JP3785424B2 - ざくろの乳酸発酵飲料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ざくろの乳酸発酵飲料に関する。さらに詳しくは、原料であるざくろを無駄なく活用し、かつ飲み易くて嗜好性がよく、薬用効果が高いざくろの乳酸発酵飲料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、野菜や果実はジュースにして広く飲用されている。それらの中に薬効を期待して飲まれるものも多い。ざくろジュースはその一つであり、ざくろには女性ホルモンの1種であるエストロゲンが含有していることから、ヒトの更年期障害に対する効果が指摘され、その消費が増加している。しかし、ざくろジュースにはざくろの果実が用いられ、加工時に搾り粕の種子が大量に廃棄されている。
【0003】
一方、乳酸菌を用いた野菜・果実汁の乳酸発酵飲料が風味や物性の改善、保蔵性の向上、保健効果等の目的で多岐に渡って利用されている。しかし、ざくろの種子を利用した乳酸発酵飲料については知られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、従来廃棄されていたざくろ果汁の絞り粕を有効に活用し、しかも薬用効果が高く、飲み易い新規なざくろの飲料を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ざくろのジュースを製造するに当たって従来廃棄されていた搾り粕である種子の水抽出物が乳酸菌を失活せず効率よく乳酸発酵でき、発酵飲料になることを突き止めるとともに、ざくろ前記種子水抽出物にざくろ果汁を加えて発酵すると飲み易く、かつ驚くべきことに相乗的に薬効が向上されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、ざくろ種子水抽出物及びざくろ果汁を主成分として含む乳酸発酵用原液を乳酸菌により乳酸発酵させて得られる発酵液を含有することを特徴とするざくろの乳酸発酵飲料である。
【0007】
本発明は、さらに、ざくろ種子水抽出物、ざくろ果汁及びオリゴ糖を含む乳酸発酵用原液を乳酸菌により乳酸発酵させて得られる発酵液を含有することを特徴とするざくろの乳酸発酵飲料である。
【0008】
前記ざくろ種子水抽出物とざくろ果汁との混合割合は、ざくろ種子水抽出物をざくろ種子の乾燥粉末100gを1000mlの水によって抽出し、ろ過したろ液からなるざくろ種子水抽出液に換算し、またざくろ果汁をBRIX値65±1のざくろ果汁を10倍(容量)に稀釈したざくろ果汁に換算したとき、質量比で6/4〜2/8であることが好ましい。
【0009】
本発明のざくろの乳酸発酵飲料は糖吸収抑制作用を有する。
【0010】
さらに本発明のざくろの乳酸発酵飲料の製造方法は、ざくろ種子水抽出物及びざくろ果汁を主成分として含む乳酸発酵用原液を加熱殺菌した後、冷却し、これに活性化した乳酸菌を添加し、培養して乳酸発酵して得ることが好適である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳述する。
【0012】
本発明のざくろの乳酸発酵飲料は、ざくろ種子水抽出物及びざくろ果汁を主成分として含む乳酸発酵用原液を、乳酸菌により乳酸発酵させて得られる発酵液を含有することを特徴とする。
【0013】
本発明において用いられるざくろ種子水抽出物及びざくろ果汁を採取するざくろは、ざくろ科のざくろで、学名プニカ グラナトウム(Punica granatum)の落葉高木である。
【0014】
まず、本発明において用いられる乳酸発酵用原液について詳述する。本発明のざくろの乳酸発酵飲料に用いる乳酸発酵用原液は、ざくろ種子水抽出物及びざくろ果汁を主成分とする。
【0015】
