JP3705558B2 - 樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性、耐薬品性、絶縁破壊電圧、エポキシ密着性及び流動性に著しく優れた樹脂組成物に関し、更に詳しくは、とりわけ自動車工業において有用な樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略すことがある)は、250℃以上の高い融点を持つ耐薬品性に優れた結晶性ポリマーであり、しかも、流動性に富むため薄肉の射出成型品に多く利用されてきている。しかし、PPSは、他の樹脂、特にエポキシ樹脂との密着性が悪い。従って、エポキシ樹脂との密着性を必要とする半導体モジュール、フライバックトランス、ソレノイド、イグニッションコイル、センサー、リレー等の用途には適していなかった。
【0003】
一方、ポリフェニレンエーテル(以下、PPEと略すことがある)は、ガラス転移温度(Tg )が210℃程度と高く、良好な耐熱性を備えた樹脂である。更に、エポキシ樹脂との密着性に優れるため、例えばフライバックトランス、イグニッションコイル等の家電、自動車の内部用途に利用されている。しかし、PPEは非結晶性樹脂であり耐薬品性に劣るため、有機溶剤に触れるような外部に露出する用途には適していない。更に、このような外部用途は近年、軽量化の傾向にある。従って、更なる薄肉化を達成するために、樹脂は高い流動性を要求されるが、PPEは一般に流動性が悪く、薄肉化が困難なのが現状である。かかるPPEの流動性を改善するために、ポリスチレン、炭化水素系流動性改質剤等を配合することが一般に行われている。しかし、これらの方法は、PPEの高いガラス転移温度を低下させてしまうという欠点を有していた。
【0004】
近年、とりわけ自動車においては軽量化及びコンピューター化が進み、金属材料に代わり、種々のプラスチック材料が使用されるようになってきている。例えば、イグニッションコイルシステムにおいても、従来のメカニカルなディストリビューター・イグニッションシステムからダイレクトイグニッションシステム (小型のイグニッションコイルをエンジンプラグに直接取り付け点火のタイミングをコンピューターで最適に制御する方法)に、今後移っていくと言われている。従って、該システムに適したプラスチック材料の開発が望まれている。
【0005】
該ダイレクトイグニッションシステムに要求されるプラスチック材料の特性は:1:イグニッションコイル自体がエンジンプラグに直接取り付けられエンジンからの高熱に直接さらされるために、高い耐熱性を必要とすること、
2:ガソリン、エンジンオイル等の有機溶剤と接触する可能性が有るために、高い耐薬品性を必要とすること、
3:イグニッションコイル成形品の内部には高電圧、低電圧がかかる二つのコイルが入る。従って、その成形品は高電圧に十分耐えられるだけの高い絶縁破壊電圧を必要とすること、
4:コイル内をエポキシ樹脂で封止するため、エポキシ樹脂との密着性が不十分では、使用中にエポキシ樹脂との境界面に空隙が生じ、リーク、絶縁破壊を引き起し自動車走行に障害をきたすことから高いエポキシ密着性を必要とすること、
5:イグニッションコイル成形品は非常に小型化されており、かつ内部に高圧コイル、低圧コイル等の複雑な機構を必要とするため、プラスチック成形品の肉厚を約0.5mmという薄さにする必要がある。従って、薄肉な成形品を作るために、使用する樹脂はきわめて高い流動性を必要とすること
である。
【0006】
上記の理由からダイレクトイグニッションシステムに使用可能な樹脂を開発することは極めて困難なことであり、現在、このような特性を具備する樹脂は知られていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐熱性、耐薬品性、絶縁破壊電圧、エポキシ密着性及び流動性のいずれにも著しく優れたダイレクトイグニッションシステム用樹脂組成物を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、種々の樹脂について検討を試みた。そして、上記の理由で不適当であるとされていたPPS及びPPEの二種の樹脂に着目し、更に検討を進めた。その結果、PPSとPEとを下記のように配合すると、驚くべきことに、両樹脂の持つ利点のみを有効に引出すことができると共に、その欠点をなくすことができ、耐熱性、耐薬品性、絶縁破壊電圧、エポキシ密着性及び流動性のいずれにも著しく優れた樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、
(1)(A) 結晶性樹脂 90 〜 40 重量部及び
(B) 非結晶性樹脂 10 〜 60 重量部
を含む樹脂組成物であって、(A)が連続相を形成し、該連続相中に(B)が分散し、かつ該(B)の粒子径が5μm以下であるダイレクトイグニッションシステム用樹脂組成物である。
【0010】
好ましい態様として、
(2)(A) 結晶性樹脂がポリフェニレンスルフィドであり、かつ (B) 非結晶性樹脂がポリフェニレンエーテルである上記 (1) 記載の樹脂組成物、
