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JP3705736B2 - 熱電気測定装置の試料組立体 - Google Patents

熱電気測定装置の試料組立体 Download PDF

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JP3705736B2
JP3705736B2 JP2000259868A JP2000259868A JP3705736B2 JP 3705736 B2 JP3705736 B2 JP 3705736B2 JP 2000259868 A JP2000259868 A JP 2000259868A JP 2000259868 A JP2000259868 A JP 2000259868A JP 3705736 B2 JP3705736 B2 JP 3705736B2
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佳弘 野谷
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、試料の温度を変化させて試料の電気特性を測定する熱電気測定装置の試料組立体に関するものである。試料の温度を変化させて試料の電気特性を測定する手法としては、代表的なものに、TSC(Thermally Stimulated Current:熱刺激電流)測定法があり、そのほかに、DEA(Dielectric Analysis:熱緩和測定)、DLTS(Deep Level Transient Spectroscopy)、ICTS(Isothermal Capacitance Transient Spectroscopy)、TSIC(Thermally Stimulated Ionic Current)、IV(Current-Voltage characteristic:電流−電圧特性測定法)、CV(Capacitance-Voltage characteristic:容量−電圧特性測定法)などの測定手法がある。この発明はこれらの測定手法を実施する熱電気測定装置のための試料組立体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
TSC法は伝統的な熱測定法の一種であり、試料温度を変化させて試料に発生する電流を測定するものである。その測定結果から各種の解析をすることができる。このTSC法を用いて試料の結晶欠陥を解析することが知られている。例えば、Japanese Journal of Applied Physics, Vol.27, No.2, 1988, pp.260-268(以下、第1刊行物という)では半絶縁性(semi-insulating)GaAs(ガリウムヒ素)について液体ヘリウム温度から室温までの低温領域でTSCスペクトルを測定することで深い準位のトラップを解析している。また、Rev. Sci. Instrum., Vol.63, No.12, 1992, p.5714-5725(以下、第2刊行物という)ではMOSキャパシタのSiO2(二酸化ケイ素)層について室温から300℃までの温度領域でTSCスペクトルを測定することで正孔や電子の密度を解析している。
【0003】
これらの刊行物では、試料組立体について、次のような記載がある。上述の第1刊行物では、GaAs試料の上面中央に半透明のアルミニウム電極(一方の電極となる)を形成して、その周囲にガードリングを形成している。一方、試料の背面には厚いアルミニウム膜(他方の電極となる)を形成している。この第1刊行物の図面では、加熱可能な支持台の上に試料を載せるようになっているが、試料がどのように支持台に固定されているのかは不明である。
【0004】
上述の第2刊行物では、絶縁性の基板に試料を固定している。この基板の両端にはステンレス鋼製のピンがアルミニウム・ワッシャと共に固定されている。一方の端部のワッシャと試料(SiO2キャパシタ)の背面電極との間にはアルミニウム・ワイヤを接続している。そして、背面側にワイヤを接続した試料について、この試料の背面電極を、基板の中央に、エポキシ樹脂を含む銀ペーストで固定している。さらに、試料の上面のゲートと他方の端部のワッシャとをアルミニウム・ワイヤで接続している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述の第1刊行物に開示された試料組立体は、試料を基板に固定する具体的な方法が開示されていないので、その良否は判断できない。第2刊行物に開示された試料組立体は、銀ペーストを使って試料を基板に固定しているので、試料の均熱性が良くないという問題がある。また、アルミニウム製のワッシャとワイヤを使っていることや、試料から左右のステンレス製のピンまでに至る電気回路が左右対称になっていないことなどの理由から、接触起電力が大きくなったり、昇降温の際に熱起電力が発生したりして、測定ノイズが生じやすい。
【0006】
