JP3795835B2 - 二輪車の走行シミュレーションプログラム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、仮想三次元空間内でいわゆる運動方程式に基づき二輪車の走行を再現する二輪車の走行シミュレーションソフトウェアに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車設計の分野ではHILS(Hardware−in−the−LoopSimulation)は広く知られる。このHILSによれば、例えばABS(アンチロックブレーキシステム)の動作は検証されることができる。検証に基づきABSは最適化される。動作の検証にあたって実物の自動車が走行する必要はない。HILSに組み込まれるリアルタイムCPU(中央演算処理装置)は仮想三次元空間内で走行中の自動車を再現する。
【0003】
リアルタイムCPUにはABS用ECU(電子制御ユニット)が接続される。ABS用ECUには、各車輪の回転速度を示す車輪速データが受け渡される。ABS用ECUは車輪速データに基づき制御信号を生成する。制御信号はリアルタイムCPUに受け渡される。リアルタイムCPUは制御信号に基づき各車輪ごとに制動力を再現する。刻々と変化する各車輪の回転速度はリアルタイムで算出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
自動二輪車の分野でもABSの技術は確立されつつある。自動二輪車に組み込まれるABSの検証にあたってHILSの利用が模索される。しかしながら、これまでのところ、走行中の自動二輪車を再現する走行シミュレーションソフトウェアは実現されていない。こういった走行シミュレーションの手法が確立されれば、自動二輪車の設計は飛躍的に進歩すると考えられる。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、仮想三次元空間内で走行中の二輪車を再現することができる二輪車の走行シミュレーションソフトウェアを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、第1発明によれば、仮想三次元空間内で二輪車の構成要素ごとに重心並びに所定の基準点回りで慣性モーメントを特定するシミュレーションモデルを取得する手順と、シミュレーションモデルに基づき、二輪車の直進走行を再現する運動条件を設定する手順と、シミュレーションモデルの前輪および後輪に対して回転加速度を付与する加速度データ群を生成する手順と、加速度データ群に基づき、前輪および後輪の回転速度を特定する回転速度データを生成する手順と、前輪および後輪の回転速度が規定の閾値に達した時点で運動条件の設定を解除する手順とをプロセッサに実行させることを特徴とする二輪車の走行シミュレーションプログラムが提供される。
【0007】
走行シミュレーションプログラムがプロセッサで演算処理されると、走行シミュレーションソフトウェアは実行される。この走行シミュレーションソフトウェアではシミュレーションモデルに基づき二輪車の走行が再現される。走行の再現にあたって二輪車の前輪および後輪には回転加速度が付与される。仮想三次元空間内で前輪および後輪の回転は再現される。このとき、シミュレーションモデルには予め規定の運動条件が設定される。仮想三次元空間内では運動条件に基づき強制的に二輪車の直進走行は再現される。したがって、仮想三次元空間内で二輪車は転倒することなく走行し続けることができる。こうした限定条件が設定されない限り、低速域で走行する二輪車は仮想三次元空間内で転倒してしまう。
【0008】
その後、前輪や後輪の回転速度が規定の閾値を越えた時点で前記運動条件の設定は解除される。この時点では前輪および後輪に十分な回転速度は確保される。前輪および後輪には十分な転がり慣性力が付与される。したがって、前輪および後輪の直立姿勢が確保される限り、二輪車は直進走行を持続することができる。前述のような運動条件が取り払われることから、仮想三次元空間内で二輪車の挙動は比較的に正確に再現されることができる。
【0009】
直進走行の再現にあたって、走行シミュレーションソフトウェアは、仮想三次元空間内で前輪および後輪の直立姿勢を確立する運動シミュレーションデータ群を生成する手順と、仮想三次元空間内で操舵軸回りに回転する操舵系組立体に関して操舵トルクを特定する操舵制御データを生成する手順とを実施すればよい。一般に、二輪車では、前輪の接地点および後輪の接地点を含む1垂直面から二輪車の重心がずれると、二輪車の車体は傾くと考えられる。たとえ前輪および後輪の直立姿勢が確立されても、前述の垂直面内に二輪車の重心が配置されるとは限らない。その一方で、二輪車の走行中には例えばステアリングといった操舵系の操作に基づき車体の傾きは解消されることができる。操舵系組立体に加えられる操舵トルクすなわち回転加速度の働きで二輪車の直進走行は持続されることができる。こうして二輪車の転倒は回避される。
【0010】
操舵制御データの生成にあたって、走行シミュレーションソフトウェアは、二輪車の直進方向を規定する基準軸回りにシミュレーションモデルの角変位を検出すればよい。こういった角変位は二輪車の傾きに相当する。すなわち、走行シミュレーションソフトウェアは傾きの大きさに応じて操舵トルクを生成することができる。生成される操舵トルクに基づき二輪車の傾きは解消される。こうして角変位の変化を打ち消す大きさの操舵トルクが加えられれば、仮想三次元空間内で二輪車の直進走行は持続されることができる。仮想三次元空間内で二輪車の転倒は回避される。
【0011】
また、操舵制御データの生成にあたって操舵軸回りで操舵系組立体の角加速度が検出されてもよい。二輪車が傾くと、操舵系組立体には傾きの大きさに応じて操舵軸回りに角加速度が作用する。操舵系組立体の角加速度は二輪車の傾きに相当する。すなわち、走行シミュレーションソフトウェアは傾きの大きさに応じて操舵トルクを生成することができる。生成される操舵トルクに基づき二輪車の傾きは解消される。こうして角加速度を打ち消す大きさの操舵トルクが加えられれば、仮想三次元空間内で二輪車の直進走行は持続されることができる。仮想三次元空間内で二輪車の転倒は回避される。
【0012】
さらに、操舵制御データの生成にあたって、二輪車の直進方向に直交する横方向にシミュレーションモデルの重心の変位が検出されてもよい。前述のように、二輪車では、前輪の接地点および後輪の接地点を含む1垂直面から二輪車の重心がずれると、二輪車の車体は傾く。重心の変位の大きさに基づき二輪車の傾きは特定されることができる。こうして走行シミュレーションソフトウェアは傾きの大きさに応じて操舵トルクを生成することができる。生成される操舵トルクに基づき二輪車の傾きは解消される。こうして重心の変位の変化を打ち消す大きさの操舵トルクが加えられれば、仮想三次元空間内で二輪車の直進走行は持続されることができる。仮想三次元空間内で二輪車の転倒は回避される。
【0013】
以上のような走行シミュレーションソフトウェアでは、回転加速度の付与に先立って、シミュレーションモデルに基づき二輪車の静止状態を確立する運動シミュレーションデータ群は生成される。仮想三次元空間内で二輪車は現実の世界と同様に静止状態から走行状態に移行する。
【0014】
静止状態の確立にあたって走行シミュレーションソフトウェアは運動シミュレーションデータ群に基づき二輪車の直立姿勢を維持する。こうして直立姿勢が維持されれば、走行開始にあたって二輪車の直進走行は比較的に簡単に再現されることができる。たとえ静止時であっても仮想三次元空間内で二輪車の転倒は回避されることができる。
【0015】
こうした静止状態の確立にあたって、走行シミュレーションソフトウェアは、仮想三次元空間内で重力加速度を特定する重力データにゼロ値を設定してもよい。こうして重力データにゼロ値が設定されれば、仮想三次元空間内で二輪車の転倒は確実に回避されることができる。二輪車の直立姿勢は比較的に簡単に再現されることができる。
【0016】
また、静止状態の確立にあたって、走行シミュレーションソフトウェアは、仮想三次元空間内で重力加速度に釣り合う支持力を特定する支持力データを生成してもよい。こうした支持力データによれば、仮想三次元空間内で二輪車の転倒は確実に回避されることができる。二輪車の直立姿勢は比較的に簡単に再現されることができる。支持力は、例えば、重力加速度に基づき生成される変位を打ち消す加速度で構成されればよい。