(3)(A) と (B) の合計 100 重量部に対して、 (C) 無機充填剤を 0 〜 70 重量部含む上記( 1 )又は( 2 )記載の樹脂組成物、
(4)(A) と (B) の合計 100 重量部に対して、 (D) 熱可塑性エラストマーを 0 〜 20 重量部含む上記 (1) 〜 (3) のいずれか一つに記載の樹脂組成物、
(5)(A) と (B) の合計 100 重量部に対して、 (E) 相溶化剤を 0.01 〜 10 重量部含む上記 (1) 〜 (4) のいずれか一つに記載の樹脂組成物
を挙げることができる。
【0011】
また、好ましい態様として、
(6)
(i) 熱変形温度 (HDT)150 ℃以上 (JIS K7202 に準拠して 4.6kg 荷重にて測定した値 ) 、
(ii)1.0 %の強制歪みを与えた試験片を夫々ガソリン及びエンジンオイルに常温下に浸漬し、浸漬後クラックが入り試験片が割れるまでの時間が 72 時間以上、
(iii) 絶縁破壊電圧 20kv 以上 (JIS C2110 の短長間破壊試験法に準拠して測定した値 ) 、
(iv) エポキシ密着強度 13.0kg ・ cm 2 以上 ( 図 1 に示した試験片を用い、図 1 に示すように a 面及び b 面にエポキシ樹脂接着剤を塗布して接着し ( 接着面積 3.75cm 2 ) 、次いで、引張試験機を用いてクロスヘッドスピード 10mm/ 分で引張ることにより該接着面が剥離した時の荷重を接着面積で割った値 ) 、及び
( v ) スパイラルフロー 50mm 以上 ( シリンダー温度 280 ℃、金型温度 120 ℃及び 0.5mm 厚で測定した値 )
である上記 (1) 〜 (5) のいずれか一つに記載の樹脂組成物を挙げることができる。
更に、好ましい態様として、
(7)1.0 %の強制歪みを与えた試験片を夫々エンジンオイル及びエチレングリコールに 80 ℃の温度下に浸漬し、浸漬後クラックが入り試験片が割れるまでの時間が 72 時間以上であることを特徴とする上記 (6) 記載の樹脂組成物、
(8) 曲げ弾性率が 30 × 10 3 kg/cm 2 以上、曲げ強度が 1200kg/cm 2 以上、及び曲げ S-S エネルギーが 10kgfcm 以上であることを特徴とする上記 (6) 又は (7) 記載の樹脂組成物
を挙げることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の樹脂組成物は、下記の特性を有する。即ち、
(1)熱変形温度[(HDT)JIS K7202に準拠して4.6kg荷重にて測定した値]が150℃以上、好ましくは150〜300℃であり、
(2)1.0%の強制歪みを与えた試験片を夫々ガソリン及びエンジンオイルに常温下に浸漬し、浸漬後クラックが入り試験片が割れるまでの時間が72時間以上、好ましくは72〜500時間であり、
(3)絶縁破壊電圧(JIS C2110の短長間破壊試験法に準拠して測定した値)が20kv以上、好ましくは20〜60kvであり、
(4)エポキシ密着強度(図1に示した試験片を用い、図1に示すようにa面及びb面にエポキシ樹脂接着剤を塗布して接着し(接着面積3.75cm2 )、次いで、引張試験機を用いてクロスヘッドスピード10mm/分で引張ることにより該接着面が剥離した時の荷重を接着面積で割った値)が13.0kg/cm2 以上、好ましくは13.0〜110kgであり、及び
(5)スパイラルフロー(シリンダー温度280℃、金型温度120℃及び0.5mm厚で測定した値)が50mm以上、好ましくは50〜400mmである。
【0013】
更に、本発明の樹脂組成物は、1.0%の強制歪みを与えた試験片を夫々エンジンオイル及びエチレングリコールに80℃の温度下に浸漬し、浸漬後クラックが入り試験片が割れるまでの時間が72時間以上、好ましくは72〜500時間であることが好ましい。
【0014】
また更に、本発明の樹脂組成物は、曲げ弾性率が30×103 kg/cm2 以上、好ましくは30×103 〜150×103 kg/cm2 であり、曲げ強度が1200kg/cm2 以上、好ましくは1200〜4000kg/cm2 であり、及び曲げS‐Sエネルギーが10kgfcm以上、好ましくは10〜80kgfcmであることが好ましい。ここで、曲げ弾性率、曲げ強度及び曲げS‐Sエネルギーは、いずれもJIS K7203に準拠して測定した値である。ここで、曲げS‐Sエネルギーは、破断までのS‐S曲線より面積を計算し求めた値である。
【0015】
このように優れた特性を有する故に、本発明の樹脂組成物は、高耐熱性、耐薬品性を要し、かつエポキシ樹脂との優れた密着性を要求されると共に、薄肉な成形品であることが要求されるダイレクトイグニッシションシステムとしての用途に著しく適している。更には、エポキシ樹脂で封止又は接着が必要な用途、例えば通常タイプのイグニッションコイル、リレーボックス、フライバックトランス、ソレノイド、半導体モジュール、センサー等への使用にも適している。
【0016】
また、本発明は、
(A)結晶性樹脂 90〜40重量部及び
(B)非結晶性樹脂 10〜60重量部
を含む樹脂組成物であって、(A)が連続相を形成し、該連続相中に(B)が分散し、かつ該(B)の粒子径が5μm以下であるダイレクトイグニッションシステム用樹脂組成物である。
