JP3786105B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ケーシングに固定スクロール及び可動スクロールをもつ圧縮要素と、前記圧縮要素を駆動するモータとを内装したスクロール圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、特開平4−241702号公報に記載されているように、ケーシング内に固定スクロール及び可動スクロールをもつ圧縮要素と、前記圧縮要素を駆動するモータとを内装し、前記ケーシング内に吸入管を開口して、前記ケーシング内を低圧室と成す一方、前記ケーシング内における前記圧縮要素の反モータ側に仕切板を配設して、前記ケーシング内に前記圧縮要素の吐出口が開口し、かつ、外部吐出管が開口する吐出室を区画形成して、該吐出室を前記圧縮要素及びモータが配設される前記低圧室と区画した高圧室と成したものが知られている。
【0003】
即ち、前記公報に記載された従来のスクロール圧縮機は、図8に示すように、ケーシングAの筒状胴部ケーシングA1に、圧縮要素CFを固定するためのハウジングBと、モータMとを固定し、前記胴部ケーシングA1内で、前記ハウジングBの反モータ側に圧縮要素CFを配設して、前記胴部ケーシングA1の反モータ側開放部に蓋状ケーシングA2を圧入により取付け、前記ハウジングBと前記モータMとの間に吸入管Dを開口させて、前記ケーシングA内に前記吸入管Dから流入する吸入ガスを流入させることにより低圧室Eを形成している。
【0004】
さらに、前記蓋状ケーシングA2の開口側端部に仕切板Fを圧入して、前記蓋状ケーシングA2を前記胴部ケーシングA1に圧入により固定することにより前記仕切板Fによって前記ケーシングA内における前記圧縮要素CFの反モータ側に、該圧縮要素CFの吐出口Gが開口し、かつ、外部吐出管Hが開口する高圧室Jを前記低圧室Eと区画形成している。
【0005】
尚、前記高圧室Jに吐出されたガスには通常油が混入しており、ガスと分離され前記高圧室Jに溜った油を前記低圧室Eに戻すために、前記ケーシングA内には、前記高圧室Jと前記低圧室Eとを連通する油戻し管Kを配設している。
【0006】
また、前記仕切板Fは前記蓋状ケーシングA2に圧入により固定しているが、前記仕切板Fには、前記高圧室Jの高圧ガス荷重が掛かるので、前記仕切板Fの外周部における圧縮要素側下面を前記胴部ケーシングA1の端面で支持して、前記仕切板Fに係る高圧の荷重を前記胴部ケーシングA1の端面で受けるようにして位置決め強度を保持している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図8に示す従来のスクロール圧縮機では、前記仕切板Fを配設して前記ケーシングA内を低圧室Eと高圧室Jとに区画しているので、前記ハウジングBとは別に前記仕切板Fが必要となり、それだけ部品点数が増大してコストが掛かるし、また、前記高圧室Jに溜る油を前記低圧室Eに戻すために、わざわざ油戻し管Kを配設しなくてはならないので、更に部品点数が増えることになるのである。
【0008】
また、前記仕切板Fを前記圧縮要素CFの反モータ側に配設して、該圧縮要素CFの反モータ側に前記高圧室Jを形成し、しかも、この高圧室Jに吐出された吐出ガスは、そのまま外部吐出管Hからケーシング外部に吐出されるようにしているから、前記圧縮要素CFから吐出するガスの脈動の軽減及びガスに混入する油の分離が不充分となり、また、脈動の軽減及び油分離を充分行えるようにするためには前記高圧室Jの容積大きくする必要があり、この場合には、前記ケーシングAの全長が長くなって、スクロール圧縮機が大型化するし、圧縮機を縦型に用いる場合には、安定性が悪くなる問題があった。
【0009】
さらに、前記仕切板Fに作用する高圧の荷重を、前記胴部ケーシングA1の端面で受けて支持するようにしていたため、前記仕切板Fの外径を前記胴部ケーシングA1の外径以上の大きさにする必要があり、このため、前記ケーシングAの外径寸法が大きくなる問題もあった。
【0010】
本発明は、以上の問題に鑑みて成したもので、駆動軸を支持し、かつ、圧縮要素を固定するためのハウジングを利用して、前記ケーシング内を低圧室と高圧室とに区画して、ケーシングが大型化することなく、コストも軽減でき、ケーシング内で吐出ガス中に混入する油の分離も充分行え、かつ、圧縮要素の吐出ガス脈動も防止でき、また、吐出ガスによる吸入ガス過熱も少なくできるスクロール圧縮機を提供することにある。さらに、ハウジングで区画する構造でありながら、前記ハウジングのケーシングへの固定を位置決め精度を保持しながら行え、かつ、位置決め強度も向上できるようにすることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明に基づいた一つの局面におけるスクロール圧縮機は、ケーシングに、固定スクロール及び可動スクロールをもつ圧縮要素と、前記圧縮要素を駆動するモータとを内装したスクロール圧縮機において、前記圧縮要素を固定するハウジングにより前記ケーシング内を圧縮要素室とモータ室とに区画して、前記圧縮要素室に吸入管を開口させて低圧室を形成すると共に、前記モータ室に外部吐出管を開口させて高圧室を形成している。