【0017】
さらに、静止状態の確立にあたって走行シミュレーションソフトウェアでは変位、速度および加速度の算出が控えられてもよい。任意の運動シミュレーションデータ群の入力にも拘わらず、変位、速度および加速度の算出が控えられれば、仮想三次元空間内で二輪車の転倒は確実に回避されることができる。二輪車の直立姿勢は比較的に簡単に再現されることができる。
【0018】
第2発明によれば、仮想三次元空間内で二輪車の構成要素ごとに重心並びに所定の基準点回りで慣性モーメントを特定するシミュレーションモデルを取得する手順と、シミュレーションモデルに基づき、二輪車の静止状態を確立する運動シミュレーションデータ群を生成する手順と、所定の限定条件の下で、シミュレーションモデルの前輪および後輪に対して回転加速度を付与する加速度データ群を生成する手順と、加速度データ群に基づき、前輪および後輪の回転速度を特定する回転速度データを生成する手順と、前輪および後輪の回転速度が規定の閾値に達した時点で二輪車の直立姿勢を確保しつつ限定条件を解除する手順とをプロセッサに実行させることを特徴とする二輪車の走行シミュレーションプログラムが提供される。
【0019】
走行シミュレーションプログラムがプロセッサで演算処理されると、走行シミュレーションソフトウェアは実行される。この走行シミュレーションソフトウェアではシミュレーションモデルに基づき二輪車の走行が再現される。仮想三次元空間内で二輪車は静止状態から走行状態に移行する。走行の再現にあたって二輪車の前輪および後輪には回転加速度が付与される。仮想三次元空間内で前輪および後輪の回転は再現される。このとき、シミュレーションモデルには予め規定の限定条件が設定される。
【0020】
その後、前輪や後輪の回転速度が規定の閾値を越えた時点で限定条件の設定は解除される。この時点では前輪および後輪に十分な回転速度は確保される。前輪および後輪には十分な転がり慣性力が付与される。したがって、前輪および後輪の直立姿勢が確保されれば、仮想三次元空間内で確実に二輪車の直進走行は再現されることができる。限定条件が取り払われることから、仮想三次元空間内で二輪車の挙動は比較的に正確に再現されることができる。
【0021】
限定条件の設定にあたって、走行シミュレーションソフトウェアは、シミュレーションモデルに基づき仮想三次元空間内で二輪車の直進走行を再現する運動シミュレーションデータ群を生成してもよい。こうして限定条件の下で二輪車の直進走行が再現されれば、限定条件が解除される時点で、前輪および後輪の直立姿勢は比較的に簡単に確保されることができる。限定条件の解除にも拘わらず仮想三次元空間内で二輪車は直進走行を持続することができる。
【0022】
限定条件の設定にあたって、走行シミュレーションソフトウェアは、二輪車の直進方向を規定する基準軸回りにシミュレーションモデルの角変位を検出すればよい。こういった角変位は二輪車の傾きに相当する。すなわち、走行シミュレーションソフトウェアは傾きの大きさに応じて操舵トルクを生成することができる。前述と同様に、生成される操舵トルクに基づき二輪車の傾きは解消される。仮想三次元空間内で二輪車の直進走行は持続される。仮想三次元空間内で二輪車の転倒は回避される。
【0023】
角変位の検出にあたって、走行シミュレーションソフトウェアは、基準軸に直交する横方向にシミュレーションモデルの重心の変位を検出してもよい。前述のように、二輪車では、前輪の接地点および後輪の接地点を含む1垂直面から二輪車の重心がずれると、二輪車の車体は傾く。重心の変位の大きさに基づき二輪車の傾きは特定されることができる。こうして走行シミュレーションソフトウェアは傾きの大きさに応じて操舵トルクを生成することができる。
【0024】
その他、限定条件の設定にあたって、走行シミュレーションソフトウェアは、二輪車の直進方向を規定する基準軸回りにシミュレーションモデルで検出される角変位に影響を与える変位、速度および加速度の算出を取り止めてもよい。任意の運動シミュレーションデータ群の入力にも拘わらず変位、速度および加速度の算出が控えられれば、仮想三次元空間内で二輪車の転倒は確実に回避されることができる。二輪車の直立姿勢は比較的に簡単に再現されることができる。
【0025】
第3発明によれば、仮想三次元空間内で二輪車の静止状態を確立する手順と、所定の限定条件の下で、静止状態から前輪および後輪に回転加速度を与える手順と、前輪および後輪の回転速度が規定の閾値に達した時点で少なくとも二輪車の後輪の直立姿勢を確保しつつ限定条件を解除する手順とを備えることを特徴とする二輪走行のコンピュータシミュレーション方法が提供される。
【0026】
かかるコンピュータシミュレーション方法によれば、前輪や後輪の回転速度が規定の閾値を越えた時点で限定条件の設定は解除される。この時点では前輪および後輪に十分な回転速度は確保される。前輪および後輪には十分な転がり慣性力が付与される。少なくとも後輪の直立姿勢が確保されれば、仮想三次元空間内で確実に二輪車の直進走行は再現されることができる。限定条件が取り払われることから、仮想三次元空間内で二輪車の挙動は比較的に正確に再現されることができる。
【0027】
限定条件では、仮想三次元空間内で操舵軸回りに回転する操舵系組立体に加えられる操舵トルクに基づき前輪の直立姿勢が維持されてもよい。こうして前輪の直立姿勢が維持されれば、限定条件が解除される時点で比較的に簡単に後輪の直立姿勢は確立されることができる。限定条件の解除後、仮想三次元空間内で確実に二輪車の直進走行は再現されることができる。直立姿勢の維持にあたって、操舵系組立体の操舵角に変化が現れると、操舵系組立体には操舵軸回りでその変化を打ち消す回転加速度が加えられればよい。
【0028】
なお、前述の二輪車は、例えば、車両本体、上方操舵系組立体、下方操舵系組立体、前輪、リアスイングアームおよび後輪といった6構成要素に分解されればよい。その他、二輪車の構成要素には例えばエンジンが加えられてもよい。さらに、二輪車の構成要素には、二輪車に搭乗する乗員が加えられてもよい。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0030】
図1は本発明に係る自動二輪車用ブレーキシミュレーションシステム11を概略的に示す。この自動二輪車用ブレーキシミュレーションシステム11は、いわゆるHILS(Hardware−in−the−Loop Simulation)システム12と、このHILSシステム12に接続されるワークステーションコンピュータ13とを備える。HILSシステム12には、いわゆるリアルタイムCPU(中央演算処理装置)14と、このリアルタイムCPU14に接続されるメモリ15とが組み込まれる。リアルタイムCPU14は任意のリアルタイムOS(オペレーティングシステム)上で所定のアプリケーションプログラムを実行することができる。プログラムの実行にあたってリアルタイムCPU14はメモリ15内の作業領域を利用する。
【0031】
リアルタイムCPU14には、自動二輪車用アンチロックブレーキシステム(ABS)に組み込まれるECU(電子制御ユニット)16が接続される。リアルタイムCPU14は、例えば自動二輪車の前輪回転速度を表現する前輪速データと、同様に自動二輪車の後輪回転速度を表現する後輪速データとをECU16に向けて出力することができる。後述されるように、自動二輪車の前輪回転速度や後輪回転速度は、仮想三次元座標系空間内で再現される走行中の自動二輪車に基づき特定される。ECU16は前輪速データや後輪速データに基づき所定の制御信号を生成することができる。
【0032】
ECU16には制動力再現機構17が接続される。この制動力再現機構17は、後述されるように、実物のハンドレバーやフットペダルの操作に基づき自動二輪車の前輪や後輪に作用する制動力を再現する。制動力を表現する制動力データはリアルタイムCPU14に受け渡される。リアルタイムCPU14は、制動力データに基づきリアルタイムで前輪および後輪の回転速度を変化させることができる。リアルタイムCPU14の処理動作の詳細は後述される。
