポリウレタン樹脂微粒子の製造に用いられるポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂の少なくとも1種100重量部に対して、通常、5〜50重量部程度、好ましくは10〜30重量部程度である。
【0029】
1−2−2 ポリエステル樹脂
ポリエステル樹脂は、多塩基酸及び多価アルコールを通常の方法でエステル化反応させることによって得られる。
【0030】
多塩基酸は1分子中にカルボキシル基を2個以上、特に2〜4個有する化合物であり、具体的には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、スベリン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸などの脂肪族多塩基酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、テトラクロロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族多塩基酸;ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、メチルヘキサヒドロイソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロイソフタル酸などの脂環族多塩基酸などが挙げられる。本発明ではこれら多塩基酸の無水物も使用できる。これらの中でも、テレフタル酸、アジピン酸、マレイン酸、無水マレイン酸及び無水フタル酸がより好ましい。
【0031】
多価アルコールは1分子中に水酸基を2個以上、特に2〜4個有する化合物であり、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ラクトンとポリオールとの付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペントール、水添ビスフェノールAなどの脂肪族や脂環族の多価アルコールが挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、グリセリン及びペントールがより好ましい。
【0032】
本発明ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子の製造に用いるポリエステル樹脂は、上記に例示したような多塩基酸及び多価アルコールを通常の方法でエステル化反応させることによって得られる。
【0033】
該ポリエステル樹脂の分子量は、特に限定されるものではないが、通常、数平均分子量が4,000〜40,000程度、好ましくは15,000〜30,000程度のものを用いる。
【0034】
また、本発明ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子の製造に用いるポリエステル樹脂の水酸基価としては、特に限定されるものではないが、20〜80mgKOH/g resin程度が好ましく、40〜70mgKOH/g resin程度がより好ましい。
【0035】
1−2−3 ポリエーテル樹脂
ポリエーテル樹脂としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン−プロピレングリコールなどが挙げられる。
【0036】
本発明ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子の製造に用いるポリエーテル樹脂は、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどを原料として、通常の方法で重合させることによって得られる。該ポリエーテル樹脂の分子量は、特に限定されるものではないが、通常、数平均分子量が4,000〜40,000程度、好ましくは15,000〜30,000程度のものを用いる。
【0037】
また、本発明ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子の製造に用いるポリエーテル樹脂の水酸基価としては、特に限定されるものではないが、20〜80mgKOH/g resin程度が好ましく、40〜70mgKOH/g resin程度がより好ましい。
【0038】
1−2−4 イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート
イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートは、1分子中に遊離のイソシアネート基を2個以上、特に2〜4個有する化合物である。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの如き脂肪族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネートの如き環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネートの如き芳香族ジイソシアネート類;トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4′−ジメチルジフェニルメタン−2,2′,5,5′−テトライソシアネートなどの3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートの如き有機ポリイソシアネートが挙げられる。
【0039】
これらイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートは、イソシアネート基がブロック剤でブロックされていてもよい。ブロック剤としては、例えばフェノール系、ラクタム系、活性メチレン系、アルコール系、メルカプタン系、酸アミド系、イミド系、アミン系、イミダゾール系、尿素系、カルバミン酸エステル系、イミン系、オキシム系、亜硫酸塩系などのブロック剤をいずれも使用できる。特に、フェノール系、ラクタム系、アルコール系、オキシム系などのブロック剤を好ましく使用できる。
【0040】
イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとしては各種の市販品が使用でき、例えば、バーノックD−750、同−800、同DN−950、同DN−970、同DN−15−455(以上、いずれも大日本インキ化学工業社製、商品名)、デスモジュールL、同N、同HL、同N3390(以上、いずれも住友バイエルウレタン社製、商品名)、タケネートD−102、同−202、同−110、同−123N(以上、いずれも武田薬品工業社製、商品名)、コロネートEH、同L、同HL、同203(以上、いずれも日本ポリウレタン工業社製、商品名)、デュラネートE−402−90T、同24A−90CX(旭化成(株)製、商品名)などが挙げられる。
