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JP3702790B2 - マイクロコンピュータ - Google Patents

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JP3702790B2
JP3702790B2 JP2001002615A JP2001002615A JP3702790B2 JP 3702790 B2 JP3702790 B2 JP 3702790B2 JP 2001002615 A JP2001002615 A JP 2001002615A JP 2001002615 A JP2001002615 A JP 2001002615A JP 3702790 B2 JP3702790 B2 JP 3702790B2
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  • Selective Calling Equipment (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば車両内LANといったネットワークで接続されたマイクロコンピュータ(以下適宜「マイコン」という。)間における通信技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高性能マイクロプロセッサの出現などエレクトロニクス技術の進歩を背景として、機械技術と電子技術とが結びついたメカトロニクス技術の進歩が著しい。メカトロニクスの進歩の一部として、自動車等の車両にも多くのコンピュータシステムが採用されてきている。このような車載用のコンピュータシステムは、電子制御装置(以下「ECU」という。)の単位で、車両内のエンジン・駆動系、走行・安全系、エンターテイメント系、及び、その他の随所に搭載されている。
【0003】
そして、車両全体でより適切な制御を行うためには、上述したECU間での情報交換、すなわちデータ通信を行う必要がある。そのため、車両内LAN(Local Area Network)などのネットワークを介して、各ECUが相互に接続される構成が採用されるに至った。
【0004】
ここで、車両内LANを介してデータ通信可能にされたECUの構成について説明する。
ECUは通常、入出力回路とマイコンとを備えるのが一般的であるが、上述したようなネットワーク通信を実現するため、入出力回路の一つとして、ドライバを備える。例えば図4に示すようにECU100は、車両内LAN90に接続されるドライバ110と、マイコン120とを少なくとも備えるという具合である。マイコン120は、CPU130、ROM140、RAM150、LANブロック160を有しており、このLANブロック160が、ドライバ110を介して、車両内LAN90から通信データを取得したり、または、車両内LAN90へ通信データを送出したりする。
【0005】
本発明は、車両内LAN90からの通信データの取得に係るものであるため、LANブロック160を介した通信データの受信について、さらに詳しく説明する。
LANブロック160は、メッセージBOX160a、プロトコルコントローラ160b、及びフィルタ回路160cを備えている。この例では、メッセージBOX160aは16個用意されている。車両内LAN90の通信データは、送信元ECUのアドレスやデータの種類等を示す識別情報(以下「ID」という。)とデータ本体とから構成され、メッセージと呼ばれる。メッセージBOX160aはこのため、IDとデータ本体とがペアで記憶できる構造になっている。なお、図4では、各メッセージBOX160aを説明上特定できるように「0」〜「15」の番号を便宜的に割り振った。
【0006】
ドライバ110によってネットワークから取得されたメッセージは、まずプロトコルコントローラ160bで解読され、フィルタ回路160cによって選別される。フィルタ回路160cは、論理回路であり、上述したIDに基づいてメッセージを選別する。これによってメッセージは、番号「0」〜「15」のいずれかのメッセージBOX160aに記憶される。
【0007】
そして、CPU130は、LANブロック160からのメッセージ受信を示す割込信号に基づき、上述したメッセージBOX160aからメッセージを読み出し、例えばRAM150に展開して、そのメッセージに基づく処理を実行する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、CPU130は、車両内LAN90からのメッセージだけに基づき動作するものではなく、他の入力回路からの信号に基づく動作をも行う。したがってCPU130は、タスクディスパッチなどの処理切り換え動作を行い、リアルタイム性が高い処理を優先的に実行する。その結果、受信したメッセージの処理優先順位が相対的に低いと、割込信号を受けた場合であっても、即座にメッセージBOX160aからメッセージを取得できない状況が発生する。