本発明において用いられるざくろ種子水抽出物としては、ざくろの種子を水を用いて常法により抽出したものである。ざくろの種子としては、例えば一般的にざくろジュースとして飲用されている果汁を搾った搾り粕を利用して用いるのが効率的である。以下にざくろ種子水抽出物の製造例を示す。
【0016】
(製造例)
ざくろ種子であるざくろジュース搾り粕[(株)ナリラン食品(テヘラン市)社製]を40℃、48時間乾燥後、粉砕した。この粉末100gに300mlの蒸留水を加えて2分間ホモゲナイズ(Polytron,PCU)後1000mlとし、2時間室温に放置後、5℃で24時間撹拌抽出を行った。次いで、二重ガーゼでろ過を行い,得られたろ液をざくろ種子水抽出液とした。次いで、重曹にてpHを6.5〜7.0に調整した。
【0017】
なお、本発明においては、前記製造例に示したざくろ種子の乾燥粉末100gを1000mlの水によって抽出し、ろ過したろ液からなるざくろ種子水抽出液を「ざくろ種子標準水抽出液」ともいう。
【0018】
本発明において用いられるざくろ果汁としては、ざくろ果実のしぼり汁である。ざくろ果汁はざくろの果実から通常行われる処理方法によって得ることができる。具体的には、例えば、ざくろを洗浄してから皮及び種子を除いた後、加熱し、さらに、遠心処理(搾汁)を行い、次いで殺菌処理を行う方法が挙げられる。
【0019】
このようにして得られるざくろ種子水抽出物及びざくろ果汁は、必要に応じて濃縮してもよく、使用に当たっては、この濃縮液をそのまま、あるいは濃縮液を蒸留水等で適当な濃度に希釈して本発明の乳酸発酵用原料の主成分として用いることが可能である。本発明においては、前記ざくろ種子水抽出物及びざくろ果汁が、乳酸発酵に供されるまでに時間がある場合には、これらをポリエチレン製の袋等に入れ、冷凍庫にて保管することが可能である。乳酸発酵に冷凍品を使用する場合には解凍して使用される。
【0020】
本発明のざくろの乳酸発酵飲料に用いる乳酸発酵用原液中のざくろ種子水抽出物とざくろ果汁の混合割合は任意に選択されるが、ざくろ種子標準水抽出液とBRIX値65±1のざくろ果汁を10倍(容量)に稀釈したざくろ果汁の容量比で好ましくは6/4〜2/8である。さらに好ましくは4/6〜2/8である。ここでBRIX値とは、ショ糖(砂糖)溶液の濃度の単位でざくろ果汁溶液20℃における溶液100g中のショ糖(砂糖)のグラム数である。
【0021】
本発明のざくろの乳酸発酵飲料に用いる乳酸発酵用原液はざくろ種子水抽出物及びざくろ果汁を主成分とするが、本発明の効果を損なわない限りにおいて、ざくろ種子水抽出物及びざくろ果汁以外のその他任意成分を含有することも可能である。
【0022】
この様な任意成分として、例えば、オリゴ糖、ショ糖、フラクトース、グルコース等の糖類、香料、クエン酸、リンゴ酸等の酸類等を挙げることができる。
【0023】
本発明においては、前記任意含有成分のうち糖特にオリゴ糖が好ましく配合される。糖特にオリゴ糖の配合により乳酸菌の発育(増殖)が促進され、また官能的に良好で嗜好性の高い甘味が得られる。
【0024】
次に、乳酸菌により乳酸発酵させて得られる発酵液について詳述する。乳酸発酵に際しては、あらかじめ乳酸発酵用原液を好ましくは90〜120℃程度で加熱殺菌処理されることが好ましい。
【0025】
本発明に用いられる乳酸菌は、乳酸発酵飲料に一般に用いられる乳酸菌のいずれをも用いることができる。具体的には、例えば、ラクトバチルス・ブルガリア菌(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus B-5b)、ラクトバチルス・アシドフィラス菌(Lactobacillus acidophilus L-54)、ストレプトコッカス・サーモフィラス菌(Streptococcus salivarius subsp. thermophilus 510)、ストレプトコッカス・ラクティス菌(Streptococcus lactis subsp. lactis 527)等である。これらの乳酸菌は、種菌として例えば(財)日本乳業技術協会から入手することができる。乳酸発酵に先だって、これらの乳酸菌は、常法により10%脱脂乳培地にて数回培養を繰り返し、各菌の活性を高めた後、これらをスターターの調製に使用する。
