JP3787458B2 - 抄紙用ベルト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、オープンタイプの抄紙用シュープレスマシンに用いられるシュープレス用ベルト及びシートトランスファー用ベルトなどの抄紙用ベルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
抄紙用ベルトで、抄紙用シュープレスマシンに用いられるオープンタイプのシュープレスベルトは、図3の如く、トップ(プレス)ロール41とシュー42との間に複数のロール間に保持されたシュープレス用ベルト43を走行させ、該シュープレス用ベルト43上に、トップフェルト44とボットムフェルト45との間に挟んだ湿紙46を乗せ、トップロール41とシュー42との間で形成される圧力を湿紙46に確実に伝えて搾水できるようになっている。
【0003】
また、マシンの高速化を可能にするためのクローズドドローを実現させる目的のシートトランスファー用ベルトは、図4のように使用されている。即ち、湿紙46はフォーミングワイヤー50上に形成され、クーチロール51とターニングロール52との間においてサクショングランドを持つピックアップロール54を廻るピックアップフェルト53によって引き離される。このピックアップフェル53の下側に付いた湿紙46は上部プレスロール57、下部プレスロール56、ピックアップフェルト53及びシートトランスファー用ベルト55との間において形成されるプレスニップNに持ち運ばれる。このプレスニップNにおいて、湿紙46中の水分はピックアップフェルト53に移行する。しかして、プレスニップNの出口側でガイドロール58によって湿紙46がピックアップフェルト53から離される。次いで、湿紙46はシートトランスファー用ベルト55に付着して第二プレスニップN−2へ移動する。このシートトランスファー用ベルト55は表面が平滑で水を通さないのでフェルトを使用する時のようなフェルトから湿紙46への再湿現象は起こらない。この後、湿紙は第二プレスニップN−2において、上部プレスロール60、下部プレスロール(シュー及びプレスベルトの利用もある)61、プレスフェルト59及びシートトランスファー用ベルト55により再度搾水される。湿紙46はこの後、ガイドロール58′によってシートトランスファー用ベルト55から離されてドライパートへ移行して行く。この間、湿紙46はフェルト或いはシートトランスファー用ベルト55に補助されて移動するため紙切れが起こり難く抄速が上げられる。
【0004】
前記オープンタイプの抄紙用シュープレスマシンでは、前記ベルト43が前記シュー42に入る直前に、該ベルト43の内側にオイルスプレー装置47により潤滑油をスプレーし、ベルト43の内面とシュー42との摩擦抵抗を下げられるようにしている。また、このスプレーされた潤滑油はシュー42の出口においてスクレーパー48とオイル掻取ブラシ49で掻き取られる。
【0005】
しかして、前記抄紙用オープンタイプのシュープレスマシンに用いられる抄紙用ベルト(シュープレス用ベルト43)として、古くは、基材層43aの下部(シュー側)にのみ樹脂層43bを形成したタイプのものが多かったが、最近は、耐摩耗性や脱水性向上を考慮し、図6(a)の如く、基材層43aの下部に樹脂層43bを形成する他、表面(フェルト側)にも薄い樹脂層43cを形成したタイプのもの(以下「表面被覆型片面コートベルト」という場合もある)が出現するようになった。一方、クローズドドローを実現させるために使用される抄紙用ベルト(シートトランスファー用ベルト55)としては、前記表面被覆型片面コートベルトの表裏逆もの(以下「裏面被覆型片面コートベルト」という場合もある)が出現するようになった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記オープンタイプのベルトのうち、表面被覆型片面コートベルト及び裏面被覆型片面コートベルトは、製造中の基材層と樹脂層の熱収縮量の差による、いわゆるバイメタル現象により使用中にその両端部A、Bが、図6(a)、(b)の一点鎖線の如く、フェルト側の樹脂層のある方にカールする傾向があった。
【0007】
即ち、樹脂層は一液或いは二液混合により液状で基材層に塗布されるが、硬化すると共に収縮するし、加熱コートタイプの樹脂だと熱膨張した状態でコートされるので、除熱により樹脂の収縮量はさらに大きくなり、ベルト端縁部のカールはなおいっそう大きくなった。
【0008】
前記カールの大きさC1 、C2 は、図5の如く、基材層と樹脂層の組み合わせにより異なるが、通常30〜100mm程度あり、70mm以上になると、図7の如く、スクレーパー48との間にギャップGが生じることから、スクレーパー48による掻き取り性が悪くなる。また、前記カールの長さL1 、L2 は、図5の如く、100mm前後にわたることが経験上認められる。
【0009】