この発明は上述の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、均熱性が良好で、接触起電力や熱起電力の小さい、熱電気測定装置の試料組立体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明の熱電気測定装置の試料組立体は、次の構成を備えている。(a)電気絶縁性の基板。(b)前記基板の上に形成された1対の中継電極層。(c)前記基板に固定された試料。(d)前記試料と前記基板の間に介在しているインジウムからなる接着層。(e)前記試料の上面に形成された1対の電極層。(f)前記電極層の一方と前記中継電極層の一方を接続する導電性のワイヤと、前記電極層の他方と前記中継電極層の他方を接続する導電性のワイヤ。
【0008】
接着層に使うインジウムは、熱伝導率が大きいので、試料と基板との間の熱伝導が良好になり、試料の均熱性が良好になる。また、インジウムは軟らかい金属なので、試料の温度変化を大きくした場合(例えば、液体窒素温度から室温まで温度変化させるような場合)に試料と基板との間で熱膨張率の違いによる応力が発生しても、この応力をインジウムで吸収できる。したがって、試料に内部歪が発生しにくい。なお、インジウムの代わりに、金・スズ合金(例えば、Au88%・Sn12%)を使ってもよい。この金・スズ合金の熱伝導率も良好である。
【0009】
基板の材質としては、電気絶縁性が高くて、熱伝導率の大きな材料が好ましく、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化アルミニウム(Al23)のいずれかを使うことができる。
【0010】
この試料組立体は、電気回路用の導体を兼ねる2本の支持棒で支持するようになっている。支持棒と中継電極層との間には金製のワッシャを挿入するのが好ましい。金製のワッシャを挿入すると、支持棒の熱変位が基板に影響するのを緩和できる。
【0011】
試料上の電極層と、基板上の中継電極層は、いずれも多層膜で構成することができ、その場合に、これらの多層膜の最上層を金層にするのが好ましい。また、前記ワイヤは金製のワイヤとするのが好ましい。その場合は、金ワイヤを金層にボンディングすることになる。このような金同士のボンディングにより、ワイヤと電極層及び中継電極層との間に発生する接触起電力や熱起電力が小さくなる。さらに、試料上の1対の電極層や基板上の1対の中継電極層を左右対称に配置することで、上述の接触起電力や熱起電力が発生しても、これらを相殺できる。
【0012】
この試料組立体は、代表的には、TSC(Thermally Stimulated Current:熱刺激電流)測定装置に適用することができ、そのほかに、DEA(Dielectric Analysis:熱緩和測定)、DLTS(Deep Level Transient Spectroscopy)、ICTS(Isothermal Capacitance Transient Spectroscopy)、TSIC(Thermally Stimulated Ionic Current)、IV(Current-Voltage characteristic:電流−電圧特性測定法)、CV(Capacitance-Voltage characteristic:容量−電圧特性測定法)などの測定手法を実施する熱電気測定装置にも適用できる。また、試料としては、例えば、GaAsなどの化合物半導体の熱電気測定に適している。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の試料組立体のひとつの実施形態を示す斜視図である。この試料組立体10はTSC測定装置のための試料組立体を例示したものであり、窒化アルミニウム製の基板12にGaAs試料14を接着したものである。窒化アルミニウムは熱伝導性の良好な絶縁材料である。TSC測定装置では、試料14の温度を正確にかつ均一に制御することが重要なので、基板14の熱伝導性は良好でなければならない。窒化アルミニウムの熱伝導率は、20℃で170[W/(m・K)]であり極めて良好である。基板12の材質としては、そのほかに、窒化ホウ素や、酸化ベリリウム、酸化アルミニウムを使うことができ、それらの熱伝導率(単位は[W/(m・K)])は、窒化ホウ素が20℃で75(ただし、方向依存性がある)、酸化ベリリウムが20℃で240、酸化アルミニウムが20℃で38である。
【0014】
細長い基板12の長手方向の中央には中間層16が真空蒸着(好ましくは電子ビーム蒸着)によって形成されている。この中間層16は多層膜からなり、Ti/Mo/Auの三層構造になっている。すなわち、基板12の側から順に、Ti(チタン)、Mo(モリブデン)、Au(金)の順番で膜が形成されている。したがって、最上層が金層である。
【0015】
