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JP3705637B2 - 3族窒化物半導体発光素子及びその製造方法 - Google Patents

3族窒化物半導体発光素子及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は逆方向の静電耐圧を向上させた3族窒化物半導体を用いた発光素子に関する。
【0002】
【従来技術】
従来、3族窒化物半導体発光素子として、ZnとSiとを添加したIn1-XGaXNから成る発光層をホール濃度1×1018/cm3以下のp伝導型のAlGaNからなるp層と電子濃度2×1018/cm3のGaNから成るn層とで挟んだダブルヘテロ構造のものが知られている。この発光素子は、420〜520nmの青色の発光が得られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の構成の発光素子は、静電気に対する正、逆方向の耐電圧が低いという問題がある。
【0004】
本発明は上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、静電気に対する耐絶縁破壊性を向上させることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、3族窒化物半導体から成るp層、そのp層に接続するp電極層、n層及びそのn層に接続するn電極層とから成る発光部を有した発光素子において、発光部のp電極層に電気的に接続されるn伝導型の第1層と、発光部のn電極層に電気的に接続されるp伝導型の第2層とが接合された逆耐圧補償用の補償ダイオードを設けたことを特徴とする。
この補償ダイオードの作用により、発光部に逆方向に印加される静電気による破壊を防止することができる
更に、補償ダイオードと発光部とを同一のサファイア基板に形成したものであるので、発光部の層形成工程において補償ダイオードを製造することができる。
特に、補償ダイオードの層構造と発光部の層構造と同一に形成し、発光部と補償ダイオードとの間にサファイア基板に達する絶縁分離の溝を形成したものである。よって、発光部の3族窒化物半導体の層形成により補償ダイオードを構成する層を形成されるので、製造が極めて簡単化される。
又、請求項3の発明によれば、請求項1に係る発光素子を容易に形成することができる。また、請求項2、請求項4の発明は、各々請求項1、請求項3の発明で発光部と補償ダイオードとの電気的接続をリードワイヤにより行うものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
〔第1実施例〕
図1において、本発明の発光部に該当する発光ダイオード100は、サファイア基板1を有しており、そのサファイア基板1上に500ÅのAlNのバッファ層2が形成されている。そのバッファ層2の上には、順に、膜厚約2.0μm、電子濃度2×1018/cm3のシリコンドープGaNから成る高キャリア濃度n+層3、膜厚3000Å、電子濃度1×1017/cm3のシリコンドープのGaNから成るn層4、膜厚約0.05μmのIn0.08Ga0.92Nから成る発光層5、膜厚約1.0μm、ホール濃度5×1017/cm3、濃度1×1020/cm3にマグネシウムがドープされたAl0.08Ga0.92Nから成るp層61、膜厚約0.2μm、ホール濃度7×1017/cm3、マグネシウム濃度2×1020/cm3のマグネシウムドープのGaNから成るコンタクト層62が形成されている。そして、コンタクト層62上にはその層62に接合するNiから成るp電極層7が形成されている。さらに、高キャリア濃度n+層3の表面の一部は露出しており、その露出部上にその層3に接合するNiから成るn電極層8が形成されている。
【0009】
次に、この構造の発光ダイオード100の製造方法について説明する。
上記発光ダイオード100は、有機金属化合物気相成長法(以下「M0VPE」と記す)による気相成長により製造された。
用いられたガスは、NH3とキャリアガスH2又はN2とトリメチルガリウム(Ga(CH3)3)(以下「TMG」と記す)とトリメチルアルミニウム(Al(CH3)3)(以下「TMA」と記す)とトリメチルインジウム(In(CH3)3)(以下「TMI」と記す)と、シラン(SiH4)とシクロペンタジエニルマグネシウム(Mg(C5H5)2)(以下「CP2Mg」と記す)である。
【0010】