【0041】
イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートの使用量は、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種に対して、通常、M〜1.3M、1.1M〜1.2Mである(Mは、イソシアネート基の量が、前記樹脂の水酸基量と化学量論的に当量であるポリイソシアネートの量を示す)。
【0042】
即ち、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートの使用量は、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種に対して、通常、[前記樹脂の水酸基量と化学量論的に同等のイソシアネート基となるような量(M)]〜[前記樹脂の水酸基量と化学量論的に同等のイソシアネート基となるような量(M)+Mの30%(1.3M)程度]、好ましくは[前記樹脂の水酸基量と化学量論的に同等のイソシアネート基となるような量(M)+Mの10%(1.1M)程度]〜[前記樹脂の水酸基量と化学量論的に同等のイソシアネート基となるような量(M)+Mの20%(1.2M)程度]である。
【0043】
1−2−5 貧溶媒
本明細書において、貧溶媒とは、得られるポリウレタン樹脂微粒子を溶解せず、前記ポリエステル及びポリエーテル樹脂の少なくとも1種を溶解する能力の小さい溶媒であって、前記イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートと反応性のない溶媒を意味する。かかる貧溶媒としては、キシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;n−ヘキサンなどの脂肪族飽和炭化水素;ミネラルスピリットなどが挙げられる。
【0044】
貧溶媒は、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種100重量部に対して、通常、500〜1,000重量部程度、好ましくは600〜800重量部程度の割合で用いることができる。
【0045】
1−2−6 付着試剤(カルボジイミド)
該ポリウレタン樹脂微粒子を製造する際には、付着試剤を用いてもよい。付着試剤は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基と反応する為、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとラノリン誘導体との反応の間で媒体として働く、若しくは反応系に存在することにより、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとラノリン誘導体との分子間距離を狭めるために働くことを目的として用いられる。付着試剤としては、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリノエチル)カルボジイミドなどのカルボジイミド試薬が好ましく例示され、特にN,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミドが好ましい。
【0046】
付着試剤を用いる場合、その使用量は、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種100重量部に対して、通常、5〜30重量部程度、特に8〜15重量部程度が好ましい。
【0047】
1−2−7 分散助剤
反応系には、分散助剤を添加してもよい。分散助剤としては、油変性アルキッド樹脂、ナフテン酸の塩、ポリカルボン酸、高分子量不飽和エステル、シリコーンなどが挙げられる。
【0048】
油変性アルキッド樹脂としては、ヤシ油変性アルキッド樹脂、ヒマシ油変性アルキッド樹脂、米ヌカ油変性アルキッド樹脂、トール油変性アルキッド樹脂、アマニ油変性アルキッド樹脂、大豆油変性アルキッド樹脂を用いることができる。
【0049】
油変性アルキッド樹脂は、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ブタンジオールなどの多価アルコール成分とイソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバチン酸、コハク酸、マレイン酸あるいはこれらの無水物などの酸成分とを常法に従って重合し、さらにヤシ油、ヒマシ油などで変性させたものである。
【0050】
本発明で用いる油変性アルキッド樹脂は、油長が10〜50%、好ましくは20〜45%の樹脂が望ましい。ここで油長は油変性アルキッド樹脂に含まれる油の重量割合(%)をいう。また、本発明で用いる油変性アルキッド樹脂としては、水酸基価が50〜160mgKOH/g resin程度が好ましく、70〜130mgKOH/g resin程度がより好ましく、酸価が15mgKOH/g resin 以下程度が好ましく、9mgKOH/g resin以下程度がより好ましい。
【0051】
ナフテン酸の塩としては、ナフテン酸金属塩、例えばナフテン酸亜鉛、ナフテン酸鉄などが好ましく挙げられる。
【0052】
分散助剤としては、これらを単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
分散助剤を用いる場合、その使用量は、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種100重量部に対して、5〜30重量部程度、好ましくは10〜20重量部程度である。
【0054】
分散助剤を2種以上用いる場合の組み合わせとしては、油変性アルキッド樹脂(特にヤシ油変性アルキッド樹脂)とナフテン酸の塩の組み合わせが好ましく、油変性アルキッド樹脂(特にヤシ油変性アルキッド樹脂)とナフテン酸亜鉛の組み合わせがより好ましい。この場合の使用割合としては、重量割合として、油変性アルキッド樹脂(又はヤシ油変性アルキッド樹脂):ナフテン酸の塩(又はナフテン酸亜鉛)=100:1〜100:20程度が好ましく、100:3〜100:10程度が好ましい。
【0055】
1−2−8 反応触媒