【0026】
本発明のざくろの乳酸発酵飲料に用いる発酵液の乳酸発酵は常法により行うことができるが、例えば、ざくろ種子水抽出液及びざくろ果汁を主成分として含む乳酸発酵用原液に乳酸菌スターターを添加して培養する。より具体的には、ざくろ種子水抽出物及びざくろ果汁を主成分として含む乳酸発酵用原液を加熱殺菌した後、冷却し、これに活性化した乳酸菌スターターを添加して培養し乳酸発酵する。好ましい乳酸菌スターターの添加量は、乳酸発酵用原液100mlに対して2ml程度である。また、培養は、25〜45℃程度で5〜25時間程度、好ましくは、35〜40℃程度で10〜20時間程度、最も好ましくは37℃で15時間、恒温器にて静置培養を行うことが好ましい。
【0027】
このようにして得られる発酵液は、前記発酵液中に含まれる乳酸菌自体も有用であるため、菌体を含有したまま本発明のざくろ乳酸発酵飲料に用いることが可能である。あるいは、発酵液から乳酸菌の菌体を濾過や遠心分離等により除去して、これを本発明のざくろ乳酸発酵飲料に用いることも可能である。
【0028】
本発明のざくろの乳酸発酵飲料には、本発明の効果を損なわない限り、ビタミンなどの各種栄養素等、一般に飲料物に用いられるような添加物を加えてもよい。これにより、更に栄養価が高く、栄養バランスに優れ、良好な香味を呈するざくろの乳酸発酵飲料とすることができる。
【0029】
【実施例】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0030】
(マザースターターの調製)
(財)日本乳業技術協会より入手した凍結乾燥されたラクトバチルス・ブルガリア菌(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus B-5b)、ラクトバチルス・アシドフィラス菌(Lactobacillus acidophilus L-54)、ストレプトコッカス・サーモフィラス菌(Streptococcus salivarius subsp. thermophilus 510)、ストレプトコッカス・ラクティス菌(Streptococcus lactis subsp. lactis 527)4菌株の脱脂乳培養物(ガラス瓶に封入されている。)から以下のようにしてマザースターター(Mother starter)を調製した。
【0031】
(1)ガラス瓶の外側を70%アルコール綿で消毒した。
(2)ラジオペンチを70%アルコール綿で消毒した後、アミルシールを取り外した。
(3)ゴム栓を70%アルコール綿で消毒した後取り出し、直ちに滅菌したピペットを用いて下記(7)で作成した脱脂乳培地5mlを加え、取り出したゴム栓をもう一度してからガラス瓶をよく振り、溶解させた。
(4)溶解後、ラクトバチルス・ブルガリア菌、ラクトバチルス・アシドフィラス菌及びストレプトコッカス・サーモフィラス菌の各菌は、37℃で18時間培養し、ストレプトコッカス・ラクティス菌は、30℃で18時間培養した。培養後、培地全体がヨーグルト状になり菌がよく発育していることを確認した。
(5)このようにして各乳酸菌が充分発育したガラス瓶中の培養内容物を、滅菌ピペットで2〜3滴を10mlの別な脱脂乳培地に採り、もう一度(4)と同じ条件で培養した。
(6)この操作を、さらに上記の条件で2回繰り返すと、菌の活性が高まり、生活力旺盛なマザースターターが得られた。
