JP3784868B2 - 医薬用水和物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、式(1)
【0002】
【化1】
で示される3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾールの二塩酸塩であって水分子を含有する水和物およびその製造方法、さらに人もしくは動物の治療的処置のためまたは医薬品製剤の製造のための当該水和物の使用に関する。
【0003】
【従来の技術】
ある種のインダゾール誘導体が抗不安活性や抗痙攣活性等の中枢神経作用を有することは、例えば米国特許第3,362,956号に開示されている。また、ある種のピペラジン誘導体がカルモジュリン阻害作用を有することは Arzneim.-Forsch., 37(4), 498 - 502(1987) に記載がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
式(1)で示される化合物は新規化合物であり、その塩や水和物も同様に新規化合物である。この式(1)で示される化合物およびその塩類は強力なカルモジュリン阻害作用を示し、各種の脳障害動物モデルにおいて優れた脳保護作用を示すことが判明した。従ってこの化合物は、カルモジュリンの過剰な活性化によってひきおこされる各種疾患や虚血性脳疾患、脳変性疾患、外傷性脳疾患、薬物中毒、および低酸素等によってもたらされる脳障害等の予防・治療薬として期待される。
【0005】
式(1)の化合物の塩酸塩・無水物は、遊離塩基を有機溶媒および塩酸との混合物から晶析処理して調製することができる。しかしながらこのようにして得られた無水物は、晶析時に使用した有機溶媒を結晶中に含み、しかもこの結晶中に含まれた溶媒は減圧下で加熱乾燥しても容易には除去できないことが判明した。例えばエタノールを使用した場合、結晶に含まれるエタノールの含有量は 18000から 33000 ppmと多量かつ広い幅の値であった。さらにこの結晶中に含まれる溶媒の含有量の予測および一定量への制御が困難なことも明らかとなった。
【0006】
一方、晶析時の溶媒にメタノールを使用した場合も得られた式(1)の化合物の塩酸塩・無水物はメタノールを含有していたが、この結晶は数日間以上に亙って減圧下に加熱(120℃)乾燥することで含まれるメタノールをほぼ除去することが可能であった。しかし、このようにしてメタノールを除去して得られた塩酸塩・無水物は、室温において環境湿度に応じて吸湿する性質を示した(湿度が高ければ吸湿し、湿度が低ければ逆に水分を放出する性質を示した。図1)。
【0007】
このように式(1)の化合物の塩酸塩・無水物の結晶は種々の問題を生じるために製剤化が困難であり、医薬品原体として不適当であることが判明した。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は上記の欠点を有さず、貯蔵にも安定な医薬品原体として優れた特性を有する3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・塩酸塩を提供することにある。発明者らはこの課題を解決するべく鋭意研究を実施した。
【0009】
その結果、驚くべきことに3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・塩酸塩の水和物は塩酸塩・無水物が示した欠点を有さず、しかも通常の環境条件下の保存には完全に安定であることが見い出された。この結晶は次の式(2)
【0010】
【化2】
で示される3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩・3.5水和物の結晶形である(以下では単に、二塩酸塩・3.5水和物と称することもある。)。
【0011】
すなわち本発明は、次のX線回折特性を実質的に有することを特徴とする、3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩の結晶に関するものである。
【0012】
【表3】
【0013】
さらに本発明は、3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩の結晶が3.5水和物である上記の結晶に関する。
【0014】
また本発明は、3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩・3.5水和物の製造方法であって、
(a) 遊離体の3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾールを水の存在下に塩酸と処理するか、
または、
(b) 3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩・3.5水和物よりも少ない水和物および/または塩酸塩である3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・塩酸塩・水和物を水または/および塩酸で処理するか、
または、
(c) 製造すべき3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩・3.5水和物より多くの水和物および/または塩酸塩である3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・塩酸塩・水和物から水および/または塩酸を除去するかまたは、
(d) 塩酸塩以外の3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾールの塩を水および塩酸の存在下に処理する