【0012】
また、前記ケーシングを前記低圧室を形成する第1ケーシングと前記高圧室を形成する第2ケーシングとから形成して、この第2ケーシングに前記ハウジングを固定すると共に、前記第1ケーシングに、高低差圧により前記ハウジングにかかる圧力荷重を受ける荷重受け部を設けたのである。
【0013】
さらに、前記第2ケーシングは、開放端部まで同一径に形成し、前記第1ケーシングの開放端部における内周側に、前記第2ケーシングの外径と同径の切欠段部を全周にわたって形成し、前記ハウジングの外周部における圧縮要素室側端部に、前記第2ケーシングの厚みと同じ長さだけ突出する鍔部を形成し、前記鍔部を前記第2ケーシングの端面に係合させた状態で、前記第1ケーシングを前記第2ケーシングに嵌合することにより前記鍔部を前記第1ケーシングの切欠段部に係合させた状態で溶接により前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとを接合する構造を備える。
【0014】
上記目的を達成するため、この発明に基づいた他の局面におけるスクロール圧縮機は、ケーシングに、固定スクロール及び可動スクロールをもつ圧縮要素と、前記圧縮要素を駆動するモータとを内装したスクロール圧縮機において、前記圧縮要素を固定するハウジングにより前記ケーシング内を圧縮要素室とモータ室とに区画して、前記圧縮要素室に吸入管を開口させて低圧室を形成すると共に、前記モータ室に外部吐出管を開口させて高圧室を形成している。
【0015】
また、前記ケーシングを前記低圧室を形成する第1ケーシングと前記高圧室を形成する第2ケーシングとから形成して、この第2ケーシングに前記ハウジングを固定すると共に、前記第1ケーシングに、高低差圧により前記ハウジングにかかる圧力荷重を受ける荷重受け部を設けている。
【0016】
また、前記第2ケーシングは、開放端部まで同一径に設けられ、前記第1ケーシングの開放端部における内周側に、前記第2ケーシングの外径と同径の切欠段部を全周にわたって備え、前記ハウジングの外周部における圧縮要素室側端部に、前記第2ケーシングの厚みと同じ長さだけ突出する鍔部を備え、前記鍔部が前記第2ケーシングの端面に係合し、前記第1ケーシングが前記第2ケーシングに嵌合し、前記鍔部が前記第1ケーシングの切欠段部に係合して、前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとが溶接により接合される構造を備える。
【0017】
上記目的を達成するため、この発明に基づいた他の局面におけるスクロール圧縮機は、ケーシングに、固定スクロール及び可動スクロールをもつ圧縮要素と、前記圧縮要素を駆動するモータとを内装したスクロール圧縮機において、前記圧縮要素を固定するハウジングにより前記ケーシング内を圧縮要素室とモータ室とに区画して、前記圧縮要素室に吸入管を開口させて低圧室を形成すると共に、前記モータ室に外部吐出管を開口させて高圧室を形成し、前記ケーシングを低圧室を形成する第1ケーシングと高圧室を形成する第2ケーシングとから形成して、前記第1ケーシングまたは前記第2ケーシングにハウジングを固定すると共に、前記第1ケーシングに、高低差圧により前記ハウジングにかかる圧力荷重をうける荷重受け部9を設けている。
【0018】
また、前記第2ケーシングは、開放端部まで同一径に設けられ、前記第1ケーシングの開放端部における内周側に、前記第2ケーシングの外径と同径の切欠段部を全周にわたって備え、前記ハウジングの外周部における圧縮要素室側端部に、前記第2ケーシングの厚みと同じ長さだけ突出する鍔部を備え、前記鍔部が前記第2ケーシングの端面に係合し、前記第1ケーシングが前記第2ケーシングに嵌合し、前記鍔部が前記第1ケーシングの切欠段部に係合して、前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとが溶接により接合される構造を備える。
【0019】
【作用】