(7)脱脂乳培地は、脱脂乳(抗菌剤を含まない脱脂乳を使用)10gに、蒸留水90mlを加えて混合、溶解した後、121℃、15分間高圧滅菌したものを使用た。すなわち、綿栓(又はシリコーン栓)を予め150〜180℃で30分程度乾熱滅菌したものに約10mlの還元脱脂乳を分注し、オートクレーブで3日間断熱殺菌(121℃、10分)した。
【0032】
次に、滅菌したシリコーン栓付の大型三角フラスコに還元脱脂乳培地を採り殺菌し、冷却後、2%のマザースターターを添加、よく撹拌して37℃に保存し、凝固とともに取り出して使用時まで冷蔵した。(酸度チェック:約0.7%)
【0033】
(ざくろ種子水抽出液中での乳酸菌発育試験)
本発明のざくろの乳酸発酵飲料調製に先立って、ざくろ種子水抽出液中における乳酸菌の発育状態を調べた。前記ざくろ種子標準水抽出液100mlを90℃、60分間殺菌後、30〜40℃に冷却後、ラクトバチルス・ブルガリア菌のマザースターター2ml添加し、該マザースターター添加(0時間)から4時間おきに24時間までの乳酸菌数とpH値を測定した。培養時間によって乳酸菌数は大きく違うので時間に応じて試料を106〜1011までの10倍段階希釈して使用した。時間に応じて3段階の希釈液を用い、各希釈試料液を1mlずつ各2枚のシャーレに分注後、BCP加プレートカウント寒天培地を用いて混釈平板を作製した。寒天が固まったら倒置し、培養は35〜37℃で72時間±3時間行った。培養後のBCP加プレートカウント寒天培地中に発生した黄色集落を一般生菌数に従って計測し、試料1ml当たりの乳酸菌数を算定した。pH値はガラス電極器を用い測定した。
【0034】
結果を表1、図1に示した。
【0035】
【表1】
【0036】
表1、図1から分かるように、乳酸菌数(生菌数)は4時間値から直線的に増加し、12時間値では最大値の6.2×109に達し、0時間値に対して200倍以上も増加した。一方、pH値は時間とともに緩やかに低下し続け、16時間値以降では4.0以下に低下した。このことから、ざくろ種子水抽出液中では乳酸菌が充分に発育可能であることが分かった。
【0037】
(オリゴ糖添加時における乳酸菌の発育試験)
オリゴ糖添加時に対する乳酸菌の発育および甘味について検討するため、前記ざくろ種子標準水抽出液100mlにオリゴ糖(ビートオリゴ糖;日本甜菜製菓株式会社製)0、1、3および5g添加し、前記ざくろ種子水抽出液中での乳酸菌発育試験と同様にして4時間おき24時間後まで乳酸菌数とpH値を測定した。また、この4添加区について培養15時間のとき試飲して甘味について検討した。
【0038】
結果を表2、図2に示した。
【0039】
【表2】
【0040】
表2、図2から分かるように、乳酸菌数(生菌数)は12時間値まではオリゴ糖添加の濃度の違いによる差は見られなかったが、それ以降における生菌数には違いが見られ、オリゴ糖の添加量が多いほど緩やかな低下曲線を示した。pH値はオリゴ糖3g、5g添加区で24時間値ではそれぞれ4.24、3.97となり、より速やかに低下した。また、培養15時間のとき4添加区について試飲した結果、5g添加区で顕著な甘味が感じられ、オリゴ糖の添加効果が顕著に見られた。
【0041】
(ざくろ果汁中での乳酸菌発育試験)
ざくろ果汁中における乳酸菌の発育を調べた。BRIX値65±1のざくろ果汁を10倍(容量)に稀釈した果汁100mlにオリゴ糖5gを加え、前記ざくろ種子水抽出液中での乳酸菌発育試験と同様にして4時間おきに24時間後まで乳酸菌数とpH値を測定した。
【0042】
結果を表3、図3に示した。
【0043】
【表3】
【0044】
表3、図3から分かるように、乳酸菌数(生菌数)は8時間で5.5×109と低下したが、12時間では1.5×1013と最も高い値を示し、増加がみられた。16時間では12時間と比べ低下していたが、それ以降大きな変化は見られなかった。pH値は全時間帯を通して約3.42と一定であった。このことから、ざくろ果汁中においても乳酸菌が発育可能であることが分かった。