ラノリン誘導体存在下でのポリエステル及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種とイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとの反応においては、反応触媒を用いてもよい。かかる触媒としては、トリメチレンビス(4−アミノベンゾアート)、ジメチルエタノールアミン、トリエチレンアミン、テトラメチルポリメチレンジアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどのアミン類、オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジブチルチンジラウレートなどの金属塩、高級カルボン酸ビスマスなど、ウレタン反応用に通常使用されている任意のものを、単独で又は2種以上併用して用いることができる。
【0056】
触媒を用いる場合の使用量は、他の原料の量や種類に応じて適宜設定することができるが、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部程度、好ましくは0.03〜3重量部程度、より好ましくは0.07〜2重量部程度である。また、該微粒子を配合した塗料組成物の優れた低温硬化性と長いポットライフを得ようとする場合には、触媒の使用量は、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種100重量部に対して、一般に、0.02〜5重量部程度、好ましくは0.07〜2重量部程度、より好ましくは1〜2重量部程度である。
【0057】
1−2−9 反応条件
本発明の製造方法においては、例えば、ラノリン誘導体、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種、並びにイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート、さらには必要に応じて使用する付着試剤などを、貧溶媒中に添加して、70〜100℃程度、好ましくは80〜95℃程度にて0.5〜3時間程度、好ましくは1〜1.5時間程度、撹拌しながら反応を継続させる。
【0058】
また、該微粒子を配合した塗料組成物の優れた低温硬化性と長いポットライフを得ようとする場合には、反応温度は、一般には、90〜95℃程度が好ましい。
【0059】
分散助剤や反応触媒を用いる場合は、ラノリン誘導体やポリエステル又はポリエーテル樹脂を貧溶媒に添加して充分分散させた後添加すればよい。
【0060】
反応を終了させる際には、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテルなどの反応停止剤を、反応系に添加すればよい。反応停止剤の添加量は、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種100重量部に対して、通常10〜50重量部程度であり、20〜40重量部程度が好ましい。
【0061】
かくして得られたラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子を含む反応混合物は、そのまま本発明好触感塗料組成物の調製に用いてもよいし、ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子を含む反応混合物を、通常の方法、例えば、前記に例示したような貧溶媒(例えば、キシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ミネラルスピリット;n−ヘキサンなどの脂肪族飽和炭化水素)にて希釈し、325メッシュ程度の金網によりろ過することにより単離して乾燥し、ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粉末を得ることも可能である。
【0062】
2.本発明好触感塗料組成物
本発明好触感塗料組成物は、
(i)ガラス転移点が−30〜−70℃であり、数平均分子量が1,000〜50,000、水酸基価が30〜70mgKOH/g resinであり、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のバインダー樹脂、
(ii)イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート、
(iii)上記1“本発明ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子”の項に記載の本発明に係るラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子及び
(iv)有機溶媒
を含有することを特徴とする塗料組成物である。
【0063】
2−1 バインダー樹脂
本発明塗料組成物のバインダー樹脂(i)としては、ガラス転移点が−30〜−70℃であり、数平均分子量が1,000〜50,000であり、水酸基価が30〜70であり、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である樹脂を用いる。
【0064】
本発明塗料組成物に含有されるバインダー樹脂は、ガラス転移点が−30〜−70℃程度であり、−30〜−60℃程度が好ましく、−30〜−50℃程度がより好ましい。
【0065】
また、該バインダー樹脂の分子量は、数平均分子量が1,000〜50,000程度であり、1,000〜35,000程度が好ましく、3,000〜30,000程度がより好ましい。また、本発明塗料組成物について優れた低温硬化性と長いポットライフを得ようとする場合には、バインダー樹脂の数平均分子量が、一般に、1,000〜25,000程度であることが好ましく、5,000〜20,000程度がより好ましく、10,000〜18,000程度がさらに好ましい。
【0066】
バインダー樹脂の分子量が上記範囲内であると、得られる塗膜の経時変化が起こりにくいので好ましい。従って、例えば自動車の内装品、特にインストルメントパネルの塗装に好適である。
【0067】
上記バインダー樹脂の水酸基価としては、30〜70mgKOH/g resin程度であり、40〜70mgKOH/g resin程度が好ましく、45〜70mgKOH/g resin程度がより好ましい。また、本発明塗料組成物について優れた低温硬化性と長いポットライフを得ようとする場合には、上記バインダー樹脂の水酸基価としては、一般的に、50〜70mgKOH/g resin程度が好ましく、55〜68mgKOH/g resin程度がより好ましく、58〜65mgKOH/g resin程度がさらに好ましい。
【0068】
かかるポリエステル樹脂は、上記1−2−2“ポリエステル樹脂”の項において例示したような多塩基酸及び多価アルコールを通常の方法でエステル化反応させることによって得られる。
【0069】
バインダー樹脂として用いるポリエステル樹脂は、直線性の高いポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0070】