【0017】
該構成を備える本発明の樹脂組成物は、「発明の実施の形態」の冒頭で述べた上記各種の特性を有する樹脂組成物である。
【0018】
該樹脂組成物において、成分(A)結晶性樹脂と成分(B)非結晶性樹脂との配合比は、(A)90〜40重量部に対して(B)10〜60重量部、好ましくは(A)90〜45重量部に対して(B)10重量部以上55重量部、特に好ましくは(A)90〜50重量部に対して(B)10〜50重量部である。成分 (A)が上記範囲を超え、かつ成分(B)が上記範囲未満では、エポキシ樹脂との密着性に劣る。成分(A)が上記範囲未満で、かつ成分(B)が上記範囲を超えては、耐薬品性及び成形性が悪い。
【0019】
本発明の樹脂組成物においては、成分(A)結晶性樹脂は連続相を形成し、そして成分(B)非結晶性樹脂は成分(A)中に分散相として存在する。ここで、分散相として存在する成分(B)非結晶性樹脂の粒子径は5μm以下、好ましくは5〜0.3μmである。成分(A)及び成分(B)が、上記のように存在することによって、本発明の優れた効果を達成し得るのである。
【0020】
本発明において用いられる成分(A)結晶性樹脂としては、ポリフェニレンスルフィド、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、リキッドクリスタルポリマー(LCP)等が挙げられる。好ましくはポリフェニレンスルフィドが用いられる。
【0021】
成分(A)として用いられるポリフェニレンスルフィドとしては、一般式
【0022】
【化1】
で示される構成単位を70モル%以上含むものが優れた特性の組成物をもたらすので好ましい。PPSの重合法としては、p‐ジクロルベンゼンを硫黄と炭酸ソーダの存在下で重合させる方法、極性溶媒中で硫化ナトリウムあるいは水硫化ナトリウムと水酸化ナトリウム又は硫化水素と水酸化ナトリウムの存在下で重合させる方法、p‐クロルチオフェノールの自己縮合等が挙げられるが、N‐メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒やスルホラン等のスルホン系溶媒中で硫化ナトリウムとp‐ジクロルベンゼンを反応させる方法が適当である。この際に重合度を調節するためにカルボン酸やスルホン酸のアルカリ金属塩を添加したり、水酸化アルカリを添加することは好ましい方法である。共重合成分として30モル%未満であれば、下記式で示されるメタ結合(1) 、オルト結合(2) 、エーテル結合(3) 、スルホン結合(4) 、ビフェニル結合(5) 、置換フェニルスルフィド結合(6) 、三官能フェニルスルフィド結合(7) 等
【0023】
【化2】
(ここで、Rはアルキル、ニトロ、フェニル、アルコキシ、カルボン酸又はカルボン酸の金属塩基を示す)
を含有していてもポリマーの結晶性に大きく影響しない範囲で構わないが、好ましくは共重合成分は10モル%以下がよい。特に、三官能性以上のフェニル、ビフェニル、ナフチルスルフィド結合等を共重合に選ぶ場合は3モル%以下、更に好ましくは1モル%以下がよい。
【0024】
かかるPPSは一般的な製造法、例えば(1)ハロゲン置換芳香族化合物と硫化アルカリとの反応(米国特許第2513188号明細書、特公昭44‐27671号公報及び特公昭45‐3368号公報参照)、(2)チオフェノール類のアルカリ触媒又は銅塩等の共存下における縮合反応(米国特許第3274165号明細書、英国特許第1160660号公報参照)、(3)芳香族化合物と塩化硫黄とのルイス酸触媒共存下における縮合反応(特公昭46‐27255号公報、ベルギー特許第29437号公報参照)等により合成されるものであり、目的に応じて任意に選択し得る。
【0025】
PPSは現在フィリプス ペトロリアム(株)、及び東ソー・サスティール (株)、(株)トープレン社及び呉羽化学(株)から市場に供せられている。架橋密度及び粘度に応じて各種のグレードがあり、本発明においては、直鎖型、分岐型、架橋型、半架橋型等のいずれをも用いることができる。
【0026】
本発明において用いられる成分(B)非結晶性樹脂としては、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ABS樹脂等が挙げられる。好ましくはポリフェニレンエーテルが用いられる。
【0027】
成分(B)として用いられるポリフェニレンエーテルとしては公知のものが使用できる。PPEとは、例えば一般式:
【0028】
【化3】
(式中Q1 、Q2 、Q3 及びQ4 は夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子とフェニル環との間に少くとも2個の炭素原子を有するハロアルキル基またはハロアルコキシ基で第3級α‐炭素を含まないものから選ばれた一価置換基を表し、qは重合度を表わす整数である)
で示される重合体の総称であって、上記一般式で示される重合体の一種単独であっても、二種以上が組合わされた共重合体であってもよい。
【0029】