この発明に基づいたスクロール圧縮機によれば、前記ハウジングを利用して、該ハウジングにより前記ケーシング内を前記圧縮要素室とモータ室とに区画し、しかも、前記圧縮要素室を低圧室に、また、モータ室を高圧室としたから、前記圧縮要素CFを、低圧雰囲気下の前記圧縮要素室に配設でき、従って、高温高圧の吐出ガスによる吸入ガス過熱を少なくできる。
【0020】
さらに、従来のように、前記ケーシング内を前記低圧室と高圧室とに区画するための仕切板を不要にでき、しかも、仕切板だけでなく、油戻し管も不要にできるので、それだけ部品点数の削減及びコストの軽減が図れるのである。
【0021】
また、前記ケーシングを、前記低圧室を形成する第1ケーシングと前記高圧室を形成する第2ケーシングとから形成して、この第2ケーシングに前記ハウジングを固定すると共に、前記第1ケーシングに、高低差圧により前記ハウジングにかかる圧力荷重を受ける荷重受け部を設けたから、前記ハウジングにかかる高圧荷重を前記第1ケーシングの前記荷重受け部で受けることができ、前記ハウジングの前記第2ケーシングへの固定を、位置決め精度の点からスポット溶接などの簡単な溶接により固定させても、前記ハウジングを固定する第2ケーシングとは別の第1ケーシングにより、前記ハウジングを圧力荷重に対して支持でき、従って、前記ハウジングの保持強度を充分確保することができ、この結果、前記ハウジングの位置決め精度を低下させることなく、該ハウジングの保持強度を向上できるのである。
【0022】
また、ケーシングを、前記低圧室を形成する第1ケーシングと前記高圧室を形成する第2ケーシングとから形成して、第1または第2ケーシングに前記ハウジングを固定すると共に、前記第1ケーシングに、高低差圧により前記ハウジングにかかる圧力荷重を受ける荷重受け部を設けることによっても、前記ハウジングを圧力荷重に対して支持でき、従って、前記ハウジングの保持強度を充分確保することができ、この結果、前記ハウジングの位置決め精度を低下させることなく、該ハウジングの保持強度を向上できるのである。
【0023】
さらに、前記第1ケーシング11を前記第2ケーシング12に嵌合したときに、前記第1ケーシング11の外径が第2ケーシング12の外径よりも大きくなってしまうが、前記ハウジング4にかかる高圧の圧力荷重は、前記第1ケーシング11の切欠段部11cにより受けることができるので、前記ハウジング4の位置決め精度が低下することなく、位置決め強度を向上できるのである。
【0024】
【実施例】
図1は、本発明の第1実施例を示すスクロール圧縮機で、第1ケーシング11と第2ケーシング12とから成る密閉ケーシング1に、固定スクロール21及び可動スクロール22から成る圧縮要素CFと、該圧縮要素CFを駆動するモータMとを内装しており、前記第2ケーシング12における前記第1ケーシング11との接合部近くに、前記モータMの駆動軸31を支持し、かつ、前記圧縮要素CFを固定するハウジング4をスポット溶接51により固定すると共に、前記第2ケーシング12における前記ハウジング4の下方に、前記モータMのステータ32を圧入により固定している。
【0025】
そして、前記ハウジング4により、前記ケーシング1内を前記第1ケーシング11で形成され、前記圧縮要素CFを内装する圧縮要素室61と、前記第2ケーシング12で形成され、前記モータMを内装するモータ室62とに区画し、前記圧縮要素室61に吸入管13を開口させて低圧室71を形成すると共に、前記モータ室62に外部吐出管14を開口させて高圧室72を形成している。
【0026】
また、前記圧縮要素CFの固定スクロール21は、前記ハウジング4に固定され、前記可動スクロール22は、前記固定スクロール21と前記ハウジング4との間に介装され、かつ、前記モータMの駆動軸31に連結され、さらに、前記可動スクロール22の外周にオルダムリング23を配設して、前記可動スクロール22を前記駆動軸31の回転により、前記固定スクロール21に対し公転駆動するようにしている。
【0027】
そして、これら各スクロール21,22は、それぞれ鏡板24,24と該鏡板24,24の一側外面に突設された渦巻体25,25とから成り、前記各スクロール21,22をその各渦巻体25,25が互いに噛み合うように上下対設させ、前記固定スクロール21に対する前記可動スクロール22の公転駆動により、前記各渦巻体25,25間に形成される作動空間の容積を変化させ、前記ケーシング1を貫通して前記圧縮要素室61に開口される前記吸入管13から前記作動空間へと吸入されたガス冷媒を圧縮するようにしている。
【0028】