ことを含んでなる製造方法に関する。
【0015】
そして本発明は、次のX線回折特性を実質的に有することを特徴とする、3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩の製造方法であって、
(a) 遊離体の3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾールを水の存在下に塩酸と処理するか、
または、
(b) 3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩・3.5水和物よりも少ない水和物および/または塩酸塩である3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・塩酸塩・水和物を水または/および塩酸で処理するか、
または、
(c) 製造すべき3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩・3.5水和物より多くの水和物および/または塩酸塩である3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・塩酸塩・水和物から水および/または塩酸を除去するかまたは、
(d) 塩酸塩以外の3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾールの塩を水および塩酸の存在下に処理する
ことを含んでなる製造方法に関する。
【0016】
【表4】
【0017】
さらに本発明は、3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩の結晶が3.5水和物である上記の製造方法に関する。
【0018】
また本発明は、遊離体の3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾールを水の存在下に塩酸と処理することを特徴とする上記の製造方法に関する。
【0019】
そして本発明は、3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩・3.5水和物よりも少ない水和物および/または塩酸塩である3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・塩酸塩・水和物を水または/および塩酸で処理することを特徴とする上記の製造方法に関する。
【0020】
さらに本発明は、製造すべき3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩・3.5水和物より多くの水和物および/または塩酸塩である3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・塩酸塩・水和物から水および/または塩酸を除去することを特徴とする上記の製造方法に関する。
【0021】
また本発明は、塩酸塩以外の3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾールの塩を水および塩酸の存在下に処理することを特徴とする上記の製造方法に関する。
【0022】
一方、本発明は3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩・3.5水和物;
動物もしくは人体の治療的処置方法に用いられる上記の化合物;
カルモジュリンの過剰発現によって引き起こされる疾患の治療に用いられる上記の化合物;
脳疾患の治療に用いられる上記の化合物または上記の結晶;
医薬製剤の製剤用の上記の化合物または上記の結晶の使用;
脳疾患の治療用の医薬製剤の製造のための上記の化合物または上記の結晶の使用;
3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩・3.5水和物、および、
医薬として許容され得る少なくとも1種の担体
を含有する医薬;
次のX線回折特性を実質的に有する、3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩の結晶、および、
医薬として許容され得る少なくとも1種の担体
を含有する医薬
【0023】
【表5】
3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩の結晶が3.5水和物である上記の医薬;
医薬がカルモジュリンの過剰発現によって引き起こされる疾患の治療に用いるものである上記の医薬;
医薬が脳疾患の治療に用いるものである上記の医薬;
にも関する。
【0024】
【発明の実施の態様】
以下に本発明を詳細に説明する。
驚くべきことに本発明の、式(2)で示される、3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩・3.5水和物は以下の性状を有することが見い出された。すなわち、該水和物は25℃において、約20%から約80%の範囲で相対湿度を変化させても、粉末X線回折パターン、あるいは水分含量に関する検知可能な変化は生じなかった(図2)。また、乾熱条件(50℃、ビン密栓、1ヶ月)、湿熱条件(40℃、湿度75%、1ヶ月)においても外観変化をほとんど認めず、かつ含量変化をも認めなかった(HPLCによる定量)。
【0025】
このようなことから式(1)の化合物の二塩酸塩・3.5水和物(式(2) で表される)は良好な保存安定性を有していることが明らかである。したがって、この水和物は変化なく長期に亙る貯蔵が可能なことを意味する。特にこの水和物は3.5水和物として含有されている以上の水分子を吸着することはなく、その結果、医薬としての有効成分の含量は保存期間中に変化することがない。さらに、無水物の如く有機溶媒を結晶中に含まないことも判明した。