【0033】
ワークステーションコンピュータ13には、リアルタイムCPU14に接続されるCPU(中央演算処理装置)18と、このCPU18に接続されるメモリ19とが組み込まれる。CPU18は、いわゆるOS(オペレーティングシステム)上で各種のアプリケーションプログラムを実行することができる。プログラムの実行にあたってCPU18はメモリ19内の作業領域を利用する。
【0034】
アプリケーションプログラムは例えばハードディスク駆動装置(HDD)21に格納されればよい。こういったアプリケーションプログラムには、HILS管理プログラム22やシミュレーションモデル構築プログラム23が含まれる。アプリケーションプログラムは例えばCD−ROM駆動装置24からHDD21に受け渡されればよい。CD−ROM駆動装置24は、装置24内に装着されるCD−ROM25からアプリケーションプログラムを読み取ることができる。その他、HILS管理プログラム22やシミュレーションモデル構築プログラム23といったアプリケーションプログラムはネットワーク(図示されず)経由でHDD21に受け渡されてもよい。
【0035】
ワークステーションコンピュータ13には、キーボード26やマウス27といった入力装置と、ディスプレイ28といった出力装置とが接続される。CPU18はキーボード26やマウス27から様々な指令やデータを受け取ることができる。同様に、CPU18はディスプレイ28の画面上に様々な画像(例えばグラフィックやテキスト)を映し出すことができる。
【0036】
いま、自動二輪車に組み込まれるABSの動作を検証する場面を想定する。例えば図2に示されるように、この自動二輪車のABS31は、フロントフォーク32に回転自在に支持される前輪ブレーキディスク33と、リアスイングアーム34に回転自在に支持される後輪ブレーキディスク35とを備える。前輪ブレーキディスク33は前輪36に固定される。前輪36および前輪ブレーキディスク33は、水平方向に延びるアクスル軸回りで一体に回転する。同様に、後輪ブレーキディスク35は後輪37に固定される。後輪37および後輪ブレーキディスク35は、前輪36側のアクスル軸に平行に水平方向に延びるアクスル軸回りで一体に回転する。
【0037】
フロントフォーク32には前輪用キャリパ38が取り付けられる。前輪用キャリパ38は前輪ブレーキディスク33に対して所定の制動力を付与する。この制動力は、前輪用キャリパ38に供給される油圧の大きさに応じて制御される。前輪用キャリパ38の制動力に応じて前輪36は制動される。同様に、リアスイングアーム34には後輪用キャリパ39が固定される。後輪用キャリパ39は後輪ブレーキディスク35に対して所定の制動力を付与する。制動力は、後輪用キャリパ39に供給される油圧の大きさに応じて制御される。後輪用キャリパ39の制動力に応じて後輪37は制動される。
【0038】
前輪用キャリパ38にはフロントモジュレータ41が接続される。このフロントモジュレータ41は前輪用キャリパ38に油圧を供給する。フロントモジュレータ41は、油圧室の容積の増減に基づき油圧の大きさを調整することができる。油圧室の容積はモータ42の回転量に応じて制御される。例えば、加圧中に油圧室の容積が増大すれば、供給される油圧の大きさは減少する。
【0039】
同様に、後輪用キャリパ39にはリアモジュレータ43が接続される。このリアモジュレータ43は後輪用キャリパ39に油圧を供給する。リアモジュレータ43は、フロントモジュレータ41と同様に、油圧室の容積の増減に基づき油圧の大きさを調整することができる。油圧室の容積はモータ44の回転量に応じて制御される。例えば、加圧中に油圧室の容積が増大すれば、供給される油圧の大きさは減少する。
【0040】
フロントモジュレータ41には第1マスタシリンダ45が接続される。第1マスタシリンダ45にはハンドレバー46が連結される。ハンドレバー46は例えばステアリング(図示されず)のグリップに取り付けられる。ハンドレバー46の操作に基づき第1マスタシリンダ45では油圧が生成される。ハンドレバー46の操作量に応じて油圧の大きさは制御される。生成された油圧はフロントモジュレータ41の油圧室に送り込まれる。
【0041】
リアモジュレータ43には第2マスタシリンダ47が接続される。第2マスタシリンダ47にはフットペダル48が連結される。フットペダル48は例えばフットステップ付近で車両本体(図示されず)に取り付けられる。フットペダル48の操作に基づき第2マスタシリンダ47では油圧が生成される。フットペダル48の操作量に応じて油圧の大きさは制御される。生成された油圧はリアモジュレータ43の油圧室に送り込まれる。
【0042】
リアモジュレータ43にはさらに第3マスタシリンダ49が接続される。この第3マスタシリンダ49は例えばフロントフォーク32に固定される。第3マスタシリンダ49とリアモジュレータ43との間には圧力調整バルブ51が組み込まれる。第3マスタシリンダ49で生成される油圧は、圧力調整バルブ51で調整された後にリアモジュレータ43に供給される。
【0043】
第3マスタシリンダ49には前輪用キャリパ38が連結される。前輪用キャリパ38は例えば任意の方向に変位自在にフロントフォーク32に取り付けられる。前輪36の制動時に前輪用キャリパ38は前輪36に引きずられて変位する。この変位に基づき第3マスタシリンダ49では油圧が生成される。こうした連動機構52の働きによれば、前輪用キャリパ38に所定の油圧が供給される際に同時に後輪用キャリパ39に油圧が供給される。すなわち、ハンドレバー46が操作されるだけで前輪36および後輪37は同時に制動されることができる。圧力調整バルブ51の働きで前輪36および後輪37の間で制動力は適切に分配されることができる。
【0044】
前述の第2マスタシリンダ47は同時にフロントモジュレータ41に接続される。したがって、フットペダル48の操作によれば、前輪36および後輪37は同時に制動されることができる。ただし、遅延バルブ53の働きで前輪用キャリパ38には後輪用キャリパ39よりも遅れて油圧が供給される。
【0045】
フロントモジュレータ41やリアモジュレータ43に組み込まれるモータ42、44はそれぞれECU16の働きで制御される。こういった制御にあたって、ECU16は、前輪36の回転速度を示す前輪速データや、後輪37の回転速度を示す後輪速データを取得する。前輪速データや後輪速データは、例えばフロントフォーク32やリアスイングアーム34に取り付けられる回転速度センサ55、56から出力される。
【0046】
ECU16は、所定の制御プログラムに基づき、例えば前輪速データおよび後輪速データから自動二輪車の車速を算出する。こうして算出される車速や、前輪速データで特定される前輪回転速度、後輪速データで特定される後輪回転速度に基づきECU16は前輪36や後輪37のスリップ量を算出する。スリップ量が所定の閾値を超えると、ECU16はモータ42、44に向かって制御信号を出力する。モータ42、44は油圧室の容積を増大させる。前輪用キャリパ38や後輪用キャリパ39に供給される油圧は一時的に弱められる。制動力は緩められる。こうして前輪36や後輪37のロックは事前に回避される。制御信号の生成にあたって、ECU16では前輪36および後輪37の回転加速度や回転減速度が参照されてもよい。回転加速度や回転減速度は、単位時間当たりで算出される回転速度の変化量に基づき算出されればよい。
【0047】
以上のようなモータ42、44の制御にあたって、ECU16は、フロントモジュレータ41やリアモジュレータ43に組み込まれる角度センサ57、58の出力を受け取る。角度センサ57、58の出力によれば、フロントモジュレータ41やリアモジュレータ43内で油圧室の容積は特定されることができる。ECU16は、こういった容積の実測に基づきモータ42、44のフィードバック制御を実現する。
【0048】
以上のようなABS31の検証にあたって、HILSシステム12では、例えば現実の油圧系統に則った制動力発生機構17が構築される。この制動力発生機構17は、図3から明らかなように、ABS31の油圧系統を包含する。すなわち、制動力発生機構17には、ABS31と同様に、前輪用キャリパ38、後輪用キャリパ39、フロントモジュレータ41、リアモジュレータ43、第1〜第3マスタシリンダ45、47、49、ハンドレバー46、フットペダル48、圧力調整バルブ51および遅延バルブ53が組み込まれる。ABS31と同様に、フロントモジュレータ41やリアモジュレータ43のモータ42、44にはECU16から制御信号が供給される。ECU16は、前述と同様に、モータ42、44の制御にあたって角度センサ57、58の出力を受け取る。