また、基板12の長手方向の両端には、中央の中間層16から間隔をあけて、1対の中継電極層24、26が真空蒸着によって形成されている。これらの中継電極層24、26も多層膜からなり、中央の中間層16と同様に、Ti/Mo/Auの三層構造になっている。やはり、最上層が金層である。一番下のTi層は、この多層膜を窒化アルミニウム基板12に密着させるアンカー効果があり、多層膜の密着性を改善する働きがある。中間のMoは最下層のTiが最上層のAuに拡散するのを防ぐ働きがある。TiがAuに拡散すると、Auの仕事関数が変わって雑起電力の原因になる。最上層のAuは、後述するAuワイヤとのオーミックコンタクトを確保するためのものであり、ワイヤボンディングを容易にする。中継電極層24、26と中間層16は同じ構造であり、これらは同一の薄膜形成工程で作ることができる。各層の厚さは、Tiが50nm、Moが100nm、Auが1μm程度である。上述のMoの代わりにPtを使うこともできる。すなわち、中継電極層24、26と中間層16を、Ti/Pt/Auの三層構造にしてもよい。
【0016】
上述の中間層16の上に、In(インジウム)からなる接着層18を介して、GaAs試料14が接着されている。接着層18の厚さは8〜100μmである。試料14の平面サイズ(基板表面に平行な面のサイズ)は5mm×5mmであり、試料14の厚さは625μmである。
【0017】
接着剤を構成するインジウムは熱伝導率が極めて良好なので試料の均熱性が良好になる。GaAsの結晶欠陥をTSC測定で解析するには0.2℃以下の試料温度安定性が要求される。そのために試料を一様な温度に制御する必要があるが、接着剤としてインジウムを利用することで、試料の均熱性が良好になる。インジウムの熱伝導率は、27℃で81.6[W/(m・K)]である。これに対して、従来の接着剤である銀ペーストの熱伝導率は25℃で4[W/(m・K)]であるから、インジウムは銀ペーストに比べて、約20倍も熱伝導率が大きい。インジウムの代わりにAu/Sn(金・スズ)合金を用いることもできる。Au/Sn合金も熱伝導率も良好がある。例えば、Au80%・Sn20%合金の熱伝導率は、20℃で57.3[W/(m・K)]である。
【0018】
また、接着層を構成するインジウムは、融点が約157℃なので、試料組立体10を例えば180℃程度に加熱することで、インジウムを溶かして、測定済みの試料14を基板12から取り外すことができる。そして、同じ基板12に別の試料14をインジウムで接着固定することができ、これによって基板12を再利用できる。その場合、測定済みの試料14に接続されていたAuワイヤは取り除いて、新しいワイヤで新試料をボンディングすることになる。基板上の中継電極層24、26は数回の再利用が可能である。電子ビーム蒸着法で形成したTi/Mo/Auの中継電極層は数回の再利用が可能である。また、スパッタリング法で形成したTi/Pt/Auの中継電極層は、熱履歴に対する物理的強度が良好で、再利用可能回数はさらに増える。
【0019】
従来技術の「エポキシ樹脂を含む銀ペースト」を使った場合は、このような基板の再利用はできない。なお、インジウムの代わりにAu/Sn合金を用いる場合には、融点はもう少し高くなるので(Au88%・Sn12%のときに約240℃)、インジウムに比べて基板を再利用するのが難しくなる。
【0020】
基板12上に形成した上述の中間層16は、接着層18と基板12との間の接着性を高める機能を果たしている。インジウムからなる接着層18を基板12に直接接触させると、接着層18と基板12との間の濡れ性が悪くなる。
【0021】
試料14の下面には、試料14の側から順に、Ti(チタン)、Au(金)の順番で二層構造の膜15が形成されている。したがって、基板12に試料14が接着されている箇所では、窒化アルミニウム製の基板12とGaAs製の試料14との間には、基板12の側から順番に、Ti/Mo/Au/In/Au/Tiの膜が挟まれていることになる。
【0022】
次に、試料と基板との間の熱応力について説明する。試料と基板は材質が異なるので、その線膨張係数は異なっている。したがって、試料を基板に接着した状態で温度を変化させれば、線膨張係数の違いによって試料と基板とで熱膨張の伸縮量が異なることになり、その結果、試料と基板との接着面に熱応力が発生する。この場合、試料と基板との接着面積が大きくなればなるほど熱応力が大きくなる。特に、接着部分の中心部分よりも周辺部分で大きな熱応力が発生する。大きな熱応力が発生すると、試料または基板にクラックが入るなどの問題が生じる。また、熱応力が測定データ(非常に微弱な電流である)に影響を及ぼすことも考えられる。そこで、熱応力があまり大きくならないように、試料と基板との接着面積(すなわち、試料の平面サイズ)をあまり大きくしないことが大切である。図1に示す実施形態では、上述のように試料14の平面サイズが5mm×5mmであり、この程度の試料サイズでは、熱応力の影響があまり大きくならず、試料や基板にクラックが入るなどの問題は生じなかった。熱応力の観点からは、これよりも小さい試料サイズであれば、より効果的である。また、試料サイズを小さくすると、試料の均熱性が向上する(試料内の温度分布が小さくなる)という利点もある。
【0023】