【0009】
一方、車両内LAN90における通信速度は、例えば数Mbpsという具合に高速化されてきた。
そのため、あるメッセージBOX160aからCPU130がメッセージを取り出す前に、次に受信されたメッセージがそのメッセージBOX160aに上書きされてしまうという事態が発生する。つまり、CPU130によるメッセージの取りこぼしが発生してしまうのである。このようなメッセージの取りこぼしは、制御性能の悪化を招き、性能面や安全面から好ましくない。
【0010】
このようなメッセージの取りこぼしを防止するために従来より、例えば処理優先順位のそれほど高くないメッセージ群の保存のために複数のメッセージBOXを割り当てておき、これら複数のメッセージBOXの中の空いている記憶領域にメッセージを記憶することが行われている。
【0011】
図4で言えば、例えば番号「1」〜「13」の13個のメッセージBOX160aを処理優先順位のそれほど高くないメッセージ群に割り当て、フィルタ回路160cでメッセージを選別して、そのメッセージ群に属するメッセージを13個のメッセージBOX160aの中の空いているメッセージBOX160aに記憶するという具合である。これによって、CPU130によるメッセージの読み出しが遅れても、13個までのメッセージが保存されることになり、メッセージの取りこぼしを防止できる。
【0012】
しかしながら、メッセージBOXの個数は全体で16個というように有限であるため、受信するメッセージの種類が多い場合や通信速度が比較的大きな場合は、13個というように割り当てられたメッセージBOXが全て使用されてしまうという状況が発生する。その場合には結局、上述したような、メッセージの上書きが発生し、CPU130によるメッセージの取りこぼしが生じてしまう。
【0013】
これを解決するためにはメッセージBOXの個数を増やすという手法が考えられるが、次のような理由から現実的ではない。
メッセージBOXの必要数は、メッセージを受信する頻度によっても、また、受信対象となるメッセージの数によっても、変わってくる。そこで例えば、どのような仕様であっても使えるように、十分な数のメッセージBOXを確保しようとすれば、LANブロックの構成が大型化してしまい、マイコンの、ひいてはECUの大型化を招く。また、このようなメッセージBOXの拡張は、LANを介した通信機能の拡張でしかなく、マイコンの汎用性が向上するわけではない。したがって、コスト面でのデメリットが大きくなってしまう。
【0014】
本発明は、メッセージBOXと呼ばれるデータ記憶手段の記憶領域を直接的に拡張することなく、通信データの取りこぼしをなくすことを目的とし、制御性能の悪化防止に寄与する。
【0015】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上述した目的を達成するためになされた請求項1に記載のマイクロコンピュータは、通信手段、データ記憶手段、処理実行手段、選別手段、転送手段を備えている。通信手段は、ネットワークを介してデータ通信を実現するための構成であり、例えば上述したプロトコルコントローラとして具体化できる。データ記憶手段は、受信された通信データが記憶される記憶領域であって、相対的に低優先度なデータのための第一の記憶領域と、相対的に高優先度なデータのための第二の記憶領域とが少なくとも設けられた記憶領域である。処理実行手段は、CPUを用いて実現することが考えられ、データ記憶手段に記憶された通信データに基づく処理を実行可能である。
【0016】
また、通信データは、送信元の装置を特定するための又はデータの種類を特定するための識別情報とデータ本体とから構成されており、選別手段は、その識別情報に基づき通信データを第一の記憶領域へ記憶させるデータと第二の記憶領域に記憶させるデータとに選別する。また、転送手段、データ記憶手段の第一*の記憶領域に記憶された通信データを転送する。その転送先は、処理実行手段によって利用されるRAMである。この転送手段は、処理実行手段を介さずに、また、転送先の記憶領域が重複しないように、通信データを転送する。「処理実行手段を介さず」とは、処理実行手段による各種処理と独立して転送処理を行うことが可能であることを意味する。また「転送先の記憶領域が重複しないように」するのは、転送時における上書きを防止する意図である。このような転送手段は、例えばDMAコントローラとして実現することが考えられる(請求項2)。