また、かかるポリエーテル樹脂としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン−プロピレングリコールなどが挙げられる。これらは、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどを原料として、上記したバインダー樹脂の要件を満たすようにして、通常の方法で重合させることによって得られる。
【0071】
バインダー樹脂の塗料組成物への配合量は、樹脂固形分として、通常、20〜80重量%程度、好ましくは30〜70重量%程度である。
【0072】
2−2 イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート
イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート(ii)は、本発明塗料組成物において硬化剤として使用される。
【0073】
イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとしては、上記1−2−4“イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート”の項において例示した、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートをいずれも用いることができる。
【0074】
硬化剤の使用量は、通常、塗料組成物に含まれるバインダー樹脂の固形分との重量比が、バインダー樹脂(b):ポリイソシアネート(p)=77:23〜45.5:54.5程度、好ましくは70:30〜46.5:53.5程度となるような量である。
【0075】
また、本発明塗料組成物について優れた低温硬化性と長いポットライフを得ようとする場合には、硬化剤の使用量は、一般的に、塗料組成物に含まれるバインダー樹脂の固形分との重量比が、バインダー樹脂(b):ポリイソシアネート(p)=80:20〜40:60程度となるような量が好ましく、75:25〜50:50程度となるような量がより好ましい。
【0076】
2−3 ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子
ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子(iii)としては、上記1“本発明ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子”の項に記載した本発明ポリウレタン樹脂微粒子を配合する。
【0077】
該ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子の塗料組成物への配合量は、通常、バインダー樹脂とイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとの合計重量100重量部に対して、ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子5〜30重量部程度、好ましくは5〜20重量部程度、より好ましくは5〜15重量部程度である。
【0078】
2−4 反応促進剤及び反応遅延剤
本発明塗料組成物には、反応促進剤及び反応遅延剤を、所定の割合で配合することができる。
【0079】
本発明塗料組成物に配合できる反応促進剤としては、塗料組成物の分野でウレタン反応を促進するために用いられている従来の反応促進剤を用いればよい。かかる反応促進剤としては、オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ジブチルチンジラウレートなどの錫系の反応促進剤が好ましく用いられる。これら反応促進剤は、単独で、又は2種以上併用して用いることができる。
【0080】
従来、かかる反応促進剤を用いる場合は、通常、組成物の固形分全重量に対して0.1重量%程度の量で用いられている。しかし、本発明においては、これら反応促進剤を本発明塗料組成物へ配合する場合の配合量は、組成物の全固形分重量に対して、通常、0.2〜2重量%程度、好ましくは0.4〜2重量%程度、より好ましくは0.5〜1.5重量%程度である。
【0081】
本発明塗料組成物に配合できる反応遅延剤としては、塗料組成物の分野でウレタン反応において反応遅延剤として従来用いられているものを使用することができる。かかる反応遅延剤としては、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチル等のアセト酢酸のC14低級アルキルエステル、アセチルアセトンなどが挙げられる。
【0082】
従来、かかる反応遅延剤を用いる場合は、通常、組成物の固形分全重量に対して2重量%程度の量で用いられている。しかし、本発明に塗料組成物へ反応遅延剤を配合する場合の配合量は、組成物の全固形分重量に対して、通常、5〜15重量%程度、好ましくは6〜12重量%程度、より好ましくは6〜10重量%程度である。
【0083】
反応促進剤(x)と反応遅延剤(y)の配合量の比率は、通常、重量比で(x):(y)=1:20〜1:7.5程度、好ましくは1:15〜1:8程度、より好ましくは1:12〜1:10程度である。
【0084】
一般に、低温硬化性に優れている塗料組成物はポットライフが短いが、本発明の塗料組成物は、反応促進剤と反応遅延剤を上記特定量配合することにより、優れた低温硬化性及び長いポットライフという相反する2つの効果を同時に達成することができる。
【0085】
2−5 塗料組成物の製造
本発明塗料組成物には、本発明所期の効果を得ることができる限り、従来の塗料組成物に配合されているような成分を配合してもよい。例えば、従来艶消し剤として用いられている、シリカ、珪藻土、アルミナ、炭酸カルシウムなどの無機微粉末や、アクリル樹脂微粉末などを必要に応じて配合してもよい。
【0086】
本発明の塗料組成物は、本発明ポリウレタン樹脂微粒子、バインダー樹脂、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート及び必要に応じてその他の成分、例えば、反応促進剤、反応遅延剤、を用いて、有機溶剤を溶媒として用い、通常の方法に従って、塗装するための最適粘度に適宜設定することができる。例えば、固形分20〜30重量%程度、粘度値としてはFC(フォードカップ)No. 4で12〜14s程度(20℃)となるように調整することが好ましい。有機溶媒としては、上記1−2−5“貧溶媒”の項で記載した貧溶媒(例えば、n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)などの有機溶媒を用いることができ、貧溶媒以外の有機溶媒を用いることもできる。塗料組成物に配合するラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子を製造するために用いた貧溶媒と同じ溶媒を、塗料を調製するための有機溶媒として用いる場合には、上記1−2“製造方法”の項に記載のようにして得られたラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子を含む反応混合物(懸濁液)をそのまま利用することができるので便利である。