なお、発生する熱応力の大きさは、試料サイズだけではなくて、当然ながら、試料と基板、さらにはその間の接着層の、それぞれの線膨張係数にも依存する。また、試料や接着層の厚さも熱応力に影響を及ぼすことが考えられる。この実施形態について述べると、試料14の材質であるGaAsの線膨張係数は5.8×10のマイナス6乗[1/K]、接着層18の材質であるインジウムの線膨張係数は3.3×10のマイナス5乗[1/K]、基板12の材質である窒化アルミニウムの線膨張係数は3.9×10のマイナス6乗[1/K]である。また、試料14の厚さは625μm、接着層18の厚さは例えば8μmである。厳密に言えば、このような材質と厚さの組み合わせのときに、上述のように、試料14の平面サイズが5mm×5mmまたはそれ以下であることが好ましい、ということになる。しかしながら、材質や厚さが変わっても、線膨張係数や厚さが上述の実施形態の数値例から極端に大きく違っていなければ、熱応力の観点から試料の平面サイズを5mm×5mm以下にする、という目安は有効である。
【0024】
次に、試料14の上面に設ける電極層について説明する。試料14の上面には真空蒸着によって1対の電極層20、22が間隔をあけて形成されている。これらの電極層20、22は多層膜からなり、AuGe/Ni/Auの三層構造になっている。すなわち、試料14の側から順に、Au88%・Ge12%のAuGe(金ゲルマニウム)合金、Ni(ニッケル)、Au(金)の順番で膜が形成されている。したがって、最上層が金層になる。このような三層構造は、Auワイヤと試料電極とのオーミックコンタクトをとるためのものである。最下層のAuGe合金はGaAs試料14との密着性を良好にする働きがある。各層の厚さは、AuGeが50nm、Niが10nm、Auが500nm程度である。
【0025】
試料14上の左側の電極層20の最上層(Au)は2本のAuワイヤ28によって左側の中継電極層24の最上層(Au)に電気的に接続されている。同様に、試料14上の右側の電極層22の最上層(Au)は別の2本のAuワイヤ30によって右側の中継電極層26の最上層(Au)に電気的に接続されている。なお、Auワイヤの代わりに、PtワイヤやAl(アルミニウム)ワイヤを使うことも可能である。ただし、その場合は、電極層20、22及び中継電極層24、26の最上層をワイヤの材質と同じにすることが大切である。
【0026】
次に、この試料組立体10をTSC測定装置に取り付けるときの構造を説明する。図2は試料組立体10とその取付構造及び電気回路を示す正面断面図である。試料組立体10は2本のステンレス鋼製の支持棒32、34によってTSC測定装置内に支持されている。これらの支持棒32、34は電気回路を構成するための導体としても機能する。
【0027】
左側の支持棒32はネジ40によって試料組立体10の基板12に結合されている。支持棒32の下端面と左側の中継電極層24の上面との間にはAuワッシャ36が挿入されている。基板12と中継電極層24とAuワッシャ36には、それぞれ、ネジ40が通過できる貫通孔43(図1を参照)が形成されている。支持棒32の下部には、ネジ40と噛み合うメネジが形成されている。右側の支持棒34も、同様に、ネジ42とAuワッシャ38によって基板12に結合されている。Auワッシャ36、38を挿入しない場合には、広い温度範囲(例えば、液体窒素温度と室温の間)で温度を変化させたときに、ステンレス製の支持棒32、34の熱変位(温度変化による伸縮)によって、窒化アルミニウム製の基板12が割れたり、基板上の中継電極層24、26に亀裂が入ったりすることがある。Auワッシャ36、38を挿入することで、このような問題が解消する。
【0028】
1対の支持棒32、34の間には電流計44と電圧源46が選択的に接続されることになる。支持棒32、34につながる配線60は3重シールド線になっていて、できるだけノイズを防ぐようになっている。
【0029】
図3は試料組立体10の平面図である。基板12の上に形成された中間層16と中継電極層24、26はハッチングで示してある。また、試料14の上に形成された電極層20、22もハッチングで示してある。基板12の中央付近には穴48が形成されていて、この穴48に温度測定用の白金抵抗体(または熱電対)が挿入される。
【0030】
この試料組立体10は、試料14の上面に1対の電極層20、22を形成しているので、試料14の表面に沿った熱刺激電流を測定することになる。すなわち、この試料組立体10を用いることで、試料の表面付近の結晶欠陥を解析することができる。
【0031】
図3を見ると分かるように、この試料組立体10は、試料上の1対の電極層20、22と、基板上の1対の中継電極層24、26と、ワイヤ28、30とが、試料14の中心に対して、左右対称(線対称)になっている。これにより、接触起電力や熱起電力が発生しても、これらが相殺されるようになっている。
【0032】
図4はTSC測定装置における試料組立体の周囲の構造を概略的に示す正面断面図である。試料組立体10は1対の支持棒32、34で支持されている。ヒータコイル50を巻いた円筒状のカバー52は昇降可能であり、このカバー52を下げることで試料組立体10の周囲を覆うことができる。試料組立体10を収容する空間54にはヘリウムガスが満たされている。その外側の空間56には液体窒素が満たされている。さらにその外側の空間58は真空に排気されている。
【0033】