【0017】
処理実行手段は、基本的にはデータ記憶領域から通信データを読み出して当該通信データに基づく処理を実行するが、第一の記憶領域に記憶される通信データに基づく処理については、RAMに記憶された通信データに基づいて実行する。
【0018】
RAMには、十分な記憶領域が確保できる可能性が高い。したがって、このようなRAMへの転送という技術思想を採用することにより、通信データの受信頻度やその数に合わせた、データ記憶手段の記憶領域の見かけ上の拡張が可能になるのである。
【0019】
これによって、データ記憶手段の記憶領域を実際に拡張することなく、通信データの取りこぼしをなくすことができる。その結果、制御性能の悪化防止に寄与できる。
この構成では、DMAコントローラといった転送手段が必要になるが、このような転送手段は、通常、ソフトウェア的な変更によって、他のデータ転送にも汎用的に利用できる。その結果、データ記憶手段の記憶領域を拡張する場合と比較して、具体的にはLANブロックにおけるメッセージBOXの個数を増やす場合と比べて、転送手段の追加は、汎用機能の追加である点で、コスト面からも有利である。また、マイコンには、DMAコントローラを予め備えたものが従来より存在する。したがって、このようなマイコンを用いDMAコントローラを転送手段として機能拡張すれば、ソフトウェア的な変更のみで転送手段が実現され、大幅にコストを抑えることができる。
【0020】
なお、RAMに確保可能な記憶領域も当然ながら有限であるため、転送手段による転送が繰り返し行われると、RAMの記憶領域を圧迫することになりかねない。
そこで転送手段による通信データの転送の回数を制御可能にすることが考えられる。
【0021】
例えば、転送手段は、通信データを何回転送したかを示す転送回数を保持するようにするとよい(請求項3)。この転送回数に基づけば、通信データの転送の回数を制限できるからである。
具体的には、転送回数に対する上限値を転送手段が保持する構成とし、転送回数がこの上限値に等しくなると、通信データの転送を自動的に停止するように構成することが考えられる(請求項4)。
【0022】
あるいは、処理実行手段で転送の回数を把握できるようにするため、例えば、転送回数に対する設定値を保持する構成とし、転送回数が設定値に等しくなると、処理実行手段へその旨を通知可能に構成することが考えられる(請求項5)。ここで「通知可能」としたのは、必ず通知する構成としてもよいし、設定によって通知する構成としてもよいためである。後者では、通知する/通知しないといった情報を転送手段が有するようにし、この情報に基づいて処理実行手段への通知を行うようにすればよい。また、上限値や設定値は、例えば処理実行手段から任意に設定変更できる構成とすることが好ましい。
【0023】
そして、このように処理実行手段で転送の回数を把握できる構成とする場合を含めて、処理実行手段からの転送停止指示があると、通信データの転送を停止するよう転送手段を構成することが望ましい(請求項6)。これは、不適切な転送処理が何等かの要因で行われた場合に途中で止められるように、転送手段を処理実行手段の管理下におくという思想である。
【0024】
これらの構成を採用すれば、RAMの記憶領域を不適切な転送で圧迫することがなくなり、通信データの適切な転送が実現できる。
ところで、上述したように転送手段を処理実行手段の管理下におくという思想の下では、転送処理の許可についても同様に考えることができる。すなわち、処理実行手段からの転送許可指示があると通信データを転送可能な状態になるように、転送手段を構成することが考えられる(請求項7)。
【0025】
なお、実際の転送は、データ記憶手段の第一の記憶領域に通信データが記憶された時点から次の通信データが上書きされるまでの期間に行えばよい。
例えば、データ記憶手段の特定の記憶領域を特定するための情報が転送元情報として設定可能であることを前提に、転送手段は、転送元情報で特定される記憶領域に通信データが記憶されると、通信データの転送を行うことが考えられる(請求項8)。この転送元情報は、例えば転送手段が保持するものとすればよい。
【0028】
なお、以上は通信データの受信機能について説明してきたが、もちろん、通信手段を介した通信データの受信と共に、通信データの送信が可能である構成とするのが一般的である(請求項)。また、上述したネットワークは、一例として、車両内LANとして実現することが考えられる(請求項10)。この場合、車両に搭載されたドアや窓などがマイクロコンピュータの制御対象になる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施例を図面を参照して説明する。