そして、前記低圧室71内で、前記固定スクロール21の鏡板24背面に、該鏡板24に形成される吐出口21aを覆うように、蓋状の仕切体81を取付けて、該仕切体81により、前記低圧室71に対し区画される吐出室8を形成している。さらに、前記吐出室8内には、前記吐出口21aを開閉するための吐出弁82と、該吐出弁82のリフト量を規制する弁押さえ83とを配設しており、前記吐出弁82を配設することにより、圧縮機の停止中に、前記圧縮要素CF内に前記吐出口21aから高圧ガスが流入して、前記各スクロール21,22が逆転したときに、駆動軸31の逆転によって、潤滑油が通常と逆方向に流れてしまって、圧縮機再起動時において、前記ハウジング4の軸受等の潤滑が悪くなるのを防止するようにしている。
【0029】
そして、前記仕切体81の側面に、図1に示すように、内部吐出管15の一端を接続して、前記吐出口21aに連通させる一方、該内部吐出管15を、前記固定スクロール21の外周部に形成する切欠部21bを挿通させることにより、前記低圧室71内を通過させて、その他端を前記ハウジング4に設ける貫通孔41を貫通させて、前記高圧室72に開口させている。
【0030】
尚、図1においては、前記内部吐出管15を、前記固定スクロール21に貫通させるために、該固定スクロール21の外周部に前記切欠部21bを形成したが、前記内部吐出管15を貫通させるための貫通孔を形成するようにしてもよい。
【0031】
そして、前記固定スクロール21に対する可動スクロール22の公転駆動により、前記吸入管13から前記作動空間へと吸入された冷媒を圧縮し、前記固定スクロール21における鏡板24の中央部に形成した吐出口21aから前記吐出室8へと吐出した吐出ガス冷媒を前記内部吐出管15を介して前記高圧室72へ吐出させた後、前記外部吐出管14を介してケーシング外部に吐出するようにしている。
【0032】
また、前記高圧室72に開口させる前記外部吐出管14は、前記ハウジング4と前記モータMとの間に開口させると共に、該外部吐出管14の内部開口端を前記ケーシング1の内面より内方に突出させるのである。
【0033】
さらに、前記ハウジング4の前記高圧室72側底面には、前記外部吐出管14の内部開口端を受入可能とした受入凹部42を形成して、該受入凹部42に、前記外部吐出管14を、その内部開口端が前記受入凹部42の側壁に近接するように挿入させて、前記外部吐出管14が前記駆動軸31のバランスウエイト33に対向しないようにしており、前記バランスウエイト33の回転によって遠心力を受けた吐出ガスが前記ケーシング内周面に衝突して油分離された後、前記外部吐出管14に流入するようにしている。
【0034】
尚、図1において、前記可動スクロール22の背面側に、吸入ガス冷媒が吸入される低圧側に対しシールして背圧室26を形成するシールリング27を配設している。
【0035】
また、図1及び図2に示すように、前記第1ケーシング11の外径を前記第2ケーシング12の外径より小さくし、前記第1ケーシング11の開放側端部を、前記第2ケーシング12の内側に挿入して、前記前記第1ケーシング11と第2ケーシング12の接合部を前記ケーシング1の外部から全周にわたって溶接52することにより、前記第1ケーシング11と第2ケーシング12とを密閉状に接合するようにしている。
【0036】
即ち、前記第1ケーシング11及び第2ケーシング12は、その接合部において、前記第1ケーシング11では、開放端部における外周面全周に該第1ケーシング11の外径より小径の段部からなる第1接合部11aを、また、前記第2ケーシング12では、その開放端部の内周面に該第2ケーシング12の内径より大径で、前記第1ケーシング11の第1接合部11aの外径とほぼ同径の段部から成る第2接合部12aを形成して、前記第1接合部11aと第2接合部12aとを対向させるようにして、前記第1ケーシング11を第2ケーシング12内に挿入して、第1ケーシング11と前記第2ケーシング12とを全周にわたって溶接52して固定するのである。
【0037】
さらに、前記ハウジング4の低圧室側端面における外周部に、前記第1ケーシング11の前記第1接合部11aの端面を受け入れる段部43を外周全周に亙って形成するのである。
【0038】
従って、前記第2ケーシング12に前記ハウジング4を、該ハウジング4の段部43が前記第2ハウジング4の第2接合部12aに対向するようにしてスポット溶接51により固定した後、前記第1ケーシング11を前記第2ケーシング12の内周に挿入する際に、前記第1ケーシング11の開放側端面を前記ハウジング4の前記段部43に当接させた状態で溶接52により固定するようにして、前記第1ケーシング11の開放側端面で、前記高圧室72と低圧室71との高低差圧により前記ハウジング4にかかる圧力荷重を受けるようにしており、前記第1ケーシング11の前記端面を前記圧力荷重を受けるための荷重受け部9としたのである。
【0039】