図5は図1の試料組立体10を使ったTSC測定条件の一例を示すグラフである。まず、試料の温度を室温(例えば20℃)からマイナス180℃まで、毎分1℃の温度勾配で下げていく。次に、試料の温度をマイナス180℃に保った状態で、試料に10Vの電圧を20分間印加する。その間に、試料にレーザ光を18分間照射する。このように、電圧の印加とレーザ光の照射により、GaAs試料中の結晶欠陥を励起状態にする。その後、試料温度をマイナス180℃から室温まで毎分1℃の温度勾配で上げていく。そのとき、試料にはマイナス0.2Vの電圧を印加する。温度が上昇していくに従って、上述の励起状態が緩和されていき、試料中に微弱な電流(例えば、10のマイナス13乗アンペアからマイナス15乗アンペア程度の微弱電流)が生じる。この電流を温度の関数として測定することによりTSCスペクトルが得られ、これを解析することで、試料の結晶欠陥の状況を知ることができる。
【0034】
【発明の効果】
この発明の熱電気測定装置の試料組立体は、インジウムまたは金・スズ合金からなる接着層を用いて試料を基板に接着固定したので、試料の均熱性が良好になる。また、支持棒と基板上の中継電極層との間に金製のワッシャを挿入することで、支持棒の熱変位の影響を緩和できる。さらに、試料上の電極層と基板上の中継電極層の最上層を金層にして、これらを金製のワイヤで接続することで、接触起電力や熱起電力が小さくなる。さらに、試料上の1対の電極層や基板上の1対の中継電極層を左右対称に配置することで、上述の接触起電力や熱起電力が発生しても、これらを相殺できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の試料組立体のひとつの実施形態を示す斜視図である。
【図2】試料組立体とその取付構造及び電気回路を示す正面断面図である。
【図3】試料組立体の平面図である。
【図4】TSC測定装置における試料組立体の周囲の構造を概略的に示す正面断面図である。
【図5】図1の試料組立体を使ったTSC測定条件の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
10 試料組立体
12 基板
14 試料
16 中間層
18 接着層
20、22 電極層
24、26 中継電極層
28、30 Auワイヤ
32、34 支持棒
36、38 Auワッシャ

Claims (8)

  1. 次の構成を備える熱電気測定装置の試料組立体。
    (a)電気絶縁性の基板。
    (b)前記基板の上に形成された1対の中継電極層。
    (c)前記基板に固定された試料。
    (d)前記試料と前記基板の間に介在しているインジウムからなる接着層。
    (e)前記試料の上面に形成された1対の電極層。
    (f)前記電極層の一方と前記中継電極層の一方を接続する導電性のワイヤと、前記電極層の他方と前記中継電極層の他方を接続する導電性のワイヤ。
  2. 次の構成を備える熱電気測定装置の試料組立体。
    (a)電気絶縁性の基板。
    (b)前記基板の上に形成された1対の中継電極層。
    (c)前記基板に固定された試料。
    (d)前記試料と前記基板の間に介在している金・スズ合金からなる接着層。
    (e)前記試料の上面に形成された1対の電極層。
    (f)前記電極層の一方と前記中継電極層の一方を接続する導電性のワイヤと、前記電極層の他方と前記中継電極層の他方を接続する導電性のワイヤ。
  3. 請求項1または2に記載の試料組立体において、前記基板の材質は、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化ベリリウム及び酸化アルミニウムのいずれかであることを特徴とする試料組立体。
  4. 請求項1から3までのいずれか1項に記載の試料組立体において、前記試料組立体は、電気回路用の導体を兼ねる2本の支持棒で支持されるようになっていて、前記支持棒と前記中継電極層との間に金製のワッシャが挿入されることを特徴とする試料組立体。
  5. 請求項1から4までのいずれか1項に記載の試料組立体において、前記電極層と前記中継電極層はいずれも多層膜からなり、これらの多層膜の最上層は金層であって、前記ワイヤは金製のワイヤであることを特徴とする試料組立体。
  6. 請求項1から5までのいずれか1項に記載の試料組立体において、前記1対の電極層と前記1対の中継電極層と前記ワイヤは前記試料の中心に対して線対称に配置されていることを特徴とする試料組立体。
  7. 請求項1から6までのいずれか1項に記載の試料組立体において、前記試料は化合物半導体であることを特徴とする試料組立体。
  8. 請求項1から7までのいずれか1項に記載の試料組立体において、前記試料の平面サイズは5mm×5mm以下であることを特徴とする試料組立体。
JP2000259868A 2000-08-29 2000-08-29 熱電気測定装置の試料組立体 Expired - Lifetime JP3705736B2 (ja)

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