まず、有機洗浄及び熱処理により洗浄したa面を主面とする厚さ100〜400μmの単結晶のサファイア基板1をM0VPE装置の反応室に載置されたサセプタに装着する。次に、常圧でH2を流速2Liter/分で反応室に流しながら温度1100℃でサファイア基板1を気相エッチングした。
【0011】
次に、温度を400℃まで低下させて、H2を20Liter/分、NH3を10Liter/分、TMAを1.8×10-5モル/分で供給してAlNのバッファ層2が約500Åの厚さに形成された。次に、サファイア基板1の温度を1150℃に保持し、H2を20Liter/分、NH3を10Liter/分、TMGを1.7×10-4 モル/分、H2ガスにより0.86ppmに希釈されたシランを20×10-8mol/分で30分供給して、膜厚約2.2μm、電子濃度2×1018/cm3のシリコンドープのGaNから成る高キャリア濃度n+層3を形成した。
【0012】
次に、サファイア基板1の温度を1150℃に保持し、N2又はH2を10Liter/分、NH3を10Liter/分、TMGを1.12×10-4モル/分、及び、H2ガスにより0.86ppmに希釈されたシランを1×10-8mol/分で、4分供給して、膜厚約3000Å、濃度1×1017/cm3のシリコンドープのGaNから成るn層4を形成した。
【0013】
続いて、温度を850℃に保持し、N2又はH2を20Liter/分、NH3を10Liter/分、TMGを1.53×10-4モル/分、及び、TMIを0.02×10-4モル/分で、6分間供給して0.05μmのIn0.08Ga0.92Nから成る発光層5を形成した。
【0014】
続いて、温度を1100℃に保持し、N2又はH2を20Liter/分、NH3を10Liter/分、TMGを1.12×10-4モル/分、TMAを0.47×10-4モル/分、及び、CP2Mgを2×10-4モル/分で60分間導入し、膜厚約1.0μmのマグネシウム(Mg)ドープのAl0.08Ga0.92Nから成るp層61を形成した。p層61のマグネシウムの濃度は1×1020/cm3である。この状態では、p層61は、まだ、抵抗率108Ωcm以上の絶縁体である。
【0015】
続いて、温度を1100℃に保持し、N2又はH2を20Liter/分、NH3を10Liter/分、TMGを1.12×10-4モル/分、及び、CP2Mgを4×10-4モル/分の割合で4分間導入し、膜厚約0.2μmのマグネシウム(Mg)ドープのGaNから成るコンタクト層62を形成した。コンタクト層62のマグネシウムの濃度は2×1020/cm3である。この状態では、コンタクト層62は、まだ、抵抗率108Ωcm以上の絶縁体である。
【0016】
このようにして、図2に示す断面構造のウエハが得られた。次に、このウエハを、450℃で45分間、熱処理した。この熱処理により、コンタクト層62、p層61は、それぞれ、ホール濃度7×1017/cm3,5×1017/cm3、抵抗率2Ωcm,0.8Ωcmのp伝導型半導体となった。このようにして、多層構造のウエハが得られた。
【0017】
次に、図3に示すように、コンタクト層62の上に、スパッタリングによりSiO2層9を2000Åの厚さに形成し、そのSiO2層9上にフォトレジスト10を塗布した。そして、フォトリソグラフにより、図3に示すように、コンタクト層62上において、高キャリア濃度n+層3に対するn電極層形成部位A'のフォトレジスト10を除去した。次に、図4に示すように、フォトレジスト10によって覆われていないSiO2層9をフッ化水素酸系エッチング液で除去した。
【0018】
次に、フォトレジスト10及びSiO2層9によって覆われていない部位のコンタクト層62、p層61、発光層5、n層4を、真空度0.04Torr、高周波電力0.44W/cm2、BCl3ガスを10ml/分の割合で供給しドライエッチングした後、Arでドライエッチングした。この工程で、図5に示すように、高キャリア濃度n+層3に対するn電極層取出しのための孔Aが形成された。
【0019】
次に、試料の上全面に、一様にNiを蒸着し、フォトレジストの塗布、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程を経て、図1に示すように、高キャリア濃度n+層3及びコンタクト層62に対するn電極層8,p電極層7を形成した。その後、上記の如く処理されたウエハを各チップに切断して、発光ダイオードチップを得た。
【0020】