【0049】
その他、HILSシステム12では、前輪用キャリパ38および後輪用キャリパ39に個別に油圧センサ61、62が組み込まれる。これらの油圧センサ61、62は、前輪用キャリパ38や後輪用キャリパ39で生成される油圧の大きさを検出する。検出された油圧値を示す油圧値データすなわち制動力データはリアルタイムCPU14に受け渡される。リアルタイムCPU14は、後述されるように、油圧値データで特定される油圧値に基づき制動力を換算する。換算される制動力に応じて前輪回転速度や後輪回転速度は変化する。
【0050】
同時に、HILSシステム12では、第3マスタシリンダ49にアクチュエータ63が連結される。このアクチュエータ63の駆動力に基づき第3マスタシリンダ49では油圧が生成される。アクチュエータ63の駆動はリアルタイムCPU14の働きで制御される。この制御にあたって、リアルタイムCPU14はアクチュエータ63に制御信号を送り込む。この制御信号には例えばアクチュエータ63の駆動量が規定される。こういった駆動量は、前輪用キャリパ38の油圧センサ61で検出される油圧値や、リアルタイムCPU14で算出される前輪回転速度に基づき算出される。アクチュエータ63の働きに基づき連動機構52は再現される。
【0051】
ワークステーションコンピュータ13では、自動二輪車の走行シミュレーションに先立って例えばシミュレーションモデル構築ソフトウェアは実行される。シミュレーションモデル構築ソフトウェアの実行にあたってワークステーションコンピュータ13のCPU18ではシミュレーションモデル構築プログラムが演算処理される。シミュレーションモデル構築ソフトウェアは仮想三次元空間内で自動二輪車の走行シミュレーションモデルを構築する。
【0052】
走行シミュレーションモデルの構築にあたって、自動二輪車の完成車は例えば8構成要素に分解される。ここでは、自動二輪車の完成車の概念に、自動二輪車に搭乗する乗員が含まれる。シミュレーションモデル構築ソフトウェアは、個々の構成要素ごとに、質量(または重量)を特定する質量データと、重心位置を特定する重心位置データと、慣性モーメントを特定する個別慣性モーメントデータとを取得する。慣性モーメントは各構成要素の重心位置を基準に特定されればよい。重心位置や慣性モーメントは個々の構成要素に固有の三次元局部座標系内で特定されればよい。各構成要素の概念は後述される。
【0053】
質量データや重心位置データ、個別慣性モーメントデータの取得にあたってシミュレーションモデル構築ソフトウェアはCADデータ群や諸元データ群を利用する。CADデータ群では、例えば、フレームボディや操舵系ユニット、リアサスペンションユニット、前輪、後輪、エンジンといった個々の設計要素ごとに形状や寸法、重量といった情報は特定される。操舵系ユニットは、例えば、フレームボディのヘッドパイプに受け入れられる枢軸(ステム)やステアリング、フロントフォーク、フロントフォークに組み込まれるフロントサスペンションで構成される。リアサスペンションユニットは、フレームボディに揺動自在に連結されるリアスイングアームや、フレームボディおよびリアスイングアームに連結されるリンク機構、フレームボディおよびリンク機構の間に挟み込まれるリアサスペンションで構成されればよい。フロントサスペンションやリアサスペンションは例えばばねおよびダンパで構成されればよい。同様に、諸元データ群には、例えば、自動二輪車の完成車で実測される各種の寸法や重量、重心位置といった情報は特定される。その他、諸元データ群には、例えば、フロントサスペンションやリアサスペンションに組み込まれるばねのばね特性やダンパの減衰特性を示すグラフが記述される。ばね特性には、例えば、ばねの伸張に応じて変化するばね係数が示されればよい。減衰特性には、例えば、速度に応じて変化するダンパの荷重特性が示されればよい。
【0054】
続いて、シミュレーションモデル構築ソフトウェアは構成要素相互間の結合関係を認識する。その結果、個々の構成要素ごとに設定される三次元局部座標系は全体座標系すなわち仮想三次元空間内に取り込まれる。仮想三次元空間内で、個々の三次元局部座標系の位置や姿勢(傾き)は特定される。こうして仮想三次元空間で個々の構成要素の重心位置は決定される。同様に、個々の構成要素ごとに、重心回りでx軸回り慣性モーメントIxx、y軸回り慣性モーメントIyyおよびz軸回り慣性モーメントIzzは決定される。仮想三次元空間内には、完成車の重心を基準に、個々の構成要素ごとに重心および各慣性モーメントIxx、Iyy、Izzが配置される。
【0055】
ここで、前述の構成要素の概念を詳述する。シミュレーションモデル構築ソフトウェアは、例えば図4に示されるように、自動二輪車の完成車65内で車両本体66、上方操舵系組立体67、下方操舵系組立体68、前輪69、リアスイングアーム71、後輪72、エンジン73および乗員74といった8構成要素を認識する。車両本体66と上方操舵系組立体67とは、任意の垂直軸(仮想三次元空間のz軸)にキャスタ角αで傾斜する回転軸75で相対回転自在に連結される。こうした連結に基づき車両本体66に固有の三次元局部座標系と上方操舵系組立体67に固有の三次元局部座標系とは繋ぎ合わせられることができる。こうして車両本体66および上方操舵系組立体67の間では重心同士の相対関係は規定される。この相対関係は第1相関データに記述される。ここでは、上方操舵系組立体67の重心は車両本体66に固定の回転軸75回りで移動する。上方操舵系組立体67は、例えば、フレームボディのヘッドパイプに受け入れられる回転軸やステアリング、回転軸に固定されるフロントフォークばね上部材といった部品で構成されればよい。
【0056】
上方操舵系組立体67と下方操舵系組立体68とは回転軸75に平行な直線経路76に沿って相対変位自在に連結される。このとき、上方操舵系組立体67と下方操舵系組立体68との間にはフロントサスペンションが組み込まれる。こうした連結に基づき上方操舵系組立体67に固有の三次元局部座標系と下方操舵系組立体68に固有の三次元局部座標系とは繋ぎ合わせられることができる。こうして上方操舵系組立体67および下方操舵系組立体68の間では重心同士の相対関係は規定される。この相対関係は第2相関データに記述される。ここでは、下方操舵系組立体68はばねのばね特性やダンパの減衰特性に基づき上方操舵系組立体67に対して変位する。上方操舵系組立体67および下方操舵系組立体68の相対変位はばねのばね特性やダンパの減衰特性に支配される。ばね特性や減衰特性は諸元データに基づき特定される。下方操舵系組立体68は、例えば、フロントフォークばね上部材にばねやダンパで接続されるフロントフォークばね下部材といった部品から構成されればよい。
【0057】
下方操舵系組立体68と前輪69とは、水平方向(仮想三次元空間のy軸方向)に延びる回転軸77で相対回転自在に連結される。こうした連結に基づき下方操舵系組立体68に固有の三次元局部座標系と前輪69に固有の三次元局部座標系とは繋ぎ合わせられることができる。こうして下方操舵系組立体68および前輪69の間では重心同士の相対関係は規定される。この相対関係は第3相関データに記述される。ここでは、前輪69の重心は回転軸77上に固定される。
【0058】
リアスイングアーム71は、回転軸77に平行に延びる揺動軸78で車両本体66に揺動自在に連結される。このとき、車両本体66とリアスイングアーム71との間にはリアサスペンションが組み込まれる。リアサスペンションとリアスイングアーム71との間には例えばリンク機構が組み込まれてもよい。こうした連結に基づき車両本体66に固有の三次元局部座標系とリアスイングアーム71に固有の三次元局部座標系とは繋ぎ合わせられることができる。こうして車両本体66およびリアスイングアーム71の間では重心同士の相対関係は規定される。この相対関係は第4相関データに記述される。リアスイングアーム71の重心は車両本体66に固定の揺動軸78回りに移動する。リアスイングアーム71の重心の移動はばねのばね特性やダンパの減衰特性に支配される。ばね特性や減衰特性は諸元データに基づき特定される。ただし、リアサスペンションとリアスイングアーム71との間にリンク機構が組み込まれる場合には、リアスイングアーム71の重心の移動はリンク機構の形態に応じて変化する。