PPEの製造法は特に制限はなく、例えば、米国特許第3,306,874 号明細書並びに米国特許第3,257,357 号明細書及び第3,257,358 号明細書に記載のごとき手順に従ってフェノール類の反応によって製造することができる。これらフェノール類には、2,6-ジメチルフェノール、2,6-ジエチルフェノール、2,6-ジブチルフェノール、2,6-ジラウリルフェノール、2,6-ジプロピルフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、2-メチル-6- エチルフェノール、2-メチル-6- シクロヘキシルフェノール、2-メチル-6- トリルフェノール、2-メチル-6- メトキシフェノール、2-メチル-6- ブチルフェノール、2,6-ジメトキシフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,3,5,6-テトラメチルフェノール及び2,6-ジエトキシフェノールが包含されるが、これらに限定されるものではない。これらの各々は単独に反応させて対応するホモポリマーとしてもよいし、別のフェノールと反応させて上記式に包含される異なる単位を有する対応するコポリマーとしてもよい。
【0030】
好ましい具体例ではQ1 及びQ2 が炭素原子数1〜4のアルキル基であり、Q3 及びQ4 が水素原子若しくは炭素原子数1〜4のアルキル基である。例えば、ポリ(2,6‐ジメチル‐1,4 ‐フェニレン)エ―テル、ポリ(2,6‐ジエチル‐1,4 ‐フェニレン)エ―テル、ポリ(2‐メチル‐6‐エチル‐1,4 ‐フェニレン)エ―テル、ポリ(2‐メチル‐6‐プロピル‐1,4 ‐フェニレン)エ―テル、ポリ(2,6‐ジプロピル‐1,4 ‐フェニレン)エ―テル、ポリ(2‐エチル‐6‐プロピル‐1,4 ‐フェニレン)エ―テル等が挙げられる。またPPE共重合体としては、上記ポリフェニレンエ―テル繰返し単位中にアルキル三置換フェノ―ル、例えば 2,3,6‐トリメチルフェノ―ルを一部含有する共重合体を挙げることができる。また、これらのPPEに、スチレン系化合物がグラフトした共重合体であってもよい。スチレン系化合物グラフト化ポリフェニレンエ―テルとしては上記PPEにスチレン系化合物として、例えばスチレン、α‐メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレンなどをグラフト重合して得られる共重合体である。
【0031】
本発明の樹脂組成物には、任意成分として成分(C)無機充填剤を配合することができる。成分(C)の配合量は、成分(A)結晶性樹脂及び成分(B)非結晶性樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは70重量部以下、特に好ましくは50重量部以下である。(C)が、上記上限を超えては、樹脂組成物の成形性が悪化する。また、曲げ弾性率、曲げ強度等の機械的強度を高めるためには、10重量部以上配合することが好ましい。成分(C)無機充填剤としては、慣用のものを使用することができる。例えば粉末状/リン片状の充填剤、繊維状充填剤等が使用できる。粉末状/リン片状の充填剤としては、例えばアルミナ、タルク、マイカ、カオリン、クレー、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、窒化ケイ素、ガラス、ハイドロタルサイト、酸化ジルコニウム、ガラスビーズ、カーボンブラック等が挙げられる。また、繊維状充填剤としては、例えばガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、シリカ繊維、シリカ/アルミナ繊維、チタン酸カリ繊維、ポリアラミド繊維等が挙げられる。これらを1種単独でまたは2種以上組合せて使用できる。また、無機充填剤は、その表面が、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤で処理してあってもよい。
【0032】
本発明の樹脂組成物には、曲げ弾性率、曲げ強度等の機械的強度を更に向上させるために任意的成分として(D)熱可塑性エラストマーを配合することができる。成分(D)として、好ましくは水素化スチレン‐エチレン‐ブタジエン‐スチレン共重合体(SEBS)、水素化スチレン‐エチレン‐プロピレン‐スチレン共重合体(SEPS)、スチレン‐エチレン‐ブタジエン共重合体(SEB)、スチレン‐エチレン‐プロピレン共重合体(SEP)、水素化スチレン‐ブタジエン‐スチレン共重合体(SBS)等のアモルファス成分のガラス転移温度Tg が0℃以下のゴム状重合体を挙げることができる。成分(D)の配合量は、成分(A)結晶性樹脂及び成分(B)非結晶性樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは20重量部以下、特に好ましくは15重量部以下である。上記上限を超えては、樹脂組成物のモルホロジー、成形性が悪化する。また、曲げ弾性率、曲げ強度等の機械的強度を高めるためには、4重量部以上配合することが好ましい。 成分(A)と成分(B)との相溶化を促進するために、本発明の樹脂組成物に更に、両者の相溶化剤(E)を添加することが好ましい。該相溶化剤は、例えば、PPS及びPPEについての公知の相溶化剤がいずれも使用できる。そのような相溶化剤の好ましい例としては、