【0045】
(乳酸発酵飲料の調製)
表4に示したA〜Fの配合処方の乳酸発酵飲料を試作した。マザースターター及び香料以外の原料を混合溶解し、溶け残った固形分をろ過(さらし布)することで取り除いた。次に、85〜90℃、60分加熱殺菌し、直ちに30〜40℃まで流水で冷却した。完全に冷却が終った後、これにマザースターターと香料を添加しよく混合した。次いで、乾熱滅菌した容器に分注して37℃、15時間培養し乳酸発酵飲料を得た。
【0046】
【表4】
【0047】
*1:BRIX値65±1のざくろ果汁を10倍(容量)に稀釈した果汁
*2:ビートオリゴ糖(日本甜菜製菓株式会社製)
*3:ラクトバチルス・ブルガリア菌のマザースターター
*4:レモン、オレンジ、バニラエッセンスを1:1:2の割合で混合
*5:スキムミルク(森永乳業株式会社製)
*6:ネオソフトAR−75(太陽化学株式会社製)
【0048】
(乳酸発酵飲料の評価)
前記乳酸発酵飲料の調製によって得られた試作品A〜Fの発酵前後のpH値及び官能試験を行い、本発明の乳酸発酵飲料の評価を行った。なお、官能評価は以下のようにして行った。
【0049】
(官能評価法)
製造した乳酸発酵飲料を使い12人のパネラーによる官能評価を行った。味の強さ(甘み、酸味)、香りのよさ、色のよさ、さらに全体の総合評価を5段階の整数で表現した。
【0050】
結果を表5に示した。なお、評価点は12人の平均値として示した。
【0051】
【表5】
【0052】
表中、×は官能評価を実施しなかったことを表す。
【0053】
表5から分かるように、試作品Aについては、スキムミルクと安定剤がそれぞれ分離し沈殿物ができたため官能評価を実施しなかった。試作品Bについての官能評価は、すべての項目で低い値となり、特に香りの良さについては1点と最低値を示した。試作品C、D、E及びFは、ざくろ種子標準水抽出液にざくろ果汁を加えたものである。官能評価はざくろ果汁添加により甘みを強く感じられ多くの項目で評点が高くなった。特に、総合点が試作品E及びFで3点以上示した。
【0054】
なお、発酵飲料試作品Eに対する乳酸菌の生育とpH値の変化を、前記ざくろ種子水抽出液中での乳酸菌発育試験と同様にして測定し、表6、図4に示した。
【0055】
【表6】
【0056】
表6、図4から分かるように、乳酸菌数(生菌数)は8時間値で9.7×1010と4時間値1.0×1012に比べて低下していたが、12時間値では最も高い値の2.0×1014と増加した。16時間値では4.9×1010と低下したが、20時間値では1.7×1012と増加し、それ以降は特に変化は見られなかった。pH値は16時間値まで約4.57と変化は見られなかったが、それ以降、緩やかに低下した。
【0057】
(糖負荷試験による乳酸発酵飲料の評価)
前記乳酸発酵飲料の調製によって得られた試作品Eの糖負荷試験を行った。比較として水、ざくろ種子標準水抽出液、ざくろ果汁(BRIX値65±1のざくろ果汁を10倍(容量)に稀釈した果汁)についても行った。なお、糖負荷試験は以下の方法で行った。
【0058】
(糖負荷試験方法)
4週令のWistar系雄ラット(n=6)を用い、実験前日より一晩絶食させた後、経口的ブドウ糖負荷試験を無麻酔下で行った。被験液に水(コントロール)、乳酸発酵飲料試作品E、ざくろ種子標準水抽出液、ざくろ果汁(BRIX値65±1のざくろ果汁を10倍(容量)に稀釈した果汁)を用い、そのままの濃度で使用した。被験液に溶解した25質量%のブドウ糖液を用いて、ブドウ糖が体重Kg当たり2gになるよう経口的にゾンデで胃内へ投与し、血糖値は投与前、投与後10分、20分、30分、60分、120分に尾静脈より採取し血糖測定機器デキスターZII(Bayer社)を用いて測定した。ブドウ糖負荷試験は、すべて同一ラットを用いて1日おきに追跡実験を行った。