【0026】
この式(2)の二塩酸塩・3.5水和物の結晶はその粉末X線回折パターンによって特徴づけることができるが、例えば図3のスペクトルを示し、またその特徴的なピークは表6として示される。
【0027】
さらに式(2)の二塩酸塩・3.5水和物は、その元素分析によって特徴づけられており、これは分子式C26H31ClN6O2・2HCl・3.5H2O(分子量:631.00)の理論値と一致した。
・理論値; C, 49.49%; H, 6.39%; N, 13.32%; Cl, 16.86%
・実測値; C, 49.22%; H, 6.38%; N, 13.09%; Cl, 16.85%
【0028】
また、式(2)の二塩酸塩・3.5水和物の水分含量はカールフィッシャー法によって測定され、理論値と一致した。
【0029】
理論値: 9.99%
実測値:10.53%
【0030】
さらに式(2)の二塩酸塩・3.5水和物は図4の熱分析によって特徴づけられる。
【0031】
式(2)の二塩酸塩・3.5水和物は下記に示す方法から選ばれる方法で調製することができる。すなわち、
(a) 遊離体の3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾールを水の存在下に塩酸と処理する方法。
(b) 製造すべき3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩・3.5水和物よりもより少ない水和物および/または塩酸塩である3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・塩酸塩・水和物を水または/および塩酸で処理する方法。
(c) 製造すべき3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩・3.5水和物より多くの水和物および/または塩酸塩である3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・塩酸塩・水和物から水および/または塩酸を、例えば中和や乾燥等の方法によって、除去する方法。
(d) 塩酸塩以外の3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾールの塩を水および塩酸の存在下に処理することによって調製する方法。この場合には必要であれば一旦遊離体の化合物を得た後に処理を行えばよい。
【0032】
上記の処理を行なう場合において必要であれば有機溶媒を使用することもできる。この様な溶媒としてはアルコール類を使用するのが最も一般的であり、一方毒性面から考え、エタノールまたはプロパノールが好ましいが、より好ましくはエタノールである。
【0033】
処理を行なうとは、目的とする塩酸塩・水和物の結晶を生成させるために原料となる化合物に対して水の存在下に塩酸を反応させることである。これは懸濁状態でも行なうことができるが、通常は溶液状態として行なうことが望ましい。またこの際に、活性炭を加える等して精製操作を加えることもできる。
【0034】
二塩酸塩よりも多い塩酸を含む塩酸塩や、塩酸以外の酸付加塩を中和する際にはアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩あるいはアルコキサイド等を溶液中で作用させて中和すればよい。この後、必要であれば抽出操作を行う等し、通常使用される方法によって遊離体化合物を得ることができる。
【0035】
過剰の塩酸(塩化水素)または水を含む結晶の場合、その性状によっては中和や乾燥等では目的の結晶を得るよりも、一旦遊離体を得た後に目的物に変換する方が簡便なことも考えられる。
【0036】
遊離体や塩酸の少ない結晶を二塩酸塩に変換する際に使用する塩酸の量は、等当量から3倍当量の範囲で使用すればよいが、通常は1.5当量から2当量の範囲で使用すればよい。使用する水の量は、使用する結晶の重量に対して2倍から20倍程度使用すればよい(粗結晶1gに対して水2mlの割合で使用するときが2倍である。)が、好ましくは3倍から5倍の範囲である。
【0037】
二塩酸塩・3.5水和物の好ましい製法は、遊離体である式(I)の化合物に適量の1規程塩酸と水とを加え、加熱溶解して均一溶液を得た後撹拌下で室温にて冷却し、目的物を結晶化させる方法である。
【0038】
本発明の二塩酸塩・3.5水和物は経口投与でその効果を発揮するだけでなく、その水に対する溶解特性から非経口投与、とりわけ静脈内投与、でも効果を発揮することができる。したがって、経口および非経口のいずれの方法でも投与することができる。
【0039】
本発明化合物の二塩酸塩・3.5水和物の投与量は患者の症状、年齢、体重等によって適宜増減してよい。一般的には、経口投与の場合、成人一人当り一日量として1mgから1000mgの範囲でよく、好ましくは10mgから500mg程度である。投与剤型としては錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等を挙げることができる。これらは通常の賦形剤、滑沢剤、結合剤等の添加物と共に公知の製剤技術によって製造できる。また非経口投与の場合、成人一人あたり一日量として1mgから500mgの範囲でよく、好ましくは10mgから250mg程度であるが、これを皮下静脈内注入あるいは点滴静脈内注入すればよい。
【0040】