図1は、実施例の車両制御システムを示す概念図である。車両制御システムは、車両に搭載されて用いられ、複数のECU10と、ECU10間のデータ通信を実現するための車両内LAN90とを備えている。各ECU10は、例えばドアや窓といった種々の制御対象を制御し、車両内のボデー系・エンジン・駆動系、走行・安全系、エンターテイメント系、及び、その他の随所に搭載されている。このためECU10は、制御対象を制御するための所定のプログラムを実行可能に構成されており、さらに、車両全体のより適切な制御を可能にするため、必要に応じて相互に車両内LAN90を介したデータ通信を行う。
【0030】
本実施例の車両制御システムは、このような車両内LAN90を介したデータ通信に特徴を有するものである。そこで次に、データ通信という観点で、ECU10の構成を説明する。
ECU10は、ドライバ11とマイコン12とを備えている。ドライバ11は、車両内LAN90にマイコン12を接続するための構成である。一方マイコン12は、周知のコンピュータシステムであり、本発明の「マイクロコンピュータ」を具体化したものである。マイコン12は、「処理実行手段」としてのCPU13、プログラム記憶手段としてのROM14、「一時記憶手段」としてのRAM15、LANブロック16、及び「転送手段」としてのDMAコントローラ17を有している。
【0031】
LANブロック16は、メッセージBOX16a、プロトコルコントローラ16b、及びフィルタ回路16cを備えている。
車両内LAN90を介して送受信される通信データは、IDとデータ本体とから構成され、メッセージと呼ばれる。メッセージBOX16aは、このような送信メッセージ、あるいは、受信メッセージを保持するための記憶領域である。したがって、図2中では、IDとDATAがペアで記憶できる構造を模式的に示した。また、メッセージBOX16aを特定するために、「0」〜「15」の番号を割り振った。
【0032】
プロトコルコントローラ16bは、プロトコル(通信規約)に応じたメッセージ処理を行う。具体的には、送信用に設定されたメッセージBOX16aに記憶されたメッセージをドライバ11へ出力する。本実施例では番号「0」の1個のメッセージBOX16aが送信用に割り当てられている。
【0033】
また、プロトコルコントローラ16bは、ドライバ11を介して受信されるメッセージを解読し、フィルタ回路16cによる選別結果に従い、受信用のメッセージBOX16aに記憶する。本実施例では、番号「1」〜「15」の15個のメッセージBOX16aが受信用に割り当てられている。
【0034】
したがって、プロトコルコントローラ16bが「通信手段」に相当し、メッセージBOX16aが、「データ記憶手段」の記憶領域に相当する。
メッセージを構成するIDは、通信データの送信元のECU10を特定可能なアドレス情報、又は、通信データの種類を示す意味情報である。したがって、このIDに基づけば、メッセージを選別することができる。フィルタ回路16cは、論理回路として構成され、マスク0〜3の3つのフィルタパターンを有している。そして、この3つのフィルタパターンを用い、メッセージのIDに基づく選別を行う。したがってフィルタ回路16cが「選別手段」に相当する。マスク0のフィルタパターンは番号「1」〜「13」の13個のメッセージBOX16aに対応しており、このマスク0のフィルタパターンでフィルタされるメッセージは、番号「1」〜「13」の13個のメッセージBOX16aの中の空いているメッセージBOX16aに記憶される。マスク1のフィルタパターンは番号「14」のメッセージBOX16aに対応しており、このマスク1のフィルタパターンでフィルタされるメッセージは、番号「14」のメッセージBOX16aに記憶される。同様にマスク2のフィルタパターンは番号「15」のメッセージBOX16aに対応しており、このマスク2のフィルタパターンでフィルタされるメッセージは、番号「15」のメッセージBOX16aに記憶される。ここでマスク0〜3の3つのフィルタパターンでフィルタされるメッセージ群はそれぞれ、処理実行優先順位を考慮して定められる。本実施例では、処理優先順位のレベルに応じて、高優先度のメッセージ群をマスク2でフィルタし、中優先度のメッセージ群をマスク0でフィルタし、低優先度のメッセージ群をマスク1でフィルタする。したがって、高優先度のメッセージが番号「15」のメッセージBOX16aに記憶され、中優先度のメッセージが番号「1」〜「13」のメッセージBOX16aに記憶され、低優先度のメッセージが番号「14」のメッセージBOX16aに記憶される。
【0035】