しかして、以上のように、前記圧縮要素CFを固定するハウジング4を利用して、該ハウジング4により前記ケーシング1内を圧縮要素室61とモータ室62とに区画して、前記圧縮要素室61に吸入管13を開口させて低圧室71を形成すると共に、前記モータ室62に外部吐出管14を開口させて高圧室72を形成する一方、前記圧縮要素CFの吐出口21aに内部吐出管15を連通させて、該内部吐出管15を、前記ハウジング4を貫通させ、前記高圧室72に開口させたから、即ち、前記ハウジング4を利用して、該ハウジング4により前記ケーシング1内を前記圧縮要素室61とモータ室62とに区画し、しかも、前記圧縮要素室61を低圧室71に、また、モータ室62を高圧室72としたから、前記圧縮要素CFを、低圧雰囲気下の前記圧縮要素室61に配設でき、従って、高温高圧の吐出ガスによる吸入ガス過熱を少なくでき、かつ、前記圧縮要素CFから吐出された吐出ガスを大きな容積を有する前記モータ室62に一旦吐出させた後、前記外部吐出管14からケーシング外部に吐出させることができるので、吐出ガスの脈動を軽減できると共に、吐出ガスに混入する油を充分分離することもできながら、従来のようにケーシングの長手方向一側に容積の大きい高圧室を形成する必要もないことから、前記ケーシング1の全長寸法が長くなるのを防止できるのである。
【0040】
さらに、従来のように、前記ケーシング1内を前記低圧室71と高圧室72とに区画するための仕切板を不要にでき、しかも、仕切板だけでなく、油戻し管も不要にできるので、それだけ部品点数の削減及びコストの軽減が図れるのである。
【0041】
また、前記低圧室71に前記固定スクロール21の前記吐出口21aが開口する吐出室8を区画形成し、この吐出室8に前記内部吐出管15を接続したから、前記吐出室8内で、前記圧縮要素CFから吐出したガスの脈動を一次的に軽減できるし、また、前記吐出室8に図1に示したように、吐出弁82を配設することも可能となるので、前記各スクロール21,22の運転停止時の逆転を防止して、前記ハウジング4の軸受等の潤滑不良も防止できるのである。
【0042】
さらに、前記ケーシング1を、前記低圧室71を形成する第1ケーシング11と前記高圧室72を形成する第2ケーシング12とから形成して、この第2ケーシング12に前記ハウジング4を固定すると共に、前記第1ケーシング11に、高低差圧により前記ハウジング4にかかる圧力荷重をうける荷重受け部9を設けたから、前記ハウジング4にかかる高圧荷重を前記第1ケーシング11の前記荷重受け部9で受けることができるから、前記ハウジング4の前記第2ケーシング12への固定を、位置決め精度の点からスポット溶接などの簡単な溶接により固定させても、前記ハウジング4を固定する第2ケーシング12とは別の第1ケーシング11により、前記ハウジング4を圧力荷重に対して支持でき、従って、前記ハウジング4の保持強度を充分確保することができ、この結果、前記ハウジング4の位置決め精度を低下させることなく、該ハウジング4の保持強度を向上できるのである。
【0043】
しかも、第1実施例では、前記第1ケーシング11を前記第2ケーシング12の内側に固定し、前記第1ケーシング11の端面に、前記ハウジング4にかかる圧力荷重を受けて、該ハウジング4を支持する前記荷重受け部9を設けたから、前記ハウジング4の外径を前記第2ケーシング12の内径より小径にでき、従って、前記ケーシング1の全体の外径を小径にできながら、前記ハウジング4にかかる高圧の圧力荷重を前記第1ケーシング11の端面に形成する前記荷重受け部9で受けられるので、圧縮機が径方向に大型化することなく、しかも、前記ハウジング4の前記ケーシング1への保持強度も向上できるのである。
【0044】
尚、前記第1実施例では、前記低圧室71に前記吐出室8を形成したが、該吐出室8は設けることなく、前記内部吐出管15を直接前記吐出口21aに接続するようにしても差し支えない。斯くするときは、前記低圧室71をより小さくすることができるので圧縮機をより小さくすることが可能と成る。
【0045】
また、前記第1ケーシング11の外径を前記第2ケーシング12の外径より小さくする他の実施例として、図3に示す第2実施例のようにしてもよい。第2実施例では、前記ハウジング4は、低圧室側端面における外周部全周にわたり形成する段部43を有する前記第1実施例と同様のものを用い、前記第1ケーシング11は開放端部まで同一の径に形成しており、また、前記第2ケーシング12の開放端部は、前記第1ケーシング11の外周に嵌合できるように拡径させて、該拡径部12bを前記第1ケーシング11に嵌合した状態で溶接52を行うのである。
【0046】