(a) クエン酸、リンゴ酸、アガリシン酸及びこれらの誘導体
(b) 分子内に(イ)炭素‐炭素二重結合又は三重結合及び(ロ)カルボン酸基、酸無水物基、酸アミド基、イミド基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、アミノ基又は水酸基を有する化合物、及び
(c) カルボキシル基又は酸無水物基及び酸ハライド基を持つ化合物
より選ばれた少くとも一つの化合物が挙げられる。
【0033】
上記の (a) クエン酸、リンゴ酸、アガリシン酸及びこれらの誘導体は、特表昭61‐502195号公報に記載されており、該公報に一般式で示される化合物は本発明に用い得るが、特に上記のものが好ましい。誘導体としては、エステル化合物、アミド化合物、無水物、水加物及び塩等が挙げられる。酸エステル化合物として、クエン酸のアセチルエステル、モノ又はジステアリルエステル等が挙げられる。酸アミド化合物として、クエン酸の N,N′‐ジエチルアミド、 N,N′‐ジ・プロピルアミド、N‐フェニルアミド、N‐ドデシルアミド、 N,N′‐ジドデシルアミド、また、リンゴ酸のN‐ドデシルアミド等が挙げられる。塩としては、リンゴ酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム、クエン酸カリウム等が挙げられる。
【0034】
上記(b) の化合物は、特開昭56‐49753 号公報に記載されており、具体例としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、マレイミド、マレイン酸ヒドラジド、無水マレイン酸とジアミンとの反応物例えば次式:
【0035】
【化4】
(但し、Rは脂肪族、芳香族基を示す。)等で示される構造を有するもの、無水メチルナジック酸、無水ジクロロマレイン酸、マレイン酸アミド、大豆油、キリ油、ヒマシ油、アマニ油、麻実油、綿実油、ゴマ油、菜種油、落花生油、椿油、オリーブ油、ヤシ油、イワシ油等の天然油脂類、エポキシ化大豆油等のエポキシ化天然油脂類、アクリル酸、ブテン酸、クロトン酸、ビニル酢酸、メタクリル酸、ペンテン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、2‐ペンテン酸、3‐ペンテン酸、α‐エチルアクリル酸、β‐メチルクロトン酸、4‐ペンテン酸、2‐ヘキセン酸、2‐メチル‐2‐ペンテン酸、3‐メチル‐2‐ペンテン酸、α‐エチルクロトン酸、 2,2‐ジメチル‐3‐ブテン酸、2‐ヘプテン酸、2‐オクテン酸、4‐デセン酸、9‐ウンデセン酸、10‐ウンデセン酸、4‐ドデセン酸、5‐ドデセン酸、4‐テトラデセン酸、9‐テトラデセン酸、9‐ヘキサデセン酸、2‐オクタデセン酸、9‐オクタデセン酸、アイコセン酸、ドコセン酸、エルカ酸、テトラコセン酸、マイコリペン酸、 2,4‐ペンタジエン酸、2,4 ‐ヘキサジエン酸、ジアリル酢酸、ゲラニウム酸、 2,4‐デカジエン酸、 2,4‐ドデカジエン酸、9,12‐ヘキサデカジエン酸、9,12‐オクタデカジエン酸、ヘキサデカトリエン酸、リノール酸、リノレン酸、オクタデカトリエン酸、アイコサジエン酸、アイコサトリエン酸、アイコサテトラエン酸、リシノール酸、エレオステアリン酸、オレイン酸、アイコサペンタエン酸、エルシン酸、ドコサジエン酸、ドコサトリエン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、テトラコセン酸、ヘキサコセン酸、ヘキサコジエン酸、オクタコセン酸、トラアコンテン酸等の不飽和カルボン酸、あるいはこれら不飽和カルボン酸のエステル、酸アミド、無水物、あるいはアリルアルコール、クロチルアルコール、メチルビニルカルビノール、アリルカルビノール、メチルプロペニルカルビノール、4‐ペンテン‐1‐オール、10‐ウンデセン‐1‐オール、プロパルギルアルコール、 1,4‐ペンタジエン‐3‐オール、1,4 ‐ヘキサジエン‐3‐オール、 3,5‐ヘキサジエン‐2‐オール、2,4-ヘキサジエン‐1‐オール、一般式Cn H2n-5OH,Cn H2n-7OH、Cn H2n-9OH(但し、nは正の整数)で示されるアルコール、3‐ブテン‐1,2 ‐ジオール、2,5 ‐ジメチル‐3‐ヘキセン‐2,5 ‐ジオール、1,5 ‐ヘキサジエン‐3,4 ‐ジオール、 2,6‐オクタジエン‐4,5 ‐ジオール等の不飽和アルコール、あるいはこのような不飽和アルコールのOH基が、−NH2 基に置き換った不飽和アミンあるいはブタジエン、イソプレン等の低重合体(例えば平均分子量が500 から10000 ぐらいのもの)あるいは高分子重合体(例えば平均分子量が10000 以上のもの)に無水マレイン酸、フェノール類を付加したもの、あるいはアミノ基、カルボン酸基、水酸基、エポキシ基等を導入したものなどが挙げられる。化合物(b)には、(イ)群の官能基を2個以上、(ロ)群の官能基を2個以上 (同種又は異種)含んだ化合物も含まれる。
【0036】
化合物(c) としては特に無水トリメリット酸クロライドが挙げられ、特表昭62‐50056 号公報に記載されている。