このようにして形成された発光ダイオード100は、図6に示すように、リード201の上部の平坦部203に取り付けられ、n電極層8とリード201がワイヤ204で接続され、p電極層7とリード202がワイヤ205で接続された後、レンズ206を形成するために樹脂成形される。一方、補償ダイオード300のアノード301がリード201に接続され、補償ダイオード300のカソード302がリード202に接続されている。
【0021】
これにより、発光ダイオード100のn電極層8が補償ダイオード300のp伝導型の第2層に接続され、p電極層7がn伝導型の第1層に接続されることになる。よって、発光ダイオード100にとって逆電圧となるリード202に対してリード201が高い電圧が印加される時、補償ダイオード300が導通することになり、発光ダイオード100には逆電圧が印加されないため、絶縁破壊は起こらない。
【0022】
〔第2実施例〕
図7に示すように、補償ダイオード310を発光ダイオード100と共に樹脂成形し、レンズ206の中に組み込んでも良い。
【0023】
〔第3実施例〕
本実施例は、図8に示すように、発光ダイオード110と補償ダイオード320とを同一基板、即ち、サファイア基板1上に形成した例である。
上述したように、バッファ層2からコンタクト層62まで形成する。その後、n電極層8を形成するための層62から層4までのエッチング工程において、補償ダイオード320のn電極層322を形成するための溝410を形成する。次に、補償ダイオード320を発光ダイオード110から絶縁分離するために、コンタクト層62、p層61、発光層5、n層4、高キャリア濃度n+層3、バッファ層2をエッチングして溝400を形成してサファイア基板1を露出させる。
【0024】
次に、第1実施例と同様に、発光ダイオード110のp電極層7、n電極層8、補償ダイオード320のp電極層321、n電極層322を形成する。このようにして形成された発光素子は図9に示すようにリード201の平坦部203に取り付けられる。そして、発光ダイオード110のp電極層7はリード202にワイヤ210で電気的に接続され、補償ダイオード320のn電極層322(カソード)はワイヤ211によりリード202に電気的に接続される。同様に、発光ダイオード110のn電極層8はリード201にワイヤ212で電気的に接続され、補償ダイオード320のp電極層321はワイヤ213によりリード201に電気的に接続される。
【0025】
これにより、発光ダイオード110のp電極層7は補償ダイオード320のn伝導型である高キャリア濃度n+層3(第1層)に電気的に接続され、発光ダイオード110のn電極層8は補償ダイオード320のp伝導型であるコンタクト層62(第2層)に電気的に接続される。よって、発光ダイオード110にとって逆電圧となるリード202に対してリード201が高い電圧が印加される時、補償ダイオード320が導通することになり、発光ダイオード110には逆電圧が印加されないため、絶縁破壊は起こらない。
【0026】
〔第4実施例〕
本実施例は、図10に示すように、発光ダイオード120のコンタクト層62の上に補償ダイオード330を形成した例である。
上述したように、バッファ層2からコンタクト層62まで形成する。その後、補償ダイオード330を形成するために、n型のGaNから成る第1層333とp型のGaNから成る第2層334を形成する。
【0027】
そして、第1実施例と同様な工程により、エッチングした後、発光ダイオード120のp電極層7、n電極層8、補償ダイオード330のp電極層331、n電極層332を形成する。このようにして形成された発光素子は図10に示すようにリード201の平坦部203に取り付けられる。そして、発光ダイオード120のp電極層7は補償ダイオード330のn電極層332(カソード)にワイヤ220で電気的に接続されると共にワイヤ221によりリード202に電気的に接続される。同様に、発光ダイオード120のn電極層8はリード201にワイヤ222で電気的に接続され、補償ダイオード330のp電極層331はワイヤ223によりリード201に電気的に接続される。
【0028】
これにより、発光ダイオード120のp電極層7は補償ダイオード330のn伝導型である第1層333に電気的に接続され、発光ダイオード120のn電極層8は補償ダイオード330のp伝導型である第2層334に電気的に接続される。よって、発光ダイオード120にとって逆電圧となるリード202に対してリード201が高い電圧が印加される時、補償ダイオード330が導通することになり、発光ダイオード120には逆電圧が印加されないため、絶縁破壊は起こらない。