斯くすることにより、前記ハウジング4に高圧の圧力荷重がかかったときには、前記段部43が前記第1ケーシング11の端面に係合させられるので、この第1ケーシング11の端面で圧力荷重を受けることができるのであり、前記第1ケーシング11の端面を荷重受け部9と成すことができるのである。
【0047】
従って、第2実施例においても、前記ケーシング1の上部が大きくなることなく、前記第1ケーシング11で、前記ハウジング4の圧力荷重を受けることができるのである。
【0048】
次に、第3実施例について説明する。図4に示す第3実施例は、前記第1ケーシング11と前記第2ケーシング12とを同一径に形成すると共に、これら第1及び第2ケーシング11,12の端面間にハウジング4を介装したものである。
【0049】
具体的には、前記第1ケーシング11と第2ケーシング12とを同一径に形成すると共に、前記第1ケーシング11及び第2ケーシング12の開放部内側にそれぞれ切欠段部11c,12cを内周全周にわたり形成する一方、前記ハウジング4の外周部における圧縮要素室側端部に、前記各切欠段部11c,12cに係合可能な径方向外方に突出する大径部44を形成して、前記第2ケーシング12の前記切欠段部12cに前記ハウジング4の大径部44を係合させた状態で前記ハウジング4を前記第2ケーシング12にスポット溶接51により固定した後、前記第1ケーシング11を、該第1ケーシング11の前記切欠段部11cと前記ハウジング4の大径部44とを係合させて前記第1ケーシング11の端面を前記第2ケーシング12の端面に付き合わせた状態で外周全周にわたり溶接して接合するのである。
【0050】
斯くすることにより、前記ハウジング4に前記モータ室62の高圧の圧力荷重がかかったときに、該ハウジング4の前記大径部44を前記第1ケーシング11の前記切欠段部11cで受けることができるのであって、該第1ケーシング11の切欠段部11cを前記ハウジング4にかかる圧力荷重をうける荷重受け部9と成すことができるのである。
【0051】
以上のように、第3実施例によれば、前記第1ケーシング11と第2ケーシング12とを同径に形成しているので、前記ケーシング1全体が大型化することなく、しかも、各ケーシング11,12が同径であっても、前記第1ケーシング11の切欠段部11cによって形成される荷重受け部9により前記ハウジング4にかかる高圧荷重を受けることができるのであるから、該ハウジング4を前記第2ケーシング12への位置決め精度を低下させることなく、位置決め強度も向上できるのである。
【0052】
また、前記第1ケーシング11と第2ケーシング12とを同径とする他の実施例を、図5に示す第4実施例により説明すると、第4実施例は、前記第1ケーシング11と第2ケーシング12とは、単に同一径に形成するだけであって、前記ハウジング4の外周面における圧縮要素室側に、径方向外方に前記各ケーシング11,12の厚みと同じ長さだけ突出する鍔部45を形成して、該鍔部45を挟持するように、前記第1ケーシング11と第2ケーシング12とを付き合わせた状態で、前記鍔部45と共に、溶接52により前記各ケーシング11,12を接合するのである。
【0053】
斯くすることにより、前記ハウジング4に前記モータ室62の高圧の圧力荷重がかかったときに、該ハウジング4の前記鍔部45を前記第1ケーシング11の端面で受けることができるのであって、該第1ケーシング11の端面を前記ハウジング4にかかる圧力荷重をうける荷重受け部9と成すことができるのである。
【0054】
以上のように、第4実施例によっても、前記第1ケーシング11と第2ケーシング12とを同径に形成しているので、前記ケーシング1全体が大型化することなく、しかも、各ケーシング11,12が同径であっても、前記第1ケーシング11の端面によって形成される荷重受け部9により前記ハウジング4にかかる高圧荷重を受けることができるのであるから、該ハウジング4を前記第2ケーシング12への位置決め精度を低下させることなく、位置決め強度も向上できるのである。
【0055】
さらに、第4実施例の変形として、図6に示す第5実施例のようにしてもよい。第5実施例は、前記各ケーシング11,12の径は、同一径とし、前記ハウジング4の外周部で、圧縮要素室側端部に、前記各ケーシング11,12の径より大径の張り出し部46を形成し、該張り出し部46の両側端面に、前記第1ケーシング11と第2ケーシング12との端部が嵌合される溝46a,46aを形成して、該溝46a,46aに前記各ケーシング11,12の端部を嵌合した状態で前記各ケーシング11,12と前記張り出し部46とを二箇所の溶接52,52により固定するものである。
【0056】