【0037】
また、成分(F) の相溶化剤の別の例としては、エポキシ基及び/又はオキサゾリニル基を含有する不飽和単量体及び/又は重合体が挙げられる。
【0038】
エポキシ基若しくはオキサゾリニル基を有する不飽和単量体としては、次のようなものが挙げられる。
【0039】
まず、好ましいエポキシ基含有不飽和単量体としては、グリシジルメタクリレート(以下、GMAと言う)、グリシジルアクリレート、ビニルグリシジルエーテル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、グリシジルイタコネートが挙げられる。
【0040】
次に、好ましいオキサゾリニル基含有不飽和単量体としては、一般式:
【0041】
【化5】
で表わされ、Zは重合可能な二重結合を含有するものが挙げられる。好ましい置換基Zは次のものである。
【0042】
【化6】
これらの式中Rは水素原子又は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基又はアルコキシ基、例えばメチル基、i−及びn−プロピル基又はブチル基である。
【0043】
特に好ましい化合物は、一般式:
【0044】
【化7】
で表わされるビニルオキサゾリンであって、Rは前記の意味を有し、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0045】
エポキシ基又はオキサゾリニル基を有する重合体としては、上記不飽和単量体のホモ重合体、二以上の上記不飽和単量体から成る共重合体、一以上の上記不飽和単量体と他の不飽和単量体とから成る共重合体が挙げられる。他の不飽和単量体としては、
スチレン(以下、St と略すことがある)等の芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体、酢酸ビニル、アクリル酸(塩);メタクリル酸(塩)、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、(無水)マレイン酸、マレイン酸エステル、2‐ノルボルネン‐5,6‐ジカルボン酸(無水物)等の不飽和カルボン酸又はその誘導体成分、エチレン、プロピレン、1‐ブテン、1‐ペンテン、4‐メチル‐1‐ペンテン、1‐ヘキセン、1‐オクテン、1‐デセン、1‐テトラデセン、1‐ヘキサデセン、1‐オクタデセン、1‐エイコセン等のα‐オレフィン、ブタジエン、イソプレン、1,4‐ヘキサジエン、5‐エチリデン‐2‐ノルボルネン、5‐ビニル‐2‐ノルボルネン等のジエン成分が挙げられる。
【0046】
共重合体の例として例えばGMA/St 、GMA/St /MMA(メチルメタアクリレート)/MA、GMA/St /アクリロニトリル、GMA/MMA/アクリロニトリル、GMA/MMA、GMA/MMA/St 、ビニルオキサゾリン/St 、ビニルオキサゾリン/MMA、エチレン/GMA、エチレン/酢酸ビニル/GMA等が挙げられる。なお上記以外の共重合体も本発明に用い得ることはもちろんである。
【0047】
また、成分(E)として、スチレンマレイン酸共重合体を使用することもできる。
【0048】
上記したような相溶化剤は、単独でもまた2種以上組合わせて用いても良い。
【0049】
成分(E)相溶化剤の配合量は、成分(A)結晶性樹脂及び成分(B)非結晶性樹脂の合計100重量部に対して、上限が好ましくは10重量部、更に好ましくは5重量部、特に好ましくは2重量部であり、下限が好ましくは0.01重量部、更に好ましくは0.05重量部、特に好ましくは0.1重量部である。上記上限を超えては、耐熱性が低下し好ましくなく、上記下限未満では、相溶化効果が不十分となり好ましくない。
【0050】
更に、ポリスチレン(PS)、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、ABS、ポリエステル、ポリカーボネート等の樹脂類も目的に応じて適宜含めることができる。
【0051】
また、本発明の樹脂組成物においては、本発明の効果を損なわない範囲内で、樹脂の混合時、成形時に上記の成分以外に当業者に公知の各種の添加剤、例えば顔料や染料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、塑剤、可塑剤、帯電防止剤及び難燃剤などを添加することができる。
【0052】
本発明の樹脂組成物を製造するに際しては、従来から公知の方法で各成分を混合することができる。例えば、各成分をペレット、粉末、細片状態などで、ターンブルミキサーやヘンシェルミキサーで代表される高速ミキサーで分散混合した後、一軸又は多軸の押出機、バンバリーミキサー、ロール等で溶融混練する方法が適宜選択される。
【0053】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0054】
【実施例】
以下の実施例、比較例においては下記の化合物を使用した。
<成分(A)>
・結晶性樹脂としてポリフェニレンスルフィド(サスティールB070、商標、トーソー株式会社製)を使用した。