【0087】
本発明の塗料組成物に特定量の反応促進剤及び反応遅延剤を配合した場合、低温硬化性に非常に優れており、70℃で5分間程度加熱する程度で硬化でき、ラッカー並みの成膜性を有する。しかもポットライフが長く、例えば0〜35℃の温度で2〜4時間にも達する。このように、特定量の反応促進剤と反応遅延剤を含有する本発明塗料組成物は、優れた低温硬化性及び長いポットライフという相反する効果を同時に奏する塗料組成物であり、塗膜形成に関するエネルギー的、ラインコスト的に好ましく、工業的な用途に非常に適している。
【0088】
特定量の反応促進剤及び反応遅延剤を含有する本発明塗料組成物は、ポットライフが2時間以上であることが好ましい。ポットライフは、例えば、塗料組成物を調製後、フォードカップ(20℃にて、フォードカップNo.4)で測定した粘度の増加が2秒となる時間をいう。粘度の増加がフォードカップで2秒を超えなければ、例えば、溶剤で希釈する必要がないなど、作業性に優れている。本発明塗料組成物は、例えば調製直後のフォードカップの粘度が12〜14s程度であることが好ましく、塗料調製後の粘度からフォードカップで2sを超えた後であっても、ゲル化していなければ、塗装できる程度に希釈するなどして用いることができる。
【0089】
3 本発明物品
本発明には、河津健司らの、(社)自動車技術会,学術講演会前刷集,No.87-99, p19-22(1999)に記載された方法に従って求めたS値が0.51〜1である塗膜を有する製品(物品)、好ましくは上記2“本発明好触感塗料組成物”の項に記載した本発明の塗料組成物を被塗物表面に塗装した製品(物品)、も含まれる。
【0090】
上記の本発明塗料組成物は、通常用いられている方法、例えば、エアースプレー方式、エアレススプレー方式、フローコーター方式などにより塗装することができる。上記塗料組成物は、通常、常温から100℃程度の温度、好ましくは75〜90℃程度の温度で、充分に硬化し、触感の良好な塗膜を形成する。本発明発明塗料組成物が、反応促進剤及び反応遅延剤を含有する場合には、一般に、常温から90℃程度の温度、好ましくは65〜75℃程度の温度で、充分に硬化し、触感の良好な塗膜を形成する。好感触塗膜の塗布量は、被塗物の用途に応じて適宜設定することができるが、通常、膜厚が10〜70μm程度(硬化後)、好ましくは25〜45μm程度(硬化後)となるような量であることが望ましい。硬化時間は、設定した温度に応じて塗布膜が所望の程度まで硬化するような時間であればよい。本発明塗料組成物が、反応促進剤及び反応遅延剤を含有する場合には、低温硬化性に優れているので、硬化するまでの時間は、例えば、70℃程度で、5分間程度である。
【0091】
好触感塗膜を形成するための被塗物としては、自動車の内装品(例えば、インストルメントパネル(インパネ)、ドアトリム、コンソールパネル、センタークラスター、スイッチパネル、メーターフード、シフトノブ)などや、インテリア材(壁材、手すり、ドアノブ、机の天板などの内装材)などに通常用いられている各種プラスチック素材に必要に応じて表面処理、下塗り塗装、中塗り塗装などを行ったもの、これらのものが組み合わさった複合部材などが挙げられる。
【0092】
プラスチック素材は、特に限定されず広い範囲から選択することができるが、例えば、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体、ポリプロピレン系樹脂、熱可塑性ポリオレフィン等が挙げられる。
【0093】
上記本発明塗料組成物により塗装された製品(物品)は、塗膜が充分な粗滑感及び温冷感を示す。さらに該塗膜は乾湿感及び硬柔感にも優れており、充分なぬめり感を有する好触感の塗膜であり、例えば、S値が0.51〜1である。また、上記塗料組成物には本発明特定のポリウレタン樹脂微粒子が配合されているため、得られた塗膜の付着性、リコート付着性、耐油脂汚染性にも優れている。かかる製品は、特に自動車のインスツルメントパネルなどの自動車内装品や、インテリア材などの内装品に好適である。
【0094】
【実施例】
以下に実施例及び試験例を示して、本発明をより詳細に説明する。
【0095】
実施例1 ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子の製造
まず、ポリエステルポリオール[デスモン No. 2200 ;商品名;日本ポリウレタン工業(株)製]60gと、ラノリン誘導体[ポリオキシエチレン(20)ラノリンアルコール;ベルポールA-20 ; 商品名 ; 日精産業(株)製]10gをN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(付着試剤)7.0gと共にキシレン(貧溶媒,445g)中に注ぎ、ヤシ油変性アルキッド樹脂(油長33)[テスラック 2052-60;商品名;日立化成ポリマー(株)製]9.0gとナフテン酸亜鉛0.56g(いずれも分散助剤)を共存させ、撹拌しながら85℃まで加熱した。
【0096】
次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート(コロネート HL;商品名;日本ポリウレタン工業(株)製)32.5g、ジブチルチンジラウレート(反応触媒)50mgを加え、85℃にて1時間不均一条件下で懸濁重合を行った。
【0097】
1時間経過後、反応停止剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル20gを加え約10分間撹拌し、平均粒子径約30μmの球形状のポリウレタン樹脂微粒子の表面に約3μmのラノリンが付着したポリウレタン樹脂微粒子260gを含む懸濁溶液650gを得た。平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置[LA500((株)堀場製作所製)]を用いることにより測定した。
【0098】
なお、懸濁液を濾過後、乾燥させたラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子を、キシレン及びトルエンで洗浄しても、ラノリン誘導体は除去できなかった。