【0029】
又、上記の第1〜第4の実施例において、発光ダイオード100、110、120に正方向にも静電圧を印加して、その静電耐圧を測定した。500Vの静電圧を印加しても絶縁破壊は見られなかった。
これは、発光層5とn+層3との間に、電子濃度が発光層やn+層3よりも低いn層を設けたために、正方向の正電圧による各層及び各層間での電界が小さくなるためと思われる。
【0030】
上記のいずれの実施例においても、発光層5のバンドギャップが両側に存在するp層61とn層4のバンドギャップよりも小さくなるようなダブルヘテロ接合に形成されている。又、発光層5とp層61の成分比は、GaNの高キャリア濃度n+層の格子定数に一致するように選択されている。
又、上記実施例ではダブルヘテロ接合構造を用いたが、シングルヘテロ接合構造であっても良い。
さらに、上記実施例は、発光ダイオードの例を示したが、レーザダイオードであっても同様に構成可能である。
又、上記の第3、第4実施例において、補償ダイオード320,330は3族窒化物半導体を用いたが他の物質であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の具体的な第1実施例に係る発光ダイオードの構成を示した構成図。
【図2】 同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図3】 同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図4】 同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図5】 同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図6】 第1実施例に係る発光素子の機構を示した構成図。
【図7】 第2実施例に係る発光素子の機構を示した構成図。
【図8】 第3実施例に係る発光素子の層構造を示した断面図。
【図9】 第3実施例に係る発光素子の機構を示した構成図。
【図10】 第4実施例に係る発光素子の層構造及び機構を示した構成図。
【符号の説明】
100,110,120…発光ダイオード
1…サファイア基板
2…バッファ層
3…高キャリア濃度n+
4…n層
5…発光層
61…p層
62…コンタクト
7…p電極層
8…n電極層
300,310,320,330…補償ダイオード
321,331…p電極層
322,332…n電極層
201,202…リード
210,211,212,213…ワイヤ
220,221,222,223…ワイヤ

Claims (4)

  1. 3族窒化物半導体から成るp層、そのp層に接続するp電極層、n層及びそのn層に接続するn電極層とから成る発光部を有した発光素子において、
    前記発光部の前記p電極層に電気的に接続されるn伝導型の第1層と、前記発光部の前記n電極層に電気的に接続されるp伝導型の第2層とが接合された逆耐圧補償用の補償ダイオードを設け、
    前記補償ダイオードの層構造は、前記発光部の層構造と同一に同一のサファイア基板上に形成されており、前記発光部と前記補償ダイオードとの間に前記サファイア基板に達する絶縁分離の溝が形成されていることを特徴とする3族窒化物半導体発光素子。
  2. 前記発光部と前記補償ダイオードとの電気的接続はリードワイヤにより行われていることを特徴とする請求項1に記載の3族窒化物半導体発光素子。
  3. 3族窒化物半導体から成るp層、そのp層に接続するp電極層、n層及びそのn層に接続するn電極層とから成る発光部を有した発光素子の製造方法において、
    ファイア基板に、前記発光部を形成する3族窒化物半導体層を有機金属気相成長法により形成する工程と、
    形成した3族窒化物半導体層にエッチングにより前記サファイア基板に達する溝を形成して、互いに絶縁分離された発光部と補償ダイオードとを形成する工程と
    を有することを特徴とする3族窒化物半導体発光素子の製造方法。
  4. 前記発光部の前記p電極層と前記補償ダイオードのn伝導型の第1層とをリードワイヤにより電気的に接続し、前記発光部の前記n電極層と前記補償ダイオードのp伝導型の第2層とをリードワイヤにより電気的に接続する工程を更に有することを特徴とする請求項3に記載の3族窒化物半導体発光素子の製造方法。
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