そして、本実施例では、このような受信用のメッセージBOX16aに記憶されるメッセージの取りこぼしを防止するために、上述したDMAコントローラ17を備える構成とした。DMAコントローラ17は、番号「14」のメッセージBOX16aにメッセージが記憶されると、このメッセージをRAM15へ転送することを特徴としている。
【0036】
そこで次に、マイコン12の備えるLANブロック16及びDMAコントローラ17の構成を、図3に基づいて説明する。
DMAコントローラ17は、9つのレジスタ17a〜17iを備え、転送に係る各種の情報を設定可能になっている。これらの情報は、CPU13から設定変更でき、以下に示すものがある。
【0037】
まず、レジスタ17aには、通常転送とLAN転送の選択情報が記憶される。この選択情報がLAN転送を示す場合に、上述したような番号「14」のメッセージBOX16aからRAM15への転送が行われる。一方、選択情報が通常転送を示す場合は、RAM15等のメモリ間における通常の転送処理が行われる。
【0038】
レジスタ17bには、転送元アドレスが記憶される。この転送元アドレスは、上述した通常転送時における転送元のアドレスである。
そして、転送先アドレスは、レジスタ17cに記憶される。ただし、この転送先アドレスは、通常転送時だけでなく、LAN転送を行う場合の転送先としても用いられる。
【0039】
レジスタ17dには、転送回数の上限値が記憶される。具体的には例えば「100」というような数値が記憶される。いくつのデータを転送したかを示す転送回数はレジスタ17iに記憶されており、この転送回数が上限値に等しくなると、DMAコントローラ17は転送を停止する。
【0040】
レジスタ17eには、転送時の方向が記憶される。これはレジスタ17cに記憶された転送先アドレスからアドレスをデクリメントしながら前方向に転送していくのか、あるいは、転送先アドレスからアドレスをインクリメントしながら後方向に転送していくのかを示す情報である。
【0041】
レジスタ17fには、転送時の割込発生の許可/禁止情報が記憶される。本実施例のDMAコントローラは、予め設定された割込発生タイミングになると、CPU13への通知を行えるようになっている。割込発生タイミングはレジスタ17hに記憶されるようになっており、具体的には、任意の設定値が記憶できる。例えば転送回数の上限値の半数である「50」及び上限値「100」の2つの数値を、設定値としておくという具合である。そして、DMAコントローラ17は、レジスタ17iの転送回数が設定値に等しくなると、CPU13への割込信号を出力し、転送回数が設定値に等しくなった旨を通知する。
【0042】
レジスタ17gには、転送元のメッセージBOX16aを特定する情報である「転送元情報」が記憶される。これは上述したLAN転送に使用されるものであり、本実施例では、番号「14」のメッセージBOX16aを特定する情報が記憶される。
【0043】
以上がDMAコントローラ17の構成であったが、一方のLANブロック16は、送受信動作情報16d、送受信状態16e、割込発生の許可/禁止情報16fを記憶している。次に、これらの情報について、メッセージBOX16a、プロトコルコントローラ16b、フィルタ回路16cとの関連を次に説明する。
【0044】
送受信動作情報16dは、16個のメッセージBOX16aのいずれが送信用で、いずれが受信用であるかを示す情報である。そして、送受信状態16eは、送信用のメッセージBOX16aにおける送信完了、及び、受信用の各メッセージBOX16aにおける受信完了を示すフラグ情報である。送信完了のフラグがセットされる時は、メッセージBOX16aから読み出されたメッセージがプロトコルコントローラ16bによって送信された時であり、一方、受信完了のフラグがセットされる時は、プロトコルコントローラ16bによって受信用メッセージがメッセージBOX16aに書き込まれた時である。したがって、この送受信状態16eを参照すれば、どのメッセージBOX16aに受信メッセージが記憶されたかが分かる。本実施例では、この送受信状態16eをDMAコントローラ17から監視できるように、記号αで示すライン接続がなされている。
【0045】
割込発生の許可/禁止情報16fは、各メッセージBOX16aの送受信完了時にCPU13に対する割込を発生させるか否かを示すフラグ情報である。LANブロック16では、送受信状態16eのフラグ情報と割込発生の許可/禁止情報16fとのAND演算を行い、その結果を割込発生回路18へ出力する。これによって、割込発生の許可がなされている場合にだけ、メッセージの送受信完了時にCPU13へ割込信号が出力される。
【0046】
次に、このように構成されたマイコン12におけるメッセージBOX16aからのメッセージの取得動作について説明する。