また、前記ハウジング4の圧力荷重を前記第2ケーシング12により受ける他の実施例として、図7に示す第6実施例のようにしてもよい。第6実施例は、前記第2ケーシング12は、開放端部まで同一径に形成すると共に、前記第1ケーシング11の開放端部における内周側に、前記第2ケーシング12の外径と同径の切欠段部11cを全周にわたって形成する一方、前記ハウジング4の外周部における圧縮要素室側端部に、前記第2ケーシング12の厚みと同じ長さだけ突出する鍔部45を形成して、該鍔部45を前記第2ケーシング12の端面に係合させた状態で、前記第1ケーシング11を前記第2ケーシング12に嵌合することにより前記鍔部45を前記第1ケーシング11の切欠段部11cに係合させた状態で溶接52に前記各ケーシング11,12を接合するのである。
【0057】
従って、第6実施例では、前記第1ケーシング11を前記第2ケーシング12に嵌合したときに、前記第1ケーシング11の外径が第2ケーシング12の外径よりも大きくなってしまうが、前記ハウジング4にかかる高圧の圧力荷重は、前記第1ケーシング11の切欠段部11cにより受けることができるので、前記ハウジング4の位置決め精度が低下することなく、位置決め強度を向上できるのである。
【0058】
【発明の効果】
この発明に基づいたスクロール圧縮機によれば、前記ハウジングを利用して、該ハウジングにより前記ケーシング内を前記圧縮要素室とモータ室とに区画し、しかも、前記圧縮要素室を低圧室に、また、モータ室を高圧室としたから、前記圧縮要素CFを、低圧雰囲気下の前記圧縮要素室に配設でき、従って、高温高圧の吐出ガスによる吸入ガス過熱を少なくできる。
【0059】
さらに、従来のように、前記ケーシング内を前記低圧室と高圧室とに区画するための仕切板を不要にでき、しかも、仕切板だけでなく、油戻し管も不要にできるので、それだけ部品点数の削減及びコストの軽減が図れるのである。
【0060】
さらに、前記ハウジングにかかる高圧荷重を前記第1ケーシングの前記荷重受け部で受けることができ、前記ハウジングの前記第2ケーシングへの固定を、位置決め精度の点からスポット溶接などの簡単な溶接により固定させても、前記ハウジングを固定する第2ケーシングとは別の第1ケーシングにより、前記ハウジングを圧力荷重に対して支持でき、従って、前記ハウジングの保持強度を充分確保することができ、この結果、前記ハウジングの位置決め精度を低下させることなく、該ハウジングの保持強度を向上できるのである。
【0061】
また、ケーシングを、前記低圧室を形成する第1ケーシングと前記高圧室を形成する第2ケーシングとから形成して、第1または第2ケーシングに前記ハウジングを固定すると共に、前記第1ケーシングに、高低差圧により前記ハウジングにかかる圧力荷重を受ける荷重受け部を設けることによっても、前記ハウジングを圧力荷重に対して支持でき、従って、前記ハウジングの保持強度を充分確保することができ、この結果、前記ハウジングの位置決め精度を低下させることなく、該ハウジングの保持強度を向上できるのである。
【0062】
さらに、前記第1ケーシングを前記第2ケーシングに嵌合したときに、前記第1ケーシングの外径が第2ケーシングの外径よりも大きくなってしまうが、前記ハウジングにかかる高圧の圧力荷重は、前記第1ケーシングの切欠段部により受けることができるので、前記ハウジングの位置決め精度が低下することなく、位置決め強度を向上できるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のスクロール圧縮機における第1実施例を示す圧縮機の上部縦断面図。
【図2】 同第1実施例の要部拡大断面図。
【図3】 第2実施例の要部拡大断面図。
【図4】 第3実施例の要部拡大断面図。
【図5】 第4実施例の要部拡大断面図。
【図6】 第5実施例の要部拡大断面図。
【図7】 第6実施例の要部拡大断面図。
【図8】 従来のスクロール圧縮機を示す部分断面図。
【符号の説明】
1 ケーシング、4 ハウジング、8 吐出室、9 荷重受け部、11 第1ケーシング、12 第2ケーシング、13 吸入管、14 外部吐出管、15 内部吐出管、21 固定スクロール、21a 吐出口、22 可動スクロール、61 圧縮要素室、62 モータ室、71 低圧室、72 高圧室、CF 圧縮要素、M モータ。
Claims (3)
- ケーシング(1)に、固定スクロール(21)及び可動スクロール(22)をもつ圧縮要素(CF)と、前記圧縮要素(CF)を駆動するモータ(M)とを内装したスクロール圧縮機において、
前記圧縮要素(CF)を固定するハウジング(4)により前記ケーシング(1)内を圧縮要素室(61)とモータ室(62)とに区画して、前記圧縮要素室(61)に吸入管(13)を開口させて低圧室(71)を形成すると共に、前記モータ室(62)に外部吐出管(14)を開口させて高圧室(72)を形成し、