<成分(B)>
・非結晶性樹脂としてポリフェニレンエーテル(ジェムポリマー株式会社製)を使用した。該樹脂の極限粘度は0.31g/dlである。
<成分(C)>
・ガラス繊維:CS‐3PE‐454S、商標、旭ファイバー株式会社製
・タルク:LMS‐100、商標、土屋カオリン株式会社製
・マイカ:200‐HK、商標、クラレ株式会社製
<成分(D)>
・SEBS:KL8006、商標、クラレ株式会社製
・SEPS:KL2006、商標、クラレ株式会社製
<成分(E)>
・相溶化剤(a):Bond Fast‐E、商標、住友化学株式会社製、エポキシ変性ポリオレフィン
・相溶化剤(b):RPS‐1005、商標、日本触媒化学株式会社製、オキサゾリン変性ポリスチレン
<その他>
・ポリスチレン(PS):CR3500、商標、大日本インキ株式会社製
・ハイインパクトポリスチレン(HIPS):870ST、商標、三井東圧株式会社製
【0055】
【実施例1〜5、比較例1〜3】
表1に示す量(重量部)の各成分を配合してブレンダーで混合し、53mmφ二軸押出機(TEM‐50、商標、東芝機械株式会社製)を使用して、バレル設定温度300℃、回転数200rpmで混練押出してペレットを作成した。該ペレットをPlastar Ti‐80G2(商標、東洋機械金属株式会社製)に供給し、シリンダー温度280℃、金型温度120℃で125×12.5×6mm(耐熱性評価に使用)、6.4×12.5×3mm(耐薬品性に使用)及び図1に示したような試験片(エポキシ密着強度に使用)の各試験片を成形した。
【0056】
表1に記した諸特性は次の試験方法により評価したものである。
<耐熱性(HDT)>
上記の125×12.5×6mmの試験片を使用して、JIS K7202に準拠して4.6kg荷重にてHDT(熱変形温度)を測定して評価した。
<耐薬品性(常温)>
上記の6.4×12.5×3mmの試験片をアルミニウム製の治具に強制的に取付けて固定し、該試験片に1.0%の強制歪みを与えた。このように固定した試験片を夫々ガソリン(レギュラーガソリン、日本石油株式会社製)及びエンジンオイル(日産純正モーターオイルSG‐Xtra Save X、商標、日産自動車株式会社製)に常温下に浸漬し、浸漬後クラックが入り試験片が割れるまでの時間を測定して評価した。
【0057】
表1に示した記号は、以下の内容を示す。
○:浸漬72時間経過後にガソリン及びエンジンオイルのいずれにおいても割れが生じなかったもの
×:浸漬72時間以内にガソリン又はエンジンオイルのいずれかにおいて割れが生じたもの
<耐薬品性(80℃)>
耐薬品性(常温)と同じく固定した試験片を夫々エンジンオイル(上記と同じもの)及びエチレングリコールに浸漬し、80℃のオーブンに入れて該温度に保持し、浸漬後クラックが入り試験片が割れるまでの時間を測定して評価した。
【0058】
表1に示した記号は、以下の内容を示す。
○:浸漬72時間経過後にエンジンオイル及びエチレングリコールのいずれにおいても割れが生じなかったもの
×:浸漬72時間以内にエンジンオイル又はエチレングリコールのいずれかにおいて割れが生じたもの
<エポキシ密着性>
図1に示した試験片を用い、図1に示すようにa面及びb面にエポキシ樹脂接着剤(主剤:KE 5523‐7A、商標、硬化剤:KE 5523‐7B、商標、いずれも日立化成工業株式会社製;主剤/硬化剤配合比(重量)=100/26)を塗布し、130℃で2時間硬化して接着し(接着面積3.75cm2 )、次いで、引張試験機(UCT‐1T TENSILON、商標、Orientic社製)を用いてクロスヘッドスピード10mm/分で引張り、該接着面が剥離した時の荷重を測定した。また、接着面が剥離せず、母材が破壊したものについては、その時の値を測定した。エポキシ密着強度は該荷重を接着面積で割った値として表1に示した。また、剥離の状態を観察した。
【0059】
表1に示した記号は、以下の内容を示す。
○:密着が良好でエポキシ樹脂接着部分から剥離せず、母材が破壊したもの
×:13.0kg/cm2 未満のエポキシ密着強度でエポキシ樹脂接着剤部分から剥離したもの
<成形性>
上記のペレットをPlastar Ti‐80G2(商標、東洋機械金属株式会社製)に供給し、シリンダー温度280℃、金型温度120℃で0.5mm厚のスパイラルフローを測定した。
【0060】
表1に示した記号は、以下の内容を示す。
○:流れが50mm以上のもの
×:流れが50mm未満のもの
更に、成形中の層状剥離現象を目視により観察した。
【0061】
表1に示した記号は、以下の内容を示す。
○:層状剥離がなかったもの
×:層状剥離が生じたもの
<絶縁破壊電圧>
JIS C2110の短長間破壊試験法に準拠して測定した。
<総合評価>
表1に示した記号は、以下の内容を示す。
◎:非常に良好
○:良好
×:不良
これらの評価結果を表1に示した。
【0062】
【表1】
実施例1〜5は、本発明の範囲内で(A)PPS及び(B)PPEの配合量を変えたものである。PPEの配合量を増すにつれて、耐熱性、エポキシ密着強度、絶縁破壊電圧は増加し、成形性はいずれも良好であった。実施例5においては、80℃における耐薬品性の低下及び層状剥離が見られたが、本発明の効果を損なうものではなかった。いずれもダイレクトイグニッションシステム用として適していることが分かった。