本発明の式(2)で示される二塩酸塩・3.5水和物を含む薬剤は、他の薬剤と組み合わせて使用することによって各種疾病の予防および治療に相加的および相乗的効果が期待できる。例えば、脳循環改善薬(マレイン酸シネパジド等)、脳代謝改善薬(イデベノン、インデロキサジン等)、向精神薬(チミペロン等、イミプラミン等、ジアゼパム等)、頭蓋内圧下降剤(グリセオール等)、抗高血圧薬、血管拡張薬(トラピジル等)、解熱鎮痛消炎剤、抗炎症ステロイド剤、抗血小板薬(チクロピジン等)、抗凝固薬(ヘパリン等)、線溶誘導薬(ティッシュー プラスミノーゲン アクチベ−タ等)、利尿薬、抗高脂血薬(プロブコール等)、消化性潰瘍治療剤、血液代用剤、肝臓疾患用剤、抗悪性腫瘍剤等を挙げることができる。
【0041】
[製剤例]
本発明の二塩酸塩・3.5水和物は通常知られた方法によって製剤化が可能である。次に処方例を示して具体的に説明するが本発明がこれに限定されないことはもとよりである。処方例には実施例3で調製された化合物を用いた処方を示した。
【0042】
[製剤例1]
(1) 実施例3の化合物 10 g
(2) 乳糖 50 g
(3) トウモロコシデンプン 15 g
(4) ヒドロキシプロピルセルロース 8 g
(5) カルボキシメチルスターチナトリウム 7 g
(6) ステアリン酸マグネシウム 1 g
【0043】
上記の(1)、(2)、(3)および(5)を流動層造粒機に入れて均一に混合し、(4)の 6% 水溶液を結合液として使用して造粒し顆粒化する。これに(5)を加え、均一に混合して打錠用混合末とする。これを用い、(1)を 100 mg 含有する直径 8 mm の錠剤100錠とする。
【0044】
[製剤例2]
(1) 実施例3の化合物 2 g
(2) 0.1規定塩酸 150 ml
(3) ブドウ糖 50 g
(4) 注射用蒸留水 適量(下記参照)
【0045】
上記の(1)、(2)および(3)を混合して溶解し、さらに注射用蒸留水を加えて全量を 1000 mlとする。この溶液を 0.2μm のフィルターで除菌濾過した後、10 ml 用アンプルに 10 mlずつ分注する。
【0046】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がこれに限定されないことはもとよりである。
【0047】
[参考例1] エチル 5,6- ジメトキシ -1-(1- トリチル -4- イミダゾリル)メチル -1H- インダゾール -3- カルボキシレート
エチル 5,6-ジメトキシインダゾール-3-カルボキシレート(250.2 g)をジメチルスルホキシド(5000 ml)に懸濁し、リチウムメトキサイド(40.2 g)を加え室温で撹拌した。室温で1時間撹拌した後、4-クロロメチル-1-トリチルイミダゾール(447.8 g)のジメチルスルホキシド(2000 ml)溶液を室温で、10分間で滴下した。このまま室温で2時間撹拌した後、リチウムメトキサイド(4.2 g)、と4-クロロメチル-1-トリチルイミダゾール(44.8 g)を加え、更に室温で1時間撹拌したところ、薄層クロマトグラフィー(クロロホルム/エタノール=30/1)上で原料のスポットがほぼ消失したことが観察された。反応液を氷水(30000 ml)の中に撹拌しながら注ぎ込むと、結晶が析出した。この結晶を吸引濾過して集め、水(2000 ml x 3)で洗浄して風乾した。これをクロロホルム(10000 ml)に溶解し、溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過後、溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラム(クロロホルム/エタノール=50/1)で分離精製し、クロロホルム−イソプロピルアルコールで再結晶し、無色プリズム晶(融点:184 - 186℃)、222.0 gを得た。
【0048】
IR(KBr)cm-1:1704, 1496, 1268, 1146, 1132, 1092, 748, 700
1H-NMRδ(ppm, CDCl3):
1.21(6H,d,J=5.9Hz, Me of iso-PrOH),1.46(3H,t,J=7.3Hz),3.93(3H,s), 3.97(3H,s),4.01(1H,m,CH of iso-PrOH),4.49(2H,q,J=7.3Hz),5.61(2H,s), 6.79(1H,s),7.03(5H,m),7.13(1H,s),7.28(10H,m),7.47(1H,s),7.51(1H,s).
【0049】
[参考例2] 5,6- ジメトキシ -1-(1- トリチル -4- イミダゾリル)メチル -1H- インダゾール -3- メタノール
乳鉢で粉末状に砕いたエチル 5,6-ジメトキシ-1-(1−トリチル-4-イミダゾリル)メチル)-1H-インダゾール-3-カルボキシレート(222.0 g)を室温下テトラハイドロフラン(1300 ml)に懸濁した後、氷水で冷却した。これにソディウムビスメトキシエトキシアルミニウムハイドライド(3.4Mトルエン溶液、約 250.0 ml)を15分で加え氷冷下撹拌した。30分後薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=2/1)上で原料のスポットがほぼ消失したことが観察された。反応液に過飽和硫酸ナトリウム水溶液を加えて1時間撹拌した後、硫酸ナトリウムを加えて濾過した。この際濾過器上の硫酸ナトリウムを熱クロロホルム(500 ml x 5)で洗った。濾液と洗液を合わせて溶媒を減圧留去し、無色の固体(220.1 g)を得た。これをクロロホルムから再結晶し、無色プリズム晶 181.0 gを得た。(融点:115 - 120℃(dec.))