前述の如く、抄紙用ベルトにおいて、スクレーパー48による潤滑油の掻き取りが悪いと、ベルトの内面に残った潤滑油がスクレーパー後方に位置するベルトロール(例えば、図4の符号Rで示す)にぶつかり、ロールの遠心力によりオイルミストとなり、マシン周辺に飛散し、オイルの使用量が増大してコスト高になると共にマシン周辺のオイル汚れ、排水へのオイルの混入の問題を引き起こす結果となった。
【0010】
また、ベルト両端部が、図6(a)、(b)の一点鎖線の如く、カールしていると、ガイドパームへのベルトの端縁部の当たりが不安定となり、ベルト走行性に影響することがある上に、ベルトをマシンに掛け入れる際してロールのベルト掛け入れ側端部にベルトの耳部が引っかかり掛け入れに時間を要するなど、各種の問題が生じていた。
【0011】
なお、抄紙用ベルトに関しては、特公昭63−38477号、特開平4−82988号特開平5−311591号、特公平3−64639号及び特公昭63−15398号があるが、何れも両端縁部のカールに関する知見はない。
【0012】
本発明は、上記種々の課題を解決するためのもので、その目的とするところはオープンタイプ用のベルトでは表面被覆型片面コートベルトの基材層と樹脂層の熱収縮量の差、並びに、シートトランスファー用ベルトでは裏面被覆型片面コートベルトの基材層と樹脂層の熱収縮量の差により生ずるベルト端縁部のカールを減少させるか無くすことのできる抄紙用ベルトを提供することにある。
【0013】
【問題点を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、マシン走行時の基材層の上部或いは下部に薄い樹脂層を形成し、前記樹脂層に対応する下部或いは上部に厚い樹脂層をそれぞれ形成してなる抄紙用ベルトにおいて、前記厚い樹脂層の中央部に対する幅方向両端部を、その端縁で0.0mmの厚さになるように中央側から連続的テーパー状、あるいは複数段階で連続的テーパー状に研磨したことを特徴とし、表面被覆型片面コートベルト或いは裏面被覆型片面コートベルトでのバイメタル現象が起こり難くなるように構成した。
【0014】
【発明の実施の態様】
次に、本発明の実施の態様を、図1〜図2に示す図面に基づいて説明する。即ち、本願ベルト1は、図1(a)の如く、基材層2の表面に薄い樹脂層3aを、下部に厚い樹脂層3bをそれぞれ形成してなり(表面被覆型片面コートベルト)、前記厚い樹脂層3bの幅方向両端部A、Bを中央部Cよりも薄く形成してなる。
【0015】
また、本願ベルト1は、図1(b)の如く、基材層2の裏面に薄い樹脂層3aを、上部に厚い樹脂層3bをそれぞれ形成してなり(裏面被覆型片面コートベルト)、前記厚い樹脂層3bの幅方向両端部A、Bを中央部Cよりも薄く形成してなる。
【0016】
前記基材層2は、例えば、経糸・緯糸共、0.4mmφポリエステルモノフィラメント糸を、中間部(充填糸)にポリエステルマルチフィラメント糸(3000d)を使用し、組織を3/1、1/3芯入り二重織により形成したものを用いている。
【0017】
前記表面被覆型片面コートベルトにおける下部の厚い樹脂層3b、及び裏面被覆型片面コートベルトにおける上部の厚い樹脂層3bは、ウレタン樹脂を使用して満足できる。前記幅方向両端部A、Bを中央部Cよりも薄く形成したのは、いわゆるバイメタル現象が起こり難くするためである。該両端部A、Bを中央部Cよりも薄く形成する方法としては研磨機を利用して研磨することが好ましい。勿論、研磨以外の手段があればそれを利用することは自由である。
【0018】
【実施例1】
上層に横方向に配列した0.4mmφポリエステルモノフィラメント糸、中層に縦方向に配列した0.4mmφポリエステルモノフィラメント糸、下層に横方向に配列した6000dのポリエステルマルチフィラメント糸を使用して厚みを2.8mmとした基材層を得、この基材層の片面からウレタン樹脂を含浸塗布させ、基材層を貫通して表面側へ0.2mm浸透させ、さらに基材層に充満させた後、含浸塗布側の樹脂層の厚みが1.5mmになるまで塗布し、その後、熱を加えてウレタン樹脂を硬化させ、硬化後、該樹脂層をベルト全体の厚み4.0mmになるまで研磨し、比較ベルト「イ」(表面被覆型片面コートベルト)を得た〔図2(a)参照:シュープレス用ベルトとして使用するために研磨後裏返しを実施したあとのもの〕。
【0019】
次に、前記比較ベルト「イ」に示す表面被覆型片面コートベルト(及び裏面被覆型片面コートベルト)の幅方向両端部の樹脂層を、その端縁で0.0mm厚とし、該端縁より30mm内側線p1 まで連続的にテーパー状に研磨し、該線p1 より40mm内側線p2 までを水平状に研磨し、該線p2 より30mm内側線p3 (中央部と同じ厚み)まで連続的にテーパー状に研磨する如く、端縁から100mm内側までを3段階で研磨して、本願ベルト「イ」を得た〔図2(b)参照:シュープレス用ベルトとして使用するために研磨後裏返しを実施したあとのもの〕。
【0020】
次に、前記比較ベルト「イ」に示す表面被覆型片面コートベルト(及び裏面被覆型片面コートベルト)の幅方向両端部の樹脂層を、その端縁で0.0mm厚とし、該端部より100mm内側で中央部と同じ厚みになるように連続的にテーパー状に研磨して本願ベルト「ロ」を得た〔図2(c)参照:シュープレス用ベルトとして使用するために研磨後裏返しを実施したあとのもの〕。