【0063】
一方、比較例1は、PPSのみのものである。耐熱性、エポキシ密着強度及び成形性はいずれも著しく悪かった。比較例2及び3は、PPSが本発明の範囲未満のものである。いずれも耐薬品性及び成形性が劣っていた。耐薬品性の低下は、該配合比率ではPPSがもはや連続相を形成することができず、耐薬品性に劣るPPEがガソリン等に侵されたためと推定される。
【0064】
更に、実施例1〜3及び比較例1については、電子顕微鏡による観察を行った。上記のエポキシ密着性の評価を行った各試験片をマイクロトーム(Supper NOVA、商標、LBK社製)で薄膜化し、該薄膜を酸化ルテニュームで染色した後、透過型電子顕微鏡(JEM1200EX‐2、商標、JEOL社製)にてエポキシ密着面を観察した。その結果を図2〜5に示した。実施例1〜3の樹脂組成物(図2〜4)においては、PPSが連続相、PPEが分散相を形成し、かつ分散相たるPPEの粒子径はいずれも5μm以下であることが分かった。また、成形性も良好であり、層状剥離は見られなかった。一方、比較例1の樹脂
(図5)では、層状剥離が見られた。
【0065】
【実施例6〜15】
表2に示す量(重量部)の各成分を用いて、実施例1と同一にして各特性を評価した。曲げ弾性率、曲げ強度、及び曲げS‐Sエネルギーについては、125×12.5×6mmの試験片を使用して、東洋Baldwin社製TENSILON(商標、クロスヘッドスピード10mm/分)にて測定(JIS K7203に準拠)した結果である。
【0066】
これらの評価結果を表3に示した。なお、表3中の各記号は、表1中に示したものと同一内容である。
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
実施例6は、(A)PPS及び(B)PPEからなる本発明の樹脂組成物であり、実施例7及び8は、夫々実施例6と同一配合量のPPS及びPPEに加えて、ガラス繊維、更にタルクを配合したものである。実施例7及び8は、著しく高い曲げ弾性率、曲げ強度及び曲げS‐Sエネルギーを有していた。更に、耐熱性及びエポキシ密着強度も著しく増加した。実施例9〜15は、他の任意成分を適宜配合した本発明の樹脂組成物に関するものである。各特性値はいずれも著しく良好であった。これらの実施例から、任意成分(C)、(D)、(E)等を更に配合すると、耐熱性、耐薬品性、絶縁破壊電圧、エポキシ密着強度及び流動性のいずれの特性をも良好に保持したまま、更に成形品の機械的強度を高め得ることが分かった。
【0069】
【発明の効果】
本発明は、耐熱性、耐薬品性、絶縁破壊電圧、エポキシ密着性及び流動性のいずれにも著しく優れた樹脂組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】エポキシ密着性評価用試験片の形状、及びエポキシ樹脂にて接着した時の試験片の状態(破断前の状態)を示す。
【図2】実施例1においてエポキシ密着性の評価を行った試験片の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(約5,000倍)である。
【図3】実施例2においてエポキシ密着性の評価を行った試験片の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(約5,000倍)である。
【図4】実施例3においてエポキシ密着性の評価を行った試験片の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(約5,000倍)である。
【図5】比較例1においてエポキシ密着性の評価を行った試験片の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(約5,000倍)である。
Claims (3)
- (A)結晶性樹脂 90〜40重量部及び
(B)非結晶性樹脂 10〜60重量部
を含む樹脂組成物であって、(A)が連続相を形成し、該連続相中に(B)が分散し、かつ該(B)の粒子径が5μm以下であるダイレクトイグニッションシステム用樹脂組成物。 - (A)結晶性樹脂がポリフェニレンスルフィドであり、かつ(B)非結晶性樹脂がポリフェニレンエーテルである請求項1記載の樹脂組成物。
- (1)熱変形温度(HDT)150℃以上(JIS K7202に準拠して4.6kg荷重にて測定した値)、
(2)1.0%の強制歪みを与えた試験片を夫々ガソリン及びエンジンオイルに常温下に浸漬し、浸漬後クラックが入り試験片が割れるまでの時間が72時間以上、
(3)絶縁破壊電圧20kv以上(JIS C2110の短長間破壊試験法に準拠して測定した値)、
(4)エポキシ密着強度13.0kg/cm2以上、及び
(5)スパイラルフロー50mm以上(シリンダー温度280℃、金型温度120℃及び0.5mm厚で測定した値)
である請求項 1 又は 2 記載の樹脂組成物。
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