【0099】
参考例1
ラノリン誘導体を添加しない以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂微粒子260gを含む懸濁液(固形分濃度40%)を得た。
【0100】
実施例2〜7
I-i) 塗料組成物の調製
下記のa)〜e)成分を用いた塗料組成物を調整した。
【0101】
a) バインダー樹脂
ガラス転移点が−40℃、数平均分子量が3,000、水酸基価が40mgKOH/g resinである直鎖ポリエステル樹脂
b) イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート (硬化剤)
ヘキサメチレンジイソシアネートの多量体(デュラネート;E-402-90-T;商品名;旭化成工業(株)製)
c) 実施例1において得られたラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子
(ポリウレタン樹脂微粒子は、懸濁液に含まれるものをそのまま用いた)
d) 有機溶媒
キシレン
e) シリカ微粉末
(シリカ微粉末は一般的に塗料の艶消し剤として用いられており、本発明ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子の配合によっても不足する艶消しの程度を補い、各塗膜が同じ艶となるような量を配合した。)
実施例2〜7の塗料組成物は、表1に示す組成に従いバインダー樹脂及び艶消し剤を、40重量部のキシレンに撹拌・混合した後、実施例1で得られた懸濁液中に分散させて、塗料組成物の固形分が25%となるようにして塗料組成物を調製した。硬化剤は、塗布直前に組成物に添加した。
【0102】
比較例1
実施例1で得られた懸濁液を用いる代わりに参考例1で得られた懸濁液を用いる以外は実施例5と同様にして、表1に示す組成の塗料組成物(固形分26重量%)を調製した。
【0103】
比較例2
ラノリン誘導体であるベルポールA-20をキシレン40重量部にさらに添加する以外は比較例1と同様にして、表1に示す組成の塗料組成物(固形分25重量%)を調製した。
【0104】
比較例3
ラノリン誘導体であるベルポールA-20をキシレン40重量部にさらに添加し、実施例1で得られた懸濁液の代わりにキシレンそのものを用いる以外は実施例5と同様にして、表1に示す組成の塗料組成物(固形分25重量%)を調製した。
【0105】
【表1】
Figure 0003706971
【0106】
I-ii) 塗装
実施例2〜7及び比較例1〜3の塗料組成物を、塗膜厚さ(乾燥後)が約30〜40μmとなるように アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体基板に塗装し、80℃で30分間乾燥させて試験片を得た。
【0107】
I-iii) 性能評価
(付着性)
上記I-ii)にて得られた試験片を48時間室温にて放置した後、碁盤目テープ剥離試験を実施し、塗膜の付着性を評価した。また、試験片を湿箱(50℃、95%RH以上)中に240時間放置し、その後碁盤目テープ剥離試験を実施し、塗膜の付着性を評価した。碁盤目テープ剥離試験は、塗膜に2mm×2mmのマス目100個をカッターナイフで傷をつけて作成し、その部分にセロハン粘着テープを貼りつけ、次いで剥離することにより行った。結果を表2に示す。
【0108】
【表2】
Figure 0003706971
【0109】
(触感)
試験片を乾燥した後48時間経過後、S値を用いて、触感を評価した。
【0110】
各値は、(社)自動車技術会,学術講演会前刷集,No.87-99, p19-22(1999)に記載された測定装置及び相関式に従って求めた。
【0111】
Figure 0003706971
なお、かかる基準値は、従来のラッカー塗料塗膜、二液ウレタン塗料塗膜(柔らかいとされているもの)及び触感に優れている天然皮革等を評価し、S値分布を作製した上で、触感に優れる領域として設定した。
【0112】
結果を表3に示す。
【0113】
【表3】
Figure 0003706971
【0114】
(耐牛脂性)
試験片の塗膜表面に牛脂(耐牛脂性試験に慣用されている試薬:関東化学(株))製を2g/100cm2となるように塗布し、80℃雰囲気で強制対流のない電気炉に試験片を一週間放置した。その際、牛脂の揮散量を一定に維持するために、試験片上にネル(布の一種)を載置した。
【0115】
一週間経過後、少量の中性洗剤を用いて試験片を十分水洗し、その後、接着テープ(セロハンテープ)による塗膜剥離試験及び摩耗試験機による乾布摩擦試験を行った。
【0116】
剥離試験は、試験片の試験面にカッターナイフにてクロスカット(Xに切り跡をつける)し、その部分にセロハンテープを貼着し、その後該セロハンテープを引き剥がすことにより行った。
【0117】
一方、乾布摩耗試験は、5枚重ねのガーゼを摩擦子とし、該摩擦子を試験片表面にて荷重40.09kPa、ストローク100mmで200往復させた。
Figure 0003706971
結果を表4に示す。
【0118】
【表4】
Figure 0003706971
【0119】
耐牛脂性は、耐油脂汚染性の指標であり、上記表4の“剥がれ”の評価が○であると、天然油脂などによる付着阻害を生じないほど付着性がよく、“乾布摩擦”が○であると、天然油脂などによる塗膜の膨潤がなく塗膜のバリア性がよい。
【0120】
(リコート付着性)
上記I-ii)にて得られた試験片のリコート付着性について、以下の方法に従って評価した。
【0121】
塗装塗膜を上記I-ii)に示した乾燥条件下で乾燥後、直後、及び経時変化を確認する為、1日放置後、3日放置後、1週間放置後、10日放置後にそれぞれ該塗膜上に同じ塗料組成物を塗装し、碁盤目テープ剥離試験によりリコート付着性を評価した。碁盤目テープ剥離試験は、塗膜に2mm×2mmのマス目100個をカッターナイフで傷をつけて作成し、その部分にセロハン粘着テープを貼りつけ、次いで剥離することにより行った。
結果を下記表5に示す。
【0122】
【表5】
Figure 0003706971
【0123】
表5において「○」は乾燥直後及び経時のいずれにおいても塗膜/リコート塗膜間で剥がれがなく付着性を満足していることを意味し、「×」は直後若しくは経時において塗膜/リコート塗膜間で碁盤目の少なくとも1つに剥がれが生じたことを意味する。
【0124】
実施例8 ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子の製造