【0059】
リアスイングアーム71と後輪72とは、回転軸77や揺動軸78に平行に延びる回転軸79で相対回転自在に連結される。こうした連結に基づきリアスイングアーム71に固有の三次元局部座標系と後輪72に固有の三次元局部座標系とは繋ぎ合わせられることができる。こうしてリアスイングアーム71および後輪72の間では重心同士の相対関係は規定される。この相対関係は第5相関データに記述される。ここでは、後輪72の重心は回転軸79上に固定される。
【0060】
この完成車41では、エンジン73は車両本体66に相対変位不能に連結される。こうした連結に基づき車両本体66およびエンジン73の間では重心同士の相対関係は規定される。すなわち、エンジン73の重心は車両本体66上に固定される。この相対関係は第6相関データに記述される。ただし、エンジン73は車両本体66に相対変位自在に連結されてもよい。このとき、エンジン73の重心は、例えばエンジン73および車両本体66の間に挟み込まれる緩衝材のばね特性や減衰特性に基づき車両本体66に対して変位する。
【0061】
同様に、乗員74は車両本体66に拘束される。すなわち、乗員74は車両本体66に相対変位不能に連結される。こうした連結に基づき車両本体66および乗員74の間では重心同士の相対関係は規定される。すなわち、乗員74の重心は車両本体66上に固定される。この相対関係は第7相関データに記述される。ただし、乗員74は車両本体66に相対変位自在に連結されてもよい。このとき、乗員74の重心の変位は、例えば自動二輪車上で乗員74の体重移動を表現する任意の数式に基づき規定されればよい。
【0062】
以上のように、シミュレーションモデル構築ソフトウェアは、車両本体66、上方操舵系組立体67、下方操舵系組立体68、前輪69、リアスイングアーム71、後輪72、エンジン73および乗員74といった構成要素ごとに、仮想三次元空間内に個々の三次元局部座標系を取り込ませる。こうして、仮想三次元空間では、例えば図5に示されるように、車両本体66の重心G1、上方操舵系組立体67の重心G2、下方操舵系組立体68の重心G3、前輪69の重心G4、リアスイングアーム71の重心G5、後輪72の重心G6、エンジン73の重心G7および乗員74の重心G8は配置される。同時に、仮想三次元空間では、車両本体66、上方操舵系組立体67、下方操舵系組立体68、前輪69、リアスイングアーム71、後輪72、エンジン73および乗員74といった構成要素ごとに各慣性モーメントIxx、Iyy、Izzが配置される。
【0063】
ここでは、前述の車両本体66の重心位置や慣性モーメントの算出にあたって自動二輪車全体の重心位置GGや慣性モーメントIxx、Iyy、Izzといった情報が用いられる。自動二輪車全体から、上方操舵系組立体67、下方操舵系組立体68、前輪69、リアスイングアーム71、後輪72およびエンジン73は差し引かれていく。一般に、自動二輪車には、前述の構成要素67〜73以外に様々な構造物が組み込まれる。特に、実車では、構造物以外にも燃料やオイルといった流体物が存在する。したがって、前述のように自動二輪車全体から構成要素67〜73が差し引かれると、そういった構造物や流体物は車両本体66の付随物として取り扱われることができる。こうして実車の構造は、仮想三次元空間に構築される走行シミュレーションモデルに比較的に高い精度で反映されることができる。
【0064】
同様に、シミュレーションモデル構築ソフトウェアはABS31のブレーキモデルを構築する。このブレーキモデルでは、前輪36および後輪37とともに回転するブレーキディスク33、35と対応するキャリパ38、39との相対関係が記述される。この相対関係では、例えば図6から明らかなように、ブレーキディスク33、35に垂直方向から作用する押し付け力Fcが特定される。こういった押し付け力Fcの大きさは前述の油圧値データに基づき決定される。こういったブレーキモデルに基づき、リアルタイムCPU14では前輪36や後輪37の減速度は算出されることができる。
【0065】
さらに、シミュレーションモデル構築ソフトウェアはABS31の連動機構モデルを構築する。この連動機構モデルでは前述の連動機構52の動作が記述される。すなわち、連動機構モデルには前輪用キャリパ38の変位と第3マスタシリンダ49との相対関係が記述される。この相対関係では、前輪用キャリパ38の変位量ごとにアクチュエータ63の駆動力が特定される。前輪用キャリパ38の変位量は、前述のように油圧値データや前輪速データに基づき決定される。こういった連動機構モデルに基づき第3マスタシリンダ49はリアモジュレータ43に向けて規定の油圧を出力する。
【0066】
さらにまた、シミュレーションモデル構築ソフトウェアは自動二輪車のタイヤモデルを構築する。このタイヤモデルでは例えば路面とタイヤとの相対関係が記述される。この相対関係では、例えば路面の摩擦係数μごとにタイヤのスリップ率が特定される。こういったスリップ率は個々のタイヤごとに実測されればよい。こういったタイヤモデルに基づき、リアルタイムCPU14では前輪36や後輪37の移動速度すなわち三次元空間のx軸方向速度は算出されることができる。
【0067】
いま、ワークステーションコンピュータ13のCPU18でHILS管理プログラム22が演算処理されると、HILS管理ソフトウェアは実行される。HILS管理ソフトウェアは、図7のステップS1で、例えばディスプレイ28の画面上にHILS管理画面を映し出す。この管理画面で、HILS管理ソフトウェアは、ワークステーションコンピュータ13のオペレータに自動二輪車の走行シミュレーションモデル、ブレーキモデル、連動機構モデルおよびタイヤモデルの取り込みを促す。オペレータは、例えばキーボード26やマウス27の操作に基づき、シミュレーションモデル構築ソフトウェアで構築された任意の走行シミュレーションモデル、ブレーキモデル、連動機構モデルおよびタイヤモデルを指定することができる。こうして指定された走行シミュレーションモデル、ブレーキモデル、連動機構モデルおよびタイヤモデルはステップS2でHILS管理ソフトウェアに受け渡される。
【0068】
ステップS3で、HILS管理ソフトウェアはオペレータに自動二輪車の走行速度や路面およびタイヤ間の摩擦係数μといった走行条件情報の入力を促す。オペレータは例えばキーボード26やマウス27の操作に基づき走行速度や摩擦係数μを指定すればよい。走行条件情報を特定する走行条件情報データはHILS管理ソフトウェアに保持されればよい。
【0069】
その後、HILS管理ソフトウェアはオペレータの指示を待つ。走行シミュレーションの開始が指示されると、続くステップS4で、HILS管理ソフトウェアはリアルタイムCPU14に走行シミュレーションの実施を指示する。リアルタイムCPU14は自動二輪車の走行シミュレーションを実施する。走行シミュレーションの実施に先立ってリアルタイムCPU14には走行シミュレーションプログラムが受け渡される。こういった走行シミュレーションプログラムは例えばHILS管理プログラム22内に予め用意されていればよい。走行シミュレーションプログラムはメモリ15内に一時的に格納される。同様に、リアルタイムCPU14には、走行シミュレーションモデル、ブレーキモデル、連動機構モデルおよびタイヤモデルのほか、走行条件情報データがHILS管理ソフトウェアから受け渡される。
【0070】