まずCPU13は、初期化処理にてDMAコントローラ17へLAN転送の選択を示す情報を出力する。この情報は、上述したようにレジスタ17aに記憶される。そしてさらに、DMAコントローラ17へ転送許可の指示を通知する。これによってDMAコントローラ17は、転送可能状態となる。
【0047】
CPU13は、LANブロック16から割込発生回路18を介して出力される割込信号に基づき、番号「1」〜「13」と番号「15」のメッセージBOX16aの受信メッセージを読み出し、図2中に示すRAM15に展開して、このメッセージに基づく処理を実行する。
【0048】
一方、番号「14」のメッセージBOX16aについては、LANブロック16の送受信状態16eを監視することによって、メッセージが記憶されると、DMAコントローラ17が、当該メッセージをRAM15に転送する。詳しくは、レジスタ17cに記憶された転送先アドレスからレジスタ17eに記憶された方向への転送を行う。そして、転送回数がレジスタ17dに記憶された例えば「100」という上限値になるまで、番号「14」のメッセージBOX16aに新たなメッセージが記憶される度に繰り返し、転送が行われる。なお、DMAコントローラ17は、CPU13から転送停止の指示があった場合、転送処理を停止する。
【0049】
そしてCPU13は、番号「14」のメッセージBOX16aに記憶されるメッセージについては、RAM15から読み出して、それらメッセージに基づく処理を行う。
次に、本実施例のECU10の発揮する効果を説明する。
【0050】
従来、処理優先順位の相対的に低いメッセージについてはCPU13によるメッセージBOX16aからの読み出しが遅れる可能性が高く、次のメッセージが上書きされることにより、メッセージの取りこぼしが発生することが問題となっていた。
【0051】
これに対して、本実施例のECU10では、番号「14」のメッセージBOX16aに記憶される低優先度のメッセージについては、RAM15に転送することにより、転送回数の上限値である例えば「100」個のメッセージを保存できる構成とした。つまり、RAM15への転送という手法により、メッセージBOX16aの見かけ上の拡張を可能にしたのである。
【0052】
これによって、LANブロック16のメッセージBOX16aの個数を実際に拡張することなく、受信したメッセージの取りこぼしをなくすことができる。結果として、制御性能の悪化防止に寄与できる。
なお、この構成には、DMAコントローラ17を必要としているが、レジスタ17aの選択情報を書き換えることによって、他のデータ転送にも汎用的に利用できる。その結果、メッセージBOX16aの個数を直接的に増加させる場合と比較して、DMAコントローラ17の追加は、汎用機能の追加である点で、コスト面からも有利である。また、DMAコントローラを備えたマイコンも従来より存在する。したがって、このようなマイコンを用い本実施例の構成を実現すれば、ソフトウェア的な変更のみで機能拡張ができ、大幅にコストを抑えることができる。
【0053】
また、本実施例では、DMAコントローラ17のレジスタ17dに転送回数の上限値が記憶でき、レジスタ17iに記憶される転送回数がこの上限値に等しくなると、自動的に転送を停止する。さらに、レジスタ17fの情報で割込発生許可がなされている前提の下、レジスタ17hに記憶された設定値に、転送回数が等しくなると、その旨をCPU13へ通知するようにした。そして、CPU13からの転送停止指示があると、DMAコントローラ17は転送処理を停止する。また、DMAコントローラ17は、CPU13からの転送許可指示があってはじめて、転送可能状態になる。これによって、不適切な転送処理が何等かの要因で行われた場合に途中で停止させることが可能であり、結果的に、RAM15の記憶領域を圧迫することがなくなり、通信データの適切な転送が実現できる。
【0054】
以上、本発明はこのような実施例に何等限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得る。
上記実施例は、車両に搭載されるECU10間の車両内LAN90を介したデータ通信であったが、ネットワークからの受信メッセージをメッセージBOXに記憶するようなマイコンを備えるシステムに適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の車両制御システムを示す概念図である。
【図2】実施例のECUの構成を示す説明図である。
【図3】ECU内のマイコンの構成を示す説明図である。
【図4】従来のECUの構成を示す説明図である。
【符号の説明】
10…ECU
11…ドライバ
12…マイコン
13…CPU
14…ROM
15…RAM
16…LANブロック
16a…メッセージBOX
16b…プロトコルコントローラ