【0059】
結果を、表7〜8、図5〜6に示した。表7、図5に糖負荷試験の結果を示した。また、表8、図6には糖負荷試験の結果を投与前値に対する百分率で示した。
【0060】
【表7】
【0061】
値は平均値±SD、単位(mg/100ml)
【0062】
【表8】
【0063】
値は平均値±SD、各項目の*印のついた値はコントロールに有意差があることを示す。*p<0.05、**p<0.01、単位(%)
【0064】
表8、図6から分かるように、コントロールでは投与後10分で180%近くまで上昇し、以後次第に低下していき、120分後には投与前値にもどり、典型的な血糖値曲線を描いた。発酵飲料試作品E、ざくろ種子標準水抽出液、ざくろ果汁(BRIX値65±1のざくろ果汁を10倍(容量)に稀釈した果汁)もこれと同様に投与後10分後にピークとなったが、発酵飲料試作品Eの血糖値は約135%とコントロールより45%と低く、20、30、60分後でも有意に低く推移した。ざくろ種子標準水抽出液は全時間通して有意差は見られなかったが、10分後ではコントロールより低い傾向であった。ざくろ果汁(BRIX値65±1のざくろ果汁を10倍(容量)に稀釈した果汁)は、10、20分後ではコントロールより低い傾向であったが、有意差は認められなかった。しかし、30分後に大きく下降し、30、60分後では有意にコントロールより低い値を示した。以上のことより、発酵飲料試作品Eに糖吸収抑制作用があることが分かる。このことから、発酵飲料試作品Eは血糖値の上昇を抑え、糖尿病予防に大きな期待がもたれる。
【0065】
なお、以上の実施例において、乳酸菌はラクトバチルス・ブルガリア菌を用いた結果を示したが、他のラクトバチルス・アシドフィラス菌、ストレプトコッカス・サーモフィラス菌及びストレプトコッカス・ラクティス菌の各菌を用いても同様の結果が得られた。
【0066】
【発明の効果】
以上、詳述したように本発明によれば、従来廃棄されていたざくろ果汁の絞り粕種子を有効に利用した新規なざくろの発酵飲料が得られる。該発酵飲料は飲み易く、しかも薬用効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】ざくろ種子水抽出液に対する乳酸菌の生育とpH値の変化を示す図である。
【図2】ざくろ種子標準水抽出液にオリゴ糖を添加した時の乳酸菌数とpH値の推移を示す図である。
【図3】ざくろ果汁に対する乳酸菌の生育とpH値の変化を示す図である。
【図4】乳酸発酵飲料試作品Eに対する乳酸菌の生育とpH値の変化を示す図である。
【図5】乳酸発酵飲料試作品Eの糖負荷試験の結果を示す図である。
【図6】乳酸発酵飲料試作品Eの糖負荷試験の結果を投与前値に対する百分率で示した図である。
Claims (4)
- ざくろ種子水抽出物及びざくろ果汁を主成分として含む乳酸発酵用原液を乳酸菌により乳酸発酵させて得られる発酵液を含有することを特徴とするざくろの乳酸発酵飲料。
- ざくろ種子水抽出物、ざくろ果汁及びオリゴ糖を含む乳酸発酵用原液を乳酸菌により乳酸発酵させて得られる発酵液を含有することを特徴とするざくろの乳酸発酵飲料。
- 糖吸収抑制作用を有する乳酸発酵飲料である請求項1又は2記載のざくろの乳酸発酵飲料。
- ざくろ種子水抽出物及びざくろ果汁を主成分として含む乳酸発酵用原液を加熱殺菌した後、冷却し、これに活性化した乳酸菌を添加し、培養して乳酸発酵することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のざくろの乳酸発酵飲料の製造方法。
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