リアルタイムCPU14で走行シミュレーションプログラムが演算処理されると、走行シミュレーションソフトウェアは実行される。走行シミュレーションソフトウェアは、走行シミュレーションモデル、ブレーキモデル、連動機構モデルおよびタイヤモデルのほか、走行条件情報データに基づき仮想三次元空間内に自動二輪車の完成車65を再現する。この再現にあたって、走行シミュレーションソフトウェアは走行シミュレーションモデルに基づき完成車65内で各構成要素66〜74の慣性モーメントを算出する。こうした慣性モーメントは完成車65の重心GGからの距離に基づき決定される。慣性モーメントの算出にあたって走行シミュレーションソフトウェアは例えば重心位置データおよび質量データを参照する。各構成要素66〜74の重心ごとに、重心位置データで特定される重心位置と、質量データで特定される質量とから、完成車65の重心GG回りでx軸回り慣性モーメント、y軸回り慣性モーメントおよびz軸回り慣性モーメントは算出される。こうして算出される慣性モーメントに基づき完成車65の挙動は解析される。仮想三次元空間では、所定の時間間隔ごとに、完成車65に関してx軸方向変位量やx軸方向速度、x軸方向加速度、y軸方向変位量、y軸方向速度、y軸方向加速度、z軸方向変位量、z軸方向速度、z軸方向加速度、x軸回り角変位量、x軸回り角速度、x軸回り角加速度、y軸回り角変位量、y軸回り角速度、y軸回り角加速度、z軸回り角変位量、z軸回り角速度、z軸回り角加速度は算出される。
【0071】
このとき、走行シミュレーションソフトウェアは、走行シミュレーションモデルに基づき、第1〜第7相関データで特定される構成要素66〜74相互間の相対関係を解析する。例えば第1相関データに基づき走行シミュレーションソフトウェアは車両本体66に固定の回転軸75回りで上方操舵系組立体67の重心の移動を算出する。所定の時間間隔ごとに回転軸75回りの角変位量、角速度および角加速度は算出される。こうして操舵系ユニットの挙動は解析される。同様に、第2相関データに基づき上方操舵系組立体67および下方操舵系組立体68との間では直線的な相対変位が算出される。所定の時間間隔ごとに、直線経路76に沿った変位量、速度および加速度は算出される。こうして操舵系ユニットに組み込まれるフロントサスペンションのストロークは解析される。同様に、第4相関データに基づき、走行シミュレーションソフトウェアは車両本体66に固定の揺動軸78回りでリアスイングアーム71の重心の移動を算出する。所定の時間間隔ごとに揺動軸78回りの角変位量、角速度および角加速度は算出される。こうしたリアサスペンションユニットの挙動に基づきリアサスペンションのストロークは解析される。しかも、これらの重心の移動に基づき、完成車65のx軸方向変位量やx軸方向速度、x軸方向加速度、y軸方向変位量、y軸方向速度、y軸方向加速度、z軸方向変位量、z軸方向速度、z軸方向加速度、x軸回り角変位量、x軸回り角速度、x軸回り角加速度、y軸回り角変位量、y軸回り角速度、y軸回り角加速度、z軸回り角変位量、z軸回り角速度、z軸回り角加速度は補正される。したがって、完成車65の挙動は一層正確に再現される。
【0072】
同時に、走行シミュレーションソフトウェアは走行シミュレーションモデルに基づき個々の構成要素66〜74ごとに構成要素66〜74単独の挙動を解析する。このとき、走行シミュレーションソフトウェアは個々の構成要素66〜74ごとにx軸回り慣性モーメントIxx、y軸回り慣性モーメントIyyおよびz軸回り慣性モーメントIzzを利用する。構成要素66〜74単独の挙動は完成車65全体の挙動に影響を及ぼす。走行シミュレーションソフトウェアは、構成要素66〜74単独の挙動に基づき、完成車65のx軸方向変位量やx軸方向速度、x軸方向加速度、y軸方向変位量、y軸方向速度、y軸方向加速度、z軸方向変位量、z軸方向速度、z軸方向加速度、x軸回り角変位量、x軸回り角速度、x軸回り角加速度、y軸回り角変位量、y軸回り角速度、y軸回り角加速度、z軸回り角変位量、z軸回り角速度、z軸回り角加速度を補正する。こうして完成車65の挙動はさらに正確に再現される。
【0073】
こうして走行シミュレーションが実施されると、リアルタイムCPU14は、所定の時間間隔ごとに、各種の指標を特定する指標データを出力する。こういった指標データには、例えば、完成車65の車体速度を示す車体速度データ、前輪69の移動速度を示す前輪側速度データ、後輪72の移動速度を示す後輪側速度データ、ハンドレバー46の操作量を示すレバー操作量データ、フットペダル48の操作量を示すペダル操作量データ、第1マスタシリンダ45の液圧を示す第1液圧データ、第2マスタシリンダ47の液圧を示す第2液圧データ、前輪用キャリパ38の液圧を示す第3液圧データ、後輪用キャリパ39の液圧を示す第4液圧データ、フロントサスペンションやリアサスペンションのストロークを示すストロークデータが含まれる。車体速度は例えば重心GGのx軸方向速度に対応すればよい。前輪69や後輪72の移動速度は例えば前輪69や後輪72のy軸回り角速度から換算されればよい。ハンドレバー46やフットペダル48の操作量は、例えばハンドレバー46やフットペダル48に取り付けられる変位センサ(図示されず)から取得されればよい。第1マスタシリンダ45や第2マスタシリンダ47の液圧は、例えば第1マスタシリンダ45や第2マスタシリンダ47に取り付けられる油圧センサ(図示されず)から取得されればよい。前輪用キャリパ38や後輪用キャリパ39の液圧は前述の油圧センサ61、62から取得されればよい。
【0074】
HILS管理ソフトウェアは様々な形態で指標データを視覚化することができる。例えば図8に示されるように、時間の経過を追って変化する車体速度や前輪の速度、後輪の速度、フロントサスペンションのストローク、リアサスペンションのストロークはグラフ化される。こうして走行シミュレーションに基づき完成車65の挙動やABS31の動作は観察されることができる。
【0075】
走行シミュレーションの実施にあたって、リアルタイムCPU14は、図9のステップT1で、前述の走行シミュレーションモデルに基づき、仮想三次元空間内で完成車65の静止状態を確立する第1運動シミュレーションデータ群を生成する。この第1運動シミュレーションデータ群によれば仮想三次元空間内で完成車65の直立姿勢すなわち前輪69および後輪72の直立姿勢は確立される。この直立姿勢では、前輪69の回転軸77と後輪72の回転軸79とは仮想三次元空間内で完全に水平に配置される。
【0076】
このとき、走行シミュレーションモデルには仮想三次元空間内で特異条件が設定される。完成車65の各重心G1〜G8に対して全く加速度は設定されない。すなわち、リアルタイムCPU14は、仮想三次元空間内で垂直方向すなわちz軸方向に重力加速度(1G)を特定する重力データに「0(ゼロ)」値を設定する。こうした特異条件に基づけば、個々の重心GG、G1〜G8ごとに、x軸方向変位、x軸方向速度、x軸方向加速度、y軸方向変位、y軸方向速度、y軸方向加速度、z軸方向変位、z軸方向速度、z軸方向加速度、x軸回り角変位、x軸回り角速度、x軸回り角加速度、y軸回り角変位、y軸回り角速度、y軸回り角加速度、z軸回り角変位、z軸回り角速度、z軸回り角加速度といった指標の算出は控えられる。その結果、仮想三次元空間内では完成車65の初期姿勢すなわち直立姿勢は維持され続ける。たとえこれら指標の算出が実施されたとしても、前述のように各重心G1〜G8に対して全く加速度は設定されないことから、完成車65の直立姿勢すなわち前輪69および後輪72の直立姿勢は確実に維持され続ける。こうして完成車65の静止状態に拘わらず完成車65の転倒は回避される。本発明者によれば、こういった特異条件が設定されない限り、仮想三次元空間内では完成車65の転倒が再現されることが確認された。仮想三次元空間内の完成車65は忠実に現実を再現することが確認された。
【0077】
続くステップT2で、リアルタイムCPU14は、走行シミュレーションモデルに基づき、仮想三次元空間内で完成車65の加速状態を生み出す第2運動シミュレーションデータ群を生成する。この第2運動シミュレーションデータ群では、仮想三次元空間内で完成車65の各重心G1〜G8に対して垂直方向すなわちz軸方向に重力加速度(1G)が加えられると同時に、例えば重心GGや重心G6に所定のx軸方向加速度が加えられる。その結果、仮想三次元空間内で完成車65は走行し始める。リアルタイムCPU14は、走行シミュレーションモデルの前輪69に対して回転加速度すなわちy軸回り角加速度を付与する第1加速度データと、走行シミュレーションモデルの後輪72に対して回転加速度すなわちy軸回り角加速度を付与する第2加速度データを生成する。これらの加速度データに基づき前輪69および後輪72の回転速度は算出される。こうして回転速度データは生成される。