前記ケーシング(1)を低圧室(71)を形成する第1ケーシング(11)と高圧室(72)を形成する第2ケーシング(12)とから形成して、
この第2ケーシング(12)にハウジング(4)を固定すると共に、前記第1ケーシング(11)に、高低差圧により前記ハウジング(4)にかかる圧力荷重をうける荷重受け部(9)を設け、
前記第2ケーシング(12)は、開放端部まで同一径に形成し、
前記第1ケーシング(11)の開放端部における内周側に、前記第2ケーシング(12)の外径と同径の切欠段部(11c)を全周にわたって形成し、
前記ハウジング(4)の外周部における圧縮要素室側端部に、前記第2ケーシング(12)の厚みと同じ長さだけ突出する鍔部(45)を形成し、
前記鍔部(45)を前記第2ケーシング(12)の端面に係合させた状態で、前記第1ケーシング(11)を前記第2ケーシング(12)に嵌合することにより前記鍔部(45)を前記第1ケーシング(11)の切欠段部(11c)に係合させた状態で溶接(52)により前記第1ケーシング(11)と前記第2ケーシング(12)とを接合する構造を備える、スクロール圧縮機。 - ケーシング(1)に、固定スクロール(21)及び可動スクロール(22)をもつ圧縮要素(CF)と、前記圧縮要素(CF)を駆動するモータ(M)とを内装したスクロール圧縮機において、
前記圧縮要素(CF)を固定するハウジング(4)により前記ケーシング(1)内を圧縮要素室(61)とモータ室(62)とに区画して、前記圧縮要素室(61)に吸入管(13)を開口させて低圧室(71)を形成すると共に、前記モータ室(62)に外部吐出管(14)を開口させて高圧室(72)を形成し、
前記ケーシング(1)を低圧室(71)を形成する第1ケーシング(11)と高圧室(72)を形成する第2ケーシング(12)とから形成して、
この第2ケーシング(12)にハウジング(4)を固定すると共に、前記第1ケーシング(11)に、高低差圧により前記ハウジング(4)にかかる圧力荷重をうける荷重受け部(9)を設け、
前記第2ケーシング(12)は、開放端部まで同一径に設けられ、
前記第1ケーシング(11)の開放端部における内周側に、前記第2ケーシング(12)の外径と同径の切欠段部(11c)を全周にわたって備え、
前記ハウジング(4)の外周部における圧縮要素室側端部に、前記第2ケーシング(12)の厚みと同じ長さだけ突出する鍔部(45)を備え、
前記鍔部(45)が前記第2ケーシング(12)の端面に係合し、前記第1ケーシング(11)が前記第2ケーシング(12)に嵌合し、前記鍔部(45)が前記第1ケーシング(11)の切欠段部(11c)に係合して、前記第1ケーシング(11)と前記第2ケーシング(12)とが溶接(52)により接合される構造を備える、スクロール圧縮機。 - ケーシング(1)に、固定スクロール(21)及び可動スクロール(22)をもつ圧縮要素(CF)と、前記圧縮要素(CF)を駆動するモータ(M)とを内装したスクロール圧縮機において、
前記圧縮要素(CF)を固定するハウジング(4)により前記ケーシング(1)内を圧縮要素室(61)とモータ室(62)とに区画して、前記圧縮要素室(61)に吸入管(13)を開口させて低圧室(71)を形成すると共に、前記モータ室(62)に外部吐出管(14)を開口させて高圧室(72)を形成し、
前記ケーシング(1)を低圧室(71)を形成する第1ケーシング(11)と高圧室(72)を形成する第2ケーシング(12)とから形成して、
前記第1ケーシング(11)または前記第2ケーシング(12)にハウジング(4)を固定すると共に、前記第1ケーシング(11)に、高低差圧により前記ハウジング(4)にかかる圧力荷重をうける荷重受け部(9)を設け、
前記第2ケーシング(12)は、開放端部まで同一径に設けられ、
前記第1ケーシング(11)の開放端部における内周側に、前記第2ケーシング(12)の外径と同径の切欠段部(11c)を全周にわたって備え、
前記ハウジング(4)の外周部における圧縮要素室側端部に、前記第2ケーシング(12)の厚みと同じ長さだけ突出する鍔部(45)を備え、
前記鍔部(45)が前記第2ケーシング(12)の端面に係合し、前記第1ケーシング(11)が前記第2ケーシング(12)に嵌合し、前記鍔部(45)が前記第1ケーシング(11)の切欠段部(11c)に係合して、前記第1ケーシング(11)と前記第2ケーシング(12)とが溶接(52)により接合される構造を備える、スクロール圧縮機。
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