まず、ポリエステルポリオール[デスモン No. 2200 ;商品名;日本ポリウレタン工業(株)製]60gと、ラノリン誘導体[ポリオキシエチレン(20)ラノリンアルコール;ベルポールA-20 ; 商品名 ; 日精産業(株)製]10gをN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(付着試剤)7.0gと共にキシレン(貧溶媒,445g)中に注ぎ、ヤシ油変性アルキッド樹脂(油長33)9.0gとナフテン酸亜鉛0.56g(いずれも分散助剤)を共存させ、撹拌しながら90℃まで加熱した。
【0125】
次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート(コロネート HL;商品名;日本ポリウレタン工業(株)製)32.5g、ジブチルチンジラウレート(反応触媒)55.3mgを加え、90℃にて90分間、不均一条件下で懸濁重合を行った。
【0126】
1時間経過後、反応停止剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル20gを加え約10分間撹拌し、平均粒子径約30μmの球形状のポリウレタン樹脂微粒子の表面に約3μmのラノリンが付着し、水酸基価が150mgKOH/g resinであるラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子260gを含む懸濁液650gを得た。平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置[LA500((株)堀場製作所製)]を用いることにより測定した。
【0127】
なお、上記懸濁液を濾過後、乾燥させたラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子を、キシレン及びトルエンで洗浄しても、ラノリン誘導体は除去できなかった。
【0128】
実施例9〜15
II i) 塗料組成物の調製
下記のa)〜g)成分を用いた塗料組成物を調製した。
【0129】
a) バインダー樹脂
ガラス転移点が−40℃、数平均分子量が3,000、水酸基価が40mgKOH/g resin、弾性率が30MPaである直鎖ポリエステル樹脂
b) イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート (硬化剤)
ヘキサメチレンジイソシアネートの多量体(デュラネート;E-402-90-T;商品名;旭化成工業(株)製)
c) 実施例8において得られたラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子
(ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子は、懸濁液の形態のものをそのまま用いた)
d) 反応促進剤
ジブチルチンジラウレート
e) 反応遅延剤
アセト酢酸ブチル
f) 有機溶媒
キシレン
g) シリカ微粉末
(シリカ微粉末は一般的に塗料の艶消し剤として用いられており、ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子の配合によっても不足する艶消しの程度を補い、各塗膜が同じ艶となるような量を配合した。)
実施例9〜15の塗料組成物は、表6に示す組成に従いバインダー樹脂及び艶消し剤を、40重量部のキシレンに撹拌・混合した後、実施例8で得られた懸濁液中に分散させて、塗料組成物の固形分が25重量%となるようにして塗料組成物を調製した。硬化剤、反応促進剤及び反応遅延剤は、塗布直前に組成物に添加した。
【0130】
【表6】
Figure 0003706971
【0131】
塗料組成物のポットライフ
(a)〜(g)成分を所定量配合した直後の塗料組成物の粘度を測定し、その後溶剤の揮散のないよう蓋をし、20℃の雰囲気下に静置して経時的に粘度を測定した。結果を下記表7に示す。
【0132】
【表7】
Figure 0003706971
【0133】
粘度は、フォードカップNo.4にて測定し、表7中の数値は、“秒(s)/フォードカップ No.4/ 20 ℃”を示す。
【0134】
実施例の塗料組成物は、いずれもポットライフ(塗料調製直後の粘度から、粘度が2s増加するまでの時間)が2時間以上であった。
【0135】
また、実施例9〜15の塗料組成物は、特定量の遅延剤と促進剤を配合することにより、4時間まで液体状であったため、希釈すれば塗装可能となった。
【0136】
II-ii) 塗装
実施例9〜15の塗料組成物を、塗膜厚さ(乾燥後)が約30〜40μmとなるように アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体基板に塗装し、70℃で5分間乾燥させて試験片を得た。
【0137】
II-iii) 塗膜の性能評価
(付着性)
上記II-ii)にて得られた試験片を48時間室温にて放置した後、碁盤目テープ剥離試験を実施し、塗膜の付着性を評価した。また、試験片を湿箱(50℃、95%RH以上)中に240時間放置し、その後碁盤目テープ剥離試験を実施し、塗膜の付着性を評価した。碁盤目テープ剥離試験は、塗膜に2mm×2mmのマス目100個をカッターナイフで傷をつけて作成し、その部分にセロハン粘着テープを貼りつけ、次いで剥離することにより行った。結果を表8に示す。
【0138】
【表8】
Figure 0003706971
【0139】
(触感)
試験片を乾燥した後48時間経過後、S値を用いて、触感を評価した。
【0140】
各値は、(社)自動車技術会,学術講演会前刷集,No.87-99, p19-22(1999)に記載された測定装置及び相関式に従って求めた。
【0141】
Figure 0003706971
なお、かかる基準値は、従来のラッカー塗料塗膜、二液ウレタン塗料塗膜(塗膜の触感が柔らかいとされているもの)及び触感に優れている天然皮革等を評価し、S値分布を作製した上で、触感に優れる領域として設定した。
【0142】
結果を表9に示す。
【0143】
【表9】
Figure 0003706971
【0144】
(耐牛脂性)
試験片の塗膜表面に牛脂(耐牛脂性試験に慣用されている試薬:関東化学(株)製)を2g/100cm2となるように塗布し、80℃雰囲気で強制対流のない電気炉に試験片を一週間放置した。その際、牛脂の揮散量を一定に維持するために、試験片上にネル(布の一種)を載置した。
【0145】
一週間経過後、少量の中性洗剤を用いて試験片を十分水洗し、その後、接着テープ(セロハンテープ)による塗膜剥離試験及び摩耗試験機による乾布摩擦試験を行った。
【0146】
剥離試験は、試験片の試験面にカッターナイフにてクロスカット(Xに切り跡をつける)し、その部分にセロハンテープを貼着し、その後該セロハンテープを引き剥がすことにより行った。