【0050】
IR(KBr)cm-1: 3216, 3172, 3008, 2936, 1510, 1488, 1472, 1444, 1302, 1260, 1172, 1156, 1128, 1102, 1036, 1014, 836, 764,746, 702, 678, 666, 6361H-NMRδ(ppm, CDCl3):
3.91(3H,s),3.92(3H,s),4.92(2H,s),5.44(2H,s),6.76(1H,s),6.95(1H,s), 7.05(5H,m),7.26(1H,s,CHCl3),7.28(1H,s),7.31(10H,m),7.46(1H,s)
【0051】
[参考例3] 3- クロロメチル -5,6- ジメトキシ -1-(1- トリチル -4- イミダゾリル)メチル -1H- インダゾール
乳鉢で粉末状にした5,6-ジメトキシ-1-(1-トリチル-4-イミダゾリル)メチル-1H-インダゾール-3-メタノール(180.0 g)をジクロロメタン(1700 ml)に室温で懸濁した。懸濁後、反応液を氷冷下に冷却撹拌した。ここに塩化チオニル 48.6 mlを5分間で滴下した。1分後、薄層クロマトグラフ(クロロホルム/エタノール=30/1)上で原料のスポットがほぼ消失したことが観察された。反応液を飽和重曹水(2000 ml)に注ぎ、クロロホルム(5000 ml)で抽出後、抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、減圧留去し、無色の固体を得た(165.1 g)。この固体はこのまま次の反応に用いた。
【0052】
1H-NMRδ(ppm, CDCl3):
3.95(3H,s),4.09(3H,s),4.83(2H,s),5.67(2H,s),7.02(8H,m), 7.37(10H,m),7.88(1H,br)
【0053】
[参考例4] 5,6- ジメトキシ -1-(1- トリチル -4- イミダゾリル)メチル -1H- インダゾール -3- アセトニトリル
3-クロロメチル-5,6-ジメトキシ-1-(1-トリチル-4-イミダゾリル)メチル-1H-インダゾール(165.0 g)をジメチルスルホキシド(1200 ml)に懸濁し、室温で撹拌した。ここに乳鉢で粉末状にしたシアン化カリウム(43.6 g)を加えた。反応液を70℃で1時間撹拌したところ、反応液が均一透明になり、薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=2/1)上で原料のスポットがほぼ消失したことが観察された。反応液を室温まで戻し、水(15000 ml)に激しく撹拌しながら注ぎ、そのまま1時間撹拌した。析出した固体を吸引濾過して集め、水(1000 ml x 3)で洗浄した後、クロロホルム(5000 ml)に溶解し、この溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過後、溶媒を減圧留去した。得られた残留物をシリカゲルカラム(酢酸エチル)で分離精製して淡褐色の固体 108.7 gを得た。この固体はこのまま次の反応に用いた。
【0054】
1H-NMRδ(ppm, CDCl3):
3.92(3H,s),3.94(3H,s),3.97(2H,s),5.42(2H,s),6.79(1H,s),7.00(1H,s), 7.02(1H,s),7.06(5H,m),7.30(10H,m),7.46(1H,S)
【0055】
[参考例5] 5,6- ジメトキシ -1-(1- トリチル -4- イミダゾリル)メチル -1H- インダゾール -3- アセティック アシッド
5,6-ジメトキシ-1-(1-トリチル-4-イミダゾリル)メチル-1H-インダゾール-3-アセトニトリル(107.0 g)をエタノール(1000 ml)に室温で懸濁した。ここに10N-水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム 40.0 g、水 100 mlより調製)を加え加熱還流した。6時間後、薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル)上で原料のスポットがほぼ消失したことが観察された。反応液を室温まで戻した後、水(5000 ml)に注いだ。これを10%塩酸水溶液でpHを3−4に調節すると無色の固体が析出した。これを濾過して集め、水(500 ml x 3)で洗浄した。得られた固体をクロロホルム(5000 ml)に溶解し、この溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過後、溶媒を減圧留去した。得られた固体 134.0 gはこのまま次の反応に用いた。
【0056】
1H-NMRδ(ppm, CDCl3):
3.84(3H,s),3.87(3H,s),3.89(2H,s),5.43(2H,s),6.76(1H,s),6.88(1H,s), 6.93(1H,s),7.03(5H,m),7.28(10H,m),7.48(1H,S)
【0057】