【0078】
こういった走行の初期段階ではいわゆるクローズドループ走行が確立される。走行シミュレーションモデルには、強制的に完成車65の直進走行を再現する運動条件が設定される。この運動条件の設定にあたって、リアルタイムCPU14は、回転軸75すなわち操舵軸回りで回転する上方操舵系組立体67に関して操舵トルクすなわち回転軸75回りの角加速度を特定する操舵制御データを生成する。こうして操舵トルクが加えられる結果、上方操舵系組立体67の操舵角すなわち角変位は目標値「0(ゼロ)」に維持される。完成車65は転倒することなく走行し続けることができる。こうした限定条件が設定されない限り、低速域で走行する完成車65は仮想三次元空間内で転倒してしまうことが確認された。
【0079】
操舵制御データの生成にあたって、リアルタイムCPU14は、例えば完成車65の直進方向を規定する基準軸回りに走行シミュレーションモデルの角変位を算出する。こういった角変位は例えば重心GGに関して算出されるx軸回り角変位に対応すればよい。リアルタイムCPU14は、こうして検出される角変位を打ち消す操舵トルクの大きさを算出する。算出された操舵トルクの大きさに相当するx軸回り角加速度が重心GG回りで付与される。こうしたx軸回り角加速度の働きで上方操舵系組立体67の操舵角は目標値「0(ゼロ)」に維持される。その他、操舵トルクの算出にあたっては、例えば回転軸75回りで上方操舵系組立体67の角加速度が検出されてもよく、完成車65の直進方向に直交する横方向すなわちy軸方向に完成車65の重心GGの変位が検出されてもよい。上方操舵系組立体67の角加速度や重心GGのy軸方向変位を打ち消す大きさの操舵トルクによれば、上方操舵系組立体67の操舵角は目標値「0(ゼロ)」に維持される。
【0080】
完成車65の車体速度が規定の閾値を超えると、リアルタイムCPU14はステップT3でいわゆるオープンループ走行を確立する。すなわち、前述の運動条件の設定は解除される。操舵制御データの生成は取り止められる。このオープンループ走行では前輪69および後輪72に十分な回転速度が確保される。前輪69および後輪72には十分な転がり慣性力が付与される。したがって、前輪69および後輪72の直立姿勢が確保されれば、完成車65は直進走行を持続することができる。その後、走行条件情報データに設定される走行速度に完成車65の走行速度すなわちx軸方向速度が達するまで完成車65の加速状態は維持されればよい。走行条件情報データに設定される走行速度に完成車65の走行速度が達すると、完成車65は一定速度で走行を持続すればよい。
【0081】
こうしてオープンループ走行が確立されると、オペレータはステップT4でハンドレバー46やフットペダル48を操作する。このとき、オペレータには、ディスプレイ28の管理画面上でオープンループ走行の確立が所定の表示で提示されればよい。ハンドレバー46やフットペダル48の操作に基づき第1マスタシリンダ45や第2マスタシリンダ46では油圧が生成される。生成された油圧はフロントモジュレータ41やリアモジュレータ43から前輪用キャリパ38や後輪用キャリパ39に伝達される。こうして前輪用キャリパ38や後輪用キャリパ39では油圧が発生する。発生した油圧の大きさは油圧センサ61、62で測定される。測定された油圧値を示す油圧値データはリアルタイムCPU14に送り込まれる。こういった場合に、ディスプレイ28の管理画面上ではハンドレバー46やフットペダル48の操作量が所定の表示方法に基づきオペレータに提示されてもよい。
【0082】
リアルタイムCPU14は、ブレーキモデルに基づき前輪69や後輪72の回転速度を変化させる。リアルタイムCPU14は、受け取った油圧値に基づきブレーキディスク33、35に対する押し付け力Fcを算出する。算出された押し付け力Fcに基づき前輪69や後輪72のy軸回り角速度すなわち回転速度は算出される。こうして算出された回転速度はECU16に引き渡される。同時に、リアルタイムCPU14は、連動機構モデルに基づきアクチュエータ63の駆動量を算出する。前輪69の回転に引きずられる前輪用キャリパ38の変位量は算出される。算出された駆動量はアクチュエータ63に引き渡される。
【0083】
こうして前輪69や後輪72で回転の減速が再現されると、前輪69や後輪72の慣性力に基づき完成車65の挙動は修正される。例えば、リアルタイムCPU14は、前輪69や後輪72の減速度とタイヤのスリップ率とに基づき前輪69や後輪72の移動速度すなわちx軸方向速度を算出する。こういった移動の減速度に基づき完成車65の車体速度すなわちx軸方向速度は修正される。同様に、移動の減速度に基づき前輪69および車両本体66の相対変位や後輪72および車両本体66の相対変位は算出される。その結果、フロントサスペンションやリアサスペンションの挙動は解析される。
【0084】
その後、完成車65の車体速度が所定の下限値を下回ると、リアルタイムCPU14は、仮想三次元空間内で強制的に完成車65の直立姿勢を維持する第3運動シミュレーションデータ群を取得する。この第3運動シミュレーションデータ群では、前述と同様に、例えば完成車65の各重心G1〜G8に対して重力加速度の作用は排除されればよい。こういった特異条件によれば、停止前の低速走行状態に拘わらず完成車65の転倒は回避されることができる。
【0085】
最終的に、ステップT5で完成車65は停止する。完成車65の車体速度が「0(ゼロ)」に達した時点でオペレータはハンドレバー46やフットペダル48を解放する。走行シミュレーションは完了する。
【0086】
以上のような自動二輪車用ブレーキシミュレーションシステム11では、前述の制動力発生機構17に代えて、リアルタイムCPU14内に均等なシミュレーションモデルが構築されてもよい。その他、自動二輪車のABS31には、第3マスタシリンダ49や連動機構52、圧力調整バルブ51が組み込まれる必要は必ずしもなく、第2マスタシリンダ47から前輪用キャリパ38に至る油圧経路が確立される必要は必ずしもない。こういった場合には、制動力発生機構17に第3マスタシリンダ49や連動機構52、圧力調整バルブ51、第2マスタシリンダ47から前輪用キャリパ38に至る油圧経路が組み込まれる必要はない。
【0087】
さらに、前述のような静止状態の確立にあたって、リアルタイムCPU14は、仮想三次元空間内で重力加速度に釣り合う支持力を特定する支持力データを生成してもよい。こういった支持力は、例えば、重力加速度に基づき生成される変位を打ち消す加速度で構成されればよい。加速度同士が釣り合う結果、完成車65の変位は回避されることができる。
【0088】
さらにまた、前述のような運動条件すなわち限定条件の設定にあたって、リアルタイムCPU14は、完成車65の直進方向を規定する基準軸すなわちx軸回りに重心GGで検出される角変位に基づき加速度データを生成してもよい。この加速度データでは、検出された角変位を打ち消す加速度が特定されればよい。こうした角変位の検出にあたって、リアルタイムCPU14は、基準軸に直交する横方向すなわちy軸方向に重心GGの変位を検出してもよい。こうしたy軸方向変位は、前輪69の接地点および後輪72の接地点を含む1垂直面を基準に測定されればよい。その他、限定条件の設定にあたって、x軸回りに重心GGで検出される角変位に影響を与える変位、速度および加速度の算出は取り止められてもよい。
【0089】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、仮想三次元空間内で確実に走行中の二輪車は再現されることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 自動二輪車用ブレーキシミュレーションシステムの構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】 自動二輪車に組み込まれるABS(アンチロックブレーキシステム)の構造を概略的に示すブロック図である。
【図3】 HILSシステムの構造を概略的に示すブロック図である。
【図4】 シミュレーションモデル構築ソフトウェア内で認識される自動二輪車の8構成要素の概念を概略的に示す模式図である。