【0021】
上記比較ベルト「イ」と、本願ベルト「イ」、「ロ」との端縁部のカール量(図5におけるC1 と、C2 )を測定した処、比較ベルト「イ」が55mmであったのに対し、本願ベルト「イ」で10mm、本願ベルト「ロ」で20mmであった。この結果、ベルト両端部のカールは大幅に改善されたことが判った。
【0022】
また、実機におけるテストにおいても本願ベルト「イ」及び「ロ」は、特に問題がなかった。本願ベルト「イ」、「ロ」は両端部の樹脂層が研磨されているため、該研磨部分がシュー部を通過後、スクレーパーから離反し、オイルを掻き落とせないことが懸念されたが、両端部と中央部の厚み差が小さいこともあり、また、スクレーパーの後に位置するオイル掻取ブラシによって掻き落とされるために問題とならなかった。従って、オイルの飛散がなくなり、オイル使用量が、60L/日→10L/日と大幅に減少した。さらに、走行性やマシンへの掛け入れ性もベルト両端部が内側にカールしていないために良好であった。
【0023】
以上の説明は、裏面に厚い樹脂層がある場合であるが、逆に表面に厚い樹脂層がある場合においても、同じことが言える。
【0024】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明は、マシン走行時の基材層の上部或いは下部に薄い樹脂層を形成し、前記樹脂層に対応する下部或いは上部に厚い樹脂層をそれぞれ形成してなる抄紙用ベルトにおいて、前記厚い樹脂層の中央部に対する幅方向両端部を、その端縁で0.0mmの厚さになるように中央側から連続的テーパー状、あるいは複数段階で連続的テーパー状に研磨したことを特徴としているから、表面被覆型片面コートベルト及び裏面被覆型片面コートベルトでのバイメタル現象が起こり難く、ベルト両端部のカールは大幅に改善できるという優れた効果を有する。
【0025】
従って、表面被覆型片面コートベルトにおいて、ベルトの両端部にスクレーパーとの間にギャップが生ずることがなく、オイルの掻き落とし性が良好となり、オイルの飛散がなくなり、オイル使用量が大幅に減少する。しかも、表面被覆型片面コートベルト、裏面被覆型片面コートベルトの何れにおいても、走行性やマシンへの掛け入れ性も良好になるなど、各種の優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願ベルトの幅方向の中央部の一部を省略した場合を示す断面図で、(a)は表面被覆型片面コートベルト、(b)は裏面被覆型片面コートベルトである。
【図2】 表面被覆型片面コートベルトの一端部の形体を略示的な実施例1の断面図で、(a)は比較ベルト「イ」、(b)は本願ベルト「イ」、(c)は本願ベルト「ロ」である。
【図3】 抄紙用オープンタイプのシュープレスマシンの略示的説明図である。
【図4】 シートトランスファー用ベルトの使用例を示す略示的説明図である。
【図5】 オープンタイプのシュープレス用ベルトの両端部に生ずるカール量と長さを示す略示的説明図である。
【図6】 従来型のベルト(比較ベルト)の幅方向の中央部の一部を省略した断面図で、(a)は表面被覆型片面コートベルト、(b)は裏面被覆型片面コートベルトである。
【図7】 従来型のベルト(比較ベルト)とスクレーパーとの関係を示す略示的説明図である。
【符号の説明】
1 本願ベルト
2 基材層
3 樹脂層
3a 薄い樹脂層
3b 厚い樹脂層
41 トップ(プレス)ロール
42 シュー
43 オープンタイプのシュープレス用ベルト
43a 基材層
43b 厚い樹脂層
43c 薄い樹脂層
44 トップフェルト
45 ボットムフェルト
46 湿紙
47 オイルスプレー装置
48 スクレーパー
49 オイル掻取ブラシ
50 フォーミングワイヤー
51 クーチロール
52 ターニングロール
53 ピックアップフェルト
54 ピックアップロール
55 シートトランスファー用ベルト
56 下部プレスロール
57 上部プレスロール
58、58′ ガイドロール
59 プレスフェルト
60 上部プレスロール
61 下部プレスロール
A、B 幅方向両端部
C 中央部
G ギャップ
N プレスニップ
N−2 第二プレスニップ
R ベルトロール
p1 ベルト端縁より30mm内側線
p2 線p1 より40mm内側線
p3 線p2 より30mm内側線
Claims (1)
- マシン走行時の基材層の上部或いは下部に薄い樹脂層を形成し、前記樹脂層に対応する下部或いは上部に厚い樹脂層をそれぞれ形成してなる抄紙用ベルトにおいて、前記厚い樹脂層の中央部に対する幅方向両端部を、その端縁で0.0mmの厚さになるように中央側から連続的テーパー状、あるいは複数段階で連続的テーパー状に研磨したことを特徴とする抄紙用ベルト。
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