[参考例6] 4-(3- クロロ -2- メチルフェニル )-1-[[5,6- ジメトキシ -1-(1- トリチル -4- イミダゾリル)メチル -1H- インダゾール -3- イル]アセチル]ピペラジン 5,6-ジメトキシ-1-(1-トリチル-4-イミダゾリル)メチル-1H-インダゾール-3-アセティックアシッド(134.0 g)をジクロロメタン(1000 ml)に懸濁させた。ここに2,2-ジピリジルジスルフィド(63.5 g)とトリフェニルホスフィン(75.6 g)を加え、室温で撹拌した(懸濁液が均一溶液になった)。ここに4-(3-クロロ-2-メチルフェニル)ピペラジン(60.7 g)のジクロロメタン(200 ml)溶液を5分で滴下し、このまま室温で5時間撹拌した。薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=3/1)上で原料のスポットがほぼ消失したことが観察された。反応液のジクロロメタンを減圧留去し、得られた残留物に熱酢酸エチルを加え撹拌したところ固体が析出した。これを吸引濾過して集め、酢酸エチル(500 ml x 2)で洗浄後風乾し、無色の固体 140.4 gを得た。この固体をシリカゲルカラム(クロロホルム/エタノール=30/1)で分離精製し無色固体 134.9 gを得た。これをエタノールから再結晶し無色プリズム晶 120.0 g(m.p.103 - 105℃)を得た。
【0058】
IR(KBr)cm-1: 1646, 1628, 1508, 1466, 1450, 1430, 1260, 750, 702
1H-NMRδ(ppm, CDCl3):
1.23(1.2H,t,J=6.8Hz, Me of EtOH),2.28(3H,s),2.55(2H,m),2.73(2H,m),
3.67(4H,m),3.71(0.8H,q,J=6.8Hz, CH2 of EtOH),3.90(3H,s),3.93(3H,s), 4.03(2H,s),5.43(2H,s),6.68(1H,s),6.72(1H,d,J=8.3Hz),6.90(1H,s), 7.03(7H,m),7.14(1H,s),7.27(10H,m),7.41(1H,S)
元素分析
理論値 C45H43N6O3Cl・0.4EtOH・H2O;C 70.10%;H 5.70%;N 10.70%;Cl 4.72%
実測値 ;C 70.02%;H 5.78%;N 10.60%;Cl 5.11%
【0059】
[実施例1] 3-[2-[4-(3- クロロ -2- メチルフェニル )-1- ピペラジニル]エチル ]-5,6- ジメトキシ -1-(4- イミダゾリルメチル )-1H- インダゾール
4-(3-クロロ-2-メチルフェニル)-1-[[[5,6-ジメトキシ-1-(1-トリチル-4-イミダゾリル)メチル]インダゾール-3-イル]アセチル]ピペラジン(120.0 g)をテトラハイドロフラン(1000 ml)に懸濁した。これに 1.0M-ボランテトラハイドロフランコンプレックス(800 ml)を加え、加熱還流した。90分後薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル)上で原料のスポットがほぼ消失したことが観察された。反応液を室温まで冷やし、水(30 ml)を加え過剰の試薬を分解した。テトラハイドロフランを減圧留去した後、残留物に濃塩酸(150 ml)、水(200 ml)、エタノール(40 ml)を加え50℃で1時間撹拌した。この水層を室温に戻し炭酸カリウムでアルカリ性にしてクロロホルム(3000 ml)で抽出し、この有機層を硫酸ナトリウムで乾燥して、濾過後、溶媒を減圧留去した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/エタノール=40/1)で分離精製し、無色固体を得た。これをイソプロピルアルコール−イソプロピルエーテルで再結晶し、無色プリズム 71.0 gを得た(融点:143 - 144.5℃)。
【0060】
IR(KBr)cm-1:1510, 1464, 1432, 1272, 1238, 1206, 1006
1H-NMRδ(ppm, CDCl3):
2.34(3H,s),2.78(4H,m),2.90(2H,m),2.97(4H,m),3.17(2H,m),3.90(3H,s), 3.91(3H,s),5.45(2H,s),6.83(1H,s),6.84(1H,s),6.92(1H,m),7.00(1H,s), 7.09(2H,m),7.52(1H,s)
【0061】
[実施例2] 3-[2-[4-(3- クロロ -2- メチルフェニル )-1- ピペラジニル]エチル ]-5,6- ジメトキシ -1-(4- イミダゾリルメチル )-1H- インダゾール・ 1.5 塩酸塩(無水晶)
3-[2-[4-(3-クロロ-2-メチルフェニル)-1-ピペラジニル]エチル]-5,6-ジメトキシ-1-(4-イミダゾリルメチル)-1H-インダゾール(遊離体)の結晶 60 g をエタノール 1000 mlに加熱して溶解した。この溶液に1N塩酸 182.2 ml を加え、20分撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。残留物を五酸化リンの存在下、室温、減圧下に12時間乾燥した。この粉末に無水エタノール 1300 mlを加え加熱溶解した。溶解後、加熱下に溶液を約 1000 mlにまで濃縮した。濃縮液を撹拌しながら放冷し、種晶を加えて撹拌下に室温まで放冷した。析出晶を濾取し、五酸化リン存在下に減圧下で加熱(60℃)し、約12時間乾燥して無色の結晶 64 g(融点:226.5 - 228 ℃)を得た。
【0062】
IR(KBr)cm-1:2968, 2836, 2712, 2544, 2456, 1512, 1470, 1436, 1338, 1260, 1208, 1166, 1108, 1032, 1006, 862
1H-NMR(ppm, d6-DMSO)δ:
2.32(3H, s), 3.20 - 3.21(3.5H, m), 3.40 - 3.52(10H, m), 3.82, 3.86(各3H, s), 5.53(2H, s), 7.08(1H, dd), 7.19 - 7.25(2H, m), 7.31 - 7.33(3H, m), 8.36(1H, s).