【図5】 シミュレーションモデル構築ソフトウェアで構築される走行シミュレーションモデルの概念を概略的に示す模式図である。
【図6】 シミュレーションモデル構築ソフトウェアで構築されるブレーキモデルの概念を概略的に示す模式図である。
【図7】 HILS管理ソフトウェアの処理動作を概略的に示すフローチャートである。
【図8】 走行シミュレーションに基づき生成されるグラフの概略図である。
【図9】 走行シミュレーションの処理動作を概略的に示すフローチャートである。
【符号の説明】
14 リアルタイムCPU(プロセッサ)、22 走行シミュレーションプログラムが組み込まれるHILS管理プログラム、65 二輪車すなわち車両本体、67 (上方)操舵系組立体、69 前輪、72 後輪、75 操舵軸、GG基準点(二輪車の重心)、GG シミュレーションモデルの重心。
Claims (19)
- 仮想三次元空間内で二輪車の構成要素ごとに重心並びに所定の基準点回りで慣性モーメントを特定するシミュレーションモデルを取得する手順と、シミュレーションモデルに基づき、二輪車の直進走行を再現する運動条件を設定する手順と、シミュレーションモデルの前輪および後輪に対して回転加速度を付与する加速度データ群を生成する手順と、加速度データ群に基づき、前輪および後輪の回転速度を特定する回転速度データを生成する手順と、前輪および後輪の回転速度が規定の閾値に達した時点で運動条件の設定を解除する手順とをプロセッサに実行させることを特徴とする二輪車の走行シミュレーションプログラム。
- 請求項1に記載の二輪車の走行シミュレーションプログラムにおいて、前記直進走行の再現にあたって、仮想三次元空間内で前輪および後輪の直立姿勢を確立する運動シミュレーションデータ群を生成する手順と、仮想三次元空間内で操舵軸回りに回転する操舵系組立体に関して操舵トルクを特定する操舵制御データを生成する手順とをさらにプロセッサに実行させることを特徴とする二輪車の走行シミュレーションプログラム。
- 請求項2に記載の二輪車の走行シミュレーションプログラムにおいて、前記操舵制御データの生成にあたって、二輪車の直進方向を規定する基準軸回りにシミュレーションモデルの角変位を検出する手順と、検出される角変位の変化を打ち消す操舵トルクの大きさを算出する手順とをさらにプロセッサに実行させることを特徴とする二輪車の走行シミュレーションプログラム。
- 請求項2に記載の二輪車の走行シミュレーションプログラムにおいて、前記操舵制御データの生成にあたって、前記操舵軸回りで操舵系組立体の角加速度を検出する手順と、検出される角加速度を打ち消す操舵トルクの大きさを算出する手順とをさらにプロセッサに実行させることを特徴とする二輪車の走行シミュレーションプログラム。
- 請求項2に記載の二輪車の走行シミュレーションプログラムにおいて、前記操舵制御データの生成にあたって、二輪車の直進方向に直交する横方向にシミュレーションモデルの重心の変位を検出する手順と、検出される変位の変化を打ち消す操舵トルクの大きさを算出する手順とをさらにプロセッサに実行させることを特徴とする二輪車の走行シミュレーションプログラム。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の二輪車の走行シミュレーションプログラムにおいて、前記回転加速度の付与に先立って、前記シミュレーションモデルに基づき二輪車の静止状態を確立する運動シミュレーションデータ群を生成する手順とをさらにプロセッサに実行させることを特徴とする二輪車の走行シミュレーションプログラム。
- 請求項6に記載の二輪車の走行シミュレーションプログラムにおいて、前記静止状態の確立にあたって前記運動シミュレーションデータ群に基づき二輪車の直立姿勢が維持されることを特徴とする二輪車の走行シミュレーションプログラム。
- 請求項6または7に記載の二輪車の走行シミュレーションプログラムにおいて、前記静止状態の確立にあたって、前記仮想三次元空間内で重力加速度を特定する重力データにゼロ値が設定されることを特徴とする二輪車の走行シミュレーションプログラム。
- 請求項6または7に記載の二輪車の走行シミュレーションプログラムにおいて、前記静止状態の確立にあたって、前記仮想三次元空間内で重力加速度に釣り合う支持力を特定する支持力データが生成されることを特徴とする二輪車の走行シミュレーションプログラム。
- 請求項9に記載の二輪車の走行シミュレーションプログラムにおいて、前記支持力は、前記重力加速度に基づき生成される変位を打ち消す加速度で構成されることを特徴とする二輪車の走行シミュレーションプログラム。
- 請求項6または7に記載の二輪車の走行シミュレーションプログラムにおいて、前記静止状態の確立にあたって変位、速度および加速度の算出が控えられることを特徴とする二輪車の走行シミュレーションプログラム。
- 仮想三次元空間内で二輪車の構成要素ごとに重心並びに所定の基準点回りで慣性モーメントを特定するシミュレーションモデルを取得する手順と、シミュレーションモデルに基づき、二輪車の静止状態を確立する運動シミュレーションデータ群を生成する手順と、所定の限定条件の下で、シミュレーションモデルの前輪および後輪に対して回転加速度を付与する加速度データ群を生成する手順と、加速度データ群に基づき、前輪および後輪の回転速度を特定する回転速度データを生成する手順と、前輪および後輪の回転速度が規定の閾値に達した時点で二輪車の直立姿勢を確保しつつ限定条件を解除する手順とをプロセッサに実行させることを特徴とする二輪車の走行シミュレーションプログラム。
- 請求項12に記載の二輪車の走行シミュレーションプログラムにおいて、前記限定条件の設定にあたって、前記シミュレーションモデルに基づき仮想三次元空間内で二輪車の直進走行を再現する運動シミュレーションデータ群を生成する手順をさらにプロセッサに実行させることを特徴とする二輪車の走行シミュレーションプログラム。
- 請求項12に記載の二輪車の走行シミュレーションプログラムにおいて、前記限定条件の設定にあたって、二輪車の直進方向を規定する基準軸回りにシミュレーションモデルで検出される角変位に基づき、角変位の変化を打ち消す加速度を特定する加速度データを生成する手順をさらにプロセッサに実行させることを特徴とする二輪車の走行シミュレーションプログラム。
- 請求項14に記載の二輪車の走行シミュレーションプログラムにおいて、前記角変位の検出にあたって前記基準軸に直交する横方向にシミュレーションモデルの重心の変位を検出する手順をさらにプロセッサに実行させることを特徴とする二輪車の走行シミュレーションプログラム。
- 請求項12に記載の二輪車の走行シミュレーションプログラムにおいて、前記限定条件の設定にあたって、二輪車の直進方向を規定する基準軸回りにシミュレーションモデルで検出される角変位に影響を与える変位、速度および加速度の算出を取り止める手順をさらにプロセッサに実行させることを特徴とする二輪車の走行シミュレーションプログラム。
- 仮想三次元空間内で二輪車の構成要素ごとに重心並びに所定の基準点回りで慣性モーメントを特定するシミュレーションモデルを取得する手順と、シミュレーションモデルに基づき仮想三次元空間内で二輪車の静止状態を確立する手順と、所定の限定条件の下で、静止状態から前輪および後輪に回転加速度を与える手順と、前輪および後輪の回転速度が規定の閾値に達した時点で少なくとも二輪車の後輪の直立姿勢を確保しつつ限定条件を解除する手順とを備えることを特徴とする二輪走行のコンピュータシミュレーション方法。
- 請求項17に記載の二輪走行のコンピュータシミュレーション方法において、前記限定条件では、前記仮想三次元空間内で操舵軸回りに回転する操舵系組立体に加えられる操舵トルクに基づき前記前輪の直立姿勢が維持されることを特徴とする二輪走行のコンピュータシミュレーション方法。
- 請求項18に記載の二輪走行のコンピュータシミュレーション方法において、前記直立姿勢の維持にあたって、前記操舵系組立体の操舵角に変化が現れると、操舵系組立体には操舵軸回りでその変化を打ち消す回転加速度が加えられることを特徴とする二輪走行のコンピュータシミュレーション方法。
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