【0147】
一方、乾布摩耗試験は、5枚重ねのガーゼを摩擦子とし、該摩擦子を試験片表面にて荷重40.09kPa、ストローク100mmで200往復させた。
Figure 0003706971
結果を表10に示す。
【0148】
【表10】
Figure 0003706971
【0149】
耐牛脂性は、耐油脂汚染性の指標であり、上記表10の“剥がれ”の評価が○であると、天然油脂などによる付着阻害を生じないほど被塗物への付着性がよく、“乾布摩擦”が○であると、天然油脂などによる塗膜の膨潤がなく塗膜のバリア性がよい。
【0150】
(リコート付着性)
上記II-ii)にて得られた試験片のリコート付着性について、以下の方法に従って評価した。
【0151】
塗装塗膜を上記II-ii)に示した乾燥条件下で乾燥後、乾燥直後、及び経時変化を確認する為、1日放置後、3日放置後、1週間放置後、10日放置後にそれぞれ該塗膜上に同じ塗料組成物を塗装し、碁盤目テープ剥離試験によりリコート付着性を評価した。碁盤目テープ剥離試験は、塗膜に2mm×2mmのマス目100個をカッターナイフで傷をつけて作成し、その部分にセロハン粘着テープを貼りつけ、次いで剥離することにより行った。
結果を下記表11に示す。
【0152】
【表11】
Figure 0003706971
【0153】
表11において「○」は乾燥直後及び経時のいずれにおいても塗膜/リコート塗膜間で剥がれがなく付着性を満足していることを意味し、「×」は乾燥直後若しくは経時において塗膜/リコート塗膜間で碁盤目の少なくとも1つに剥がれが生じたことを意味する。
【0154】
【発明の効果】
本発明の塗料組成物は、乾湿感、硬柔感、粗滑感及び温冷感のいずれも基準値を満たしており、優れたS値、即ち優れた触感を示す。また、付着性、リコート付着性に優れ、耐油脂汚染性にも優れている。
【0155】
また、所定量の反応促進剤と反応遅延剤を含有する本発明の塗料組成物は、低温硬化性に優れており、且つポットライフが長いので、エネルギー的に及びラインコスト的に優れており、工業的な用途に非常に適している。

Claims (10)

  1. ラノリン誘導体の存在下に、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種とイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとを、貧溶媒中で反応させて得ることができる、ラノリン誘導体とポリウレタン樹脂微粒子からなり、ラノリン誘導体の良溶媒で洗浄してもラノリン誘導体が除去できないラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子。
  2. ラノリン誘導体の存在下に、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種とイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとを、貧溶媒中で反応させて得ることができる、ラノリン誘導体とポリウレタン樹脂微粒子からなり、ラノリン誘導体の良溶媒で洗浄してもラノリン誘導体が除去できず、平均粒子径が5〜40μmであるラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子。
  3. ラノリン誘導体の存在下に、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種と、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとを、貧溶媒中で反応させることを特徴とする請求項1又は2に記載のラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子の製造方法。
  4. (i)ガラス転移点が−30〜−70℃であり、数平均分子量が1,000〜50,000、水酸基価が30〜70mgKOH/g resinであり、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のバインダー樹脂、(ii)イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート、(iii)請求項1又は2に記載のラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子及び(iv)有機溶媒を含有することを特徴とする塗料組成物。
  5. 前記バインダー樹脂と前記イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとの合計重量100重量部に対して、前記ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子を5〜20重量部含有することを特徴とする請求項に記載の組成物。
  6. (v)反応促進剤及び(vi)反応遅延剤を更に含み、反応促進剤の配合量が、組成物の固形分全重量に対して0.2〜2重量%であり、反応遅延剤の配合量が、組成物の固形分全重量に対して5〜15重量%であることを特徴とする請求項に記載の組成物。
  7. 前記バインダー樹脂が、ガラス転移点が−30〜−70℃であり、数平均分子量が1,000〜25,000であり、水酸基価が50〜70mgKOH/g resinであり、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子が、ラノリン誘導体の存在下に、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種とイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートとを、貧溶媒中で反応させて得ることができる、ラノリン誘導体とポリウレタン樹脂微粒子からなり、ラノリン誘導体の良溶媒で洗浄してもラノリン誘導体が除去できず、平均粒子径5〜40μmであり、水酸基価50〜200mgKOH/g resinであり、前記バインダー樹脂(b)と前記ポリイソシアネート(p)の配合割合が、重量比でb:p=80:20〜40:60であることを特徴とする請求項に記載の組成物。
  8. 前記反応促進剤(x)と前記反応遅延剤(y)の配合量の割合が、重量比で、x:y=1:20〜1:7.5であることを特徴とする請求項に記載の組成物。
  9. 前記反応促進剤が、錫系触媒であることを特徴とする請求項に記載の組成物。
  10. 請求項に記載の塗料組成物を被塗物に塗装してなる塗装物品。
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