ここで得られた結晶にはHPLCを使用した分析によって約 15000 ppmのエタノールが残留していることが確認された。
【0063】
[実施例3] 3-[2-[4-(3- クロロ -2- メチルフェニル ]-1- ピペラジニル]エチル )-5,6- ジメトキシ -1-(4- イミダゾリルメチル )-1H- インダゾール・二塩酸塩・ 3.5 水和物
遊離体の3-[2-[4-(3-クロロ-2-メチルフェニル)-1-ピペラジニル]エチル]-5,6-ジメトキシ-1-(4-イミダゾリルメチル)-1H-インダゾール 4.95 g に、1N塩酸 20 mlと蒸留水を加え、全量を 49.5 mlとした。次いで反応容器を外温 120℃で加熱して系内を還流させ、結晶を完全に溶解した。溶解液をスターラー撹拌下、室温にて冷却し、一昼夜、撹拌した。析出した結晶を濾取後、2日間風乾し、無色プリズム晶 5.5 g(融点:166 - 167℃)を得た。
【0064】
IR(KBr)cm-1: 3400, 2850, 1625, 1505, 1460, 1425, 1245, 1150, 1010, 840
1H-NNR(ppm, d6-DMSO)δ:
2.39(3H, s), 3.30 - 3.80(20H, m), 5.74(2H, s), 7.15(1H, dd), 7.28(1H, s), 7.30(1H, dd), 7.43(1H, s), 7.52(1H,s), 7.69(1H, s), 9.13(1H, s), 11.80(1H, bs), 14.80(1H, bs).
元素分析;C26H31N6O2Cl・2HCl・3.5H2Oとして
理論値:C, 49.41; H, 6.54; N, 13.30; Cl, 16.83
実測値:C, 49.15; H, 6.44; N, 13.29; Cl, 16.99.
【0065】
粉末X線回折データ
測定条件;
線源:Cu−Kα線(検出器側、モノクロメーターによる単色化)
検出器:シンチレーションカウンタ
X線電圧:35 kV 電流:20 mA
走査速度:2 °/ min サンプリング間隔:0.010 °
スリット系:
Divergence Slit = 1.0 ° Scattering Slit = 1.0 °
Receiving Slit = 0.15 mm
装置:マック・サイエンス社製 粉末X線回折装置 MXP−3V
X線回折スペクトルの特徴的なピークを表6に示した。
【0066】
【表6】
【0067】
[実施例4] 3-[2-[4-(3- クロロ -2- メチルフェニル )-1- ピペラジニル]エチル ]-5,6- ジメトキシ -1-(4- イミダゾリルメチル )-1H- インダゾール・二塩酸塩・ 3.5 水和物
3-[2-[4-(3-クロロ-2-メチルフェニル)-1-ピペラジニル]エチル]-5,6-ジメトキシ-1-(4-イミダゾリルメチル)-1H-インダゾール・1.5塩酸塩(無水物)の結晶 5.50 g に、1N塩酸 5.0 ml と蒸留水を加え、全量を 49.5 mlとした。次いで、反応容器を外温120℃で加熱し、系内を還流させ、結晶を完全に溶解した。溶解液をスターラー撹拌下、室温にて冷却し、一昼夜撹拌した。析出した結晶を濾取後、2日間風乾し、無色プリズム晶 5.6 g(融点:166 - 167℃)を得た。
【0068】
取得した結晶は実施例3で得たものと同じ物理データを示した。
【0069】
本願発明に係わる化合物の薬理試験例を以下に示すが、ここに示したのは主として無水物を使用して得られた結果である。
【0070】
毒性であるが、経口単回投与毒性は200mg/kg以上であり、ラットの経口10日間反復投与毒性試験及び静注10日間反復投与毒性試験において重篤な副作用を認めなかった。
【0071】
イヌにおいて、循環動態および心電図に対して特に重篤な作用を認めず、アカゲザルにおいて、10mg/kg の用量を静注投与しても、顕著な中枢抑制作用は認められなかった。
【0072】
[薬理実験例1] カルモジュリン阻害作用
カルモジュリン阻害作用は、 カルモジュリン依存性ホスホジエステラーゼ(PDE) の阻害効果を指標に評価した。 実験はトンプソンらの方法(Advances in Cyclic Nucleotide Research 10, 69, 1979年) を改変して用いた。 すなわち、 50mMトリスバッファー(pH7.5, 5mM MgCl2, 1mg/ml bovine serum albumin含有)、 1mM CaCl2、 [3H]-cGMP 、カルモジュリン(CaM、 from bovine brain),CaM-PDE(カルモジュリン依存性ホスホジエステラーゼ、from bovine brain)および試験検体を加え、 30℃、 10分間インキュベートした。 沸騰水浴中で1 分間過熱することにより反応を停止した後、 蛇毒(1mg/ml)を加え、 30℃、 10分間反応させることにより、 PDE により生成した5'-GMPをグアノシンに変換した。 次にイオン交換樹脂(AG1-X8)に未反応のcGMPを吸着させ、 その後、 遠心分離を行い上清の放射活性を液体シンチレーションカウンターで測定した。 PDE 阻害効果をIC50値として求めたところ、 5.46μM だった。 一方、 対照化合物であるW-7 は33.5μM であった。
【0073】
[薬理実験例2] マウス窒素負荷ハイポキシアモデルに対する作用
実験はAlbert Wauquier らの方法(Japan J. Pharmacol.,38,1-7 (1985)) に準拠して行った。
1群9-10匹のマウスを用いて、被検薬(30mg/kg)を経口投与後60分後に排気孔を設けた透明な容器(容積500ml)に1 匹づついれ、窒素ガスを5.0L/ 分の割合で通気した。通気開始から呼吸停止に至るまでの時間を測定した。対照群を100%としたとき、増加率は15.1% であった。
【0074】
[薬理実験例3] 脳虚血モデルにおける海馬神経細胞の変化
砂ネズミに一過性の脳虚血を負荷すると、 数日後から海馬神経細胞が壊死するが、この変化は遅発性神経細胞死と呼ばれている。