16c…フィルタ回路
16d…送受信動作情報
16e…送受信状態
16f…割込発生の許可/禁止情報
17…DMAコントローラ
17a,17b,17c,17d,17e,17f,17g,17h,17i …レジスタ
18…割込発生回路
90…車両内LAN
100…ECU
110…ドライバ
120…マイコン
130…CPU
140…ROM
150…RAM
160…LANブロック
160a…メッセージBOX
160b…プロトコルコントローラ
160c…フィルタ回路

Claims (10)

  1. ネットワークを介してデータ通信を実現するための通信手段と、
    前記通信手段によって受信された通信データが記憶される所定数の記憶領域を有したデータ記憶手段と、
    前記データ記憶手段に記憶された前記通信データに基づく処理を実行可能な処理実行手段とを備えたマイクロコンピュータにおいて、
    さらに、選別手段と、転送手段とを備え、
    前記通信データは、送信元の装置を特定するための又はデータの種類を特定するための識別情報とデータ本体とから構成されており、
    前記データ記憶手段には、相対的に低優先度なデータのための第一の記憶領域と、相対的に高優先度なデータのための第二の記憶領域とが少なくとも設けられ、
    前記選別手段は、前記識別情報に基づき前記通信データを、前記第一の記憶領域へ記憶させるデータと前記第二の記憶領域に記憶させるデータとに選別し、
    前記転送手段は、前記データ記憶手段の前記第一の記憶領域に記憶された前記通信データを、前記処理実行手段により利用されるRAMへ、前記処理実行手段を介さず、転送先の記憶領域が重複しないように転送
    前記処理実行手段は、前記第一の記憶領域に記憶される前記通信データに基づく処理については、前記RAMに記憶された前記通信データに基づいて実行すること
    を特徴とするマイクロコンピュータ。
  2. 請求項1に記載のマイクロコンピュータにおいて、
    前記転送手段は、DMAコントローラとして実現されていること
    を特徴とするマイクロコンピュータ。
  3. 請求項1又は2に記載のマイクロコンピュータにおいて、
    前記転送手段は、前記通信データを何回転送したかを示す転送回数を保持していること
    を特徴とするマイクロコンピュータ。
  4. 請求項3に記載のマイクロコンピュータにおいて、
    前記転送手段は、
    前記転送回数に対する上限値を保持しており、
    前記転送回数が前記上限値に等しくなると、前記通信データの転送を自動的に停止すること
    を特徴とするマイクロコンピュータ。
  5. 請求項3又は4に記載のマイクロコンピュータにおいて、
    前記転送手段は、
    前記転送回数に対する設定値を保持しており、
    前記転送回数が前記設定値に等しくなると、前記処理実行手段へその旨を通知可能であること
    を特徴とするマイクロコンピュータ。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のマイクロコンピュータにおいて、
    前記転送手段は、前記処理実行手段からの転送停止指示があると、前記通信データの転送を停止すること
    を特徴とするマイクロコンピュータ。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロコンピュータにおいて、
    前記転送手段は、前記処理実行手段からの転送許可指示があると、前記通信データを転送可能な状態になること
    を特徴とするマイクロコンピュータ。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のマイクロコンピュータにおいて、
    前記データ記憶手段の前記第一の記憶領域を特定するための情報が転送元情報として設定可能であり、
    前記転送手段は、前記転送元情報で特定される前記記憶領域に前記通信データが記憶されると、前記通信データの転送を行うこと
    を特徴とするマイクロコンピュータ。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載のマイクロコンピュータにおいて、
    前記通信手段を介した前記通信データの受信と共に、前記通信データの送信が可能であること
    を特徴とするマイクロコンピュータ。
  10. 請求項1〜のいずれかに記載のマイクロコンピュータにおいて、
    前記ネットワークは、車両内LANとして実現されていること
    を特徴とするマイクロコンピュータ。
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