【0075】
以下の実験はT. Kirino の方法(Brain Res., 239, 57-69 (1982)) に準拠して行った。すなわち、砂ネズミに5分間の脳虚血負荷を加えた後に屠殺し、 海馬CA1 領域に残存する神経細胞数を計測した。
【0076】
脳虚血により海馬CA1 の神経細胞は、 ほとんど死滅したが、 化合物(100mg/kg)を脳虚血負荷1 時間後に経口投与したものは明らかな神経細胞死に対する保護効果を示した。
【0077】
【表7】
【0078】
[薬理実験例4] ラットマイクロスフェア脳塞栓モデルにおける抗浮腫効果
実験はNobutaka Demura らの方法(Neuroscience Res., 17, 23-30 (1983)) に準拠して行った。
あらかじめ尾静脈にカニューレーションしたSlc;Wis ラット(約300g)をハロセン麻酔下、頚部切開し、左総頚動脈を剥離した。さらに同側の翼突口蓋動脈および外頚動脈を剥離して動脈クリップを施した。カーボンマイクロスフェア(径50±10μm )を20% デキストランに懸濁し、これを左総頚動脈より注入し、左内頚動脈を介して左大脳半球にマイクロスフェアを分散下、直ちに総頚動脈にもクリップをかけてマイクロスフェア注入部の止血を施し、動脈クリップをはずして血流を再開した。その後、尾静脈に挿入したカテーテルより、インフュージョンポンプを用いて薬液を持続注入した。
【0079】
術後24時間で断頭屠殺し、屠殺後、速やかに脳を取り出して左右両半球の湿重量を測定した。さらに、一夜150 ℃で各組織を乾燥させて乾燥重量を測定して各半球の含水率を算出した。
【0080】
対照群としてvehicle 群(20% デキストランのみ)をもうけ同様の処置をした。
【0081】
【表8】
【0082】
【発明の効果】
本発明によって新規結晶として3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩・3.5水和物が見い出された。この結晶は著しく安定な貯蔵安定性を特徴とする。したがって、医薬品原体として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・塩酸塩・無水物の湿度による重量変化を示す。
【図2】 本発明の3.5水和物の湿度による重量変化を示す。
【図3】 本発明の3.5水和物の粉末X線回折スペクトルである。
【図4】 本発明の3.5水和物の熱分析のスペクトルである。
Claims (5)
- 3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩の結晶が3.5水和物である請求項1に記載の結晶
- 3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩・3.5水和物の製造方法であって、
(a) 遊離体の3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾールを水の存在下に塩酸と処理するか、
または、
(b) 3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩・3.5水和物よりも少ない水和物および/または塩酸塩である3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・塩酸塩・水和物を水または/および塩酸で処理するか、
または、
(c) 製造すべき3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩・3.5水和物より多くの水和物および/または塩酸塩である3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・塩酸塩・水和物から水および/または塩酸を除去するかまたは、
(d) 塩酸塩以外の3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾールの塩を水および塩酸の存在下に処理する
ことを含んでなる製造方法 - 次のX線回折特性を実質的に有することを特徴とする、3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩の製造方法であって、
(a) 遊離体の3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾールを水の存在下に塩酸と処理するか、
または、
(b) 3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩・3.5水和物よりも少ない水和物および/または塩酸塩である3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・塩酸塩・水和物を水または/および塩酸で処理するか、
または、
(c) 製造すべき3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩・3.5水和物より多くの水和物および/または塩酸塩である3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・塩酸塩・水和物から水および/または塩酸を除去するかまたは、
(d) 塩酸塩以外の3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾールの塩を水および塩酸の存在下に処理する
ことを含んでなる製造方法
- 3−[2−[4−(3−クロロ−2−メチルフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−5,6−ジメトキシ−1−(4−イミダゾリルメチル)−1H−インダゾール・二塩酸塩の結晶が3.5水和物である請求項4に記載の製造方法
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-
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